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◆−利用される関係−みやび (2009/10/9 18:41:12) No.18536 ┣Re:利用される関係−セス (2009/10/18 22:21:38) No.18537 ┃┗Re:利用される関係−みやび (2009/10/21 15:13:22) No.18538 ┣海に消える−みやび (2009/11/11 20:54:57) No.18550 ┃┗Re:海に消える−セス (2009/11/16 21:14:40) No.18552 ┃ ┗Re:海に消える−みやび (2009/11/21 20:27:06) No.18553 ┗だいじょうぶだから−みやび (2009/12/3 03:00:14) No.18555 ┗Re:だいじょうぶだから−井上アイ (2010/3/28 18:47:44) No.18585 ┗Re:だいじょうぶだから−みやび (2010/7/4 13:50:52) No.18591
18536 | 利用される関係 | みやび | 2009/10/9 18:41:12 |
初めまして。雅(みやび)と申します。漢字一文字では寂しいので平仮名で書かせて頂いてます。 1年ほど前からこちらのサイトにお邪魔しておりましたが…っ。投稿したい、と思いながら文才はないわ、時間はないわで。1年でSS2本しか書けなかったというローペースですが…。折角なので投稿させて頂こうと思います。 尚、原作(2部)という設定で書かせて頂きますが、私は原作についてはカップリングは認めていない派です。しかもアメリアは黒い! と思ってます。うん。 そこがSSにも現れていると思います。 乱文、拙い文でも宜しいと思う方はどうぞ読んでやってください。 (ちなみに時間ないので見直し、書き直し一切やってないです) 本人は先に逃走しておきます。見て下さり、ありがとうでした。 利用される関係 リナとガウリイさんは未だに旅をしているのだろう。色々な地域で噂が流れてくるのを耳にしながら、相変わらずね。などと思ってしまう。 どうしてそんなことを考えたかというと、資料に二人の名前がトップで記入されていたからだ。 リナ=インバース ガウリイ=ガブリエフ 天才的な魔道士と天才的な剣士。 確かに危機回避能力は高い。その才能の高さは今まで私が出会ってきた人の中では最高ランクに位置する。 だが………兵を動かして連絡するなど、無粋だろう。 そう、無粋だ。 折角の二人旅に水を差したくはないし、二人に頼めば私がお城の外に出る口実を失ってしまう。 そうよ、それにあのリナが破壊活動に出ないなんてあり得ないし、今回の人選としては間違っているわ! 今回の会議用の資料に書かれていた名前を羽ペンでぐしゃぐしゃに消し、見えないようにする。 ごめんね、リナ。無粋なことはしないから、ガウリイさんと一緒に旅を楽しんでてください。セイルーン近くに来なくていいから、寧ろしばらく近寄らなくていいわよ。 コンコン。 控えめなノックの音が聞こえるが、特に声は聞こえない。 ……あぁ、ここにも相変わらずな人が居たみたいね。 思わず苦笑が漏れるのを止めることは出来なかった。 「鍵は開いてますので、入ってくれて構いませんよ」 がちゃり、と入ってきたのは白ずくめの男の人。一見するとすごーく怪しい人だが、その中身はとても誠実で真面目。 自称、残酷な魔剣士と言っていたりもするが実際はお茶目すぎる魔剣士のゼルガディス=グレイワーズさん。 部屋に入り、ドアを完全に閉めてから被っていたフードとマスクを脱ぎ、こちらに顔を見せてくれる。 「会議の招集だそうだ」 と、それだけ言う姿に肩をすくめた。 たったそれだけを伝えるためだけにこの男を動かす人などそうはいないだろう。ましてやこの城の中に限定してしまえば二人ぐらいしかいないだろう。私と、もう一人は──── 「父さんにでも捕まりましたか?」 私の父さんのみだろう。 「ぁぁ、ついでだから呼んできてくれと、な」 彼がどこにいたかはまったく知らないが、何処かに行くついでに私を呼ぶという用事を頼まれたのだろう。通り道だったのか、それとも何か別の……なんて考えても仕方ないわよね。 「なるほど…。 っと、ゼルガディスさんはこれから蔵書室ですか?」 「まだここに来てから足を運んでないもんでな」 …目が物語っている。誰かさんのせいで。と……。 まあ確かに彼をここまで引っ張ってきたのは私に違いない。 なんとなく彼の気配を感じたのは昨日の話。仲間だから、挨拶だけでもしたい………という理由も確かに一割ぐらいはあったとおもう。だが、それ以上にこれから城を出るための計画に一役買ってもらおうと思い、招き入れた。城にくれば、蔵書室や国立図書館の本は見放題ですよ、と餌をぶら下げて。 4人で旅をしていた実績もあるし、知らぬ仲でもない。剣も魔法も一流の腕で、ボディーガードとして雇うにも彼ほどの人材はあまり見つかるまい。確かに合成獣というレッテルから批判される可能性もありえるが、父さんに関しては旅から戻ってから仲間たちの強さと、正義の志を語っておいたので反対はすまい。 ………。要するに、城の外へでる時に護衛でゾロゾロと家臣が付いてくるよりも、ちょうど良く現れた彼を側に置くほうがよっぽどマシ。もちろん一人で出るほうが気楽でいいが、今回はそうもいかない。旅に出向こうとしているのは滅びの砂漠の更に東、陸が続いてるはずの結界の外だから。 どこまで砂漠が続いているかわからないのだから徒歩で向かうには危険極まりない。となると、船が必要になる、というわけだ。 もちろん昨日現れたばかりの彼はそんな私の思惑などまったく知らないだろう。むしろ、今回の会議の内容すら知っているかさえも怪しいところだ。会議が進行し、私が派遣されることが決まったときに彼には再び餌で釣りながら教えようと思っているのだから。 結界の外は私たちの知らない世界が広がっているに違いない…。そこへいけるチャンスをゼルガディスさんが逃すとは考えにくかった。 「お考えを改めてください、姫様!」 いつものように書斎で事務仕事をこなす私の前に、もう何度目か忘れた訪問者が現れる。それも、毎回同じ台詞を吐いて、みな悲痛な声を上げながら訴える。 最初からばっさりと言葉で切り捨てていったが、数を数えるのも馬鹿らしくなったあたりから頭痛の種になり始めていた。正直なところ、心配してくれるのはありがたい。だけど、今回の調査を見送り、城で待つということはもう出来ない。 冥王(ヘルマスター)フィブリゾが滅ぼされた影響で解けたのであろう(確認されたのがここ最近のことだから推測でしかないけど……)私たちの世界を包んでいた結界の外、私たちにとっては未知でしかないその世界の一端を確認し、外の世界との交流を図るための外交特使。先ほどの会議でその任を受けたばかりだというのに、それを今更手放すことなどできるわけがない。 「船が通る海域には群狼の島もございますっ。 万が一姫様が命を落とされでもしたら──────」 「それは他の者が担当しても同じことです。 そんな理由で任を降りるということは致しません」 獣王(グレータービースト)ゼラス=メタリオムの住まう群狼の島の近くを通ることになる船は確実に危険が伴う。…もちろん、そんなことは初めから承知の上だし、こうして会議や準備の期間にその配下である獣神官(プリースト)ゼロスが姿を現すかと思っていたのだが────特に今のところは見かけてもないし、そんな気配も特には感じてはない。 とんとん、と終わった書類を纏めて一息つく。 「ところで、先客がいるということに気づいていましたか?」 私に即座に却下されたことで、慌てふためいていた家臣にそういってみる。その言葉にハッと我に返り、部屋の中をぐるりと見渡す。………そんなことをしなければ見つからないほど隅に、壁に背を預けて、それでいて気配までもご丁寧に殺して、先客は不機嫌な顔でこのやりとりをずっと見守っていた。なにも気配まで殺さなくてもいいとおもうのだが、それでいて不機嫌なオーラは痛いほど伝わってくるのだから不思議な感じがする。まあ、単に完全に気配を殺しきれてない証拠だろうが、そんなことはどうでもいい。 「こ、これはっ…失礼致しました」 ばたばたと慌てて執務室から出て行く家臣を完全に見送ってから、不機嫌な彼に言葉をかける。 「すいません、騒がしくて」 「さっさと用件を言わないからだろう」 「確かにその通りです。ごめんなさい」 会議が終わって、すぐに蔵書室を訪れ、大切な用事があると執務室まで否応無しに連れてきたというのに既に10分以上彼を放置している気がする。そろそろ怒り出すのも時間の問題だろう。すぐさま本題へ入る。 「ゼルガディスさんは結界の外の世界をどう思ってますか? 外の世界に、行ってみたいですか?」 行ってみたい…なんておかしな話だ。既に彼は私の護衛としてついていくことが決まっているというのに、その本人意思は事後確認なんて……。 ふと、彼が人の悪い笑みを浮かべた。………ような気がする。ここからだと少しばかり離れていて、顔色さえ伺うことは出来ないがなんとなくそんな気がした。 「俺がそんなところには行きたくもない、といったらどうするつもりなんだ?」 一瞬、何を言っているのだろうと。頭が彼の言葉を正しく変換しなかった。 そして次の瞬間、その裏に込められた意味も理解した。 「知っていたんですか?」 今回の会議の内容と、その任を受けようと躍起になっていたことを。 ─────彼を多少であれ利用してたことを。 「あぁ。フィルさんに全部な」 なるほど。 小言の一つでもついでに言われるかと思ったが、それ以上何も言ってはこない。かといって話を終わらそうとしている気配もない。 「それで? そんな話をしてくるということはその役割はお前で決まったんだな?」 「えぇ、ぶーぶー文句言われてるみたいですが」 先ほどのように何度も何度も。私が止めるわけがないとわかっているにも関わらず、何度も何度も。 「なら俺は何も言わん。 だが、俺はお前をとことん利用させてもらうぞ」 一瞬、呆けた顔をしていたかもしれない。 驚いた顔をしていたかもしれない。 「……王族を利用するなんて…いい立場ね」 彼の言葉の意味を真に理解しているかはわからない。 私はいつだって誰かを利用する。 周りも私を利用しようと近づいてくる。 だが──── 「はっきり言われたのは初めてだわ」 誰もが思惑を隠して、中に潜む影を隠して近寄ってくるというのに。 「お前は俺を利用すればいい。 だが、俺もお前を利用するだけだ」 まっすぐに、影すら隠さずに近寄ってくるこの男。 だから信用できるのかもしれない。 仲間、という言葉を抜きにしても。 「言われなくても思いっきり利用するわ」 私はお城の外に出るために彼を利用する。 彼は外の世界に出るために私を利用する。 私たちは利用し、利用される関係だ。 | |||
18537 | Re:利用される関係 | セス | 2009/10/18 22:21:38 |
記事番号18536へのコメント はじめまして、みやびさん。セスと申します。 原作のアメリアの、熱血に見えて意外にドライな面が出ていて素敵です。 私はアメリアはアニメ版のほうが印象強いのですが、原作の彼女も好き・・・なのですが、うまく書けないのでうらやましいです。 | |||
18538 | Re:利用される関係 | みやび | 2009/10/21 15:13:22 |
記事番号18537へのコメント > >はじめまして、みやびさん。セスと申します。 >原作のアメリアの、熱血に見えて意外にドライな面が出ていて素敵です。 >私はアメリアはアニメ版のほうが印象強いのですが、原作の彼女も好き・・・なのですが、うまく書けないのでうらやましいです。 > > 初めまして、こんな小説にお付き合いいただいてありがとうございます。 リナの前だと熱血が多いと思っていますが、利用できそうな岩の前だと……黒いですね。ドライてよりも黒くなりすぎました。 私もアニメ版の印象が強いので、たまに混ざったりもしてますが、そこはご愛嬌です。 とりあえず、原作版ではカップリングなんてイラン。岩なんて利用しまくってしまえ。って感じで書いたらこうなりました。 出航して、帰航するまでを書こうと思うのでまだまだ続きますが。ローペースなので………がんばれる範囲でがんばります。 | |||
18550 | 海に消える | みやび | 2009/11/11 20:54:57 |
記事番号18536へのコメント こんばんわ。みやびと申します。 友人からお前は某オンラインゲームのペットだ、とか夜に勝手に髪が伸びるとか言われますが。 私人形じゃないしっ! 髪伸びるの普通だしっ! と、よく突っ込んでおります。 今回2弾目を即座に投稿できる運びとなったのは………大幅修正、ほぼ書いてた話を全部書き直し、ということをしたので構成時間がかなり短くて済んだからです。 3弾? なあにそれ美味しいの?(これも大幅修正を余儀なくされて全削除したらしい) 4弾なんてまだ影も形もありません。 どこまで続くかわかりませんが、とりあえず、1年ぐらい(以上?)かかると予想してるので…ゆっくりお付き合いください。 海に消える 盛大に見送られ、のんびりとした船旅を満喫するつもりは元よりもなかった。 ずっと甲板に居続け、来訪者の存在を待った。 絶対に来る。なんとなく、それが分かってしまう。説明しろ、といわれたら出来ないが、確かに来訪者はここへ来る。 そして来訪者は思った以上に早く、私の目の前に現れた。 港を出港し、2時間経つか経たないかしてからふわりと甲板にそれは姿を現した。 「ゼロス…っ」 そう、ゼロス。 来るとは確信していた。群狼の島に住む5人の腹心の一人、獣王ゼラス=メタリオムの直属の配下である獣神官。その力は自他共に認めるほどに強い。5人の腹心の直属の部下の中では一番強いだろうこのゼロスに対して私の勝算などゼロに等しい。いや、勝算など最初からありえないだろう。 とはいえ、群狼の島まではまだ少し距離がある。ゼロスが出てくるにはまだ早いとは思うのが………。 この場をどう切り抜けるかなど考えてすらもいなかった。ゼロスがでてきてから考えよう、という無計画のなさにあきれつつ、この状況の切り抜け方を考えようとし────船員たちの慌てる声に、他の人物がこの場にいることを思い出した。 確かにイキナリ現れた人影に何も知らない乗組員達が慌てるのは仕方がないことで。「この人には何があっても絶対に手を出してはだめよ」と忠告しておく。ゼロスは命令には忠実だが、命令以外のことは進んで行いはしないだろう。もちろんどんな命令を受けているかはしらないが、乗組員たちをそう簡単には殺しはしないだろう。 手を出さない限りは。 「何の御用です?」 ゼロスの視界から別の人間たちを守るように中間へと移動しながら声をかけてみる。 知識面で頼りになる彼はいまここにはいない。いたところで勝てる可能性などはあり得ないが。 「いやですねぇ。そんなに警戒しないでもらいたいものです」 前に別れた時と変わらない笑顔で、変わらない姿で、いつもの調子で話しかけてくる。 一瞬でも旅をしていたころに戻ったような気持ちになった自分を叱咤する。 こんな気持ちでは戦えない。目の前の魔族は今は敵なのだ。そう、今はあの時と違って共通の目的があるわけでもない。だから、敵だ。 一度でも敵だと認識すると、瞬時に頭が切り替わる。戦うための思考ではなく、騙すための思考へと。 戦いを挑んだところで負けるのが目に見えているのだから、時間を稼ぎ、ここから逃げる算段をする時間が稼げればそれでいい。私一人で即座に逃げれば、船内にいる彼は間違いなく死んでしまうから。 これでも私は王族の一員。化かしあいや騙しあいはお手の物だ。時間稼ぎをしてみせる。 いや。絶対に引き伸ばす。生き延びるために。 「警戒なんて…。私はただ何の御用です、って聞いただけよ」 「折角貴方にお会いしに来たんですから、そう身構えないでくださいよ」 怖い怖い、とばかりに肩を竦めてみせるゼロスに対して 「…正確には私とゼルガディスさんに会いに来て、すべては命令です。じゃないの?」 そう、ため息を吐きながら訂正してやるとゼロスは顔をしかめてみせた。 ほら、やっぱり間違ってない。 とはいえ、群狼の島に近づく前に出てきたとなれば、その海域を通って欲しくはない、ということだろうか…。 「そんなにあっさり言わなくてもいいじゃないですかー。 確かに今回は命令ですがまずは説得に来たんですよ」 まずは、という言葉にぴくりと眉が反応する。 「説得…?」 言葉の意味を理解しかね、真意を計るかのように鸚鵡返しに返す。 「えぇ、そうです。 これはセイルーン所有の小型船で、航路についてはすべて貴方に決定権が存在する。 決定権を持つアメリアさんにこの船の航路を変えていただきたいんですよ」 海域を通るのをやめろ、とでもとっていいのだろうか? 思わず考え込みそうになるのをぐっと堪えて 「航路を、どこへ変えろって言うの?」 と聞いてみる。 聞いてみるものの航路を変えるつもりはない。何故ならば、結界の外の世界で唯一陸が確認されているのが滅びの砂漠の向こう側だけ。無謀にもあるかどうかも知れない大陸を探すためだけに直進したりするなど自殺行為に等しい。 大陸の存在を確認できるからこそ、この航路での移動なのだ。易々と変えろという案に乗る気はない。 「もちろん、出航した港へ、ですよ」 にこやかな笑みのままで返ってくる。 ここまではまだ説得の範囲内、いや、私がする質問の想定内ということだろうか。 だから、想定の範囲内でも構わないから、純粋な興味で問いかける。 「どうして戻せ、なんていうの?」 もちろん回答が返ってくるとは思ってない。 いつものポーズをしようと動こうとするのを見て 「秘密です、はいらないわよ」 と、先に釘を刺すと苦虫を噛み潰したような顔に一瞬だけなり──────わざとらしい、苦笑の見え隠れする笑みを浮かべる。 「いやあ。出来れば言わせて頂きたかったんですがねぇ。あっはっは」 何があっはっは、だ。 秘密です、を封じても言う気などさらさらない癖に。 「まあ、その問いにお答えすることは出来ません。 これもしがない中間管理職の悲しいところです」 ………ゼロスの場合は中間管理職、というものを抜きにしても何も語らないとは思うのは私だけなのかしら………。 「兎も角、これ以上船を進めるのであれば僕はこの船を壊してでも、動きを止めるつもりですよ」 ……要するに、船員の命を生かすも殺すも私の選択次第、とでもいいたいのだろうか。この海域で海の中に放り出されて無事な可能性は、少ないだろう。 ここは死の海。すべての生者を飲み込む魔性の海。そんな海に船員たちを落とすことなど、できるはずもない。かといって、ゼロスの交渉など飲みたくもない。 どうするべきか…。 「ならば、この海域を迂回すればいいのかしら?」 迂回する気もない。だが、状況が悪ければそれも頭に入れなければならない。 だが───── 「迂回もなしです。帰航してもらいたいわけですよ」 あっさりと切られる。 何故………? 帰航しろということは外の世界に出るな、ということだろう。私たちが外の世界に出て、何か弊害がでるとは考えにくいのだが……。 それでもゼロスがでてきたとなれば、魔族にとっては無視できない何かがあるのかもしれない。 どうしようか? 「さて、これ以上お話を引き伸ばしても仕方がないのでそろそろお答えをいただけませんかねぇ?」 いつもは隠されている紫の瞳が、魔性の瞳が私を射抜く。それだけで、ピリピリとした視線が私に刺さる。本当に射殺されてしまうのではないかというほどに痛い。 このまま、下手なことをいえば殺されそうなそんな雰囲気に当てられ冷や汗が背中を伝う。無表情を突き通してきたつもりだが、顔が引きつるのを抑えることができない……。 「…………最終的な確認をさせてほしいのだけど」 「ほう?」 「このまま私が逃げたらどうなるのかしら?」 有り得ない。ゼロスもそんなことなどわかっているのだろうが、一瞬だけ興味をそそられたようなそんな瞳をこちらに向けた。 リナ達と旅をしていた頃の私ならこんなことは言わない。だが、ここにいるのは王女としての私なのだ。ゼロスの知る私とは多少違って当然だろう。いや、王女という名の皮を被ったアメリア、なのかもしれないが。 「ありえませんね。 ですが、そんなことがあるならこの船に乗っている方々の命は保障しません」 ……その脅しは先ほどと同じで。 だが、ゼロスは本当にやる。知り合いを殺すことなど造作もないだろうし、ドラゴンスレイヤーという二つ名を持つゼロスがこんな船の乗員全てを殺すまでにそう時間もかかるはずがない。 だから私は──── 「舵を! この船は直ちに帰航します! 繰り返す、この船は直ちに帰航します!」 船内放送用の筒を握り締めて叫ぶ。 そして、慌しくバタバタと人が動き、船員の一人がゼロスに聞こえないように私に耳打ちをする。イキナリの帰航命令に一応の確認をしにきたという船員に声のトーンを低くして返す。「貴方たちの命を助けるためによ」と。 船内に響いた私の声でゼルガディスさんも甲板に上がってくるのは時間の問題だろう。 「これでいいでしょう?」 くすりと笑ってみる。 「えぇ、感謝しますよ。アメリアさん」 と、ゼロスもいつもの笑顔を貼り付けて答える。 これでいい。あとは、あとやることはもうない。 ゆっくりと歩み、ゼロスの横を通り過ぎ─────船の手すりに手をかける。 私はまだ帰るわけにはいかない。いや、帰りたくない、のほうが正しいかもしれない。 だから──── 「私は貴方の要求を飲んだわ。 もう誰にも手出しはできないわよね」 だから、私は逃げられる。 「もう二度と会わないことを願ってるわ」 味方としても、敵としても。もう二度とゼロスには会いたくはない。 そして私は誰の言葉を聞く前に体を船の外へと投げ出す。魔法の詠唱などすることなく、全てを運に任せて、私の体は海の中に沈む。 海の中に何が存在するかもしらない。だが、なんとなく助かる気がするからこそ恐怖などはない。ただ海の海流に自然に流され、体が運ばれていくのを受け入れる。 どこへ着くかもわからない。もしかしたら船と同じように自分たちの大陸に帰ってしまうかもしれないが、全てを運に任せると決めたのだ。 ゆっくりと視界が黒く染まっていくのを見ながら、私の意識は徐々に沈んでいった。 一人でも、構わない。 ただ訪れた自由を手放したくなかった。 だからこそ、私は、海に消える。 あとかぎらしきもの 大幅修正した理由は二つありました。 実は途中からアニメ版ぽくなってしまったことと、Wらてぃるとーが発生してしまったことが一つ目です。 えぇ、アニメ版はゼルアメ思考ですよ。ですが、原作版はWらてぃるとーはいくない! と思い修正。ホントは岩も海に落ちる予定が、船に残る結果に。 第二に、駆け引きが短すぎた! 駆け引きが短いために、SSS並に短くなってしまったからです。 というわけで駆け引きを追加して、いまの長さになりました。 てことで、元々あった文と付け加えた文の、荒さがものすごい目立っているかと思います。かなり雑に書いた気がするし…。 あんまり気にしないで見ていただけるとうれしいです。 ここまで読んでくれてありがとうございました | |||
18552 | Re:海に消える | セス | 2009/11/16 21:14:40 |
記事番号18550へのコメント お久しぶりです、みやびさん。 >「ゼロス…っ」 > そう、ゼロス。 > 来るとは確信していた。群狼の島に住む5人の腹心の一人、獣王ゼラス=メタリオムの直属の配下である獣神官。その力は自他共に認めるほどに強い。5人の腹心の直属の部下の中では一番強いだろうこのゼロスに対して私の勝算などゼロに等しい。いや、勝算など最初からありえないだろう。 「後姿がゴキブリ似」「パシリ魔族」と名高い(違う)ドラゴンスレイヤーですからね・・・ > 一人でも、構わない。 > ただ訪れた自由を手放したくなかった。 > だからこそ、私は、海に消える。 このあとアメリアはどうなるんでしょうか・・・ 短いコメントしか書けない奴ですが、続きを楽しみにしております。 | |||
18553 | Re:海に消える | みやび | 2009/11/21 20:27:06 |
記事番号18552へのコメント >お久しぶりです、みやびさん。 > お久しぶりです、セスさん。毎度読んでくださり本当にありがとうございます。 >>「ゼロス…っ」 >> そう、ゼロス。 >> 来るとは確信していた。群狼の島に住む5人の腹心の一人、獣王ゼラス=メタリオムの直属の配下である獣神官。その力は自他共に認めるほどに強い。5人の腹心の直属の部下の中では一番強いだろうこのゼロスに対して私の勝算などゼロに等しい。いや、勝算など最初からありえないだろう。 >「後姿がゴキブリ似」「パシリ魔族」と名高い(違う)ドラゴンスレイヤーですからね・・・ >> 一人でも、構わない。 >> ただ訪れた自由を手放したくなかった。 >> だからこそ、私は、海に消える。 >このあとアメリアはどうなるんでしょうか・・・ >短いコメントしか書けない奴ですが、続きを楽しみにしております。 続きは……実を言うとあまり考えてなかったりします。 オリジナルキャラクターなどはあんまり出したくないけど、出さないわけにはいかないという。 ちょっとやっぱりどこまで続くかわかりませんが、お付き合いいただけたら幸いです(4つめまでは確定してるとおもう) | |||
18555 | だいじょうぶだから | みやび | 2009/12/3 03:00:14 |
記事番号18536へのコメント お久しぶりです。みやびです。 1話読みきり、のつもりなんですが毎回続いていますね。 しかも、今回、1ヶ月に1本ペースを更新しました。自分でもびっくりですが、単に仕事やってるんですが、なんか暇な時間がふえt(鯖 ともかく、今回でようやく一人称を採用した理由がよく判ると思います。 ちなみに、見直しを全くしてないのはいつものことですが、前回書き直しの影響でこっちも多少書き直しが発生してますので荒いところが多々あるかと思いますが気にしないの精神で、お願いします。 だいじょうぶだから 眩しい…。 思わず腕で目を覆いながら──────薄っすらと瞳を開ける。 まだ完全に覚醒していないのか頭がぼうっとして、再び眠りに落とそうとしているかのように瞼が、体が、ものすごく重い。それでいて影を作っても尚差し込む日差しが、眠気を飛ばしてくる。起きろと、寝てはいけない、と。 いつまでぼうっとしていたのか。もしかしたら少しだけだったかもしれないし、かなり長い時間だったかもしれない。そんな時間の流れさえも把握できないほどに頭が回っていない。 ………………? 何か違和感を感じる。それが何かがわからないもどかしさを感じながら目を細めると、少しずつ光に目が慣れ始め、ゆっくりと青い空が見え始める。 雲ひとつない青空を眺めながら、出てくるのは疑問だけ。 ここは………どこ……? 前後がはっきりとしない。 ここはどこだろう? なぜここにいるんだろう? そんな思考しか浮かばないほどに今の私は思考の回転すらも落ちている。 そう、自分でこんなにも自覚しているのにそれ以外のことをまるで考えられないという事態に陥っていた。 ゆっくりと眩しさに慣れていくのを感じながら、同時になんとも言えぬ違和感がせりあがってくる。何かがおかしいという違和感が徐々に膨れ上がっているのにその違和感の正体がわからずに頭の中にハテナマークが大量に浮かんでいく。 すっかりと眩しさにも慣れ、頭もすっきりとし始めてようやく今日の空が青くて、雲ひとつもないいいお天気だということに気がついた。ずっと空を見上げていたというのに今更気づくというのもどうなのかしら。 そう思いながら、ふう、とため息をついて上体を起こそうとして────微かに体に痛みが走り顔を顰める。 そしてようやく思い出した。私が船から海に飛び込んだのだと。 痛みはそのときに、流れているときにどこかにぶつけでもしたのだろう。 まあ、正直なところそんなことはどうでもよかった。ここがどこだか認識するのが最優先だと思ったからだ。少なくとも私は空の景色だけで現在位置を把握できるほど優れた方向感覚をもっているわけではないので…………ゆっくりと、できるだけ体に痛みを与えないように今度こそきちんと起き上がり、自分の足で立ち上がる。 多少はふらふらするが、特に問題なく歩けるだろう。 私が流されただろう青い海を見てからその場を立ち去ろうとして─────何かがひっかかった。 先ほどからある違和感がもう少しでわかりそうな気がして、辺りを見渡す。 青い空にどこまでも続きそうな青い海。所謂海の光景がそこに広がっていて、思わず丘でも探したくもなるがぐっと堪えて、ただ考えることだけに集中する。 海鳥が空を舞い、潮風が吹き、心地のよい波の音が─────聞こえない…? 思わず両手を耳に当て、瞳を閉じる。聴覚だけに集中して周りの音を少しでも取り込もうとするが……結果はやはり何も聞こえない。 世界の音が、確かに私から消失していた。 船から落ちる前は確かに聞こえていたはずだ。ゼロスとも普通に会話をしていたし、波の音もきちんと聞こえていた。ならば、海に落ちたことが音が聞こえないことの原因だろうが……どうやったら治るのかがわからない。ともかく、魔法医にかかればすべては解決するだろう、とその場は自分自身の混乱を極度に抑え、落ち着こうと息を大きく吸い込み、吐く。 潮風を含んだ心地のよい空気を肺一杯に吸い込み、頭の中がスッキリするのを感じる。 よし……っ! 軽く気合を入れ、声に出したつもりだが………自分自身聞こえないのでなんとも言えないが────ともかく、私は一歩を踏み出しどこにいこうか迷う。 迷った理由はとてもシンプルだ。 まず、道がわからないこと。どこに流れたかもわからないのに道がわかるわけもない。 次に、道がわからないので何か建物でも近くに見えればよかったのだがそれもない。適当に歩いてもよかったけど……それで1日近く歩く羽目なる、ということも有り得るから無闇にできるだけ動きたくはない。ただでさえ耳が聞こえない不慣れな状況で、困るような状況下にはなりたくないという理由も入ってる。 誰かが通りかかってくれればそれで解決する問題なのだが……とても誰かが通るとは思えないほどに静まり返っている。 困った、だけどもここから動かないという選択肢は論外なわけで……… どうしようかしら………? と、頬に片手を当てて少しばかり考えて思い当たる。 浮遊(レビテーション)──── ふわり、と体が持ち上がるのを感じる。浮かび上がる手ごたえを感じるということは特に体の変化から魔法も使えなくなる、といったことはなさそうでひとまずは安心した。 ぐんぐんと高度を上げ、まずは海岸沿いに伸びる整備されていない道を見つけ、更に高度を上げると深い森を見つける。本当に無闇に歩かなくてよかった、と思いながら辺りをぐるりと見渡す。 森に、道に、遺跡らしきものが見える。 が、特に人が住んでそうな場所は特に見当たらない。 もう一度ぐるりと周囲を見渡すが結果は同じで、ため息を吐きながら高度を落とす。ゆっくりと足が砂の上に付き、風の魔法がすっと解ける。その瞬間少しばかり砂埃が舞うが特にはきにならない程度だったので、無視して歩き始める。 人のいる場所が見当たらないならば、道に沿って動くしかない。だけど、なんとなく…ただ漠然と先ほど見えた遺跡に何かあるような気がして、そちらに向かって歩みを進める。 大体の位置関係は把握したから、そう簡単に迷うことはないと思うが─────ともかく遺跡の方向へ一直線で進んでいけば特に迷わずに着けると………思う。幸い森にも面していないし、変な方向へ行くことはない………と思う。 私は多少の方向音痴であるらしく、たまに仲間に───特にリナが多いが───よく突っ込まれていた。だが、その仲間はいまここにはいない。 そう考えると、すごく不思議だ。 私の周りには常に誰かが存在した。 それが護衛であり、仲間たちであり、町の人たちであったり。でもいまは、本当に一人ぼっちで。 側に誰もいないというのは自由であり、どこか寂しさすらも感じ─────少しばかり辛い。 でも、私が全て置いてきたんじゃない。 あの船の上に。 仲間であり護衛でもある人と、付き人も。 全部置いて、ようやく一人になれた。だから、辛いなんて言っていられない。 きっと耳が聞こえなくなって精神的に少しばかり弱っているだけなんだ。 地面をしっかりと踏みしめて、前へ向かって歩き続ける。 だって私は、歩くしか道がない。 一人だって、だいじょうぶだから。 あとがきという名の何か。 耳が聞こえないというネタは、あんまり見かけなかったんでやってみたかったんです。記憶喪失やたいむすりっぷはよく見ます。ですが、耳が聞こえないって見たことないなあ、とおもい難題に挑戦してみました(会話が発生しなくなるので一人称じゃないときついですね) ちなみに私は一時期右耳が聞こえなくて会話聞くのにすら不便した時期があるので…少しばかり難題も軽くなりますが、やっぱ会話なしってきついです…。 てことで、会話を出して少し軽くしよう、と思ってる節がちょっとばっかしありまして、次にそれが表れるかもしれませんが…。やっぱりきにしないの精神でお願いします。 ここまで読んでくださりまことにありがとうございます。また次回も目を通してくださると幸いです。 | |||
18585 | Re:だいじょうぶだから | 井上アイ | 2010/3/28 18:47:44 |
記事番号18555へのコメント 初めまして♪ 皇女らしい、狡猾なアメリアですね(褒め言葉です) こういう、利用出来るものは、全て利用する狡さは、他国との交渉で、絶対身に付けていると思うのですよね。 ガウとリナを、フィルさんの古い友人として、叔父に紹介した時の、辛辣なアメリアを、思い出しました。 可愛いだけじゃない、一癖も二癖もあるのが、原作アメリアの良さですよね♪ アメリアに待ち受けている物が、何なのか、凄く気になる終り方に、ヤキモキしながら、続きを待っています♪ | |||
18591 | Re:だいじょうぶだから | みやび | 2010/7/4 13:50:52 |
記事番号18585へのコメント >初めまして♪ はじめまして、みやびともうします。 >皇女らしい、狡猾なアメリアですね(褒め言葉です) >こういう、利用出来るものは、全て利用する狡さは、他国との交渉で、絶対身に付けていると思うのですよね。 >ガウとリナを、フィルさんの古い友人として、叔父に紹介した時の、辛辣なアメリアを、思い出しました。 >可愛いだけじゃない、一癖も二癖もあるのが、原作アメリアの良さですよね♪ >アメリアに待ち受けている物が、何なのか、凄く気になる終り方に、ヤキモキしながら、続きを待っています♪ 読んで下さりありがとうございます(ぺこ ただ、続きを書いてた4月ごろ…… ブレーカー落ちが原因でいままで書いてたやつと、ここに投稿する予定だった3本が謎文字に変換されてて利用不可能になり、モチベが下がっちゃいました。 オリジナルキャラクターというのは入れないつもりで、何度かルートを変換しながら変えてたので(最初はゼルガディスも海に落とす予定が、邪魔になったんで切り捨てました)、まるごと全部消えるとどう書こうか迷って続きにいまだ手が出ません。 そのうち書くかもしれませんが、いつになるかはわかりません^^; いま忙しいので落ち着いてからかな。 狡猾なアメリアは大好きです。 原作は冷静かつ狡猾でいなければ! | |||