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    タイトル : 漆黒に踊り出る11
    投稿者  : 井上アイ
    URL    : http://kibunnya.kakurezato.com/
    投稿時間 : 2010年2月18日02時17分23秒
含みのある相槌に、ワイザーは苦笑を浮かべ、ザングルスの肩を叩き、その場を離れた。
ワイザーが、ザングルスの元に行っていた、その間に、一つの陰が、別のビルへと入って行った。
大事な物を、取りに来たのだ。と言って、検問を通ったその女性は、ここまで乗ってきたバイクを押し、敷地内の陰に止める。
ブルゾンを脱ぐと、パンツスーツに包まれた細い身体、足元は黒い皮の靴。ヘルメットの下からは、一つに纏められた髪を、後ろで纏めた、幼さを残した顔が現れる。
バイク用の手袋を、口で取り、同時に、座席シートを開ける。
中の物を取り出し、代わりに手袋とブルゾンを突っ込み、彼女は、荷物を手にした。
柔らかいA4サイズの縦型トートバッグは、僅かに膨らみを帯びており、迷わぬ足取りで、敷地を出、パトカーに囲まれたビルに近付く。
「どうしました?」
「忘れ物をしてしまったの。どうしても、入りたいのだけれど……何かあったんですか?さっきも検問があったし……」
呼び止めた警察官に、女性は不安そうな顔で、キョロキョロとする。
それに、警察官は申し訳ない様に、口を開く。
「実は、リッチから予告状が来ましてね。厳戒体制中なんですよ。なので、ビルには入れないのですよ」
検問では、野次馬を避ける為に、どういった理由で、中に入れないか、伝えられていなかった。
通した人間は、彼女がここの人間だと、思っていなかったのだろう、と判断した警察官に、彼女が困った顔を見せる。
「どうしよう……借り物のイヤリングなのよ。明日、返す約束してるのよね」
「分かりました。中と連絡して、聞いてみます。部署はどちらで?」
「……少し、待ってくれる?直接聞いてみるわ」
チラリと後方を確認した警察官に、少し考えてから、彼女はトートバックから、携帯を取り出した。
「もしもし?先程はお邪魔しました。ソフィアです。そちらに、イヤリング無いかしら?」
と言って、暫し無言で待つ。
対応した身としては、電話中の相手に話掛ける事も、上司に相談しに行く事も出来ず、直立不動で、待つしかない。
「そうですか、直接、探せないかしら?大事な物なの……有り難うございます。実は、もうビルの前に居て、隣に、警察の方がいらっしゃるの、入れてくれる様、伝えてくれないかしら?」
向こうからの声に、応えたのであろう彼女が、携帯電話を差し出し、警察官は、怪訝そうに、それを受け取る。
◆◆◆
続く☆


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