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竜の血の連なり・・・か?(修正版) 前編
紫清 月季花
2009年10月30日10時56分40秒



 ―『竜の血の連なり・・・か?(修正版)』―





よく晴れた日のこと、リナとガウリイの前に一人の青年が現れた。






その日は本当に良く晴れていた、雲ひとつ無く吸い込まれるのでは思えるほどの蒼さで。
何時もの様に、リナ達が食堂の料理を制覇中に現れた、金髪交じりの紅い髪に金の目をした青年は。
「リナ=インバースだな?」
青年の問いかけをさらりと無視するリナ。
食事中の彼女に話しかけたとて、大概はろくに聞いてもらえ無いのだ・・・
「返事をする気は無しか・・・まあいいか、親父には無視されたから置いてきたと言えば・・・」
「って、ちょっと待ちなさいよ!」
「・・・なんだちゃんと聞いてたのか」
「とりあえず、あんた誰よ?」
香茶を飲みつつ聞いてみる
「俺か?俺は・・・火竜王ヴラバザードと水竜王ラグラディアの息子で火竜神ザード。
先に言っとくが名前が安直とか言うな、親父の名前の一部を貰ってるから、名前自体に力があるんだ」
さらりと返された答えに、リナは飲みかけていた香茶を吹き出す。
ガウリイの方といえば、いかにもよく解らんといった表情を浮かべ、リナに説明を求める視線を送る。
「火竜王の・・・息子ぉ!!!?」
リナ絶叫。
無理も無い事だろう、あの火竜王に息子がいるとは誰も思わないだろう・・・多分・・・




例のごとくどつき漫才でガウリイに説明した後、ようやく本題に方に移った。
なおガウリイがボケて「でっかいトカゲの親玉か?」と発言したため、
ザードにどつき倒され、ガウリイの顔が地面にメリコミ、地面に顔型が出来てたりする、
微笑ましいエピソードがあったりするが。
「・・・で、本題に入るけど。火竜王があたし達を呼んでるのね?」
「ああ、親父はあんたらに証人になってもらいたいらしい」
「あたしとしてはもう火竜王に関わりたくないないんだけど」
ザードは微かに顔を顰める、リナの気持ちも解らなくは無いのだ。
父である火竜王の使いたるゴールドドラゴンの所業を考えれば・・・彼らの行きすぎた行動の結果が、
先の異界の魔王の召喚という騒ぎになったのだから。
だがその火竜王はそれらの償いの為に、当事者となった者達に自らの償いを見届けてもらいたいのだ。
「・・・気持ちは・・・解らんでもない。
だが、親父にいい加減けりをつけさせてやってくれ、親父は辛いんだよ・・・」
抑揚の無い声に滲むのは悲しみと、無力感・・・
「・・・・解ったわよ、神様のお願いなんて蹴ったりしたら、姉ちゃんにばれた時に殺されかねないし・・・。
行ったげるわよ」
「・・・礼を言う・・・」





「で、いきなり転送されたけど、ここは何処なワケ?」
其処は、祭壇のようなものが置かれた無駄に広い場所だった。
「おい、リナ。あれ・・・」
ガウリイに振り向くと、其処には既に死に絶えたはずのゴールドドラゴンとエンシェントドラゴンが居た。
「何で・・・生きてんのよ・・」
声が掠れている・・・
「私の力だ、リナ=インバース。
私の償いなのだ・・・」
其処に居たのは、ザードによく似た壮年の男性。
「・・・まさか・・・火竜王?」
「そうだ」
いきなり現れ、さらりと爆弾発言するのは血筋なのだろうか?
その火竜王の後ろには、見知った顔と見知らぬ顔が居た。
「久しぶりね、ゼル、アメリア。
フィリアも久しぶり、それと・・・ヴァルガーヴも・・・」
「なあ、リナ、何でヴァル何とかがここに居るんだ?
あいつって卵になったんじゃなかったけ?」
「あたしが知るわけ無いでしょう(怒)」
「説明がいるかい?
リナ=インバース」
「いい加減そのフルネームで呼ぶのを止めてよ。
それと、きっちり説明してよ」

ヴァルガーヴの説明によると、ヴァルガーヴを卵の状態で再生させたのはヴォルフィード。
かの神が残された最後の力を使ってヴァルガーヴをこの世界に留めたのだ。
そうしなければ彼も混沌の海へと帰る事になるから。
彼の絶望に惹かれてこの世界に来たとはいえ・・・巻き込んでしまったことは事実であり、
利用したとも言えるから・・・勝手ではあっても償おうとしたのだ。
「ああ、それと。
俺の名はもうヴァルガーヴじゃなくてヴァル=アガレスだ。
魔族の力は残ってないしな」
「あんたが卵になったとこまでは解ったけど・・・
何で卵だったものが、ここまででかくなるのよ??」
「ああ、そりゃあのオッサンの力だ」
火竜王を指差しオッサン呼ばわりに、流石にフィリアが抗議しているが、
当のヴァルは、しれっと聞き流していたりする。
「ところで良いか?
私の方の話をしても」
火竜王は自らの罪と償いを語った。

火竜王の罪は、自らに仕えるゴールドドラゴン族が、エンシェントドラゴン族を滅ぼすのを、
止めることが出来なかったこと。
そしてそこから産まれた嘆きと憎しみが、この世界に破滅に呼び込む鍵となったこと。
その結果が自らに仕えるものを失わせることとなり、この世界に多大な被害を与えたこと。
火竜王の償いは、失われた命の再生。
火竜王の役を息子の火竜神ザードに引き継がせ、最後の審判を仰ぐこと。
その審判を仰ぐ相手は・・・全てのモノの母・・・金色の魔王
ヴラバザードは自らの血で魔法陣描き、かの王を召喚した。声と気配のみの・・・

――我を呼ぶは何故か・・・赤き竜の末裔よ――

「貴女の裁きを受けるためです。全てのモノの母よ」

――裁き?――

「私は・・・」

ヴラバザードはリナ達に話したのと同じ事を繰り返し、裁きを待った。

――汝、審判を下す。
汝が力を封じ、汝が伴侶たるラグラディアを探すが良い。
神では無く唯人して生きよ――

「!!」

――これより火竜王は汝らの子、火竜神ザードが勤めよ!
水竜王の座は汝らの子、水竜神ディアに継がせよ!――

そう告げると気配は消え、ヴラバザードの力は封じられた、そして、古き友に会う。
元火竜王は告げた。



リナ達が連れてこられたのは、火竜王自身が住まう神殿だった。
外から見ればそれほど大きな建物に見えないのに、中は恐ろしく広いのだ。
ヴラバザードは一人神殿の外にいた、古き友に会うために。
どれほど待ったのか、何時の間に現れたのか、腰まである緋色の髪を靡かせた二十代後半くらいの男が居た。
「久しいな、ようやく動けるようになったか・・・ガーヴ」
言われて男は・・・ガーヴは唇の端を上げて笑みを刻む。
かつて、魔族から離反し冥王フィブリゾに滅ぼされたはずの男・・・魔竜王ガーヴ。
「・・・何故・・・俺を助けた?放って置けば滅び消えてゆくだけの俺を・・・」


神話の時代、神と魔は激しい戦いの中にあった、互いの存在を許さず消し去るかのように・・・
やがて時は流れ、竜の名を持つ魔があった、名は魔竜王ガーヴ。
彼は戦いを好んだ、だがけして神を憎んだわけではなく、全力を持って戦う相手だと思っていた。
彼だけが自由だった、何かに囚われることなく在り続けていた。
「何故だろうな・・・私にも良く解らん。
ただ、お前のような男が居なくなると、つまらなくなりそうだったからな・・・・
お前と飲む酒は旨かったしな・・・」
何時からだろうか、似ていることに気づいたのは・・・何時からだろうか、酒を酌み交わすようになったのは・・・
「・・・まあいいさ」
言って静かな、紅蓮の炎と評される程の男が、穏やかとも言える静かな笑みを浮かべる。
「生きてられるんだしな」
紅い男の二人の前に何時から居たのか、ブロンドの髪を短くまとめた女性が立っている。
濃紫のシンプルなラインのドレスを着た、若い女性・・・
どことなく雌豹を思わせる雰囲気を持っている。
「懐かしいな・・・・・何年ぶりだ?・・・・ゼラス」




「千年ぶりか・・・変わらないな、ガーヴ」


「そんなになるか?」


「降魔戦争いらいだろ?」


「そうだったな」


「ガーヴ、戻る気は無いか?」


「・・・・すまねえ・・・・無理だ」





ゼラスが浮かべる笑みは作られた笑み、感情のこもらない作り物の表情――今までそうだった、これからも・・・

「・・・・・・・・・そうか」
つぶやく声は淋しげで、浮かべた表情は脆く壊れそうな儚い微笑み。
解っていたのだ、ガーヴは二度と戻らない。
魔族から永遠に離れていこうとしていることに・・・ただ、認めたくなかっただけなのだ。
失われた同胞を・・・
ふとガーヴが何かを投げてよこした。
「・・・やるよ、それ」
艶を消した金の縁飾りの付いたペンダント。
嵌められている石はファイヤーオパール、炎のような美しい石。
「約束・・・してたろ?お前にやるって」




まだガーヴが魔族の側に居た頃
ゼラスはガーヴが手に持って遊んでいる石をみてルビーかと尋ねたのだ。
「こいつはファイヤーオパールつって、ルビーとは違う石さ。
いるならやるぜ?
お前に」
「良いのか?」
「こういう綺麗なモンは男の俺が持つより、お前みたいないい女が持つモンだ」
そういって笑う顔は子供のような無邪気で、惹き込まれるほどの魅力を持っていた。
「でもこのまま渡すってのは芸がねえな・・・ペンダントかブローチかに加工してからお前にやるよ」
「楽しみにしていよう」


「覚えていたのか・・・あの約束・・・」
忘れていた・・・いや・・・忘れたと思っていただけ・・・

沈黙が支配していく・・・互いに敵同士になりながらも、憎むことの出来ない相手がいる。

互いに目指すものが違ってしまったから

望むものが変わってしまったから

それでも変ることのない者もいるから・・・あらゆるものを飲み込んで

滅びの海へと堕ちゆく事を望む者と

足掻き続け前に進み生き続けようとする者に。


「ゼラス」

「何だ」

「いい女だよ、お前・・・昔も・・・今も」

「・・・」

「行くんだろ?」

「・・・ああ、次に遭うときは・・・」

やがて、景色に溶け込む様にその姿を消した。

・・・・ありがとう・・・さようなら・・・

「声が聞こえた気がしたな、ガーヴ」
「そうか?」

妙なところで不器用な友を見やってため息をつく。
この男は何処までも人を惹き付けながらも、全く気づいていないのだ。
だからこそ・・・友と呼べるのだろう・・・
「で、お前はどーすんだ?」
「・・・アクアを探す」
「ラグラディアをか?」
「んん〜、あのお方の命であるしな」
「マジか;;」





「俺も行くからな」
「頼りにさせてもらうからな」


何時か会えるだろうか、大切な人に・・・・


<続>
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親記事: 竜の血の連なり・・・か?を修正、再掲示。-投稿者:紫清 月季花
コメント: なし

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