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◆−お久しぶりの投稿です。カプ無し−井上アイ (2010/1/4 16:00:59) No.18556 ┗漆黒に現る2−井上アイ (2010/1/4 16:11:44) No.18557 ┗漆黒に現る3−井上アイ (2010/1/4 16:25:42) No.18558 ┗漆黒に現る4−井上アイ (2010/1/4 16:38:49) No.18559 ┣Re:漆黒に現る4−匿名 (2010/1/19 14:06:54) No.18563 ┃┗あわわわ、すみません−井上アイ (2010/2/7 20:33:20) No.18568 ┗漆黒に踊り出る−井上アイ (2010/2/7 20:39:57) No.18569 ┗漆黒に踊り出る2−井上アイ (2010/2/7 20:51:42) No.18570 ┗漆黒に踊り出る3−井上アイ (2010/2/7 20:58:06) No.18571 ┗漆黒に踊り出る4−井上アイ (2010/2/7 21:18:11) No.18572 ┗漆黒に踊り出る5−井上アイ (2010/2/11 04:24:20) No.18573 ┗漆黒に踊り出る6−井上アイ (2010/2/11 17:39:18) No.18574 ┗漆黒に踊り出る7−井上アイ (2010/2/11 17:45:20) No.18575 ┣タイムリー(笑)−井上アイ (2010/2/12 21:17:56) No.18576 ┗漆黒に踊り出る8−井上アイ (2010/2/13 10:00:49) No.18577 ┗漆黒に踊り出る9−井上アイ (2010/2/16 23:24:39) No.18578 ┣漆黒に踊り出る10−井上アイ (2010/2/16 23:26:41) No.18579 ┗漆黒に踊り出る11−井上アイ (2010/2/18 02:17:23) No.18580 ┗漆黒に踊り出る12−井上アイ (2010/2/18 02:22:51) No.18581 ┗漆黒に踊り出る13−井上アイ (2010/2/18 02:29:29) No.18582 ┗お詫び−井上アイ (2010/2/25 20:58:02) No.18583
18556 | お久しぶりの投稿です。カプ無し | 井上アイ URL | 2010/1/4 16:00:59 |
2年ぶりの投稿…… 名前が、出て来ないですが、スレイヤーズの、現代パロ ◆◆◆◆【漆黒に現る】◆◆◆◆ 深夜のオフィス街を、ワンボックスカーが、走行している。警備会社の社名が、プリントされたその車は、迷う事なく、一つのビルへ。 地下駐車場には、同じ車が何台もあり、パトカーさえも、何台も止まっていた。 「よお」 「あれ、お前、今日は休みじゃ?」 声を掛けられた男は、首を傾げ、相手を見る。 禿げた頭に、鋭い眼光、高い背と、幅のある身体、それだけでも十分だが、身を包む警備服で、更に迫力を増している。 「緊急召集掛ったんだよ。たく、バイトがあるって〜のによ」 「まだ、バイトしてたのかよ?禁止されてるから、辞めろて、言ってんだろ?」 「借金返すまでだって」 「ギャンブル止めれば、済む話だろうが」 「当たった時の、高揚感、知らねぇのか?」 「で、ぱ〜!と使ってんだろうが」 「そこ!喋ってないで、仕事しろ!!」 離れた場所からの、上司の叱責に、話に盛り上がっていた2人が、肩を竦める。 「ピリピリしてんな」 ポソリと、禿げ頭が溢す。 ポソリと、禿げ頭が溢す。 10畳程の部屋には、警備服姿が7人。 25階建てのビルの、17階にある、金庫室の前が、その部屋で、地上からも、屋上からも、そこに辿り着くまでに、警察と警備員・警備システムが、待ち受けている。 で、金庫室の前を、警備主任が、廊下側に、禿げ頭と、先程の男が、扉を挟んで立っている。 「当たり前だろ。怪盗リッチからの、予告状が、届いたんだ」 『怪盗リッチ』、人を馬鹿にした様な名前だが、世界を股に掛けた泥棒で、これまた、人を馬鹿にした様に、予告状を出し、どんなに警備を固めても、狙った物を、盗んで行ってしまう。 変装が得意らしいと、有名なので、予告状が届いた先の警備の者達は、身体検査をされるのが、通例である。 噂は、それ以外にも、拳銃の腕が良い、剣の腕が良い、頭脳明晰、実は吸血鬼であるとか、胡散臭い物まで数えれば、きりがない程、『怪盗リッチ』は有名だ。 「ん?何か、変じゃないか?」 不意に、禿げ頭が、眉根を寄せる。 当然、すぐそばにいる男が、扉の向こうに、警戒をし、他の者は、拳銃を取り出す。 プシューと、風船の空気が抜ける様な、そんな音が、天井から漏れ……… ◆◆◆◆ いきなり続く。すみません、携帯からなんで、文字制限が!! | |||
18557 | 漆黒に現る2 | 井上アイ URL | 2010/1/4 16:11:44 |
記事番号18556へのコメント 「上か?!!」 誰かが、鋭い声を上げると、ガァン!と銃声が鳴る。 部屋中の視線が、天井へと向けられ、緊迫する空気、天井から、水が滴り落ちる。スプリンクラーに、弾丸が当たったのだ。 天井を、慌てて移動しているのか、バタバタと音が響く。その音を目安に、幾つもの銃声が鳴り響くが、外から応援は来ない。 警備主任は、焦った。 廊下に居た警備が、来ない事と、天井から、絶え間なく降る水、混乱している銃声に。 ここを突破されては!と。混乱する頭を、叱咤し、金庫室への扉の前で、身構える。 足元が、水に濡れ。 そして、バチバチと、音を立て、何かが走る。 靴底は、ゴムだが、発生源は、天井。 そして、そこから、絶え間なく降る水。 部屋中の人間に、等しく訪れた静寂。 いや、一人だけ免れていた。 「よっと」 金庫室の前で、伸びている警備主任を、禿げ頭が、退かす。 静かになった室内。静めたのは、死なない程度の電流。それを、禿げ頭は、免れていたのだ。 禿げ頭の前には、金庫室への、電子キーのキーパッド。それを、何の迷いもなく、太い指が、ピピピ、ピピと、5桁の数字を押す。 ドアノブを捻ると、抵抗も無く開き、当然の様に、禿げ頭は、扉を潜る。 金庫室は、2畳分の空間を、頑丈な檻に隔てられ、丁度半々に分けられている。 檻の向こう側には、重厚な扉の金庫。 が、そちらには、見向きもせず、禿げ頭は、左を向く。 入って来た扉を左手に、1歩行けば、壁の真ん前に、辿り着く。 禿げ頭の目線の高さにある、社訓が書かれた額縁を、武骨な手が、時計回りに回し、90度回り、垂直になると、右に少しずらし、今度は上にずらし、そして左にずらす。 ガチリと、手応えを感じ、禿げ頭は、額縁を手前に持ち上げる。 額縁の掛けてあった場所には、隠し金庫があった。 「……左目?ああ…」 ポツリと溢すと、禿げ頭は、金庫にある、暗い円の所に、左目を当てる。 ピピッと、電子音がしたのを確認し、金庫の扉に、手が掛る。中に入っていたのは、幾つもの宝石。 それを、全て取り、代わりに一枚の、名刺サイズの紙を忍ばせ、金庫を締め、額縁を元通りに戻し、禿げ頭は、踵を返す。 廊下は、夜のオフィスだけあって、静かであったが、所々に倒れている警備員と警察が、その景色を異常なものに。 そこを、音も無く、突っきり、窓のある廊下に出ると、直ぐに窓を開け、身を乗り出す。 ◆◆◆◆ 文字制限が……… | |||
18558 | 漆黒に現る3 | 井上アイ URL | 2010/1/4 16:25:42 |
記事番号18557へのコメント グッ!と、腕の力で、上ろうとすると、一本のワイヤーが、その視界に入る。 視線を、上に転じると、月をバックにした、細い影。 「たく……あいつの仕業か」 呆れた声を漏らしたその声は、警備員の男と話をしていたのとは、比べられない程、違う。 キュゥと、左手にグローブを着用し、手首の所にある金具に、ワイヤーを引っかけ、クイクイと、ワイヤーを引っ張る。 それを合図にか、巨体が、夜のビルを、駆け上り、数分もしない内に、屋上へと辿り着く。 「はぁいv素敵な月夜ね♪」 「また、どやされちまうな」 屋上で待っていた人物の、可愛らしい声に、禿げ頭は、苦笑を浮かべてしまう。 この後の展開が、目に見えてしまう程、相手の事を、知り尽くしているからだ。 「あら、感謝して欲しい位よ?下に、あんたの、愛しの彼が居るんだもの」 「知ってる。つうか、お前さん、また、そんな格好を……」 クスクスと笑う細い身体に、困った様な声が、掛けられる。 ピッチリとした、黒い皮のボディスーツが、華奢な身体を、更に華奢に見せているのだ。 身長が低く、起伏が乏しいとはいえ、男ではありえないその曲線と、服装が、酷くミスマッチで、危うい美しさがある。 特に、今日の様に、月明かりが、眩しい下では、いつも以上に、際立って、良く見えてしまう。 「動きやすいのよ」 禿げ頭の心配をよそに、栗色の髪を、ふわりと掻き上げ、華奢な身体が、巨体に近付く。 その時、バリバリバリ、と、轟音と、風を伴って、金属の巨体が、2人に近付く。 「じゃ、お勤め有難うね♪」 踊る髪の毛を押さえ、華奢な身体は、ワイヤーを滑り、あっと言う間に、視界から消える。 それを見送り、禿げ頭は、夜空に浮かぶ、巨体を見上げた。 「怒るだろうな……」 降りて来た梯子を、素早く上ると、運転席には、目付きの悪い男が。 「どうよ?」 「上手く行ったんだけどな……」 「おい、まさか……」 自分の問いに、返って来た、不景気な声に、目付きの悪い男が、更に目付きを悪くする。 「ああ……」 「ああ。じゃねぇだろが!後で、みっちり話するからな!」 不機嫌を露に、男は、機体を、操る。 夜空を舞う、ヘリコプターに、地上で隠れていた男が、車に乗り込んだ。 「リッチだ。追え!!」 運転をしている若者の隣で、窓から身を乗り出し、ウェーブの掛った黒髪を踊らせ、男は叫ぶ。 「待て〜!リッチ〜!!」 ◆◆◆◆ キャラがやっと…… | |||
18559 | 漆黒に現る4 | 井上アイ URL | 2010/1/4 16:38:49 |
記事番号18558へのコメント 着古したコートを愛用する、その男は、リッチ逮捕に、命を掛けている、インターポールの人間だ。 屋上で、見張ろうか、としたのだが、ビルの持ち主が、それを拒んだので、こうして、地上で張っていたのだ。 後ろに、パトカーが続き、深夜のオフィス街には、サイレンが鳴り響く。 暗闇を走るヘリコプターに、もう一つ、追跡者が登場する。 「来やすったな。頼むぜ……」 ヘリコプターを操る男は、レーダーに現れた一つの光に、ニヤリと笑い、予定通りのルートを選ぶ。 後方から、鋭い物が迫り、ヘリコプターは、衝撃に揺れる。 新たに現れた追跡者は、武装したヘリコプターであった。 「おいおい、気が早いだろうが」 揺れる機体を制御し、ヘリコプターは、夜空を走る。 地上と空の追跡者を連れ、ヘリコプターは、ビルの谷間を通過。 「頼むぜ……」 「頼んだぞ」 奇しくも、パイロットと、禿げ頭の声が、ハモる。 ビルの屋上で、一つの影が、迷いもなく、跳躍、追跡しているヘリコプターに、着地すると、銀の軌跡が走らせ、機体を蹴り、近くのビルの屋上へ、跳躍。 「ふん、また、つまらないものを斬ったな……」 夜空を滑る巨体に視線をやり、銀髪の男が呟くと、巨体が、バランスを崩し、降下しだす。 銀髪の男が、仲間達との合流地点である、廃ビルの1室で、30分程待つと、ノックが、決められたリズムで、叩かれる。 鍵を開けると、不機嫌を露な男が、まず入って来て、その後を、困った顔の、禿げ頭が続く。 「聞いてくれよ!こいつ、また、あのチンクシャに、やられたんだぜ!!」 目付きの悪い男は、言いながら、タバコに火をつける。 「そう言うな、て。全部持って行かれた訳じゃないんだし」 のほほんと言いながら、禿げ頭は、頭をベリベリと剥がす。 下から出て来たのは、幾つもの宝石と、整った顔に、金糸の様な髪。特殊メイクの身体にも、宝石は隠されていて、ボロボロと、出てくる。 「服に隠したの、全部持って行かれたんだと」 ガリガリと、赤い髪を掻く男と、溜め息を吐く銀髪。 この3人こそが、世界を騒がしている、怪盗リッチのメンバーだ。 ◆◆◆◆ え〜、何のパロか、分かりますか? 奴に、「つまらないものを斬った」と、言わせたいが為の、キャスティングです。 起伏が足らん○子ちゃんの出来上がり(笑) ブログに載せた物ですが、投稿用に、作品がつくれなかったので…… 一応、お年始代わりです。何故、こんな内容なのか(汗) | |||
18563 | Re:漆黒に現る4 | 匿名 | 2010/1/19 14:06:54 |
記事番号18559へのコメント アクションが物足りないと思う。 良く分からない箇所もあるし、情景が分かりづらいかも。 | |||
18568 | あわわわ、すみません | 井上アイ | 2010/2/7 20:33:20 |
記事番号18563へのコメント まだ、いらしてますか? 放置すみません。 え〜、アクション足らないのは、認識しておりました。 戦闘シーンが苦手なので、つい省いてしまいました。 描写が足らないてのは、勉強不足で申し訳ありませんとしか、言えないのですが……(^^; 言い訳ばかりで、すみません。懲りずに、読んでやって下さいませ。 | |||
18569 | 漆黒に踊り出る | 井上アイ URL | 2010/2/7 20:39:57 |
記事番号18559へのコメント オフィスの、最上階は、そこで一番偉い、そして、全てを見下ろしたい人物の為の物。 そこの主、50代半ばの男は、愛人を何人囲えるか、を、趣味の一つとして持っていた。 一級品の調度品に囲まれ、深くソファーに腰を下ろした男は、いやらしくない目付きで、向かいのソファーに腰掛けている女性を見る。 線が細く、身長は低い、童顔の女性が、そこには居た。 今までの愛人達とはタイプが異なるが、だからこそ、手に入れたい。と、男は、野心を密かに、燃え上がらせた。 見目が良く、プロポーション抜群で、お金が大好きな女性達を、愛人として何人も囲ってきた男。 関係を切るのは簡単で、手切れ金だけで済むので、手軽に手に入り、切る事が出来るそういった女性達は、男にとって、格好の相手であった。 それが、何故か、そういうタイプではない、目の前の女性が気になってしまった。 「お招き頂き、有難うございます。ご立派なオフィスですね」 女の子然たる声は、その容姿によく似合っており、学生服を着せれば、さらに良く似合って聞こえるだろう。 幼い顔に、パンツスーツ、栗色の長い髪を、後ろで一つに纏めたその女性。 女性との出会いは、昨夜、男が行った割烹料亭での事だ。 カードを持たない男は、会計の時、千円足らない事に気付き、顔を渋くさせた。 女性同伴の時に、ツケにする等と、男のプライドが許せず、かと言って、同伴した女性に借りるのは、更に許せない。 そんな時、目の前の女性が、 「お客様、落とされましたよ」 と、さりげなくお札を渡してくれた。 折り畳まれたお札の中には、メルアドが書かれた紙が、挟まれてあり、帰宅後、今日会う約束を交したのだ。 「いやいや、こちらこそ。昨晩は、有難うございました。お陰様で、恥をかかずに済みましたよ」 言いながら、男は机の上で、友禅柄の千代紙を滑らせ、女性の前に置く。 それに、女性は顔を綻ばせた。 「素敵な紙」 紅葉が散るオレンジ色の千代紙は、のし袋の様に折られてあり、その中には、男が、昨晩借りた1万円がある。 プライド高い男は、誰かにお金を借りるなど、本来なら許せないのだが、あの時、何故か素直に受け取ってしまっていた。 押し付けがましい所がなく、返ってくるかも分からないのに、1万円を差し出し、それを受け取らせた女性に興味を持ち、お金を返すという名目で、この場所へ誘い込んだ。 ◆◆◆◆ 懲りずに、携帯から(汗) 上の作品の足らない部分を補う作品です。 | |||
18570 | 漆黒に踊り出る2 | 井上アイ URL | 2010/2/7 20:51:42 |
記事番号18569へのコメント 今居る部屋は、男が女性を落とす時に使う部屋で、今まで、何人もの女性を招き入れていた。 「ご足労頂いたお礼に、この後食事でもどうでしょう?イタリア料理の美味しい所に案内したいのですが?」 男はそう言って、下心のない微笑みを浮かべる。 下心を露にすると、逃げるタイプだ。と、見抜いたからだ。 予約した店は、相手に警戒されない様に、イタリア料理の解放的な店。 今日の所は、相手を知る事だけに留めるのが、無難だろう。と、微笑みの内に隠している。 「料亭で働いている君に失礼かな?」 「いえ。イタリア料理も好きですわ。是非、ご相伴させて下さい」 返ってきたのは、嬉しそうな笑み。 そんな時に、 ―コンコン!ガチャ! 「親父!!」 ノックの後、了承も得ず、入って来たのは、男の息子で、年の頃なら30代。 陥落計画の第一段階、彼女を誘う事に成功し、気を良くしていた男は、眉をピクリと動かした。 「ここでは、会長と呼ばないか」 落とそうと企んでいる、そんな時に、父親という立場を持ち込まれ、罵倒したい気持ちを、内に秘め、男は諭す様に言った。 この部屋の使用目的を知っている、その息子は、一瞬気まずそうにしたが、すぐに慌てた様子に戻る。 「すみません、急ぎの用だったので。実は……」 傍らに居る女性を気にしてか、息子は父親に近寄り、耳打ちをする。 聞き終えると、父親は、女性に向かって口を開く。 「君、済まないが、食事は、またの機会で構わないかな?」 「かしこまりました。楽しみにしております」 緊急な用だと察したのだろう、女性は笑顔一つ残し、一礼して部屋を出る。 それを見送り、父親は息子と向き合った。 「どこから漏れた?」 「俺だって知りたい。親父じゃないのか?」 疑いの眼差しに、息子は不服を露にし、父親に不注意がなかったか、と、逆に視線を送る。 「そんな訳あるまい。だが、知っているのは、……いや、今は良そう。対策は?」 鋭い視線を送り、父親は、渋い表情で、革張りの椅子に座る。 その机の上に、息子は懐から、名刺サイズのカードを、2枚並べる。 「警備会社を呼んだ。あと、一応、警察には、偽物の予告状を用意して、協力を要請してある」 「ふむ。まあ、妥当な所だろうが……」 ツッ!と並んだカードの1枚取り、父親はそれを見る。 ‐欲深き罪人へ 輝き忘れし哀れな石を、今夜頂く リッチ‐ 「罪人などと、言われたままでは、納得いかんな」 ◆◆◆ 続くι | |||
18571 | 漆黒に踊り出る3 | 井上アイ URL | 2010/2/7 20:58:06 |
記事番号18570へのコメント 言って、父親は、携帯を取り出す。 かけるのは海外で、海外の電話取り次ぎサービスを利用して、国内の知り合いへと、繋いでもらう仕組みだ。 「わたしだ。ふざけた盗人が、今夜来るらしくてな。始末を頼みたい」 エレベーターで、1階へと降りていた女性が、不意にニヤリと笑んだ。 つい先程まで、良い所で邪魔をした馬鹿息子へ、内心激しく罵っていたが、今は、逆に喜んでさえいる。 だが、すぐに顔を引き締め、何事もなかった様に、受付で一礼し、ビルを出て行った。 女性が向かうのは、近くにあるカフェ。 そこの窓際の席に着き、幾つか注文し、風景を眺める様に、外に視線を向ける。 時間は、夕刻。オフィス街なだけあって、通るのは、営業マン風な男や、荷物を抱えた配達人、颯爽と走り抜けるメッセンジャー。 車の数も少なく、不意に、女性の視線が、銀色の車体に向く。 後ろ暗い癖に、よくもまあ。と、内心思いながら、おくれ髪を直す仕草で、さりげなく耳に触れる女性。 実は、男との出会いは、仕組んだものだ。 男の愛人達の中から、そろそろ結婚相手探しの為に、男と決別しようと考えている女性を調べあげ、男が良く利用する割烹料亭に忍び込んだ。 そして、男がその女性を同伴して来店したのが、昨晩。 こっそり、女性とコンタクトを取り、男の財布から、1万円抜いてくれ。と頼んだ。 後は、会計時に、男が渋い顔をした所に、何くわぬ顔で、抜いて貰った1万円と、連絡先のアドレスを渡すだけで、面白い様に事は運んだ。 宝石を扱う、問屋の会社の会長が、あの男の肩書き。 が、裏で、宝石をピンはねし、幾つか隠し持っている事も、脱税したお金を、どこかに隠しているのも、調査済み。 本当は、上手くあの男に近付き、絞れるだけ絞り取り、脱税の証拠を、どこかに売るつもりであったのだが、予定は変更になった。 エレベーターの中で、耳から聞こえた情報が、彼女には心当たりがあった。 あの男の様に、後ろ暗い人間や、裏のある人間、つまり悪人を、狙った、世界を股にかけた泥棒3人組、怪盗リッチだ。 わざわざ、予告状を出す泥棒など、彼女には、それ以外考えられないし、偽物の予告状を、あの馬鹿息子が用意した、という事は、本物の予告状は、後ろ暗い所を突く文面があったという事。 そんな事をするのは、怪盗リッチしかいないのだ。 暫くすると、あの男の澄ました声で、焦りを装った声が、彼女の耳に届く。 ◆◆◆ 続くよ〜 | |||
18572 | 漆黒に踊り出る4 | 井上アイ URL | 2010/2/7 21:18:11 |
記事番号18571へのコメント 座ったソファーに、盗聴機を仕込んできたのだ。 そして、それは、彼女のイヤリングから、彼女の耳に届く仕組みだ。 勿論、それを気付かせる彼女ではない。 常人より耳が良い彼女だからこそ聞き取れる、とても小さな音量だ。 『実は、こんなものが届きまして』 『ふむ、まばゆい光を抱える者へ、恵まれない者に、石を配らせて貰う。と?成程、気障な奴ららしいですな』 聞き覚えの無い声は、先程通った、銀色の車体に乗っていた、刑事であろう。 読まれたのは、用意された、偽物の予告状だと思って、間違いない。 それを聞いた彼女は、白々しい。と、思うのだが、リッチに狙われた、悪人どもが用意するのは、先程の様に、義賊を匂わせる文面が多い為、表向き、怪盗リッチは、義賊として世間では人気が高い。 実質、リッチが動いた数日後、匿名で福祉施設や団体に、寄付がされているので、間違いでは無いのだが。 それでも、それを利用し、偽物の予告状で、警察を呼ぶ奴らが、彼女には許せない。 悪人に人権は無い。思い知れば良い。内心ほくそ笑み、運ばれて来たベーグルを、彼女は口に含んだ。 ◆◆◆ 今日はここまで。 続きは出来次第という事で(汗) | |||
18573 | 漆黒に踊り出る5 | 井上アイ URL | 2010/2/11 04:24:20 |
記事番号18572へのコメント カフェで簡単な食事を終え、彼女が外へ出ると、灰色がかった緑色の車体が、信号待ちで止まっていた。 チラリと、車内を見れば、助手席に、ウェーブの掛った、長い黒髪の男が見え、彼女は内心、モテモテねぇ。などと、その男がご執心している相手を、思い出して笑う。 何食わぬ顔で、その横を通り、彼女は、ビルとは反対の、駅へと向かう。 盗聴機の電波は、直ぐに届かなくなるが、事態は把握出来たので、問題はない。 「インターポールの方が、わざわざ、有難うございます」 新たな客に、ビルの最上階に居る男は、目の前の、ウェーブ掛った、長い黒髪の男を見る。 年の頃なら、20代半ばを過ぎた位か、くたびれた黒いコートの下には、白いシャツとジーンズ、血走った目を、ギラリと光らせ、身分証を懐にしまい、口を開く。 「リッチ逮捕の為に、インターポールに派遣されたんだ。どこにでも駆けつけるぜ」 「それは頼もしい」 笑みを浮かべる、ビルの主に、インターポールの男は、眉をピクリとさせた。 その部屋に、新たな気配が。 「失礼する。警備体制の確認に……」 開いていたドアから、入って来た男は、インターポールの男に気付き、言葉を止めた。 「ザングルス殿?」 「ん?ああ、ワイザー警部」 背後からの声に、インターポールの男=ザングルスが振り返る。 その視線の先には、年の頃なら、40過ぎ、短いブラウンの髪を後ろに撫で付け、柔和さの中に鋭さを持った渋い顔、キャメル色のスーツに、履き潰した靴の男が居た。 「耳が早いですな」 「港署随一の切れ者と噂高いワイザー警部がいるなら、俺の出番はなさそうだ」 差し出されたワイザーの右手、それを握り返し、ザングルスはニヤリと笑う。 それに、とぼけた表情を浮かべ、顎を撫でるワイザー。 「いやはや、困りましたな。実は今回、私は補佐でしてな。警備会社が中心となっておるのですよ」 「ほぉ?どういう事だ?ライアンさん」 鋭い眼光を、背後に立つ男に、ザングルスは向ける。 そこには、困った笑みを浮かべる、ビルの主=ライアンの姿。 「どうもこうも、警察に連絡したのは、一市民として、当然の事。普段出入りする警備の者と、初めてお会いする警察の方。信頼出来るのは、前者では?」 「警察が、信用出来ないて事か?」 「勘違いされては困る。警察あってこそ、平和が保てるというもの」 ザングルスの言葉に、笑みを浮かべ返したが、直ぐに困った表情を、ライアンは浮かべる。 ◆◆◆ 続く | |||
18574 | 漆黒に踊り出る6 | 井上アイ URL | 2010/2/11 17:39:18 |
記事番号18573へのコメント 「しかし、リッチなる盗人は、変装が得意とか。良く知った人間ならともかく、初見の方々を見破るのは、到底無理というもの。なら、安心出来る者達で、大事な商売道具を守りたい。と思うのは、理の当然」 どこか間違いでも?と、首を傾げるライアンに、ザングルスは鼻に皺を寄せ、口を開く。 「リッチの変装を甘く考えると、痛い目に遭うぜ。良く知った警備の人間が、リッチだった。なんて事もある」 「身辺調査がしっかりした、安心出来る警備会社だ。そんな心配無用だと思うがね」 「ザングルス殿、我々警察は、市民の協力あってこそ活動出来ている。現場に立てるのも、通報を頂いたお陰。ライアン殿がおっしゃられるなら、それに従うしか、我々には道が無いのでは?」 反論しようと、口を開いたザングルスを、肩を叩き黙らせ、ワイザーが言う。 「ご理解頂き、有難い。警備体制の確認しますので、どうぞこちらに」 我が意を得た事に、満足げな表情をし、ライアンは、応接テーブルに、ビルの17階の見取図を広げる。 「宝石を保管している金庫室は、17階のここ。前室を守るのは、警備会社の精鋭部隊に。警察の方々は、外の廊下をお願い頂く」 「成程、そこに辿り着くまでに、我々が確保すれば良い。という事ですな?それだけ、信頼されているならば、警察冥利に尽きますな」 ふむふむと、表情の読めない顔で頷いたワイザーの隣で、ザングルスが、天井を指差す。 「俺は、屋上で待機させて貰う」 「申し訳ないが、屋上は、警備上の問題で、18時を過ぎると、出入り出来ない仕組みになっていてね。遠慮願いたい」 「だが、リッチの逃走パターンからしたら、屋上の警備は必要だ」 どこか傲慢な言い方のライアンに、ヒクリと一瞬顔を引き攣らせるザングルス。 それに、何の裏も無い。と言わんばかりの、困った笑みを浮かべ、ライアンが、更に述べる。 「夜間、屋上に出ると、電流が流れる仕組みがあってね。それを切る訳には、いかないもので。ご理解頂きたい」 「……ワイザー警部、俺は、地上で張っています。中の警護、頼みます」 「途中まで、ご一緒しましょう」 苦虫を噛み締めた様に表情を歪めたザングルスが、会長室を出ようとすると、ワイザーもその後を追う。 出て行く2人を見送り、ライアンは、深く椅子に座る。 管轄の刑事が来るのは、予想していた。 ◆◆◆ おっさんだらけ(笑) やっと名前が出てきた。 続く〜♪ | |||
18575 | 漆黒に踊り出る7 | 井上アイ URL | 2010/2/11 17:45:20 |
記事番号18574へのコメント しかし、インターポールの人間まで、出てくるとは、彼は思っていなかった。 リッチを始末させるのに、とんだ邪魔者が来た。と、内心怒り狂っているが、それを表に出さない。 屋上が、逃走ルートの可能性があるのは、ライアンにも分かっている。 空と陸、どちらを選んでも、確保できる様に、手筈はしてある。 密かに口の端を持ち上げ、ライアンは、腰を上げた。 ワイザーと共に、地下の駐車場へ着いたザングルス。2人が目にしたのは、ボディーチェックを受けている警察達。 20台収容出来る駐車場は、警備会社の車とパトカーで、半数を埋め、空いているスペースで、それは行われていた。 「これだけか?」 「人が多いと、動き難いという、ライアン殿の注文でしてな」 50人程の警備会社の制服姿に、警察の人間は20人。 怪盗リッチを相手するには、少ない人数に、眉を寄せたザングルスの横で、ワイザーは肩を竦めた。 「盗んでくれ。て言っている様にしか、見えんな」 「金庫室のある17階だけを固める警備体制ですからな。これ位で十分だと、判断を下されたのでしょうな」 「ワイザー警部はどちらに?」 「それについて、謝らねばなりませんな。私は、警備体制が整い次第、外れる事になっていましてな」 読めない表情で、自らの顎を撫で、言ったワイザーに、ザングルスが驚愕の表情をみせる。 それに、ワイザーは苦笑を浮かべた。 「先に述べた通り、警備の主導権は、警備会社。当然、指揮を取るのも、あちらにおられる。警察側に指揮官がいては、指揮系統が乱れるという事で、私は、建物に残る事を、許されていないのですよ」 「あり得ない。警察を何だと……」 「まあ、中に居なくとも、出来る事はありますからな。一緒に、夜空でも楽しみましょう」 これ以上無いという程、苦々しい表情をしたザングルス。その肩を叩き、ワイザーは癖のある笑みを浮かべた。 それぞれ、乗ってきた車に乗り、地上へと向かう。 地上と地下を隔てる所で、一時停止、守衛室が、そこにはあり、駐車場が開いている間、警備員が常駐しているのだ。 いつもなら、すでにシャッターが下ろされる時間で、居ない筈なのだが、そこには、2人の警備員が居た。 リッチの侵入を警戒して、閉められたシャッターが、その警備員により開けられ、2台の車は、地上へと出る。 地上には、ビルを囲む様に、パトカーが止められていた。 ◆◆◆ 話進まないね…… 続くっす | |||
18576 | タイムリー(笑) | 井上アイ URL | 2010/2/12 21:17:56 |
記事番号18575へのコメント パロの元が、今放映されてますね♪ スピード感と、アクションを学べたら良いのですが、映像を文章に変える。て難しい…… | |||
18577 | 漆黒に踊り出る8 | 井上アイ URL | 2010/2/13 10:00:49 |
記事番号18575へのコメント 規制されているのか、一般車両は見受けられず、物々しい雰囲気が、藍に染まったオフィス街を彩る。 その、物々しいパトカーの列の横を通り、ザングルスの乗る車は、少し離れた脇の道に止められた。 ビルの屋上を見上げるのに、丁度良い所だ。 車から出、近くの物陰に隠れたザングルス。 張り込みといえば、相手に気取られないのが基本だろう。と、どこかズレた思考回路の持ち主なのであった。 ◆◆◆ すみません……何故か掲載されてなかった(汗) データ取っておいて良かった♪ ブログのものを転載しているので、短いのはご了承下さい。 続きます☆それでは、また後日_(._.)_ コメント下されば、舞い踊るので、宜しければ、読んだよだけでも……図々しい?そうですか…… | |||
18578 | 漆黒に踊り出る9 | 井上アイ URL | 2010/2/16 23:24:39 |
記事番号18577へのコメント ワイザーの車は、パトカーの列の傍に、止められた。 「ここの人間は、絶対頭悪いですよ」 若い警察官は、運転している間、ずっと黙っていたが、車を止めると同時に、ボソリと漏らした。 尊敬する警部を、まるで邪魔者を追い出す様な、そんな扱いをしたライアンが、許せずに、ずっと吐き出しそうな不満を、抑えていたのだが、とうとう我慢出来なくなってしまったのだ。 「あちらには、あちらの考えがあるのだろう」 それに苦笑で応え、ワイザーは、車から出、 「今夜は、騒がしくなりそうだな」 誰に言うでもなく、溢す。 都会の夜は、星の光が届かず、新月の今日は、オフィスビルからの光で、いつもより漆黒に見え、時が経つにつれ、より一層深くなっていく。 「警部、ライアン殿からお電話です」 「代わろう」 厳戒体制が引かれ、静かなオフィス街。 それを眺めていたワイザーは、横からの声に応え、携帯電話を受け取る。 『やはり、他の階にも、警備を置くべきだと考え直してね。これから、警備会社の増援が来る事になっている。車は8台だ。止めずに、通してくれ』 「分かりました。では、部下に伝えておきましょう」 『では失礼する』 電話の向こうの声に、ワイザーが応えると、短い言葉と共に、通話が途切れた。 「ふむ……」 「警部、どの様な用件でしたか?」 顎を撫で、細い目をさらに細めたワイザー。 電話を渡した警察官は、微動だにせず、横で指令を待つ。 「警備会社の車が、8台来るから、通してやってくれ」 「分かりました。検問の方にも伝えます」 ビルのある1区画は、警察により、規制されており、この区画に入る道路全てに、検問が張られてある。 他のオフィスにも、協力を要請し、残業などで残らない様にしてあるので、他のビルも、今は警備員か、必要に応じて残っている者だけ。という、非常に静かな状況だ。 その為、灯かりが少なく、パトカーの灯かりに、ビルが、不気味に浮き上がる。 45分後、並んだ8台のワンボックスカーが、ワイザーの前を通過し、問題のビルへと吸い込まれていく。 「ザングルス殿、いかがですか?」 パトカーと警察官達から離れ、ワイザーは、ザングルスの元を訪ねた。 「収穫なしです。所で、警備会社の車が通りましたが?」 「増援を頼んだ。と聞かされたので、通したのですよ」 「ふぅん」 「どうも、ザングルス殿は、ライアン殿を、信用されてない様ですな」 ◆◆◆ 相変わらず続きます〜 | |||
18579 | 漆黒に踊り出る10 | 井上アイ URL | 2010/2/16 23:26:41 |
記事番号18578へのコメント 含みのある相槌に、ワイザーは苦笑を浮かべ、ザングルスの肩を叩き、その場を離れた。 ワイザーが、ザングルスの元に行っていた、その間に、一つの陰が、別のビルへと入って行った。 大事な物を、忘れたのだ。と言って、検問を通ったその女性は、ここまで乗ってきたバイクを押し、敷地内の陰に止める。 ブルゾンを脱ぐと、パンツスーツに包まれた細い身体、足元は黒い皮の靴。ヘルメットの下からは、一つに纏められた髪を、後ろで纏めた、幼さを残した顔が現れる。 バイク用の手袋を、口で取り、同時に、座席シートを開ける。 中の物を取り出し、代わりに手袋とブルゾンを突っ込み、彼女は、荷物を手にした。 柔らかいA4サイズの縦型トートバッグは、僅かに膨らみを帯びており、迷わぬ足取りで、敷地を出、パトカーに囲まれたビルに近付く。 「どうしました?」 「忘れ物をしてしまったの。どうしても、入りたいのだけれど……何かあったんですか?さっきも検問があったし……」 呼び止めた警察官に、女性は不安そうな顔で、キョロキョロとする。 それに、警察官は申し訳ない様に、口を開く。 「実は、リッチから予告状が来ましてね。厳戒体制中なんですよ。なので、ビルには入れないのですよ」 検問では、野次馬を避ける為に、どういった理由で、中に入れないか、伝えられていなかった。 通した人間は、彼女がここの人間だと、思っていなかったのだろう、と判断した警察官に、女性が困った顔を見せる。 「どうしよう……借り物のイヤリングなのよ。明日、返す約束してるのよね」 「分かりました。中と連絡して、聞いてみます。部署はどちらで?」 「……少し、待ってくれる?直接聞いてみるわ」 チラリと後方を確認した警察官に、少し考えてから、女性はトートバッグから、携帯を取り出した。 「もしもし?先程はお邪魔しました。実は、イヤリングを落としてしまったみたいなの、そこに無いかしら?」 と言って、暫し無言で待つ。 対応した身としては、電話中の相手に話掛ける事も、上司に相談しに行く事も出来ず、直立不動で、待つしかない。 「そうですか、直接、探せないかしら?大事な物なの……有り難うございます。実は、もうビルの前に居て、隣に、警察の方がいらっしゃるの、入れてくれる様、伝えてくれないかしら?」 ◆◆◆ 転載が面倒になった、て言ったら、怒ります? ちょっと疲れた……… | |||
18580 | 漆黒に踊り出る11 | 井上アイ URL | 2010/2/18 02:17:23 |
記事番号18578へのコメント 含みのある相槌に、ワイザーは苦笑を浮かべ、ザングルスの肩を叩き、その場を離れた。 ワイザーが、ザングルスの元に行っていた、その間に、一つの陰が、別のビルへと入って行った。 大事な物を、取りに来たのだ。と言って、検問を通ったその女性は、ここまで乗ってきたバイクを押し、敷地内の陰に止める。 ブルゾンを脱ぐと、パンツスーツに包まれた細い身体、足元は黒い皮の靴。ヘルメットの下からは、一つに纏められた髪を、後ろで纏めた、幼さを残した顔が現れる。 バイク用の手袋を、口で取り、同時に、座席シートを開ける。 中の物を取り出し、代わりに手袋とブルゾンを突っ込み、彼女は、荷物を手にした。 柔らかいA4サイズの縦型トートバッグは、僅かに膨らみを帯びており、迷わぬ足取りで、敷地を出、パトカーに囲まれたビルに近付く。 「どうしました?」 「忘れ物をしてしまったの。どうしても、入りたいのだけれど……何かあったんですか?さっきも検問があったし……」 呼び止めた警察官に、女性は不安そうな顔で、キョロキョロとする。 それに、警察官は申し訳ない様に、口を開く。 「実は、リッチから予告状が来ましてね。厳戒体制中なんですよ。なので、ビルには入れないのですよ」 検問では、野次馬を避ける為に、どういった理由で、中に入れないか、伝えられていなかった。 通した人間は、彼女がここの人間だと、思っていなかったのだろう、と判断した警察官に、彼女が困った顔を見せる。 「どうしよう……借り物のイヤリングなのよ。明日、返す約束してるのよね」 「分かりました。中と連絡して、聞いてみます。部署はどちらで?」 「……少し、待ってくれる?直接聞いてみるわ」 チラリと後方を確認した警察官に、少し考えてから、彼女はトートバックから、携帯を取り出した。 「もしもし?先程はお邪魔しました。ソフィアです。そちらに、イヤリング無いかしら?」 と言って、暫し無言で待つ。 対応した身としては、電話中の相手に話掛ける事も、上司に相談しに行く事も出来ず、直立不動で、待つしかない。 「そうですか、直接、探せないかしら?大事な物なの……有り難うございます。実は、もうビルの前に居て、隣に、警察の方がいらっしゃるの、入れてくれる様、伝えてくれないかしら?」 向こうからの声に、応えたのであろう彼女が、携帯電話を差し出し、警察官は、怪訝そうに、それを受け取る。 ◆◆◆ 続く☆ | |||
18581 | 漆黒に踊り出る12 | 井上アイ URL | 2010/2/18 02:22:51 |
記事番号18580へのコメント 同時に、今回の被害者の声が、彼に届く。 『ライアンだ。その女性を、中に入れて差し上げろ。大事な客だ、無用な心配は要らん』 「はあ……しかし、彼女の安全を考えたら、それは軽率かと」 『中には、警備の者が幾らだって居る。その1人を、ボディーガードに付ければ、問題あるまい』 「分かりました。では、地下駐車場へ案内します」 議論を交わす気は無い。と、言外に感じ、警察官が、諦めた声で応えると、すぐにブツリと通話が切られた。 「先程も言った様に、リッチがいつ来ても、おかしくない状況です。警備の方を付けてくれる様だから、1人での行動は、謹んで頂けますか?」 「ご心配有り難うございます」 電話を渡されると同時に、警告を言われ、女性はその両方を、微笑みで受ける。 警察官に案内され、女性が、地下駐車場の入口にある、守衛室の前に辿り着くと、その横のシャッターが開けられ、そこから、1人の警備員が出て来た。 「会長がお待ちです。ご案内しますので、着いて来て下さい」 一礼した警備員に、彼女は小さく頷き、隣の警察官を見上げる。 「有り難う」 「いえ。お気を付けて」 警備員と共に、駐車場へと消えた彼女を見送り、警察官は、持ち場へと戻ろうとしたが、直ぐに方向を変えた。 上司に報告する為だ。 事後報告となってしまったが、相手が、会長のライアンと、直接話し、中へ入る事を認めさせてしまったので、どうしようもない。 駐車場で、互いの身体を調べている警備員の横を通り、彼女は、エレベーターへと。 「ビックリしたわ。急用が出来たんだと思っていたけど、まさか、リッチから予告状が届いたなんて」 「こちらも、寝耳に水ですよ。全く、義賊気取りは良いが、社員一同の、大事な財産とも言える、商売道具を盗むなぞ、許し難い輩だ」 会長室に、無事に案内され、口を開いた彼女。 出迎えたのは、先に会った頃と違い、少し乱れた頭髪と、スーツを脱ぎ、Yシャツにスラックスという格好のライアンであった。 案内した警備員は、会長室には入らず、外で待機中だ。 「随分、お疲れですね」 「何、社員を思えば、当然の事。これしきの事、苦労とは思いませんよ。そうそう、イヤリングでしたな?暫くの時間、お探して下さって結構ですよ」 気遣う様に言った彼女に、首を横に振り、人当たりの良い笑みを浮かべるライアン。 ◆◆◆ 今更、番号の付け方、間違っていた。と気付いてみる。 続く♪ | |||
18582 | 漆黒に踊り出る13 | 井上アイ URL | 2010/2/18 02:29:29 |
記事番号18581へのコメント その笑みに、内心鳥肌を立てるが、彼女はふわりと微笑む。 「すぐ終わらせますわ」 会長室には、プライベート用の部屋がある。 8畳のワンフロアーで、簡単な給湯設備と、トイレ・ユニットバス付き。 そこが、先刻前に、彼女が通された部屋だ。 「自由に探して下さい。この時間、電車もバスもない。落ち着いたら、お送りしますよ」 紳士的な笑み、むやみに触らない態度だが、その内に隠されている下心に、彼女は内心、激しい嫌悪を、抑えるのに苦労しているのであった。 ◆◆◆ やっちまった…… 気付かずに2つも(汗) さっきの、番号の付け方てのは、3‐1、3‐2とかって、ブログでの話数に合わせれば良かった。て意味で。 では、また後日〜 | |||
18583 | お詫び | 井上アイ URL | 2010/2/25 20:58:02 |
記事番号18582へのコメント 何とか続けて投稿出来ていましたが。 少々アクションの所で詰まり、創作停滞しております。 次回の投稿まで、お時間頂く事を、ご了承下さい。 | |||
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