◆−Ave Caesar,nos morituri te salutamus〜ゼロス〜−真人(5/8-23:18)No.9917
 ┗Re:すごいです。−tsubame(5/9-20:44)No.9927
  ┗Re:すごいです。−真人(5/9-21:22)No.9929


トップに戻る
9917Ave Caesar,nos morituri te salutamus〜ゼロス〜真人 E-mail 5/8-23:18


Ave Caesar,nos morituri te salutamus

ゼロス:不条理の幾何学

 ……どうして、笑ってらっしゃるんです……?

 何度尋ねても、貴方は答えてはくれませんね。
 ま、とーぜんですよね。もう死んでらっしゃるんですから。はっはっは。
 それにしても、案外脆かったんですねえ、貴方。けど、初めてですよ?人間の身で、ここまで僕をてこずらせたのは。

 …まさか、この火に、あーんな切り札を用意してしてたなんて、考えもしませんでした。
 本当に、最後まで気を抜けませんでしたよ。そういう意味では確かに貴方らしかったですねえ。

 けど、これ。もう残骸でしかない火ですから、消しちゃっても良いですよね?
 …………………………
 やっぱり止めましょうか。もう害は無いですし、ね。
 別に僕に視界なんてものが存在するわけではないので、こんなものあろーがなかろーが関係無いんですけどね。
 けれど、人間である貴方には必要だったんでしょう?これは、武器であると同時に、貴方の視界を広げる役割をしていた。
 …だから、このままにしておいてあげましょう。

 まあ、貴方には既に必要のないものでしょうけど。
 
…ああ、綺麗ですねえ。見えます?…って、無理でしたね。全く、最近の若い方は脆弱で困ったもんです。
 この、貴方の五つの炎のことですよ。揺らぎ、昇り、また燃え上がる。まるで貴方の瞳のようです。
 貴方もこんな風に、ころころ変わりましたよねえ。結構飽きなかったんですよ、貴方を見ているの。
 人間の中では一番、でしたよ。
 
 でも、最期は興醒めでした。

 …お聞きたいしたいことが、たくさんあったんですよ。
 なのに、どうして、あんなにあっさり死んでしまったんです?

 ばしゅうっ!!

 …ああ、少し力が入ってしまったようです。ひとつ潰してしまいました。五つ揃って燃えている、っていうのが良かったのに。
 はあ。 こうなってはつまらないですね。ついでだから、全部消しちゃいましょう!

 っぼっ!!

 ……へえ、消滅する瞬間も、綺麗なんですねえ。本当に、この聖火は、貴方そのものでしたよ。

 ……ねえ、リナさん。

 これを使って、僕を封印しようとしたのは、攻撃魔法では、滅ぼせないと考えて、ですか?
 一体、何で力を増幅させていたんです?結構強大でしたよ。少し間違えば、本当に囚われちやうとこでした。

 ---そう。こんな仕掛けを考えるっていうことは…諦めてなかったんでしょう?
 生きることを。
 なのに、どうして、お一人でこんな所へ来たんです?

  ---…誰の命令なの?−−−−貴方は言った。

 嘘は言いませんでしたよ。勿論、獣王様です。僕は獣神官なのですから。
 我が主の命は、『リナ=インバースを監視すること』。
 これも本当のことでした。

 …分かってらっしゃったのでしょう?

 貴方は滅びと、終焉の鍵。
 全てが滅ぶか、それとも滅ぼされるか。

 あの呪文の暴走は、あの方を有限の世界に具現させる……あの方は我らだけの母ではなかったから、だから、それが僕らの望みに添う可能性は五分でした。
 そんな確率で冥王様の二の舞になるのは御免です。

 それで、貴方の仰った通り、僕達は考えた。

 人の限界までエネルギーを奪うあの術を、使い続ければ一体どうなるのだろうと。そして、現時点であれが使えるのは貴方お一人。
 
 だから、貴方には生きていてもらわなければならなかった。---それ故の、監視でした。暫くの間でも行動を共にした僕なら、貴方の行動を把握するも、監視もしやすいだろう。そういう理由で監視者になったわけです。

 けど、後は何も指示されてはいません。全て僕の独断です。竜や妖精を巻き込んでの降魔戦争もどき、もね。そうすることで、貴方があれを使う頻度を上げたわけです。

 勿論、許可を頂いてからですけど。

 魔族と人間に噂をばらまいて。竜族達には、近くで殺気をみなぎらせ。貴方は簡単そうに仰ったんですけど、結構、大変だったんですよ?

 セイルーンを狙ったのも、貴方の仰った通り。貴方はアメリアさんを見殺しにはしない。そうすれば、貴方のお仲間も集まってくる。

 貴方は脆弱な人間だ。どんなに気を付けていたって、何時死ぬかなんて分かったものじゃあない。
 その為の、スペアが必要でした。あの方の呪文を御することが出来る…

 もし、貴方が魔族に命を奪われたなら−−−

 彼らは考えるでしょう。敵討ちを。
 そして、学ぶでしょう。より強力な呪文を。

 …あの方達なら、十分貴方の代わりになるでしょう?

 そして、事実貴方はやって来た。お仲間を連れて。

 誰を残そうか、正直言って迷ってしまいましたよ。
 …まあ、ガウリイさんだけは対象外でしたけどね。

 けど、全てが、予想通りでもなかったですよ?
 
 僕は貴方が気付いていると思っていました。貴方は頭が良い。

 魔族の狙いは貴方だった。だから、貴方がいるところが、即ち今回の謀の中心。
 そして、同時に、貴方は分をわきまえていた筈です。
 貴方の存在は、確かに小さなものではない。けれど、魔族が大勢を率いるほど大きくも無い。
 故に、首謀者は僕で、その上に基本的にこの計画を立てた者は存在しない、そう読んだのでしょう?
 それとも、襲ってきたのが、ちゃんと命令系統に属する事すら出来ない方達というところから推測したのですか?

 確かに、あの方達の何人かは、僕が呼び寄せました。後は、選んだんです。誰にも仕えておらず、捨て駒にしやすい方を、ね。
 方法は、秘密です。それとも、これも分かってらっしゃったんですか?

 とにかく、僕は少し彼らを操って、貴方へ向かっていくように仕向けました。
本当は、もう少しお強い方だと良かったんですけど。でも、それじゃあ、誰かに借りをつくっちゃうじゃあありませんか。獣王様のためにも、そんなことは出来ません。

 …貴方がどこから真理に辿りついたかは分からない。けど、貴方はそう結論付けた。

 だから。

 だから、僕に尋ねた。……そうなのでしょう?
 
 分かっていましたよ。
 今回のこのゲームに貴方が乗ってくるだろうことは。
 人間界にいるのが長かったからでしょうか、僕にも少しは「人を読む」ことが出来るようになったんですよ。
 そして、僕の知ってる貴方はそういう方です。

 ですから−−−

 どちらにするだろうと思ったんです。

 国民を避難させて、王都を戦場にするか、勢力をもってここに来るか。
 僕と戦うなら選択肢は多くない。それで、貴方ならどっちにするだろうと。

 ご存知の通り、魔族に本来敵討ちなどない。あるのは徹底された上下関係だけです。
 もし、今回のこの戦いが、僕より上の存在が考えたものなら…僕を倒しても終わらない。

 でも、そうでなければ…

 獣王様達は、僕の暴走による滅びなど気にもしないでしょうし、僕の命令下にいる方達は、更に上の支配下にくだる…それだけのことです。
 
 だから、大っぴらに作戦を壊しても良いだろう、貴方はそうふんでいたはずだ。
 貴方は僕を、僕だけを倒すつもりだった。自分と刺し違えても、ね。
 そうすることで、この件は終わるのだから。

 けど、僕を相手にしていて、その他大勢を何とかすることなんてできない。
 それに、僕にとっては捨て駒に過ぎないあの方達でも、人間には十分脅威な存在です。

 それで、竜や妖精の協力を求めた。
 人間達を護らせる為に……

 でも、いくら彼らのお人が好いと言っても、狙いが貴方だと知れば、協力などしないでしょう。それどころか、貴方の敵になりかねない。
 その危険は、貴方としても避けたかったのでしょう。だから、貴方はこの騒ぎに便乗することにした。

 ……「降魔戦争」は、彼らが動く十分な理由だったでしょう。
 
 そうして、彼らは、貴方の思惑通り協定を結んだ。

 僕はここへ来るだろうと思っていました。セイルーンに最も近く、最も攻撃魔法が使いやすい場所。何にも無い唯の荒野。
 いつものお仲間を連れて、ね。

 ですが、貴方は一人で来た。

 とうとう観念したのかって、思いましたよ。
 愚かにあがくことが貴方を貴重なものとしていたのに。
 少し失望しました。

 けど、そうじゃあなかった。

 貴方は、諦めたりなんかしていなかった
 最後まで生きるつもり、勝つつもりでいた。
 貴方らしくない、こんな仕掛けまで作って。

 なら---

「どうして、最後まであの方の力を借りようとはなさらなかったんです…?」

 声を出しても、貴方には届きはしない。……やっぱり、もう少し生かしておくべきでした。
 ……でも、そうですね。貴方はきっと答えては下さらないでしょう。のらりくらりとかわすでしょうね?

「…無理矢理、生きかえらしちゃいましょうか…」

 そうしたら。
 貴方は、きっと怒るでしょうねえ。

 全く、生きたいと望んでる癖に、その方法にこだわるなんて…ナンセンスだと思いませんか?
 魔族に生かされようと、生命の理にのっとって生を受けようと、同じことじゃあありませんか。「生きている」のにかわりはないじゃあありませんか?
 
 本当に。

「---本当に、貴方は不条理な存在ですよ…」

 ……そんなに満足げな顔をして……

 ……僕の気持ちも知らないで……

 それとも。
 
 …ご存知だったんですか?リナさん。

 僕が、貴方を大嫌いだったこと。

 いつ見てもイライラさせられましたよ。
 生を謳歌している貴方。
 いつも笑っている貴方。
 そして、この世で最も貴い存在の、力を使える貴方。
 それが、どんな存在であるかもロクに知らないのに、当たり前のように所有して!!

 そんな貴方を見る度、貴方に対する憎悪は深まった。

 僕は貴方を殺したかったんです。

 だから、戦う理由を作ってくださって助かりました。
 大っぴらに殺すことが出来たのですから。
 計画は少し変わっちゃいますが、まあ、物事にトラブルはつき物ですしね。
 それに、貴方のお仲間の誰かは、まだ生きてるでしょうから、代わりはいますし・…
 僕を出し抜いたおつもりだったんでしょう?ですが、残念でしたね。僕は貴方より一枚上手なんですよ。
 どんなお気持ちです?悔しいですか?それとも−−−

「…!なんとか言って下さい!リナさん!!」

 嬉しいんですよ!
 嬉しいはずなんです!
 あの方の力を御しようと、所詮は貴方は人間。僕に適う筈も無い。現に、貴方はあっさりと死んだじゃあないですか!

 貴方は負けた。僕は勝った!

 なのに…

「なのに…どうして、僕が敗れたような気分にならなくてはいけないのですか…?」

 目を開けて下さい。

 目を開けて、そうして、教えて下さい…リナさん…

 どうして、僕まで不条理にならなくてはならないんですか…?

 僕の腕に貫かれた貴方。失敗したという顔をしていらっしゃいましたね。そう、確かに貴方のミスでした。あの呪文は、少し詠唱に時間がかかる。
 貴方の生命を、僕は食った。とても美味しかったですよ。強大だった。

 その間中、貴方は凝っと、僕を見つめていましたね。

 そして---

 笑い、ましたよね。そのまま混沌へと沈んで行きました。

 その微笑を、それだけを僕に残して。
 
 ……あれは、一体なんだったんです?どうして、笑ったりしたんです?
貴方は敗れ、惨めに死んでいくだけだったのに。
 それは、貴方にも分かっていたことでしょう?
 
 なのに、どうして、そんな風に満ち足りた表情をするんです?

 ……どうして今も、そんな風に笑っていらっしゃるんです…?

 それとも、あの方の下は、そんなに良い所なのですか?人間の分際の貴方に、その価値が分かるとでも仰るんですか?

 ………ああ、そうか…

 ……だから、なのですか…ね。

 自分一人で軽々とあの方の下へ行ってしまったから、だから、貴方が許せないのでしょうか…?

 お仲間は一体どうします?
 馬鹿みたいに貴方とじゃれあっていたあの方達は。
 魔族のことを言う割に、人間だって勝手じゃあありませんか?
 ガウリイさん達は、貴方にそんな所には行って欲しくなかったはずなのに。
 貴方はご自分の我侭で、混沌へ還ったんですよ。リナさん。
 貴方自身の為に。
 それじゃあ、僕らが僕らの為に滅びを望むのと、何ら変わらないじゃあありませんか!?

 文句があるんですか?
 魔族なんかと一緒にするな、そう言いたいんですか?
 僕だって人間と一緒になどされたくないです。
 …でも。良いでしょう、聞きますよ。
 だから、生き返ってらっしゃい!
 貴方は言った。千年くらい根性出せば生きられる、と。だったら、根性出してくださいよ。
 生き返るぐらい、なんてことないじゃあありませんか!

 …今、僕は貴方のかつての入れ物の傍にいるんですよ。この意味、お分かりでしょう?
 別にこんな肉に興味はありませんが、もし根性とやらを出さないなら、僕にだって考えがありますよ?
 貴方のその顔に落書きしちゃいますよ?
 ドラまたリナ参上!とか。
 大魔王の食べ残し。とか。
 …もう少し楽しい言葉が無いでしょうか。……思い出せませんね。いえ、僕、根が真面目にできてるもんですから。

 ねえ、リナさん。

「答えてください。リナさん!」

 ……答えてくださるわけないですよね。
 分かっているんです。そんなわけないんです。
 けど、どうしても納得できないんですよ。何故なんでしょうかね。
 ほんと、我ながら、情けないって思いますよ。これでも、獣神官なんですけど、ね。

 …風が出てきました。髪が乱れちゃいましたね。直して差し上げましょう。
 自慢の顔が、隠れてしまいますからね。

「…ほら、リナさん。風が…」

 冷たいですね。前に触った時は、あんなに熱かったのに…
 こんな、冷たさは、貴方らしくないですよ…?

「風が…」

 ……髪が揺らめいて…

 ---ぞわり。全身が総毛立つのを感じる---

 ……長い睫毛が、震えて…

 ---僕の心に、かつて味わったことの無い恐怖が生まれた---

 ……まさか……?

「…ま、さか…?」

 ---そして……---


トップに戻る
9927Re:すごいです。tsubame E-mail 5/9-20:44
記事番号9917へのコメント

 こんにちは、tsubameです。読ませていただきました。

 感想です。すごいです。お上手です。ゼロスの気持ちが伝わってきます。練り込まれてるというか、なんていうか…(言葉が思い付かなかったです。すみません)ところで、最後ゼロスはどうなったんでしょう?滅んじゃったりしたんでしょうか?気になります。

 謎で短くてよく分からない感想です。本当に、すみません。真人さんの次のお話も、楽しみに待ってます。では、tsubameでした。

トップに戻る
9929Re:すごいです。真人 E-mail 5/9-21:22
記事番号9927へのコメント

tsubameさんは No.9927「Re:すごいです。」で書きました。

> こんにちは、tsubameです。読ませていただきました。

こんにちは。真人です。
感想、有難う御座いました。
いやー。まさか本当に読んで下さるなんて思いもしなかったので…
感激です。

> 感想です。すごいです。お上手です。ゼロスの気持ちが伝わってきます。練り込まれてるというか、なんていうか…(言葉が思い付かなかったです。すみません)ところで、最後ゼロスはどうなったんでしょう?滅んじゃったりしたんでしょうか?気になります。
> 謎で短くてよく分からない感想です。本当に、すみません。真人さんの次のお話も、楽しみに待ってます。では、tsubameでした。

きっと、読んでいて訳分からん話でしたよね。
もっと、上手になりたいと思っているのですが、現実は厳しいです。
ゼロス君がどうなったのかは…ひ・み・つ(はあと)
この話にはまだ続きがあるので(もう来るなとか、書くなとか言われたら別ですけど)、読んでいってくだされば嬉しいです。

それでは。真人でした。