◆−シンデレラ 序章−アップル(1/18-20:03)No.8548
 ┗シンデレラ 第1章−アップル(1/18-20:07)No.8549
  ┗シンデレラ 第2章−アップル(1/21-19:22)No.8574


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8548シンデレラ 序章アップル E-mail 1/18-20:03


突発的に思いついて、こんなの書いてみました。
性格が違うぞ!と言う抗議は、受け付けたいんですが、作者の力不足でどうにもなりません。
ごめんなさい(笑) 笑ってすますな!と言う抗議も・・・(以下同文)
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               シンデレラ 序章


 昔々、在るところに、リナという娘がおりました。
 リナの母親は10年前に亡くなり、父親が再婚した相手には、2人の娘がおりました。
 意地悪な継母や義姉に囲まれ、いじめられてもリナは、けなげに生きているのでした。



  登場順 人物紹介 リ    ナ
           ゼ  ロ  ス
           ナ ー ガ
           シルフィール
           ア メ リ ア
           ゼルガディス
           ラ  ン  ツ
           ガ ウ リ イ

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8549シンデレラ 第1章アップル E-mail 1/18-20:07
記事番号8548へのコメント

はじまり はじまり〜
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              シンデレラ 第1章


「ったく、やってらんないわよ。父ちゃんあんな女と再婚しちゃって。全く人を見る目が無いんだから。
よく商売なんてできるわよね」
 薄ぼんやりとした場所で、リナは一人ドレスを縫っていた。ブツブツと文句を言いながらも、その手は
間違えもせず、素早く動いていく。
「灰かぶり、私の部屋までいらっしゃい」
 継母であるゼロスの声が聞こえる。この家では、継母たちはリナの事を「灰かぶり」と呼ぶ。以前、暖
炉の掃除をさせた時、灰をかぶっているのを見て、笑いながら付けた名前である。
「はい、お母様!」
 リナは慌てて自分の部屋――地下倉庫に布団を運び入れただけの、とても部屋とは言えない代物――か
ら階上へと駆け上がった。
「灰かぶり、明後日の舞踏会に着ていくドレス、ちゃんと仕上がっていて?」
「ごめんなさい、お母様。あと少しかかりそうです」
「まあまあ、お前はなんて仕事が鈍いのでしょう。他に取り柄が無いからと、やらせた裁縫まで駄目だな
んて、本当に使えない娘だこと」
『ふざけんじゃないわよ。昨日の今日でドレスが出来ますかっての。おまけに朝早くから夜遅くまで家事
一切を人にやらせておいて、なに言うかな、このおばはん』
 ――などと言うことはおくびにも出さず、
「申し訳ありませんでした。明日の朝までには必ず仕上げておきますわ」
「しっかりやるのよ。ああ、そうそう、忘れるところでしたわ。ナーガがお前のことを呼んでいてよ」
 ぴくっ
「あ、あのお母様、それはいつ頃の事でしょう?」
「そうねぇ。一時間くらい前かしら・・・」
「失礼します!」
 継母に一礼すると、リナは大慌てでナーガの部屋へと急いだ。

コンコン
「お姉さま、リナです」
「・・・・・・・」
コンコン
「ナーガお姉さま、リナです。遅くなりました」
「・・・・・・クークー」
カチャリ
 返事がないので、おそるおそるドアを開けると、ナーガがソファにひっくり返って寝ていた。
 リナは静かに足下の板をはずし、そこから拳銃を取り出す。中身を確かめ、床板は元に戻しておく。
 狙いを定め、ゆっくりと引き金を――

パン!!

「な、なに?どうしたの?なに?」
 ガバッと跳ね起きたナーガが寝ぼけ眼で辺りを見回す。リナは慌てず騒がず、
「お姉さま、遅くなりました。リナです」
 空砲の拳銃はすでにポケットの中に滑り込んでいる。
「え?誰ですって?リナ?ああ、そう、リナね、リナ。灰かぶり・・・」
 まだ半分ぼけている頭を振り、ナーガはようやく事態を飲み込んだようだ。
「お母様から伺いました。お姉さまがお呼びだとか」
「そう、実はね、この間とてもステキな靴を見掛けたのだけど、どうしてもサイズが合わないのよ。明後
日の舞踏会に履いていきたいから、灰かぶり、お前直しておいて頂戴」
『安売りの物を買うからサイズがそれしかないのよ。お金だったらあるんだから、もう少し何とかしなさ
いよ。それに靴のサイズを直せだぁ?あたしは職人じゃないっての』
「わかりましたわ、お姉さま」
 リナはニッコリと微笑むと、ナーガの差し出した靴をしずしずと受け取った。

 ところで、なぜナーガの部屋に拳銃が隠してあるのか?どうしてリナがそれを知っているのか?
 答えは簡単である。この部屋は元々リナが使っていたのだ。
 先程の床下の他にも、この部屋にはあらゆるところに隠された収納庫がある。これはリナのリクエスト
に応えて、父親が家を建てるときに設計士に注文したものであった。ちなみに壁は防音になっていた。
 ナーガは、部屋の掃除もリナにやらせているため、隠し収納庫があることすらまったく知らないのだっ
た。

「やれ、やれ、今日は徹夜ね」
 台所に立ち、夕食の準備をしながらリナはため息をつく。いくら気に入らない人たちでも、とりあえず
自分の家族である。
 それに、もし「出来ません」などと言って、「リズ(リナの母)の娘は、針仕事一つ満足に出来ない」
などと言われるのは、亡くなった母に対して申し訳ないし、リナ自身のプライドがそれを許さない。
 そういうわけで、今日もリナは一人忙しく働くのであった。
「リナさん、ちょっとよろしいかしら?」
 ちょうど野菜炒めを作っていたリナに声をかけたのは、2番目の姉、シルフィールだった。彼女は、こ
の家で唯一リナのことを名前で呼ぶ。リナは火を止め、振り向いた。
「はい、何でしょうか?お姉さま」
『だああああ!!炒め物は時間と火加減が勝負!何でこの人はいつも最悪のタイミングで声をかけるのか
なぁ』
「今日はとても良い天気だったでしょう?私、少し外の空気が吸いたくて窓を開けておいたの。
 そうしたらいつの間にか眠ってしまって、スポットがお部屋に入ってきたのに気がつかなかったのよ。
あの子は随分と私に懐いているから、きっと私の匂いが、庭で遊んでいるスポットのところへ届いたのね」
 くすくすと笑うシルフィール。リナは、犬の事より、すでにフライパンの中でクタクタになっている野
菜たちのほうに関心が集まっている。
「あのー、それで?」
 思わず話を先に促してしまう。
「ええ、それでね、スポットったら私が明後日の舞踏会に付けていくネックレスにじゃれついて、壊して
しまったの。リナさん元通りに直せるかしら?」
「ネックレス・・・もしかして、お父様に戴いたという、あの?」
「ええ、そうですわ」
 そういってシルフィールは、故意に壊したのではないか、と疑いたくなるくらい粉々になった物を取り
出した。
「・・・・・・・・・」
「それでは、お願いしますわね」
 リナは、手の中にあるそれを呆然と眺めながら、絞り出すように
「な、何とかがんばってみますわ」
 そう言うのがやっとだった。

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8574シンデレラ 第2章アップル E-mail 1/21-19:22
記事番号8549へのコメント


                    シンデレラ  第2章
 

 台所で食事を済ませると、リナは自室からドレス、靴、それに裁縫道具一式を持って台所へと戻ってき
た。冷たい地下室よりはこちらの方がまだ暖かいからである。
 シルフィールより預かったネックレスを眺め、リナは重いため息をつく。これは、リナの(実の)母の
形見だった。去年の暮れに、しまってあったはずの宝石箱からスポットが見つけだし、シルフィールが父
親におねだりして自分の物にしたのだ。
「さてと、サクサク仕事しないと終わらないわ。がんばろう」
 わざと明るい声を出し、自分に活を入れる。そんな彼女の瞳には、うっすらと光る物が・・・。しかし
その涙を拭ってくれる温かい手は、もうない。


「よーし、出来た。すべて完璧。溢れんばかりの才能に惚れ惚れしちゃうわね」
 結局、徹夜して仕上げたそれらは、どれもすばらしい出来映えだった。
 複雑な思いを胸に、しばし見つめていたリナだったが、ふと我に返り、朝食の支度をするために慌てて
片付けを始めた。

「おはようございます。お母様。朝食が出来上がりました」
 すべての準備を終えて、継母たちを起こしに行くのもリナの仕事の一つだ。
「あら、今日は少し遅くなくて?時間厳守は世の中の常識ですよ。あなたもこの家の人間なら、それくら
い出来なくてはいけなくてよ」
『昨日と同じ時間に起こしているのに、何で昨日はOKで今日はNGなんだ!必ず文句付けなきゃ収まら
ないんだから。やんなっちゃうわよね』
「ごめんなさい、お母様。朝食に少し手間取ってしまって」
「言い訳は聞きたくありません。さあ、早くお姉さま方を起こしに行ってらっしゃい」


「お姉さま、朝食が出来上がりました」
 数少ないリナの楽しみの一つに、ナーガを起こすことがある。
 ドアを開けると、案の定まだぐっすりと寝ているナーガが見える。リナは昨日使った拳銃を、元の床下
へと戻し、しばし考える。
『今日は何を使おうかしら・・・・・・・よし、あれにしよう』
 足音を忍ばせ本棚へと近づく。下から2段、左から5冊目の分厚い辞典を手に取る。そっと表紙を開く
と中がくり抜いてあり、小さな金属の箱が埋まっている。
 ナーガの耳元へとそれを持っていき、横についた赤いスイッチを押す。

きゃははははは!!わーっはっはっはっはっ!!ひひひひひ!!ひゃーっひゃっひゃっひゃ!!

 爆発的な笑い声が響いた。
「どわぁぁ!!」
 ナーガが飛び起きると、リナはすかさず白いスイッチを押し、音を止める。
「おはようございます。朝食が出来ましたわ」
「は、灰かぶり・・・今もの凄くけったいな音がしなかった?」
「いいえ、存じませんわ。何か悪い夢でもご覧になったのでは?」
 しれっとした口調で言われ、頭に「?」をたくさん並べてやっとナーガが起き出してきた。


「シルフィールお姉さま、おはようございます」
「おはよう、リナさん」
 シルフィールは既に着替えを済ませていて、リナの来るのを待っていた。
「昨日はごめんなさい、あなたお母様方にも色々頼まれていたのでしょう?そうと知っていたなら私、あ
のネックレスは諦めて別の物を用意いたしましたのに」
 リナの手を取り、シルフィールは謝罪の言葉を唇に乗せる。
「い、いえ、大丈夫ですわ、お姉さま。それにもうお母様やお姉さまから頼まれていた事も、シルフィー
ルお姉さまのネックレスも出来上がっていますから」
 そういうとリナは、ポケットの中から何かを包んだハンカチを取り出す。
「ほら、ネックレスも元通り」
「まあ、本当」
 差し出されたハンカチを広げ、シルフィールは感嘆の声を上げる。
「でもリナさんは本当に何でもお出来になるのね。あなたならステキな奥さんになれるわね」
 ニッコリと笑うシルフィールは、女のリナから見ても綺麗な女性だった。


 ゼロスたち親子が食事をしているとき、リナも一緒に食事をする。ただし、場所が食堂と台所だと言う
違いがあるが。
 リナが早々と食事を済ませると、ようやく通いの手伝いが姿を現した。
「おはよう、灰かぶり。あ、もう飯は終わったのかい?それじゃあ先に買い物に行ってきてちょうだい。
 あたしの朝飯はこれからだからね」
 主人の教育の賜物か、手伝いの女までリナのことを「灰かぶり」と呼ぶ。もしかして、この家の娘だと
本当に知らないのでは?と疑いたくなるくらいだ。
 その女がゼロスたちの朝食の残り(注:食べ残しではない)を嬉々として平らげているのを横目で見な
がら、リナは買い物のへ行く支度を整える。
「それでは行ってきます。ああ、そうだわ。お買い物のついでに、切れかかってたチーズとハムも配達し
てもらうように、頼んできます」
 言うべき事だけを言って部屋を出ていくリナ。その後ろ姿に手伝いの女は、
「道草食ってないで早く帰って来るんだよ!仕事はたんまりとあるんだからね!」
 言葉とは裏腹に、自分は悠々とシチューのおかわりをよそっていた。

 買い物籠をぶら下げて台所を出ると、町とは反対の裏庭の方へと足を向ける。辺りを見回し、誰もいな
いことを確かめてから、庭の片隅にひっそりと立つ一本の木の下へと急ぐ。
 もう一度廻りを見渡してから、やおらスカートをたくし上げ、するすると木を登っていく。枝の中へと
その姿が見えなくなってしばし、ガサゴソと枝を揺らしてリナが降りてきた。
『ふふっ。母さんの遺産、いまこそ使わせていただきます』
 木の上に隠してあった巾着袋を籠の中に入れると、来た道を引き返して今度はちゃんと町へと向かう。
 リナには秘密があった。それはリナと彼女の母との約束だった。

              △  ▼  △  ▼  △  ▼  △
「リナ、よくお聞き。母さんはもうじきあなたの側から居なくなるの」
 ベッドに横になった女性は、娘の頭を撫でながら、弱々しい声で自分の死が近いことを告げる。
「母様、どこにも行っちゃやだ。」
 娘はその大きな目に涙を浮かべ、自分の母にすがりつく。
「あたしもっといい子にしてるから、ちゃんとお行儀もよくするから、もっと父様の言うこと聞いておと
なしくしてるから、だから、だから・・・」
 母親は静かに娘の髪を撫でる。
「いい子だから泣かないで、リナ。あなたに泣かれたら母さんも悲しくなっちゃうわ」
「でも、でも!」
 尚も言い募る娘に、母親は困った顔をして―――――

ゴン!

 拳骨で頭を殴られた娘が、先程とは違った涙を流しているのを見ながら、
「なあに聞き分けのないこと言ってんのよ。人には寿命ってもんがあるの、どう頑張ったって母ちゃんは
これ以上生きられない、って偉いお医者様が言うんだから、我が侭いうんじゃないの!」
「か、母ちゃん。それだけ元気なら大丈夫なんじゃ・・・」
 頭をさすりながらリナがつぶやく。
「ほら、母ちゃんじゃなくて母様でしょ?気を抜くんじゃないよ。あんたはあたしに似ていい女なんだか
ら、しっかり猫かぶっていい男ゲットすんのよ」
 そう言ってまたリナの髪を撫でる。リナもすっかり涙が引いて、気持ちよさげに目を閉じる。
「ねえリナ。母さんは腹括っているからいいけど、父さんはたぶん駄目だと思うの。しばらくは仕事で気
を紛らせているだろうけど、寂しさはぬぐい去れないわ。そのときはリナ、父さんの事よろしく頼むわね」
 リナを抱きしめ、リズは言う。
「判ってるよ。父ちゃんの事だから一生懸命働いて、そうだな、3年くらいして近所のおばちゃんに
『リズさんのことを愛しているのも判るけど、リナちゃんにはお母さんが必要よ?あなたもまだ若いんだ
から、いい人見つけて新しい家庭を持ってみたら?』
 なんて言われてその気になって、顔のいい人にコロッと参って再婚するんだろうな」
 とびっきりのイタズラを思いついたような表情のリナ。
「あら、3年はちょっと短いわよ。せめて5年はあたしの事を思っていてくれなくちゃ。そして、そうね。
『リナ、実はお付き合いをしている人がいるんだ。その人も未亡人で、旦那さんを亡くされてから大層苦
労をしてね。あ、いや、お前が死んだ母さんのことを大事に思っているのは判る。だから今すぐにとは言
わない。ちょっと考えていてくれるだけでいいんだ』
 なんて言ってくるわよ。そうしたらどうする?リナ?」
「そうね。しばらく駄々こねて、わがまま言って、父ちゃんがちょっとあきらめたかなって時に、しぶし
ぶ許してあげようかな」
 リズの胸に預けた頭はそのままに、リナはギュッとその痩せた体を抱きしめる。
「父ちゃんが再婚してもあたしの母ちゃんは母ちゃんだけだからね」
「ありがとうリナ。あたしはこんな可愛くて優しい娘を持てて、それだけで幸せだよ」


「リナ、これは母さんがお嫁に行くときに、母さんの母さんから貰った宝石だよ。そしてこっちが父さん
の母さんが、そう、おばあちゃんがくれたネックレス。そしてこれが母さんが貯めた貯金だよ」
 リズはサイドテーブルから小さな袋を取り出し、その中身を一つ一つリナへと手渡す。
「母さんは、あんたが大人になるまで生きていてあげられないから、だから今のうちに渡しておくね。い
つかリナがお城の舞踏会に行かれる年になったら、これを使ってちょうだい。
 これが他の人よりちょっとだけ早く天国に行く母さんから、愛しい娘への最後の贈り物だから」
「母ちゃん・・・」
              △  ▼  △  ▼  △  ▼  △

 町へと入ったリナは、まず親友のアメリアの店へと向かう。まだ準備中の札が掛かっているドアを押し
開き、
「おはよう、アメリアいるー?」
 勝手知ったるなんとやら、リナはズンズンと店の中へと入って行く。
「あ、おはようリナ」
 店の奥からアメリアが顔を出す。
「いよいよ明日ね、舞踏会も。頼まれていたのも準備できているわよ。ちょっと見ていく?」
「ごめん、今日はあんまり時間がないんだ。明日の楽しみに取っておくわ。それよりこれ」
 そう言ってリナは籠の中から、木の上に隠してあった巾着をアメリアに渡す。
「確かめて。ちゃんと入っているから」
 袋の中身は金貨だった。アメリアは1枚、2枚と金貨を数え、
「確かに。これで明日は商品の引き渡しだけで済むわね。ところで明日は何時頃来る?」
「みんなが出かけて、その後だから大体6時頃かな。それにしてもアメリア、親友のあたしからの仕事な
んだから、もう少しまけてくれても良さそうなものじゃない?」
「何言ってるの。わたしが店を出すときに『値切って仕入れて高く売る!これが商売』なんて教えたのは
リナでしょうが」
「ははは。そんなこともあったわね。
 それじゃ、あたしもう行くから、ゼルに明日はよろしくって言っておいて」
 ゼルガディスとはこの店で働く唯一の従業員である。アメリアの父親にその才能を買われ、以来この店
の手伝いをしている。
 リナはアメリアの店を出ると、それまで脱いでいた「猫」を再びかぶり、しおらしく買い物へと向かう
のであった。
 いよいよお城の舞踏会は明日である。