◆-「けんか」ガウリナです-丸丸(11/28-00:02)No.658
 ┣Re:「けんか」ガウリナです-祝もとむ(11/28-13:44)No.669
 ┃┗祝もとむさま、どうもです-丸丸(12/2-00:10)No.720
 ┣Re:ちぃーす 丸丸さん♪-八極(12/2-17:09)No.726
 ┃┗八極さま、ありがとうございます-丸丸(12/3-00:52)No.730
 ┗「さーびす」またガウリナです-丸丸(12/3-23:53)No.740
  ┗Re:「さーびす」またガウリナです-朱夏(12/4-12:05)No.748
   ┗朱夏さま、ありがとうございます-丸丸(12/5-00:14)No.760


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658「けんか」ガウリナです丸丸 E-mail 11/28-00:02

「けんか」


「しつっこいわね! なんでこのあたしが、あんたの言うことを一々聞かなきゃ
いけないわけ!?」
「たまには保護者の忠告に従え!」
「“自称”でしょうが!!」
 リナとガウリイの口喧嘩は、小一時間も続いていた。
 夜中に盗賊いじめに行こうとしたリナを、ガウリイが止めたのが発端だった
……ようだ。ようだ、というのは、すでに二人とも原因など忘れてしまった
からである。
「だいたい誰も保護者になってくれなんて頼んでないわ! あんたが言ってる
だけでしょ!! なのに言うことを聞けだなんて、何様のつもり!?」
 リナは完全に理性を手放していた。相手の気持ちも自分の気持ちも考える
余裕がなく、ただ自分を守るために相手を傷つける言葉を探す。
 ガウリイも、リナがいつになく苛ついていることに気づいていた。
 いつもなら言い争いになったって、リナのスリッパか攻撃呪文を喰らって
みせれば、そこでケンカは終わるのに。
 リナの気持ちが掴めない。それがガウリイを焦らせた。
「お前さんを心配してるんだろ? いい加減落ち着けよ」
「それこそ大きなお世話! ガウリイがいようがいまいが、あたしの人生に
なんら変わりはないんだから!!」
 ガウリイがリナを宥めようとすればするほど、リナは苛立つ。なぜこんなに
心が荒れているのか、リナにもわからない。
「心配してる? そうね、他の女の子ならそう言われれば涙を流して喜ぶんで
しょうね。だけどあたしは違うわよ! そんな言葉に乗せられるもんですか!!」
「何だよそれ? 俺がいつそんな意味で……」
「乗せられないって言ったでしょ!! あんたもさっさと諦めて、新しい娘を捜し
に行ったら? あたしは全然構わないわよ」
 言って、リナは一瞬身体を竦めた。殴られると思ったのだ。それほど彼の顔
は険しかった。
 だがガウリイは黙ったままで、身じろぎ一つしない。
 それが一層リナを激情させた。
「そっか、あたしと旅してたんじゃそーゆーワケにもいかないわよね。
わかったわ。今日であたしたちの旅は終わり。短い間だったけど、保護者役
ご苦労様」
 そう言ってひらひらと手を振ってみせた。今度こそ殴られるだろうと、頭の
どこかで期待していた。
 だがやはりガウリイは手を挙げず、リナを厳しい目で見つめて呟いた。
「本気で言っているのか?」
 その瞳に浮かんでいるのが怒りなのか悲しみなのか、リナには判らなかった。
だが、圧倒されながらも後には退けなかった。
「……本気、って言ったら?」
「そうか」
 ガウリイは背を向けると、部屋を出ていった。
 リナは立ちすくんだまま、静かに閉じられたドアを凝視していた。爪の痕が
残るくらい拳を堅く握りしめて、ただ睨み続けた。

 ガウリイは夜中に宿を発ったと、翌朝宿の主人が教えてくれた。
 リナは「そう」とだけ言った。
 一人で食事を摂って一人で宿を出て、一人で街道を歩く。
 これが普通なんだ。そう思った。あたしはもう子供じゃないんだから、
一人旅くらいできる。かつて、そうだったように。
 前だけを見つめて歩きながら、リナはその時の気分を思い出そうとしては
失敗ばかりしていた。

 はた、と足が止まる。
 ……これからどこへ行こう?

「これからどこ行くんだ?」
 そう言うのは彼の役だった。
 リナはいつもそれに、(時には彼の頭をはたきながら)明確に答えた。たまに
目的地が決まらなくて、テキトーに方角を指し示すだけの時もあったけど、
彼はリナについてきてくれた。

 リナは少しだけ俯くと、また歩き出した。どこへ向かっているのか自分でも
わからなかった。

 ガウリイが去ってから3日経った。
 リナは相変わらず彼の不在に慣れなかったが、少なくとも今夜こそは熟睡
できそうだと期待した。
 宿の主人が嬉しい話を教えてくれたのだ。この辺りに盗賊のアジトがあると。
 月が昇る頃、さっそくリナは宿を飛び出した。
「んふふ。待っててね、あたしのお宝ちゃぁん」
 にんまりと口の端を歪めながら、まだ見ぬ犠牲者たちに心から感謝した。
ちらりと金髪の男が意識を掠めたが、無視を決め込む。
「第一、ガウリイがいたら、絶対止めようとするにきまってるんだから。
まったく、人の趣味をなんだと思ってるわけ!?」
 そう呟いた時点で無視するのに失敗しているのだが、リナは気づいていない。

 盗賊のアジトはあっさりと壊滅した。
 あんまりにも手応えがなさすぎたので、リナは思わず盗賊の首領を捕まえて
「あんたねえ、もーちょっと真面目にやんなさいよ! 夜中にわざわざ出てきて
やったあたしの身になってみたらどうなの!?」と無茶な事を言ったが、首領は
すでに気を失っていたので弁解のしようがない。
 リナは溜息をつくと、やむなくお宝漁りに精を出した。収穫はそこそこ、と
言ったところだ。
「あったく、こんなんじゃストレス解消にもなんないわよ……」
 ぶつぶつ言いながらお宝を入れた荷袋を背負うと、リナは呪文を唱えた。
「レイ・ウィング!」
 たちまちリナの身体が上昇し、周囲の木々よりも高い位置に出た。
「さっさと帰るか。夜更かしはお肌の大敵だし……」
 そう言って宿を目指そうとしたリナの視界の隅で、何かが光った。
 なんだろうと顔を向けると、小さな湖が見えた。さっきの光は月光が湖面に
反射したものだろう。
 それ以上は何も見えなかったのに、急に心が騒いで、リナは湖に向かって
飛んだ。
 近づくにつれ、動悸が高まっていく。
 木々に囲まれた静かな湖。その水面で動いている金色の影。魚じゃない。
あんなに綺麗な魚がいるもんか。
 リナは大きく目を見開きながら、ゆっくりとそれに向かって降りていった。
 それも、リナの気配に気づいたのか、泳ぐのをやめて空を見上げた。
「リナ?」
「ガウ……」
 彼の名を唇に乗せた途端、リナの瞳からぽろぽろと涙がこぼれた。
 ガウリイの驚く顔が目の端に映ったが、誰よりもリナが一番びっくりした。
まさか自分が泣くなんて。
 あわてて拭おうとして、つい気が散じた。
 たちまち呪文の集中が解けて、リナは湖に落ちた。
「お、おいリナ!」
 ガウリイもあわてて水中に潜ると、もがくリナを捕まえてどうにか水面へ
浮上する。
「何してんだお前は! 溺れたいのか!?」
「な、何してって……あたしのセリフよ……」
 こほこほ咳き込みながらリナは目を開けた。その途端、思ったよりすぐ近く
にガウリイの顔があることに気づいて、かあっと頬が熱くなる。
「ちょ、なに抱きしめてんのよ! 離せ!」
「こら暴れるな!」
 じたばたするリナを押さえつけようと、ガウリイが抱きしめる腕に力をこめ
た。これ以上の抵抗は無駄だと悟って、リナは暴れるのをやめる。
 少しの間、2人とも無言だった。
 ガウリイはリナの顔を覗き込んでいた。リナは目を合わせたくなくて、視線
を逸らす。
「……で? さっきの質問に答えなさいよ」
「へ? さっきって?」
「こんな所で何してたわけ?」
 水を吸った服が重い。やむなくリナは体重をガウリイに預けた。小さな頭を
広い肩にこてん、と乗せる。顔を見られないよう、反対側を向いて。
「見りゃわかるだろ。水浴び」
「なんでこんな所にいるのよ。あんた……」
 あたしの元から離れたんでしょ。なんでこんな近くにいるの。なんで会える
わけ?
「いや、道に迷ってさ。森の中さまよってたんだ」
 にぱっとガウリイが笑うのを感じた。暖かいものが、密着した肌を通じて
リナに流れ込む。
「でもびっくりした。顔上げたらリナが降りてくるんだもんな。天女さまかと
思った」
「ば、ばかなこと言ってんじゃないわよ」
 また顔が赤くなった。よかった、そっぽ向いてて。気づかれずに済む。
「そう言うリナは…て、だいたいわかるけどな。怪我とかしなかったか?」
 ガウリイの右手がリナの背中を撫でた。何度も何度も。
 湖水は冷たいし、濡れた衣服が肌に張りついてうっとおしいけど、ガウリイ
の手が触れただけでそんなことはどうでもよくなった。なんだかこそばゆくて
リナは自然と笑みを漏らした。
「宿は決まってるのか?」
 その言葉で、リナは自分たちがケンカしていたのを思い出した。
 せっかく会えたのに。
「……近くの村に」
「そっか。もう一人くらい泊まれるよな?」
「え。……」
 リナは顔を上げた。ガウリイと目が合う。お菓子を見つけた子供みたいな瞳。
「ごめん、リナ。俺が悪かった」
 返答に窮する。だってあんた、笑ってるじゃない。どこが「悪かった」なの
よ。
「だから一緒にいよう。離れてる間、お前のことばかり考えてた。同じ心配
するなら、そばでする方がずっといい」
 きらきら。水に濡れた金髪が月の光を浴びて輝く。きらきら。青い瞳が輝く。
あたしも、こんな風に輝いているんだろう。今。
 リナはガウリイの首に腕を回して、ぎゅっと力を込めた。

 ガウリイはリナを抱えたまま、岸に向かってゆっくり泳ぎだした。リナも
身体を委ねることを拒まなかった。
「それにしても、よくあんな簡単に謝ったりできるわね。プライドってもんは
ないの?」
「揚げたイモなんかとリナを引き替えにできるかよ」
「それはフライドポテトでしょおがっ!」
 殴るのは体勢的に無理があったので、リナはガウリイのこめかみに頭突きを
かました。
 ぶくぶく。ガウリイはリナもろとも沈みかけて、あわてて浮上する。
「ぷはぁ! いってえなあ、何するんだ!」
「あんたこそ勝手に沈むんじゃないわよ! あたしまで溺れさす気!?」
「泳いでる最中の人間にヘッドバットしといて、そーゆーこと言うか普通…」
 ガウリイはげんなりしてみせたけど、すぐにそれは笑顔に変わった。
 更に言い募ろうとしたリナも、つられてくすくす笑い出した。久しぶりに
感情と行動が足並みを揃えたので、とても心地よかった。
 なぜ3日前、あんなにイライラしてたのかはもう思い出せないけど、きっと
大丈夫。今夜のことを忘れない限り。
 満月みたいに明るい月と、静かな湖と、ガウリイの輝き。
 ……え?
「ね、ねえガウリイ……あんた、まさか今、す、すっぱだかなんじゃ……」
「リナは服着たままで水浴びするのか?」
「ななななに考えてんのよこの変態!! 離れろ! 今すぐっ!!」
「なに言ってんだよ今更。ほら、もうすぐ岸に着くぞ」
「ばかあぁぁっ!!」


********************
どうも、丸丸です。
「夜中の水浴び」というビジュアルを基に書いてみました。
ところが前半の辛いこと辛いこと。「ケンカさせてすまん! けど、そうせんと
湖に辿り着かへんねん」と謝りながら書いたのですが、何度も挫折しかけまし
た。
そのかわり湖に来た途端すらすら話が進んで、自分でも驚きましたが。
やっぱりガウ&リナは仲良くないとね。
では、お読み下さってありがとうございました。

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669Re:「けんか」ガウリナです祝もとむ E-mail 11/28-13:44
記事番号658へのコメント
こんにちは!!祝もとむです!!
覚えてますか?覚えてますか?(何を?)
(意味不明だ・・)

「けんか」読みました!!
いやんっガウリイに「天女みたいだった・・・」なんて
言われちゃったら・・・・
じゅるっ
はっ!?よだれがぁっ(気にしないでください)
しかし・・・・ガウリイが素っ裸で水浴びとは・・・・・
にやり・・・(怪しい笑い)

やっぱりリナとガウリイは離れちゃいけませんね♪
あっ運命の恋人通しってやつですか!?(何言ってんだ・・?)
はっはっはっ(?)
でもたまには「けんか」もいいかも(はぁと)何時もと違うガウリナが
見れてよかったですぅっ!!
うんうん。
それでわぁ。

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720祝もとむさま、どうもです丸丸 E-mail 12/2-00:10
記事番号669へのコメント
 こんにちは、丸丸です。ご感想ありがとうございます。

>こんにちは!!祝もとむです!!
>覚えてますか?覚えてますか?(何を?)
 覚えてます、覚えてます。某所でも感想をありがとうございました。
 今回の話はヤバげでなかったので、こちらに投稿させていただきました。
(どーゆー基準なんだろう…いや、なんとなく…)

>いやんっガウリイに「天女みたいだった・・・」なんて
>言われちゃったら・・・・
 ガウリイって、こッ恥ずかしい台詞を平気で言いそうですよね。
 私の妄想するガウリイは、照れも計算もせずに甘い言葉を囁いちゃうような人
です。ってそれって天性の女たらし? まあ、リナにしか言わないんだからいいか。

>しかし・・・・ガウリイが素っ裸で水浴びとは・・・・・
>にやり・・・(怪しい笑い)
 おいしいですよね(笑)
 しかも裸で密着っすよ密着! かたやリナは水に濡れた服が肌にぴったり
張り付いてるんですよ! こんなもん、妄想するなと言う方が間違ってる!!
 ……自分の書いたネタでそこまで妄想してどうする、私!?

>やっぱりリナとガウリイは離れちゃいけませんね♪
>あっ運命の恋人通しってやつですか!?(何言ってんだ・・?)
 まったくです! この2人はいわばアンコと餅にも等しい! 両方が揃ってこそ
おいしいアンコロモチになるんです! って、どーゆー例えだ。
 しかし「白銀の魔獣」でもそうですが、リナと離ればなれになった時って
ガウリイは何してるんでしょうね。

>でもたまには「けんか」もいいかも(はぁと)何時もと違うガウリナが
>見れてよかったですぅっ!!
 そうですね。けんかも、たまになら愛の活性剤! これで更に2人の仲が深まる
んです!
 まあ包容力のデカいダンナですんで、滅多に大喧嘩にはならないでしょうけど。

 ではでは、どうもありがとうございました。

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726Re:ちぃーす 丸丸さん♪八極 12/2-17:09
記事番号658へのコメント
どうも丸丸さん。
久しぶりに読みまくれ2を見てみたら丸丸さんの名前を発見して
「しまった、見過ごしちまった」などと思ってしまいました。
良い作品ですね(ガウリナ)だし♪

>「しつっこいわね! なんでこのあたしが、あんたの言うことを一々聞かなきゃ
>いけないわけ!?」
>「たまには保護者の忠告に従え!」
>「“自称”でしょうが!!」
それを言っちゃあお終いでしょう・・・・哀れ自称保護者

> いつもなら言い争いになったって、リナのスリッパか攻撃呪文を喰らって
>みせれば、そこでケンカは終わるのに。
それはそれで問題が有るような。
ファイトだ!ガウリイ(笑)


> 一人で食事を摂って一人で宿を出て、一人で街道を歩く。
此処ら辺読んでて辛かったっす。
これからがハッピーだと言い聞かしてました。

> そう呟いた時点で無視するのに失敗しているのだが、リナは気づいていない。
確かに・・良いですねこの無意識な部分が
無条件でガウリイを必要としている感じで

> 木々に囲まれた静かな湖。その水面で動いている金色の影。魚じゃない。
>あんなに綺麗な魚がいるもんか。
確信してますね
やっぱり最後は絆の深さだな良かった良かった。

喧嘩もあったけど最後は仲直りしてお終いと
ホッとしましたよ まさかこのままなんて思って一人でガーンとしてました(苦笑)
面白かったです。
次も楽しみにしてマフ。
それでは

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730八極さま、ありがとうございます丸丸 E-mail 12/3-00:52
記事番号726へのコメント
こんにちは、丸丸です。うきゃ〜感想ありがとうございます♪

>良い作品ですね(ガウリナ)だし♪
ありがとうございます。やっぱガウリナですよ! つーか、私の中ではガウリナは
全部良い作品(笑)

>>「“自称”でしょうが!!」
>それを言っちゃあお終いでしょう・・・・哀れ自称保護者
 これはもう、そんな事言ったガウリイが悪いです。断言。哀れむ余地なし!
 って、自分で書いといてそこまで言うか。

>> いつもなら言い争いになったって、リナのスリッパか攻撃呪文を喰らって
>>みせれば、そこでケンカは終わるのに。
>それはそれで問題が有るような。
 問題有り有りですね(笑)
 私の妄想ガウリイは、リナのツッコミをわざと喰らってます。超一流の剣士なん
だから避けられそうなものだけど、あえて避けないところが愛♪

>> 一人で食事を摂って一人で宿を出て、一人で街道を歩く。
>此処ら辺読んでて辛かったっす。
>これからがハッピーだと言い聞かしてました。
 書いてて私も辛かったです。この辺、改行が激しいのは、「書きたくねーよぉ」
という私の叫びがもろに出てるせいです。

>> そう呟いた時点で無視するのに失敗しているのだが、リナは気づいていない。
>確かに・・良いですねこの無意識な部分が
>無条件でガウリイを必要としている感じで
 隣にいるのが当たり前ですもんね。
 私、NEXTで特に好きなシーンは、ガウリイがさらわれてリナが泣くシーンなん
です。むっちゃ可哀想ですけど、リナの想いが溢れ出てますよね。
 
>やっぱり最後は絆の深さだな良かった良かった。
 仲直りするシーンがもう書きたくて書きたくて、この辺は最高速度で突っ走って
しまいました。

>喧嘩もあったけど最後は仲直りしてお終いと
>ホッとしましたよ まさかこのままなんて思って一人でガーンとしてました
 喧嘩したまんまでは終われません! それにハッピーエンドの方が私も楽しいです
し。
 この後、岸に上がる際のゴタゴタを考えるとますます楽しいです(笑)……が、
それは完全な妄想小説になってしまうので世には出せません(笑)

 それでは、どうもありがとうございました。

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740「さーびす」またガウリナです丸丸 E-mail 12/3-23:53
記事番号658へのコメント
『さーびす』 丸丸


「へえ、これはなかなか……」
「上物でしょ? 高純度、高品質の粒揃い。もちろん効き目も抜群よ」
 リナは愛想笑いを浮かべながら相手の反応を測った。
 今、リナがいるのは魔法道具屋だ。店主がリナの持ち込んだ宝石の護符を
ためつすがめつしている。
 それにしても若い店主ね。リナは意外に思った。
 多分、年齢はガウリイとそう変わらないだろう。外見には随分と差があるが、
これは比べる方が悪い。一般的な基準で見れば、目の前の青年だって十分に
ハンサムと言っていいレベルなのだから。
 最近男性を観察する時につい、ガウリイを思い出してしまう。それに気が
ついて、リナは少し赤くなった。あわてて思考を元に戻す。
 そう、若い。魔法道具ってのは鑑定が難しいから、たいてい年期の入った
おっちゃんおばちゃんが店番をしているものだけど。よほど才能があるのか、
何かの事情で急に店を継ぐことになったか。後者なら、上手くいけばボレる
かも。
「そうですね、全部でこんなところでどうです?」
 店主が挙げた数字は、リナの予想を3割ほど上回っていた。
 こりゃ、後者かな。
「え〜、も少しなんとかなんないの? 仮にもリナ=インバース謹製なのよ?」
「ですから、その分を含めてこのお値段ということで。これでも相場よりは
お高いつもりですよ?」
 と言ってにっこりと笑う。リナは相手を見くびっていたことを悟った。
 やるな、この兄ちゃん。

 半時ほどの交渉の結果、なんとか双方折り合いがついた。
「それでは、こちらが代金です」
 受け取ろうとして伸ばした手を、店主はぎゅっと握ってきた。
 その手を振り払って、リナが冷たい視線を向ける。
「なんのつもり?」
「失礼。噂に名高いリナさんにお会いできたので、感極まってしまって。宜し
ければ、夕食をご一緒願えますか?」
「あんた、来るお客をいちいちナンパしてるわけ? この店も長くないわね」
 ぷんとリナはそっぽを向いた。
「そう言わず。……憧れていたのは本当です。あなたは当代随一の魔道士です
からね。この店の主として、後学のためにお聞きしたいことは山程あります。
この機会を逃す手はありませんよ」
 そう言ってリナを見つめる。その顔は先程の営業スマイルと異なる、真摯な
ものがあった。
 ま、いっか。結構儲けさせてもらったことだし。
「……食事だけよ?」
 店主は破顔して、ケンツと名乗った。

「夕食は一人で食べてね。あたし、約束があるから」
 鏡台の前に座って髪を梳かしながら、リナが宣言した。
 ベッドに寝ころんでいたガウリイは、ぽけっとした顔でリナを見た。
「約束? 知り合いにでも会ったのか?」
「ううん。ナンパされたの」
 鏡の中のリナが、得意気に笑ってみせた。どーだ!ってなものだ。
 ガウリイは訝しげに、
「リナをナンパぁ? ……やっぱ田舎だよな、ここ」
「何よ、それ」
「毎日が平凡すぎて、よっぽど刺激に飢えてるんだろうなってぐはっ!」
 振り向きざま投げたヘアブラシがガウリイの頭に直撃した。
「あたしゃサーカスの珍獣かい!ったく。あ、ブラシ返してよ。まだ済んで
ないんだから」
「だったら投げるなよ……」
 ぶつぶつ言いながらガウリイは起きあがると、リナにブラシを手渡した。
「で、どんなヤツだ? その刺激に飢えてる男は」
「気になる?」
「そりゃ、普通の男がお前さんを誘うはずがなし、といって普通でない男なら、
お前さんの呪文が炸裂するのは目に見えてるだろ? その前に止めに入らない
とな」
「どーいう意味じゃあっ!」
 すぱこーん、と受け取ったばかりのブラシでガウリイをしばく。
「いてーっ! 同じ場所ぽんぽんどつくなよ、ハゲたらどーすんだ!」
「その立派な金髪使ってカツラでも作ればいいでしょ!!」
 痛そうに頭を押さえるガウリイを鏡越しに見ながら、リナの口許が少し緩ん
だ。
 一応心配してくれてるみたいだし、これで勘弁してやるか。
 リナはブラッシングを再開した。本人は意識していないが、楽しげな雰囲気
が背中からも伝わってくる。
 ガウリイはつまらなそうに、どさりとベッドに倒れ込んだ。
「ちょっと、それあたしのベッドよ? あんまり乱さないでよね」
「わるいわるい。…あんまり飲み過ぎるなよ。遅くなったら迎えに行くぞ」
「子どもじゃあるまいし」
 似たようなものかもしれない、という考えがふと浮かんで、リナは目を伏せ
た。

 ケンツとの食事は思ったより快適だった。
 店の雰囲気は良かったし、メニューも豊富で味も上等。ケンツは話題豊富な
上、それなりの見識を持っており、話し相手に最適だった。
 だから食事を終えて酒場に誘われると、リナはすぐに応じた。
 次の店も落ち着いた雰囲気だった。大衆酒場と違い、酔っぱらって暴れたり
喧嘩するような連中は見当たらない。ガウリイと行く店はそんな客ばかりだ。
 リナはカクテルを口に含みながら、こういう店にガウリイと入る自分を想像
してみた。それほど違和感はないと思う。そんな日は来ないだろうけど。
「リナさん? どうしました?」
「え……あ、ごめん」
 少しの間物思いに耽っていたようだ。酔ったのかもしれない。
「あまりお強くないみたいですね。そろそろ出ましょうか?」
「ううん、だいじょうぶ。タダ酒だもん、何杯だっていけるわ」
「はは。リナさんらしい」
 ケンツは冗談ととったらしく軽く笑ってみせた。夕食の時もそうだったが、
勘定は気にならないのだろうか。
「でも、あまり魔法関係の話をしてないわね。いいの?」
「構いません。リナさんの話は、それ以上に楽しいですから」
「やっぱり、ただのナンパ?」
 リナがくすりと笑ってみせた。
「いいえ。僕は本気ですよ」
 そう言ってケンツは、リナの手に両手を伸ばした。
 咄嗟にリナは手を引こうとしたが、その前に別の手がそれを握った。
「お待たせ、リナ。そろそろ帰ろうか」
 いつ現れたのか、リナの手を取ったまま、ガウリイは優しく笑ってみせた。

「ガウリイ……」
 リナはガウリイを呆然と見上げた。
 急に店内の光景が色褪せた中で、ただ一人、ライトが当たっているように
見える。それくらいガウリイの笑顔は眩しかった。
 …あれ、あたし、見惚れてる?
「あなたがガウリイさん?」
 ケンツが席から立って、ガウリイに右手を差し出した。
「はじめまして、ケンツです。今日はリナさんのおかげで楽しい時を過ごせ
ました。できればもう少しこうしていたいのですが?」
「ガウリイだ。こちらこそリナが世話になったみたいで。けど、夜も遅い。
また明日にしてくれないか」
 ガウリイは軽く握手して、すぐに離した。
「さ、リナ」
 右手を小さな肩に添えて、左手をそっと差し出す。
 リナは操られるようにガウリイの手に左手を置くと、ゆっくり立ち上がった。
紅い瞳には先程からガウリイしか映っていない。
 ガウリイもリナの瞳を見つめながら、
「だいぶ飲んだみたいだな。歩けるか?」
「あ、う、うん」
 一歩足を出して、よろめいたところをガウリイに支えられる。確かに酔った
らしい。でも、酔ったのはお酒にじゃなくて。
「……ガウリイさんはリナさんの保護者だとお聞きしましたが。ずいぶんと
大切になさっているようですね?」
 からかうようなケンツの言葉に、リナの酔いが一気に醒めた。
 確かにそう話した。けど、今だけは思い出したくなかったのに。
 ガウリイはケンツの方に向き直ると、軽い口調で、
「リナが言ったのか。珍しいこともあるもんだ。いつも嫌がるのに」
 ……わかってるなら言わなきゃいいじゃない。胸の内でそっと愚痴る。
 突然ガウリイがリナの身体を抱き上げた。
「…んにゃ!?」
「ほんとは、ご覧の通りの関係」
 笑いながら、惚れ惚れするようなウインクを一つ。
 それを別れの挨拶に代えて、ガウリイはリナを抱きかかえたまま店を出た。

 リナは呆然としていたが、すぐに真っ赤になって暴れだした。
「やだ、ちょっと、降ろしてよ!」
「お前さん、歩けないんだろ? だったらこの方が早い」
「だってこんなの、誰かに見られたら…!」
「誰が見るんだ?」
 確かに夜も遅い上、さっきの店の位置が繁華街から離れていた事もあって、
通りに人の気配はなかった。
 それを確認したからか、暴れたせいでアルコールが回ったのか、リナはじき
おとなしくなった。他にも理由はあったが、恥ずかしいので気づかないふりを
した。
 ガウリイの足音だけが通りに響く。いつもより少しゆっくりめのテンポ。
「…よく店の場所がわかったわね」
「あちこち訊いて回ったんだ。あとは勘」
 ヒマなのかマメなのかタフなのか、よくわからない。一番わからないのは、
そんなことで嬉しくなる自分だ。
「ほんとに迎えに来るとは思わなかった」
「お前さん、酔うと警戒心が薄れるからなあ。こっちとしては心配でしょうが
ない」
 どき。リナの胸が高鳴る。
 そっと顔を上げて、ガウリイの横顔を覗き見た。
 真っ暗な道を歩いてるんだから、足下に注意くらいしてなさいよ。
 なによ、楽しそうな顔して。
「…さっきの…」
 緊張で声が掠れた。あわてて口を噤むと、もう一度言い直す。
「さっきの、ご覧の通りって、あれ……」
「あれ、どんな関係に見えたんだろうな」
 にこにことガウリイが笑う。朝食のメニューをめくる時と同じ笑顔だった。
 なあんだ。リナは溜息をつきかけて、あわてて飲み込む。
 こんなの、いつものことじゃない。ガウリイの言葉に喜んだり落ち込んだり、
浮かれたり失望したり。なんだか馬鹿みたいだ。
「そうね。仲の良い保護者と子どもに見えたんじゃない?」
 目を伏せて呟いた。どうだっていいや。
「そうか、もう少しサービスしてみせれば良かったかな。こんな風に」
 そう言ってガウリイは、リナの頬に唇を寄せた。
「な、なっ……」
「な? お前さん、警戒心が薄れてるだろ?」
 ガウリイが悪戯っぽい笑みを浮かべた。
 リナは真っ赤になったまま、喋ることもできない。心臓の音がどんどん
大きくなって破裂しそうだ。
 ガウリイはリナの顔を覗き込んで、
「まだ足りないか?」
「ば……」
 ばかものおおお!!! と叫ぼうとしたが、リナの口から言葉は出なかった。
 なぜなら、ガウリイのサービスが始まったので。


********************
ガウリイにあの台詞を言わせるのが目標でした。
しかし、こんなオチになるとは思わなかった。酒場を出た時点で終わる筈じゃ
なかったっけ? 筆が滑るとはこーゆーのを言うのでしょうか。
あと、ケンツはただのアテ馬です。オリキャラなんてこんなもんよ(笑)
とりあえず、お読み下さってありがとうございました。

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748Re:「さーびす」またガウリナです朱夏 12/4-12:05
記事番号740へのコメント
初めまして、隠居生活を始めた朱夏ともうします。
きゃ〜きゃ〜読みました。
ガウリイが、ガウリイが・・・・
いいですね、やっぱり。
ケンツくんも少しかわいそうですが、二人のために泣いてもらいましょう。
あ、今授業中なので、帰ります。


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760朱夏さま、ありがとうございます丸丸 E-mail 12/5-00:14
記事番号748へのコメント
>初めまして、隠居生活を始めた朱夏ともうします。
 はじめまして、丸丸です。ご感想ありがとうございました。

>きゃ〜きゃ〜読みました。
>ガウリイが、ガウリイが・・・・
>いいですね、やっぱり。
 今回、えらくガウリイが格好良いですねぇ。私も驚きました。
 私がガウリイに惚れ込んでるものですから、どうもクラゲな面やマヌケな面を
書けないんですよ。そーゆーとこも可愛くって好きなのになあ。

>ケンツくんも少しかわいそうですが、二人のために泣いてもらいましょう。
 仕方ないですよ。リナはガウリイのものと天地開闢の時から決まってるんです
から!(おいおい)
 ほんとはリナがヤキモチ妬く方が好きです。女の子らしくて可愛いから♪

 ではでは、どうもありがとうございました。