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漆黒に踊り出る9
井上アイ
http://kibunnya.kakurezato.com/
2010年2月16日23時24分39秒
ワイザーの車は、パトカーの列の傍に、止められた。
「ここの人間は、絶対頭悪いですよ」
若い警察官は、運転している間、ずっと黙っていたが、車を止めると同時に、ボソリと漏らした。
尊敬する警部を、まるで邪魔者を追い出す様な、そんな扱いをしたライアンが、許せずに、ずっと吐き出しそうな不満を、抑えていたのだが、とうとう我慢出来なくなってしまったのだ。
「あちらには、あちらの考えがあるのだろう」
それに苦笑で応え、ワイザーは、車から出、
「今夜は、騒がしくなりそうだな」
誰に言うでもなく、溢す。
都会の夜は、星の光が届かず、新月の今日は、オフィスビルからの光で、いつもより漆黒に見え、時が経つにつれ、より一層深くなっていく。
「警部、ライアン殿からお電話です」
「代わろう」
厳戒体制が引かれ、静かなオフィス街。
それを眺めていたワイザーは、横からの声に応え、携帯電話を受け取る。
『やはり、他の階にも、警備を置くべきだと考え直してね。これから、警備会社の増援が来る事になっている。車は8台だ。止めずに、通してくれ』
「分かりました。では、部下に伝えておきましょう」
『では失礼する』
電話の向こうの声に、ワイザーが応えると、短い言葉と共に、通話が途切れた。
「ふむ……」
「警部、どの様な用件でしたか?」
顎を撫で、細い目をさらに細めたワイザー。
電話を渡した警察官は、微動だにせず、横で指令を待つ。
「警備会社の車が、8台来るから、通してやってくれ」
「分かりました。検問の方にも伝えます」
ビルのある1区画は、警察により、規制されており、この区画に入る道路全てに、検問が張られてある。
他のオフィスにも、協力を要請し、残業などで残らない様にしてあるので、他のビルも、今は警備員か、必要に応じて残っている者だけ。という、非常に静かな状況だ。
その為、灯かりが少なく、パトカーの灯かりに、ビルが、不気味に浮き上がる。
45分後、並んだ8台のワンボックスカーが、ワイザーの前を通過し、問題のビルへと吸い込まれていく。
「ザングルス殿、いかがですか?」
パトカーと警察官達から離れ、ワイザーは、ザングルスの元を訪ねた。
「収穫なしです。所で、警備会社の車が通りましたが?」
「増援を頼んだ。と聞かされたので、通したのですよ」
「ふぅん」
「どうも、ザングルス殿は、ライアン殿を、信用されてない様ですな」
◆◆◆
相変わらず続きます〜
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