◆−金と銀の女神 2章−エイス(4/23-10:53)No.9730 ┗金と銀の女神 3章−エイス(4/27-19:07)No.9771
9730 | 金と銀の女神 2章 | エイス E-mail URL | 4/23-10:53 |
こんにちは、エイスです。 やっぱり難しくてあんまり進まない…。 頭の中のお話が文章にならなくて……。 ***************************************** 金と銀の女神 〜世界が始まるとき〜 2章 迷いの森 何故人は、闇を恐れるのかしら? 闇の中に光があり、その光がまた、影を産み出しているだけなのに……。 そこは、迷いの森と呼ばれるに相応しい場所だった。 陽の光のささぬそこは、ただでさえ人々を惑わす場所だのに、変わり映えのせぬ景色、気が遠くなるような騒音、そしてそれらに疲労することにより、更に出口が遠くなる。 そして最近では、それに加え魔物達が出現する。 確かに、以前でも魔物達は存在していたが、人を見れば襲い掛かってくるほどに、凶暴ではなかった。 数も、以前のそれを遥かに超えている。 だがそれでも、ここを通るほかないセリオス達は、慎重に歩を進めていた。 「サラ、大丈夫か?」 セリオスが、汗だくになっているサリラを見かねたのか、手をさしのべた。 「大丈夫よ。言ったでしょ?自分の身くらい自分で守るって」 二人に心配させぬよう、にこりと笑うサリラ。 だが、軽口をたたきながらも、サリラの疲労は限界に来ていた。 クロスも、サリラの後ろを歩き、必死にカバーに入ろうとしている。 サリラは、猟をして暮らしている。 幼い頃からひとり暮らしを強いられていたサリラにとって、生活などたやすいことだ。 体力だって、同年代の男の子並みくらいはある。 だが、弓使いであると同時に、精霊使いである彼女にとって、精霊力の乱れはそのまま彼女への負担となる。 今この森は荒れていた。 魔物達の出現からなのか、それ以外の理由なのからは解らないが、精霊たちが極端に疲労し、狂っているものまでいる。 それが、サリラを疲労させていたのだ。 「サラ…無理しないでくれよ」 「……だがセリオス。お前もくたばるんじゃねえぜ。見てて危なっかしいんだからな」 クロスが後ろから茶々をいれた。 セリオスも、サリラから精霊使いとしての基礎を学んでいる。 精霊使い、その見習とすら言えない実力だが、それでも精霊力の変化は、確実にセリオスの体力を奪っていく。 そのことを、クロスは気付いていたのだ。 「大丈夫だよ。クロスこそ、平気なのか?」 クロスが袖をめくりあげる。 「おうよ!そのへんの魔術師共と違って、俺はびしびし鍛えてるからな!」 クロスの家は、魔術師の家庭だ。 クロスも物心つく前から魔術師として鍛え上げられてきたが、戦士としての能力の方が高く、またクロスもそれを望んでいた。 結局両親の押しに負けてしまい、魔術師の道を歩んでいるのだが、それでも身体だけは鍛えている。 彼は、貧弱なのが嫌、などと言っているが、ただ単に負けず嫌いなのだろう。 「ああ。でも勉強もしてくれよ。僕は魔術は使えないしね」 「俺様に不可能なんてないぜ」 途端、サリラから小さな笑い声がもれた。 そしてつられるように、セリオスも笑い出す。 「おい、なんで笑うんだよ。おい、教えろよ!」 クロスは、笑っている二人の心情を察することすら出来ず、ただ立ち尽くしていた。 その時 どこからか、鳥の断末魔の叫びが聞こえてきた。 そしてその叫びが聞こえてきたと思われる方向から、たくさんの動物達が、こちらに向かって移動してきた。 …いや、違う。逃げてきているのだ。 「なんなの!?」 「向こうからだ!」 クロスが、言うと同時に叫び声が聞こえてきたと思われる方向へ飛び出す。 「クロス!一人じゃあぶない!」 「まったく…無鉄砲なんだから!」 そしてその後を、慌ててセリオスとサリラが追う。 森を歩くなど慣れていないせいか、樹の根っこや土にすぐ足をとられてしまう。 だがそれでも、3人は懸命に走った。 そして、見てしまったのだ。 下級の魔族…そう、魔物と呼ばれる、おぞましき存在を。 蜘蛛のような8本の足、裂けたかのような大きな口、まるで血の色を思わせる紅い瞳が3つ、暗い森の中で光っていた。 そしてその大きさは3mを軽く超えている。 だが幸運なことに、それは魔物の中でも弱い部類に入る魔物だ。腕のたつ冒険者なら、一発で倒してしまうだろう。 それでも、セリオス達にとっては弱い敵でさえ強敵になってしまう。 その時、戸惑うより先に、クロスがあることに気付いた。 「へっ…どうやら、食事中に来ちまったみてえだな……」 「え…?」 クロスの言葉に、サリラが呻き声のように小さな声で返す。 するとクロスが、魔物の足元を指差した。 紅い染みが出来ている。血だ。 まわりには、肉片らしきものも落ちていた。 クロスが、冷や汗を流しながら、説明する。 「さっきの断末魔は、こいつが喰われて叫んだものだったみてえだ。そしてそれを見て動物達が逃げていた。 …見たところ、こいつは鳥を食い終わったばかり、その上、このでかい図体だ。と、いうことは……」 魔物が、口から血をたらしながら、セリオス達のほうを睨む。 「喰われる、な」 「来るぞ!!」 セリオスが剣を構えると同時に、魔物が空に咆哮する。 そしてセリオスに、魔物の足が襲い掛かった。 「くうっ…たああ!!」 なんとか剣で受け止め、跳ね返したものの、自分ひとりではかないそうもない。 これだけ身体の大きさが違うのだ。力も、生命力も、あちらのほうが上だろう。 「サリラ!さがって弓であいつをうってくれ!クロスは援護をしてくれ!とにかくあいつに隙を作らせるんだ!」 「解ったわ」 「まかせろ!」 クロスが呪文の詠唱に入る。 そしてセリオスに、もう一度魔物の足が襲い掛かった。 だがそれをうまくかわすと、魔物の足に向かい、剣を大振りした。 確かな手ごたえ。 『ギャアアアア!』 魔物の、セリオスに剣で切り裂かれた場所から、蒼とも緑ともつかぬ色の血が、大量に吹き出る。 セリオスは剣で、ふりかかってきた血を払い、満足げに笑った。 「よし…効く…!」 魔物の中には、まるで剣や斧、その他の物理攻撃がまったく効かない敵もいる。 それとは逆に、物理攻撃しか効かない、魔法がまったく効かない敵も。 中には、どちらも効くが、あまりに防御力があって、ダメージが通らないという恐ろしい敵もいる。 そういう敵に会えば、程度こそあれ、厳しい戦いになる。 特にセリオス達は、まだ経験も浅い。そんな敵に会ってしまったら、死ぬことはなくても、大怪我はまぬがれない。 そのような敵ではなくて、かなりゆとりが出来た。 その時、クロスの魔法がとんだ。 「この世界を護りし神よ…闘いに身を投げし彼の者の剣に、正義の炎をともさん…!」 そして一言二言呟くと、セリオスの剣が炎をまとい、燃え上がった。 炎が効かない敵ならまだしも、これで剣で与えるダメージがかなり増えたはずだ。 「ありがとう。クロス」 「礼は敵を倒すことでかえしてくれ」 戦いの最中でも、余裕の態度をくずさないのがクロスだ。 一見魔術師にはむかないように見えるが、この冷静な態度こそが、魔術師に必要なものなのだ。 そのことを、クロスと付き合ってきて最近解った。 「たああ!!」 セリオスが魔物に突撃する。 だがセリオスが攻撃するより前に、魔物の攻撃。 セリオスはそれを後退することで避けたが、これを繰り返していたら魔物に近づけない。 ただでさえ、魔物に傷をつけたことで魔物があばれているのだから。 「くそっ…」 舌打ち。 その時、上の方から声が響く。 「さがって!!」 反射的にセリオスの身体が言われたとおりに動く。 すると目の前を矢が通り過ぎていき、魔物の第3の目に、深く突き刺さった。 サリラが樹にのぼり、そこから魔物を攻撃してくれたのだ。 『ギャアアアアアアアアアアアアアア!!』 魔物は叫び声をあげ、どくどくと血の出る目を必死にかばっている。 「セリオス!今よ!」 サリラの声と同時に、セリオスが魔物に向かって突進する。 そして魔物の目前で高く飛び上がり、 「やあああああああああああああああああああああああああああああああ!!」 全体重をかけて、魔物の背に剣をつきたてた。 『グウウワアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!』 天をも切り裂くような、魔物の断末魔の悲鳴。 そしてその叫びを最後に、蜘蛛の魔物は、ぴくりとも動かなくなった。 「はあ…はあ…」 セリオスが、魔物に刺さった剣を抜く。それと同時に剣がまとっていた炎も消え去った。 そして静かに大地に降りる。だが、雑魚敵とはいえ初めての実戦。かなり疲れたのだろう、荒い息を繰り返していた。 「ありがとう、クロス、サラ」 セリオスが言葉をかけると同時に、サリラが樹から地上へ降り立つ。 「どういたしまして。かっこよかったわよ」 「ああ、言っただろ。お前から俺への礼は、魔物を倒すことってな」 二人の言葉に、いっぺんに緊張がほぐれる。 「それに、まだ森を抜けたわけじゃないわ。この森にい続ける限り、またあの蜘蛛みたいな敵がうじゃうじゃいるわよ」 意地悪そうに言うサリラの言葉に、クロスが情けない顔をする。 「サラ、勝利の気分に酔ってるときに、頭に水をぶっかけるようなことを言わさないでくれよぉ…」 途端皆が笑い出す。 セリオスは笑いながら、この二人がついてきてくれたことに感謝していた。 きっと自分ひとりでは、この魔物に勝てなかっただろう。 「…行こうか」 「ええ」 セリオスの言葉に、サリラが微笑みながら返事をする。 「おっしゃ」 クロスも力強く返事をしてくれた。 そんな二人の様子を見ていると、こう思う。 皆がいてくれれば、自分でも勇者になれるかもしれないと。 本当の親の顔すら見たことのない自分でも、誰かを救うことが出来るのかもしれないと。 そう思うのだ……。 陽の光が、静かに三人を照らし出す。 今まで暗かったせいか、目を開くことが出来なかった。 そして目が光に慣れると同時に、クロスが飛び出す。 「やっほう!セリオス!サラ!出口だぜ!!」 「見れば解るわよ。もう…」 だが、出口を見つめるサリラの顔が、段々と歪んでくる。 セリオスはそれを怪訝に思うと、サリラに話し掛けた。 「どうしたんだ?サラ」 「セリオス…見て!」 人が、倒れている。見たところ16,7の少女だ。 流れる蒼青の髪。村娘なのか、白いワンピースに革靴という簡易な格好をしている。 胸元には、お守りとして知られる魔封じの石が首から下げられている。 こんなところに倒れているなんて、おかしすぎる。だがそれより気になったのは…… 「おい!大丈夫か!?しっかりしやがれ!!」 「クロス、あんまり乱暴にゆすっちゃだめよ」 少女を心配し、必死に起こそうとしている二人を見ながら、セリオスは一人呆然としていた。 「なぜなんだ……?」 そう、ほんの一瞬だったが、確かに見えた。 あの、美しい少女の髪が、光にさらされた時、魔を表す色………銀色に光ったのを……。 「(まさか…気のせいだ)」 その考えを振り払うかのように、頭を横に振る。 「(あの子の髪はちゃんと青色だし、サラ達も見てないみたいじゃないか)」 「ねえセリオス、この子、近くの街の宿まで運んであげましょうよ」 「あ、ああ」 考え込んでいる時にいきなり話し掛けられたせいか、反応がぎこちない。 「(…そうだ、光が反射して銀に見えただけだ)」 そして無理矢理に自分を納得させると、少女に近づいていった。 続く ***************************************** ふう…。これ、何話くらいで終わるんだろう…。 絶対10話程度じゃ終わらないだろうしなぁ…。 ……ま、頑張ろうっと…。 それでは。 エイス |
9771 | 金と銀の女神 3章 | エイス E-mail URL | 4/27-19:07 |
記事番号9730へのコメント こんばんは。エイスです。 このごろ小説書くのが苦しいよう…(泣) でも頑張らなきゃ…。 ***************************************** 金と銀の女神 〜世界が始まるとき〜 3章 白き少女 金の天使と銀の魔族 天使が安らぎをくれ、魔族が全てを破壊する者なんて、誰が決めたのかしらね? 綺麗な青色の瞳が、ゆっくりと開いた。 そして見慣れぬ景色と人物に戸惑いながら、気だるそうに身体をおこす。 「気が付いた?」 サリラが少女の顔をのぞきこんだ。 深い海の底を思わせるような、綺麗な蒼い髪と瞳。 透けるような白い肌。 そして整いすぎた顔立ちが、この世のものとは思えないような美しさを産みだしていた。 「私はサリラ。後ろにいるのがセリオスとクロスよ」 サリラが紹介し終わると同時に、セリオスが少女の寝ているベッドに歩み寄る。 「君の名前は?」 少女は少し戸惑い、かなりの間の後、ぽつりと言った。 「アリア…だったと思うわ」 セリオスがアリアの言葉に反応する。 「だったと思う…って……」 アリアはまた少し考えこんで、目を閉じて言った。 「よく解らないの…。記憶もあやふやで、何故今ここにいるのかすら解らないわ……」 「記憶が…ないのか?」 セリオスの質問に、ゆっくりと頷くアリア。 そしてじっとセリオスを見つめたかと思うと、不思議そうに聞いた。 「…貴方達は、私を助けてくれたのね?」 「え?あ、ああ…一応……」 するとアリアが、ふわりと微笑んだ。 「ありがとう」 「え……」 普通、自分の記憶がないなんて言って、笑うことのできる人がいるだろうか。 誰かに感謝することができるだろうか。 この少女は、それを簡単にやってみせたのだ。 「それよりも、これからどうするの?」 「解らないけど…まあ、なんとかなるんじゃないかしら」 あっけらかんとした少女の答えに、クロスが呆れたような視線を流す。 「なんとかなるって……記憶がないのにどうなんとかなるんだよ……」 アリアはくすりと笑うだけ。 「さあ?でも、少なくとも行き倒れの状態からは、貴方達が助けてくれたでしょ? きっとこれからもなんとかなるわよ」 「………」 サリラとクロスは呆然と彼女を見るだけ。セリオスは完全に言葉を失っている。 アリアはそんなセリオス達を目にもとめず、ベッドから降りた。 「とにかく、ありがとう」 そしてそのまま部屋から出て行こうとするアリアを、正気に戻ったセリオスが慌てて止める。 「アリアさん!どこに行く気なんですか!?」 「どこって……まあ、適当に……」 その言葉に、サリラとクロスも正気にかえる。 「適当に…たって、外には魔物がうじゃうじゃいるんだぜ?」 「そうよ、行くあてもないのに……」 アリアが困ったように首を傾げた。 「そう言われても……家も思い出せないからそうするしか……」 「じゃあ、私達と一緒に行きましょうよ」 「「サラ!?」」 サリラの言葉に、二人が叫ぶ。 「私達だって、行くあてがあるわけじゃないでしょう?だったら、アリアさんの家を探しながら旅した方がいいわよ。 それとも、記憶のないアリアさんを、一人で旅させるとでも言うの?」 セリオスとクロスを睨みつけながらの言葉。 二人は、頷くしかなかった…。 夕暮れ。沈みかけの太陽が、景色を紅く染め上げていた。 セリオス達は宿屋の一室で、荷物を整理していた。 「食料も買ったし、今日は早く寝ないとな」 「ええ、明日からが本当の旅の始まりだもの」 サリラが床に座り込みながら言う。 この街は、迷いの森をぬけてすぐのところにある。つまり距離としては、一日もあれば十分にたどり着けるところにあるのだ。 うまく森をぬけさえすれば、往復だって出来るだろう。 「でも、本当にいいの?私が一緒についていくなんて……」 まだ不安そうなアリアの声に、セリオスが笑いながらかえした。 「もちろんだよ。アリアさんとここで別れるほうが、後味が残って嫌だしね」 そう言いながら、まとめた荷物を全員分、ベッドの横に置いた。 もちろん剣は、夜中襲われてもすぐに抜けるように、すぐ傍の机に立てかけてある。 そしてふとアリアの方を見ると、アリアが膨れっ面の凄い顔で、セリオスを見ていた。 「ねえ、セリオス達って簡単に私のこと信用してるみたいだけど、私が悪党だったらどうするの? 記憶がないのを装ってるかもしれないし、本当に記憶はないけど実は大悪党だってこともありえるのに…」 アリアの質問に、セリオスが、あまり困っていない様子で、気楽そうに答えた。 「考えなかったな……。まあ、いいんじゃないか?アリアさんはアリアさんだし」 その答えに満足したのか、アリアがすくっと立ち上がった。 「じゃあ、改めて自己紹介するわね。足手まといになるだろうけど、よろしくね」 アリアの言葉に、サリラとクロスが嬉しそうに返事をする。 「ああ、こちらこそ。アリアさん」 だがその言葉は納得いかなかったのか、顔を歪ませた後に、差し出していた腕を下げた。 「セリオス、呼び捨てで呼んで。私だって貴方のこと呼び捨てしてるんだから」 「え…?あ、ああ……」 よほど凄い勢いだったのだろうか、少し引き気味にセリオスが…ほとんど反射的に返事をした。 そしてアリアがその返事を聞くと、セリオスに手を差し伸べる。 「じゃあやり直し。よろしく、セリオス」 「ああ、アリア」 セリオスも手を伸ばし、アリアの手を強く握り締める。 アリアも微笑みながら、握手をしていた。 「んじゃ、そういうことで、寝るか」 クロスがアリアとセリオスの雰囲気を壊すかのように立ち上がる。 「そうね、もう休みましょ」 続いてサリラが立ち上がり、アリアについてくるよう、目でうながした。 アリアは落ち着いた様子で、扉を開け、部屋の外に出たサリラの後を追う。 「じゃあ、お休みなさい」 「おう、寝過ごさないようにな」 そして扉を閉め、隣りの部屋に移動する。 漆黒の闇が、あたりを包み込んでいた……。 淡い月光が、部屋の中を照らし出していた。 サリラは眠れないのか、空虚な様子でその瞳を開いたままだ。 アリアは、よほど疲れていたのだろう。ベッドに入り込んだ瞬間に眠り込んでしまった。 「(私……バカだわ……)」 あの瞬間、そう、セリオスとアリアが、お互いを仲間として認めたあの瞬間。サリラはどうしようもない感情で胸をいっぱいにしていた。 心が痛くてしょうがなかった。 きっと嫉妬したのだろう。セリオスと気軽に仲良く出来る彼女に。 「(だけど…本当に二人は仲間として握手しただけよ……。 なのに何故……胸がざわざわするの………?)」 何故か嫌な予感がする。雰囲気と言うか…勘と言っていいだろう。 だが勘は勘。はずれることのほうが大きい。 「(………そう、あたるわけないわ。ただの嫉妬よ……)」 そう信じるしかない今。 すると、もう既に夜中だったこともあってか、睡魔に襲われる。 「(もう……忘れなきゃ……)」 そして、睡魔に魂を渡すかのように、自分から、意識を手放した。 綿菓子のような雲が、空の海をゆっくりとたゆたう。 まだ淡い光の太陽が、今旅立つセリオス達の背中を押すかのように、明るく照らしていた。 セリオスは思いっきり息を吸い込み、そしてゆっくりと吐き出した。 もう準備は昨日の夜に終えてしまったし、後はこの一歩を踏み出すだけだ。 「じゃあ、行こうか」 「ええ」 サリラが微笑みながら返事をする。 「確か近くに街があった筈だ。そこに向かって進もうぜ」 親に徹底的に教えられただけあって、このへんの地理には詳しいクロスが口を開く。 「そうね…私の家も、もしかしたら近くにあるかもしれないもの」 出会った時とは違う服装でアリアが答えた。 その服では旅はしにくいだろうと、昨日食料を買うついでに服も買っておいたのだ。 まずいつもの白いワンピース。その上から割と薄めの魔術師のローブを着て、その腰までものびている蒼い髪は、ポニーテールにしている。 もちろん、邪や魔をはらうといわれている魔封じの石は首にかけている。 結局彼女自身、何故自分が魔封じの石を持っているのかは思い出せなかったようだが。 それと、彼女は薬草などのアイテムを持っている。「役に立てないから、せめて」と言って、荷物もちの役を譲らなかったのだ。 しょうがなくアイテムだけを持ってもらっている。 だがこちらも、魔物に会ったら安全な場所へ避難すること。いざとなったら一人でも逃げるようにと、交換条件的な約束をしている。 それを思い出してなのか、それとも自然に優しく接してしまうのか、セリオスが優しく微笑んだ。 「ああ、きっと家を見つけてみせるさ。もしかしたら記憶ももどるかもしれないしね」 「ありがとう、セリオス」 にっこりと微笑むアリアを見て、またサリラの胸が痛み出す。 「(セリオスは…私にあんな顔、したことなんてないのに………)」 だがそんな考えが浮かぶとともに、自分に対する嫌悪感。 「(私……嫌ね……)」 自嘲するような笑みを浮かべ、弓を片手に歩き出す。 「ほら、出発よ!」 「おう!」 皆が一斉に歩き出す。 皆、まだアリアのことを完全に信用しているわけではないだろう。 アリアだってそうなのだろうが…。 何故か、信じてしまいたくなる雰囲気がある。何故か護ってあげたくなるもの悲しさがある。 どこか性格が、心が掴みきれない感じがする。 記憶もない、真っ白な少女。だけど…… 瞳を見つめると、孤独に疲れた一匹狼のような、銀色の光を思い出す…―。 続く ***************************************** ほとんどサリラの片思い物語だな(笑) しかも今気付いたらギャグがないし。 シリアスで通すしかないか…。 それでは〜。 エイス |