◆−ROCK STAR(ゼロリナ)−Merry(4/1-23:11)No.9284
 ┗楽園−Merry(4/2-23:36)No.9303


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9284ROCK STAR(ゼロリナ)Merry E-mail URL4/1-23:11


ROCK STAR

死んだら新聞に載るような ロック・スターに



「タイムマシンの被験者?」
「そう、私選ばれたの。来週には出発なんだ。」
「え、じゃあもう、会えないの?」
「……そうなっちゃうかな」
燃えるような赤毛を持つ少女が、隣を並んで歩く同じ歳ぐらいの少女に向かってかなしげに微笑んだ。二人とも白衣を着ている。胸には、研究室の番号と、学科の書かれた名札がつけられている。赤毛の少女の方には、「リナ・インバース 時空工学科」とかかれ、その隣を歩く漆黒の髪を持つ少女の胸には「アメリア・テスラ・セイルーン 地軸学科」とかかれていた。二人とも最先端の技術である時空学について学んでいる。いわゆるタイムマシンという奴だ。この学校には飛び級制度が設けられていて、二人とも若干十代にしてもう院生だ。そして、学部全体で作成したタイムマシンの被験者を募集したところ多数の人数が集まり、数々の試験を潜り抜けた一握りのものたちが、タイムマシンに乗る事を許された。しかし生きて帰ってこられる保証はなかった。
「そんな、リナさんいなくなっちゃうんですか?」
「ごめんね、アメリア。私、自分の作ったタイムマシンをこの目で動くかどうか確かめたかったの。」
アメリアは、泣きそうになるのをこらえてリナと硬く握手した。もう一度お互いに会える事を信じて。そして、あっという間に時間は過ぎ、リナはタイムマシンに乗り込む。




「あの、もしもし?大丈夫ですか?」
優しい声がリナの耳元でした。リナは、そのまま眠っていたかったが何かに突き動かされるような感覚がして、覚醒した。目が覚めると、目の前には端正な男の顔がある。リナがいぶかしげな表情をすると、目の前の男は一歩下がっていった。
「こんなところで倒れて、貧血ですか?」
こんな…ところ?
リナはぐるっと当たりを見回した。周りの様子が自分のいたところとまるで違う。以前歴史の授業のときに見た、昔の町並みだ。
そうだ、私はタイムマシンに乗って……。
「あの、つかぬ事を伺いますが……今はいったい何年でしょうか?」
「1994年ですよ。それが?」
1900年代という事は、西暦がまだ使われていた頃だ。となると…500年ぐらいさかのぼってきた事になる。
リナは頭の中で素早く計算した。
「まだ、顔色が悪いみたいですね。こんな時間じゃ電車もありませんよ。」
夜なんて、この時代には存在していたんだ。
リナが、今更ながらタイムスリップしてきた事を思い知る。
黙ったままであるリナの事が心配になったのだろう、細い切れ長の目を持つ男が、軽くため息を吐いていった。
「僕の家に来ますか?しばらく休んでいた方が良いですよ。僕の家はこの近くですから。」
そういって、リナに手を差し伸べて立ち上がらせようとする。リナはそれに捕まりながら、名前をなのった。
「僕は、ゼロス。ゼロス・メタリナオムです。」
「ギター弾いてるの?」
リナは、ゼロスが背負っているギターをさしていった。
「まだ、デビューしたばかりですけど。バンドを組んでいるんですよ。」
僕の事知らなくて当然ですよね、といってゼロスは声を出さずに笑う。
「そうなんだ、今度聞かせて。」
リナが、行儀よさそうに品よく笑った。
そこから、歩いて10分ほどしたアパートの一室にゼロスは住んでいる。部屋に入ると、ゼロスはリナに適当に座るように言うと、コーヒーを入れ始めた。リナにとってはどれもがアンティークで珍しいものばかりだ。
「どうです?具合の方は良くなりましたか」
コーヒーを渡しながらゼロスは聞いた。リナはコーヒーを受け取りながらあいまいな微笑みを返す。リナは、タイムマシンに乗り発進したところまでは覚えているが、いつ自分がこの時代に降り立ったのか、仲間達がどこに行ったのか全く覚えていなかった。それが少し不安に繋がる。
「まだ、具合悪そうですね。」
ゼロスは自分のコーヒーカップをテーブルに置くと、リナの隣に座り自分の右手をリナの額に置いた。リナは、顔に地が集まってくる感覚に襲われた。鼓動が早くなり、少し息が苦しい。早く離してほしい。しかし、ゼロスの大きくて繊細な手が優しくて、リナはこのままでいてほしいとも思う。
「熱はないみたいですから、このまま休めば明日には治ってますね。」
そっとゼロスがリナの額から手を引くと、リナは思わずその手を取る。二人の視線が交わる。ゼロスが、左手でリナの頬にそっと触れる。そして、お互いの顔がだんだんと近づいていき唇が合わさった。




「え?事故?!」
リナたちが出発して3日経ったある日、アメリアのもとにあの実験が事故により失敗したということのかかれた報告書が届いた。アメリアはそれを渡しにきた、同級生に問いただした。
「そう、どうやら西暦1900年代を航行中に事故が発生して誰一人戻ってこれないそうだよ。音信不通。タイムマシンもどうなった事か……」
アメリアは、まだ説明を続けている同級生の声が酷く遠くから聞こえているような気がした。
「うまく時空間から出てたら、1900年代で生活しているよ」
アメリアが落ち込んでいるのが解った同級生は、そうやってアメリアを元気付けようとした。アメリアは、自分の事を元気付けてくれている事は解ったので引きつるような笑顔を無理矢理浮かべて一人になりたいといって部屋から追い出した。
同級生が部屋から出ていった後、アメリアの目から大粒の涙が零れた。リナから借りたままだった、音楽ディスクが目に入った。
『私、西暦の頃の音楽って好きなんだ、アメリアは?』
『私も好きです』
あれは、初めて会ったときの、初めて具体的に交わした会話だ。お互いに古い音楽を聴くのが大好きで、いろんな話しをした。
『見て、この人素敵でしょ?』
ある日、リナが立体写真を見せてくれた事があった。4人編成の昔はやったバンドスタイルで、今はないジャパンという国のミュージシャン達の写真だ。4人で楽しそうに笑っている写真。リナは、ヴォーカルの人をさしている。
『え〜……私だったらこっちです』
アメリアは、その隣に写ってニヒルな笑いを浮かべているベーシストをさした。
『こういう目つき悪いの、アメリアって好きだよね』
『そういうリナさんこそ面食いじゃないですか!』
リナのさしたヴォーカリストの容姿は、色白で中肉中背。髪の色は当時のロックバンドにしては珍しく漆黒のストレートヘアで、切れ長の目の美丈夫だ。
『この人たちね、ジャパンって言う国ですっごい売れたみたんだって』
アメリアは、自分の手にしている音楽ディスクを見つめた。あの時話したジャパンという国のロックバンドのものだ。リナがこの曲すきだって言ったから、興味を持って借りたんだ。このディスク借りとくから、生きて帰ってきてねといったはずだったのに。
涙は尽きる事が無い。







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9303楽園Merry E-mail URL4/2-23:36
記事番号9284へのコメント


ほぼ、オールキャストのスレイヤーズ小説。
特にカップリングはないです。

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楽園

メンソールの煙草を持って
小さな荷物で
楽園に行こう
楽園に行こう
大きな船で
僕らは大事な時間を意味も無く削ってた
「なあなあ」のナイフで



リナたちは、とある小さな町で1ヶ月近く滞在している。ずっと野宿続きだった所為もあり、離れがたい。それにこの町ではシルフィールが小さな診療所を開いていた。昔が懐かしくて、ずっとここにいる。たまに、町の近くまでやってくるモンスターを倒したり近くを荒らしていた盗賊団を一掃したりいたって平和で、争いの無い生活だ。
シルフィールにいっそのこと定住したらどうかと薦められるほど、住みやすい土地だ。
「リナさん 暇ですね」
名前を呼ばれた少女は、大きなあくびをして声をかけてきた少女の方を見た。
「仕方ないよ、アメリア……ハーブでも取りに行こうか」
「そうですね、今のところその仕事をしないとご飯が食べれませんからね」
リナとアメリアはシルフィールの診療所の手伝いをしている。といっても医学的な事はさっぱり解らないからシルフィールが必要としている薬草を採りに行くぐらいだ。これが結構山奥にあったりして手ごろな運動になる。この、恐るべき退屈な生活を楽しみながらも暇つぶしはそうやって薬草つみにでかける。
ゼルガディスは町でただ一件の図書館で本の整理、ガウリイは日雇いで力仕事ばかりをやっていた。まだ魔力や剣の腕だけで身を立てられない冒険者達がするような仕事をリナたちはしていた。それを何か足りないと思いながらも、初めての経験なのでつい面白くてやめられない。
「魔族たちも、休みかしらね 私の事狙わなくなったし」
「そうですね、いつも意味も無く会いに来るゼロスさんも最近姿を見せませんね」
いつものように町の北側にある山を登る。こんなのちょっと魔法で飛んでいけばどうってこと無い距離だがそれをやると、あっという間に終わってしまい他にやる事が無い上に、運動にもならない。だからこうして、リナとアメリアは並んで自分の足で歩いて山道をひたすら登る。
「……リナさん」
アメリアが言いにくそうにリナの後ろ姿に呼びかける。
「なに?アメリア」
その気配に気がついていないのか、気がついても知らない不利をしているのかリナが明るい声で聞き返した。
「あの……その、なんか足りないって感じがしません?」
「足りない?あんた、まさかもう、お腹が空いたの?」
「違います!ガウリイさんじゃあるまいし」
アメリアの抗議を聞き流して、リナは振り返ると少し寂しげな微笑みを見せてアメリアに言った。
「……わかる……わかるよ 何か、足りないんでしょ?」
アメリアは黙って肯く。



ガウリイは、一仕事終えてバザールで食べ物を買いに行く。その途中で図書館から帰るゼルガディスにであった。
「よぉ、ゼル。今仕事の帰りか?」
「ああそうだ。ガウリイは飯か?」
「一仕事した後は、腹が減るからな。ゼルもなんか食ってこうぜ」
「そうだな」
二人で並んで、バザールを歩いていく。あちこちから良い匂いが漂ってくる。そのなかで、小麦粉を水で溶かしたものを鉄板で焼き、蜂蜜を垂らしたものをガウリイとゼルガディスは買って食べる。
「なあ、ガウリイ。いつまでここにいる気だ?」
「リナが飽きるまでかな」
「俺はそろそろこの町から出ていこうと思う。見たいものはすべてみたしな」
「そうか、アメリア連れて行かないのか?」
ガウリイが何気なく投げ込んだ爆弾は、ものすごい効果を生み出してゼルガディスを直撃した。食べたパンにむせつつゼルガディスが答える。
「なぜそこに……アメリアが出てくる?」
「アメリアの気持ちぐらいゼルだって気がついてるんだろう?セイルーンお姫様が、どんな想いで俺達にくっついてきてるのか考えれば解るじゃないか」
パンを食べながら、ゼルガディスに言う台詞はすごくまともだ。ゼルガディスが呆気に取られながら、言葉を紡ぐ。
「ガウリイも、珍しい事を言うもんだな。」
「たまには言うさ」
ゼルガディスは黙って地面を見つめる。
「なあ、ゼル。こういう生活なんか足りないと思わないか?」
「食欲か?」
「違う!……そうじゃないんだ…ただ、何かが違う気がしてな」
ゼルガディスがにやりと、声を出さずに笑う。
「俺もそう思う時がある。こういう生活は性に合ってないのだろうな」
ゼルガディスは最後の一口を口に入れた。




夕食になり、いつものように宿屋の一回にある食堂に4人そろって食べに行った。そこでまずゼルガディスが、明日の朝ここを出る事をみんなに告げる。それを聞いたリナとアメリアは笑い出した。
「なんで、わらってるんだ?」
少し不愉快そうにゼルガディスが聞き返した。
「だって、思った通りだったから。私達もね、そろそろこの町でようかと思ったんだ」
ね、とリナがアメリアの方に向かって言う。
「そうですよ。どうせならまたみんなで行きましょうよ」
「本当に俺達って気が合うなぁ」
お茶を飲みながらガウリイがいった。
「そうだな」
珍しい事に、ゼルガディスが優しい笑顔をほんの一瞬だけ見せる。仲間内だけにしか見せない本当の笑顔。
「でも、シルフィールさんにはなんていいましょうか?」
「……会うと別れ辛くなるから、黙って出て行こうと思うけど」
「そんなの悪です!……といいたいですが、確かに辛いですよね」
「シルフィールに気がつかれないように、明日の早朝出るとしよう」
ゼルガディスの提案にみんな賛成した。



前の晩にあらかじめ宿代を払っておいたので、まだ誰も起きていない時間にリナたちは旅支度をして慣れ親しんだ宿から出た。町の出口まで誰にも会わずに来たが、町の出口に人影がある。
リナが目を凝らしてその人物を確かめる。
「シルフィール!」
「もう、黙って出て行くつもりだったのですね!!」
シルフィールがいつに無い剣幕で、仁王立ちしてリナたちを見つめる。さすがのリナも少したじろいでいる。
「だってね、別れ辛かったから」
リナがシルフィールから視線をはずして、照れているのか強い口調で言った。
それを聞いて、シルフィールがいつものように太陽のように鮮やかな笑顔を見せる。
「わかってます。それに、リナさん達がそろそろ旅に出る事も気がついてましたから」
「シルフィール……」
リナたちが、驚いたようにシルフィールを見つめる。どこか沈みがちな雰囲気が漂う。
「もう、そんなに落ち込まないで下さい。私、この町で待ってますから。また遊びに来て下さいね。」
「また、いくよ」
リナはシルフィールと握手すると、そのまま手を朝日の方に向ける。
「野郎ども行くわよ!世界中の珍味を食するために〜!!待ってなさいよ〜」
リナの叫び声と、仲間達の声援が朝日の登りかけた空に響いた。


赤い夕日を浴びて黒い海を渡ろう
そしてはるかなあの自由な聖地へ
ひとりきりもいいだろう ふたりだけもいいだろう
猫も連れていこう好きにやればいい
いつか僕らも大人になり老けてゆく
MAKE YOU FREE 永久に碧く

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引用/The Yellow Monkey 「楽園」