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The song of a dragon. The requiem to darkness. 第38章
紫清 月季花
2009年11月6日12時55分15秒


【The song of a dragon. The requiem to darkness. ―竜の謳・闇への鎮魂歌―】





















―――時を巻き戻せたら良いのに・・・・そう思うだろ?・・・・・・・・ねえ、リーザ・・・・・













「僕は・・・」
青年――ゼクスは一瞬目をふせ、すっと目をあけるとふわりと微笑む。
「僕はエリック。
よろしくね、アイズさん」

――リーザが生きていれば・・・この位の年かな・・・・
















あれから、アイゼリナルは出会った青年・・・・エリックと名乗るこの青年と、街道を進んでいた。
「じゃあ、エリックさんは町から町へ移動しながら先生をしてるんだすか?」
「うん、都市部や大きな町はともかく、小さな町や辺境の村じゃ、
ろくに文字の読み書きも出来ない人が居るんだ。
だから、僕はそう言う所を回って、移動教師みたいな事をしてるんだ」
「あの、失礼ですけど・・・・報酬とかって貰ってるんですか?」
「そうだね、金銭的な報酬はほとんど無いけど・・・・別に、寝食に困った事は無いなあ。
寝るとこや、食事は行った先で用意してくれる事が殆どだから。
文字の読み書きが出来るってことは、色々便利だから」
「・・・よく解らないんですけど?」
「うん、普通に大きな町で平凡に生活してる人には縁が無い話だけど・・・・・
辺境に行くとね、当たり前のように人を売り買いするんだ・・・・
それだけ、収入が無いってことなんだけど・・・・・
そこで、交わされる契約書に何が書いてあるか、文字が読めないと、
何が書いてあるかわからない訳」
「人身売買!?
そんなっ・・・・」
「あ、一応弁解させて貰うと、結果としてそうなってるって事で、
売られる側は、契約書内容は文字が読めないせいで、
自分たちが商品にされた事に、すぐには気づかないんだ。
商品にされた人の家族も、自分たちが家族を売ったと気づかない。
契約書さえ読めれば、その内容さえわかれば、そんな馬鹿な事はしないよ」
「えーと、それって・・・・自分達の家族を知らずに人身売買の商品にしてるって事ですか?
で、その契約書は身元保証書のような物だと思ってるとか?」
「うん、そんな感じ」
「なんだか・・・酷い・・・」
「うん、酷いよね・・・・だから僕は少しでもそういう被害が出ないようにって思って。
そういう背景があるから、僕みたいな所謂よそ者≠ナも、読み書きを教える先生≠ヘ欲しいんだよ」
「で、これから行くのが、そういった村の一つななんですね」
「うん」









朝起きたら、目が腫れていた。
何かの予知夢だと思うが、そのせいで涙が止まらなかったのだ。
「・・・・この顔で出て行ったら・・・ヨシユキ殿に何言われるか・・・・
アガレス様は見て見ぬ振り位はしてくださるかもしれないけど・・・・」
瑠璃――ラピスは思わず眉根を寄せる。
「はあ・・・・どうしよう?」


「なかなか起きてきませんね・・・・姫様は」
「ヨシユキだっけか?
その姫様≠チてのはやめろ、一応お忍びってやつだからよ」
美雪の言葉にヴァルはポツリと突っ込む。
本当は初日に言うべきだったが、ラピスに振り回され言う機会の逃していたのだ。
「ではなんと?」
「普通に名前を呼べばいいだろ」
「えーと、ラピス様?」
「意地でも様付けか・・・」
美雪の言葉にヴァルは僅かに呆れながらも、仕方ないかと思い直す。
自身でさえ、ガーヴをいまだに様付けで呼んでいるのだから。
「あんまり起きてくるのが遅いようなら、呼びに行ってやれ」













ゼクス――エリックはアイゼリナルと小さな村に訪れていた。
どうやら彼は定期的にこの村には訪れているらしい。
あっという間に子供達に囲まれ、連れて行かれてしまった。
一人ぽつーんと置いてけぼりを食らったアイゼリナルは、村をゆっくりと見て回る。
最初に訪れた大きな町もそうだが、どうも自分たち結界内の国々とは違う文化を持っているらしい。
そして、例に漏れずここにも天竜王ゆかりの神殿があるが、流石にこじんまりとした建物である。
すれ違う人々の服装も自分とは明らかに違う。
が、自分達の世界と似たような服の人も居る。
結界内では、貫頭衣や釦がけ、ローブめいたものが主流だが、この国ではバスローブのように前を合わせて、
それも二・三枚重ねてから、帯で締める様な服が多い。
丈も様々で、その下に穿くズボンだと思うが形が変わっている。
キュロットに似ているが、それよりはるかに丈が長い、くるぶしが隠れるまである。
「色んな文化が混ざってるって事かしら?」
そうして色々観察していると、漸く開放されたのか、エリックがこちらに歩いてくる。
「九竜皇国に近いからね・・・・・って、ごめんね、ほっぽり出しちゃって」
「いえ、いいんですか、向こうは?」
「うん、大丈夫。
あ、君の泊まるとこだけど、村長さんが泊めてくれるって。
他所の国の事色々聞いてみたいって」
「私でよければ・・・」

――彼女が何者であれ、ここでの活動を邪魔されないようにしないと・・・・

エリック――ゼクスは人のいい穏やかな笑みを浮かべながら、彼女をどう煙に巻くか考える。
ゼクスにとって、恋とは呼べないほど淡い想いを抱いた相手に・・・・リーザによく似た彼女と居るのは
色々辛いが、同時に側にずっと居て欲しいという感情さえわく。

――・・・・ああ、僕もどこか狂ってるんだろうな・・・・・










――――――――――――――・・・・・・・・また君に会いたいよ・・・・・・・・・・・昔みたいに・・・・・・・












<続>


【あとがき】


こんにちは、月季花です。
えー・・・・・かなりほったらかしていた『竜の謳』です。
ゼクスの偽名は「オペラ座の怪人」のファントムの名前です。

ステフ:お久しぶりダネ。

ぬお!?

ステフ:ボクの出番は?

えーと、またそのうち(汗)

ステフ:楽しみにしてるヨ。

はははは・・・・・
ではこの辺で。

ステフ:次がいつのなるか解らないケド。
次もよろしくネ。
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親記事: The song of a dragon. -投稿者:紫清 月季花
コメント: なし

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