◆-「Traffics」その1-中田 珂南(10/24-20:03)No.235
 ┣Re:「Traffics」その1-三里桜架(10/24-23:41)No.239
 ┃┗三里様ありがとうございます。-中田 珂南(10/28-09:47)No.275
 ┗「Traffics」その2-中田 珂南(10/26-11:35)No.251
  ┗「Traffics」その3-中田 珂南(10/27-11:59)No.264
   ┗「Traffics」その4-中田 珂南(10/27-14:25)No.265
    ┣Re:「Traffics」その4-丸丸(10/28-00:47)No.272
    ┃┗丸丸様、ありがとうございます。-中田 珂南(10/28-10:05)No.276
    ┗「Traffics」その5-中田 珂南(10/28-12:39)No.277
     ┣Re:「Traffics」その5-丸丸(10/31-02:36)No.291
     ┃┗ありがとうございます(はあと)-中田 珂南(11/2-12:37)No.334
     ┗「Traffics」その6-中田 珂南(10/31-17:03)No.297
      ┗「Traffics」その7-中田 珂南(10/31-20:06)No.298
       ┣感想ですぅぅぅっ!-マミリンQ(11/1-16:51)No.311
       ┃┗Re:ありがとうございます(はあと)-中田 珂南(11/2-12:15)No.333
       ┗「Traffics」その8-中田 珂南(11/2-12:01)No.331
        ┗「Traffics」その9-中田 珂南(11/2-14:09)No.336
         ┗「Traffics」その10-中田 珂南(11/4-11:44)No.373
          ┣読んでます-明美(11/5-07:49)No.378
          ┃┗ありがとうございます。-中田 珂南(11/6-11:36)No.388
          ┗「Traffics」その11-中田 珂南(11/6-12:47)No.389
           ┗「Traffics」その12-中田 珂南(11/6-13:49)No.391


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235「Traffics」その1中田 珂南 E-mail 10/24-20:03

唐突に思い付いたので、書いてみることにしました。
・・・基本的にガウリイとリナしか出ない・・・予定です。書いてみないと分かんないけど(苦笑)
以前ここに書かせて頂いた分と違い、軽い・・・筈です。はい。
(軽すぎっていうか、ネタの始まりはただのおふざけだったんですって・汗)
一応、「NEXT」と「TRY」の間、という設定になっています。

::::::::::::::::::::::

「Traffics」

・・・いきなりで何だが、あたしたちは「落ちて」いた。

「まいったわねえ・・・何で“浮遊(レビテーション)”が効かなかったんだろ。」
したたかに打ってしまったお尻を、自分でさすりさすりしながらぼやく。
「・・・その前に、早く降りてくれよ。」
その下でガウリイが、何とも情けない声で訴えた。
・・・あはははは。そーいえばあたし、まだガウリイの上に乗っかったまんまだったんだっけ。
慌ててあたしが上から降りると、ガウリイはやれやれ、といった顔をしながら立ち上がり、背中やお尻についてた土を、ぱんぱんと手で払った。
「なあ、リナ。ここ、何処なんだ?」
「分かんない。上から落ちて来たことだけは、確かなんだけどね。」
あたしがそう言って見上げると、彼も同じように天を仰ぎ、
「上って・・・何でだったっけ?」
頭をぽりぽり掻きながら、不思議そうな顔をする。
・・・分かってはいたけどね。
いちいち説明するのも面倒なので、あたしはそれ以上何も答えずに、小声で呪文の詠唱を始めた。
「明かり(ライティング)」
魔法で灯された光球が、次第に周囲を明るくしてくれる。
・・・さっきは浮遊(レビテーション)発動しなかったのに・・・。
次第にはっきり見えてくる景色を見ながら、あたしは小さくため息をついた。

ことの起こりは、本当に唐突にやってきた。
魔族との戦いも一段落し、ゼルやアメリアたちともセイルーンで別れて。
自称保護者のガウリイと二人、また気ままな旅を再開したばかりのことだった。
・・・「落ちた」のである。
いきなり道の真ん中に現われた、大きな落とし穴(?)の中に。
これがただの落とし穴なら、あたしもガウリイも、こんなに簡単にはまるはずがない。だけど、いきなり何の脈絡も無しに、足元に穴が開くなんて・・・こんなもん、どーやってよけろっていうんじゃいっ!
慌てて浮遊(レビテーション)唱えたけれど、何故かこれが発動しない。
・・・かくしてあたしたちは、見事にここまで落ちてきたという訳である。

「しっかし・・・訳の分からんとこだな、ここ。」
したたかに打った背中や腕を、無意識にさすりながらガウリイが言った。
・・・やっぱ痛かったのかな?
地面に激突するその直前、ガウリイはとっさにあたしを抱き寄せ、自分の身体をクッションがわりにしてかばってくれたのだ。
お陰であたしは無傷だったけど・・・大丈夫なんだろうか?
「なあ、リナ。あれ・・・なんか、怪しくないか?」
あたしがけなげにもそう考えてると、ガウリイは唐突に向こうを指差した。
「どこ?何も見えないじゃない。」
「よく見てみろよ。ほら、誰かがこっちに歩いて来てる。」
「だから、何処に人なんかいるのよ。」
「あの木と木の間に見えてる道の、ほら、あれだよ。」
「・・・え?」
言われてあたしは、?となった。
改めて周りを見渡すと、なぜか森を抜ける街道へと、風景が変わっている。
そう。あたしたちが「落ちる」前に、歩いていた道に。
「あーっ、もうっ、何が、どうなってんのよ!?」
「・・・静かにしろよ。あれが誰か、まだわからないしな。」
思わず混乱したあたしを、ガウリイがシリアスに制止する。
意識を、前方に集中させる。
こんな訳のわからない展開なのだ。何が出てきても不思議じゃない。
と、その時、
「・・・・・・・・。」
いきなり、ガウリイが絶句した。
どう見ても臨戦態勢じゃない、ぽかんと口を大きく開けた、何とも間抜けな表情をして。
・・・なんつー顔をしとるんだ、こいつ。
などど、ツッコミを入れてる場合じゃない。あたしも一生懸命目を凝らして、その人影を確認するべく努力してみた。
そして・・・あたしも、ガウリイと同じ表情をする羽目になった。
「な、何で!?何が、どーなってんのよ!?」
正直、訳が分からない。
・・・その人影の顔は、あたしたちとそっくりだったのだから!
「な、なんで!?なんでなんでなんで!?」
「いたたたた・・・お、俺の首を絞めてどーすんだよ!」
「夢見てんじゃないかと思って。」
「だったら、自分つねって確かめろよ。」
「そんなことしたら痛いじゃない。」
「あのなあ・・・・。」
そんな事をしている間にも、近寄ってきたその人影・・・剣士と魔道士の2人組は、あたしたちに視線を止めて。
やはり絶句する。
「ねえ、この人たち・・・一体・・・?」
「・・・たまには自分でも考えてみろよ。でないと頭がヨーグルトになるぞ。」
こんなボケツッコミの会話まで、やっぱりあたし達によく似てる。
だけど、決定的に違うことがただ一つ。
長い栗色の髪をして、黒いマントを着込んだ、あたしそっくりの魔道士も。
その隣りに立っている、金髪と青い瞳が特徴的な、ガウリイそっくりの剣士も。
・・・あたしたちと、性別が逆だったのだ。

:::::::::::::::::::::::::

あははははは・・・(冷や汗)一旦ここで切ります。
これ、自宅で書いてる訳じゃないので、かなり時間かかりそうな感じです(涙)
・・・この話が終わる前に、ツリーが沈みそうな気がする・・・。

男リナと女ガウリイ・・・名前はまだ考え中です(笑)
あああっ、い、石投げてもいいですけど、小さいのにして下さいね(滝汗)










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239Re:「Traffics」その1三里桜架 E-mail URL10/24-23:41
記事番号235へのコメント
はじめまして。三里桜架と申します。
新作読みました!
多分はじめてだと思います! 2人の性別が入れ替わったのは!
こんな意外な設定で、今後どんな風になるのか今からとっても楽しみです!
あぁ気になってしまう・・・・・・(^_^;)
続きを楽しみに待っています!
短いですが、これからも頑張って下さい。
草葉の陰で応援しています♪

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275三里様ありがとうございます。中田 珂南 E-mail 10/28-09:47
記事番号239へのコメント
ご感想頂き、本当にありがとうございます(はあと)
「性別が逆」なんて、割とありがちかな?なんて思ってましたので、(すみません。ファン歴浅いんです、私・汗)喜んでいただけてすっごく嬉しいです。
駄文ながらも頑張りますので、どうぞ宜しくお願いします(はあと)

・・・今一番の問題は、この連載が終わるのが早いか、ツリーが沈むのが先か、てなことです(苦笑)

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251「Traffics」その2中田 珂南 E-mail 10/26-11:35
記事番号235へのコメント
では、続きです。

::::::::::::::::::::::::::::::

「お前たち、一体何なんだ!?どっから湧いてきやがった!?」
「な、なによその言い草は!あたしらは蝿か何かかっ!?」
「似たよーなもんだろーがっ!第一、何の脈絡もなく現れて、俺たちと同じ顔をしてるなんてなあ、爆発する程怪しいぞっ!」
「何言ってんのよっ!そっくりなのはあんたたちの方でしょっ!!このあたしの姿を真似よーなんて、いい度胸してんじゃないのよっ!!」
「何で俺たちが“そっくりさん”呼ばわりされなきゃなんねーんだよ!?俺たちの方がオリジナルなんだぞ。性別違いの半端なダミーは、大人しくすっこんでろ!」
「やっかましいっ!無茶苦茶な事ばっかり言ってないで、いい加減正体を現しなさいよっ!!」
「それはこっちの台詞だっ!!」
・・・・・・ぜーはーぜーはーぜーはー。
あたしと、あたしそっくりの男魔道士の怒鳴り合いは、完全に膠着状態になっていた。
今まで、口喧嘩で負けた事など一度もないのだが(郷里の姉ちゃん相手は除く)、いかんせん、相手はあたしと同じ顔。どうもいつもの調子が出ない。
しかも、今自分たちがどーいう状況に置かれているのか、全く分からないままなのだ。あたしがいらいらしてるのも、自然の摂理とゆーもんだ。
・・・あ、でも。よく考えたら、こんな怪しい奴等相手にするよりも、近くの街か村にでも寄って、ちょっとでも情報を集めた方が得策じゃないか?
「行くわよ、ガウリイ。こんな奴等ほっといて・・・。」
とっとと先に進もう・・・そう言いかけて。
あたしは、思わず絶句した。
「ほう、お前さんも、こいつ(光の剣)使えるのか。すっげーなあ。」
「そう言う貴方だって、なかなかの遣い手と見えるけど?」
「ま、並より上だって自覚はあるけどな。お前さんはどうなんだ?」
「似たようなもんよ。自慢するほどのことじゃないわ。」
・・・・・こ、こ、こ、こひつらわーーーーっ!!!

すっぱああああんっ!

ガウリイがあたしに気が付く前に、必殺の特製スリッパが炸裂した。
ふっふっふっ。これをただのスリッパと思うなかれ。
オーガ並みの耐性を持つガウリイに、より確実にダメージを与えるべく、スリッパの内側にびっしりと、あたし直筆の魔道文字が書き込まれているのだ!
どんなに酷使しよーとも、全然消耗したりしないから、経済的で言う事なしっ!
いやあ、我ながら絶賛しちゃうわっ!
・・・じゃなくて。
殴られた頭を大袈裟に押さえて、その場にうずくまってるガウリイに、あたしはずずいっと詰め寄った。
「あんたねえっ!こんな時に、呑気にお喋りしてんじゃないわよっ!大体、相手が何者か分かってないのに、今から馴れ合ってどーすんのよ!?」
「ンな事言ったって・・・別に、敵じゃあないんだし・・・。」
「そんなこと分かんないわよ!この間闘った冥王(フィブリゾ)だって、あんな子どもの格好してたじゃないのよ!」
「・・・そーだっけ・・・?」
「自分もさんざんヒドい目に遭ったでしょうが!あんた、もう忘れたの!?」
「そーいえば、そんなこともあったよーな気が・・・。」
「とにかく、こんな激烈に怪しい奴等は放っておいて、さっさと先に進むわよ!」
そー言って、歩きだそうとしたあたしの足を、
「・・・ちょっと待て。」
あたしもどきの男魔道士が、ぐいっと肩を掴んで止めた。
「ち、ちょっと、何すんのよ!?」
「お前、今・・・何て言った?」
さっきとは打って変わって、えらく真剣な表情である。
あたしは思わず、挙げかけた拳を下ろした。
「な、何って・・・さっさと先に進むって・・・。」
「じゃなくて!その前だ!」
「何よ、“激烈に怪しい”ってのは、全然間違ってないじゃない!」
「・・・お前ら、人のこと何だと・・・まあ、それは後でいいとして。
その、もうちょっと前に、だ。お前、確かに“冥王”って言ったよな?」
・・・・・・・・?
何で、ここでいきなりシリアスになるんだ、こひつは?
いつもならここでツッコむのだが、やっぱり自分と同じ顔した相手にはやりにくい。
あたしは殊勝にも、素直に答えてやることにした。
「冥王フィブリゾ。魔王ルビーアイの生み出せし、5人の腹心の筆頭よ。」
「そんなことは分かってる・・・お前、そいつと闘ったのか?」
「・・・まあね。」
「じゃあお前も、あの呪文・・・重破斬(ギガ・スレイブ)、使ったんだな?」
・・・・・・!
この男の言った台詞に、あたしは再び絶句した。
何でこいつが、あの呪文の存在を知ってんの!?
あたしはあの呪文を公表してないし、そもそも力の源である“金色の魔王(ロード・オブ・ナイトメア)”だって、存在すら殆ど知られてないのだ。
・・・こいつは、一体・・・!?
「どーやら、口喧嘩だけで済まそうとした、あたしが甘かったみたいね・・・。」
言ってあたしは、小声で呪文の詠唱を始める。
自分に攻撃するみたいで、少々嫌な気もしたが、そんな事言ってる場合じゃない。
「さあ、それはどうかな。」
答えるこいつも、同じく呪文の詠唱を始める。
かすかに聞こえる韻音から、黒魔法ということだけは分かった。
・・・って、こいつ、魔族じゃないの?
あたしが、そう思ったよりも早く!
「なあ、リナ・・・腹、減ってないかあ?」
「そろそろ、ご飯食べに行きましょうよ。」
とことん呑気な二人のガウリイの台詞が、あたしたちの盛り上がりまくった戦意を、一瞬のうちに粉砕していた。

::::::::::::::::::::::::::::::::::

・・・言い訳は、最後に取っておくことにします。
(って、最後までお付き合い下さる方って、いらっしゃるかしら・・・?)


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264「Traffics」その3中田 珂南 E-mail 10/27-11:59
記事番号251へのコメント
書いててだんだん不安になってきました。・・・こんなもん書いて、本当に良かったのでしょうか?(焦) ↑だったら書くな(殴)

::::::::::::::::::::::::::::

「Traffics・その3」

「しっかし、お前・・・本当、よく食うなあ。」
ぱくぱくもぐもぐ。
「そういうあんただって、結構食べてんじゃない。お互い様よ。」
むぐむぐはむはむ。
「俺は男だからいいんだよ。」
むしゃむしゃがつがつ。
「じゃあ、あんたの連れはどうなのよ?あのガウリイとタメ張れる人間なんて、そうそういやしないわよ。」
「・・・・・・あいつは、人間離れした奴だから。」
ここであたしたちは一旦手を止め、隣でひたすらマイペースに飯を食う、二人の剣士に視線を向けた。
この光景、結構凄いものがある。
その体格と性別以外は、何から何までそっくりな、金髪碧眼の見た目は美形な男と女が、先を争って飯を食っているのだ。
しかも二人とも、いつものあのペース。目立たない筈が無い。
まあ、あたしとあたしそっくりのこの男だって、あまり人のこと言えないかも知れないが。
とにかく、今は何も考えない事にしよう。この状況で考えごとなんぞしてたら、自分の食べる分など無くなってしまう。

今見て頂いたとおり・・・あの喧嘩?から30分後、あたしたちは近くの街の食堂で、4人顔を突き合わせて食事をしていた。
あたしとしては、こんな得体の知れない奴等と一緒に食事なんて、ごめんこうむりたいところではあったが・・・ガウリイ曰く、
「別に敵じゃあないんだし、後のことは飯食ってから考えよう。」
普段まともに頭使わないくせに、何故こんな説得力があるんだか。
そもそも、何で“敵じゃない”なんて、そんなにはっきり言い切れるんだ?
と、普通なら突っ込んでやる所なのだろうが、いかんせん、ガウリイの勘と頭脳は野獣並み。決して常識で判断してはいけない。
第一、こいつも黒魔法を使うんだから、決して魔族ではないだろう。瘴気も全然感じないし。怪しい事には、変わりないけど。
まあ、そんな訳で・・・結局あたしは闘うのは止め、こうして仲良くもないけど4人そろって、お食事タイムにしたのだった。

こうしてお腹も一段落し、食後の香茶が出て来たところで、
「ねえ、あんた・・・さっき、冥王(フィブリゾ)の名前が出て来た時点で、あたしたちの正体に、気付いていたんじゃなかったの?何で攻撃しようとしたのよ。」
あたしはずっと思っていた、素朴な疑問を目の前の男にぶつける。
もし本当にこいつらが、あたしたちの“敵”でないなら、攻撃呪文を唱える必要もない筈。
もしあの時ガウリイたちが、あんな間抜けな台詞ほざいたりしてなかったら、あたしとこいつの唱えた呪文は、真っ正面からぶつかっていただろう・・・。
そんなあたしの考えを、全部見抜いていたのだろうか、
「じゃあ聞くけどよ・・・もしお前が俺の立場だったら、どうした?」
少々不機嫌そうな顔をして、逆に男が問い返す。
どうやら、あたしとこいつが似ている点は、顔だけではないのかも知れない。
あたしはわずかに苦笑して、小さく肩をすくめて見せて、
「そうね。自分自身は魔法障壁でガードできるし、ガウリイも、自力でなんとかよけるだろうし。・・・迷わず、同じ手を取ってたわ。」
「俺もお前の立場なら、即攻撃してただろうよ。先手必勝、油断大敵。攻撃は最大の防御だって、郷里の兄ちゃんも言っていたしな。」
「ぷっ。」
至極真面目なこの男の台詞に、あたしは思わず吹き出した。
こいつ、どこまであたしに似ているのだろう。ここまで徹底的に似ていると、怪しいのを通り越して、思わず笑い出してしまう。

ここであたしは、改めてこいつの姿を観察してみた。
よく考えたら、あたしにうりふたつな顔ばかり見てて、それ以外の事は全然目に入ってなかったかも知れない(笑)

瞳はあたしと同じ赤。少しくせのある栗色の髪は、邪魔にならないよう後ろで編み込まれている。・・・誰が編んでいるのだろう?
黒いバンダナと長いマント。首と両手とベルトに燦然と輝く、魔血球(デモン・ブラッド)のタリスマンまで同じ。
でも、着ている服の色調は、濃い紫が主体になってるし。あたしの手袋とブーツは白なのに、こいつは黒いのを使っていたりする。
もっとも、女のあたしと全く同じ服着てたら、ただの変態にしか見えないが。
とにかく、多少の違いもあったけど、見れば見るほどあたしそっくりなのであった。・・・これで瞳が青くって、髪ももっと短かくしてたら、どこぞの黒マント男に生き写しになるという事は、言ってはいけない事実かも知れない(笑)

でもって、その隣で呑気に茶をすする、もう一人の人物も観察してみた。
もちろん、とことんくらげなあたしの連れなんぞではない。その向かいで同じように茶をすする、金髪の女剣士の方だ。

腰の辺りまで伸ばされた、淡い金髪と青い瞳。黒光りする軽装鎧(ライトメイル)に、背中に背負った“光の剣”。
少し着こなし方を変えた、青を基調にした貫頭衣とズボン。黒でまとめたグローブとブーツまで、ガウリイと全く同じ物を着けている。
顔立ちは・・・ガウリイの女装を見たことのある人なら、多分想像に難くないと思う。化粧こそそんなにしてないが、本当にあのまんまなのだ。
すらりとした長身で、結構スタイルが良かったりする。腕も脚も結構細いが、やっぱり鍛えてあるらしく、針金のように強くしなやかだ。
・・・くそー、ガウリイもどきのくせに。何か妙に腹が立つ。
でも、ガウリイにそっくりだということは、やっぱり頭の中身も同じなのだろうか?
さっきから黙って茶を飲んでいるが、・・・何も考えているように見えない(笑)

「おい・・・何じろじろ見てんだよ。」
あたしの観察が気に入らないのか、あたしもどきが睨み付けてきた。
「何って・・・何よ。何か文句あんの?」
「大ありだ。」
「何でよ。」
あたしがそう問い返すと、こいつはわずかに眉をひそめて、
「いい加減、“もどき”って言い方は止めろよ。お前みたいなちびに言われると、何だかえらく腹が立つ。」
むかっ。
「俺もどきな女魔道士が、こんなちびで胸もない奴だったとはなあ。」
むかむかっ。
あんただって、人のこと言えんと思うぞ!
背だってそんなに高くないし、体格もそんなに立派じゃない。
(もっとも、比較対象がガウリイって辺り、ちょっと間違ってるかも知れないが)
連れのガウリイもどきと並んでも、そんなに身長差なさそうだし。
・・・本気でそう怒鳴ってやろうかと思ったが、また口喧嘩になるので止めた。
自分そっくりな奴を相手に、身体のことをけなし合うってのは、なんだかあまりに虚しすぎる。
ああ、こんな時でも理性が働くなんて、あたしも随分成長したなあ。
「ところで・・・。」
あたしたちの話が途切れたのを見て、急にガウリイが口を挟んだ。
・・・何か、嫌な予感がする。
が、
「ねえ、リーニス・・・この人たち、誰だったっけ?」
先にくらげな台詞をほざいたのは、ガウリイもどきな彼女だった。

:::::::::::::::::::::::::::::

長くなったので、中途半端ですがここで一旦切ります。
・・・・よーやっと、二人の外見の描写が書けたよ・・・(笑)
 
















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265「Traffics」その4中田 珂南 E-mail 10/27-14:25
記事番号264へのコメント
これ、読んでる方いらっしゃいますかー?
・・・あまりにお馬鹿な話なので、本当に誰も読んでなかったりして(苦笑)

::::::::::::::::::::::::::

「Traffics・その4」

「こんのおおおおおっっ!くらげえええええっ!!」
すっぱああああああんっっ!

あたしたちがコケるより早く、あたしもどきの男が取り出した、これまたそっくりなスリッパが炸裂した。
・・・おいおい、女の子に手を挙げるんか、あんたは?
「さっき俺とこいつが話してたろーがっ!もー忘れたんかっ、お前はっ!」
「そーいえば、そうだったわね。で、何があったんだっけ?」
「さわやかに笑って聞くんじゃねええええっ!」
「・・・・・・・・・。」
何となく既視感を感じてしまうこのやりとりに、さすがのあたしもガウリイも、ただただ言葉を失った。
男女が逆になるだけで、こんなに違和感あるとは思わなかったけど。
「いいかっ、無駄かも知れんがもう一度言うから、よーっく聞いとけよ!
何がどうなってかまでは分からんが、俺達そっくりなこいつらが、突然目の前に現れて、危うく一戦やりあうとこだったろーが!
それを・・・お前とお前そっくりな兄ちゃんが、二人そろって“メシ食いに行こう”だなんて、死ぬほど呑気な事言って止めたんだろ!」
「そーいえば、・・・そんなこともあったような気がするわっ!」
「とにかく、だ。深いこと考えるのは後にしようって、そっちの兄ちゃんが言ったんで、こうして4人顔を突き合わせて、ここで飯食ってたんだろ。
せめて、そのくらいは覚えとけよ!!」
ぜーはーぜーはー言いながら、男がばんっと机を叩く。
その気迫に気圧されてか、彼女は少々青い顔をして、こくこくこくと頷いた。
・・・そんな時、
「なあ、リナ・・・こいつが今言ってたよーなこと、本当にあったか?」
まるでタイミングを見計らったように、ガウリイが同じよーなボケをかました。

「こんのおおおおおっ!くらげえええええっ!!」
すっぱあああああんっっ!!

さっきの彼の行為をリピートするように、あたしのスリッパが炸裂したことは、まあ、言うまでもないだろう(笑)

「あー、頭痛てえ・・・。」
「まったく、くらげな相棒を持つと、お互い苦労するわよねえ。」
さっきの飯屋をとりあえず出て。
あたしとガウリイと、性別違いのそっくりさん2人組は、森に沿って進む街道を、てくてくてくてく歩いていた。
ま、とりあえず御飯食べてる間に、お互い敵じゃない事は何となく分かったし。
(これが、もし魔族か何かのだまし討ちだったら、問答無用で神滅斬(ラグナ・ブレード)ぶちかましてやるっ!)
何かおかしいとは思ってはいるが、今の状況がはっきりと把握できない以上、何をどうしたらいいのかも分からない。
てな訳で、結局こうなってしまったのである。
・・・あああ、何だかやたら状況説明ばっかり・・・(ため息)
ンな事をあれこれ考えていると、
「ところで、リナ・・・だっけ?一つ、聞きたいことがあるんだが。」
あたしもどきな男魔道士−いい加減、この面倒くさい呼び方は止めよう。リーニス=インバースと名乗ったこいつが、ふと何気なく尋ねてきた。
「お前の連れの、あの男・・・ガウリイとかいう奴は、やっぱ恋人か何かなのか?」
・・・・・!!
い、いきなり、な、なんつーことをいうんだこひつはああっ!
すぐに顔が真っ赤になってくるのが、認めたくないけどよく分かる。
・・・そ、そりゃあ、ずっと一緒に旅しているんだし・・・ガウリイが冥王にさらわれた時に、あんな嫌な思いしたりしたけれど・・・こ、恋人、というのはちょっと・・・。
あ、あたしはあくまで“光の剣”が欲しくて一緒にいるんだし。
ガウリイだって、あたしの“保護者”だから一緒にいるんだし。

・・・・・・ずきん。

え?
自分が思い浮かべた事実に、何故か胸が痛くなる。
・・・何で?

「彼は、・・・ガウリイは、あたしの“保護者”よ。自称だけど。」
そう答えたあたしの声は、どこか力ないものだった気がする。

と、その時、
「ん?どーしたんだ、リナ?」
先を歩いてたガウリイが、急に振り返って声をかけた。
ずっとリーニスと喋ってたあたしが、突然黙り込んでしまったので、やっぱり気になったんだろうか。えらく心配そうな顔をしてる。
・・・ええい、誰のせいだと思ってるんだっ!
「べ、別に、何でもないわよ。」
「そーかあ?その割にはお前、なんか妙に顔が赤いぞ?」
・・・・ぐっ。
日常茶飯事ではあるが、こいつの勘は滅法鋭い。しかも、あたしのことになると特に。
あたしの隣でリーニスが、懸命に笑いをこらえてるのがよく分かる。
くーっ、いつも便利なこいつの勘も、こーいう時はうっとーしいっ!
「何でもないったら何でもない!・・・これ以上余計なこと言ったら、今度は火炎球(ファイアーボール)ぶちかますわよ。」
「・・・・・・・・・。」
あたしの優しい忠告が効いたのか(作者注:人、それを「脅し」と称する・笑)、ガウリイはそれ以上何も言わずに、少々青い顔で肩をすくめ歩く。
でもってリーニスは、何がそんなに可笑しいんだか、まだくすくすくすくす笑い続けていた。
・・・あんたがそーいうつもりなら、あたしだって!
「じゃあ、リーニス。あんたが一緒に旅してる、あの女剣士さん・・・ガイリア、だったわよね?
彼女は、あんたとどんな関係?」
「・・・ぐっ・・・!」
あたしが返した質問に、今度はこいつが絶句した。
くっくっくっくっくっ。ざまあ見ろ。
あたしとあんたが同じ思考パターンなら、反撃方法も丸分かりよっ(はあと)
・・・自分で自分いぢめるようで、かなり虚しい気はするけれど・・・。
「あいつは・・・ガイリアは、俺の“世話役”だよ。やっぱ、自称だけど。」
えらく力のない声で、リーニスは短く答える。
その姿を見て、あたしは何だか笑えなくなった。
・・・もしかしたら、さっき答えた時のあたしも、同じ姿だったかもしれないのだから。

「“保護者”だから。」
「“世話役”だから。」
ほんのちょっぴり表現が違う、でも、多分同じ意味を持つ二つの言葉。
同じようにこの言葉に迷う、あたしとあたしそっくりな男リーニス。
そして、やっぱり何考えてるのか分からない、いつもくらげなガウリイとガイリア。
性別や体格がちょっと違うだけで、顔も行動も思考パターンさえも、何から何までそっくりなあたしたち。
・・・何も、こんな所まで似なくてもいいのに。

何で、こんなことになったのかな。
あたしは柄にもなく、ちょっと恨んでみたりする。
こんな、嫌味か皮肉にしか思えないような事件に引き遭わせた、(普段は全然信じたりしない)自分の運命っていうやつを。

::::::::::::::::::::::

ああ、やっとガウリナっぽい所が出てきた!(笑)
ちょっとリナが乙女チック(死語)だけど・・・まあ、「冥王との決戦直後」ということで、少々ナーバスになってたんでしょう(爆)
とりあえず、まだ続きます。

余談。女の子ガウリイの名前「ガイリア」ですが、・・・他に思い付かんかったんです(泣)
同名の都市があるのは、私も分かってるんですけど。・・・あううううう(号泣)

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272Re:「Traffics」その4丸丸 10/28-00:47
記事番号265へのコメント
はじめまして。丸丸と申します。
小説、楽しみに読ませて頂いてます。

いつも的確な判断と行動を取るリナですが、こと今回の事態に関しては、
ガウリイの方が状況に適応できてるみたいですね。単に気にしてないだけ
でしょうけど。

>「お前の連れの、あの男・・・ガウリイとかいう奴は、やっぱ恋人か何かなのか?」

この「やっぱ」ってあたりに心情が出てますね。リーニス、そこでリナに
「うん」って言ってほしかったのかも、とか想像してしまいます。

しかし、リナたちと同じような経験をリーニスたちもしてきたのなら、ガイリア
が男装したりリーニスが偽装結婚したりって事もあったんでしょうか……それを
考えると、笑ってしまいます。

ではでは、続きを楽しみにしています。執筆頑張って下さい。

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276丸丸様、ありがとうございます。中田 珂南 E-mail 10/28-10:05
記事番号272へのコメント
ご感想頂き、本当にありがとうございます(はあと)
何せこーいう話ですので・・・本当に読んでる方がいらっしゃるのかどうか、かなり不安だったりするんです(苦笑)

>いつも的確な判断と行動を取るリナですが、こと今回の事態に関しては、
>ガウリイの方が状況に適応できてるみたいですね。単に気にしてないだけ
>でしょうけど。

あはははははは。まあ、ガウリイですから(笑)

>>「お前の連れの、あの男・・・ガウリイとかいう奴は、やっぱ恋人か何かなのか?」
>
>この「やっぱ」ってあたりに心情が出てますね。リーニス、そこでリナに
>「うん」って言ってほしかったのかも、とか想像してしまいます。

正直な話、ここのくだりは当初全然考えてませんでした。
お互いに、相手の「保護者」「世話役」というのに大笑いする・・・という場面だったのに、何故こうなったかな(苦笑)

>しかし、リナたちと同じような経験をリーニスたちもしてきたのなら、ガイリア
>が男装したりリーニスが偽装結婚したりって事もあったんでしょうか……それを
>考えると、笑ってしまいます。

あははははははははは。まったくです(笑)
話の都合上出てきませんが(・・・予定では)、もちろんこの世界にもゼルやアメリア、その他の人たちがいるわけでして。もちろん皆男女逆で。
(中には、想像するのも恐ろしい人もいますが・・・例えばどこかの聖王国の、とっても平和主義な王位継承者様とか・笑)
しっかし・・・ただ男女逆になっただけなのに、行動にすっごく制限がついてしまって、(出来なくなってしまうことがかなりあるんです。例えば「リナがガウリイを八つ当たりで思いっきり殴る」とか。)結構その辺苦心してるんですよね。

とりあえず、駄文ながらも頑張っていきますので、どうぞ宜しくお願いします(はあと)

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277「Traffics」その5中田 珂南 E-mail 10/28-12:39
記事番号265へのコメント
なんとかガウリナっぽい所が出てきて、書いてる本人が一番ほっとしてたりします(苦笑) もちろん、これだけでは終わらないつもりですよ。うふうふうふふ。
(・・・まあ、大して甘くはなりませんけどね。こーいう話ですし。)

::::::::::::::::::::::::::

「Traffics・その5」

・・・しばしの間、あたしたちの間には何故か、妙に重い空気があった。
「そろそろ、ここでメシにしないか?」
「随分辺りも暗くなってきたし・・・今夜は、ここで野宿ね。」
とことん呑気なWくらげが(我ながら、素晴らしく的確な表現だと思ふ)、こんな発言して足を止めるまでは。

・・・本当のこと言うと、ちょっと助かったよーな気がしたりする。
こーいった雰囲気は、あたしは至極苦手なのだ。

「へえ。じゃあ、お前さんたちの所にも、ゼルやアメリアがいるんだなあ。」
「しっかし、ちょっと想像したくねえな。あんな熱血王子様と、全く同じ性格したお姫様がいるなんてなあ。」
「でもまあ、女になったゼルってのも、ちょっと恐いような気がする・・・。」
「何言ってんのよ。ゼルが女装したところ、あんたも見た事あるでしょーが。
あ、でも待って。てことは・・・やっぱりフィルさんも、ここでは女性ってことよねえ・・・?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・だよな。」
「・・・お前らの世界にも、あのおうぢょ様がいるのか?」
「あの人が男の人になってるなんて、見たいような見たくないような・・・。」
「・・・想像するの、やめない?」
「・・・そーだなあ。」
「俺も、同感だ。」
「そーね。」
携帯用食料なんぞつまみながら、あたしたちはしばらくお互いの話をした。
・・・途中で、えらく恐ろしい話題も出たけど・・・。
(脳みそスライムなガウリイも、さすがにフィルさんの事は憶えてたらしい。まあ、あれだけインパクトのある人だから・・ねえ。)
でもこれで、ちょっとは自分たちの状況が把握できた気がする。
まあ、大半は予想通りのことだったけれど。

でもまだ、肝心なことが分からない。
あたしたちが、何故この異世界に迷い込んだのか。
どーやったら、元の世界に帰れるのかということが。

その時、
「・・・・・・しっ・・・!」
ガウリイが急にシリアスな顔して、あたしたちのお喋りを制した。
・・・突然こいつが、こーいう行動に出る理由はただ一つ。
「数、多そう?」
「いや、せいぜい3、4体ってところだが・・・気をつけろ。どうも人間じゃないような気がする。」
そう言うとガウリイは懐に手をやり、小さな小さな針を取り出した。
カチャッ。
針でつつかれた剣の柄から、かすかに金具の外れる音がする。
・・・別に、ボケている訳じゃない。
ガウリイの持つ剣の真価は、この音なしには発揮できないのだ。
あたしも小声で、呪文の詠唱を始める。
するとその声にハモるように、リーニスの詠唱の声が聞こえた。
無論、彼の隣に控えるガイリアも、すぐに仕掛けられるよう身構えている。
おーしっ、これで反撃態勢は万全!いつでもかかっていらっしゃいっ!

そうして、あたしたちが待っていると、
「・・・・くくくくくくくくくくくく。」
笑い声は、突然後ろからやってきた。
静かに、厳かに。
もうすっかり馴れてしまった、一種独特の気配−瘴気を伴って。
「お前たちだね、冥王様を葬ったというのは・・・。」
凶凶しいまでに紅い唇が、何故か嬉しそうに言葉を紡ぐ。
その内側に、胸くそ悪くなりそーな狂気を孕んで。
「混沌に身を投じた者が、ここに4人とも揃うとは・・・くすくすくす。我らは何と幸運なのだろう。」
今度は右手からも、別の声がする。
・・・ちょっと待て。今、“4人”って言わなかったか?
あたしが疑問を感じるより早く!
『光よ!』
先に飛び出したガウリイとガイリアが、二人揃って剣を携え吠える。
刹那、主に応え現れた白光が、急に現れたレッサーデーモンの群れを、有無を言わさず薙ぎ倒した。
「青魔烈弾波(ブラム・ブレイザー)!」
「烈閃槍(エルメキア・ランス)!」
あたしとリーニス、二人同時にぶっ放した呪文も、夜の闇を裂き敵を貫く。
だけど。
確かに手応えはあった・・・けどその中に、さっきの声の主らしき者はいなかった。
・・・何処に行った!?
「くすくすくす。ここだよ、リナ=インバース!」
ざすっ!
笑う声と共に、脇の草むらから影が飛び出る。
高く掲げたその両手には、闇色をした魔力の矢が十数本!
だめっ、よけられないっ!
「リナ!」
ざすすすすすっ!
急に割って入ったガウリイの剣が、一太刀でそれらを総てはじく。
そして、
「・・・そこっ!」
疾風と化したガイリアが、すれ違いざまに横薙ぎの一閃!
「くっ!」
辛うじてその一撃をかわすが、やはり避けきれなかったのだろう。
浅く薙がれた腹を押さえ、そいつは一瞬たたらを踏んだ。
そこに、
「黒妖陣(ブラスト・アッシュ)!」
リーニスの放った攻撃呪文が、いともあっさりとそいつを無に帰した。

その後の戦いは、本当に簡単に決着が着いた。
「滅化塵(アッシャー・デイスト)!」
「青魔烈弾波(ブラム・ブレイザー)!」
あたしとリーニスのぶちかます、攻撃呪文のオンパレードと。
「うおりゃああああっ!」
「でえええええいっ!」
ガウリイとガイリアが容赦なく繰り出す、光の刃の斬撃で。
無節操にぽこぽこ出たレッサーデーモンたちも、ものの十数分で全滅していた。
まあ、なかなか面白いものを見せて貰った。
リーニスは攻撃呪文を撃ちつつ、上手く体術を組み合わせて敵をぶちのめすし。
ガイリアの繰り出す攻撃は、ガウリイよりもパワーがない分、数段スピードを増していて、正直、あたしでも見切る事が出来ない。
顔かたちがそっくりでも(・・・何か、こればっかり言ってるけど)、やっぱり性別の違いのせいだろうか。闘い方が、微妙に違う。
気分はすっかり、「間違い探し」のクイズ大会(笑)

でも、笑えない事が一つ。
さっき、あたしを攻撃したあいつ。
何者か確かめられなかったし、ミもフタもなくあっさりと倒しちゃったけど。
あいつは、確かにあたしを−リナ=インバースの名を呼んだ。
本来、この世界にいるはずのないあたしを。
・・・ここに、この事件の解決の糸口があるような気がするのだが・・・。

そんな時、
「おーい、リナ。ンなとこでいつまでもボーっとしてると、お前の分取っちまうぞ。」
何時の間に食事を再開していたのか・・・さっきの食べかけなんか掲げて、呑気に笑うガウリイの台詞が、あたしの考察を中断させた。
むかむかむかっ。
「こんのおおおおおおおっ!くらげえええええええっ!」
すっぱあああああんっ!
本日何回目の発動だろう。あたし特製の突っ込みスリッパが、見事にガウリイを撃墜させた。
それを見て、リーニスとガイリアが絶句したのは、まあ、言うまでもないだろう(笑)

:::::::::::::::::::::::::::::

冒頭で、何だかおそろしー想像させちゃってごめんなさい(笑)
そっちの連中は(今のところ)出す予定はないです。あくまでこれ、ガウリナを目指してるんで・・・本当にそうなってくれるかどうか、自分でもよく分かんないんですが(苦笑)
まだまだ続きます。

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291Re:「Traffics」その5丸丸 10/31-02:36
記事番号277へのコメント
こんにちは。

戦闘シーン、すごく良かったです。この4人が揃ったら無敵ですね♪
特にW光の剣は強力。
ゼロスくらいならちょちょいのちょいかも(ゼロスファンの方、失礼しました)

性別の違いで戦い方も少し異なるっていうのが説得力ありました。
このシーン、ぜひアニメで観たいですねぇ。

できればガウリイ&ガイリアの二人きりで、酒でも飲みながら語り明かして
ほしいですね。お互い「自分」なわけですから、クラゲの仮面(笑)を脱いで
マジで話してくれるかも。(ガウリイファンの妄想です)

ではでは、続きを期待しております。

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334ありがとうございます(はあと)中田 珂南 E-mail 11/2-12:37
記事番号291へのコメント
丸丸様、再度のご感想、ありがとうございました。
・・・レスつけるのが遅くなってすみません。
(今さっき、「その8」UPしたとこです。いかがでした?)

>性別の違いで戦い方も少し異なるっていうのが説得力ありました。
>このシーン、ぜひアニメで観たいですねぇ。

ガイリアはともかく、リーニスの戦法には悩みました。
変に剣振り回したら、どこかの刃物マニアなトラコンになっちゃうし(殴)
魔法の乱射だったらリナと変わんないし・・・てな訳で、結局これです。
あ、でも私自身も、イラストかアニメで見たいかも。(私は絵は苦手です・泣)

>できればガウリイ&ガイリアの二人きりで、酒でも飲みながら語り明かして
>ほしいですね。お互い「自分」なわけですから、クラゲの仮面(笑)を脱いで
>マジで話してくれるかも。(ガウリイファンの妄想です)

あ、それもいいなあ(はあと)
でも、その代わりにこんなシーン(「その8」及び「その9」での、ガウリイ×リーニスの会話)書きました。いかがでしたか?
あ、ガイリアの方も後でちゃんと書きます。いまいち出番のない彼女ですが、後の方で・・・・・・・・あ、これ書くとネタばらしか(苦笑)

本当にありがとうございました。何とか頑張ります!

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297「Traffics」その6中田 珂南 E-mail 10/31-17:03
記事番号277へのコメント
続きです。
ちなみにこのタイトル「Traffics」、和訳すると「交差点」という意味もあるんです。・・・そのまんまや(笑)

::::::::::::::::::::::

「Traffics・その6」

最初の襲撃?から4日。
あたしとガウリイは、結局リーニスやガイリアと、ずっと行動を共にしていた。
・・・だって、この世界に来た原因も、帰る方法も分かんないんだし。他にどーすることも出来ないし。
リーニスたちも、あたしたちにとりあえず付き合うと、ご親切にも言ってくれた。
(っていうか、単に好奇心だけのような気がすんのよね。何せこいつ、「もう一人のあたし」なんだし・笑)

しかし、この4人組はとことん目立つ。
愛らしい容貌が魅力的な(リーニスはちょっと違うかも知れないが)、凄腕の天才魔道士と。
とりあえず口さえ開かなければ、非の打ち所のない美貌の剣士。
これが男と女の1セットで2組。しかもそれぞれ、双子と見まごうばかりのそっくりさん。
でもって、やっぱり食事の時は料理の奪い合いで、バトルロイヤルなんぞもしてるのだ。
・・・気がつけば、あたしたちのテーブルの廻りを、ギャラリーがぐるりと取り囲んでた、ってこともしばしばだった(笑)

だけど、笑ってばかりもいられない。
あの日、あたしたちを襲ってきた連中も、しつこくつきまとい続けてた。
今日も、まだ夜も明けないうちに来た。
食堂で軽く朝食を済ませ、機嫌よく街を歩いてた時にも。
魔法道具店(マジック・ショップ)で買い物を済ませた、その直後にも。
次の街へと移動する、その途中の街道でも。
野宿でもしようかと、たき火を起こしてる真っ最中にも。
まあ、初日に現れたような魔族?ではなく、単にレッサーデーモンが団体で来るだけなんだが、・・・ここまでこまめにやってくると、煩わしくてしょうがない。

でもって、あたしたちが元の世界に帰る方法も、手がかりすらまだ見付からないし。
ガウリイは、この状況を分かっているのかいないのか、相変わらずのほほんとしてるし。
・・・だあああああっっ!もう、考えただけでも嫌になるっっ!
こんな状況が長く続けば、さすがのあたしもストレスで胃が溶けるぞっ!

そーゆー時は、・・・やっぱり。

「火炎球(ファイアー・ボール)!」

どっぐわあああああんっっ!

あたしがぶっ放した攻撃呪文に、いともあっさりと5、6人倒れてく。
「てめえ、何しやがるっ!」
「野郎ども、やっちまえっっ!」
残った連中が、月並みな台詞吐いてかかってきても、あたしはあっさりと身をかわし、とっとと次の呪文をぶっ放す!

「魔風(ディム・ウィン)!」

ごおおおおおおおおっっ!

おーおー、よく飛んだこと(はあと)
よーしっ、これで大体片付いたみたいだし、あとはおたからの在処を捜すだけっ!
・・・うふ、うふ、うふふふふふ。
ストレスが溜まりまくったよーな時は、こうして発散するに限るっ!
盗・賊・い・ぢ・め(はあと)
ああっ、なんて心地よい響きっ!(特大はあと)
世間様を騒がす悪党は減るし、あたしも懐が潤うし。こんな素晴らしい実益を兼ねた趣味は、これ意外にはそうそうないわねっ!(力説)
「こ、このアマあ・・・!」
あ、まだここにも残ってたか。
そう思ってあたしが、呪文を唱えようとしたその時、

「炎の矢(フレア・アロー)!」
「うぎゃあああああっ!」

どこからともなく飛んで来た呪文が、最後の一人をコンガリと焦がす。
・・・へっ!?
「お前なあ・・・こんなとこで、何やってんだよ。」
呆れたように言いながら、出て来たのはリーニス君。
後ろ頭を掻きながら、ジト目であたしの方を見てる。
「ったく、何か派手に騒いでるから、まさかって思ってたんだが・・・。」
「・・・何よ。あたしが何処で何しようと、あんたには関係ないじゃない。」
あたしがそう言い返したのが気に入らなかったか、彼はついっと目を細めて、
「大有りだ。お前がンな事やってくれたら、俺の収入が減るじゃねえかっ!」
・・・・・・・・・成る程。
こいつもやっぱ、同じ趣味があったんだ。ま、当然といえば、当然かもしんないけど。
「しょーがないじゃない。こーいうのは。やっぱ早い者勝ちよ。」
「俺だって、今手伝ってやったろーが。ちょっとは分け前よこせよな。」
「別に頼んだ覚えはないわよ。」
「でも、働いてやったことには変わりない。だから、俺がそれなりの報酬を求めるのも、まあ当たり前の権利だよな。」
「勝手なことを・・・。」
「まあ、そこまで言うんならしょーがねえな。この事をガウリイの奴に・・・。」
・・・・・・ぐっ・・・・・・!
あたしが返答に詰まったのを見て、リーニスがにいっと意地悪く笑う。
・・・そうなのだ。
あの最初の襲撃以来、ガウリイは何故かあたしを過保護にしてる。
まあ、普段から“盗賊いぢめ”に関しては、あまりいい顔をしていなかったのだが、この数日は特に厳しいのだ。
今日だって、来るのにどんなに苦労したか・・・・・・ぶちぶち。
「まあ、俺もそこまで言うのも・・・8割5分。」
!?
ちょっと待て。後でちょこっと顔見せただけで、そんなにぼったくるんかあんたは!?
・・・一瞬、まぢで殺意覚えたぞあたしは。
「あんたねえ、後から来といて・・・。」
「8割5分。」
「・・・いい根性してるわね、あんた。」
「口止め料もあるんだ。とーぜんだろ。」
「・・・・・・あのねえ。」
「8割5分。」
「ちょっと、人の話聞きなさいよっ!」
「しょーがねえなあ、まけて8割・・・。」
だああああっ!うっとおしいっっ!
けなげにも耐えていたあたしだったが、もう我慢ならんっっ!

−黄昏よりも昏きもの 血の流れより紅きもの
時の流れに埋もれし 偉大なる汝の名に於いて−

「・・・上等じゃねえか。」
あたしの詠唱の声を聞いて、リーニスも不敵に笑って呪文を唱える。

−総ての心の源よ 輝き燃える紅き炎よ−

あ、小技で詠唱を邪魔する気か!?とことん嫌な奴っ!
だけど。

ずざっっ!
「・・・・・・!」

あたしの呪文を途切れさせたのは、リーニスの攻撃ではなかった。
即座にあたしが飛び退くと、一瞬遅れて黒い矢が地に刺さる。
続けて、木々の陰から人影?が飛び出す!

「・・・リナ=インバース!覚悟っ!」

:::::::::::::::::::::::::::::::

何てとこで切るんだ、自分。←殴。

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298「Traffics」その7中田 珂南 E-mail 10/31-20:06
記事番号297へのコメント
ごめんなさい、前回は変な所で切ってしまって(汗)
・・・しかし、ここしか無かったんですよおお。しくしくしく。

::::::::::::::::::::::::

「Traffics・その7」

「・・・リナ=インバース!!覚悟っ!!」

ざざざざざっっ!

草むらから飛び出た人影が、迷うことなくあたしを狙う。
・・・しかし、それでどーにかなるあたしじゃないっ!!
「烈閃槍(エルメキア・ランス)!」
あたしの放った閃光が、夜の闇を裂き奴に迫る。
が、
「・・・ふっ、こんなものか!」
意地悪く笑うと奴は、いともあっさりと閃光を消滅させる。
そして手に魔力を集め、片刃の剣を生み出した。
・・・まずいっ!

ぎゅいいいいいいんっっ!

頭上に迫った魔力の刃を、あたしは辛うじてショート・ソードで受け止める!
・・・我ながら、よく止めたもんだ・・・。
が、奴はそれ以上は攻撃せずに、いきなり後ろに向き直って、

がきいいいいいんっっ!

後ろから来たリーニスの斬撃を、その手の刃で弾き返す。
が、リーニスも馬鹿ではないっ!
「青魔烈弾波(ブラム・ブレイザー)!」
きっちり増幅をかけた一撃を、至近距離からぶっ放す。
魔をも貫く青い光が、闇の中で大きく弾けた!
「・・・やったか!?」
が、
「・・・・くっくっくっくっ。」
光が止んだその後も、そいつはまだ立っていた。まるで、何事も無かったかの様に。
・・・そんな、馬鹿な!?
「この私を・・・その辺の低レベルの奴らと、同じと思ってもらっては困るな・・・。」
心底嫌味ったらしい台詞を吐いて、奴はなおも愉快そうに笑う。
くっそー、本当に腹の立つ!!

そんな時、

ずざああああああっ!!

いきなり、視界を白光が横切った。
かと思うと、

「・・・・!?」

奴の腕らしきものが、高々と宙を舞う−勢いよく、斬り飛ばされて。
そして、
「・・・そこまでにしとくんだな。」
まるで伝承歌(サーガ)の英雄のように、えらく気取って現れたのは−光の剣を携えた、ガウリイだった。

「・・・だから言ったろーが。勝手に一人で行動するから、こーいうことになるんだ!!」
宿に戻ってくると-−早速、ガウリイのカミナリが落ちた。
・・・な、何かいつも以上に怒ってないかこいつ!?
「俺が間に合ったから良かったよーなものの、そうでなかったらどうするんだ!?」
「・・・わ、分かってるけど・・・。」
「分かってるんなら、何で盗賊いじめなんか行ったんだ!?」
あたしも一応言い返すが、ガウリイはどうも本気で怒っているらしく、ちょっとの反論も許そうとしない。
な、何よ。くらげのくせに。
なーんて、心の中で思ってたりするが、正直、今それを口に出そうという気にはなれない。
・・・・・・正直、今のガウリイの怒りようを見てると、そんなボケをかます余地なんかなさそうだぞ・・・・・。

「とにかく、もう二度と勝手なことするなよ!」

ばたんっ!

えらく勢いよくドアを閉めて、ガウリイはあたしの部屋を出て行った。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・何よ。
普段は、とことんくらげのくせに。
何で、こんなに過保護になってんのよ。

::::::::::::::::::::::::::::

すみません、もう閉店時間(ネットカフェ)なもんで、ここで切ります。
・・・・本当はもうちょっと書く予定だったのに・・・・しくしくしくしくしく。

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311感想ですぅぅぅっ!マミリンQ E-mail 11/1-16:51
記事番号298へのコメント
中田珂南さま

こちらでは初めまして、マミリンQと申します♪

おもしろいですぅぅっ!
性別逆になったガウリイ&リナ&etc。
描写がお上手なんで、想像も簡単にできちゃいました。
リーニスくんもガイリアさんもすっごくナイス!!
性格反対ものもおもしろいですけど、性別反対ていうのが
とっても新鮮で、光る個性にくらくらです。(はぁと)

極めつけは・・・”保護者”&”世話役”のいいわけの仕方!!
もう、うなっちゃいましたっ!そうかぁ、リーニスくんも
ツラいんですね。
あと、熱血王子なアメリア・・・くっくっく・・・。
おもしろそうですねぇ。(邪)
ゼルは、うん、どっちでもいけそうな気が。
フィルさんは・・・。(禁)

いやあ、本当におもしろかったですっっっっっ!!!!!!

続き楽しみに待ってますね。(押しつけはぁと)

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333Re:ありがとうございます(はあと)中田 珂南 E-mail 11/2-12:15
記事番号311へのコメント
マミリンQ様、ご感想ありがとうございますです。
よかった、読み続けてくださる人がまだいらっしゃった!!(爆)

>リーニスくんもガイリアさんもすっごくナイス!!
>性格反対ものもおもしろいですけど、性別反対ていうのが
>とっても新鮮で、光る個性にくらくらです。(はぁと)

他の方にも同じ事言われたのですが、・・・「性別が逆」ってお話、今まで本当になかったんですね(汗)・・・本当にこんなモン書いて良かったのかしら・・・(小心者)

>極めつけは・・・”保護者”&”世話役”のいいわけの仕方!!
>もう、うなっちゃいましたっ!そうかぁ、リーニスくんも
>ツラいんですね。

この「世話役」には難儀してました。だって「女が男の“保護者”する」って、やっぱ何か違うような気がしたんです。体力だって、ガウリナと違ってリーニスは、そんなにか弱い訳じゃないし。・・・で、こうなった、と。

>あと、熱血王子なアメリア・・・くっくっく・・・。
>おもしろそうですねぇ。(邪)
>ゼルは、うん、どっちでもいけそうな気が。
>フィルさんは・・・。(禁)

・・・・・・私も想像して、自爆しました(爆笑)<フィルさんの女性版。

こんな展開してますけど(今「その8」UPした所です)、いかがなもんでしょうか?
私、やっぱ断然ガウリナ!な人なんで、こうなってしまうんですよねえ・・・(苦笑)
本当に、ありがとうございました。駄文ながら、何とか頑張って書いていきます!

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331「Traffics」その8中田 珂南 E-mail 11/2-12:01
記事番号298へのコメント
すみません、前回はさらに変なとこで切っていまいまして(殴)
その前(その6・戦闘シーン)は故意にやったんですけど、あれ(その7)は本当にTime upだったんです。・・・・・・よりによって、一番切りたくなかった所で・・・(号泣)
てな訳で。少々仕切り直しつつ、続きです。

::::::::::::::::::::::::::::

「Traffics・その8」

「とにかく、もう勝手なことはするなよ!!」

ばたんっ!!

ガウリイはそう怒鳴って、部屋を出ていってしまった。
あたしに、一言の反論も言い訳も許さないままで。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・何よ。
何よ何よ何よ何よ何よ何よ何よっっ!!!
何であんたは、そんなに過保護になってんのよ!?
元からそんな所がなかった訳じゃないけど、この数日はかなりヒドいぞ!?
普段はとことんくらげなくせに、一体何なのよあんたはあああっっ!!
・・・・・って、面と向かって言い返せなかった自分が、我ながらかなり情けない。
ふう。
あたしはショルダーガードとマントを脱ぐと、ベッドにゴロンと転がった。

何の飾り気もない天井を見上げ、あたしはしばし考える。
・・・さっき怒ってたガウリイの眼が、未だに胸に焼き付いてる。

分かってる。
ガウリイが、あたしを本気で心配してくれてることは。
元の世界に帰る方法どころか、ここに迷い込んだ原因もまだ分かってないし。
それに、この数日の敵襲は、常にあたしが一番の目標にされていた。
この状況では、ガウリイが神経質になってしまうのも無理はない。
・・・さすがのくらげでも、そんくらいの状況判断できるのか・・・。

だけど。
そんなことを差し引いたとしても、この数日のガウリイは何かおかしい。
・・・いや、もっと正確に言えば。
冥王との戦いも終わり、ゼルやアメリア達とも別れた後−また二人旅を始めた頃から、もう既にどこかおかしかった。
急にそらぞらしい態度をとったり、かと思えばえらく過保護になったり。
・・・かく言うあたしも、あまり人のこと言えないよーな事ばかりしたけど・・・。
あたしとガウリイの間にあったものが(それが何なのかは、あたしにもよく分からない)、あれ以来、何だかぎこちなくなってしまってたのだ。
もし、この世界に迷い込んだりしてなかったら−あたしとガウリイの関係は、もっとおかしくなってたかも知れない。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・何で?

「・・・馬鹿馬鹿しい。」
ここであたしは考えるのを止め、ベッドから跳ね起きた。
ぐじぐじ考え事するなんて、やっぱあたしの柄じゃない。
こーいう時は、何か美味しいモンでも食べて、とっとと寝るのが最良の策っ!
・・・こんな時間じゃ、下の食堂兼酒場にも、大したモンないかも知んないけど。
とにかく、考えてても仕方ない。
あたしは軽くマントを羽織ると、自分の部屋を後にした。

が。
人気の絶えた酒場には、たった一人だけど、先客がいた。
・・・よ、よりによってこいつがいるとは・・・。
さっきの続きになるのが嫌で、あたしはその場に立ち止まり、そっと出入り口の影に身を隠した。・・・無駄な努力かも知れないけれど、あっちだってわざわざ続きをする気もないだろう。多分、気付かない振りを通す筈(希望的観測)。
−まあ、懸命な諸君ならもうお分かりだろう。
その先客とは、脳みそスライムな自称保護者−ガウリイ=ガブリエフその人なのだ。
カウンター近くのテーブルに陣取り、長い金髪を時折いじりつつ、グラスの酒を黙々とあおってる。
・・・どーでもいいかも知んないが、その酒、結構きつい奴じゃあ・・・?
でもって、テーブルの上にはもう既に、10本近くも空の酒ビンがあったりする。
本人はいたって平然としているが、・・・それが何だか逆にコワい。
現に、ここのオヤジらしき人が、カウンターの向こうで顔引きつらせてるぞ・・・。

そんな彼に、
「・・・ここ、いいだろ。」
無謀にも、相席してきた強者がいた。
あたしのそっくりさんの黒マント男、リーニス君である。
が、ガウリイは、
「・・・・・・・・・・・・・。」
黙々とグラスを傾けるだけで、何も答えようとはしない。
するとリーニスは、その沈黙を了解と受け取ったのか、勝手に向かいの席に座った。

::::::::::::::::::::::::::::::::

長いので、一旦切ります。でもリナちゃん、何か妙に大人しくなっちゃいました(苦笑)
それより、やっと出てきました。ガウリイ×リーニスの「男の会話」!
うふ、うふ、うふふ。ここ、書きたかった場面の一つなんですよ(はあと)
・・・・・・・・・・誰も聞いてないって。

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336「Traffics」その9中田 珂南 E-mail 11/2-14:09
記事番号331へのコメント
よーやっと出てきましたガウリイ×リーニス!(こう書くと何か変だなあ・笑)
今までのどの章(?)よりも、スムーズに書き進むのは何故だろう・・・(苦笑)

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「Traffics・その9」

「オヤジ、サーモンサンドとチキンサラダ、それにポテトとパンプキンのフライセットそれぞれ3人前な。あとレシスのジュースも、とりあえず一つ。
・・・念のため言っとくけど、この兄ちゃんとは勘定別にしといてくれよ。」

自分の料理を注文すると、彼は改めてガウリイの方に向き直った。
・・・どーでもいいが、こいつもやっぱり酒は弱いらしい。どこまであたしに似てるんだ、こいつ(苦笑)

しばしの間を置いて。
「なあ、ガウリイ・・・。」
出された料理に手を伸ばしつつ、リーニスが話の口火を切った。
「あんた、リナをどう思ってるんだ?」

い、いきなり何を言い出すんだこひつは!?
あたしは思わず派手にこけそうだったが、根性出して寸前でふんばった。
・・・ここであたしが現れたら、一気に気まずくなるもんね・・・。
しかしリーニス君、こいつも君の相棒と同じく、とことんくらげな人間なんだぞ?
そこんとこ、ちゃんと分かってて聞いてるのか?
「リナにあんたの事を聞いた時、あいつは“保護者”だって答えてた。」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」
「じゃあ、俺があんたに同じ質問をしたら、あんたは俺に何と答える?」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
あたしは一瞬、胸が締め付けられた。
リーニスが、今ガウリイに突きつけた質問。
それは、あたしがずっと聞きたかったこと−そして、今までどうしても聞けなかったことなのだ。
もっとも、まともな答えが返って来るとは、到底思えないんだけどね。
だけど、ガウリイの返答は、
「あいつは、リナは・・・特別、だからな。」
あたしの予想に反して、えらくまともな・・・しかし、いまいち意味不明な言葉だった。
「特別?」
「ああ。・・・俺にとっては、だけどな。」
聞き返すリーニスに、酒をあおりながらガウリイは答える。
その言葉を聞き漏らすまいと、あたしはさらに耳をそばだてた。
「俺はあいつを護りたい。ずっとあいつの傍にいて、どんな奴からも護ってやりたい。
・・・だけど。」
「だけど?」
「俺は、あいつの人生を狂わせたくない。・・・だから・・・。」
ここでガウリイは言葉を切ると、やけに自嘲的な笑みを浮かべた。
その蒼い瞳が、何故かやるせない色に見える。
・・・あたしは今まで、こんなガウリイの表情は見たことがない。
二人(とあたし)が、しばらく沈黙した後に。
「ところで、リーニス・・・。」
先に口を開いたのは、さらに空の酒ビンを増やすガウリイだった。
「お前さんは、あの・・・ガイリア、だっけ?彼女を、どう思ってるんだ?」
「!」
今度は、リーニスが返答に詰まる。
「どうって・・・。」
「・・・・・・・・・・。」
うろたえるリーニスに対し、ガウリイはまっすぐ彼の顔を見詰めることで、無言のプレッシャーをかけている。
・・・・・・・それ、何かヒドいぞ・・・・・・。
あたしは思わず、ガウリイにツッコむ。物陰に隠れたままなので、あくまで自分の胸の内だけで。
が、リーニスはそんな彼に抗し切れなかったのだろう。大きなため息を一つつくと、観念したように話し始めた。
「最初は、ただの腐れ縁だけだった。あいつは何かと俺の世話焼きたがるし、俺はあいつの“光の剣”が、どーしても欲しかったし。」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」
「今では、・・・正直、俺にも分からん。ただ、あいつが冥王に捕まった時、俺はつい“あの呪文”を唱えちまったし。
あいつも、何をどーやったかまでは知らんが、俺をあの混沌の中から、引きずり出して来やがった。
・・・それがどうしてなのか。俺にも、そして多分あいつにも、全然分からないんだけどな。」
そこまで言うとリーニスは、照れくさそうに後ろ頭をポリポリと掻いて、ガウリイから視線を外した。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・こいつ。
ここまであたしと同じだと、正直、シャレにならない。
し・か・もっ!
よりによって、ガウリイにそんなこと話されるなんてっ!
・・・ガウリイが飲んでる最中で、本当に良かったかも知れない・・・。
(ここまで沢山飲んでれば、まあ、明日には記憶は無くなってるだろう。しかし、この間にも空の酒ビンはさらに増える・・・化け物か、こいつは・・・。)
でも、万が一ってこともあるから、これ以上余計な事言わないでよリーニス!
もし言ったら、問答無用で竜破斬(ドラグ・スレイブ)ぶちかますわよっ!!
あたしが、そんな事を考えてると、
「・・・お前さんはともかく、あっちは分かってるかも知れないぜ?」
えらく意味深な言葉を吐いて、ガウリイは席を立った。
げ!まずい!
あたしは慌てて踵を返すと、一目散に階段を上がった。
・・・こんな会話聞いた後に、ガウリイと顔を合わすなんて御免だからねっ!

そうしてあたしが間一髪で、自分の部屋に無事戻ると、
コツ、コツ、コツ、コツ・・・・。
意外としっかりしたガウリイの足音が、人気の全くない廊下を渡る。
そして、・・・何故か、あたしの部屋の前で止まった。
おや?
「・・・リナ。今の、聞いてたんだろ?」
びびびびくうううううっっ!!
ドア越しにかけられたガウリイの声に、あたしは本気で一瞬心臓が止まった。
よ、予想はしてたけど、やっぱり分かってたのか、こいつ。
しかし・・・一体何と答えろと?
あたしがドアのこっち側で、本当に返答に困ってると、
「・・・早く寝ろよ。」
その一言だけ言い残して、ガウリイはまた行ってしまった。
・・・・・・・・・・・・・・・・・何しに来たんだ、こいつ?

“特別だから”
ガウリイがさっきリーニスに言った答えが、何故か胸に引っかかる。
その後見せたあの笑みも、あの妙にやるせない眼も。

そして。
そんなガウリイのことを気にする自分自身に、戸惑いを覚えていたりする。

「・・・・・・・馬鹿みたい。」
あたしは軽く頭を振ると、マントを脱ぎ捨て、再びベッドに転がった。
もう寝よう。
これ以上変に考えたりすると、頭まで変になってしまう。
どーせ明日になったら、ガウリイも覚えていないんだし。
(リーニスの方は覚えてるだろうが、もし思い出させようとしたら、問答無用でありったけの攻撃呪文叩き込んでやる。
まあ、あれでも“もう一人のあたし”なんだし、そんな馬鹿なことはしないだろう。)
そう、考えるだけ損なこと。
あたしは、自分自身にそう言い聞かせて、毛布をかぶり目を閉じた。
・・・・・・・・・結局、夜食食べ損なったけど。

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いやあ、やっとこの場面が書けました(はあと)
もう皆様(と言える程、この話読まれているんだろーか?)お気付きのとおり、リーニス×ガイリアとガウリナは、行動だけでなく気持ちまでリンクしてます。

あ、そろそろ謎解きもしないといけませんね。
ガウリナっぽいこと書いてると、ついその辺のこと忘れて調子づいてしまいます(苦笑)・・・それ、めっちゃあかんのんとちゃうん・・・(関西弁丸出し)

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373「Traffics」その10中田 珂南 E-mail 11/4-11:44
記事番号336へのコメント
これ読んで下さってる方、ちゃんといらっしゃったんですねえ(しみじみ)。
・・・絶対愛想尽かされてると思ってたのに(苦笑)

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「Traffics・その10」

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ふう。

案の定、ガウリイには夕べの記憶は殆どなかった。
(なのに、あたしが夜中に盗賊いじめに行ったことは、きっちし覚えていたりする。ついでに忘れてくれればいいのに。)
とりあえずリーニスは知らん顔しててくれてるし、その隣を歩くガイリアは、勿論事情を何も知らない。
とりあえず宿を引き払い、また4人並んでてくてくてくと街道を歩く。
風の向くまま気の向くまま、のんびりと歩くあたしたちの状況は、一見、昨日と全く変わりなかった。

だけど。
夕べガウリイの言ってたことが、あたしの中にまだくすぶってる。

“特別だから”
・・・・・・・・・・・・・・・・・ガウリイ、どういう意味で言ったんだろう?

「ねえ、リーニス。夕べは何処行ってたの?」
唐突に発されたガイリアの言葉が、あたしを現実に引き戻した。
見ると、いつになく憮然とした彼女が、リーニスに詰め寄ってる姿があった。
「また盗賊いじめに行ってたんでしょ。ったく、毎度毎度のことだけど・・・。」
「な、何だよ。別にいいじゃねえか。この世から悪党が減ってくんだし、俺も懐が潤うんだし。」
「勝手なへ理屈こねるんじゃないの。」
「ほっとけっ!」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ノーコメント。
自分自身を見ているようで、何だかため息が出てしまう。
「あっちも、苦労してるみたいだな。」
ガウリイが小声でぼそり、と呟いたが、それにも突っ込まないでおこう。
やぶ蛇になりかねないし。

と、その時、

ぎゅおうわあああああああああんっっ!!

いきなり何の脈絡もなく、レッサーデーモンの雄たけびが辺りに響いた。
・・・・・・何!?
「リナ!」
叫んで駆けたガウリイの剣が、レッサーデーモンの一匹を斬り伏せる。
と同時に、リーニスのかざした両手の平が、魔力の光をぶっ放した! 
「青魔烈弾破(ブラム・ブレイザー)!」
「でええええええいっっ!」
その閃光に負けないスピードで、ガイリアの携える剣も疾る。
団体で押しかけたレッサーデーモンたちは、見る間にその数を減らしつつあった。

・・・・・・・その瞬間。
何故かは分からないけど。
あたしはとっさに呪文を唱え、大きく右に跳んでいた。

ずざざざざざっっ!

派手に火花を撒き散らかして、魔力光が大きく弾ける。
その瞬間、あたしがさっきまで立っていた場所は、地面が大きくえぐられていた。
・・・が、あたしはこのとおり全然無傷で、呪文の詠唱も終わらせている!

「覇王雷撃陣(ダイナスト・ブラス)!」

ばちばちばちばちっっ!!
「ぎゃあああああっっ!」

魔をも砕く雷撃が、茂みの向こう側に落ちる。
続いて上がった叫び声に、あたしは勝利を確信した!

が、
「・・・・甘いっ!」
まるで反対の方向から、大柄な人影が飛び出した!
何いいっっ!?
「リナ!」
気が付いたガウリイがフォローしようとするが、行く手をレッサーデーモン達に阻まれて、こちらに近づくことさえ出来ない。
リーニスやガイリアも同様で、あたしはまるっきり孤立無援!
やばい。このタイミングで来られては、攻撃呪文も間に合わない!

・・・・・・・・・・・・・・・・・・だけど。
攻撃は、来なかった。
それどころか・・・さっきまでわんさかいたデーモン達が、一匹残らず消えている・・・?

「・・・・・・・・・・・・?」
あたしがそっと目を開けると、そこに佇んでいたのは、
「き、貴様か・・・!」
憎々しげに相手を睨む、一見黒髪の美女に見える魔族(と思う)と、
「こんな所にいたんですねえ、ルージットさん。」
およそこの場にそぐわない、何とも穏やかな笑みを浮かべた、・・・スットコ獣神官の姿。
・・・だけど、やっぱり女性型だったりする。
「お久しぶりです、リーニスさん、ガイリアさん。お元気でしたか?」
「・・・てめー、何しに来やがった?」
優雅に礼をして微笑む彼女に、リーニスは露骨に嫌な顔をする。
その隣ではガイリアが、至極呑気に微笑んで、
「ほんっとに久しぶりねえ、ゼロス。元気だった?」
「ええ、お蔭様で。」
「てめーら、なごむんじゃねええええっっ!」
リーニスが力一杯怒鳴りつけるが、この連中に効くはずがない。
・・・あんたも、苦労してんのねえ・・・(しみじみ)

その隙に。
あの魔族−ルージット、だっけ?は逃げていたので、本当に間抜けなことである。

「・・・で?ゼロス、てめー、一体何しに来たんだ?」
不機嫌そーな顔をして、リーニスがゼロス(こいつの名前は、そのまんまらしい。まあ、もともと魔族に性別なんかないんだし。)にずずいっと詰め寄る。
するとゼロスは、
「勿論、それは・・・。」
「『秘密です』なんて言ったら、一体どーなるか分かってんだろーなあ?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・いぢめないで下さいよお。」
いつもの台詞を封じられて、いじいじいじと地面に‘の’の字なんぞ書く。
・・・やっぱゼロスと言うべきか、何と言うか。
そんなスットコ神官に、
「で、ゼロス。本当は、何の用があって来たの?」
意外にも、ガイリアが助け船を出した。(って、何も考えてないかも知れないが。)
「ああ、そうでした・・・・。」
言うと彼女は、ぴっとあたしたちの方を指差し、
「私、この方々に用があって来たんです。・・・異世界からお越しになられた、このお二人。
もう一人のリーニスさんと、ガイリアさんに。」

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結局ゼロスも登場してしまいました。・・・どーしても、謎解きするのに必要だったんで。
(“便利なアイテム”扱いするなんて、リナじゃあるまいし・・・ゼロスファンの方、ごめんなさい。)
ああ、まだこの話続くんですねえ・・・この話が終わる前に、ツリーが沈んでしまいそうです。
こんなに長い話になるなんて、自分でも本当に予想外なんです(苦笑)

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378読んでます明美 E-mail 11/5-07:49
記事番号373へのコメント
中田 珂南さん

お話が完結してからコメント書こうかと思ったんですけども……。
ずっと、続けて読んでますよ。
こんなに長いの書けるなんて、根性のある人なんだあ、と感心しています。(いや、マジで)
次の話で、こうなった原因が分かるんでしょうか?

楽しみに待っています。

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388ありがとうございます。中田 珂南 E-mail 11/6-11:36
記事番号378へのコメント
こんな駄文にご感想頂き、ほんとうにありがとうございます(はあと)

>こんなに長いの書けるなんて、根性のある人なんだあ、と感心しています。(いや、マジで)

いえ、長い話になってしまってるのは、(現在進行形になってるのが悲しい・)自分でも本当に予想外です。
この話、本来は某「語る会」(某くらぶの下部組織・・・て、ばればれやん・笑)会報用に考えた短編ネタだったんですよ。自分でも信じられんのですが。

>次の話で、こうなった原因が分かるんでしょうか?

・・・・こんなんなりました(苦笑)

実は、敵がどうのこうの言う以前に、「ガウリナ話」にしたかったんですよね。
二人以外のメンバー(の男女逆バージョン)が出ないのも、そーいう理由ですし。
(他の人間出たら、“勢揃い!”っていうか、顔見せ的になってしまいそうですし)
ちなみに、「ガウリイの本音」に関しては、そのものズバリはまだ書いていませんが、前振り?(伏線って言う程のものじゃないですが)になるよーなことは、既に何回も書いてます。
後で、「ああ、そうか」って思って頂ければ・・・って、そんなに上手く書けるかしら、自分(苦笑)
とりあえず、頑張ります。


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389「Traffics」その11中田 珂南 E-mail 11/6-12:47
記事番号373へのコメント
やっとゼロスが出て来ました。ああよかった。
このまま出られなかったら、どーしようかと思ってました(苦笑)・・・出ないと、謎解き?出来ないですから(やり方次第では出来るかも知れないけど、私にはそんな文才ないです・涙)
では、続きです。

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「Traffics・その11」

『・・・・・・・・・・・・・・・・・・・はあ?』

あたしとリーニス、二人同時に間抜けな声を上げる。
Wくらげは、やっぱり何も分かってないようで、不思議そーな目であたしたちを見る。
そんな4人に、女ゼロスはにっこり笑って、
「だから、そちらの異世界からのお客様に御用があるんですよ、私。」
「何か、ロクな話じゃないよーな気がするんだけど。」
「あら、嫌ですわ。そんな、人を詐欺師か何かのようにおっしゃられては。」
「本物の詐欺師の方が、もっと可愛いわよ。」
「まあ、ひどい言われようですね。さすが、“もう一人のリーニス”さんですわ。
でもこれは、あなた方が“ここ”に来てしまった原因にも、深く関わってることですのよ?」
穏やかに笑う眼差しに、一瞬鋭い閃光がよぎる。
・・・・・・・・・・・どうやら、それはホントのことらしい。
相手がゼロスってのが、ちょっと油断ならないけれど、この際贅沢は言ってられない。
やっぱ元の世界に戻りたいし、他に何の手がかりもないし。
「じゃ、しょーがないわねえ。あんま気が進まないけど、あんたの策に乗ってあげるわ。」
「策・・・って、どういう意味です?」
「どーせあんたのことだから、親切で言ってる訳じゃないんでしょ?
だけどまあ、あたしたちも帰りたいし。ま、等価交換ってことにしといてあげるわ。」
「さすがは、リナさん。来た甲斐がありました。」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ちょっと待て。
ちょっと待て。今、「リナさん」って言わなかったか、こいつ?
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・まさか。
「ゼロス。」
「はい。何でしょう?」
「あんた、何で名前知ってんの?“この世界にいるはずのない”あたしの名前を?」
「・・・・・!」
あたしが言った一言に、ゼロスがモロに蒼ざめる。(・・・魔族のくせに。)
「あたしは、まだ名乗った覚えはないわよ?」
「あ、で、でも、僕、魔族なんですから・・・そのくらいのことは・・・。」
「“僕”?」
「・・・ぐっ・・・!」
あたしのツッコミに、さらに動揺しとるぞ、こいつ。何とか誤魔化してみればいいものを。
「正直に言いなさいよ、ゼロス。それとも、アメリア直伝の『生への讃歌』を、至近距離で堪能させた方がいいかしらあ?」
あたしがにっこり笑いかけて、これまたアメリアから貰ったメガホンを取り出すと、
「・・・・・・・・・・・・・・・・・分かりましたよお。」
だくだく涙を流しながら、ゼロスはその場に崩れ落ちた。
ふっ、勝った。(Vサイン。)

案の定「この」ゼロスは、“あたしたちの知っている”ゼロスだった。
リーニスやガイリアの名前なんかは、「ここの」ゼロスに聞いていたらしい。
で、「そっち」と「こっち」が二人同時に出ないように、「ゼロス」同士で協定を結んだそうな。
・・・・・・ああ、なんてややこしい話だろう(ため息)。

まあ、そんな事はどうでもよろしい。
あの後あたしたちはもう少し歩いて、近くの小さな村に宿を取った。
軽くおやつを食べてから、5人であたしの部屋に集まり・・・。

「ふざけんな!」
怒鳴り声を挙げたのは、激昂したリーニスだった。
あたしもガウリイもガイリアも、揃って複雑な顔をしてる。
そんな中で笑ってるのは、このスットコ神官だけだった。
「そう言われましても、それが真実なんですから。」
「うるさい!」

ばったああんっっ!

キツい目であたしたちを一瞥すると、リーニスは部屋を出ていった。
その心中を現すように、もの凄い勢いでドアを閉めて。
・・・・・・・・まあ、無理ないか。
でもって、ガイリアもすっと立ち上がり、
「ごめんなさい、私、彼を見てくるわ。」
こっちはえらく落ち着いた表情で(単に分かってないのかも知れないが)、出ていった彼の後を追う。

・・・ぱたん。

閉められたドアの向こうから、二人の気配が完全に消えるのを待ち、あたしは静かに口を開いた。
「・・・・・・・・・ゼロス。それ、本当なんでしょうね?
もし、それが冗談か何かなら、竜破斬(ドラグ・スレイブ)ぶちかますわよ。」
「僕が、そんなふざけた者に見えます?」
「すっごく見える。」
「・・・・・・・・・・・・・。」
ええい、こんな時までいじけるな。壁に向かって“の”の字を書く魔族なんぞ、おふざけ以外の何でもないでしょーが!
そんな時に、
「なあ、リナ。」
妙に神妙な顔をして、今度はガウリイが口を開いた。
「いいのか?あいつ、放っておいて。」
「大丈夫よ。あっちには、“自称・世話役”さんに任せれば。」
「・・・・・・・そうだな。」
そう言ったきり大人しくなる。やっぱり心配になってたのか。
まあ無理ないか。
こんな事実聞かされたら、あたしでも(って、リーニスも“あたし”なんだけど)ショックに違いない。

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長くなったので、一旦切ります。引っ張るだけ引っ張って、まだ真実が出てきてないですが。(斬殺)
前半で遊びすぎたかなあ(ため息)
でも、あれもちゃんと意味があるんです。でないと、皆様を混乱させかねないんですよね・・・。
とりあえず、続きます。

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391「Traffics」その12中田 珂南 E-mail 11/6-13:49
記事番号389へのコメント
今回は説明onlyになりそうで怖いなあ・・・。続きです。

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「Traffics・その12」

リーニスが突然怒った理由。それは、「この」ゼロスの持って来た、この話に他ならなかった。

『鏡』

何でも、ゼロスの上司である獣王ゼラス=メタリオム愛用の鏡が、どーいう訳か盗まれたらしいのだ。
「鏡よ鏡、この世で一番きれいなのは誰?」と毎日囁くためのもの・・・ではないらしい。本当にただの鏡なのだ。
だが、やっぱり魔王(ルビーアイ)の腹心だけあって、ただ毎日使うだけでも、身の回りの物に影響を与えるらしい。
その『鏡』にも、しっかり魔力が宿ってしまったらしいのだ。

「でも、そんな簡単に魔力が宿ると、いろいろ大変なんじゃないの?」
「まあ、普通はそこまでならないですよ。ただあれは、獣王様の特にお気に入りのものでして。
毎朝お目覚めになられると、獣王様はまずあの鏡の前に立ち、映った御自分にキスなさるんです。もしかしたら、それが原因だったのかも・・・。」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・さすが、ゼロスの生みの親というべきか。

で、盗まれた鏡はというと。
身の程知らずな下級魔族が、宿った魔力を手に入れるべく、いろいろいじっていたようなのだ。
そんな時に、あたしたちがたまたま通りかかったらしい。
暴発した魔力があたしたちを包み、そのまま異世界へ・・・てな訳で。
あいつらは『奪られた』魔力を取り戻すべく(もともと盗品のくせに)、アストラル・サイドを通り抜けて、ここまでやって来たらしい。
(何か納得いかない点もあるが、ゼロスの方は(アストラル・サイドに関しては)、あまり詳しく話したがらない。いわゆる“企業秘密”というやつらしい。)

で。
“ここ”は『鏡の中』なのだ。その、盗まれた獣王の愛用品の。
あたしとリーニスが似てるのも、まるで正反対なとこがあるのも、「鏡像」ゆえのことなのだ。
(こんなひね曲がった鏡像が出来るってあたり、持ち主の性格を暗に示してるのかも知れない。)

「“鏡”は左右反対に映りますけど、昔から“真実を映すもの”とも言われます。
思い当たる事、ありませんか?」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
じゃあ、夕べリーニスが言ったことは、やっぱりあたしの「本音」そのものだったんだ。あんま認めたくないけど。
・・・ガウリイが飲んでるときで、本当に良かった。普段くらげなくせに、つまらない事は案外覚えてるもん、こいつ。

では、リーニスは。ガイリアは。この世界に住む総ての存在は。
『あたしたちの世界』からすれば、鏡に映る幻のようなものなのだ。
・・・リーニスが怒るのも当然だ。
自分たちがいきなり『幻』だと言われたら、誰だって不快なものだろう。

「なあ、リナ・・・こんな話、知ってるか?おとぎ話なんだけど。」
唐突に、ガウリイがこんなことを言った。

「どっかの国のエラい人が、ある日、自分が蝶になる夢を見たんだ。で、朝起きてから考えた。
『本当の自分はあの蝶で、今のこの人生は、その蝶の見てる夢なんじゃないか』って。
・・・・俺たちも、同じようなものかも知れんよな。」

そうかも知れない。
あたしたちにとっては『幻』でも、彼らには紛れもない『現実』なのだ。
むしろこの世界から見れば、あたしたちの方こそ『幻』なのだ。

「でもガウリイ、よくそんな話知ってたわねえ。」
「ああ。まだ小ちゃい頃、寝る前になるとばーちゃんが、いろんな話してくれたんだ。
あとどんな話があったか、全然覚えてないんだけど。」
「あんたの少ない頭でも、たまにはメモリー機能が働いたりすんのねえ。」
あたしがそう言って茶化してみると、ガウリイは不意に遠い目をして、
「何だか、考えさせられたんだよなあ。・・・まだ一人で旅してた頃は、特によく考えた。
お前と出会ってからは、すっかり忘れてたんだけど。」
えらく意味深な台詞を吐いた。
あたしは「どーいう意味じゃいっ」って突っ込もうとしたけど、結局何も言わなかった。
・・・その時のガウリイの瞳が、妙に悲しげに見えたから。

リーニス、あの後どうなったかな。
・・・まあ、そんなことくらいで、こいつがどーにかなるとは思ってないけどね。
何度も言ってるよーだけど、こいつは“もう一人のあたし”なんだし。それに傍にはガイリアもいるし。

まあ、とにかく・・・具体的に動くのは、明日になってからにしよう。

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案の定、説明だらけで終わってしまいました(汗)

あ、文中に出て来る「おとぎ話」は、故事(で合ってます?)にある『胡蝶の夢』です。
ちなみに、その後の彼の台詞は、別に伏線でも何でもないです。本当に。仕掛けも引っかけもありません。本当にただの『台詞』です。
まあ、私の中にある“彼のイメージ”だと思って下さいませ。

もうすぐツリー落ちそうですね。
そうなったら、その時点から別のツリーに分けますね。まだまだ続きます。