◆-宝石に宿る伝承-朧天嶺(11/2-02:30)No.321
 ┗シリーズ再びですか。-辻斬りマリィ(11/5-16:11)No.379
  ┗習作、ですね(^^;-朧天嶺(11/5-19:53)No.380


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321宝石に宿る伝承朧天嶺 11/2-02:30

「ねえ……この宝石、知ってる?」
 蒼い髪の女性が、赤い髪の剣を眺めている男に一粒の宝石を投げてよこした。
 男は投げられた宝石を、空いている左手で受け取って、しばし眺め……女性の方へ顔を向ける。
「……こいつが……どうかしたか?」
「その宝石はね、紅の悪夢って名前がついている、珍しいルビーなの」
「紅の悪夢……って、あの曰く付きの悪魔の宝石か?」
 男は、まじまじと太陽を光りを浴びせながら、その曰く付きの宝石を見つめた。
「……しかし、どうやってこんな物見つけて来たんだ、お前は……」
 その言葉に、女性は不敵な笑みを浮かべる。
「オークションをしていたから買ってきたの。結構値が張ったのよね」
「……良く金が有ったな」
「そりゃあもう、売れ残っていた宝石だから、安く買ってきたのよ」
「そんなのに無駄遣いなんかするなよな……」
 男は呆れたが、女性のその癖には何度か助けられた事がある為何とも言えない。
 今回の事も、何かしら他に理由があるに違いないのだ。
「でも、これがないとあなたに手渡した魔力剣が本領発揮できないのよね……」
「こいつの事か?」と言って、男は足元に転がっている一振りの剣を手に取った。
 その剣は長く、帯剣できるとは思えなかった。どちらかと言えば、背負って持ち歩くぐらいの長さだった。
 そして、切っ先の腹には赤い宝石が埋め込まれており、鈍い光を放っている。
 鍔元には大きな穴が空いていた。丁度、今男が持っている紅の悪夢が入る程度に。
「……こいつのここ」と、男は鍔元の穴を指差す。
「に、紅の悪夢をはめ込むのか?」
 男の問いに女性はあっさりと、そう、と答えた。
「その魔力剣は古い文献に記されていた壊れた剣って物らしいわ」
「いらんぞ、そんな名前のモンッ!」
「話しは最後まで聞く。元々は“深紅”と名がついた魔力剣なんだけど、その力に恐怖した一人の魔道士がそれを二つに分解したのよ」
「それが……この魔力剣と、紅の悪夢って訳か……だが、それならば何故この宝石を手に入れた人間は燃えたんだ?」
 そう、紅の悪夢を手に入れた人間は全て焼死しているのだ。屋敷ごと。
「それはね、暗い場所に保管したからよ」
「……あん?」
「だから、暗い所に保管したのが間違いなの。これは光の無い部屋に置くと光と高熱を発して辺りを照らそうとするの」
「ほう……それまた厄介な代物だな」
 そう言って、男は紅の悪夢を机の上に放り投げた。
 宝石はころころと机の上を転がり、床に落ちる、という所で女性の足がそれを宙に打ち上げ……女性の手の中にすっぽりと収まった。
「ちなみに……今あなたが持っている魔力剣についているルビーなんだけどね。それ、太陽の光を収束するって伝説があるの知ってる?」
「……危険極まりない魔力剣だな、こいつは……」
 男は苦笑いを浮かべながら、その魔力剣も机の上に投げ出した。
 女性は肩を竦め、投げ出された魔力剣のぽっかりと空いた穴に紅の悪夢をはめ込む。
 そして、剣の腹で男の肩をとんとん、と叩く。
「二つの宝石が出会った時、その力は安定するのよ。ほら、使って見てよ」
 男は振り向かずに言った。
「……使ってもいいが……剣の腹で叩くのは止めろ。さっき横目で見なければ突き刺さっていたぞ」
「大丈夫、そうなったらそうなったでわたしがリザレクションで癒してあげるから」
 目を輝かせながら、女性は男に完成した魔力剣を手渡す。
 男は、仕方が無いな、と愚痴を言いながら、女性から離れて剣を振るう。
「……合い言葉はなんだ?」
「『炎よ』よ」
「わかった……炎よっ!」
 男が合い言葉を言った瞬間、光が辺りを包んだ……


 その日、この付近の人間が決して踏み込まない森の大半が、爆発で吹っ飛んだ……


「……と、言うのが、この紅の悪夢の伝説なんだけど」
 蒼い髪に透き通った淡い藍色の瞳を持った女性が、にこやかに微笑みながら、その曰く付きの宝石を隣りの男に見せた。
 女性は奇麗な刺繍が縫われたローブを着込み、手首の辺りに環の形をしたブレスレットをはめていた。
 ローブの下にどんな服を着ているのかはわからない。しかし、なんらかの服を着込んでいるには違いない。
「そんな危険な代物さっさと売り捌けばいいだろうが……」
 赤い髪をした男は苦笑いを浮かべながら、女性の話しを聞いた率直な感想を述べた。
 男は薄汚れ、何度か洗濯したのか若干色落ちしているコートを着込み、手には大ジョッキが握られていた。
 ジョッキの中に入っているのは麦酒である。
「でもねガーヴ、そんな危険極まりない代物、今の時代にほしがる大富豪がいると思う?」
「……いる訳ねえ、か」
 男――ガーヴは嘆息して、ジョッキに汲まれていたエールを一気に飲み干した。
「しかしアクアよ……そんなの手に入れてどうするつもりだ?」
 アクアと呼ばれた女性は上を見上げて……こう答えた。
「ヴァンパイアが大軍でいそうな洞窟に放り投げて逃げ出す……ってのはどう?」
「あのなぁ……その宝石と剣が揃っていればレグルス盤でできるかもしれんが、その宝石一個では炎を灯すしかできないんだろ?」
「あ、そうか……じゃ、油が詰まった樽かなんかを蹴落として、その後にこの宝石を投げ入れて、入り口を爆砕して塞ぐ」
「……お前な……高い金払ってそれだけかっ!?」
「だって……他に使い道があるの?合い言葉言っても発動してくれないこの宝石」
「……とりあえず、一度破壊してジュエル・アミュレットにするか?」
 そのまま売れば、金になる……とは実は思えない。雑な作りで形も結構不格好なのだ。宝石としては、値が張らないのである。
 その為、ジュエル・アミュレットとして売った方が金になる、と判断したのだ。
 だが、アクアは思案顔で何かを考えている様子。とりあえず、ジュエル・アミュレットにするつもりはないようである。
「……そうだっ。ガーヴ、ちょっとあなたの剣、借りるよ」
「!てめ待てっ!」
 ガーヴは慌てて自分の足元にある自分の剣を手繰り寄せようとした。が、手は空しく宙を弄るだけ。
「安心しなよガーヴッ!私がこの剣を鍛えてあげるからっ!」
 アクアの声がした方を見ると、そこにはガーヴの剣を背負ったアクアの姿がっ!
「待てっ!保証はあるんだろうなっ!?」
 ガーヴの問いに、しばし、二人だけの沈黙が訪れる。そして……
「…………たぶんっ!」
「その沈黙はなんだあっ!」
 ガーヴは力の限り絶叫するが、アクアは聞いていなく、そそくさと人込みの中に消えて行ってしまう。
 はあ、とガーヴはため息をつき、ガーヴはエールを注文した。

 本日のガーヴが飲んだ量、ジョッキ142配分は、そこの酒場に新記録を樹立させたという。それ以来、その酒場ではその記録を超える酒豪には、金額は半額にする、という事をしているらしい。
 余談だが、一週間した後、ガーヴの元に、刃が見事なまでにねじれ紛った剣と、「探さないでください」と書かれたアクアの手紙が届けられたとか、届けられていないとか……
 少なくとも、その一日後にアクアは見つかり、ガーヴにきっちりお灸を据えられた事はここに記しておく。


 はい、新作ですう。極一部でラストの作品になりうるかなぁ、などと思われるかもしれませぬが……
 まだまだ元気です。ネタが浮かぶ限り、書きましょう。

 今回は思わせぶりですねぇ。最初、こいつら……と思っておいて、これですから(笑)
 しかし今回はアクアがハイテンションになりましたね(^^;
 書いてる途中で暴走してしまったんです(^^;ラジオドラマ版シルフィールみたい(苦笑)
 しっかし……なんか今回のアクアに妙に親近感を感じるのは何故だ?(笑)
 とりあえず、某お山のやり取りに似ている、と言うのは秘密、という事で(おぃ)
 次回作は、シリアスに戻ります。
 やはりシリアスの方が私は好き……最近水野○先生に影響されてる感じがする(^^;

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379シリーズ再びですか。辻斬りマリィ 11/5-16:11
記事番号321へのコメント
読みました。

なんやえらいハイテンションな感じですが、面白かったですよ。
酒豪ガーヴ様!!・・うーん、どう考えても全身アルコール漬けですが・・・(汗)
ハイテンションアクア!!・・いったいなにをして剣を曲げちゃったんでしょう?

・・てなわけで、これからも頑張ってくださいね。
でわでわ。

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380習作、ですね(^^;朧天嶺 11/5-19:53
記事番号379へのコメント
>読みました。
 どもっ、習作みたいな作品をお読みいただきありがとうございます(^^;
 やっぱ読み返したくない作品だったりします……ローテンションな作風ですからねえ(^^;
 新しい作風に挑戦しているんですけどねえ……
 物語としては最低……ですね。

>なんやえらいハイテンションな感じですが、面白かったですよ。
 はははははー……頭がハイテンションだった物で(^^;
 ですが、そう言っていただけると幸いです。

>酒豪ガーヴ様!!・・うーん、どう考えても全身アルコール漬けですが・・・(汗)
 きっと、100%お酒の成分を中和できるんですよ、彼は(^^;
 魔竜王の力かなんかで。

>ハイテンションアクア!!・・いったいなにをして剣を曲げちゃったんでしょう?
 さあ、何をしたのでせう?たぶん溶かしていた時に捻じ曲げちゃったんでしょう。

>・・てなわけで、これからも頑張ってくださいね。
>でわでわ。
 頑張れればよろしいのですが……(^^;
 応援ある限り、頑張らせていただきます。以後よしなに。

 それでは、また次の作品で……次は長編か?