◆−もっと強く生きられる? きっと夢は叶う? #15−浅島 美悠(4/6-18:10)No.9398 ┣ハーメ○ンの・・・−おどる猫(4/7-20:00)No.9412 ┃┗Re:ハーメ○ンの・・・−浅島 美悠(4/8-09:31)No.9419 ┗もっと強く生きられる? きっと夢は叶う? #16−浅島 美悠(4/8-13:07)No.9426
9398 | もっと強く生きられる? きっと夢は叶う? #15 | 浅島 美悠 | 4/6-18:10 |
ザァ──…。 「くすくす……。ゼラス様のお部屋に飾られた、ゼルガディスさんにそっくりですね…」 ゼロスが小さく笑いながら、十字架に磔にされた少女を見やる。 「さすがに、釘で手足を穿つというのは綺麗じゃないので、鎖で縛りましたが…。 お似合いですよ? 裏切り者さん(はぁと)」 無言。 怒りも悲しみもない。覇気のない虚ろな瞳で、水晶を見つめる。 「魔力も封じました。さすがのあなたも、父親を盾にされてはなにもできませんからね。 とはいっても……観客が僕だけとは…少し悲しいですが……」 困ったように頬をかくゼロスの言葉を脳裏に。 リディスはぼんやりと、水晶を見つめ続けた。 ────…………。 ゼルガディスの水晶と………魔血玉(デモンブラッド)の…タリスマン…。 父と……母…。 ………私は……どちらからも捨てられ………。 助け、ること…も………できなかった……。 ゼラスを倒すことも…できずに………。 ふ、と自嘲気味のため息がこぼれる。 いいのだ……私など…。し……。 刹那。 「魔風(ディム・ウィン)!!」 ごおっ! 「リャアァァァ!!」 バキィィィィィィッ!! 元気な掛け声と共に、ゼロスの身体が吹っ飛んだ。 「なっ…?」 「今です!! ゼルガディス様! レインさん!」 アミエラの声をきっかけに、ゼロスに踊りかかる二つの影。 「崩霊裂(ラ・ティルト)ォォォォ!!!」 「はぁぁぁぁぁ!!」 青白い火柱と、空色の旋風が、ゼロスの身体を包んだ。 ザァ──……。 雨の中、そこだけ時間が止まっているようだった。 「やった……か?」 ゼルガディスが呟く。 答える者は、誰一人いない。 手応えはあった。 魔風でアミエラを『飛ばし』、ゼロスに不意打ちを食らわす。 そして、そこからレインとゼルの総攻撃── だが……こんなにあっさりと…行くものだろうか? ぱちぱちぱち…。 「いやぁ。お見事ですよ、みなさん」 背後で、のんびりとした声がした。 「そんな! だって……」 リナがもう一度光を凝視する。 火柱の中にあったもの。 それは…蒼い──透き通った…水晶。 「あ………」 目を閉ざした青年。多少の違和感はするが……そこに在るのは……。 「ゼルガディス様…?」 「はいそーです」 瞬時にして、水晶の隣に移動するゼロス。 「この水晶は獣王様の一部でもありましてね。そう簡単には砕けませんよ……まあ」 ちらりとリナに一瞥を送って付け足す。 「あの方の呪文……神滅斬(ラグナ・プレード)ぐらいなら…できるかもしれませんが……」 くすくすと笑みを漏らす。 「よかったですね。観客が増えましたよ? リディスさん」 !! 鎖で縛られ…十字架に、少女はその身を任せていた。 「リディス…」 獣将軍(ジェネラル)リディス。 ゼルガディスとリナの娘。 親子──── 「ゼラス様が言うには、裏切り者は公開処刑を、とのことでしたけど…。 僕以外誰も居ないものですから、少し淋しかったんですよね〜」 その言葉を合図にしたかのように、リディスの周りに、黒い錐が数本出現した。 「リディス様!!」 レインが叫ぶ。 錐が、少しずつ全身に食い込んでゆく。 「ああぁぁ!!」 「っ! よくも!!」 従者は己の主の危機に、耐えきれないと言うように首を振り、空間を渡った。 現れたのは……ゼロスの懐!? 「レイン!?」 「無茶だ! 戻れ!!」 ゼルガディス達の声も聞き入れず、レインは両手を振り下ろした。 仕方なく応戦するゼロス。 「うるさいですねぇ……リディスさんに情でも移りました?」 錫杖の一撃で、灰になる両腕。 「あぐっ!!」 呻いてくの字に体を丸める。 「その程度の力で僕を倒そうなんて、百年はやいですよ?」 「……う…」 そんなことは、百も承知だ。 でも……。 「見たくないんだよ……」 痛みをこらえて、立ち上がる。 「リディス様は……元々戦いや争いが…大嫌いだったんだ………」 ──どうしてそんなことしなきゃいけないの!? わたししたくないー!」 「本が好きで……元気で優しい……明るい少女だったんだ…。でも……」 ──やめてェ!! レインは友だちなのー!!! いうこときくから…なんでもきくから! 「ゼラスに……お前達に脅され…オレを殺すと言われて…仕方なく…剣を持ち……」 ──レインをころさないで!! 「……戦わないと殺されるという無限地獄の戦場の中で……血まみれになり…。 術者の心を映し出す飛封翔翼(レイ・リアネル)の翼は……帰ってくるたび、赤く染まり…」 ──たすけて……したくないよ……。 「小さな心は…傷ついていた………。そんな……」 そんな彼女は…。 「そんなリディス様は……もう見たくないんだ!!」 雨が、降る。 #15・了 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー ふう……このシーンが、書きたかったトコロ第一位でーすわ。 う〜みゅしかしゼルリナぢゃなくなってきてるよーな…。ですわ。(汗) まあ。応援してくださるお方、何かカキコ頼みまーすわ(はぁと) でゅわ〜。 Miyu Asazima |
9412 | ハーメ○ンの・・・ | おどる猫 E-mail | 4/7-20:00 |
記事番号9398へのコメント リディス嬢が某赤い魔女さんと重なるゆえのタイトルです。 ・・・ですよね? 改めましてこんにちは、おどる猫といいます。 相変わらず素敵なストーリー展開ですね☆ ゼルとリナの恋愛の行方もさながら一番気になるのはレイン君の純情。 彼にはいつか血の海が出来るほどの鼻血を吹いて欲しいものです。(違) もしくは父親に黒い剣とか(人間形態だとダンディー。) ・・・すみません(吐血) いや〜ストーリーがどんどん痛いことになってますねぇ・・・ でも面白いです。 頑張れリディスちゃん!!そして頑張って下さい美悠さん!! 応援してます☆ |
9419 | Re:ハーメ○ンの・・・ | 浅島 美悠 | 4/8-09:31 |
記事番号9412へのコメント >リディス嬢が某赤い魔女さんと重なるゆえのタイトルです。 >・・・ですよね? 大ピンポン♪ ですわ。(^^) > >改めましてこんにちは、おどる猫といいます。 はぁ〜い。こんにちはでーすわ。 >相変わらず素敵なストーリー展開ですね☆ どーもっ。あ、でもでもパクってるとこあるかも〜(爆汗)ですわ。 >ゼルとリナの恋愛の行方もさながら一番気になるのはレイン君の純情。 >彼にはいつか血の海が出来るほどの鼻血を吹いて欲しいものです。(違) あたしもこの子×リディスは気に入ってて…ですわ…(くすっ) いつか番外でも書こうかな〜と思っているこの頃ですわ。 >いや〜ストーリーがどんどん痛いことになってますねぇ・・・ >でも面白いです。 そう言って下さると嬉しいでーすわ。 >頑張れリディスちゃん!!そして頑張って下さい美悠さん!! >応援してます☆ > こちらこそ、こんなものを見て下さってありがとうございまーすわ。 ちなみにこの口調…誰のまねでしょーか…ですわ。(ニヤリ) |
9426 | もっと強く生きられる? きっと夢は叶う? #16 | 浅島 美悠 | 4/8-13:07 |
記事番号9398へのコメント 主よ あなたはどうして こんなにも 無慈悲なのですか? 我が子をこの手で抱くこともできず 最愛の者まで悪魔に奪われた俺に どうして こんなにも試練を与えるのですか? どうして──こんな形であの子に会わねばならないのですか? 「だから……これだけは…これぐらいは!!」 手を振る。 バキィッ!! 空色の旋風が、十字架を砕く。 「リディス!!」 リナがリディスの体を受け止め、すぐさま治療(リカバリィ)をかける。 「一応…平気よ………気絶してるだけ…」 ほっとしたような顔で……心底ほっとした顔で、リナがそう呟いた。 ──ィンっ…。 『ゼロス。帰ってらっしゃい』 透き通った声が、周囲に響いた。 「ゼラス・メタリオム…!」 「ゼラス様、しかし……」 レインの畏怖の一言とゼロスの反論の言葉。 『命令よ。水晶はこっちで回収するから、あなたは帰ってらっしゃい』 冷やかな声がゼロスに拍車をかける。 「────はい」 苦虫をかみつぶしたような顔で、応答し──獣神官(プリースト)は消えた。 呆然とした顔で、それを見送るレイン達。その時。 ごぅっ!! 突如として烈風が撒き起こる。空の上に、巨大な魔方陣が描かれていた。 「なっ! なんですかあれは!!」 アミエラの問いに、答える者はいない。 その内、蒼い水晶が、吸い込まれるように──実際、吸い込まれているのだろう。 フワリと舞い上がった。 『回収』。 烈風に押されて、そこにいる全員が動けなかった。 ──いや。 「リディス!! ちょっと!?」 リナの治療で目を覚ましたリディスが、たんっ! と地を蹴り、水晶に手を伸ばす。 「とうさ……」 ズバッ!! 水晶の表面から、つららのようなものが飛び出る。 それに……ほとんど全身を貫かれ…………リディスは堕ちていった。 そのサマを、別の水晶で見る獣王。 「まっ……たまにはこんな公開処刑もいいでしょ(はぁと)」 ゼルガディスの水晶が、元の位置に戻る。 が。 「どったのゼロス。すんごく不機嫌そーな顔して」 「………」 空中で足を組み、顔にはあのニコニコさわやかな(!?)微笑みがあるが……。 額に青筋一本(笑) <魔族に青筋あったっけ……でーすわ。> 「仕方ないでしょ? あの二人は過去から来たんだもん。 殺したら、『今』が変わるじゃない。私、コレ持っていたいしさ〜」 ちょいちょい、と水晶を指さす。 「ま。確かに、あの方は言っても聞かない性格ですし」 「そーそー。十年前もそーだったわよね〜。 ゼルガディスだけを逃がして、たった一人で私達と戦(や)りあったんだから」 ん〜と伸びをする金髪の魔族。 「ほんじゃ、また獣将軍新しく創り直そっか。やっぱリディスは失敗だったわね〜。 いくら合成獣(キメラ)をベースにしても人間は人間ってところなんでしょーね」 「ですね」 ふっと、水晶の映像が消えた。 「リディス!! しっかりしなさいよ!」 「リディス様!」 治療を再びかけるリナ。それに、ゼルガディスも加わる。 手遅れだと解っていた。 けど……何もしたくはなかった。 ただだまって死を待つような行動は、したくない。しない。 それが彼らだった。 「赤…か……。ククッ…………やは…り、私、に……相応しい色……だ…」 「リディス、しゃべるな!」 ゼルガディスが、焦ったような声で言う。 「……魔女は……火あ、ぶりと……相場は決まって…い、るんだ……が……。 こういう……死に方も……あり…ということ、か……」 「リディス……さん…」 アミエラが、何を言えばいいのかわからず、名前を呼ぶ。 落ちてくる雨を、目を細めて見つめるリディス。 「売られた…父に撃た、れ……この…ありさま……で…」 「リディス様、それはっ……」 「いい…………わ、たし…など………死ねば…いいんだ………」 虚ろになりつつある瞳。 「売られたんじゃない!!」 従者の悲痛な叫びが、それにほんの少しだけ生気を宿らせた。 「リディス様──あなたは……」 まるで、何かに耐えてきたかのように身を震わせ、レインが言い募る。 「あなたはゼルガディスに売られたんじゃない! さらわれたんです!! それは、ゼラス達があなたをだまそうとしてやった策略です!!」 治療の光りが、静かに灯る。傷は、ほとんど塞がっていない。 「ゼルガディスはいつも悔いていました!! リディスのことが気がかりだって……! 無事に生きているのかどうかって……!! リナ・インバースの方にしたって…自分が死んだら、安心してゼルはリディスを助け出せるよねって!! いつも言ってました! いつもいつも!! あなたのことを心配していたんです!!」 病に倒れ、ベットの上で、母は楽しそうに父と話していた。 でも……その笑みに…その会話の中に………何か寂しげなものがあったように感じたのは……。 「そっ……そーよ! 大体あんた、神託の天使のなんたらっての知ってるんでしょ!? こんなトコで死んだら、あたし達帰れないじゃないの!! しっかりしなさいよ! あんた……っ。 あんたあたしの子でしょ!?」 最後の方は、やけにはっきりとした口調で──耳に残った。 「ゲホッゲホッ!! カハッ……ア……ッ!」 咳き込むと同時に大量の血が、口から吐いて出る。 「リディス!」 「…あ………ありが…と………。ウソでも……うれ、し………」 目の前がぼやける。リナが、ゼルガディスが、レインが、アミエラが、自分を見ているのがわかる。 「これ…で……安心して………死ねる…」 初めて、リディスはにっこりと無邪気に笑って見せた。 「おい、リディス!」 「リディス様!!」 ────ひどいよ……。この人…。 アミエラが、泣きそうな顔で呪文を唱える。 ────だまされて…裏切られて…傷ついてまでして……。お父さんを…助けようとして…。 それなのに…こんな風に…逝っちゃ……あまりにも、悲し過ぎる……。 ふわっと、白い光が握りしめた両手に集まる。 ────お願い…。 母さん。神様……誰でもいい! 私に力を…!! この人を助けたい! 「復活(リザレクション)!!」 フォ…。 突き出した両手に、治療よりも優しい光が灯る。 「死んじゃダメだよ…!」 うわ言のように、呟くアミエラ。 「目を覚まして……『帰って』きて……」 私達がいるから……!! #16・了 |