◆−DOUBT−神代友希(3/20-10:31)No.9070


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9070DOUBT神代友希 E-mail URL3/20-10:31


「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
少女は、ただ祈りをささげていた。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
地竜王の神殿・・・その極東地区にある支部・・・そこに少女はいた。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
少女は、淡い緑の貫頭衣をきていた。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
その場にあるのは・・・ただ一つの沈黙でしかなかった。

どごぉぉぉぉぉぉぉぉ

その沈黙は、派手な破壊音によって存在をかき消されてしまった。
「・・・ひさしぶりだなっ!・・・・・・瑞穂!!」
男は、そう叫ぶと瑞穂と呼ばれた少女の元にすっと身を翻す。
「・・・神聖な礼拝の途中に・・・あなたのような魔族がやってくるとは・・・マディスティング・・・今ならば・・・まだ、あなたを許します。早々にこの場から立ち去りなさいっ!!」
少女は、殺した声でそういった。
「そうやって・・・自分の存在をこの場だけに残すような事をするなよ。それに、本気だせば・・・あんたくらいは軽く存在しなかった事にできるんだぜ・・・。」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
瑞穂は、声を押し黙らせるしかなかった。
「では・・・私が本気を出したら、あなたはどうなるのかしら?」
声は、全く別のところから聞こえてきた。
マディスティングは、声がした方向へとっさに目を移した。
そこには、眼に鮮やかな青い貫頭衣を着た女性だった。
余談だが、貫頭衣の色は職位によって違うのである。
ちなみに、この女性の着ている青いものは準一等聖職位にあたるもので、かなり高位という事をかいておく。
話がそれてしまったので元に戻すとしよう。
「・・・それがどうした・・・あんただって竜族なら一撃で・・・」
マディスティングが強気に返した瞬間・・・

すっ・・・

「あたしが・・・竜族だとしたら・・・?」
マディスティングの懐に女性は立っていた。
「・・・つっ・・・今回はここで引くとしよう・・・しかし、次回は落とすからな・・」そういうと、マディスティングは姿を消して行った。
「ふぅ・・・瑞穂・・・大丈夫?」
さっきの女性は、瑞穂の元に駆け寄りすっと手を差し伸べていた。
「・・・ええ・・・大丈夫です。・・・ご心配をお掛けしてしまいました。」
瑞穂は明らかに疲れた声をしながらもそう答えた。
「・・・まぁ、あなたがそういうならね。・・・とりあえず、あたしの部屋に後でいらっしゃい。すこし、お話したい事がありますから。」
そういうと、女性は静かに礼拝室をでていった。
「はぁ・・・また・・・友希様に心配をかけてしまったわね・・・」
そうつぶやくと瑞穂は再び礼拝をはじめた。

「さて・・・そんなに硬くならないで。大した事じゃないから。」
さっきの青い貫頭衣の女性はそういうと軽く笑みを見せていた。
「はぁ・・・」
瑞穂は生返事を返すだけだった。
「極東支部が魔族の手で攻撃されるようになって、もうだいぶ立つけど・・・なれてきた?」
「正直・・・まだ・・・」
友希の質問に瑞穂は不安を隠せないような感じで答えた。
「そう・・・まぁ、こればっかりは頑張ってもらうしかないからね・・・。」
友希は自分の事を思い出すかのように答えていた。
「で・・・少しの間だけど・・・本部の留守番を頼みたいのよ・・・。」
友希はいきなり本題を切り出した。
「実は、どうしても外せない会議が本部であるのよ。この支部からの出席はは代表職のあたしだけなんだけど・・・。この状況でしょ・・・あまり空けたくないのよ・・・正直な話・・・。」
友希の言葉に瑞穂はただうなずいたりするだけで精一杯だった。
「そこで、今からこれの使い方を教えるからいざとなったらこれであたしを呼び出してくれる?」
そういうと、友希は一つの水晶球に手をあてがった。
・・・瞬間、光が友希の体を突きぬけある方向へと向かった。
「なにかあったか?友希?」
水晶球から声が出始めた。
「いい?これは一種の伝達装置なの。これで本部の人間と交信が出来るわ。いざとなったら、これで呼び出してね。」
友希は瑞穂に対して使い方を説明していた。
説明しながら長老と、本部に帰った時のうち合わせを軽くしていたようである。

「大丈夫?」
「はい・・・一応は大丈夫と思います。」
瑞穂はどこか自信なさげに答えた。
「もう・・・しっかりしなきゃ。あなたがあたしの次なのよ・・・」
「・・・・・・え?」
瑞穂は友希の言葉に一瞬戸惑いを覚えた。
「まぁ、頑張ってもらわないとね。」
そういうと、友希は机に向かいデスクワークをはじめてしまった。
そんな友希をみると、何も聞き出せない事を悟ったのか瑞穂は頭を下げ部屋を後にした。

「まぁ、今更どうこう言っても仕方ないわね・・・。しかし・・・どうしたものかしらね・・・この状況・・・今度やつが来たら・・・」
瑞穂は静かに考え込んでいた。
しかし・・・そんな静寂の空気が破られるのは時間がかかるものではなかった。

ばしぃぃぃぃぃっ!!

強烈な破砕音と共に瑞穂の部屋のガラスが割れていったのである。
「・・・・・・!!」
瑞穂はとっさに身を翻すと窓の方に目をやる。
「どうした・・・恐怖で声も出ないか?」
そこにいたのはマディスティングであった。
「・・・・・・どういうつもりよ・・・一体・・・ここに何があるって言うの・・・?」
「さぁな・・・自分で確かめなっ!!」
いつになく本気のマディスティングの気合に押されながらも瑞穂は自分の意識を保った。
「じゃあ・・・ちょっとやばいんだけど・・・本気だすわねっ!」
瑞穂はそういうと気を一点に集中し始めた。
「・・・おもしれぇ・・・本気だすってのは・・・竜になるってわけか。」
マディスティングは口元をゆるめると瞬間に瑞穂との間合いを詰めた。
「その本気とやら・・・試させてもらうぜ!」
言葉とともに手からなにやらまばゆい光球を瑞穂に向かって放つ。

がすっ!!

着弾寸前にその光球は無散した。
「なんだと・・・」
驚きの声はマディスティングだった。
本気ではないにしろ己の攻撃をよけられた事は会ったにせよ無にされたのは始めてだった。
瑞穂は竜になっていた。その姿はほとんどもとの姿と変わらない大きさでしかし、しっかりとした目つきで相手を捉えていた。
瑞穂はエターナルドラゴンという種族である。

エターナルドラゴン・・・「時」を統べる者としていかなる生命体からも恐れられていた存在。
おのれの危機に対し時間を操作する事で回避してみせる。
しかし、その力ゆえに滅亡の道を歩まざるを得なかった。
正式な記録では350年ほど前に絶滅したとなっているが、密かに地竜王神殿のもと生き長らえていたのである。
余談だが、エターナルドラゴンは竜になってもほとんど人間と変わらない大きさである。

「ふっ・・・そうか・・・そいうことなら、あの命令も納得がいく・・・。しかし、この状況・・・。」
マディスティングはすでに冷静な判断力を欠いていた。
瑞穂の冷静で静かな目はただマディスティングを見据えていた。
しかし、その瞳の奥に潜むものを感じ取れたものはいなかっただろう。

「くっ・・・まぁ、今回は挨拶に来ただけだからな・・・いずれ、全てを頂くとしよう。」
そう言い残すとマディスティングはその場から姿を消した。
瑞穂も姿を戻していた。窓を見るとまるで何事も無かったかのようにいつもと同じ姿をしていた。
「・・・やられたわね。・・・あたしとした事が、ここまで完璧に結界をはられた事に気がつかないとはね・・・」
瑞穂は、この事に関しては精一杯だったという感じでそのまま腰を下ろしていた。
「・・・友希様・・・いままでこんな事に直面してたなんて・・・」
瑞穂にとって、いつに無く友希の背中が大きく見えた瞬間であった。

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いつに無く、シリアスなものを書いてみたり、いきなりここに登場したりと迷惑をおかけしてしまった
かもしれませんが、はじめましての方、お初で御座います。神代友希と申します。
今回は、DOUBTという新シリーズを始めてみました。
頭でもいいましたが、今回は100%ギャグなしで行きます。
久々にシリアスなんで、作者も頭抱えてやってます。
逃げ道が無いって難しいよね・・・

さて、次回予告を少し・・・

瑞穂は、マディスティングの目的を調べる為、神殿内の図書館にこもる事になります。
そして、友希が本部へ出発した後におこる事件。
マディスティングの受けた命令を解析し終えて一人苦しむ事になる瑞穂は・・・

と、書く予定の内容を書いてみました。
一応、読んで下さった方の感想等まってます。
それでは、また次回にでも・・・