◆−誰が為に鐘は鳴る  −八極(12/30-21:06)No.8426
 ┗New Year’s Eveの夜に  ゼルアメ−八極(12/31-18:50)No.8428
  ┗カウントダウンと言えば−穂波(1/3-03:03)No.8430
   ┗某宝石店のCMですね−八極(1/3-07:08)No.8432


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8426誰が為に鐘は鳴る  八極 E-mail 12/30-21:06



「誰が為に鐘は鳴る」


年の瀬も迫り、明日には新たな年を迎えようという日。
いつもの宿にいつもの食堂に、やはりいつものように彼は居た。

「・・・腹減った・・・」

テーブル突っ伏している黒ずくめの男−オーフェンは、蚊の鳴くような細い声でポツリと呟く。

「だったら。」

この宿の主人バグアップの息子−マジクは答えながら、カーテンに溜まったホコリを掃う。
彼は死人のようにテーブルに倒れたままのオーフェンを見て、顔をしかめながら

「働いて稼げばいいじゃないですか。」
「こんな年の瀬に仕事なんかあるわけねーだろ。それにどうせ俺に纏わりついてる貧乏神供が
邪魔しやがるんだ。」

本当にやる気がないのか、机に倒れ込んだまま死んだ魚のような目で答え返す。

「・・・あえて、誰が貧乏神かなんて聞かないでおきますよ。」

意味もなく溜息をつきながら、またマジクはホコリ落としに戻る。
突然、
ばん、と破裂音のように鋭い音がし

「グッドニュースです、黒魔術士殿!!」

銀髪の執事−キースが何が楽しいのかクルクルと回りながら飛び込んで来る。

「来やがった・・・貧乏神3号が。」

両手で頭を抱え絶望を声色ににじませ、オーフェンは先程より深くテーブルに突っ伏す。

「何を仰いますか。我が盟友たる黒魔術士殿の幸せの為にナイスでキュートな情報を持って
来ましたのに。」
「いや、お前との縁が切れるだけで俺は充分幸せだ・・・」

オーフェンの心からの懇願など無視し、右手に握ったボロボロの本を取り出す。表紙には
微かに「東洋紀行」の文字が読める。

「この本に拠れば、はるか東の地では、年の瀬に鐘を撞く習慣があるそうで。そして、鐘を108回
撞き切った者は、次の年の幸福と栄光を約束されるのです。更に撞く鐘は大きければ大きいほど
比例して得る幸せも多くなるようです。」
「嘘臭い話ですねー。」

さっきまで会話に加わらず掃除を続けていたマジクだが、あまりに虫の良い話に感想をもらす。
すると、
−がしっ−
何者かに肩をつかまれ、後ろを振り向くと

「マ〜ジ〜ク〜。」
「うわわわっ!?」

さっきまでテーブルに伏していたくせに、いつの間に近づいたのか、獣のように目をギラギラさせた
オーフェンの顔をまともに直視してしまい悲鳴を上げてしまう。

「この町で一番大きい鐘は何処にある〜?」
「は、はいっ!・・・た、確か僕の学校近くの鐘撞き堂のだったと・・・」

背後にメラメラと炎を背負ったオーフェンの迫力に心底怯え、どもりながらもマジクは必死で答える。

「キース!本当に幸せになれるんだな?てめーとの縁もこれで終れるんだな?」
「引っかかる言い方ですが、そのようで。」
「よーし、今からは俺は幸せの為に鬼になるっ!邪魔する奴は全て倒してでも幸せになってやる。と言う訳で
Let's 幸せだーーーっ!」

キースに確認を取り、熱意だけは凄まじく熱いものを見せ、そのままオーフェンは旋風のように飛び出して
行ってしまった。

「・・・オーフェンさん。あそこまで追い詰められていたなんて。」
「それでこそ我が心の友です。」

少し本の内容が気になったマジクは、キースから借り受け目を通してみる。読み進むうちにマジクの顔には
呆れと哀れみの色が浮かぶ。

「これ、鐘を108回撞く事で煩悩を祓うって書いてるじゃないですか。またデタラメを教え込んだんですね。」
「デタラメとは心外な。そのままでは芸がないのでアレンジをしただけですよ。」
「楽しいですか、おちょくって?」

などと最もらしい事を言うが、マジクはそのままモップを手にすると今度は床磨きを始める。また、騙された
とも知らず飛び出していったオーフェンを止めに行かないあたり、彼も結構薄情だ。


さて、その頃

「・・・ゼェゼェ・・・こ、ここだな。」

また騙された事も知らず、オーフェンはマジクから聞き出した鐘撞き堂にやって来ていた。
しかし、いざ鐘を撞こうとすると、鐘撞き堂の扉は硬く閉じられ、どう頑張っても開きそうにない。よじ登って撞こうにも
鐘はかなり高い位置にあるので下手すれば幸せを手に入れる前に墜落死してしまう。

「・・・ちっ。こんな事で俺の想いは死なないっ!」

かなりカラ回りしている気概を見せながらしばし考えに沈む。
しばらく思案していると名案でも浮かんだのか、

「よし。パワーを抑えりゃ何とかなるだろう。」

と言ったかと思うと、右手を高々と振り上げ鐘に向けたかと思うと深く息を吸い込む
そして、

「我は放つ光の白刃!」

−キューーーーーンッ−、−ゴ〜〜〜〜〜ン−
放たれた光熱波は狙いたがわず鐘に命中する。普段よりかなり威力を抑えている為、鐘は破壊されずに鈍い
音を街中に響かせている。

「よっしゃっ!まずは1回目。次っ!!我は放つ光の白刃、我は放つ光の白刃、我は・・・」

−キューーーーーンッ−、−ゴ〜〜〜〜〜ン−
−キュー−−−−ンッ−、−ゴ〜〜〜〜〜ン−
−キュー−−−−ンッ−、−ゴ〜〜〜〜〜ン−
何かに憑りつかれたのように連続で光熱波を打ち続ける。やかましく鳴り続ける鐘に不信を抱いた人達が集まって
来るが、目を血走らせ親の敵のように鐘に向かって魔術を連発するオーフェンに恐れをなし誰も近づこうとしない。
そうこうする内に、

「・・・わ、我は放つひ、光の白刃っ。・・・くっ、後一歩なのに。」

威力を抑えたとはいえ、流石に107回も連打して精神力を消費しきったのか肩で息をするのがやっとである。

「もう少しで幸せに手が届くのに・・・」

悔しそうに唇を噛みしめていると、何処かで聞いた声がして来た。

「兄さん、何だか凄い人だかりだね。」
「うむ、小銭が落ちてるかもしれん。ドーチンさっさと拾わないと床磨きでピカピカにし殺すぞ。」
「・・・どうして普通に言えないかな。」

聞くともなしに聞いていたオーフェンだが、ふと脳裏にこの事態を打開するアイデアが浮かぶ。
ニヤリと邪悪な笑みを浮かべると、人ごみを掻き分け声のする方向を目指す。
かき分けた先には予想通り地面に這いつくばってキョロキョロと小銭を探している地人兄弟がいた。

「おい、貧乏神1号とその弟。」
「「うわわわっ、出たーっ!?」」

呼びかけに気づいた二人は嫌そうに飛びのく。

「どーせお前等に借金を返せと言っても無駄だろうからな。せめて俺の幸せの為に礎となってもらうぞ。
いいな、貧乏神1号。」
「このマスマテュリアの闘犬、ボルカン様をそんな不景気な名前で呼ぶと・・・え、ちょっと?」

最後まで言わせず、ボルカンの頭をつかみ最後の力を振り絞り、残った魔力と相乗させ思いっきり放り投げる。

「カモ−−−ン、俺の幸せぇーっ!!」

−ビューンッ−

「ああっ!兄さん。」
「ぎゃあああああああああぁぁぁぁぁぁ・・・・」

−ゴイ〜〜〜〜〜ン−
ドップラー効果を素晴らしいスピードで残しながら飛んでいき、見事鐘に命中するボルカン。
でっかいコブをこさえ、慣性の法則に従いヒルヒルと落下していく慌ててドーチンが兄を回収に向かったりしているが、
既にオーフェンは見ていなかった。というよりどうでも良かった。
彼は鈍く鳴り響く鐘の音を聞きながら達成感に酔いしれていた。
・・・やったぞ俺、ナイスだ俺、ありがとう俺。これでもう貧乏神供ともおさらばだ。人並みの生活も出来る。
さあ、幸せよやって来い。俺はここだぞ・・・
感動の涙で曇った目を拭うと、そこには肩を怒らせた制服姿の女−コンスタンスがいた。

「出たな貧乏神2号め。だが今の俺には「幸せバリアー」があるから近づけないぞ。」

−がちゃり−

「へ?」
「いきなり暴れだしたと思ったら何を訳の分かんない事を言ってんのよ!もうすぐ今年の仕事も終わって休暇
の筈だったのに余計な仕事を増やして!」

両手にはめられた手錠を見ながら困惑するオーフェン。

「い、いや。俺は人生のささやかな幸せを手に入れてつつましく生きようかと・・・」
「言い訳は署で聞くわよ。」

そのまま、オーフェンはズルズルと牽かれていった。

「話が違うじゃねーーーーかーーーーーっ!」

まるで市場に牽かれていく子牛のように悲痛な叫びだったとその場に居合わせた人達は語ったという。



−終了−




__________________________________________________

よし、終わった。
ふざけ物のつもりで書いたけどあんまし面白くないかな〜・・・不安だ。
さて、次はゼルアメ物で出来れば明日辺りにUPするつもりです。
ではでは。

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8428New Year’s Eveの夜に  ゼルアメ八極 E-mail 12/31-18:50
記事番号8426へのコメント


「New Year’s Eveの夜に」 ゼルアメ


1999年の終了も直ぐそこまで近づき、後30分ほどで2000年が始まろうとする時、
−ガヤガヤ−、−ザワザワ−
町の中央広場には大勢の人が集まって来ていた。今回は、例年と違い「ミレニアム」と
いう事で、特別に花火を打ち上げ来たり来る2000年を盛大に祝う事になっている
のである。
折角のイベントという事で花火を見に来る人達、その大勢の人達を当て込んでたくさんの
屋台も開き客引きの声があちらこちらで聞こえる。
おかげで、普段はかなり広いこの広場も、今は人いきれでかなりの混雑を見せ、警察や
自治会の人間が出張って人員整理に駆けずり回っている。
そんな人ごみの中にゼルガディスとアメリアの姿が見受けられる。

「うわ〜凄い人数ですね。リナさん達も来てるんですかね?」
「二人揃ってお祭り好きだからな。きっとそこら辺にいるさ。」

物凄い人ごみの中で会話をするのにも一苦労しながら、2人で少しは落ち着けそうな場所を
捜していると、

「あ!ゼルガディスさん、あそこが良さそうです。」

少し中心部を離れた所にポッカリと空いた場所を見つたアメリアは嬉しそうに駆け寄り、
遅れてくるゼルガディスの方に、先程夜店で購入した「たこせん」を持った右手をぶんぶん
を振る。

「そうだな。ここでも花火は見えるだろうし・・・ほら、ソース。」

やって来たゼルガディスは苦笑しながら、コートのポッケトから手を出し、伸ばした指先で
アメリアの口元のソースを拭ってやる。

「・・・えへへ・・・」

恥ずかしそうに上目遣いでゼルガディスを見ながらテレ笑いをする。

「花火まだなんですかね。」

わくわくと目を輝かせているアメリアに、彼は少し冷めた目で回りの人ごみを見渡しながら、

「もうすぐだろう。・・・しかし、俺には理解出来んな。何が楽しくてここまで騒げるんだ?
別にいつもの年明けと変わるわけでもなし、いつもの日常の繰り返しじゃないか。」

彼らしい即物的な言い方に、今度はアメリアの方が苦笑する。

「きっと皆だって分かってますよ。・・・ただ、そういう「口実」を作って自分に取って
大事な人達と時間を共有して、何か「特別」な思い出が出来ればそれでいいじゃないですか。」
「・・・かもな。「楽しんだ者が勝ち」か。ガウリイ達も似たような事を言ってたな。
・・・フフ、本当にお前には色々と教えてもらうな。」

いつになく優しい顔をしたゼルガディスは言いながら軽くアメリアの頭をなでる。

「もうっ!直ぐにそうやって子供扱いするんですね。」
「そんなつもりではないんだが。」

機嫌を悪くして、突っかかってきたアメリアをいなす
しばらく2人でじゃれ合っていると、
−うぉぉぉん−
人々の声が一際大きくなる。いよいよカウントダウンが始まるようだ。
「「「5」」」
「「「4」」」
「「「3」」」
「「「2」」」
「「「1」」」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「「「HAPPY NEW YEAR 2000!」」」」

−ビュ−−−−−ン−、−ドォ−−−ン−
−ヒュルル−−−ンッ−、ドッカー−−ンッ!−
全員の合唱を合図に、夜空に次と次と花火が上がり、大輪の花々を咲かせていく。
ゼルガディスが大輪の花火に見惚れていると、ちょいちょいとアメリアに袖を引っ張られた。

「ん?」
「Happy New Year!ゼルガディスさん。今年もよろしく。」

満面の笑顔のアメリアに

「Happy New Year!アメリア。今年も・・・そしてその先もよろしくな。」

そう言ったゼルガディスの顔がアメリアに接近していく。

「・・・ん・・・」

連続的に上がる花火が夜空を色とりどりに染めていく下、
重なった2人のシルエットはいつまでも重なっていた。



−終了−




______________________________________________

よ〜し。今年最後の小説終了。
現在私が居る国では、後一時間ほどで新年が明けます。何とか間に合って良かった〜(^^;
さて、新年一発目は何にしようか決まってませんが、多分なんかふざけ物を
書くと思います。
感想など頂ければ嬉しいです。
八極の駄文を読んでくれた皆様。ありがとうございました m(__)m
また来年もよろしくお願いします。
それでは皆様良いお年を。

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8430カウントダウンと言えば穂波 1/3-03:03
記事番号8428へのコメント

八極さん、こんばんは。

新年のカウントダウンというと、ジュエリーのCMを思いだしてしまいました・・・でも、カウント直後じゃなくて、ワンクッションおいてから望みの展開になって嬉しいです(笑)。

>連続的に上がる花火が夜空を色とりどりに染めていく下、
>重なった2人のシルエットはいつまでも重なっていた。
ここのシーン、ラヴラヴですね〜。
新年早々幸せそうで、読んでいるわたしも幸せでした。

ではでは短いですが、これにてです。
こちらからも、今年もよろしくお願いいたします。

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8432某宝石店のCMですね八極 E-mail 1/3-07:08
記事番号8430へのコメント

>八極さん、こんばんは。
穂波さん、こんばんわ。明けましておめでとうございます。
正月3日間な〜んもする事がないヒマヒマな八極です。

>新年のカウントダウンというと、ジュエリーのCMを思いだしてしまいました・・・でも、カウント直後じゃなくて、ワンクッションおいてから望みの展開になって嬉しいです(笑)。
銀〇ジュエリーマキとかかな。

>>連続的に上がる花火が夜空を色とりどりに染めていく下、
>>重なった2人のシルエットはいつまでも重なっていた。
>ここのシーン、ラヴラヴですね〜。
>新年早々幸せそうで、読んでいるわたしも幸せでした。
有難うございます。ゼルやんは中々ラブラブな展開に持って行き易いので。
でも、ここの文章友達に朗読されて身をよじった事は内緒です。(^^;

>ではでは短いですが、これにてです。
>こちらからも、今年もよろしくお願いいたします。
いえいえ、感想有難うございました。
こちらこそ2000年もよろしくお願いいたします。
では。