. ツリー表示 . 番号順表示 . 一覧表示 . 新規投稿 .
『投稿小説』に関する質問 ←ここをクリック    読みまくれ1  読みまくれ2  著者別  練習
カテゴリー別検索 ツリー内検索 過去ログ検索 ▼MENU


    タイトル : 嘆きの唄を糧にして
    投稿者  : 十叶夕海
    投稿時間 : 2013年3月24日22時14分56秒




その日、黒髪の彼女・・・麦山雅(むぎやま・みやび)は、親友・泉水憂花(いずみ・ゆうか)の訃報を受け取った。
半月ほど、日本にいなかった。
総務から『有給消化してくれ』と泣きつかれたからだ。
昔からあこがれがあったイギリスに行ってきた。
そう言うところは外資系の辛いところ。
日系だとそんなには言われないんだけど、まぁ、行きたかった場所に行けたからよしとすればいい。
帰国して数日してから土産片手に、彼女の病室に向かったら、そういうことだったらしい。
場所が場所だった為、連絡もできなかったと、泉水の小母さん・・・憂花の養母の叔母から後から聞いた。
病院・・・正確に言えば、仲の良かった看護婦に憂花が、雅への手紙を残していたらしい。
「・・・死ぬの解ってたんだね。」
これは、その手紙である。




嘆きの唄を糧にして




お姉さん・・・もとい、雅へ

これを読んでるってことは、私はよくてICUか、多分死んでると思う。
軽い?まぁ、納得と言うか、自分でも長生きできた方だと思うし、そんなに未練は無いよ。
多分、雅がこれを読んでるってことは、旅行から帰ってきてすぐかもしれないのは、申し訳ないと思うけどね。
どうにも、ダメっぽいんだわ。
軽い?私の身体だ、私が一番わかってる。


雅とは、中学の時からの付き合いだったよね。
色々あった私に話しかけるなんてホント、変人だよね?
あ、変人具合では変わらないって思ったでしょ?
まぁね、色々あったし、こんな身体じゃ奇人変人の類になるって。
体育もできなかったくせに、身長だけは伸びたし。
オタクってて、今じゃ、立派に貴腐人だもの。
・・・久也のことが引っかかってるのも、自覚してる。
あんなことやそんな事があったのに大学まで出れたのは奇跡だけどね。
そこは、母さん・・・千尋恵さんには感謝してる。
普通は、中学卒業して同じ高校にでもいかないと、付き合いって途切れるもんだけどさ。
それに・・・。
まぁ、雅が北海道土産を送ってこなきゃ解らなかったけどね。
結局流れ流れて十年来の友人か、長いもんだね。
死ぬまで続くとは思わなかったけどさ。


ねぇ、雅のお義兄さん・・・六花さんの旦那、どうなってる?
やっぱり、萌ちゃんに相変わらず?
私もそうだったし、結局、久也を死なせちゃったから、あの人には同情すべき点があることは。
・・・あることは痛いほどに理解できるけど、やっぱ許せない。
少なくとも、少なくともね、うちの親がああだったから、ってのもないわけじゃないけど。
親は子を愛して慈しんで包まなきゃ。
少なくとも、六花さんは子ども作れるか、無事産めるかわからなかったのに望んだのはお兄さんよ。
実際、2人目で打ち止めでしょう?
そりゃね、崩汰くんが自分と同じで喘息だったり、男の子だから可愛いのは解るわ。
だけど、自分を見たら怯えるなんて、しつけじゃない、もうそれは虐待。
子どもは簡単に歪むわよ?私がいい例だもの。
もっと健康だったら、お酒やたばこもやってと思うし、所謂、非行に走っていたかもしれない。
碌な親じゃなかったけどね、それでも、話しかけさせなかったし話さなかっただけだったもの、私には。
久也がいなかったらもっと酷かったかもね。
・・・私にしても、久也にしても、まだ、生まれる筈じゃなかったんだし。
私みたいに諦めてたら良かったんだけど、久也は・・・。
とにかく、経済的にきついとは思うけど引き離さないと、いつか、六花さんのいない時にお兄さんはやっちゃいそうな気がする。
何を?言わせないでよ、解るでしょ?
そうじゃなくても、歪んで育つと思う。
雅はそういう主義だし、私は産めないし。
一番近い幼子のあの子達がすごく可愛い。
多分、久也が生きてて、甥っ子なり姪っ子がいたら呆れかえるぐらいに可愛がるね。
自分がこんなに、おばバカだとは思わなかったわ。
離婚して、金銭的に不安なら、お兄さんの給料を何割か差し押さえってのもいいかもしれないわね。
多分、お兄さんも、やったことの結果だって言ってもね、子どもが邪魔なんだと思う。
自分の子供なのにね。



一応、この辺りで、そういう離婚訴訟に強い弁護士とカウンセラ−の連絡先。


アルテマ総合弁護士事務所
  代表 八朔市狼   TEL ×××―××××―×××

心療『こころのにわ』クリニック
            TEL ×××―××××―×××



ありがとう、雅。
雅が、友達で私良かった。











手紙を読み終わった、雅。
流すは一筋の涙。
呟くは唯の一言。
そう呟くしか、その時の雅にはできなかった。
「ごめん、憂花。
 ・・・ちょっと、、、」
最後は言葉にならず、空に消えた。






貴方は、これが『真実』だと思っても良いし。

貴方は、これが『虚構』だと思っても良い。

それは貴方の自由だ。







コメントを投稿する



親記事コメント
なし Re:嘆きの唄を糧にして-投稿者:aiko
Re:嘆きの唄を糧にして-投稿者:bur