◆-根性なしっす(爆)-もおきんるい(10/13-16:01)No.21
 ┣Re:根性なしっす(爆)-もおきんるい(10/14-02:19)No.29
 ┃┗Re:根性なしっす(爆)-もおきんるい(10/14-02:21)No.30
 ┃ ┗Re:根性なしっす(爆)-もおきんるい(10/14-02:23)No.31
 ┃  ┗Re:根性なしっす(爆)-もおきんるい(10/14-02:25)No.32
 ┃   ┣Re:おもしろかったです-みーやん(10/14-07:50)No.38
 ┃   ┃┗Re:おもしろかったです-もおきんるい(10/15-00:55)No.49
 ┃   ┣感想です〜♪-ティーゲル(10/14-08:43)No.39
 ┃   ┃┗Re:感想です〜♪-もおきんるい(10/15-01:00)No.50
 ┃   ┣Re:根性なしっす(爆)-アキ(10/15-01:15)No.51
 ┃   ┃┗Re:根性なしっす(爆)-もおきんるい(10/15-02:27)No.53
 ┃   ┣感想です♪-マミリンQ(10/15-23:42)No.64
 ┃   ┃┗Re:感想です♪-もおきんるい(10/16-03:11)No.68
 ┃   ┗はじめまして&感想です-Milk(10/17-12:02)No.89
 ┃    ┗Re:はじめまして&感想です-もおきんるい(10/18-14:05)No.106
 ┗根性だしました-もおきんるい(10/15-02:31)No.54
  ┗やったね!!-かばにゃ(10/22-02:56)No.184
   ┗Re:やったね!!-もおきんるい(10/22-07:08)No.187


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21根性なしっす(爆)もおきんるい URL10/13-16:01

どおも、ひさびさに『もおきん亭推進キャンペーン』に
まいりました、もおきんです。
ゼロフィリをUPしようと思ったんですが、やめます。
あああああ、小心者、すまん。<<誰にあやまってる?
これは『ガウリナ』ってことで、GO!

****************************ミサンガ


「いいわよ。あんたなんか知らないから。もっと頼りになる相棒、
見つけるから」
栗色の髪の娘が、そっぽをむく。手は握り拳。
少し、震えている。
声は今まで聞いたことがない、涙声。
(そんなこと、言うな。待っててくれ、頼むから・・・)


朝、目覚める。
(この頃、同じ会話の場面ばかり、夢見るなあ)
のそりとベッドから起き上がると、洗面所に向かう。
冷たい水で顔を叩くように浴びる。
雪解けの水だから切れるように冷たい。一瞬で目覚める。
苦笑。
「あいつ、まだすねてるかな」

ここはゼフィーリアから北へ5日ほど歩いた所にある修行場。
この険しい岩場ばかりの土地に、金髪の剣士ガウリイ・ガブリエフは
3ヶ月前から剣の修行をするために生活している。

事の起こりは・・・
ゼフィーリアにあるリナの実家。
数日前から、リナとガウリイはここに滞在していた。
粗方の国々を渡り歩き、残るは故郷ゼフィーリアとなった。
今まで避けるようにしていたリナだったが、観念して帰郷することにした。
これもすべて、ガウリイの(剣の←ここをリナはみょうに強調した)為。
最初、『恋人を連れて帰ってきた』と狂喜&驚喜の家族だったが、ふたりの
素行を見てがっかりする。恋人同志というより夫婦漫才。
しかも、キスさえしていないことを知るや、落胆の激しいことといったら。
リナの姉、ルナはため息まじりに両親に告げる。
「あのリナをあつかえるのは彼しかいないことはたしかよ。でも、リナが
まだまだ子供なんだもの。暖かく見守りましょう」
ルナが部屋を出ていった後、両親はふかーーくため息をつく。
「人のことは言えんのになあ。ルナも、行き遅れてるというのに。
あいかわらず、リナは子供の精神のまんま。
いつになったら、孫を見れるんだろうねえ。リナの友達はもちろん、
16歳くらいになったらここいらの娘っこはみ〜〜んなどこかに嫁いで
いるのに。はあぁ」

ルナが自分の部屋に戻ろうと階段を昇ると、踊り場にガウリイがいた。
「リナのねーちゃん、スウィーフィードナイトなんだってな。なら
どこかいい剣の修行場、知らないか?」
いきなりこんなことを聞かれ、驚くルナであったが、『いい場所』の
心当たりはあったので教える。
彼は「サンキュ」と簡単な礼を告げるとさっさと部屋に引っ込んでしまった。
ルナも自分の部屋に入り、ベッドに倒れ込む。
寝転がりながら、さきほどの会話を思い出して笑う。
『リナのねーちゃん、ですって。”ルナさんと”か呼ぶのが普通じゃない?
・・・本当、彼はリナが中心になって物事が進んでるのね。
いいひとに巡り会えてよかったね、リナ』


「修行ですって??」
清々しい朝。
リナとガウリイはふたりでキッチンの食卓に向かい合って座っていた。
「ああ。リナのねーちゃんに相談したんだけどな、いい修行場がある
んだそうだ。オレも少し鍛え直さないといかんと思って」
「・・・置いてくんだ。置いていくために、ゼフィーリアに来たのね」
「え」
「・・・いいわよ、あんたがその気なら。あんたなんか知らないから。
もっと頼りになる相棒、見つけるから!」
ぷい、とそっぽをむいてしまった。
「リナ」
「いきなさいよ!あたしの相棒、降りるんでしょ!」
涙声。握り拳が、肩が・・・震えてる。
「そんなこと、いうな。待っててくれ、頼むから・・・オレは
お前の為に」
ぱたん。
会話の途中で、姉のルナが入ってきた。
「ガウリイさん、もうすぐ朝食にしますからね。さあ、リナも手伝って」
話は途切れた。

食事を済ませ、荷物を整理する彼をぼんやり見つめているリナ。
「じゃあ、行ってくる。待ってろよ」
髪を、くしゃ。
いつもの『挨拶』。
リナはさっきから黙ったままだったが、なにか決心した顔つきで
ガウリイを見上げる。
彼女は髪を、ひとふさ握る。
いつも腰に挿している短剣で、それを切った。
「おい?」
ガウリイは突然のことに驚く。
リナは黙ったまま、器用に髪を三つ編みにした後、彼の左手首に結び付けた。
「お守りよ。ちゃんと、無事に帰れるように」
「髪は、女の命だろうが・・・」
軽く背中を蔽うリナの髪にひとふさだけ、寸足らずの髪。
「じゃあ、オレも」
金色の髪を、腰の剣でひとふさ居合い切り。
そして、同じように三つ編みにするとリナの左手首に結び付けた。
「ほらよ。お守りだ」
「ありがと・・・」
ふたりはにやりと笑い合う。お互いの左腕で、こん、と拳を交わす。
「元気でな」
「ガウリイもね」


続く〜ん

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29Re:根性なしっす(爆)もおきんるい URL10/14-02:19
記事番号21へのコメント

続きです。GO!
****************************ミサンガ2


「ガウリイさん、お昼にしませんか?」
額の汗を拭いながら振り返ると、ここの修行場の管理をしているジンビーノの
一人娘のリナリー(名前が似ているので、ガウリイは時々『リナ』と呼んで
しまう)が昼食の弁当を抱えて立っていた。
「リナ・・・リーさん、ありがとう」
「また間違えてる」
ぷう、とふくれっつら。だがガウリイはそれに構わず、弁当をほおばる。
彼女はリナと歳格好も近い(もちろん、リナのほうが幾分成長していない箇所が
あるが)。なかなかの美少女だが、ガウリイは相手にしない。
腕には、しわくちゃの髪の束。
付けたまま修行をしていれば、こうなるのはしかたない。
一本抜け、一本切れ、今ではほんの数本が残るのみだ。
ガウリイは髪の束を見つめ、想いを馳せる。
(あいつ、今なにしてるかな。多分、じっとゼフィーリアには居ないだろな。
アメリアなんかを巻き込んで、どこかに旅にでたかもなあ)
ガウリイ、大当り。
リナはアメリアを巻き込んでフィリアの住む外の世界へ旅をして、今は
その帰路の途中である。

(会いたいな)
手首の髪の束を見つめ、ぼんやりつぶやく。
「あら。ごみが」
ひょいとリナリーの手が、ガウリイの左腕に触れた。
ぷつ。
小さな音をたて、腕の髪の束がちぎれた。
「え!!」
ガウリイは愕然とする。
リナリーは汚いものを摘むようにして髪の束を投げ捨てようとする。
「なにをする!!」
ガウリイは彼女から髪の束をひったくるように取り返す。
いつも温厚な彼の行動に、そして怒りにリナリーはうろたえている。
「え・・・??」
リナリーは親切心でやったことだろう。そう思ったガウリイはやっとのことで
怒りを抑え、汗拭き用の手拭を引き裂き、髪の束をそっと包むと
懐にしまった。
少女は、彼の大事なものであった物を知らずとはいえ台なしにしてしまった
ことですっかりしょげている、といった様子だ。
彼女はべそをかきながら謝る。
「ご、ごめんなさい・・・あたし、てっきり・・・」
「いや。・・・そのうち、千切れるものだったんだ。もういい」
(いやな予感だ。リナに、なにか起こるのだろうか?)
彼は胸騒ぎを覚える。

・・・くす
リナリーは、こっそりほくそえむ。
「帰さない。彼はあたしのもの。さよなら、恋人さん」
指に残っていたリナの髪を、ふっ、と吹き飛ばした。
ガウリイの腕の髪の束は、故意に千切られたのだ。


「ねーちゃん、まだあるの〜?」
「今まで遊んでいたんだからこれくらい手伝いなさい」
「ぶー、長旅で疲れてるのに〜」
リナは姉のルナと共に、ガウリイの修行している場所の近くのバザーまで
買い物に来ていた。
魔導に欠かせないアイテムが所狭しと並べられ、大いににぎわっていた。
「・・・あの山ね」
「なに?リナ」
「・・・なんでもない」
ルナはリナの視線の先に気付く。
「ドロワ山ね。がんばってるかしらね」
「ふん!別に、ガウリイのことなんか気にしてないわ!」
ルナはにやりと笑う。
「修行場の友人のことを思い出していただけよ。ガウリイさんの事は、
忘れてたわ」
「ぶ〜〜〜〜」
ルナの友人、ゴエマンは、なかなかの腕の剣士で、数年前からその修行場に
籠って日夜鍛練に励んでいる。
彼の剣の腕を見込んで、ルナはガウリイにここを勧めたのだ。

リナの左手首に、金色の髪の腕輪。
ガウリイと違って酷使していないし、丁寧に手入れも施しているため、
ほつれもなく美しく輝いている。
『元気かなあ』
いつもとなりにあった、金髪。
自分で切った髪の部分も、少し伸びて目立たなくなってきた。
それだけ時間が経過した証拠である。

「リナ?」
「ねえちゃん、ちょっといってくる!」
そう告げるが早いか、レイウイングでドロワ山に向かって飛翔していって
しまった。
くす、とルナは微笑む。
「今日は、どこかのレストラン、予約しておこうかしら?」

続く〜


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30Re:根性なしっす(爆)もおきんるい URL10/14-02:21
記事番号29へのコメント

さらに続きです。GO!
****************************ミサンガ3


「とうちゃーく!」
ざざっ!
勢いよく地面に着地する。
岩場ばかりの険しい場所。殺風景で、風が強く吹き付けてくる。
いかにも、修行するのにふさわしい所である。
武骨な戦士といった風貌の男共が、それぞれの稽古を各々でこなしている。
「さて、くらげちゃんは、どーこかな〜?」
辺りを見回すが、目立つ金髪が見当たらない。
「すみません、ここにガウリイ・ガブリエフという金髪の男のひと、います?」
「ああ、いるが。だが、奴はおれたちよりハードな稽古を師範とやってる。
ほれ、この山の頂上だ」
親切な剣士が説明をしてくれた。
「ありがとう」
リナは礼を言うと、頂上へ向かって飛んだ。
『ちゃんと修行、してるんだ!』
なぜかわくわくする。彼に会うのは、3ヶ月ぶりだ。
その時。
上から影が接近してきた。人だ!人が落ちてきた!
リナは風結界を張り、落ちてきた男をうまく救助するのに成功する。
見ると、男は大怪我をしていた。稽古中、崖から足を踏み外したのだろう。
リナは男を連れ、下に戻る。
着地と同時に、リカバリーをかけ始めた。
回りで稽古していた戦士達が、様子に気付いて駆けつけてきた。
「どうした?大丈夫か?」
「今、リカバリーかけてるからしずかに!」
彼女の一声で、まわりがしーんと静まり返った。
リナは笑いをこらえ、治療を続けた。

「これでよし!と。あとはお医者さまにまかせるわ」
「ねえちゃん、ありがとうよ。あんたがいなかったら、奴は死んでたよ。
礼をしたいんだが、なにかあるかい?」
先ほどの怪我人の親友という男が、リナに尋ねる。
「い、いいえ、べつに」
妙に照れて、リナは困惑する、そのとき。
きゅるるるっ。

暫く剣士とリナは見つめ会ったままだった。
「・・・じゃ、なにか食べ物を」
リナは貰った食事・・・粗末なものだが・・・ぱくつきながら話をする。
「へえ、じゃああのガウリイの相棒だったんだ」
どうやらくらげの君はここでは有名人らしい。
流れる長い金髪の美剣士。それもとびきりの腕をもつ。
「彼なら、そろそろ山から降りてくるよ。おれは今から上に用があるが、
あんたもいくかい?」
さっきいこうとして出端を挫かれたリナは、丁重に辞退する。
「ここで待つことにするわ、ありがとう」
「そうか。じゃあな」
男は険しい山肌を昇って行った。

山頂にたどり着くと、ガウリイは丁度ゴエマンと山を降りる所だった。
「あ。ガウ・・・」
男は山を降りようとする青年を呼び止めようとして、止めた。
下にいる彼女を見たら、きっと驚く。
「お楽しみを取り上げるのも、なあ」
くすくすと笑う。


「がんばってたんだ。修行。すごいね、ガウリイ」
降りてきたらどうしよう?
抱きついて驚かせてやろうか?
いや、彼のことだ。
『待っていろといっただろ!』
などと言って怒るかも。
それとも、
『よくきたなあ』
あいかわらずの間延びした口調で、髪をくしゃくしゃにしてくれる
だろうか?

あいたい。
あいたかった。ずっと。

にやにやと妄想するリナの目の前に、誰かが立ちはだかる。
「あなた、ここは神聖な修行場よ。なにしにきたの」
いきなり声を掛けられ、思わず飛び跳ねる。
「あ、あは・・・ガウリイ・ガブリエフに、面会にきたんです」
見ると、わりと小柄な少女。歳格好も自分と同じくらい・・・
リナと少女はお互いに思う。
そして、少女・・・リナリーは気付く。
背中を蔽う髪に、目立たなくなっているが寸足らずの一房。
この娘がガウリイの手首の髪の持ち主ということに。
意思の強そうな眉と瞳。
思わず、引き込まれそうになる引力を放つ。
カリスマ。
『ああ、これがあの人を引き付けてやまない人なんだ』
負けそうになる、想い。
でも、負けない。
わたしもほしいの、あの人が。
あの金髪が。

続く〜


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31Re:根性なしっす(爆)もおきんるい URL10/14-02:23
記事番号30へのコメント

まだまだ〜続きです。GO!
****************************ミサンガ4


「ガウリイに会いたいの?あなた、誰?」
『ガウリイ』呼ばわりにリナはかちんとくるが、ぐっとこらえる。
「あたしはリナ。ガウリイの相棒よ」

『相棒?恋人ではないの?・・・それならそれでいいわ。
諦めさせてあげる』
リナリーは、狡猾に頭を働かせる。
「じゃあ、まっていて。彼を呼んでくるわ」
山を見上げると、するすると下山してくるガウリイとゴエマンの姿が
確認できた。
すたっと地上に降りたつ二人に、リナリーは駆けよる。
「ガウリイー!」
彼女は飛びつく。
頂上で激しい修行の後のガウリイは、抗うのさえ億劫でそのまま
しがみつかせた状態で立ち尽くす。
リナの”エルフの耳”でも、ふたりの会話は聞こえない。
「なんだ、リナリーさんか」
「なんか、甘えたくなっちゃったの」
「そうか・・・でも、はなしてくれないか、疲れてるんだ」

抱き合う(ようにリナからは見える)二人に、声もでない。
そして、左手首には・・・
髪の束が無かった。

そっとリナの様子を伺うように振り返るリナリーは、彼女が
消えてしまっていることに満足する。


「あら、リナ。帰ってたの?」
用事を済ませ、宿に戻ると出かけたはずの妹がベッドで寝ている。
「・・・」
「返事くらいしなさい。・・・ガウリイさん、いなかったの?」
暫くして、蚊の鳴くような細い声。
「ガウリイ・・・もう・・・あたしを忘れちゃってる。
きっと・・・もう、帰ってこないよぅ・・・」
その後は、涙声。
あの妹が、声を押し殺すように毛布の中にうずくまって泣いている。
「なにを・・・誤解じゃないの?まさか」
彼は、リナだけが唯一。それが、たった3ヶ月で?
でも、そんなことはよくある話だ。彼も、その部類だったのだろうか?
ルナは信じられない。
「恋人らしき人がね、『ガウリイ』って呼んでるの。あのくらげに
抱きつくの。・・・腕に、なかった・・・」
その後は声にならない。鼻水をすする音と、嗚咽。
『腕になかった』とは、リナがしている髪の腕輪と同じものの事と
ルナは理解する。
そっと部屋を出る彼女の腰にはスゥィーフィードの剣。
「もし、それが本当ならゆるさないわよ、ガウリイ・ガブリエフ」


食堂で夕食を食べるガウリイに、ふたりの男が近づいてきた。
「いよう、恋人とは再会できたかい?」
一人は包帯で足をぐるぐる巻き、もう一人はその男の身体を支えていた。
「・・・?」
「あの子に、礼を言いたかったんだけど。宿にいるのかい?おれの命の
恩人だからなあ」
「なんのことだ?」
「ありゃ?まだ、会ってないのかい?かわいい魔導士さんに」
がたん!
ガウリイは飛び上がるように椅子から立ち上がると、男達を問い詰める。
「魔導士って、栗色の、ちびの」
「びっくりさせるなよ。本当に会ってないのか?お前が降りるころまでは、
たしかにいたんだがなあ」
ガウリイは絶句する。
「なんで、なんでかえっちゃうんだ?会いに来てくれたのに」
呆然とする彼に、男達も困惑する。
そのとき、食堂の入口が騒然となる。

「ガウリイ・ガブリエフはいる?」
凛とした通る声。女性の声だ。
人垣を掻き分け、声の主を探すとそこにはルナ・インバースがいた。

「リナのねーちゃん!」
「なれなれしい!よくも、リナを泣かせたわね!」
「え」
『泣かせた?オレが?』
愕然とするガウリイに、容赦無くルナは剣をふるう。
避けながらも、頭の中は栗色の髪の娘。

そんな。
オレはあいつを泣かせて、ここに来たんだ。
二度と泣かせないと。
誓ったんだ。

なんで、帰ったんだ?
なんで、泣いたんだ?
オレに会わずに。
オレに、なにも言わずに。

ガウリイは傍にあった剣をとる。
「リナに会わなくちゃ解らん!」

「会わせない。妹を裏切ったあんたなど」
「裏切った覚えも、泣かせた覚えも、ない!退いてくれ、リナに
会って聞かなくちゃ」
「あたしを倒してから会うがいい!」
「・・・解った!」
ガウリイは、本気でルナの前に踏み出した。
「はああっ!」

お前を守るために、強くなりたい。
お前と生きるために、もっと強く。もっと。もっと。

なのに。なぜ、泣く?
その答えは、リナが握ってる。
「リナに会うために、あんたを倒す!」

続く〜でも、次でらすとだあ!


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32Re:根性なしっす(爆)もおきんるい URL10/14-02:25
記事番号31へのコメント

らすとお〜!
****************************ミサンガ5
「ルナさん?」
ゴエマンは騒ぎを聞いて食堂に駆けつけた。
ルナがガウリイと剣を交えていることに驚く。
だが、もっと驚いたことは・・・
あのルナに、ガウリイが”互角に”戦っているのだ。

「ゴエマン師範!ガウリイさんを止めてください!」
リナリーは悲鳴をあげる。
しかし、彼は動かない。
戦う二人の姿の美しさに、心を奪われていた。
廻りの戦士達も、舞のような華麗な戦いを見守っていた。
一切の無駄のない動きは、閃きのように相手の懐にはいる。が、それを
避ける動きは次の行動のためにしなる。
ルナは会心の一撃を放つ。
逃れるガウリイのプレートメイルの胸当てに、わずかに剣先がかする。
その時ぽとりと白い布が落ちる。
布のなかには、くしゃくしゃの髪の毛。
「・・・!」
それを見て、ルナは後ろに下がる。

ガウリイは落ちた布を拾う。
くしゃくしゃの髪を愛しげに見つめる。
「通してくれよ、な。リナのねーちゃん」
「・・・判ったわ。リナは麓のレミングスという宿屋にいるわ」
「ありがとう!」
ガウリイは、夜の山道を駈けて行った。

「あいかわらず、素晴しい」
「挨拶ぬきで、すみません。ちょっと彼に用があって」
ゴエマンと談笑するルナは、そっとリナリーに近寄り、耳打ちする。
『彼は妹のものなの。ちょっかいかけるのをやめないなら』
「あら、蚊かしら?」
ごっ。
リナリーの後ろの壁が砕ける。
「わははは。あいかわらずの腕前だな、ルナさん。手の動きが
見えなかったよ」
「ほほほ。なにか、目の前に蚊が飛んでいたようだったので」
「こんな季節の蚊は、しつこいからな」
ルナの言葉の裏を知らないゴエマンは、普通に会話に同意する。
「そうでしょう?(ちら)刺される前に、仕留めなくちゃねえ」
「おや?どうしました?リナリーさん?」
呆然と突っ立っているリナリー。ゴエマンの問いかけにも返事をしない。
彼女は立ったまま”気絶”していた。


どんどん。
部屋をノックする音で、目が覚める。
「ねえちゃん?どこへいってたの?」
ドアを開けると姉ではない姿。
「・・・リナ」
汗が額からぽたぽた滴る。
髪も汗を吸って、前髪の跳ねはしんなりと垂れ下がっている。
呼吸も荒い。どうやら、修行場からここまで走ってきた様子だ。
リナの目に、喜びと戸惑いの色。
「ガウリイ・・・なにしにきたのよ」
「リナの・・・ねえちゃんが・・・お前が泣いてるって・・・ふう」
一呼吸置いて、話を続ける。
「なんでかえったんだ・・・待っててくれよ、少しくらい」
「いいのよ、もう!あたし、他に相棒見つけるから!」
そう言うとドアを閉めようとする。
ガウリイはそれより早く、足をドアの隙間に差し込み閉められなくする。
「あ、足抜きなさいよ!痛いわよ!」
「やだね。それに、リナの力程度じゃ痒くもない」
「帰ってよ。ガウリイを待ってる子、いるんでしょ?」
「お前のことか?」
「違うわよ!誰があんたなんか!」
ぽた。床に、染みが出来る。
ガウリイの汗ではない。
リナは顔を見られまいと、伏せたまま突き放すように応える。
「あっちいってよ!」
ドアを閉めようとする左の手首の金色の腕輪を認め、彼は『解った』。
閉まるドアを圧倒的な力がこじ開ける。
その勢いで、ドアにしがみついていた娘まで廊下に倒れ込む。
「いったあ・・・」
涙のにじむ目は、白い布の包みを捉える。
彼女の前に差し出された包みの中には、くしゃくしゃの髪。
「千切れちまったんだ。荒い扱いしすぎた。すまん」
氷解する、誤解。
くす。
涙は嬉しくてもながれるのだな、とリナは知った。
「女の子は優しく扱うもんよ。あんたのばあちゃんは教えてなかった?」
「そういやあ、いってたなあ」
ひょいと抱き起こしながらとぼけた声。
そのまま彼女を抱え、階下へ向かう。
「ガウリイ、どこへいくの?」
「・・・まずはー、メシだな」
「メシで締め、かあ?」


えんどおお

長かった。はああ。感想、お待ちしてます。

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38Re:おもしろかったですみーやん 10/14-07:50
記事番号32へのコメント
もうきんるい様、はじめまして。みーやんです。
HPもよく見させていただいてます。
小説もおもしろかったです〜。
リナとガウリィは、お互いに甘えることなく日々精進しているんですねー。
いや・・・お互いのために、かな。
読みますので次ぎの作品もまた書いてください。
楽しみにしています。

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49Re:おもしろかったですもおきんるい URL10/15-00:55
記事番号38へのコメント
どおも、感想ありがたや。
>もうきんるい様、はじめまして。みーやんです。
>HPもよく見させていただいてます。
どおも、はじめまして。

>小説もおもしろかったです〜。
>リナとガウリィは、お互いに甘えることなく日々精進しているんですねー。
>いや・・・お互いのために、かな。
そうそう、努力してるんですよ、きっと。

>読みますので次ぎの作品もまた書いてください。
>楽しみにしています。
またかくかも。
そのときは、また感想くだされぃ。

ではでは。
もおきんるい

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39感想です〜♪ティーゲル 10/14-08:43
記事番号32へのコメント
感想いきます♪

>だが、もっと驚いたことは・・・
>あのルナに、ガウリイが”互角に”戦っているのだ。

剣だけなら確かにやれるっ!がんばれガウリィッ!!

>「ゴエマン師範!ガウリイさんを止めてください!」
>リナリーは悲鳴をあげる。
>しかし、彼は動かない。
>戦う二人の姿の美しさに、心を奪われていた。
>廻りの戦士達も、舞のような華麗な戦いを見守っていた。
>一切の無駄のない動きは、閃きのように相手の懐にはいる。が、それを
>避ける動きは次の行動のためにしなる。

いいですねぇ、戦士ガウリィ。最近ガウリィはクラゲ頭ばかりがクローズアップさ
れていたのでこういうのは好きです。クラゲ頭もいいですけど(笑)

>ルナは会心の一撃を放つ。
>逃れるガウリイのプレートメイルの胸当てに、わずかに剣先がかする。
>その時ぽとりと白い布が落ちる。
>布のなかには、くしゃくしゃの髪の毛。
>「・・・!」
>それを見て、ルナは後ろに下がる。
>ガウリイは落ちた布を拾う。
>くしゃくしゃの髪を愛しげに見つめる。
>「通してくれよ、な。リナのねーちゃん」
>「・・・判ったわ。リナは麓のレミングスという宿屋にいるわ」
>「ありがとう!」
>ガウリイは、夜の山道を駈けて行った。

うーん、漢(?)の会話・・・・・

>「あいかわらず、素晴しい」
>「挨拶ぬきで、すみません。ちょっと彼に用があって」
>ゴエマンと談笑するルナは、そっとリナリーに近寄り、耳打ちする。
>『彼は妹のものなの。ちょっかいかけるのをやめないなら』
>「あら、蚊かしら?」
>ごっ。
>リナリーの後ろの壁が砕ける。
>「わははは。あいかわらずの腕前だな、ルナさん。手の動きが
>見えなかったよ」
>「ほほほ。なにか、目の前に蚊が飛んでいたようだったので」
>「こんな季節の蚊は、しつこいからな」
>ルナの言葉の裏を知らないゴエマンは、普通に会話に同意する。
>「そうでしょう?(ちら)刺される前に、仕留めなくちゃねえ」
>「おや?どうしました?リナリーさん?」
>呆然と突っ立っているリナリー。ゴエマンの問いかけにも返事をしない。
>彼女は立ったまま”気絶”していた。

さ、さすがねーちゃん・・・・・・・

>「ガウリイ、どこへいくの?」
>「・・・まずはー、メシだな」
>「メシで締め、かあ?」

めでたしめでたし♪

リナを一番大切に思うルナとガウリィ・・・・・いかしてますねぇ♪
ほんと、リナって愛されるキャラです。
ではここらで。次の作品を楽しみに。

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50Re:感想です〜♪もおきんるい URL10/15-01:00
記事番号39へのコメント
どおも、もおきんです。感想ありがたや。

>剣だけなら確かにやれるっ!がんばれガウリィッ!!
ルナ、わざと魔法つかわせんかった。使ったら反則だもんね。

>いいですねぇ、戦士ガウリィ。最近ガウリィはクラゲ頭ばかりがクローズアップさ
>れていたのでこういうのは好きです。クラゲ頭もいいですけど(笑)
そう。ガウリイって、かっこいいんですよ。

>うーん、漢(?)の会話・・・・・
て、ことはルナは男??(笑)

>さ、さすがねーちゃん・・・・・・・
なにせ、『漢』ですから(爆)。

>ではここらで。次の作品を楽しみに。
また書く機会があったら、読んでけろ。

ではでは。
もおきんるい


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51Re:根性なしっす(爆)アキ E-mail 10/15-01:15
記事番号32へのコメント
もおきん様♪楽しみました!もう、リナとガウリイの不器用さがたまりません!
リナのねえちゃん、そうですよね、彼の思考はリナ中心。いいなぁ、このお互い
おもいあいながら、気付いてないこのやきもきする感じ!
おねえちゃんとガウリイの立ちあい、はぁ、見たかったなぁ。最後にリナリーに
かました一発!も、やったぁーとおもいました。お邪魔虫はそう、排除していけぇ
ラブラブと思った私は壊れ物。んで、ガウリイがリナを抱き上げた時はおもわず
妄想モードに突入!いえ、いいんです。あの、名セリフがきけたんだから。
どんぶらこっこのラストもよかったけど、この最後のシーン、もうリナちゃん
可愛いです!ほんとにすてきなおはなしありがとうございました!


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53Re:根性なしっす(爆)もおきんるい URL10/15-02:27
記事番号51へのコメント
どおも、もおきんです。感想ありがとさん〜。

>もおきん様♪楽しみました!もう、リナとガウリイの不器用さがたまりません!
>リナのねえちゃん、そうですよね、彼の思考はリナ中心。いいなぁ、このお互い
>おもいあいながら、気付いてないこのやきもきする感じ!
でも、めったにキスシーンさえかかないわしって、いいんかなー。

>おねえちゃんとガウリイの立ちあい、はぁ、見たかったなぁ。最後にリナリーに
>かました一発!も、やったぁーとおもいました。お邪魔虫はそう、排除していけぇ
>ラブラブと思った私は壊れ物。んで、ガウリイがリナを抱き上げた時はおもわず
>妄想モードに突入!いえ、いいんです。あの、名セリフがきけたんだから。
すまん、このままベッドのほうが盛り上がるのはわかっちゃあいるんだが〜(爆)。

>どんぶらこっこのラストもよかったけど、この最後のシーン、もうリナちゃん
>可愛いです!ほんとにすてきなおはなしありがとうございました!
し、しまったあ!どんぶらこっこをよんでいたか。
そりゃあ、どおも(てれてれ)。
またここでかくことがあったら、よんでね〜。

ではでは。
もおきんるい

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64感想です♪マミリンQ E-mail 10/15-23:42
記事番号32へのコメント
もおきんるいさま

初めまして、マミリンQと申します♪

あああ!らぶらぶ!
良かったですぅ!!!リナさん守るために修行するガウリイくん。(はぁと)
横からちょっかいだすリナリー。怒りに狂った闘争心メラメラの
私がいました。(爆)
でも、そこでガウリナ鉄則・彼女は結局キューピッド的存在に。(はぁと)
髪の毛の交換というのも良かったですぅ♪
それに、ルナさんかっこいい♪♪♪妹想いでとっても素晴らしかったです♪

では、へぼい感想ですみません。(汗)
どうもありがとうございました♪

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68Re:感想です♪もおきんるい URL10/16-03:11
記事番号64へのコメント
どおも、もおきんです。感想、ありがたや〜。

>初めまして、マミリンQと申します♪
どうも、はじめまして。

>横からちょっかいだすリナリー。怒りに狂った闘争心メラメラの
>私がいました。(爆)
あんさんがおこらんでも(笑)。

>でも、そこでガウリナ鉄則・彼女は結局キューピッド的存在に。(はぁと)
ははは。なんたって、じゃまものさえも、しあわせアイテムのガウリナよ!

>それに、ルナさんかっこいい♪♪♪妹想いでとっても素晴らしかったです♪
あのねーちゃんの性格は、こーんなかんじかなあ?と。

>では、へぼい感想ですみません。(汗)
いえいえ。こちらこそ。どうもありがとう。

ではでは。


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89はじめまして&感想ですMilk E-mail URL10/17-12:02
記事番号32へのコメント
はじめまして、Milkといいます。

まず、読んで一言。おもしろかったですっ! とっても。

リナのことを考えるガウリイもステキだし、妹思いのルナ姉ちゃんも
とってもGood!
相手の前ではっきりと言葉にしなくっても、ちゃ〜んとお互いのこと
を思ってる。ステキです! このシチュエーション!
(リナリーきっと、もう2度とガウリイ君には手、出そうとは思いません
ね〜 あんだけおどされれば・・・・
しかも、リナリーの行動の裏に気づいていないのが、いかにもガウリイ
だぁ〜)
最後、二人がいつもどおりの二人に戻れて一安心でした。

ステキなお話をありがとうございます。


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106Re:はじめまして&感想ですもおきんるい URL10/18-14:05
記事番号89へのコメント
>はじめまして、Milkといいます。
どおも、こちらこそ、もおきんです。

>まず、読んで一言。おもしろかったですっ! とっても。
ありがたや、ありがたや。

>リナのことを考えるガウリイもステキだし、妹思いのルナ姉ちゃんも
>とってもGood!
ルナの性格は『でっちあげ』。こんなに妹思いではないかも。

>しかも、リナリーの行動の裏に気づいていないのが、いかにもガウリイ
>だぁ〜)
彼はモテ男だったけど、こういう性格だから気付かない。だから自分が
実はモテモテというのも知らないんでは、なんて考えました。
テクニシャンで、実は狡猾な『闇ガウリイ』、一度かいてみたいっす。
ではでは。

もおきんるい

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54根性だしましたもおきんるい URL10/15-02:31
記事番号21へのコメント
どおも、もおきんです。
ゼロリナ全盛のここに、どうしようもないのをUP
します。あああ、石なげんといてやあ。
もおきん亭に、これの『1』があるんで気が向いたら
よんでね〜。

***************************漆黒と閃光の奇蹟2


「なんです?これは」

妙な鉄で出来た丸いものを抱えて磨く黒づくめ服の青年・・・みかけは
青年だが、確実に1000歳は超えちゃってる『見かけ倒し(?)』の男・・・
これも見ためでは男だが、どっちなのか怪しい人間・・・いや、彼(として
おこう)は人間でもない。魔族だ。しかもとてつもなく『強い』高位魔族様だ。
彼くらいのレベルの魔族は、普通ふんぞり返って下っ端に雑用を命令して
この世界に現われることはない。
だが、彼にはここに来る理由がある。

「鍋ですよ、フィリアさん」
紺碧の瞳が彼を捕える。
歳の頃でいえば300歳くらいか?
そう。彼女は外の世界のゴールドドラゴンの生き残り。
人間でいえば18歳くらい、お年頃といったところだろう。
金色の髪の美女の姿をしているが、その正体は全長10メートルくらい(しっぽ
を含む)の竜だ。その本来の姿も、なかなかの美竜なのだが。

「鍋なんか、どうするんです?」
「いえ、ねえ。先日のお茶会のお礼をしようと思いまして、はい。
ぼくの手製の鍋料理をフィリアさんにご馳走しようと」
「け、結構よ」
「まあまあ、遠慮なさらずに」
今日はグラボスもジラスも留守にしている。
店の商品の買い付けに出ていて数日は帰ってこない。
ゼロスはまるでそれを狙っていたようにフィリアの所へやってきたのだ。
フィリアは以前、旅を共にしたちびの女魔導士との会話を思い出す。
『ドラドラのびっくり鍋もすごいけど、ゼロスの”雄羊のカオス風味
マンドラゴラ添え”には負けるわ』
そして、その料理(?)の効き目(味ではない!)をこってりと聞かされ
たのだった。

ごくり。
『いよいよ、私の命運もここまでかしら』
フィリアは唾を飲み込んだ。白い額にはじわ、と汗がにじむ。

『あ。なにかかんちがいしてますねえ。くす。まあ、ほっておきましょう。
ああ、美味しい。彼女の負の感情、今日は一段と美味ですよ』
ゼロスはあいかわらずの表情のまま、鍋をごしごしと磨き続ける。

材料を仕入れてフィリアの店、『カップ&メイス』に戻ると、彼女はテーブルに
座ってなにか認めているようだ。
そーっと近づいて彼女の様子を覗くと・・・
『・・・ジラスさん、グラボスさん、ヴァルガーヴをたのみます。
私が死んだ後、葬式はしなくていいです。お店も任せます。悪い事は
しないように。真面目に、堅実に生きてください・・・』

「遺書、ですか?それ」
がたがた!!
ゼロスにいきなり背後から呼ばれて、フィリアは慌てて筆記用具を片付ける。
「い、いきなりなんです!このストーカー魔族!」
「その呼び方、やめてくださいよう」
「ストーカーストーカーストーカー!この変態ストーカー魔族!」
くしゃくしゃになった便箋を、封筒に入れてカップボードの引き出しにしまう。
これで、よし。と小さくつぶやくと、ゼロスの方へ向かい合う。
なにかを決心した面持ち。
『まるで殉教者のようですね・・・くす』
「さあ、フィリアさん。覚悟はいいですか?」
「ええ!・・・なんでもござれよ!」
ふたりはキッチンへと入っていった。

材料は・・・
にんじん、しいたけ、豆腐、マロニー、生麩、白ねぎ、とり肉、春菊、
とりのつみれ・・・
だしはかつお風味、たれはポン酢。

『なんだ、普通の鍋だわ・・・ほっ』
フィリアはほっと胸を撫で下ろす。
「さあ、火にくべますよ」
「は?」
ごお!!
灼熱の炎が、キッチンを煌々と照らす。
「な、なんです〜!この尋常でない火力はあー!!」
「本に書いてあったんですよ。火力が料理の決め手って」
ふと椅子をみると一冊の本。
『中華料理の基本 リュウ・マオシン著』
「鍋と関係ない本、参考にしないで!!」
ごーーー!!
火力は一層増し、鍋の中はあっというまに煮えたぎり、ごぼごぼと
泡立つ。ああ、鍋の具の運命やいかに!

あれから小一時間が過ぎ・・・
目の前に、例の鍋。
まだぐらぐらと音を立てている中味を見る勇気がフィリアにはない。
『肉の次に野菜、煮えにくい順に入れないわ、鍋料理なのに煮込むわ・・・
きっと中の具はどろどろに溶けちゃってるわよ』
しかも、ご丁寧にも蓋をしている。
おそるおそる蓋を持ち上げると、勢いよく湯気が立ち上って
あっという間に部屋に充満して視界1メートル状態にした。
しかも部屋の気温も上がったようだ。
「熱帯ジャングルのようになっちゃいましたねえ〜」
「ゼロス!!どうにかしてください!・・・!この臭い・・・」
「ぶつ切りの鶏の肉、骨も溶けちゃったようで。いい馨りじゃあない
ですか」
鍋を覗き込むと、かつて人参、春菊、しいたけと呼ばれていた野菜は
色だけを残して固形でなくなっている。
薄茶色の濁った汁に、オレンジ、緑、茶色がどんよりと漂っていた。
「お、ほほほ・・・これを、食べろ、と?」
フィリアの端正な顔が筋張っていく。
「食べる、というより飲む、でしょうかねえ。ささ、栄養は満点ですよ」
「老人食?幼児食?私には歯も牙もあるんです!それをこんなどろどろの」
抗議するフィリアを無視して取り皿に盛り付け・・・いや、流し込むと
彼女の目の前に置いた。
「どうぞ。ぼくのまごころ料理ですよ」
「・・・歯応えのない食べ物は・・・」
躊躇するフィリアの耳元に、彼は甘く囁く。
「あなたのために作ったんです。食べてくれないのなら」
耳に熱を感じ、顔が真っ赤になっている彼女。
混乱と動揺、そして恥ずかしいことに少しばかりの期待をなんとか収め、
問いただす。
「た、食べてくれないのなら、で。どうするつもりですか?」
にやり。
邪眼が開く。
フィリアはその目に引き込まれそうになる。
彼の目には、自分が映る。
『・・・つかまってしまう、この邪眼に』
フィリアは嫌悪どころか期待している自分を見つけ、戸惑う。

「きまってるじゃないですか。食べるんですよ、あなたを」
「へっ」
彼の目に全ての神経が集中していて、今の言葉を聞きそびれる。
「なんていったのですか?」
「だから、食べるんですよ」
「はあ。・・・それじゃあ、食べて頂戴」
「え?」
ゼロスは彼女が『びびる』反応を予測していた。
が、自分から『食べて』と言うとは!
今度はゼロスの方が頬を染める。
「いやあ、フィリアさん、それはちょっと」
「じゃあ、おねがいね」
そう言うと彼女は立ち上がり、すたすたと外へ出て行ってしまった。
「え」
ひとり、ぐつぐつ煮えたぎる鍋を目の前にゼロスは立ち尽くす。
霧のような湯気が、彼の表情を隠しているのでどんな表情かは判らない。
「フィリアさん・・・折角作ったのに」
湯気の中、邪眼が光った。
身体からは湯気より熱く、混沌とした負の気が放出していた。

フィリアはそのまま自分の部屋に戻ると、ヴァルガーヴの玉と着替え、そして
小物少々を鞄に詰め、玄関に向かう。
「ゼロスー!あとかたずけしておいてくださいねー!わたし、この臭いが
消えるまでリナさん達と旅してきますからー!」
そう告げると、本来の姿のゴールドドラゴンに戻り、大空を飛翔して
行ってしまった。
『そう、逃げなきゃ。このままじゃあ捕まってしまう。あの邪眼に』
大空の藍さが、心地よい。


数日後。
メイスとカップの買い付けから帰ってきたグラボスとジラスの見たものは、
得体のしれない液体をなみなみと注がれたフィリアのお気に入りのカップが、
家のいたるところに置かれていて足の践み場さえなくなっていたのだった。
中味は勿論、腐っていた。


部屋の異臭が完全にとれるのは、半年またなくてはいけなかった。


えんどおお

まだこの話は続く。もおきん亭で、お待ちしてまっせ〜(どきがむねむね)。

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184やったね!!かばにゃ 10/22-02:56
記事番号54へのコメント
やったね!もおきんさん(^_^)

こゆー、よーちえんじのじゃれ愛がいいのよねぇ・・・・(^_^)
もちろん、「許されぬ愛」パターンも捨てがたいけど(爆)
しかし・・・・・まさか獣王様はこいつの作った料理を食べてるんだろうか・・
ううう・・考えたくない・・・・・

さあ、次はガウリナ!!
よろしく!!(^_^)

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187Re:やったね!!もおきんるい URL10/22-07:08
記事番号184へのコメント
あ!!かばにゃどんだ!かばにゃど〜〜ん(爆)!!

>やったね!もおきんさん(^_^)
ははは。レス、こねーんでやんの。さすが総本山(なにが?)。

>こゆー、よーちえんじのじゃれ愛がいいのよねぇ・・・・(^_^)
>もちろん、「許されぬ愛」パターンも捨てがたいけど(爆)
もおきんの書くおはなしは、キスさえなかなか出さないんで。
『お子様にも安心して』読ませられるんです(笑)。

>しかし・・・・・まさか獣王様はこいつの作った料理を食べてるんだろうか・・
>ううう・・考えたくない・・・・・
きっと、食べる!いや、食べているからこそ、強い身体に美貌が。
負の感情ばんばん入ってるシチュー。げろげろげろ・・・

>さあ、次はガウリナ!!
>よろしく!!(^_^)
よろしく、って、もしや『魔暴』のほうに、ですか?
しょーがねーなー、かいちゃおっかな〜(るんるん)。
(↑誰もたのんでねーって)
それより、早ようツリーなんとかならんものか。

極甘の話、うかんだらUPするで。ぐふ。
ではでは。

もおきんるい