◆-神と魔・女と男-UNYO(10/20-13:29)No.144


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144神と魔・女と男UNYO E-mail 10/20-13:29

 どもー、UNYOです。今回は少し趣向を変えて、神と魔シリアスヴァージョン!!かなり無謀な気もしますが、まぁ、何とかなるでしょう。
 いつもとは違うノリですが、どうぞお楽しみを。

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 ゼフィーリアの片田舎にあるレストラン、「リアランサー」。小さいながらも、安くて美味い料理、そしてもう1つの名物でいつも繁盛している店である。
 夕刻もちょっと過ぎたころ、店は大混雑を極めている。見れば客は男が大半――というよりも店が男で埋まっている。そんな感じである。
 確かに一人暮しの男にとって、安くて美味い店はありがたいことだし、飯を食いに気安いのは確かである。が、ここに集まっている男たちの目的は、決してご飯だけではない。その目的は、もう1つの名物である。
 その名物とは、今飛ぶようにテーブルの間を移動している一人のウェイトレスである。
 決して走らず、それでいて動きに少しの停滞もない。まさに流れる水のように、優雅な動きである。その可憐な容貌に浮かんだ微笑みは、向けられた男を骨抜きにしている。
「お待たせしましたー」
 そう言って、テーブル上に料理の皿を置く。もちろんその時も微笑みは忘れない。
「やぁ、ルナちゃん。今日も綺麗だねぇ」
「やぁだ、おじさんたら」
 そんな、やり取りもお手の物である。
 普通、これだけのお客がいれば、中には食い逃げを働こうとする不届きものが居るものだし、喧嘩が起きることも稀ではない。だが、ここでそんなことをするのは愚か者である。そう言った認識が、客たちの間にはあった。
 理由は簡単。そんなことをすれば命が危ういからだ。清楚な美少女と侮ってはならない、この店のウェイトレスは包丁一本でドラゴンを倒すのだから。ウソではない本当のことだ。
 かくして、最強のウェイトレス・ルナ=インバ―スのおかげで、今日もレストラン「リアランサー」は大繁盛をしているのである。

 大混雑もとりあえず収まり、今は店の中も客が数人いるのみである。「リアランサー」は普通のレストランなので、夜半も過ぎれば閉店する。だから今いる客は、常連さん位である。
 ルナもそれ程忙しくは無くなったので、とりあえず客と世間話をしたり、お茶を飲んだりしている。
 そんなのんびりした空間に、そいつは現れた。
 いつの間にいたのか、入り口のところに一人の男が立っていた。
 マントに身を包み、フードを目深にかぶっているため詳しい容貌は判らないが、顔の下半分を見る限りでは、整った顔立ちをしているであろう事がわかる。背中には袋に包まれた、棒状の物をしょっている。
「いらっしゃいませー!!」
 そう言ってルナが席に案内しようと、男に近づく。
 すると男は、静かな声で「ルナ=インバースだな」と言ってきた。
 どうやら、男が自分に用事がありそうだと、判断したルナは申し訳なさそうな声で
「恐れ入りますが、私にどのような用事でしょうか」
と聞く。
 周りの客たちは興味津々といった様子で二人の様子を見ていた。
 どこで聞いてくるのか、ルナの強さを知った者が挑戦してくる。
 この光景、ここでは大して珍しいものではなかった。
 大抵は、ルナに軽くあしらわれるし、たまに妹のほうに回されることもある。
 多分、目の前の男もそんな類であろう。そう思い客はこれから行われるであろう。見世物を興味津々に見ているのだ。
 スッ
 男はルナの耳に口を寄せると、ボソッと一言つぶやく。
 その瞬間、ルナの顔が目に見えるほどに強張った。
 そして、店長に向かって「早退させてくれないか」と言った。
 店長はしばし呆然としたが、はっと気がつき、つい2、3度頭を縦に振ってしまう。
 そして、ルナは奥に入り制服から着替えてくると、片手に剣を持って男と共にどこかに行ってしまった。
 店の中にいる人たちは、当分の間ただ呆然とするしかないようである。

 ルナと男は、村のはずれの方へと向かって歩いていく。双方共に無言でしばらく進み、ちょっとした林の中に入ると、ルナは男の方にと向き直る。
 そして、次の瞬間には剣を抜き放ち、男に斬りかかる。
 がしぃぃぃぃっ!!!!
 ルナの赤い光を放つ剣は、いつのまにか男の手に握られていた杖に受け止められている。先に髑髏のついた深紅の光を放つ杖。剣と杖はしばらく交わっていたが、同時に離されると剣は鞘に、杖はまた布に包まれる。
「久しぶり……なのかしら、シャブラニグドゥ」
「そうなるのかな、『赤の竜神の騎士』いや、スィーフィードそのもの……」
 男はフードを取ると、長い金髪が風に吹かれ舞う、赤い瞳が細められ整った顔が、皮肉な笑みを浮かべながらルナの瞳を見つめる。
「まさか、女になっていたとはな……なかなか似合っているぞ。その格好も」
「……何しにきたの……」
「つれないねぇ、せっかくオレの方からわざわざ会いに来たのに」
「ふざけないでっ!!いまさら、私とあなたが会ったとこで何になるというの……?」
 ルナの叫びは、男の表情を少しも変えることは無かった。
「……知っているか。今おまえの妹と、オレの弟がいっしょに旅をしている」
「知っているわ……」
 すると、シャブラニグドゥ=ラウディ・ガブリエフは軽く肩をすくめると、くいっと口の端だけを上げる。
「……所詮、弟・妹といったところで、このかりそめの肉体とのつながりのみ、精神的にはまったく別物だがな」
「そんなことはないわ。私とあの子は確かに姉妹よ。肉体も精神もね」
「くくくく、笑わしてくれるなスィーフィード。この身体がもはや人ではない、その事を知って言っているのか?この年もとらず、死ぬことすらない、この身体で!!」
「例え、そうだとしてもよ……」
「甘いな……あの時のおまえはもっと冷酷だったがな……オレの身体を七つに裂いた、あの時は……」
「あ、あれは……私は……私の使命を果たしただけよ」
 ルナのか細い声は、それでも男には聞こえていた。
「…………使命?これだから、神の連中は…………違うだろう……あの時おまえは自分の意思で、オレの身体を裂いた。なぜ事実から目をそらす!!」
「そらしてなんか……」
「やはり、人の意思はおまえにとっては邪魔なだけのようだな……」
「…………」
「何故、肉体の意思を壊さない。オレのように。何故、人間に肩入れする?このような脆弱な生き物に。オレはこの世界すべてを混沌にかえす。そして、おまえはそれを阻止する。簡単な図式だ。そして、その図式の中に人間を守る必要性はどこにも無い。」
「違う。私はこの世界に存在する、あらゆる生物に生きていて欲しい。だから、この世界を守りたい。そして、私は……あなたにも死んで欲しくない……」
「まだ、そんな事を……」
 うつむき肩を震わせるルナを見て、ラウディは一瞬だけ悲しみの表情を見せる。
 過去にも、あった光景。悲しませたくはないが悲しませてしまう。所詮は互いに相容れない存在だから。まったく正反対の属性の二人。しかし、だからこそ惹かれあってしまう。かなわなくても、許されなくても……
「賭けてみるか……あの二人に」
「えっ?」 突然かけられた言葉に、ルナは顔を上げる。その時にはラウディの顔は氷のような冷たさを放っている。
「オレの弟、おまえの妹。いま、あの二人は世界の中心にいると言ってもいい」
「…………」
「だから、あの二人によって世界の在りようが変えられたら……」
「神と魔が共存できる世界になったら……」
「おまえが言うことも、あながち見当はずれではないということになるな……」
「シャブラニグドゥ…………」
「所詮は、暇つぶしだよ……スィーフィード。後100年程のな……それまで会うことも無いだろう。そして、次に会う時は……」
「共に暮らすか……」
「殺しあうかだ……」
 そして、シャブラニグドゥは後ろを向くと歩き出す。
 その後姿に、ルナは一瞬、声をかけようとしたがやめた。
 そして、ただ無言でその後姿を見つめているだけであった。

……世界の運命に翻弄される者達は、まだこのことを知らない……

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 うーにゅ、書いたはいいけど、どーも初期にイメージしていたものとは違うものになってしまった。まだまだ、未熟だな私も・・・
 ホントはもっと長くするはずだったが、諸般の事情でこんな事に(スポットも出てくる予定だった)なってしまった。
 まぁ、これはこれでいいかな。
 というわけで、次はガウリナのはず(何回目だこれで)今回とはまったく縁もゆかりも無い話となりますので、ご了承ください。
 それではSEE YOU!!