◆−Past Times−中田 珂南(11/30-06:20)No.8249
 ┣よかったです〜!−葉夢(12/2-02:02)No.8254
 ┃┗そう言って頂けると嬉しいです♪−中田 珂南(12/4-03:37)No.8270
 ┣こうなって欲しいです・・・−ゆきみ(12/2-09:57)No.8256
 ┃┗これは、私の「願い」でもありました。−中田 珂南(12/4-03:45)No.8271
 ┣はじめまして!!−三剣 綾香(12/4-23:18)No.8286
 ┃┗ありがとうございます。−中田 珂南(12/5-00:21)No.8287
 ┗あらら。−天邪鬼(12/14-14:39)NEWNo.8337


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8249Past Times中田 珂南 E-mail URL11/30-06:20


ご無沙汰しております。(って、覚えてる方おられるんか?)
えっと、久々に書き下ろしましたんで、置き去りしに来ました(笑)
厳密にはガウリナではないんですが、ガウリナ、ルクミリ大前提な
お話です。

設定は14巻の事件から数年後。
・・・・・15巻での展開は、今は考えないということで(苦笑)

::::::::::::::::::::::::::::::


「Past Times」  



「・・・・・ん?」

誰も連れずにふらりと座った、夜中の酒場の隅っこで。
いきなり出された琥珀色のグラスに、男は怪訝な顔をした。

「・・・・・・おい、俺はこんなモン注文した覚えはないぞ。」
「ああ。あっちの兄ちゃんからだよ、そいつは。」

ギロリと睨む男にも怯まずに、酒場の主人は笑ってカウンターを示す。
不思議に思った男が向けた、その視線の先にあったのは−

「よ。久しぶりだな、ルーク。」

屈託なく笑うその男の姿に、彼は思わず己の目を疑う。
・・・間違いない。
その長い金髪。屈託なく笑う瞳の蒼。
しっかりと腰に携えた、愛用の魔力剣“斬妖剣(ブラスト・ソード)”。
そう。彼は。
旅路で出会い、いつか別れたあの剣士だった。

「しかしあんた。俺のこと、よく覚えてたよなあ。」
「おいおい。いくら何でも、一緒に旅した奴のことを、そう簡単に忘れる訳ないだ
ろ。」
「いやあ、あんたのことだしな。」
「・・・あのなあ・・・。」

気軽に交すその会話に、時間が遡る錯覚を覚える。
ただ笑うだけでよかった、あの頃に。

自分の傍らに、誰もいないという不動の事実が。
意識を辛うじて「現在」に縛り付けているけれど。

「ところで、あんた・・・連れは、どうしたんだ?
 まさか、とうとう愛想が尽きて別れたとか?」
「いや。大人しく寝てたから、置いてきただけさ。
 俺だって、たまにはこうして飲みたい時もあるしな。」
「でも、あんなとんでもない女に、あんたよく付き合ってるな。」
「ま、俺もリナも・・・今更別れるなんて、考える気も起きなくてな。何となく。」

何気に彼が言った言葉に、男は思わず苦笑する。
そして。
目の前のグラスを、ぐっとあおると、

「でも、やっぱあんただから・・・護り切れるんだろうな。あんなのでも。」

かたんっ。

力なく置いた空のグラスが、無意識にその心境を明かす。

「俺、今でも思うんだよ。・・・何で、ミリーナを護れなかったんだ、ってな。」
「・・・ルーク・・・。」

自嘲めいたその呟きに、金髪の男は失言を悔いる。
が。
黒髪の男は、今度は静かに微笑むと、

「そう考えたら、不思議なもんだよな。
 あの時は・・・あんなに憎かったあんたと、こうして今飲んでんだから。」

その眼に、不思議な穏やかささえ湛えて。
彼は静かに言葉を続ける。

「・・・あん時は、確かに皆が憎かった。
ミリーナを殺した、あの二流野郎どもも。
 ミリーナを救えなかったケレス神官も、救おうとしなかった他の神官どもも。
 俺の行く手に立ち塞がった、あんたもリナ=インバースも。
・・・・・・ミリーナを護り切れなかった、何も出来なかった俺自身も。
 何もかもが憎かった。心の底から。」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」
「でもな、・・・今は、そんな感情の何もかもが、“過去”なんだよ。」

からん。

弄ぶ空のグラスの中で。
僅かに残った氷塊が、また澄んだ音を立てる。

「一生、総てを憎むと、憎み続けると・・・思ってた。
 なのに今では、全部“過去”になっちまった。」
「・・・・・・・・・・。」
「さすがに“忘れる”なんてことは、できねえけどな。
 ・・・もう誰も憎んでないし、恨んでもない。自分自身の他には、な。」

男の赤い瞳が、遠い彼方を見つめて止まる。
まるで、心の中に今も住む愛しい女性を、いとおしむ様に。

「“俺の中に、今でもミリーナは生きてる”なんて、クサい台詞は言わねえけど。
 ・・・俺にとって、ミリーナは“女神”なんだよな。今では。」
「・・・・・“女神”か・・・・・・。」 

ことん。

空になった酒瓶を脇によけて、二人は同時にため息をつく。
その言葉に含まれている意味を、改めて実感するかのように。

“女神”
心の中に存在する、最も神聖で不可侵なもの。
・・・どんなに強く求めても、決して手の届かないもの。

金髪の剣士にとって、かつてある少女がそうだった。
互いに触れ合った、あの時まで。
黒髪の魔法戦士にとって、今、あの女性がそうなのだ。
永遠に触れ合えなくなった、あの時から。

あれだけ身を焦がした想いも。焦りも。苛立ちも。憎しみも。
・・・総て、過ぎた日の追憶の彼方。

“時間”は、『想い』さえ『過去』に変えていく。
容赦なく。

「・・・不思議なもんだよな・・・。」

どちらからともなく、苦笑に満ちた呟きが漏れる。
その真意は。 
・・・きっと、男たち自身にも分からない。

「じゃ、俺もそろそろ行くか。」
「・・・なあ、ルーク。聞いてもいいか。」

行きかけた男を、男が止める。
再び酒で満たしたグラスをどけて、真剣な眼差しを真っ直ぐに向けて。

「お前さん、何で・・・俺に、ンな話出来たんだ?」

心からの疑問。
かつて旅路を共にしたとはいえ、彼と彼とは、確かに刃を交えた相手。
そう考えるのも、無理はないだろう。
が。

「あんたは、・・・多分あん時、俺を一番分かってた。
 それに。今もあんたが、一番よく分かるだろうからな。誰よりも。」

穏やかな笑みさえ浮かべて、男はさらりとそう返した。
その答えに。
もう一人の男は苦笑いして、確かに、と小さく頷く。

「・・・じゃ、元気でな。」
「またな。」

かけられた台詞に、黒髪の男は小さく笑う。
そして。

「ああ。・・・またな。」

あの女には言うなよ、と、後で小さく付け足して。
男は静かに酒場を出て行く。
そして。
残された男は、また一人、静かにグラスを傾け続けた。

・・・それぞれの胸に、せつなさを孕んだ愛しさを秘めて。


:::::::::::::::::::::::::::

「ルークに、せめて心の平安を」が今回の(一応)テーマ?でしたが、
・・・ただの訳分からん文章になってしまいました。反省。
特にルークFanの方、イメージぶち壊しでごめんなさい(平謝り)

では。誰にも闇討ちされない間に・・・逃げます。失礼!
しぱたたたたたたたたたたた・・・。(<走り去って行く足音らしい。)

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8254よかったです〜!葉夢 E-mail 12/2-02:02
記事番号8249へのコメント

 初めまして! 葉夢と申します!
 私も随分長いこと離れてたんですが、戻ってまいりました!
 いや〜! 久しぶりってのはいいもんですね〜

 よかったですよ! きっとルークもずいぶん自分の心と戦ったんでしょうね……
 愛する人の死をそう簡単に笑って話せませんよ! 普通なら。
 ルークは強いですね……
 っていうか、ほんとに悲しかったんですよ。
 ミリーナが死んじゃった時……

 あ、短くてごめんなさい! しかも何かいてるかわかんないし……
 でもほんとに心にじ〜んときましたよ!
 それでわっ!

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8270そう言って頂けると嬉しいです♪中田 珂南 E-mail URL12/4-03:37
記事番号8254へのコメント

ご感想ありがとうございます。
久々に書いた甲斐がありました(笑)

> よかったですよ! きっとルークもずいぶん自分の心と戦ったんでしょうね……
> 愛する人の死をそう簡単に笑って話せませんよ! 普通なら。
> ルークは強いですね……
> っていうか、ほんとに悲しかったんですよ。
> ミリーナが死んじゃった時……

彼の強さもさることながら、それだけ「流れる時間は無常」ってことだと
思うんですよね。
「忘れる」のとは全然違うけど、悲しみもいつか「想い出」になり、
「激情」は純粋な「想い」へと昇華される・・・と。
(↑のコメント、かっこつけすぎ???)

こんな訳分からん駄文に(^_^;ご感想、ありがとうございました♪

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8256こうなって欲しいです・・・ゆきみ E-mail 12/2-09:57
記事番号8249へのコメント

こんにちは、はじめまして「ゆきみ」と申します。

とっても良かったです。
14巻のルークは特に見ていられなかったので(もちろんリナ・ガウリイも)
一日でも早くこのお話のようなルークなって欲しいと思ってしまいました。
もちろんこんな心境になるまでの過程は大変な事なのでしょうが・・・

また新しいお話も読ませてください。
取り止めの無さ過ぎる感想でゴメンナサイ(逃走)

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8271これは、私の「願い」でもありました。中田 珂南 E-mail URL12/4-03:45
記事番号8256へのコメント

こちらこそ初めまして。
ご感想頂き、本当にありがとうございます(^^)

>14巻のルークは特に見ていられなかったので(もちろんリナ・ガウリイも)
>一日でも早くこのお話のようなルークなって欲しいと思ってしまいました。
>もちろんこんな心境になるまでの過程は大変な事なのでしょうが・・・

ルクミリは大好きだったんで、私も本気で悲しかったです。<14巻
で、ガウリイが一番ルークを(建前とかじゃなくて)理解してたような
気がするんですよね。同じ「男」だから、という以上に。

流れる「時間」は無常かも知れないけど。せめて彼の心に平安を。
そう願って書いたお話だったんです。これ。

ご感想、ありがとうございました。

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8286はじめまして!!三剣 綾香 12/4-23:18
記事番号8249へのコメント

はじめまして
三剣 綾香と申すです。

ごめんなさーい
投稿してから気付いたんですけど、同じ題材の話書いちゃいました。

男同士の会話ってやはし良いですね
深みがあって♪

わけわからん感想ですみません

綾香でした。

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8287ありがとうございます。中田 珂南 E-mail URL12/5-00:21
記事番号8286へのコメント

初めまして。
・・・て、実は「もり」シリーズずっと読ませて頂いてます。
その作者様にご感想頂けて、光栄です♪

>ごめんなさーい
>投稿してから気付いたんですけど、同じ題材の話書いちゃいました。

今、ちょうど読ませていただきました。良かったです♪
でも。題材は似てても、テーマも雰囲気も全然違う話ですし。
これはこれ、そちらはそちらということで・・・(なんだそりゃ。)

>男同士の会話ってやはし良いですね
>深みがあって♪

そう言って頂けて嬉しいです。
実は、上手く書けたかどうか自信なかったんで(^_^;

ご感想頂き、本当にありがとうございました。
そちらのお話の感想は、そちらのツリーに書かせて頂くので宜しくです♪
では。

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8337あらら。天邪鬼 E-mail 12/14-14:39
記事番号8249へのコメント

突然ですがこんにちは。そしてはじめまして。天邪鬼と申します。
衝撃を受けました。
もう下の文章読んだときは硬直しました。

> ・・・俺にとって、ミリーナは“女神”なんだよな。今では。」
>「・・・・・“女神”か・・・・・・。」 
>
>“女神”
>心の中に存在する、最も神聖で不可侵なもの。
>・・・どんなに強く求めても、決して手の届かないもの。

何がって何がって・・・あああああ、似たようなネタあったけどこれじゃ書いてもしょうがないっ!! てことです。
こ、ここまで完成体で見せられてしまうと・・・。くっ自分が恥ずかしいっ!
しかもキャスティングまでばっちし同じです。ガウ&ルーク。
う、うう、ちくしょーちょっぴり悔しいぞ。
でも読んでてほんと溜息つきました。14巻でまさかあんなになるなんて思わなくて、うわああっそういうことする!? とか思っていただけに、少し救われた気分です。ルークがどうなるかわからない。でも。でも願わくば。
   彼に平穏を。

でも、何よりも時の流れの残酷さのあのうすらさむい感覚をよくぞここまで! というのが一番印象に残りました。
だらだらとしかも途中失礼なようなことも書きました。お許しください。
それでは、これにて失礼させていただきます。(うー。でももったいないなぁ。個人的に書こうかなぁ・・・)  天邪鬼