◆-ヴェルメネトンの涙-LINA(10/22-17:59)No.198
 ┣ヴェルメネトンの涙1-LINA(10/22-18:04)No.199
 ┃┗ヴェルメネトンの涙1(こっちです)-LINA(10/22-18:11)No.200
 ┣ヴェルメネトンの涙2-LINA(10/22-20:08)No.201
 ┃┗感想で〜す。-ティーゲル(10/22-22:58)No.205
 ┃ ┗お礼です!!-LINA(10/22-23:39)No.207
 ┣ヴェルメネトンの涙3-LINA(10/22-23:41)No.208
 ┗ヴェルメネトンの涙4-LINA(10/23-19:24)No.218
  ┗:ヴェルメネトンの涙4(こっちです)-LINA(10/23-19:27)No.219
   ┣ヴェルメネトンの涙5-LINA(10/24-08:57)No.227
   ┣:ヴェルメネトンの涙6-LINA(10/24-10:34)No.228
   ┗ヴェルメネトンの涙最終章-LINA(10/24-18:39)No.233
    ┗後書き-LINA(10/24-18:42)No.234
     ┗感想です。-ティーゲル(10/24-21:24)No.237
      ┗お礼です-LINA(10/25-17:58)No.247


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198ヴェルメネトンの涙LINA 10/22-17:59

今回もまた歴史小説です。
舞台は紀元一世紀、ローマ帝国に支配されていた時代のイギリスです。
内容的にはイギリス先住民族ケルト人と侵略者のローマ人の血を引く複雑な出生を持つリナがと、ある一族の戦士の一人ガウリイに誘拐され、そこから波瀾がおこり・・・・・・・。と言ったところです。
どーもケイン君が目立っているような気がしないでも在りませんが、気長に見てやってください。
ちなみに「ヴェルネメトン」とは古代ケルト語の地名で「乙女の丘」と言う意味だそうです。

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199ヴェルメネトンの涙1LINA 10/22-18:04
記事番号198へのコメント
LINAさんは No.198「ヴェルメネトンの涙」で書きました。
>今回もまた歴史小説です。
>舞台は紀元一世紀、ローマ帝国に支配されていた時代のイギリスです。
>内容的にはイギリス先住民族ケルト人と侵略者のローマ人の血を引く複雑な出生を持つリナがと、ある一族の戦士の一人ガウリイに誘拐され、そこから波瀾がおこり・・・・・・・。と言ったところです。
>どーもケイン君が目立っているような気がしないでも在りませんが、気長に見てやってください。
>ちなみに「ヴェルネメトン」とは古代ケルト語の地名で「乙女の丘」と言う意味だそうです。

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200ヴェルメネトンの涙1(こっちです)LINA 10/22-18:11
記事番号199へのコメント
ゴメンナサイ失敗しました。
これはそのローマとイギリス先住民ケルト人の血を引くリナとガウリイの物語。
まずリナの物語を語る前に彼女の母について述べなければならない。
この当時ケルト人は様様な手を尽くしローマをイギリスから去らせようとした。ケルト人のとある一族、ブリガンテス族の女王、カルティマンドゥラ。それが彼女の母の名。
彼女を流血の惨事を避けようとした女指導者と見るか・・・・。
敵国ローマに目が眩んでケルト人を裏切った最悪の裏切り者と見るかは、立場が異なるでしょう・・・・・・・・・・・・・・。

ヴェルメネトンの辺りは今日も霧が立ち込めていた。
そんな中を少しでも早く歩いたりすれば口と鼻を塗れた薄布で塞がれたような息苦しさを感じる。単に空気中の水素の多さの為である。
しかし。動き回って熱くなった身体を小雨の中にさらすのは気持ちがいい。
そのような感慨に耽る一人の娘。その手にはサイズが合わないためであろうか親指にはめられた半ば酸化しかけた銀の指輪が毒々しいイーグル(鷲)の彫刻とともに大気光に反射する。
「悪いわね。アルバート叔父様、ヴァルガーブ。もう貴方達とはお別れよ。」
リナはそう呟いた。
彼女とその兄ドルスタン、そして弟のヴァルガーブは叔父でありヴェルメネトンの総督であるローマ人の叔父の元で育てられた。しかし、兄の死後、リナは権力にのみ酔いしれる叔父と弟ヴァルガーブを嫌悪し、たった今俗に言う「家出」をしたのであった・・・・。
「リナさん。如何するんですか?これから・・・。」
不安げにもう一人の少女、アメリアがリナに尋ねる。彼女もまたケルトとローマの混血娘だった。
「嫌ならついてこないで帰っても良いのよ。アメリア。」
素っ気無く、と言うほどではないがやや突き放したような口調でリナ。
「いいえ・・・。お供します。私、ローマのやり方は正義に反していると思います。
実際にモナの事件やネロ皇帝のやり方だって・・・・。」
「アメリア!!」
咎めるようにリナが言う。誰が聞いているか解った物ではない、ということも在るがリナは「ネロ」と言う一人の人物を憎悪していた。
「ごめんなさい。」
リナの酸化しかけた銀製の指輪に目をやりつつアメリアが蚊の泣くような声で謝った。
「あのね、アメリア。世界広といえどもローマの目の届かない場所なんて存在しないと言っても過言じゃないのよ。私も家出は単なる反抗にしか過ぎないの。あなたの言う「正義」うんぬんなんて事や政治体制の批判なんてこれっぽっちも含まれていなの。実際の権力を目の前にしては大切な人すら守れない・・・・。ソレでもついてくるの?」
諭すようにアメリアに語り掛け、リナは自分の親指・・・・否最愛の兄の形見の指輪に目をやった。
「私だってドルスタン様は大好きでした。勿論イゾルデ様も。それに、リナさんだって大好きなんです。リナさんに何か在ったらドルスタン様が哀しみます。だから。連れて行ってください。」
熱っぽくアメリアが続ける。
「嬉しいわ。でも・・・。これから如何するか具体案が無いってとこが哀しいわね・・・。」
しばしの沈黙・・・・・。
「リナさん・・・・。真坂・・・。無計画に 家、飛び出したんですか・・・?」
「・・・・・・。だって・・・。嫌だったんだもん。あいつ等・・・・。」
「リナさん・・・・。私、やっぱり帰りたいですて言ったら・・・。どーします?」
「・・・。とりあえず、もし一人で私がどっかで野垂れ死にしたら100代祟るわ・・・・。もし、どっかで奴隷商人に捕まって売り飛ばされたら其処の国の王を誘惑して王妃に収まってあんたの居るとこに戦争吹っかけて勝利した暁には奴隷として一生ノーギャラこき使ってあげるわ。」
目がマジのリナ・・・・・・・・。
「アハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」
「うふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふいふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふ・・・。」
乾いた笑いが霧の中で木魂す・・・。結構不気味な光景がしばし続いた・・・。
「だったら、協力してもらおうか?」
その雰囲気に押されてであろうか。やっとの思いで二人の会話(?)に割り込めた、といった様子の声がした。
「何者!?」
朗々と響くリナの声。
「・・・・・。リナさん・・・。ソレ、私の台詞です(涙)。」
「お黙り!!奴隷!!」
「りいいいいなあああさあああああああんん!!まだ根に持ってるんですかああ!?」
「おい・・・。ガウリイ。本当にこいつ等のどっちかがアリシア女王が連れてくるようにと仰ったカルティマンドゥラ女王の娘か・・・・!?」
「そーだろ。良く見ろよ、ゼル。目の色と髪の色こそ違うがこっちの赤毛の娘、アイツによく似てるぜ。」
「う・・・・。否定したいが確かに・・・。まあ。コンなのでも『大鴉団』の連中に見つかるよりか早くに発見できたから良かったようなものだな・・・。」
カルティマンドゥラ、大鴉・・・。その二つの用語に黒髪の少女よりも敏感に赤毛の娘は反応した。まず間違いあるまい。そうゼルガディスは判断した。
「じゃあ、まあ。行く所ねえんだろ?一緒に来てもらおうか?」
言って金髪の男、ガウリイはリナに歩み寄る。
「だあああああああああああああああああああ!!!!!!!!?????」
「ぎゃああああああああ!!リナさああああああん!!勝手に行かないで下さい!!私を奴隷に堕とさないでくださいいいいいいいいいいいいいい!!!!」
「そんな事行ってる暇があったら状況をよく把握しなさい!!どー見たってこの状態が好き好んで行こうとしているよーに見えるわけがないでしょ!!一寸!!下ろしなさいよ!!」
リナは片手でひょいとガウリイの肩に担ぎ上げられた状態になっていた。無論地面に 足は着いていない。じたばたしても全然動じる様子も無いガウリイ。
「そんな事いっても・・・。お前サンのこと丁重に扱うようにと言われているし。」
「ならば!!本人の意思尊重しなさいイイイイ!!第一、アンタだって疲れるでしょ!?」「いやあ。別に。それに、こんな小雨の中モタモタしてるとお前サン、風邪引くぞ。」
「・・・・・・。何所連れてこうってゆーの!?その格好からすると大鴉団やローマ人、ましてや人攫いになんて見えないけれど・・・・・・。」
「アリシア女王のところ。おい、ゼル。行くぞ。」
「ああ。今行く。で、アンタも行くのか?」
「・・・・・。はい。リナさんを見捨てると後が怖いので・・・・。」


森の中にあるケルト民族の村落。
この一族の女王はアリシアと言いミリィ、キャナルと言う二人の娘を持っていた。
しかし、そのアリシアの館に行く前にどうしてもリナを連れて寄って欲しいと言った
一人の男がいた。それが何の為なのか。二人を見比べればそれは一目瞭然の事だった。
「おーい、ケイン帰ったぜ。」
何時もののほほんとした声にケインが振り返る。
「ああ。早かったな。ガウリイ。ゼルガディス。」
「まあな。不幸中の幸いこの娘が家出なんて言うふざけた真似をしてくれたお陰で手間が省けた。『大鴉団』の連中にも鉢合わせしなかったしな。」
ゼルガディスがケインの相変わらずの黒マントを呆れたように見やる。
ケインの視線がリナに注がれる。
「・・・・。誰・・・。この人・・・。」
本能的にガウリイの後ろに隠れつつリナは尋ねる。
しかし。答えたのはケインだった。
「俺はお前のにーちゃんだよ。」
しばしの沈黙。
しかし・・・。やがてリナは絶叫する。
「・・・・・・・・・・。そんな・・・・。私の お兄さんがこんな女顔変態黒マント男だったなんて!!!!!!!!!!!!!!!」
ずべ!!
あからさまな反応に格好つけてポーズをとっていたケインがマトモにこけた・・・。
「少なくとも・・・。兄がいた事には驚かんのだな・・・。おまえ。」
ゼルの冷めたツッコミ。
「もしも〜〜〜し、ケイン、いきてるかああああああああ!?」
行動不能となったケインの耳元で必要以上に大声を立てるガウリイ。
訳がわからないまま硬直するアメリア。
「ともあれ・・・。私の異父兄ってことは解ったわ。貴方達一体何!?私に何の用なの。さっきから聞いていれば大鴉団と敵対していると言う事は解ったけれど・・・。」
「それは・・・。私からお話しましょう。カルティマンドゥラの娘。」
唐突にした威厳の在る声。そして。美しい金髪の女性。
「アリシア女王!!」
ゼルガディスがその人物の名を呼ぶ。
「私達は貴方の力が必要なのです。英雄、カルティマンドゥラの娘ウェセリナ。」
本名を呼ばれた事にリナはぴくっとした。しかし・・・・。
「母はケルト人の最悪の裏切り者です。それに・・・。ケルト人は『大鴉団』なるローマに反逆する組織を造っている。そして大半の物がそれを指示してさえ居る。そんな中、ケルト人の裏切り者とローマの血を引く私に何をお望みなのですか?」
顔を俯けたまま言うリナ・・・・。
そんなリナを気遣うような視線で眺めているガウリイ。
そして・・・。ローマとケルト民族の因縁地味た対決が始まろうとしていた。
続く。

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201ヴェルメネトンの涙2LINA 10/22-20:08
記事番号198へのコメント
リナの母、、カルティマンドゥラ女王にはウェヌティウスという夫がいた。
ウェヌティウスはローマの侵略者を憎んでいたが、カルティマンドゥラは夫に対する反感から、ローマに協力的な態度を取り、戦争を回避しようとした・・・。
 ローマ皇帝クラウディスが侵略してきた時、ローマ軍と戦って有名を轟かせたカラクタスという指揮官がいた。彼は彼方此方にローマに対する反乱を呼びかけカルティマンドゥラの一族も誘おうとした。しかし、彼女は彼を裏切って今、リナの父親に当たるローマ人スカプラ総督に引き渡したので、カラクタスは鎖に繋がれ処刑された。
後にカルティマンドゥラは怒った夫に追放され、一子すなわちケインを置き去りにしてローマの庇護を求めたと言う。 彼女を流血の惨事を避けようとした女指導者と見るか、ローマに目の眩んだ裏切り者と見るかは、立場によって異なるだろう・・・・。

「正直言い、私は母を最悪の裏切り者と見なしています。」
冷徹な口調でリナは言った。
「例えそうだとしても・・・。私達には貴方の協力が必要なのです。」
あくまでアリシアの口調は優しい。
何時も母の事ではローマ人にもケルト人にもとやかく言われ、リナは畏怖され続けてきた。「あの・・・。何でですか?リナさん、嫌がってるんですよ・・?」
別に嫌がってはいないが、と思いつつもリナはアメリアの言葉を聞き流す。
「貴方は『大鴉団』はご存知ですね。」
「あ、はい。ローマに対するケルト人の反乱分子でしょう?」
アリシアに逆に質問をされ、答える形となったアメリア。
しかし。リナはその「大鴉団」の名を聞いてマトモに顔をしかめた。
単なる反乱分子であるならそれは何所にでもある話である。しかし・・・。この組織はそんなに生易しい物ではないことを彼女は知っていた。
「その「大鴉団」の起こす反乱を私達は何が何で も食いとめなくてはなりません。そのためにも・・・。さもなくば軍事力で彼らに圧倒的に勝るローマは私達全てのケルト民族をこれ見よがしに滅ぼすでしょう・・・。」
アリシアの言う事は最もだった。
さもなくば第二、第三の「モナ」の事件に成りかねない。
「解りました。私も協力いたします。しかし・・・。女王の娘としてではなく私の意思として。」
リナはそう言いつつもこれはアリシアやアメリアの言う正義や平和の為ではなく自分の叔父と弟に対する複雑な心情からの言葉と理解していた。
「でも、一体何をすれば?」
本音はその程度の物だったことに今更ながら驚きつつリナは言う。
「お前はここに居るだけで良い。」
唐突にケインが口を開き、そして続ける。
「解ったか?」
「う、うん・・・・・。」
リナは辛うじて答えた。異父兄弟とはいえケインとドルスタンは随分と違うような気がする。
しかし・・・。このぶっきらぼうな男に対して失った肉親を取り戻したような錯覚を覚えるのは気のせいだろうか。ケインはあたしのことを何も知っているはずが無いのに。
表情を出す事も無くさっと踵を返して部屋から去って行くケイン・・・。
ひょっとして、初対面の時酷いこと言った事、根に持っているんじゃないのだろうか?
そんな下らない疑問のみがリナの頭を掠めた・・・・。
「ところで・・・。アリシアさん。正直に言ってください。ケイン以外はここに居る戦士の殆どは『大鴉団』と同様の出・・・でしょう。」
ガウリイ、ゼルガディスんぼ顔を見、言葉を選んで言うリナ。
「まあ〜〜。養子って所はケインも俺もゼルガディスもかわんね〜ぞ。」
リナの言いた事の意を汲んでいないらしいガウリイがぼへええええと言った口調で呟く。
「ああそうだ。俺もガウリイも・・・。下手をすれば今頃『大鴉』の一味となっていただろうな。」
多少自嘲気味にゼルガディスが呟く。
「リナさん、どーゆー事なんですか?」
アメリアが訳のわからないと言った様子で聞いてくる。
「以前・・・。私達が産まれる4〜5年ぐらい前かしら。『モナ』と言うケルト人の軍団が終結していた村の事は知っているわね・・・。」
「有名な話です。そこに・・。ローマ人が進行して破壊と略奪と殺戮の限りを尽くしたと言うあの土地でしょ?」
「それだけで済んだと思う?余り直接的な言い方はしたくないから結果的な事だけ言うけれど・・・。大半の村の女がローマの侵略者の子供を産み落すハメに成ったと言うわ。
そして。その子供達は母の仇を討つべく反ローマ組織の家庭へと養子に出され『大鴉団』を結成したといわれているわ。その系統の貴方達が何故その大鴉と敵対し様って言うの。」
個人的にリナはこの話が大嫌いだった。
「今ここで『大鴉団』が反乱を起こせば第二のモナにイギリス中がなるだろ?」
事も無げな口調でガウリイが言う。
「・・・・。個一任感情は殺してって訳ね・・・。」
「そーでもないさ。まあ、お前サンも今に解るんじゃネエか?ケインだってここにいろっていったんだ。それに・・・。俺はローマ人全員が嫌いじゃないぞ。実際俺はリナの事嫌いじゃないぞ。」
唐突な言葉。
「な、な、な、何言ってるの!!!!???えっと、ガウリイだっけ?何考えてるの、あんた!?」
「・・・。う〜〜〜ん。自分で言うのもなんだが・・・。俺って何も考えてネエなぁ。
たださ、本能的にリナは嫌いじゃないんだ。まあ、これからよろしくな。」
「・・・・。まあ。こちらこそ。で、アメリア。アンタは如何するの?別に帰りたいんならば帰っても良いんだけれども・・・・?」
「いいえ!!!!絶対に(滅茶苦茶強調)帰りません!!!!!!これぞ!!私の望んでいた正義の王道です!!ああ!!過酷な運命を背負う戦士達が同じく過酷な運命を持ちながらも敵対するものたちを正義の為に打ち砕く!!な〜〜〜〜んって素敵なんでしょう!!」
「なんだ・・・・。ありゃ・・・。」 (ゼル)
「気にしちゃ駄目・・・。ただのヒロイック・サーガオタク娘だから・・・。」
(リナ)。 ズゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ(アメリアの燃える音)
「どうでも良いけれどもよ、リナ。その指輪・・・・・。」
酸化しかけた親指にはめられたイーグルの紋章の指輪に気付きガウリイがリナに言う。
「・・・。大切な物なの。親指にはめるのはヘン、とか酸化して汚いとか言いたいのはわっかて居るわ。」
片手でそっと親指に指輪を押さえつつリナは言う。
「一寸待ってナ。」
言って何所かに出かけたガウリイだったがほそっこい黄金の簡単な造りのペンダントをもって戻ってくる。
「要らなくなった奴だから。あ、一寸指輪はずして。」
「壊さないでよ。酸化して造りが脆弱になってるんだから。」
リナの指輪を受け取ったガウリイはそっとペンダントに指輪を通す。
そして、リナの首にかける。
「・・・・・。ナンでまた・・・?」
自分の胸元に垂れ下がった酸化銀のイーグルを眺めつつリナが言う。
「だって、大切な物なんだろ?本当はローマの紋章のついた指輪はここじゃ着けない方が良いって言おうと思ったんだけど大切な物じゃ何時も見に着けて対のが人情だろ。
俺の従姉妹のねーちゃんのだったんだけど。そのペンダントリナが着けてたほうが良いから。指輪は服の中にでも隠しとけよ。」
言ってにっこりと笑う。
「・・・・。ありがとう・・・・。」

続く。


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205感想で〜す。ティーゲル 10/22-22:58
記事番号201へのコメント
 どうも〜ティーゲルです。とーとーでましたねイギリス編。ケルトですか・・・
中国を主な生息地にしている私にはよくわかんないですが、わかんないからこそ楽
しいものもあるっ!てなわけで続き楽しみにしてます。ところでドルスタンっても
しかしてトリスタンのことですか?あのあたり結構呼び方変わるからわかりにくい
っす。では。

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207お礼です!!LINA 10/22-23:39
記事番号205へのコメント
有難うございます。
私も中国、特に三国志は大好きです!!
やっぱり孔明軍師は良い!!曹操、玄徳も好きだけど。
>ところでドルスタンってもしかしてトリスタンのことですか?あのあたり結構呼び方変わるからわかりにくいっす。
はい。一応トリスタンです。この辺りはオペラなどではトリスタンよりもドルスタンと呼ばれているのでそっちの方にしました。ちなみに私の本ではトリストラムなどとも言われていましたが。こーなるとやっぱりイゾルデ(オペラではこうなので)も出すつもりです。(通り名だけだけど)。
しかし、彼女の場合もイソウドやイゾッタやイズーと色々ありますがそのヘンはどーなんでしょう・・・?
一応リナのイメージは妖姫モーガン(モルガン?)・ル・フェイなのですが・・・。では。

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208ヴェルメネトンの涙3LINA 10/22-23:41
記事番号198へのコメント
「私はお母様の事と同じ位貴方のお母様の事尊敬しているけれど?」
若輩の娘、キャナルがジキタリスを摘みながら言う。
「そうよ。そうでなければ今頃私達全員ローマ人に殺されているわ。」
年上の娘ミリィことミレニアムもラヴェンダーを摘みながら言う。
二人はアリシア女王の娘である。
「そう言ってもらった事、皆無に等しいから。」
苦笑を浮かべつつローズマリーを摘んでいるリナがいう。
「正義って人によってもちがうものですしねえ・・・。」
ブルーベリーを摘んでいるのだかツマミグイしているのだか解らない状態のアメリア。
ケインはただここに居れば言いとだけ言った。
しかし。周りが仕事をして居る限り一人だけのんびりしているわけにはいかない。
そこでリナとアメリアはミリィとキャナルの庭園を手伝う事にしていた。
季節は丁度春。
ただ之だけの事なのにホッとするような退屈しない平凡だが穏やかな日々が続いた。
「なんか・・・。ケインって不思議な人よねえ・・・。」
何となくリナが呟くが、ソレを聞き逃すようなキャナルではない。
「何言ってるのォ!!リナが興味あるのはガウリイでしょ〜〜〜(はあと)。誤魔化してもちゃ〜〜んとこのアタシには解るんだから!!」
「・・・・。まあ・・・・。確かに彼は不可解な人物だし研究の対象には値すると思うわ・・・・。」
「・・・・。ホントに誤魔化してる・・・。(byキャナル)。」
「まあ、その事はさて置き。だって、ケインって本当にヘンなんだもん。」
むきになって話題を変えようとしているのはあからさまである。
そんなリナを見るに見かねてアメリア・・・。
「まあ・・・。確かにあの黒いマントは変だと思います・・・。センスがずれているのか気付いていないのかどちらかは解りませんが・・・・・。」
「私はその両方だと思うけれど・・・・・。」
遠慮がちにミリィが意見を述べる。
「そ〜〜ゆ〜〜んじゃなくて!!何て言うのかなあ・・・。ぶっきらぼうなんだけれど彼に言われた事をするのって不快じゃないって言うか何て言うか・・・。正直言ってむしろ私のためのなっているような気さえする・・・。」
リナがそう言い終わりか終わらないかのうちだった。
『じゃ〜〜ね、リナ(リナさん)。夕ご飯までには帰ってくるのよ〜〜。』
とか何とか言い残し去って行くミリィ、キャナル、アメリア。
「まあ〜〜ケインってそーゆーとこ、昔からあったしなあ。」
今や後姿となった三人を見つめるリナに唐突に後ろから声がかかる。
「ガウリイ!!なんでアンタがここに!!」
度肝を抜かれたリナが叫ぶ。
「ああ。そのケインを探してるんだ見なかったか?」
「何時もこの時間帯になるとどッかにフラッと行っちゃうってゼルガディスがいってたわ」「ふ〜〜ん。じや、ま、いっか。」
「大事な用事なんじゃないの?」
リナの問いに一寸考えたようにガウリイ・・・。
「・・・・・。ケイン探してるうちに何言うんだったか忘れた。ま、いっか。どうせ大したことじゃねえな。忘れるんなら。どーせ公衆便所のスリッパ落っことしたこと謝る程度の事だろう。うんうん。」
「・・・・・・・。今度、そのスリッパで頭殴ってやりましょーか?かえって今よりも良くなるかも・・・・。」
「嫌。遠慮しとく。」
何時の間にかリナの隣に居るガウリイ。もしかしてケイン探しはリナのところに来るための口実だったのかもしれないと周囲で見ている人間は思わざるおえない。
まあ、半分はそうである事を彼自身否めないのだが・・・・。
「ねえ。ガウリイ。あんたさあ、ナンで大鴉団に入らなかったの?」
唐突な質問とリナ自身にも良くわかっていたがガウリイなら本能的に理解してくれるような気がしていた。
「う〜〜〜ん。まあ、俺のこと育ててくた養父母が好まなかったって事もあるけれど。
今リナ、ここに居てどー思う?」
「平和だと思う。冷たくないしあったかいし規則も無い。」
女伊達らにローマの冷たい軍法主義的な軍隊の中で育てられたリナには信じられない世界だった。だから、尚更に正直な感想が言えたのかもしれない。
「だったら・・・。ソレを奪われそうになったら俺も戦うけれど。無闇に騒ぎ立てて戦おうとするのってただ単に壊しているだけじゃねーか?その分血だって沢山流れるんだぜ?そー考えるとお前のかーちゃんってすっげー人だよなあ。」
「ケインを捨てたとしても?」
「捨てたくて捨てたんじゃないだろ。世界を守るような女王が自分の子供一人くらい守れなくってどーする。それに、ケインはそんな事で拗ねたりするような弱い奴じゃないぜ。」リナはさっきアメリアのしたようにプラムを籠から一つ摘まんで食べる。
「美味しい。」
初めて食べたと言ったような素振りである。
「・・・・。お前、一体どんな育てられ方して来たんだ?」
「・・・、やっぱり下品だった?」
少々後悔したような様子でリナはガウリイの方を仰ぎ見る。
「馬鹿だなあ。もっと、こーやって食えよ!!」
リナが一寸だけかじったプラムを取り上げ思いっきり、美味しそうに噛みつき食べるガウリイ。
ニパっと笑い真似するリナ。
「こんな事・・・。叔父貴の前でやったらぶっ殺されるわね。下品だ、とかいって。」
まだ上手く果物を丸かじり出来ないのだろう。
頬っぺたに果汁がこびりつけたリナが面白そうに下司な言葉を使っている。
そんなリナの顔についた果汁を手でふいてやりながらガウリイは再度尋ねる。
「本当に・・・。どんな育てられかたしたんだ?お前。少なくとも気性に合った育てられ方をしたようには俺には見えんが。」
「う〜〜〜〜ん。弟のヴァルガーブと・・・・。死んじゃった兄貴・・・・・・と一緒に帝王学を死ぬ程仕込まれたわ。もっとも、飲み込んでたのはヴァルガーブ一人。私と兄貴はよくエスケープして叔父貴にヤキいれたわねえ・・・・。」
「ヤキって・・・・。どんなだ?」
「たとえば・・・。『タキトゥス』の歴史書丸暗記とか、ホメロースの詩を丸暗記しろとか・・・。まあ、ホメロースの『イーリアス』は大好きだったからいいけれど。でも、アタシとしてはローマ建国の祖アイネイアスやロムス・レムスの伝説の方がすきね。」
「・・・。さっぱりわからん・・・・。」
「でしょうね・・・・。」
言ってリナはガウリイから貰った黄金のペンダントの先に着いている指輪をまじまじと眺める。
イーグルの他にも何かが刻み込まれている。
しかし、それが何であるのかガウリイには解らない。
「Dorustan。兄のよ。」
何時になく寂しげな口調で言うリナ。
「ガウリイ。ここに来て良かった。さもなければ、あそこで権力にしか興味の無い叔父と弟と・・・。死んだ兄の思い出に押しつぶされそうだったのかもしれない・・・。」
「大丈夫だ。ここに居ろ。」
「うん・・・・・。」
遠くの方で昼飯の時間を告げるミリィとアメリアの声。
何時の間にやら戻ってきたケインに放浪癖を治せだのと愚痴愚痴言うゼルガディスの声。風に乗って流れてくるキャナルの歌声に軽くリナがハミングを絡ませる。
リナには軍事よりも音楽の才能があるらしい。
そう感じつつリナの手を取りガウリイは進んで行った。

続く。

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218ヴェルメネトンの涙4LINA 10/23-19:24
記事番号198へのコメント
LINAさんは No.198「ヴェルメネトンの涙」で書きました。
>今回もまた歴史小説です。
>舞台は紀元一世紀、ローマ帝国に支配されていた時代のイギリスです。
>内容的にはイギリス先住民族ケルト人と侵略者のローマ人の血を引く複雑な出生を持つリナがと、ある一族の戦士の一人ガウリイに誘拐され、そこから波瀾がおこり・・・・・・・。と言ったところです。
>どーもケイン君が目立っているような気がしないでも在りませんが、気長に見てやってください。
>ちなみに「ヴェルネメトン」とは古代ケルト語の地名で「乙女の丘」と言う意味だそうです。

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219:ヴェルメネトンの涙4(こっちです)LINA 10/23-19:27
記事番号218へのコメント
リナとアメリアはヴェルメネトンの丘の辺りをうろついていた。
「リナさん・・・・。」
「うん。俗に言う『巻かれた』ってやつね。」
二人は放浪癖をもつ女顔、黒マントの超短気男、すなわちケインの尾行をおもしろ半分にしていた。しかし・・・。
モノの見事に巻かれ・・・・いや、『迷子』になった・・・・・。
「どーします?リナさん。」
「放っておけばケインが迎えに来てくれるわよ。こーなったのもアイツのせーだもん。」
いとも簡単にケインに責任転嫁するリナ。
「お〜〜〜い、リナにアメリアじゃね〜〜じゃね〜〜かああ?」
「お前ら、今日は暇なのか?」
唐突にかけられた声。
「ガウリイさん、ゼルガディスさん!!」
安堵したようにアメリアが言い、リナと二人でその側に駆け寄って行く。
そして・・・・。
「さあ。ゼルガディスさん!!私達、邪魔になりますよ!!さあ。こっち行ってましょう。」「おいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおい!!!??」
状況を把握していないゼルガディスを引きずりつつガウリイ、リナから大体500メートルぐらい離れた木の側を目指してズンズンと進んで行くアメリア。
「ちょっとおお!!!アメリアア!!!」
リナが怒鳴り声を上げるが虚しい木魂となっているだけだった。
そんな事意に介する様子も無く何かの作業にひたすら没頭しているガウリイ。
「・・・・。へえ・・・・。」
その様子と羊皮紙に美しく描かれていく風景画をリナは興味深げに覗いた。
「結構好きなんだ。こーゆー絵を描くの。」
穏やかにガウリイが説明する。
「スゴイじゃない。私、フレスコ画やモザイク画は結構見た事在るけれど・・・。
こーゆーのあんまり見る機会なかったなあ。」
「嫌いか?」
「好き。」
「じゃあ、自分で書いてみようとか思わなかったのか?」
「描けないの。だって、自然相手よ?花一輪描こうと思っても一寸風が吹いちゃえば向きが変わる。虫が一寸悪戯しちゃえば表情が変わる。光の加減のご機嫌が変われば線が変わる。その時その時の姿を一々描いていくのはむずかしいわ。そのてん、ガウリイの絵は永遠の姿、とまでいかないど・・・。本質を突いてる。」
「そっか。じゃ、出来あがったらリナにやるかあ。」
「そりゃどーも。」
またもやリナはガウリイの描いている絵に見入る。
絵を描く、歌を歌う、そう言った行為さえ不思議に感じる。
人は物事を表現するための手段として、又は祈りの手段として絵を得た。
ただそれだけの事なのに、『言葉』や『文字』を得た今ですら人は絵を書くという行為を手放さない。むしろ其処から何かを感じ取ろうとする。
歌だってそうだ。最初は手段でしかなかった言葉をつむぎ、旋律、さらには楽器などを作り出して其処から何かを感じ取ろうとする。
そう考えつつリナは地面に指を走らせる。
Gourry・・・・・。
意味の無いアルファベット。人の言葉を書きとめておくためだけの「文字」。
ソレにナンの意味があるんだろ?
「リナ、何て書いたんだ?」
地面の文字を見てガウリイがリナに尋ねる。
「・・・・。そっか。ケルト人は文字って文化を持たないって聞いたけど。ほんとうだったのね。」
「まあな。でもよ、そんなに書き記したりするだけよりも先祖代代直接的に知識を伝承して行く事の方が、よっぽども大切だってアリシア女王が言ってたぜ。お前さんの国の文化ってそんなに冷ややかな感情の篭もらない物なのか?」
「言ってくれるわねえ!!でもね、ガウリイ、私も貴方のケルトとローマのハーフなのよ!?」
「あ・・・。そうだった。」
「クスクスクス・・・。別に良いけど。ねえ、ガウリイ知ってる?太古の知識が失われない限り血の混じりあいって種の絆を強めるのよ。両方知っててそんは無いと思うけれど?」「へえ〜〜〜〜。じゃあ、リナ。よかったらローマ字、教えてくれないか?」
「・・・・。ローマ字なんて情けない言い方しないでラテン語といって欲しいわね・・・。まあ、良いわ。教えてあげるわ。(悪魔の微笑み)。」
かくして・・・・。リナちゃんによるガウリイ君スパルタラテン語強制教育は開始されたのであった・・・。



と、思ったのもつかの間・・・・。
余りにも凄まじいガウリイのクラゲにリナは匙を投げ、しばらくの休暇を申し出た。
そして・・・・。今日もミリィとキャナルの庭園の手伝いを途中で切り上げ・・・。
「だあああああああああああああああああああああ!!!!!!!まあああた尾行失敗!!!全く!!何所いってんのよあんの女顔黒マント変質男!!!!」
放浪癖を持つ異父兄、ケインの尾行と退屈凌ぎの盗賊いじめにいそしんだ。
「ひょっとして・・・。ケインの奴はアタシが盗賊いじめに気を取られているうちにさっさと進んで行くのかしら?」
当然の事を今更気が付いた様に呟くリナ・・・・。
その時だった。
びゅあ!!
一瞬の殺気!!
ローマ兵団の精鋭舞台の中で育てられたリナはソレに気が付きさっと身をかわす!!
「何者!!?」
アメリア張りのセルフをはきつつも警戒は怠らない。
「ふ〜〜〜ん。アンタがあのケインの妹って訳だね。お嬢ちゃん。」
現れたのは長い髪の妖艶な美女。片手には獲物の鞭を握り締めている。
「あんた・・・・。大鴉団の一員ね・・・。」
直感的にリナはそう察した。
「言い勘してるねえ、お嬢ちゃん。そうさ、アタシの名はカーリー。アンタの兄貴のケインとは宿敵と言っても過言じゃないのさ。」
そう言っている間の第二撃めをリナは辛うじてかわす。
しかし、形成はリナにとって圧倒的に不利なものだった。
ここには彼女の得意とする獲物の短剣も無ければ鞭が相手ではローマ兵特有の規則的でありながら一撃必殺の戦術も通用しない。
・・・・どうする・・・・・・・・。
次々と来る攻撃をかわしながらリナは思案に耽る。と、同時に軽く横に突き飛ばされる。「な!!」
「リナ、お前は退いてろ。」
ガウリイだった。
暫く続くカーリーとガウリイの乱戦。しかし、リナが彼の足手まといになっていることは傍目から見ても良く解る。
それに、ガウリイとて得意とする剣を今は持っていない。
ただ単に鞭の攻撃をして居れば済むカーリーと違いその疲弊もリナを抱えていれば甚だしい。
永遠に続くのではないかと思えるほどの緊迫した時間が過ぎる。
「いい加減にしろ!!」
唐突にその緊迫は第三者の介入で破られた。
「・・・・!!ちい!!アンタかい。」
「ざけんじゃねーぞ!!この厚化粧雌鴉!!ガウリイの面たてていままで黙っていてやりゃー図に乗りやがって!!おい!!てめえ!!憎いのが俺なら俺だけを憎め!!今度他の奴巻き込んだ日にはただじゃおかねーぞ!!!」
ケインの一喝。怒り狂った目つきを残して去って行くカーリー。
「ケイン。ありゃーお前の知り合いか?」
いつもののほほ〜〜んとした口調でケインに問うガウリイ。
「ああ。大鴉の中でも特に俺と対立するカーリーってヤな女だよ。」
滅茶苦茶嫌そうな顔してケインがごねる。
「大鴉に知り合いなんているの?」
リナがやっとの思いで立ちあがって言う。
「好きで知り合ったんじゃねーよ!!それに!!アイツ完璧俺の命狙って矢がるから妙な誤解するな!!」
ニヤケズラのリナを牽制するかのようにケインが先手必勝を取る。
しかし、ガウリイは泡慌てず騒がず冷静に・・・・・。
「嫌われてるんだな。(アッサリ)。」
ドテ!!(ケインの思いっきりこけた音。)
「けええええええええええええ!!!!!!あんなクズ女に好かれたかねえええよ!!」ソレはまあ・・・。本心だろうけれども・・・。
こーゆー突っ込み方をされた後には随分と虚しい言葉に聞こえるのは気のせいだろうか・・・?
「リナ。ケインってこーゆー奴だ。解ったか?」
「うん。」
リナとガウリイの会話にますます雄たけびを上げるケイン・・・。哀れ・・・。

続く。

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227ヴェルメネトンの涙5LINA 10/24-08:57
記事番号219へのコメント
「まあ、他ならないアリシア女王の頼みなら・・・・。」
リナはアメリア共々承諾した。
「悪いな。お前達が居てくれた方が都合が良いんだ。」
ゼルガディスが言う。
「でも・・・・。ローマ人がそう簡単に許してくれるとは思わないけれど。」
ひにくげな口調でリナが言う。
アリシア女王には男子がいず、二人の娘、ミリィ、キャナルが居た。
彼女の夫はすでに去年すでに死亡していた。そこでアリシアは正式に亡夫の財産の相続人に二人の娘とローマ皇帝ネロを指名した。
とかく、無駄な争いを避けるのはベストな方法である。しかし、機会あらばその財産を自分たちの懐に収めようとするローマ総督の一人がこれに抗議しに今日やって来ると言う。その席上にリナ、アメリアの同席をアリシア女王は求めたのだった。
「ついでに言えばくれぐれも無駄な言動は控えてくれよ。一触即発、ちょっとしたことでも奴らはこちらに攻めこんで来て全てを略奪し尽くす理由を鵜の目鷹の目でさがしているんだからな。」
リナとアメリアの良からぬ気性を見越してくぎを打つゼルガディス。
「はいはいはいはいはいはい。私だって殺されたくわないわ。」
「正義に反するような気もしますが・・・。平和のためには背に腹は代えられませんね。そうします・・・・。」
悔し涙を流しながらアメリア。


売り言葉に買い言葉。
罵詈雑言が虎視眈々と飛びかう。
4人のローマ人とアリシア、ミリィ、キャナルのやり取りが続く。
誰がどう考えてても正当はアリシア親子。不当はローマ総督達である。
要らぬ嫌疑をかけないようにするためであろうか。ローマ人4人が完全武装しているのに対してこちらに控えるのは短剣1本を携えたゼルガディスとリナ、アメリアのみ。
不安に駆られて、と言う訳ではないがリナは見なれた金髪と茶色い髪の黒マントを探して自然と顔をキョロキョロさせる。
「大丈夫です。ガウリイさんとケインさんは外で控えてるってミリィさんが言ってました。」そんなリナを安心させるかのようにアメリアが言う。
「何言ってるの!!いざってなれば私があんなの横から粉砕してやるわよ!!」
そう強がっているリナだが心なしか態度が軟化したのをアメリアは目敏く悟った。
更に続く言い争い。
兄のドルスタンも一介のローマ兵士だった。しかし、あんな粗野な馬鹿げた真似をましてや女にはしなかった。この粗暴極まりないローマ人たちに、リナは嫌悪して止まない叔父アルバートと弟ヴァルガーブを重ね見た。
全くどいつもこいつも・・・。何所から来るわけ?この権力に対する固執は?
「いい加減にしなさい!!これは私達の問題です!!あなたたちには何も関係の無い事でしょう!!」
怒り狂ったミリィが怒鳴り、さらにキャナルがローマ兵の一番の上官らしき男に唾を吐きかける。アリシアが止める暇も無い出来事だった。
「この!!」
ローマ兵の一人が杖を振り上げキャナルとミリィに打ちかかろうとする!!
が、その手は振り下ろされる事無く男は何者かの横からの一撃に転倒した。
「リナ!!」「リナさん!!」
ゼルガディスとアメリアが驚愕した声でその人物の名を叫ぶ。
しかし。リナは慌てる事無く静かにローマ兵達に向かって言う。
「大の大人の男が小娘(ガキ)相手に威張ってんじゃないわよ。みっともないわねえ。」ローマ人達の怒りの視線がリナに向けられる・・・、が、しかし。それもすぐに嘲りと侮蔑を含んだ笑い声へと変わる。
「みろ、コイツ。よくみればつい最近行方不明になったアルバート総督の姪の混血女じゃないか!!?」
「本当だ!!裏切り者の『殺し屋女王』カルティマンドゥラの娘か!!」
「役立たずの無能者、ヴァルガーブの姉か!?そういえばコイツの兄のドルスタンもつい先日ローマ本国で無駄死にしたっけなあ!!しっかし。ここの連中も大半がローマとケルト人の混血なんだろ!?類は友を呼ぶとは正にこの事か。」
この台詞を聞くだけで今までリナの育ってきた環境を想像するのは難解な事ではないだろう。むしろ、どんな言葉よりも鮮明に理解できると言っても過言ではない。
リナはただ己の母の事を恥じ必死で歯を食い縛りただただ悔し涙をかすかに浮かべ、血が出るのではないのかと思うほど硬く両手を拳にし握り締めている。
そんなリナを見かね、下を見つめ黙して語らないアメリア。彼女の目にはリナ以上に涙が滲んでいる。
・・・なんでリナさんばっかりこんな目にあわなきゃいけないんですか!!・・・
「ナンとか言ったらどうだ!!この混血娘。」
振りかかってきた杖の一撃をリナは難なくかわし、ダと駆け出してゼルガディスから短剣を引っ手繰る。
「やめろ!!リナ!!」
その制止の声に辛うじて踏みとどまるリナ。
が、次の瞬間、2名のローマ兵が同時に後ろからの一撃を受け倒れた。
「ケイン!!ガウリイ!!」
丁度の位置に居たキャナルが叫ぶまで逆行によりそのローマ人を倒した人物が誰かは解らなかった。
「おい、リナ。こいつ等相手じゃ例え対マンなんて奇麗事言った手おまえの実力じゃきついぜ。まあ、俺に任せとけ。」
ぶっきらぼうなケインの声。
「ふ、ふざけやがって!!」
残りの二人が同時にケイン一人に掛かって行く。
「るっせええな!!俺はなあ!!この妹が屈辱に耐えながら踏みとどまった所なんて一度も見た事無かったんだぞ!!てめえらが卑劣な事つづけるってんなら俺はこの場で貴様ら全員たたっ斬る!!」
逆上したケインの声。
「貴様ら、良くも調子に乗ってリナを傷付けたな。」
更に加わるガウリイの気合に押されてだろうか。スゴスゴと引き上げて行くローマ人達。気合が抜けたのであろうか。ゼルから引っ手繰った短剣を足元にカチャンとリナは取り落とす。
「あぶないなあ。」
何時もののほほ〜〜んとした声でガウリイがそれを拾い上げる。
さっきのあの異常な気合とローマ人の怯え様はなんだったのだろう、と言うぐらいの180度の変わり様である。
「すみません。アリシア女王・・・。もし、これがきっかけで戦争になんてなったら・・・。」
リナの憂いは其処にあった。
「大丈夫ですよ、ウェセリナ。奴らは手だしして来ないでしょう。それに、原因は家のミレニアムとキャナルに在ります。貴方は気に止む事はありません。始めから・・。ガウリイとケインを出していれば良かったんですけどもね・・・。今となっては。」
言ってアリシアは優しく微笑んだ。
この人にはローマ人としての名前、ウェセリナと呼ばれても不快ではない。
リナはそう思った。
「おい、リナ。何があってもここに居ろ。良いな。」
そう言ってケインはまた何所へとも無く去って行った。


リナが気になる。
あんな悔しそうな眼差しのリナはかつて見た事が無かった。
知り合ってまだ4週間にも満たないがあんな眼差しをするような人物にリナは思えない。そう考えると眠れず夜道をガウリイは散歩に出かけた。
ヴェルメネトンの丘に差し掛かった頃。
闇夜に映える赤毛と銀色の光刃がガウリイの視界に飛び込んできた。
リナだ・・・・。でも、こんな時に何を!?
気配を殺しそっと物陰に隠れ様子をうかがう。
彼女は乱暴だが的確な剣さばきで何かを切り刻んでいた。
一見すれば剣の稽古にも見えるが殺気だった様子がそれを否定するためには十分過ぎる様子をかもし出していた。
よくよく観察すれば彼女の切り裂いている物には何かの印が施されている。
ナンだろう・・・N(エヌ)・E(イー)・R(アール)・О(オー)
Nero!?ネロ!?皇帝ネロの事か!?
辛うじてリナに習った単語を綴りガウリイは驚愕する。
やがて、リナがゆっくりと顔の向きを変えた。彼女からガウリイは死角に成っているので見えない。だが、、ガウリイからは息を切らし、全身を使って運動後の呼吸を整えている疲れきったリナの顔が良く見えた。しかし、彼女の顔を濡らしているのは汗ではなく大粒の涙だった。
「リナ・・・・。如何したんだ!!」
堪り兼ねてガウリイはリナに声をかけた。
「!!ガウリイ!!お願い!!見ないで!!」
泣き顔を他人に見られるのが苦痛だからではない。リナは今、自分が改めて恐ろしい復讐に凝り固まった人間なら無い物に思え、それを見られるのを猛烈に恥じた。
「言ってみなければ解らないだろ。それに・・・。皇帝ネロなんだな?お前が憎んでいるのは?」
「そうよ!!到底遂げられない復讐ってわかってる!!私も、アンタ達と敵対する大鴉団もしょせん同じ種類の人間よ!!非人道的な復讐鬼ばかり!!」
「・・・・。言って見なけりゃわかんねーだろ!?」
敢えてリナの顔を見るようにガウリイはリナの頭に手を置いた。
「・・・・。私には兄が居たの・・・。知ってるでしょ。でも・・・。殺されたのよ!!ローマ皇帝ネロに!!その日偶然兄は恋人のイゾルデと一緒にローマ本国に行っていた。けど!!あの狂人皇帝!!その日、何をしたと思う!!」
「・・・・・。己の都市・・・・。ローマを己が手で放火して・・・焼き討ちにした・・・。」
低い声でリナの言葉にガウリイは付け足した。
「そうよ・・・・。奴は焼け落ちる自分の都市を・・・。焼け死ぬ人々を安全な丘の上から恍惚とし表情で眺めていたって言うじゃないの!!兄は・・・。ドルスタンは!!
アタシの手元に残ったのは火に焼かれて酸化したこの銀の指輪只ひとつなの!!殺したい!!でも、そんな事出来ない・・・・。もっと大勢の人達が傷付く。そんな事したら・・・。」
堪え切れなくなってリナはまた滅茶苦茶に剣を振るいネロと彫られた木の株を斬りつけ始める。
そんなリナをガウリイはそっと止める・・・。
「あの時・・・。良く我慢したな・・・・・。」
ただただ。リナの嗚咽がヴェルメネトンの丘に響いた。


続く。

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228:ヴェルメネトンの涙6LINA 10/24-10:34
記事番号219へのコメント
何も無い平穏な朝。
しかし、こんなに胸騒ぎがするのは何でだろう。
こんなに早い時間からケインが居ないのも珍しい。
「アメリア、ゼル。ケイン知らない?」
そこらへんをたむろって居た二人にリナは聞く。
「ガウリイさんも探してましたよ。スリッパを公衆トイレに落っことしたこと謝るんだって言ってました。」
「・・・。あのクラゲ男・・・。またやったか・・・。」
「また!?」
「ああ、このまえもな・・・・・。」
永遠と続くゼルのガウリイ馬鹿さ加減の暴露談。当人が聞いたらかなりブルーが入るであろうその言われよう。(もっとも、ガウリイじゃ、解らないけれども・・・)。
いつもならそー言った類の面白い話には喜んで参加するのだが・・・。
今はそれどころじゃない!!
ダッとアメリアとゼルに背中を向けてリナは走り去る!!
「ああ!!リナさん!!トイレ行きたかったんですか!?ガウリイさんが落っことしちゃったからスリッパありませんよ!!」
アメリアの台詞を完全に無視!!

「ねえ、リナ聞いた!?」
ケインの行方を尋ねる以前にミリィがリナに話し掛けて来る。
「何?」
「今ね、ヴェルメネトンの丘で大鴉団の連中とローマ兵団第二アディウトリクス軍団の一党が交戦中なんですって!!」
「!!ソレって!?戦争ってこと!?この辺一体も危なくなるの!?」
お腹の辺りに冷たい、冷ややかな物を感じる・・・。
第二アディウトリクス軍団っていったら・・・
アタシの叔父貴・・・。アルバートが軍営長として所属するところじゃないの・・・!!その軍事力はローマ軍のなかでも一・ニを争う。どう見てもここの軍団大鴉団に勝ち目は無い・・・・・。その後はローマ人の破壊と略奪、いやそれ以上の事だって天下である。しかし・・・。キャナルもミリィも落ち着いた物だった。
「確かにアディウトリクスの軍団よ。でも、其処の軍営長と仲違いした最年少の兵士が率いている軍勢が大鴉に勝手に喧嘩を売ったらしいの。その兵士の単独行動よ。アディウトリクス本陣にも、こちらにも何も関係無いわ。むしろ相打ちになっちゃえば良いのにね。」
事も無げにキャナルが言う。が、・・・・。リナの顔色はマトモに変わった。
「最年少の・・・兵士・・・。」
ある、良く知った人物の顔がリナの脳裏をよぎった。
再度リナは駆け出した!!
只一人・・・・。ヴェルメネトンの丘に。
其処はもう大鴉団とローマ兵団の殺戮の現場と化していた。
その血みどろの光景の中・・・。リナは最悪の事態として予測していた光景をその目でハッキリと見た・・・・。
「・・・・・。軍勢を率いる・・・・・兄と弟・・・・・・・。」
当人達はそんな事知る由も無いだろう。
しかし・・・。
毒々しいローマの鷲「イグール」を掲げたヴァルガーブ・・・・。
そして。絶対に見たくなかった。信じたくなかった顔。
ケルト人の紋章「ドラゴン」の旗と共に、地下反逆組織「大鴉団」の旗を自らの手で掲げた男・・・・。ケインが対峙していた・・・・。
(予想はしていたけれども・・・。やっぱりケインは大鴉団と繋がっていた・・・。いや、むしろ幹部クラスだったと言っても過言じゃないかもしれない・・・。でも、何故?)
ショックの余りだろうか・・・。それとも単なる現実逃避か・・・。
リナはその程度の事しか思いつかない自分の頭を多少ながら呪った。
物陰に潜みリナはそっと二人の互いに対する呪詛の言葉に耳を傾けた・・。
「もうすぐここには叔父のアルバートの軍勢が進軍してくる。其処をどいてもらおう。俺は何がナンでもリナを取り戻すつもりでやってきた!!貴様にナンの関わりがあるという?」
ヴァルガーブがケインに対して恐ろしい剣幕で言う。
「できねえ事だな!!お前達ローマ人はあの女を苦しませつづけた!!あいつにはなあ、ずっと居場所が無かったんだ!!混血や裏切り者の女の娘だと言うことで虐めぬかれて育ったんだ!!そんななかに戻せるか!!てめえらローマ人全員にぶっ殺されても俺は妹を渡さネエ!!例え何もかも犠牲にしてもだ!!ローマの連中がした事はそれだけじゃねえ!!俺の弟、ドルスタンを殺した!! 末弟のヴァルガーブを冷たい権力者へと変貌させた!!権力のみを求める貴様らに何がわかる。そんな奴らから妹を救うために俺は大鴉団に入った!!」
怒り狂ったケインが叫びヴァルガーブに討ちかかる!!
ケインの言葉を聞いてであろう。動揺しつつもなんとかその一撃をかわすヴァルガーブ。「・・・・。俺は権力なんて欲さなかった・・・。」
「嘘をつけ!!」
なおも続く二人の戦い。
激しく討ちかかろうとし、互いに剣を構えなおす。
が・・・。その一撃を互いに与える事無く別の衝撃がそれを塞いだ・・・。
二人の剣に同じ鮮血が迸る。
右肩でケインの剣の切っ先を止め、左手でヴァルガーブの剣の剣先を握り締めて止めるリナの姿があった。その姿は打ちひしがれると言うよりも怒りに狂っていた。
両者が呆然としつつも剣を退いた。それと同時に後方から殺気がし、ケインが何者かに殴り飛ばされたのが解った。
「だからってなあ!!リナが全てを破壊することを望むと思うのか!?お前が死ぬ事を望むと思うのか!?お前がこんな反逆組織に入って下らない慰めを見出していたとき、リナは必死で耐えてたんだぞ!!?結果的にお前のした事はリナを傷付けただけだろ!?」
激怒したガウリイの声があたりに響く。
「ケインの馬鹿、ケインの馬鹿、ケインの馬鹿、ケインの馬鹿、ケインの馬鹿!!!」
泣きながらキャナルがケインを罵倒し茶色い髪の頭を滅茶苦茶に殴りつける。
「あんた・・・・。本当に大馬鹿よ!!!」
目にうっすらと涙を浮かべミリィが反っ歯をむく。
「ケイン・・・。それで本当にいいと思っていたのか?」
幾分同情的にゼルガディス。ケインはただひたすら下を向きキャナルに殴られつづけている。その表情は見る事が出来ない。たぶん・・・。後悔の涙を流しているんだろう。
「リナさん・・・。大丈夫ですか?」
アメリアがそっとリナに聞くがそれどころじゃない。
「ヴァル・・・。アンタどうして叔父貴と仲違いなんてしたの?それに・・・。権力には興味が無かったっていったわね?なら何故権力を得ようなんておもったの!?何故大鴉に喧嘩売ろう何てことした訳!?」
幾分か声が上ずっているのは傷の痛みのセイだけではなかろう。
「俺は権力なんて本当にどうでも良かった・・・。ただ、リナを嘲笑いリナを苦しめたローマの奴らに制裁を加えてやれるだけの力が欲しかった!!ドルスタンを殺した皇帝に太刀打ちできるだけの立場が欲しかった!!それに・・・。あんな叔父よりも産んでくれた本当の母以上に俺にとっては母親だったリナの方が何百倍も何千倍も大切だった!!それだけだ!!結果的に俺はリナを守れなかったばかりか実の兄すら傷付けたのか!!?」
半ば狂乱した口調でヴァルガーブが叫ぶ。
「・・・。ごめんね、ヴァル。ごめんね、ヴァル、本当にごめんね、ごめんね、ごめんね!!
ケインごめんね。ケイン、ケイン。」
泣きながらリナは兄と弟を抱きしめた。
「な〜に。まだ俺達は生きてるんだ。たまには行き違いもあるさ。どーやらローマ軍も大鴉も撤退をし始めたぜ。なあ、ケインにヴァルガーブよ、こんどそのリナの叔父って言うローマ人が攻めてくるんだろ!?なら・・・。そン時こそ今以上にちゃんとした形でリナを守ってやれよ。勿論、俺はそうするつもりだぜ?」
うって変わったガウリイの優しい声が一同の慟哭の涙を和らげたのだった・・・。

続く。

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233ヴェルメネトンの涙最終章LINA 10/24-18:39
記事番号219へのコメント
「ココに居ろ。」
ケインがそう言った理由を今更ながら噛み締める。
「アタシは大丈夫だから」
たった一言、そう書き残してリナは家を出た。
アルバートは正々堂々と戦いを挑むような将ではない。
実際に彼の兄に当たるリナの父親というローマ人も、そしてさしもの「殺し屋女王」と詠われたかの母もあの男のために失脚。ローマ本国に引き上げるハメに陥った。
最も会った事も無いのと同然の人間だ。ドルスタンと同じ運命をローマで辿った、と言われたとしてもなにも感慨が沸かないのが現状だが・・・・・。叔父が自分たち兄弟を育てたのはせめてもの罪滅ぼしか、さもなくば捨て駒として後々利用しようとしての事か。
どちらにしても今となっては関係無いしどうでも良い。
「私の買える所はケインやガウリイ、そしてアリシア女王が『居ろ』と言ってくれたあの場所よ。」
その為にも何がナンでもアルバートに卑劣な行為を取らせてはならない。
村落の森林に火を放ち村人全員を焼き殺すなどというネロ帝よろしくな残虐な事を平気でしれかすような男だ。
「・・・・。ネロの母は自分の夫を殺し、有力者の男と再婚した・・・。さらにその男のの財産をネロに受け継がせるために二番目の夫をも殺した・・・・。ネロ皇帝は母の呪縛に怯え何時も身につけているようにといわれた蛇の腕輪をかなぐり捨て狂気の沙汰へと走って行った・・・・、か。」
この狂皇帝と自分。何所が違うと言うのだろう。
リナは自嘲的とまでは行かなくともかなり突き詰めて考えた。
「ま。アタシはたとえ嫌悪して止まないローマのイーグルの紋章が入った指輪でも絶対に手放さないってところかしらねえ。それに・・・。自分の大切な者を傷つけたくないし。」自分の最愛の妻を一時の激怒でネロ皇帝は蹴り殺したと言う。
どうすればそんな事が出来るんだろう・・・・・。
思案にリナが暮れているうちに複数の松明の光が見えた。
「止まりなさい!!ここから先へは通せない!!」
有りっ丈の声でリナは先頭の人物、叔父のアルバートに向かって叫んだ。
「ウェセリナ!!無事であったか!!其処をどいてくれ。お前を誘拐した不届き者と裏切り者のヴァルガーブを始末しなければならぬ!!」
信じられないくらいの冷徹な声であった。
リナは叔父の顔を直視しきっぱりとこういう。
「いいえ。どきません。私はケルト人ケインの妹リナです。それに、貴方に私の弟ヴァルガーブを裁く権利はありません。」
「・・・・。どう言う事だ・・・。」
鋭い眼光の蒼い目が赤毛の美貌の姪を睨みつける。
しかし、小柄な姪は臆さない。
「なるほど。確かにヴァルは貴方同様に権力を欲しました。しかし、それは仕方なく必要としただけの話です。今の彼と貴方は違います!!貴方は全てを壊す道を、ヴァルは全てを守る道を選んだ。それだけの事です。なぜ貴方に彼を責め、裁く権利が在るのでしょう?私は弟だからといって庇っているのでは在りません。不当な貴方よりも正当な彼を取った。どうしてとやかく言われなければならないのでしょうか?」
出来るだけ時間を稼がなければ。
ケイン、ガウリイ、ゼルガディスたちが形成を整えるまで。
奴に卑劣な行いをさせる時間を与えないように・・・・。
その気持ちと本音がぶつかり合い、リナの声は何時にも無く、場違いなほど澄み渡っていた。
リナはそっとドルスタンの酸化した指輪に手を触れた。
この兄もアタシと同じ状況に立たされたのならば絶対に同じ事をしただろう。
「お前のごとき、小娘が知った事ではない。さあ、ウェセリナ、其処をどくんだ!!」
何も解ってはいないどころか聞く耳すらもとうとしないこの叔父にリナはついに激怒した。
「断固としてどきません!!例え身体中を剣で100回斬りつけられ、心臓を100本の矢で射抜かれて死のうと絶対にうごきません!!いいえ!!殺したけりゃ、勝手に殺しなさいよね!!その代わりアタシが死ぬときゃあんたも道連れよ!!!!」
言ってリナは短剣を抜き激しく敵の軍勢に斬りかかる!!
素早いリナの短剣の捌き。規則的ながら一撃必殺の戦術にアルバートの軍団は苦戦する。が、人数でこそ勝る彼らはアッサリとリナの疲労に漬け込み彼女の喉元に剣を付きつけた。・・・・・・これまでか・・・・・・・・。
あとは・・・。この足止めを少しでもケインやガウリイ達が有効に活用していることを祈るまでである。
「おい、リナ何所が大丈夫なんだ?無様な捕まり様、晒してんじゃねーよ!!」
聞き覚えの在るぶっきらぼうな声。
「姉を放してもらおうか?」
「!!ケイン、ヴァル!!」
思わず歓喜の声を上げるリナ。
一斉にリナから剣の呪縛が解き放たれ、そちらの方に兵団の全神経が注がれる。
が、次の瞬間。ローマ兵団とアルバートの素顔に動揺が走った。
荒くれ兵からリナを庇うようにして立ちはだかる金色の髪。
「貴様・・・。よくも好き勝手してくれたものだな!!」
怒気の篭もった声を上げた人物、ガウリイをみてのあからさまな反応だった。
「人を傷付けるような者に例え植民地であるとは言え官職をもつ資格なんてあると思うのか!!??それでも貴様はリナの叔父か!!??」
いつもとは完全に異なるガウリイの口調。
そして・・・。何時もと全く印象の違うその姿・・・。
しかし。リナの手をしっかりと握り締める感覚は変わらない。
「こ・・・・皇帝・・・・ネ・・・ロ・・・。」
驚愕の声をローマ人たちとアルバートは上げた。
そう。目の前に居る人物こそ紛れも無い、若き頃今日のような狂乱もなく、人々を思いやる善政をしていた皇帝ネロの血を退く者であった・・・・。
その後。アルバートは戦わずして退き返した。


「怒ってないのか?リナ。」
冷やかすような視線を残して立ち去ったアメリア、ミリィ、キャナルの背中を今だ恨めしそうに見つめつつリナは
「何が!!」
とぶっきらぼうに聞く。
あの後。
「むちゃすんじゃねええええええええええええ!!」
とかいってケインに散々知りを打たれた挙句、アメリアに
「正義のためにどうして私を連れて行ってくれなかったんですか!!」
と思いきり泣きつかれたのをガウリイに見られ、恥ずかしくて顔を合わせられなかっただけなのをなにか勘違いしているらしい。
「いや、その。お前の兄貴を殺したの・・・・。俺の・・・まあ、よく知らねえけれど、血縁の奴だったんだぜ?」
「・・・・。怒れるわけ無いよ・・・。貴方も従姉妹を亡くしてる。」
「どうしてそれを・・・。」
あからさまにガウリイは動揺していた。
「貴方がくれたこのペンダント・・・。ここに、Izorudeって彫ってある。前にも言わなかったけ?名前違いでなければ彼女は私の兄ドルスタンの許婚だった人よ。もっとも、彼女もネロのせいで、ね。」
「ああ。小さい頃に別れたきりだったが・・・。俺も従姉妹を失った。」
ドルスタンとイゾルデ。二人の名前が刻みこまれたペンダントと指輪をリナは不思議な思いで見つめた。
「でさ、リナ。渡したい物があるんだ。ほら!!」
不意に四角いものを手渡されるリナ。
「綺麗・・・。ヴェルメネトンの丘の絵ね!!完成したんだ。」
感心したようにリナは言う。
もうこの丘が涙で濡れる事も無いだろう。
「ああ。でもよ、リナの言った事本当だったな。その時その時の様子を描こうと思えば思うほど自然って表情かえちまうもんだよなあ。」
「アンタだってそうよ。あの時と今じゃ別人よ。」
ネロ、と呼ばれた時のガウリイをリナは思い出してみるが、今の彼とは似ても似つかない。「お前だって人の事言えないぞ。ころころ表情変えちまって。」
お互いを観察し会うリナとガウリイ。
リナはガウリイの頭に皇帝の帝冠を・・・。
ガウリイはリナの頭に女王の王冠を見たような気がした。
「帰るぞ、リナ。ケインにまたスリッパ落っことしたこと、まだ謝んなきゃいけねーんだ。」「・・・。またなの!?この前新しいのに弁償させられたばかりじゃない。こんどやったらアリシア女王に頼んでトイレ掃除一ヶ月の刑にして貰うってケイン怒ってたわよ!!」
「げ!!そーなのかあ!?」
「そーよ!!ホントにクラゲなんだから!!あんたの頭は帝冠よりもクラゲの方がお似合いね!!」
「・・・。リナの頭だって王冠よりも角のほーがお似合いだぜ!!」
ぼかああああああああん!!!!
ガウリイならぜったいにやらかすだろう・・・。
そう見越して買っておいた予備の新しいスリッパがガウリイの頭に直撃した。
「いてえええええええええ・・・・。でも、これでトイレ掃除は免除だな。」
嬉しそうに笑いながらガウリイ。
「ば、ば、ば、馬鹿!!アンタのためじゃないわよ!!まえ、アンタがスリッパ落っことしてトイレが使用不能になって困ったから・・・その、それを想定して・・。」
照れ隠しにならない顔をしつつもあえて激越な事を言うリナ。しかし後半の口調は弱い。「ハイハイ。解ったよ。帰ろうぜ、リナ。こんなとこ、ケインに見られたら俺、半殺しかな?」
訳のわからないといった様子のリナにガウリイはアッサリと口付けし、そのままボーぜんとしているリナの手を引っ張り二人は庭園から帰路につくのだった。


終わり。

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234後書きLINA 10/24-18:42
記事番号233へのコメント
はあ・・・。
もう後半の方リナにしてもガウリイにしてもケインにしても「あんた誰?」
じょうたいでしたねえ・・・・・。
自分でももうなにが書きたかったのか訳わかりません。
では、機会があればそのうちまた。

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237感想です。ティーゲル 10/24-21:24
記事番号234へのコメント
 ネロっすか・・・・・力一杯予想からはずれてました。たしかにそう言う手もあり
ますよね〜(笑)読めなかったっす。そこが面白いんですが(笑)このシリーズは
楽しみにしているのでがんばってください。では。

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247お礼ですLINA 10/25-17:58
記事番号237へのコメント
さいしょから「ネロを出す!!」と一人いきまいた結果苦戦しました。
結局ケイン、何がしたかったんでしょうかねえ(?)
深まる謎・・・・。
とりあえず次は源平orオーストリアハプスブルクor中国(やっぱり三国でしょ!!)を企画中です。一番書きやすそうなのから入ると思いますが気長にお待ち下さい(苦笑)では。