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9078荒涼の延長1CANARU E-mail 3/21-10:36


今回!!
お初のサスペンス!!という訳です!!
一応権謀術が渦巻くスレイヤーズ世界で過去の延長から
事件に巻き込まれるガウリナ・・でっすね・・・。
では・・・。

********「荒涼の延長〜オルランド家殺人事件」*****
「姉ちゃん?あの人込みは?」
「見ちゃ駄目。」
「誰か寝てるの・・・?」
「聞いては駄目。」
「何で・・・?」「アンタは・・・。まだ幼すぎるから。」
・・・・・。良く分からないけど・・・。
忘れられないのは・・オリーブか・・はたまた月桂樹か?
ともあれ・・冠を象った黄金の紋章・・・。
鷲だろうか・・はたまた鷹だろうか・・?双頭の鳥のレリーフ・・。

「・・・・・・・・・・。」
「リナさん。おはようござ・・・すって・・。すっごい顔ですね・・・。」
「・・・・・。ん・・・。なんかさあ・・。アメリア・・。
寝つきが悪くて・・。子供の時の夢見てさ・・。」
今にして思えば・・。あれは何かの事件の現場としか思えない。
もっとも・・あんな時間、すなわち早朝に道端で横たわってるような
人間は行き倒れか酔っ払いか・・・さもなければ・・・と言った所である。
「子供の頃の恐怖体験とかか?」
「ま〜ね・・。」
ガウリイにしてはマトモな質問だな・・と思いながらリナは答える。
「時にアメリア。さっきから何見てるんだ?」
「あ、コレ。ローラン帝国の密使の方からの手紙です。セイルーンにも応援を
たのみたい事があるからって・・。」
「・・・。カルロス皇帝から?」
ゼル、アメリア、リナの順に話が展開する。
「・・・。なあ?ローラン帝国って・・・。」
「あ〜〜もう!!分かってるわよ!!ガウリイ!!『ローラン帝国って何だ〜?』
でしょ!!よっくお聞き!!ローラン帝国って言うのは一応の総称で・・・。
正式に言えば『オルランド家』と言う家が治める二つの国なのよ。
兄のカルロスが統治するのがアスガルズ・オルランド家。そして・・。
弟のフェルディナントが統治するのがヘルム・オルランド家よ。その権力は
絶大。何せ、カルロスとフェルディナントは母方の祖父にアスガルズ国王フェルデナント、
父方の祖父にマクシミリアン皇帝と言うとんでもない血筋の王族なのよ。」
「良く分からんのだが・・。あのさ・・。リナ。俺の言いたかった事中断してまで
俺の頭を混乱させたいのか・・・?」
何だ・・。
ガウリイの質問ってこの国のことじゃなかったのか・・・。
「リナ。いくらガウリイがクラゲでも。これだけ有名な国の名前ぐらい知ってると
思うが・・。」
ゼルがアッサリと突っ込みを入れる。
「でさ・・。俺が言いたかった事。傭兵やってたとき初めて遭遇した事件だから
覚えてるんだけど・・。ローラン帝国って・・・。」
・・・一時期・・密使が次々に殺害された・・と言う曰く付きの帝国・・・。
「どうやら。つい最近もまたこの帝国の密使が姿を消した・・との事です。」
「なるほど・・。まあ、密使と言うのは常に最新の情報、国家の秘密を握っている
存在だし・・・。」
暫く考えてリナは言う。
「ねえ。アメリア。オルランド帝国の家紋って・・・。」
「あ、はい。オリーヴの冠に・・双頭の鷲ですけど・・。それが・・・?」
「いや・・。ちょっと・・・ね・・・。」
子供のとき見た・・あの紋章・・。真坂とは思ったのだが・・・。
「リナ=インバース様は・・いらっしゃいますか!!?」
不意に辺りからリナを呼ぶ声があがる。
「アタシですけど・・。何が?」
どうやら。この店の店員か経営者らしいのだが・・・・。
「すみません!!至急ロビーまで起こし下さい!!」
様子が尋常ではない・・。
「おいおい。いくらなんでも。訳も話さないで無粋だろ?」
リナの困惑を見越してだろう。ガウリイが横から口を挟む。
「誰かリナさんを呼び出してるんですか?だったら。その方にこっちに
来てもらったら如何です?」
アメリアも不満げな口調で言う。
「そうは・・・。いかないんです・・。彼は・・どうしても貴方にお伝えしたい
ことがあると・・。しかし・・・・・。」
「・・・・。分かった、行くわ。アメリア。一応ついてきて・・。」
予感が正しければ・・・・・・・。


「・・・リナ・・=インバース・・様・・ですね・・・。」
「ええ。」
手負いの・・旅人に身をやつしているが・・その目の輝きや口調、物腰は
只者ではないこの男・・・。
もっとも今は・・致命傷とまでは行かないがかなりの手負いの傷をおっている。
「私は・・・・・。」
言いながら何やらゴソゴソとマントの中から勲章を持ち出す。
「・・・・。アスガルズ・オルランド家の紋章じゃないですか!!」
不意にアメリアが大声を出す。
「貴方を・・探しておりました・・。リナ様・・・・。
『群青の名簿』に記名されていませんでしたが故・・。苦労致しました・・。」
苦笑しながらその男は言う。
「そりゃ〜ま・・。そうでしょうね・・。じいちゃんは・・。『屈辱でしかない』
とかいって拒んだんですって?自分の名前を『バスタルドの名簿』・・・。
別名庶子名簿に名連ねるのを・・・・。」
「・・・・。リナ・・・さん・・・?真坂・・・。」
「ご名答。アメリア。アタシのじ〜ちゃんはね、カルロス皇帝の祖父、フェルデナント国王
の私生児だったらしいのよ。ま、もっとも本人はそんな身分がイヤだったらしくて。
さっさと10代の後半に家出して商売をゼフィーリアで始めたみたいだけどね・・・。」
そう・・・。
少なくとも・・そんな理由で今回の事件には自分自身も関わっているんだ。
リナはそのとき痛感せざるえなかった・・・。


「今回の一件・・・。5年前の事件が絡んでいるとは思えないか?」
不意にゼルが思い出したかのように言う。
「5年前の事って・・・・・?」
「カルロス皇帝と言えば・・。忘れては成らないとんでもない事を一つやらかしている。」
5年前・・忘れては成らないとんでもない事って・・。
「真坂とは思うけど・・。『アダージョ略奪』の事?」
不意に思い出したかのようにリナが言う。
「ああ・・・。カルロス率いる一軍が・・。というよりも無法者の傭兵が・・・。
永遠の都とまで歌われたアダージョ王国に攻め入り・・・。全てを破壊し尽くした
あの大事件だ・・・。」
「・・・。確か・・。アダージョ軍の総司令官・・・。『黒隊のジョン』とかいう
軍人の隊長が戦死した大事件でしたよね?」
アメリアが更に口を挟む。
「ああ・・・。そんなこんなで・・・。カルロス皇帝の権勢地図と・・・。
この暴挙。さらにいえば・・・・。リナがその血を引いているとも成れば。利用価値は
誰にでも・・あると言う事だ・・・。」
静かにゼルが告げる。
「・・。つまり・・。アタシは丁度良い『ダシ』って事?」
「だけならまだいいがな・・・・。」
不意に真面目な口調でガウリイ・・・・。
「ガウリイ・・・???」
「今まで関係無いと思ってたから言わなかったけど・・・。
俺は5年前・・・。そのアダージョ略奪に傭兵として参加してたんだ・・・。」
不意にガウリイが吐き捨てるような口調で言う。
「・・・・。ま、そんな所だとは思ったけど・・・?」
もともとガウリイはそんな職業に過去形とは言えあったことは事実だし。
あの大規模な略奪・・戦争に参加していても不思議は無い。
「じゃあ・・。その名将・・・。『黒隊のジョン』を斬ったのが俺だ・・・。
という事実も『そんな所』か・・・?お前のことをカルロスは調べ済みなら・・・。」
「・・・。無論。アンタの名前も浮上してくる・・ってわけね・・・。」
どうやら。今回の事件は一筋縄ではいきそうにない。
リナ自身にしても自分のカルロスにとっての利用価値・・・。
更に言えばガウリイの利用価値もまったくもって見えてこないのだ・・・。


「リナ・・。何処にいこうって言うんだよ?」
朝からけたたましいガウリイの声が聞こえる。
「リナさん・・・?」
不意に現れたリナは旅人の服装こそはしているものの・・。
何時もの魔道師の姿ではない。
「悪いわね。みんな・・・。これからアタシは単独で・・・。
カルロスの国に調査に行こうと思うのよ。」
インバース家・・発祥の地へ・・・。
「危険です!!道中何があるかわからないんですよ・・。それに・・・。」
ここまで来てアメリアは口篭もる。
「まね。カルロス自身もその弟のフェルディナントも・・・。
アタシを何かに利用しようとしている事は疑い無いわ。それに。その企みが
露見すれば。カルロスに敵対する国家の君主は黙っていないでしょうね。」
そうとしか言いようが無い。
「なら・・。せめてあたし達も・・・。」
「アメリアは顔が知られているし・・。ましてや黒隊のジョンを倒した
張本人のガウリイが行けるわけ無いでしょう?ゼルだって調査で名前が知られてる
筈だよ。」
抗議の声が出る前にリナは押さえ込む。
「・・・。おまえなあ・・・。」
「誰が『ついてくるな』って言ったの?」
何かを言おうとするガウリイより先にリナが言ってのける。
「は・・・??」
「ど〜せ駄目って言ってもみんなついてくるんでしょ?カルロスは確かに大国の
君主だけど・・・。いかにせん諜報には力を入れてないみたい。見つからない様に
ついてくるのね!!」
かくして・・・・・。何時しかの使命手配事件の時よろしく・・・。
リナを先頭に、他3人は少々距離を置き・・ローラン帝国君主・・
カルロスのもとに旅立つのだった・・・。


「このヤロ!!何しやがるんだ!!」
旅に付きモノのならず者に絡まれるのは・・・。
やっぱりちょっと小柄な男装に身をやつしているからだろうか・・・?
リナはそう思いながら溜息をつく。
「ばっかじゃね〜〜の?てめぇ、ウザイんだよ!!俺の前からとっとと消えな!!」
姉にこんな言葉使った事がばれたら・・・殺されるだろうな・・・。
ガウリイですらこんな罵りを人に向けた事は無いし。
ま、悪人に人権は無いので関係成しとしよう。
そう思いながらリナは完全に少年になりきる!!
「このくそがき!!」
言いながらならず者の一人がリナに向かって討って掛かってくる!!
が、遅い!!
そんな行動予測済みであったリナはさっさと身をかわし・・・その時であった・・・。
「あ・・・・・・。」
目深に被っていた帽子がふっと頭から落ちる・・・。
「あ!!」
不意にならず者が色めき立ち・・・・・・・。
「し!!失礼しました!!」
不意に土下座をするもの・・懇願をするもの・・・・・。
「何なの・・・?一体・・・・?」
「俺が出てきたからじゃね〜か・・・?」
不意に後ろから聞こえる・・何時もの声・・・・。
「・・・ガウリイ・・・。」
何時のまに背後にまわってきたのだろうか・・・・??
「あなたは・・。『黒隊のジョン』を斬って捨てた・・・・。」
「ま〜〜な・・・。」
どうやら・・。このスジの連中には自分の名前は有名になってしまったらしい。
「迷惑な話だよなあ・・・。」
そう思いながらガウリイは明後日のほうをみやる。
「実は・・。我々にも一つ気にかかっていることがあるんです・・・。
それを・・。偶然とはいえ出会えた貴方に告げるべきでしょう・・・。」
不意に首領格の人物がガウリイに向かって告げる。
「何だよ・・・?」
「『黒隊のジョン』に一人息子がいるのは・・・。ご存知ですか?」
「・・・・。確か。コジモとか言ったかしら・・?アタシと同い年だと聞いたから・・。
十代を半ばチョット過ぎたくらい・・・ね・・・。」
ちなみに・・・。
彼はカルロス皇帝に狙われている共和国の一国、バイレロ共和国
のかなりの権力者だというが・・・。
「あくまで彼の家はバイレロの共和国でもかなりの家系です・・・。
しかし・・。その彼を滅ぼして・・。カルロスは自分に都合の良い
大公をバイレロに押し付け・・・。」
「自分の属国にしようと企んでいると言う事・・?」
「リナ・・・・。ど〜ゆ〜事だ・・・?」
まったく・・。この男には緊張感というものは無いのか!!?
「つまり!!近いうちにカルロス、フェリディナント兄弟が治める
連合二カ国と・・・。バイレロ共和国が戦争するかもしれないって事!!」
「な・・・・・・・???」
ようやっと事態の重さに気づいたらしいガウリイ・・・。
「そこで・・。我々がし入れた情報ですが・・・。黒隊のジョン
の息子・・コジモは・・・・。カルロスの傭兵として名高かったガウリイ=ガブリエフ
と・・・・・。カルロスが探し出している・・・。自分の手駒になる・・・。
強いて言えばカルロスが大公に仕立てあげようとしている人物を殺そうと・・・・。
しているそうです・・・。」
なるほど・・・。コレで話が少しは読めてきた。
「リナ・・・・。」
「ええ・・。ガウリイ。」
カルロスが・・手駒に用いようとしているのは・・・。
少なくとも彼らの『オルランド家』の血を引いている・・・。
リナであることはまず疑いようも無い事実だった・・・。

(続けば良いなあ・・・【汗】・・・。)




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9088荒涼の延長2CANARU E-mail 3/21-23:42
記事番号9078へのコメント

〜〜〜〜〜オルランド家殺人事件〜〜〜〜〜


「リナさん・・。これから如何するんですか?」
困惑こそはしていないものの。このままではカルロス、フェルディナント率いる
オルランド家のニ国家・・すなわち
兄のカルロスが統治するのがアスガルズ・オルランド家。そして・・。
弟のフェルディナントが統治するのがヘルム・オルランド家とバイレロ共和国との
戦争は必然である。
「まあ・・・。バイレロ共和国がリナを大公にする事を受け入れればノープロブレム
なんだろうが・・・。」
考え込んだ口調でゼルが言う。
「馬鹿言わないでよ・・。カルロスの手駒になんかなるつもりは毛頭無いわよ。」
困りきった調子でこちらも言うリナ。
「ま・・。俺としても・・。リナを大公になんかすることは賛成しかねるしなあ・・。」
ガウリイの一言にリナも頷く。
「ともあれ・・。これから予定を変更してアスガルズ王国行き取りやめて今から
バイレロ共和国へ行こうと思うわ。ただ・・・。」
「私達が到着してる頃には・・。カルロス皇帝の軍団と包囲戦になっているかも
しれませんね・・・。」
「大丈夫よ。アメリア。アタシが捕まらない限りカルロスもそんな無謀なまねはしないと思うわ。」
第一「大公」になるリナが居なければ話にはならない・・・・。


バイレロ共和国・・・・。
かの黒隊のジョン・・かつて全世界を震撼させた恐るべき勇将・・・。
その彼が名も無き傭兵の少年に斬って捨てられて戦死したのはつい数年前の事。
しかもそれがガウリイだったとは・・・。
そんな思いを持ちながらリナ達は共和国に入国する・・・。
「ジョンの息子、コジモはこの共和国第一の権力を持つ家系・・メディシス家の
モノだと聞いています。」
アメリアがふとガイドブックを持ちながら言う。
「ソイツが・・。俺の事を恨んでいるって訳か・・・・。」
さしものガウリイも困ったような様子を声から隠しきれない。
「・・・・。あの人だかり・・・。様子がおかしいわね・・・・。」
不意に眼中に飛び込んできた人だかりにリナは思わず駆けよって眺める事にする。
「どうする・・・?」
「行ってみるしかないだろ・・・?」
仕方なくリナの後ろに続く残り3人・・・・。


「・・・・・・・。」
「リナ・・・・。」
「・・・。大丈夫よ。ガウリイ・・・・。」
黄金の双頭の鷲が・・毒々しい光を放つ。
「リナさん・・・。この人・・。オルランド家の重臣の紋章をつけてます・・。」
アメリアがリナの見据えていたものを・・(流石に指差すのは気が退けたのか)顎を
少々前に出しながら示す。
「・・・。カルロスの刺客の仕業だろうか・・・?」
「・・・・。分からないわ。ただ言える事は・・。数年前・・・。
ゼフィーリアで起こった奇妙な事件と同じ手口だわ・・・・・。」
そう。下手人は同じ手段を用いて同じ犯行を何年後かの今再度起こしたのだ。
「一体・・。何の目的で・・・?」
「さあ・・・ね・・・。」
そうとしか言い用が無い・・・・・。


「アメリア!!ゼル!!リナを知らないか?」
その日の夜半の事。退屈だったのでロビーでカードゲームに興じていた
アメリアとゼルのところにガウリイが現れたて尋ねたのはその時であった。
「・・・。ど〜せ盗賊イジメじゃないんですか?」
何時もの事・・とでも言うような口調でアメリア。
「・・・。あのなあ・・・。アメリア。市内の城門は一定の時間を過ぎると閉められる
くらい治安維持に慎重なこの共和国でかあ?」
何時ものガウリイらしくない・・もっともな答え・・・。
「じゃあ・・。置き引きイジメとか・・・。」
「あのなあ・・。アメリア・・。リナがそんな端金にしかならんよ〜な悪党苛める趣味・・。
在るといえばありそうだが・・・・。こんな時にするか・・・?」
「そりゃまあ・・。確かに。けど・・・・。」
ここまで言ってアメリアの言葉が不意に止まる・・・。


「まったく、噂で聞くほどの手間も掛からなかったなあ・・・。」
その人物は言いながらリナを退屈そうに連行して行く。
「おっちゃんも大変だねえ・・・。ま、アタシの噂がど〜流れてるか知らないけど。
大方の検討はつくわ。それより・・。やっぱり牢や行き?」
「いや。恐らく・・軟禁ないしは幽閉程度だと思うよ。お嬢ちゃん。」
「そりゃありがたいわ。」
そう・・・。今リナはアッサリとメディシス家・・強いて言えばコジモの放った
人間に捕まったのだった・・・。
しかも『ワザト』。
やる気の無さそうな牢番がリナを簡単に連行して行く。
さしあたり。コジモのところに連れて行かれる事は確実であろうが。
彼には聞きたいことが沢山ある。
そのためにはワザト捕まったフリをしたほうが心理的に殴り込みをかけるよりも
聞き出す事が可能・・というメリットが在る。
「ま、汚い所に入るんじゃなくて安心したけどね。」
こればかりは半分以上本音なのだが・・・ね・・・。


「リナは捕まったとしか考えられないだろ?」
『ワザト』とまで考えてもいないガウリイはイヤでも口調を荒くしてアメリアとゼルに言う。
「わかりました・・。あのリナさんが捕まるなんて今一つ信じられませんけど・・。」
「ガウリイにかかっちゃ・・・。ったく・・。」
ゼルとアメリアも仕方なしに『同意』の態度を示す。
「じゃ・・。そう言うわけで・・。メディシス宮に行きますか!!」


「何?何か良いにおいがするけど?」
「・・・・。ああ、特産の『紫のバラ』の香りですよ。」
軟禁された部屋の一室。不意に香った香料のにおいと・・・。
物腰の柔らかな一人の青年の声にリナは其方のほうを眺める。
年の頃ならリナと同じ位か・・。だが、酷く態度や動作が大人びている。
威厳が在る態度や軍人のような体格からして・・・。
「あんたね。黒隊のジョンの息子の・・。メディシス家のコジモと言うのは。」
この物腰から考えてまず間違える事は無い。
もっとも・・「本当にアンタはカルロス・・オルランド王家の血を引いているのか?」
くらいの嫌味を言われる事をリナは覚悟する。
生憎と王侯貴族のような気取った物腰だけは持ち合わせていないことは自覚している。
もっとも・・世の中には・・・・(あえて・・以下略・・・・。)な王位継承者も居るのだが。
「カルロスの親類にあたる・・。リナ=インバースさんですね?」
若者・・コジモはさしたる嫌味でもない口調でサラリと言ってのける。
「へえ・・・。何か嫌味の一つでも言われるかと思ったけど・・・?」
その挑発の言葉にちらりとコジモはリナの顔を一瞥する。
「いいえ、合えて何も言いませんよ。カルロスは・・・。分家スジの弟フェルディナント
以上に無教養な男だ。」
「・・・。そ〜りゃ・・手厳しいわね。」
「嫌味と受け取らないで頂きたい。貴方とは似ても似つかないことをあえて痛感している。」
あ・・そりゃど〜〜も・・・。
しかし、あえてここでどうこう言うつもりは毛頭無い。
「単刀直入に言いましょうか?数年前の事は知らないけど・・・。
何故アンタはカルロスの使者を・・・殺害させたの?何か。アタシに知られてはならない
事でもあったのかしら?」
「・・・何を・・・」
コジモが言いかけたその時だった・・・。
「リナ!!」
不意にリナの名前を呼ぶガウリイの声と・・・ドアを突き破るけたたましい音がする。
「ガウリイ!!」
「リナ!!無事か!!?」
人の顔を見るなりこの一言である・・・。アンタのせいで聞きそびれたことがあるってのに・・・。
「おい・・。貴様・・・・。」
あの強敵・・・黒隊のジョンの息子・・・・。
「貴方は・・。あのアダージョ略奪事件のとき・・。カルロスの軍勢に居た傭兵・・・。
ガウリイ=ガブリエフさんですね・・・。」
不意にコジモが挑むような目つきでガウリイに言う。
「ああ・・。だがな・・。リナを・・関係の無い人間を攫うような奴に非難されたくはないな・・。」
怒りを押さえたトーンでガウリイがコジモに言い返す。
だが・・・・。
「貴方との勝負は・・。何時かつけることにすますよ・・。私も貴方も・・。
そしてリナさんも・・。カルロスに狙われている事には変わり在りませんしね。」
「何を・・・・・。」
自分もカルロスに狙われている・・・?
その事実が訳の分からない思いをガウリイに与える。
「ガウリイが狙われてるって。あんた・・ど〜ゆ〜事よ!!カルロスの家臣同様・・・。
復習目的でアンタが狙うっていうなら・・。話は分かるけど・・・。」
そう。
昼見たあの人だかりだった事件同様に・・・ね・・・。
コジモの顔をにらみながら言うリナ・・。さらにその半歩前にはガウリイが剣に手を
半分ばかりかけ・・やおらコジモに向かって駆け出す!!?
「ガウリイ!!」
リナの声よりもガウリイの動作のほうが僅かながらに速い!!
だが・・リナの予想は見事に裏切られた・・・。
「ふ・・・・・・・。」
緊張しなくては行けない場面だと言うのにわずかに脱力感がする。
態々ガウリイが丸腰の相手に攻撃を行き成り仕掛ける・・などという卑怯な真似は
するはずが無い。
「リナさん!!」
「分かってる!!」
アメリアの言葉に応じてガウリイの援護に回るリナ!!
刺客は・・・一人だが剣の腕ならガウリイと互角・・・?
援護にこそ回ったもののなかなか下手な手出しは出来そうも無いっか・・・。
「は!!」
やおらガウリイが刺客の顔を覆ったフードを切り裂き・・・・・。
「・・・・・・・・・・・。リナを・・。何で狙ったんだ?」
どうやら。ガウリイが食いとめていたから気付かなかったが。ねらいはリナだったらしい・・・。
「上からの命令だろうな・・。」
ゼルがその方向を見やりながら言う。
「でも・・・。何のタメに・・・?」
アメリアも困惑を隠せない様に言う。
「待て!!」
不意に逃げ出した刺客を追いにかかるガウリイ・・。だが・・。
「ガウリイ!!待ちなさい!!今は深追いは禁物よ!!」
「く・・・・・。」
リナの制止に仕方なくガウリイは立ち止まる事になる。
「どう言う事なの?コジモ・・。あの男・・・。まあ・・。100歩譲って・・。
『侵入者』だった事は認めるわよ・・・?」
何故・・。カルロスの家臣の紋章をしていた男が・・・。
カルロスが『大公に』と望んでいるリナを殺そうとしたのか・・・?疑問が生じるのは
無理も無い。
「・・・。誤解があったようですね・・。」
不意にコジモは汗を拭いながら答える・・・。
「カルロスは・・。私の従兄。と言っても出生も定かではない男を自分の娘と
結婚させ・・・。この共和国の大公に・・と望んでいるんですよ・・・。」
ちょっと・・待て・・・。
「じゃあ。アタシやガウリイが狙われる理由は無いじゃないの?」
こればかりは困り果てた口調でリナ。
「いいえ。この従兄にあたる男・・・・。」
ここまで言ってコジモは言葉を詰まらせる。
「知ってます。アレサンドルさんでしょう?評判の悪い人です。」
アメリアが口を挟む。
「なら・・。そんな評判悪い人物を大公にするのは・・。と言う声も起こるわけだ。」
ゼルが考えながら言う。
「それが・・・。アタシとガウリイと・・。何の関係があるのよ!!」
更に苛立ちながらリナ。
「単刀直入に言いましょう。ガウリイさん・・・。貴方は貴方の剣術の腕を恐れられ・・・。
カルロスに狙われている。そしてリナさん・・・。カルロスのアレサンドルの後援に反感を
持つ家臣は・・。『貴方を大公に』と言う考えを持ったのです・・・。それを・・・。」
「・・・・。カルロス自身が・・・抹殺したのね・・・・・??」
そうとしか考えられない・・・。
「どうする・・・?リナ・・・・。」
「決まっているわ。ガウリイ・・・。」
オルランド家の本拠地。アスガルド王国へ・・・・。
それが・・これからの目標である・・・。


(続けば・・続きます・・・・。)

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9089ゾロゾロ〜♪P.I E-mail 3/22-00:18
記事番号9088へのコメント

CANARUさん、こんばんは!
うわぁ〜〜〜!知り合い(一方的な)の名前がゾロゾロと!!(^0^)
そのうち出てくるかな〜シシィとかカテリーナとかチェーザレも♪
今回ガウリイくんが珍しく冴えてる!
リナ絡みだし、それに・・・傭兵時代の暗い記憶は忘れたくても忘れられない
ものなんでしょうか。
5年前、すでに陰謀の種は蒔かれていた!事件の根はまだまだ深そうですね。
久しぶりに長編になりそうですけど、最後まで頑張って書き上げてください!

余談ですけど、今「王妃マルゴ」読んでます。「三銃士」より色っぽい・・・
不倫が当たり前だなんて、まったくフランス人ってのは・・・(^^;)

それではまた〜!!



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9100やっぱり知り合い〜♪CANARU E-mail 3/22-10:43
記事番号9089へのコメント

>CANARUさん、こんばんは!
>うわぁ〜〜〜!知り合い(一方的な)の名前がゾロゾロと!!(^0^)
はい〜〜!!
やっぱり塩野さんの話を参考にしていると!!
出てきて欲しいです!!知り合いが沢山!!(やっぱり一方的・・・。)
>そのうち出てくるかな〜シシィとかカテリーナとかチェーザレも♪
あ、それ!!良いです!!
一応陰謀の結末はもう既に考えてあるんですけど・・・。
途中のエピソードで彼らが出てくるのも悪くないです!!
>今回ガウリイくんが珍しく冴えてる!
ですね〜〜〜!!
書いていて別人格になりそうで・・怖いです〜〜(汗)
>リナ絡みだし、それに・・・傭兵時代の暗い記憶は忘れたくても忘れられない
>ものなんでしょうか。
ですねえ・・・。
この辺りは結末編でもう少し詳しく書きますね〜〜〜!!
シリアスな話だけにあの「銀髪」のお方が出せなくって
欲求不満状態な今日この頃・・・(汗)
>5年前、すでに陰謀の種は蒔かれていた!事件の根はまだまだ深そうですね。
>久しぶりに長編になりそうですけど、最後まで頑張って書き上げてください!
はい!!
なるべくはやく書くようにしますね〜〜〜!!
最初は一話完結予定だったんですけど・・だんだん伸びてきて(汗)
>余談ですけど、今「王妃マルゴ」読んでます。「三銃士」より色っぽい・・・
>不倫が当たり前だなんて、まったくフランス人ってのは・・・(^^;)
ですねえ・・・。
しかもビデオで主役のマルゴを張った女優のイザベラさん!!
40代だなんてビックリデス!!
>それではまた〜!!
ではでは〜〜〜!!

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9106荒涼の延長3CANARU E-mail 3/22-22:31
記事番号9078へのコメント

ふう・・・。
よ〜〜やっと完結編になりました〜〜〜!!
しっかし・・オチがど〜〜もなあ・・でゴメンナサイでっす!!
サスペンスはお初なのでええ〜〜(汗)
では・・引き続き・・。
〜〜〜〜〜〜オルランド家殺人事件〜〜〜〜〜〜
「この物々しさは何なんですか?」
アメリアらしくも無い質問だとリナは思いながら・・・。
「このアスガルズ王国の国王・・カルロスの弟・・。ラグナ国の王・・。
フェルディナントが表敬訪問しているらしいのよ。」
どうせ。兄弟同士の野心の話であろうがね。
「これで・・・。リナが幼い頃に目撃したと言う殺人事件と・・・。
この前のバイレロ共和国の殺人事件の真相がわかる・・と言う訳か。」
「だと良いんですけど・・・。」
ゼルの言葉にアメリアが返す。
「ま・・・。これからどう出るかは・・。カルロスとフェルディナント兄弟
次第って・・・。」
言いかけながらリナは通りすがりの人物の腕を掴みかかる。
「慣れない事は。しないほうが良いんじゃないの?」
言いながらその人物・・・長い黒髪の美少女の腕を軽くリナは捻り挙げる。
「あ・・・・・・・・。」
「アタシのお財布。返してくれない?」
少々脅迫地味ているが・・・とりあえず笑顔を見繕いながらリナは言う・・・。

「申し訳ありませんでした・・・。」
その美少女は・・本当に今にも泣き出しそうな声でリナに言う。
「・・・。まあ・・・。リナさんも。脅してる訳ではありませんし・・・。」
困惑しきった少女の前にアメリアもそうとだけ言う。
「なあ・・。リナ・・。俺・・。この人のこと・・見たことあるような・・無いような・・。」
不意にガウリイが声をリナにかける。
「見たことあるって・・。何処で?」
「・・・・。結構昔。え・・と・・。俺は何とも思わなかったけど・・。
傭兵仲間が物凄く騒いだ・・。そ〜〜だ!!アンタ!!『シシィ』とか呼ばれて
なかったか?しかも・・オルランド家の近辺に住んでなかったか?」
「シシィって・・・。」
不意にリナの脳裏に何かの記憶が蘇る・・・。
シシィ・・・・・・。真坂・・・・。
「貴方・・・。カルロス皇帝の娘の・・・エリザベート・フォン・オルランド姫!!?」
「えええ〜〜〜!!カルロス国王の庶出の王女で・・。美貌に名高いあの!!!?」
不意にアメリアまでもがリナの言葉に絶叫する!!
「どう言う事か・・・・。話していただきましょうか?」
そうとだけ・・リナはシシィに告げる・・・・・・・・。



「お願いです!!チェーザレを・・。私の従兄を止めてください!!」
人通りの少ない公園の噴水の影。
リナ達四人に不意にすがり付く様にシシィが言ってくる・・・・。
「チェーザレ・・・?」
「えっとですね・・。家系図的に言えば・・。シシィさんの従兄・・・。
んでもってフェルディナント王の息子にあたる方です。」
アメリアが何やら本を取り出しながらいちいち説明を入れる。
「ふぅ〜〜ん・・・・・。」
さして興味を持たないようにガウリイが言う。
「で・・・。何でそのチェーザレさんとやらを・・。止めなくちゃイケナイ訳?」
今度はリナがシシィに聞く。
「・・・・・。私は・・・。近いうちに・・・・。アレサンドルに嫁がねばならないのです・・。」
なるほど・・・。
コジモの言っていたとおり・・カルロスは権力のタメに自分の娘を・・・。
コジモの従兄にあたるアレサンドルに嫁がせようとしていると言う話は本当の様である。
「で・・・・。実は・・・・。」
「大方分かるわよ。貴方とそのチェーザレさんは・・。恋人同士って所でしょ?」
リナの指摘にアッサリと頷くシシィ。
「チェーザレは・・。在る意味悪魔的な男です・・・。」
「そりゃ〜ま・・。恋人がどっかに無理やり嫁がされそうになりゃ〜〜・・。
そ〜だろ・・?」
妙に・・しかも納得顔で論理的に言うな!!ガウリイ!!
「ソレだけではないんです!!あの人は・・・。父上の密使を・・・・・。」
次々に殺して行った・・・・・・・・・。
「どう言う事なんです?リナさん・・・。あの殺人事件は・・・・。」
「ああ・・。お前を大公にする事を企む連中を抹殺するためのカルロスの所業・・。
じゃ無いのか・・・?」
アメリアとゼルが次々に言う。
「知らないわよ・・。そんな事・・。ど〜やら・・・。」
『殺人事件』の真相は・・・。
再度白紙に戻ったのか・・・?それとも自分の所業を隠し『チェーザレ』
に押し付けるためのカルロスの計画なのか・・・・・・。
自体はますます分からない方向へ来た様である。


「まずは、ガウリイ。アンタの出陣した・・。『アダージョ略奪』に事を遡って
考えてみるべきじゃないかしら?」
その日の午後。
リナの不意に発した言葉。
「リナさん!!」
「・・。ガウリイが言いたくないのは分かるわよ。でもね。腑に落ちない点が前から
あったのよ。今回と・・そして前回の殺人事件。それに。もしかしたらガウリイの
出陣した戦いが何か意味があるんじゃないかなって思ってね。それに・・・。カルロスの
出方が分からない限り・・此方としても動きようが無いけど?」
「まずは・・。ガウリイの事よりも。アンタの腑に落ちない点とやらを聞こうか?」
逆に今度はゼルがリナに問いかける。
「単純な事よ。カルロスは絶対君主。例え影にしても・・。いずれは露見する
陰謀・・・。カルロスの以降に逆らってアタシを君主にする・・な〜〜んて
馬鹿なことできるわけないのよね。もっとも・・。ソレが故に殺されたと言うんなら
元も子も無いんだけど・・・。」
「・・・。カルロスタイプの君主の性格からして・・・。
態々『秘密裏』に家臣を・・ましてや紋章をつけたまま殺害するよりも・・。
堂々と公開処刑・・見せしめをする事が必然だと思えますけど。」
セイルーンの王女のアメリアが口を挟む。
「で、ガウリイ。話してくれる?」
「ああ・・・・・。」


「敵兵だ!!」
不意に隊長の声がガウリイの耳の届いた。
あくまで命令を下すのは雇い主の君主・・カルロスである。
が、下っ端の上年端の行かないガウリイがそんな大それた人物を
目の当たりに出来るのはほんの遠巻きでの事。
「誰なんです?敵兵は?」
漆黒の鎧で身を固めた・・・一人の男・・・・。
「『黒隊のジョン!!』敵兵の総大将だ!!」
近くに居た年長の男がガウリイに教える。
「『黒隊の・・・』ジョン・・・・・。」
そうガウリイが呟くのもつかのまだった。不意にその男は向きを変えて此方に
突進してくる!!!???
「は!!」
一瞬の出来事だった・・・。腕に凄まじい衝撃を覚える。
が・・・・・・・・。
それが・・。ガウリイが初めて人を倒した瞬間だった・・・・・・。

「殺してはならない!!捕らえろ!!」
その命令が後方の隊列に伝わってきたときは・・既に遅かったとしか言いようが無い
自体に陥っていた。
その命令が伝わる3倍の速さでその情報は最前列にまで伝わっていた。

『ほんの10代後半のガキが・・・。敵の総大将を倒した・・・』と・・・・。
「お前か・・・・・。」
敵兵の総大将・・ジョンをあくまで『捕らえろ』と命令したその人物・・・。
「あ・・・・・・・。」
気がつくよりも早く・・ガウリイは頬に凄まじい衝撃を受ける。
殴られた・・・と気付いたのはそれからもう暫くたってからであった・・・・。
「お前も生きる為とはいえ・・・。私はこれくらいは・・。お前を罰さねばならない。」
そうとだけ言い深紅のマントを靡かせてその人物は去って行く・・。


「カルロスは・・。ジョンを殺すなって言ったのね?」
「ああ・・・・・。」
重い口調でガウリイがリナに返事する。
「リナさん・・・・。」
そんなガウリイの様子に・・何か声をかけろとでもでも言いたげにアメリア。
「沈んでる場合じゃないでしょ?」
こう言った心理状態の人間にはかけるのに相応しくない一言をガウリイに言い放つ
リナ。
「リナさ・・・・」
アメリアの非難の声が終わるか終わらないかのうちだった・・・。
「そうだな。」
やおら・・力強い声でリナに答えるガウリイ。
「よっしゃ!!それじゃ・・・。チェーザレを探すわよ!!」
それにさらに続くリナ。
「・・・。別にいいですけど・・。何か分かったんですか?」
「・・・・。コジモが知ってるか知ってないか・・・。定かでは無いけど・・・。
少なくともこれらの殺人事件の下手人は・・・。カルロスじゃないわ・・・。
それが・・チェーザレかどうかも定かじゃ無いけどね・・・・。」
考えながらリナはそう呟く。


「リナさん・・・。」
不意に聞こえる見知った声・・。
その夜の事である・・・。何と無く眠れずに宿の庭を散策していたのだが・・・。
「シシィ?」
物陰から現れた皇女にリナは少々驚きながら声をかける。
「・・・父の書類の・・私が書き写してきた写本です・・・。
これで・・。何かわかっていただければ嬉しいのですが・・・・。」
言いながらリナはその書類を借りて読み出す・・・。
「シシィ・・・・・。」
「はい・・・?」
「・・・。チェーザレが・・・。犯人ではないわ・・・。
彼は・・・・・・。で、一つお願いがあるのよ。」
そうとだけ言い・・リナは改心の笑みを浮かべる。

「危険です!!リナさん!!暗殺者チェーザレは貴方の事を狙っているのかも
しれませんよ?」
「アタシがするわけ無いでしょ!!て・・言うか。小柄なアタシじゃ無理よ!!
ねえ・・・ガウリイ・・。ちょっと来て。」
「何だ?リナ・・って〜〜〜ぎゃああああああああああああああああああああああああ!!!!」
ガウリイの絶叫が辺りに響く・・・。

「う〜〜ん。なかなかの出来だわ。」
誰が何と言おうと・・どっかの『貴公子』に無理やり変身させられたガウリイ・・・。
「あ、これも付けなくちゃね・・。」
「リナ〜〜〜・・。勘弁してくれよって・・これは・・・・。」
オルランド家の重臣の付ける・・強いて言えば殺された二人が身につけていたものと
同じ紋章・・・・。
「ただの紋章じゃないわ。チェーザレ・・・。フェルディナント国王の息子と
同じモノよ・・。ねえ、ガウリイ。暫く、『チェーザレ』やっててくれない?」
「へ・・・??」
唐突な申し出にガウリイは困惑する。
「つまり・・。貴方がチェーザレ君に化けて・・・。と、ある男の襲撃を撃退
してもらいたいのよ・・。それで・・・。」
全ては・・解決する・・・・。


「一体全体何なんだか・・・・。」
行き成りこんな動きにくい気取った格好させられた挙句・・・。
『襲撃を受けてくれ』である・・・・。
まったくもってリナの考えは読めたものじゃない。
「そろそろ・・ですね・・・。」
「ああ・・・。」
「ま・・・・。ガウリイなら大丈夫だと思うけどね。」
物陰に潜んでガウリイを眺めながらアメリア、ゼル、リナが呟く。
「来たか!!」
がいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいんんんんんんん!!!!!
不意に聞こえる剣と剣のぶつかり合う音!!
「遅い!!」
言いながらガウリイは動きにくいマントを脱ぎ捨て、刺客の一人に襲いかかる!!
「は!!」
さらに一撃でもう一人の刺客を仕留める!!
「強い・・・・・。」
不意に聞こえる最後方に居た男のささやき声がリナの耳に届く・・。
「あいつが・・・・・。」
ガウリイが他の連中に気を取られているこの隙に・・その人物は逃げの体制に入る!!?
「そうは行くモンですか!!」
言いながらリナの放った一撃に・・・・・・・。
「よっしゃ!!殲滅成功ね!!」
逃げ去って行こうとしたその男はアッサリと倒されたのだった・・・・。


「リナ・・。大丈夫か?」
刺客を全員始末し終わったその後。
「ええ。ガウリイ。全然大丈夫よ。で。コイツが・・全ての現況よ!!」
言いながらリナはその人物の華美な装飾を凝らした帽子を奪い取る!!
「リナさん!!この人!!」
「ええ・・・・。バイレロ公国の大公位を狙う・・・アレサンドルよ!!」

アレサンドルがカルロスの軍勢に家臣の殺害犯、および反逆罪で逮捕されたのは
その日のうちだった。
「シシィ・・・。多分・・チェーザレはアレサンドルの住居の何処かに監禁
されていると思うわ・・。あくまでチェーザレが生きて逮捕されてこそ罪を擦り付けれる
ってモンですしね・・・。」
「はい・・。リナさん!!ありがとうございました!!」
微笑みながらシシィはリナに言う。
「リナさ〜〜ん・・。どうも・・。今一つ話が読めないんですが・・・。どうして
アレサンドルが犯人って分かったんです?」
「・・・。もともとね・・。カルロスが大公に・・と望んでいたのはアレサンドルではなく・・。
アタシだったのよ。それは・・シシィがくれた書類で証明済みよ。」
言いながらアメリアに書類を渡すリナ。
「もともとアレサンドルを大公に・・と望んだのはフェルディナントだったのよ。
理由はわからないわ。けど・・。何処の馬の骨とも知らないアタシより・・・。一応
評判悪くても出生のハッキリしている彼の方を大公に・・と思うのが正統でしょ?
で・・・。」
「カルロスは・・秘密裏にアンタを探そうとしてたって訳か・・・・。」
「まね。でもって・・シシィ欲しさに恋人のチェーザレも抹殺しようとした・・。
30男が良い根性だと思うけど・・・。ま・・息子を殺そうとした奴にフェルディナントも
容赦しようなんて馬鹿なこと考えないと思うけど・・。」
そこまで言ってここでリナの疑惑は真実となった・・と確信する。
「でもよお・・。リナ。なら、何でコジモは嘘なんてついたんだ?カルロスが
お前を殺そうとしてる・・なんてさ・・・。」
その疑問をガウリイが言ってくれた。
「復讐よ・・・。」
くすり・・と笑いながらリナは言う。
「リナさん・・・・?」
「こんな事で・・。フェルディナントがアタシを大公にする事を容認するとは思えないし・・。
そ〜なると・・カルロスも諦めなければならないわ・・・。そこで・・。『大公』に
浮上するのは。誰かしら・・・?」
そう・・・。
アレサンドルと同じメディシス家の血を引く男・・・・・。
「コジモ・・・・さんが・・大公に・・・?」
「ええ・・・。コジモ一世大公・・万歳ね。」
くすくす笑いを堪えながらリナ。
「でも・・。それが『復讐』って・・。どう言う事なんだよ。リナ・・・。」
未だに疑問が晴れないガウリイが更にリナに質問する。
「馬鹿・・。アンタに対する復讐だよ。ガウリイ。大方・・あのコジモお坊ちゃまは・・。
アンタの事を黒隊のジョンを倒した・・・と言う名目で・・。時期大公にと推されるかも
しれないアタシに取り入った俗物と勘違いしたのね。で・・・・。」
自分自身が大公になり・・その野望を打ち砕こう・・などという・・・。
「・・・。ばっかだなあ・・。あの男・・・。」
そうとしか言いようの無い思いがガウリイの頭の中を支配する。
すさまじいまでに下らない復讐。
しかも・・それが帰ってこちらにとっては好結果を生み出すとは・・・。
「ま。俺達は俺達で気楽にやって行くんだろ?リナ?」
「ええ〜。勿論よ!!」
アッサリガウリイにリナはそう言ってのける。
かくして・・まだまだ旅は続くのである・・・。


(お終い)