◆-完結できたら、ほめて(笑)-もおきんるい(12/5-17:46)No.767
 ┣Re:完結できたら、ほめて(笑)-ティーゲル(12/5-20:52)No.770
 ┃┗Re:完結できたら、ほめて(笑)-もおきんるい(12/8-01:54)No.795
 ┣完結できたら、ほめて(笑)2-もおきんるい(12/6-10:45)No.779
 ┣完結できたら、ほめて(笑)3-もおきんるい(12/7-16:52)No.789
 ┣完結できたら、ほめて(笑)4-もおきんるい(12/10-06:19)No.818
 ┣完結できたら、ほめて(笑)5-もおきんるい(12/14-02:46)No.860
 ┣完結できたら、ほめて(笑)6-もおきんるい(12/18-01:19)No.890
 ┣完結できたら、ほめて(笑)7-もおきんるい(12/18-13:01)No.893
 ┗完結できないままですんません(涙)-もおきんるい(1/5-23:03)No.1005


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767完結できたら、ほめて(笑)もおきんるい E-mail URL12/5-17:46

どおも、もおきんです。
ひさしぶりに、なんか書く。
「これも修行だ!」では、GO!

****************************破片


「ほお、これが本当の『アッシャーのクリスタル』ってやつか」

広い博物館の中央に、人間ほどの大きさの展示用のスタンド。
ガラスのケースの中には、無色透明のガラスの塊が収められていた。
大きさは生まれたばかりの赤ん坊位で、割と大きい。

「こうしてみると、あまりきれいなものじゃあないわね」
クリスタルなら、切断面が光に反射すると七色のベクトルで輝く。
このガラスの塊は、つるんとしていて表面がてかてか光っているだけだ。
「えーと、なになに?『アッシャーのクリスタル。代々セイルーン王室に
伝わる秘宝。どのような魔法効果があるかは不明』か」

ガラスケースを見つめる二人。
ひとりは背の高い金髪の剣士、もうひとりはちんちくりんの女魔導士だ。
5年ぶりに一般公開される魔導博物館の秘宝庫展を観に、はるばるセイルーン
までやってきたのだ。
久しぶりに再会する旧友との待ち合わせに、ここを選んだのは時間潰しに
なるだろうと考えたからだ。

「でも、まあすごいお宝よねえ〜、アメリア、一個かしてくれないかな〜」
「おい。そんな無茶本気か?」
「聞いてみるだけよ」
「・・・脅しはだめだぞ」
「・・・」
『やれやれ・・・アメリアを本気で脅す気だったか』
はあ、とため息のガウリイ。
アメリアとは、ここセイルーン聖王国の王女様だ。
それを、まるで子分のようにあしらってしまう。アメリアが普通の姫
だったら、彼女は侮辱罪で投獄されたであろう。


「もー!!こんな日に限って、会議やなんやが詰まってたりするんだから
ー!!ああ、こんな時間!!あうう、リナさんにどやされてしまうう〜」
大慌てで着替えると、窓からレイウイングで待ち合わせ場所へ飛ぼうと
した瞬間・・・

ぐらぐらぐらっ!!
建物が、地面が、大きく揺れた。
「地震?」
10秒程の短い地震だったが、飾り棚に飾ってあった本や絵皿が床に落ち、
窓ガラスにもひびが入っていた。


博物館の中も、地震で揺れた。
そして、ガラスケースのクリスタルが台から転がる。
「あ」
「いかん」
リナとガウリイは同時に飛んで、クリスタルを受け止めようとした。
が、その前に地面に落ち、粉々に砕けた。
その破片は二人に飛び散る。
無数の破片は、身体に刺さらずに・・・吸い込まれていく。
「え?」
「なに??」
その瞬間、二人の姿は消えた。



「それで、二人は消えてしまったというのですね??」
アメリアはその場を目撃した警備兵の話に、混乱する。
「あ、はい、アメリア様。私共の前から忽然と」

アメリアは消えたふたりの話に愕然とする。
まだ調査中のアッシャーのクリスタルの効果。
「どうしよう、リナさん・・・ガウリイさん」
暫くは座り込んでうつむいていたが、すっくと立ち上がる。
「くよくよしても、なにも解決しません!!さあ、なにかしなければ!」
そしてクリスタルの大きめの破片を拾い上げ、決心する。
「絶対、おふたりを探しますからね!」

ふと、破片が暖かいことに気付き、眺めると・・・
そこに、リナがいた。


あたしのからだがわれる。
破片になって、飛び散る。
どこへ?


オレのからだがくだける。
破片になって、吹き飛ぶ。
どこに?

「がうりい」

「りな」

オレの破片よ、りなのもとへいけ。
あいつを追ってとんでいけ。
あいつがこまるといけないから。
あいつがさみしいといけないから。


あたしの破片よ、がうりいをみつけて。
かれをさがしにとんでいけ。
かれがはぐれてどっかにまよわないように。
かれがしんぱいでねむらないでまっていないように。

どんな時代でも

どんなに離れていても

かならずみつける

かならずであう

きっとまたいっしょ



無数の破片は、空間を超え、時を超え・・・
散っていった。


つづくんだよ・・・(だ、大丈夫か?完結できるんか?)

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770Re:完結できたら、ほめて(笑)ティーゲル 12/5-20:52
記事番号767へのコメント
 どーも、ティーゲルというものです。完結できたらほめてと言うことは・・・・長い話になりそうですね〜
 いろんな時代や世界に飛んだと言うことはいろいろ楽しそうです♪
 短いですがでは。

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795Re:完結できたら、ほめて(笑)もおきんるい E-mail URL12/8-01:54
記事番号770へのコメント
どおも、もおきんです。

> どーも、ティーゲルというものです。完結できたらほめてと言うことは・・・・長い話になりそうですね〜
> いろんな時代や世界に飛んだと言うことはいろいろ楽しそうです♪
> 短いですがでは。
はじめまして、ティーゲルさん。
いやあ、長くなる、じゃなくていつもならラストにはこーなって、と
イメージあって話を書くんですが、今回はそれがないんですよ、へへへ。

ああ、いきあたりばったり〜。(涙)

もおきんるい

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779完結できたら、ほめて(笑)2もおきんるい E-mail URL12/6-10:45
記事番号767へのコメント

不安な書き込みは、続く・・・
*********************その2


「ガウリイさま?」
サイラーグの街の、ごくありふれた街角。
呼び止められ、金髪の男は振り返る。
「よお、シルフィールじゃないか。ひさしぶりだなあ」

そう。
あのフィブリゾとの戦いから、10年近く経っていた。
お互い、それ相応に歳をとっていた。

「あの・・・リナさんは?」
気になる事は、そのことだけ。
彼の傍に、彼女の姿がないのを内心ほっとしていた。

「リナは・・・死んだ」
「え」
「2年前に、病でな」
「まさか」
「だろ?オレだって、まだ信じられない。目の前で、埋葬されるところも
見ているのにな。どこかで生きているような気がするんだ」
「ガウリイさま・・・」

死んでも、彼女は彼の心をとらえたまま。
多分、彼のそんな生き方を彼女は望んではいないのだろうが。
『ずるいです、リナさん・・・』
シルフィールは唇を噛んだ。

「さて、そろそろ宿を探さないとな。じゃあ」
「あ」
シルフィールは彼を呼び止めようとして、彼の声に硬直する。

「レン!!いくぞ!!」

ととと、と駆け寄る少年。
赤い眼。
どこか、リナに似た面影。

「はーい、おとうさん」
「宿を探しに行くぞ」
「あっちにあったよ。どうせ、そう言うと思ってたんだ!」
「そうか。おまえはリナに似てしっかり者だから助かるよ」
そして、シルフィールの方を向くと手を振る。
「さようなら、シルフィール」

彼は少年を肩車すると、歩き出した。
「おとうさん、いまのひと、だあれ?」
「とうさんと、かあさんの友達さ」
「ばいばーい」
肩に乗ったまま、少年は手を振る。

『友達・・・なんですね。わたくしは。
アナタと、リナさんの』
彼女の頬を涙が伝う。

彼と共に生きたかった。
となりの席に座りたかった。
・・・空席になっても『リザーブ』の札が掛けられたまま。
その札には今はいない彼女の名が書かれている。


クリスタルの破片が砕ける小さな音に気付いた者は、いない。


つづくでえ〜

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789完結できたら、ほめて(笑)3もおきんるい E-mail URL12/7-16:52
記事番号767へのコメント

闇雲に始めてしまったよた話。もう、収集つかんかな、あは、あはあは。

その3


「魔法がつかえないよう」
泣きじゃくる娘。
だが、傍に寄り添う青年は優しく微笑む。
「いいじゃないか。普通の女の子になれば」

「普通の女の子?」
涙で真っ赤に張れた目。眼も赤いから、大きな赤いルビーが顔に埋った
ようだ。人形の顔のよう。
「そうだ。普通に、お化粧して、お洒落して、可笑しく楽しく暮らせばいい
じゃないか?戦いだ、なんだと物騒な生活を捨てるいいきっかけじゃないか」


ふたりは船で旅をしていた。
その船は、昨日難破した。
流される木切れに掴まって、命からがらこの浜辺にたどり着いたのだ。
濡れた身体を暖めようと、彼女は呪文を唱える。
が。
全く発動しないのだ。
あの日ではない。それに、ここが『魔法を封じられた空間』というわけでも
ない。カオスワーズを唱えている時、いつもなら身体に溢れる『魔力』が
湧いてこないのだ。

ここは、魔法そのものが存在しない空間。
彼女はそう判断した。
だって、やけっぱちで唱えたギガスレイブでさえ、形にもならなかったのだ。
タリスマンも、石の色が真っ黒に変色していた。

一度、魔法が封じられたことがあったが、なんとかなると心では楽観していた。
だが、今度は違う。
どうやら知らないうちに異世界にたどり着いてしまっていた。
魔法の存在しない世界に。

絶望で彼女は泣くしかなかった。
ただ、傍の相棒は優しく抱きしめてくれる。
それだけが、彼女に残った『もの』。

ガウリイが、そばにいてくれれば、なにもいらない。

小さな声でつぶやいた。

彼は、聞こえないふりをした。


「どうしよう。そろそろ、食料も尽きそうだ」
別世界で、貨幣価値が全く違う国。
二人の格好も、この国の人間から見たらへんちくりんのようで、近づくものは
いない。遠巻きにこちらを伺っているようだ。

「すみませーん!!役所か役場は、どこですかー?」
のほほんとガウリイは大声で尋ねる。
こそこそと数人の男女が角で話しをしていたが、こちらに大柄な男ふたりが
近づいてきた。

「ナニモノダ、オマエラ」

言葉が、どうやら通じる相手と分かり、向こうも安心したようだ。

「ふねがしずんだ。はまにたどりついた。おれたち、がいこくのにんげん」
リナは驚く。ガウリイが知らない言葉を話しているのだ。
「ソレハタイヘンダッタ、ナニカタベルカ」
「なんでもいい、たべたい」
「コッチニコイ」

「食い物、くれるってさ。いこう」
にっこりと青年は笑う。
だが、リナは笑わない。

『この役は、いつもはあたし。
でも、今は?
いやな気持ち。自尊心が傷つけられたような。
プライド?
なんか、変。あたし。』

ガウリイは彼女の手を引いていく。
リナは、それをふりほどいて先に進む。


「化け物退治ですって?」
剣の手入れをする相棒に、困惑する。
「ああ。倒したら、大金をくれるんだとさ」
「あたし、なにもできないのに?」
「オレ一人でなんとかするから安心しな」
この台詞に、リナは癇癪をおこす。
「なによ!ついこのあいだまでくらげだったくせに!えらそうにしないでよ!
養ってやるとでも言いたいの?保護者ぶらないでよ!!」
「なにおこってるんだ?お金がないんだから、稼がなくちゃいけないだろ?
それに、リナは今は魔法が使えないんだから」
「なによ!なによ!!魔法が使えなくなったら、なんだというの?」
ガウリイは真面目な顔で、彼女の肩に手を乗せる。ぐっと力がこもる。
「庇い切れないかもしれない。危険だから」
リナの肩に乗せている手に、彼女が小さく震えるのが伝わる。
「援護も治療もできない、足手まといだからでしょ?はっきり言いなさいよ」
「リナ」
「いけばいじゃない!!あんたなんかいっちゃえ!」
そう言うと手を叩いて退け、毛布を頭から被り隠れてしまった。
ガウリイは、ただぼんやり剣を見つめていた。

『くやしいくやしいくやしい、くやしい!!なにもできないなんて!
くやしい!!あたしがいないと駄目なんだから!ガウリイは!
それがなによ?えらそうに!仕切っちゃってさ!くらげのくせに!』
涙をこらえ、食いしばる。今の彼女には、彼の思いやりが伝わらなかった。


次の日の朝、ガウリイは村の青年数人と共に化け物の棲む谷へ向かった。
「じゃあ、いくからな。おまえのことは村の人に頼んであるから」
あいかわらず、まだ毛布にくるまって出てこないリナに、小さくため息を
ついて彼は出て行った。

足音が遠ざかる。
彼が行ってしまう。
ひとりになる。

ひとり?

役立たずだから?
ガウリイにも見放されるの?
置いていくの?
捨てるの?

気が付くと、駆け出して彼を追っていた。


「ガウリイ!!」

彼は一度、こちらを振り向く。
「待っていろよ!」
2、3度手を振ると再び歩き出して行ってしまった。


『なんでくやしかったか、わかった。一緒にいけないのが
寂しかったからだ。ひとりにされるのが、こわかったからだ』
彼女の頬に、涙が伝う。




「かえってきたぞー!!」
村の入口に、大勢の村人が群がる。

青年達は、担いできた大きな化け物の首を地面に降ろす。
「なんとまあ!これがあの化け物なのか?」
「そうさ!ガウリイが仕留めたんだ!」
「すごいじゃないか!!」
村人は彼を誉めたたえる。
少し照れたようにしていたが、廻りをぐるりと見回す。
「アレ?リナハ?」
すると、今までの喧騒がいきなり静かになる。
目と目で思案している様子だったが、中年の婦人が切り出す。
「あのこね。死んじゃったんだよ」

ガウリイは、何を言われたのか理解が出来ないといった顔をする。

「ここに、安置されているんだ。来な」
村の中央にある寺院らしき建物に、案内される。
その道中、いきさつを聞かされた。

「あんた達が出て行った後、小さい子がこの先の崖にひっかかって落ちそう
になっててな。あのこが助けてくれたんだよ。空を飛んでな。
びっくりしたよ。本当に。でも」
寺院の扉を開くと、奥の祭壇に毛布を掛けられた『なにか』があった。
「いきなり、下へ落ちたんだ。子供を崖から助け、地面に戻したとたんの
ことで、だれの手も届かなかった。すまなかった」

彼は毛布をはぐろうとすると、男に制止された。
「止めておけ。この子がいやがるよ。きっと、あんたには見られたくない
に違いない」
だが、彼は毛布を剥いだ。
栗色というよりは、少し赤い髪。なじみのタリスマン。だが、顔も身体も
人の形をわずかに止めているだけだった。
村人の手厚い弔で、もげた腕も、飛び出た眼球も、判らないように包帯で
固定されてあったが。

「おとなしくしていろと、あれほどいったじゃないか・・・」
涙が、顔の包帯に落ちて染みを残す。
「こんな結果、望んじゃいない・・・!」

そのとき。
きし・・・
ガラスの擦れるようないやな音がした。

「ん?」
案内してきた男は、あたりを見回すが何処の窓のガラスも割れていない。
「なあ、ガウリイさ・・・あれ??」

ガウリイの姿が消えていた。
そして、祭壇の遺体も消えて無くなっていた。

また、クリスタルの破片が砕けた。


つづくんだな〜。つぎは、アメリアがでる〜。

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818完結できたら、ほめて(笑)4もおきんるい E-mail URL12/10-06:19
記事番号767へのコメント

その4


「ふん、これがリナやガウリイを消したというクリスタルか」
掌で弄びながら憮然とする異形の人物。

「どうしたらいいのか、見当も付かないんです。でも、ゼルガディスさんが
来てくれたので、心強いです」
「おい、俺は長居はせん。それに、俺の手には余る」
「でも、少しは手伝ってくれるでしょう?」
「まあ、昔の誼だからな・・・なんとか手は尽くそう」
「さすが、ゼルガディスさんです!ありがとう!」
首根っこにしがみつかれ、彼は無様なほど慌てる。
「わ、わかった!だから、その、くっつくな!」


「どうも、人間の作ったものではないようだぞ、これは」
夕べは一睡もせずにクリスタルの研究をしていたのだろう、机のランプの
オイルが殆ど残っていなかった。アメリアは彼の生真面目さと、研究熱心な
ところにまた惚れ直していた。
「人の作ったものでない・・・?」
顕微鏡に、なにかを差し込んで、メモリを調節した後、アメリアに見るように
促す。アメリアは覗いたが、変な模様がみえるだけだった。
「これは?」
「人の作ったクリスタルの拡大だ。そして、これが」
顕微鏡から、さきほど覗いていたものと、別のものを交換する。
「アッシャーのクリスタルだ」
「あ」
アメリアは思わず声を上げてしまった。
そこに見えるのは、細い金色の螺旋。それがいくつもいくつも、うねうねと
絡み合っていた。
「無色透明のはずのクリスタルが、変だろう?」
「な、なんでしょうか、これは」
「だから、言っただろう?人が作ったものじゃないって」
そういいながら、ベッドにごろりと転がる。
「ほかにも・・・変った反応をし・・・ま、あとだ。寝る・・・」
横になると同時に、曝睡。
「すみません。ゼルガディスさん・・・」
そっと、彼に毛布を掛けながらアメリアはつぶやいた。


「ゼルガディスさん、お夜食です」
「アメリア?」
真夜中、部屋のドアをノックされて研究の中断に少し憤慨していた気持ちが
吹き飛ぶ。
「あまり、根を詰めないでくださいね。人間、身体が資本なんですから」
極上の微笑み。
そして・・・『人間』。

一体、彼女は俺のどこを人間というのだろう?
俺はそんな善人じゃない。悪いことも沢山してきた。
なのにこのお姫様ときたら。

「あったかいうちに食べてくださいね」
そして、俺の顔をみたとたん。
困ったような、悲しそうな顔をした。
「ご、ごめんなさい。研究の邪魔をしちゃって。じゃあ、おやすみなさい!」
俺はどんな表情をしていたんだ?
そうじゃない!
「アメリア」
俺は誤解を解きたかった。

ちり、きっっ・・・
クリスタルを擦ると出るいやな音。
俺は不思議とその音の方を向く。

リナとガウリイが、いた。
クリスタルの中に。

「アメリア!リナ達だ!」
「え?」
小さな結晶のなかに、ふたりはたしかに存在していた。
が。
突然結晶は音もなく崩れ、砂のようになる。
その砂も、ほんの一瞬で消えた。
「消えた!」
「な、なんですか?これは??」
「解らん・・・」
いきなり起った現象に、ふたりはただ顔を見合わせるだけだった。


翌朝、アメリアの朝食の席にゼルガディスもいた。
「よくもまあ、フィルさんが許したもんだ」
「とうさんはゼルガディスさんも気に入ってるんですよ」
くすくすと笑う、小柄な少女。
出会った時はまだ14の子供だったが、彼女ももうすぐ18だ。
『早いもんだな・・・奇麗になっ・・・おっと』
彼女を意識しないように自制するようになったのは、いつからだっただろう?
まるで、保護者とたばかるガウリイよろしく、自分が一線を引くように
なったのは。
自愛の心、正義の意思、偏見をもたない目、無垢の魂。
お姫様育ちのせいで、とんだ世間知らずだがおおよそ姫とは思えない
気さくな雰囲気。
明るく、おきゃんでとんだ正義かぶれの跳ねっ返り。
ただただ、彼を尊敬の目でみる愛らしい瞳。
「さすが、ゼルガディスさんです!」
なにかというと、すぐにそんな調子の良い御立てを言う。
彼女が眩しくみえるのは、多分朝日のせいではない。

朝食から戻り、机の傍に寄って異変に気付く。
机のクリスタルのいくつかが、砂と化していた。
そして、目の前でまたクリスタルの粒が砂になった。
「どういうことだろう?」
きら。
光りの当たらない場所なのに、クリスタルが光る。
光ったクリスタルの断面に、人影をみる。
「ガウリイ?」
きし・・・
いやな音とともに、クリスタルが砂になった。

金の螺旋。
クリスタルの、リナとガウリイ。
ちら、と見ただけなので確信はないが、ふたりはそれぞれ違う服を
まとっていた。
「ゼルガディスさん」
思考中に呼ばれ、彼は驚いた拍子に机にぶつかってしまった。
勢いで、クリスタルの破片のひとつが床に落ちる。
「おっと」
受け止めようとしたとき、見えた。

『りな』
娘を呼ぶ青年。
金の髪が流れるようになびく。
身にまとう服は、見たこともないデザイン。
「ガウリイ!!」
ゼルガディスの声に、一瞬振り向く。
カシャ・・・
床でクリスタルは砕けた。
その細かい破片が、異形の男を貫く。
「ゼルガディスさん!!」
アメリアは悲鳴を上げる。
クリスタルは砂となり、消えた。
異形の青年と共に。


つづくんだよ・・・
(収拾つかんとは、まさにこのこと。は、はは、は・・・)

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860完結できたら、ほめて(笑)5もおきんるい E-mail URL12/14-02:46
記事番号767へのコメント

その5


「これなんか、いいんじゃない?」
母親に薦められるまま、ドレスを羽織る。
薄いグレーのシフォンが、軽やかだ。
「なんでもいい、買っておいて」
栗毛の娘は一言告げると店から飛び出した。
「待ちなさい!リナ!!」
後ろの声に答えず、彼女は駆け出した。

「ガウリイ!またねてばっかり!」
森の入口に建てられている小さな小屋に入るなり、リナは叫ぶ。
すると、奥から大男がのそりと起き上がってゆっくり近づいてきた。
「おう、リナじゃないか。どうしたんだ?」
「『おう』じゃないわよ!ったく。あんたは、どうだっていいのね、
あたしの事なんか」
「え」
彼女はくるりと背を向け、きっぱりと宣告する。
「あたし、もうすぐ隣街の町長の息子と結婚するの」
「・・・・・・そうか。よかったじゃないか」
リナの目から、涙がこぼれる。が、背中を向けているので彼には見えない。
涙声になりそうなのを堪え、わざと怒鳴るようなしゃべり方をする。
「そうよ!今度会ったら、御祝儀貰うから用意しておきなさいよ!」
彼女は駆け出す。
彼に、止めて貰いたかった。だが、彼は小屋から出てこなかった。
リナは振り返らなかった。

「金もない、両親もいない孤児のオレより、きっと幸せになれるさ」
彼は外に出ると、街へ向かった。
酒でも飲もうと繁華街に来てみると、斡旋所の前が人だかり。
「おう、ガウリイ。いい仕事、はいってるぜ」
知り合いの男が呼び止める。
「なにがだ?」
「ここより東にウオーレーンという国があるだろ?そこが戦争する
んで、傭兵を募集するんだとさ」
「戦争、か」
大きい規模の人殺しか。
だが、そこで功績を上げれば将校に格上げされたり、一獲千金も夢じゃない。
ガウリイは、斡旋所の扉をくぐった。


『黄金の鬼神』と恐れられた男が、数ヶ月ぶりに故郷へ凱旋した。
偶然もあったが王を助け、それ以来目をかけてもらい異例の出世を遂げる。
金髪をなびかせ戦う姿は美しく、戦場では英雄と謳われた。
王様直属の兵しか許されない赤のマントを翻し、白馬にまたがった姿は
鬼神の名にふさわしかった。
「あれが、あのガウリイか?また出世したものだ」
孤児と蔑まれた過去は、今は彼の名を辱めることではない。
「鬼神は苦労して、戦士になった」と伝説に浄化されるのだ。
彼がここに立ち寄ったのは、栗毛の娘に一目会いたかったからだ。
今はどこかの男と所帯を持って幸せに暮らしているに違いない。
だが、それでも彼女に会いたかった。
「ほら、すこしはましな人間になっただろう?」
そう聞きたかったのだ。

リナの消息を尋ねるため、彼女の両親の家に行く。が。
家のあった場所は廃虚と化していた。
「ここの家はどうしたんだ?」
通りすがりの老人に尋ねると、悲しそうな顔で語った。
「ここの一人娘の婚約パーティの日、婚約者(相手)の昔の恋人が放火してなあ。
皆焼け死んでしまったよ」
「・・・!」
彼は絶句した。

敷地内の小さな墓標に跪き、王様に謁見するときの挨拶をする。
「どうだ?リナ。オレはましな人間になれたか?」



そして、数年後。
再びここに来た英雄は、王からこの地を収めるように『提督』の称号を
頂いての帰還だった。
苔むす墓標をきれいにして、弔をすませる。
敷地から出ようと門に向かって歩く途中、黒い頭巾を深く被った男とも
女とも判らない人物と擦れ違う。
だが。
彼は振り向き、声を掛けた。
「リナ」
頭巾の人物は一瞬立ち止まったが、また歩き出した。

「リナ!オレは、ましな人間になれたか?」
だが、答えは返ってこなかった。
追いかけようとして、彼は躊躇する。
その躊躇する自分に気付き、苦笑する。

「あの時も、オレは彼女を連れ去る勇気がなかった。
今度もか?今のオレは、彼女を幸せにして遣れるだけの地位も名誉も
あるんだ。おい、ガウリイ。また躊躇して、後悔するのか?」

そして、頭巾の人物の前に立ちはだかる。
「リナ、答えてくれ」
頭巾を取ろうとするのに気付いた人物は、金切り声で抵抗する。
「やめて!みないで!!」
するりと、外れる頭巾から現われたのは、醜く焼けただれた顔。
「みないで!なによ!あたしをおいていったくせに!いまさらなにしに
きたのよ!今の自分をみせびらかしにきたの?
哀れむ目で見られたくない。同情もまっぴら。早く、ここから出て行って」
だが、彼の表情は微笑んだままだ。
「ああ、やっぱり、リナだ。生きていたんだな。よかった・・・」
そして彼女を抱きしめる。
抱かれた腕の中で、彼女は困惑する。
「どうして?あたし、こんな顔なのに」
「戦場ではもっとすごいの、見てるからなあ。お前さんのほうがよほど
美人だよ。だって、おでこと右目がすこし青いだけじゃないか」
「ばかにしないで!」
「そういうつもりはないんだがな」
そういうと、彼女の唇を塞ぐ。

唇が離れ、彼女はつぶやく。
「あなたは、あたしがいないほうが、しあわせになれるのね」

きし。
ガラスが擦れる音がした。


ふたりの姿は、忽然と消えた。


まだまだー!(涙)

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890完結できたら、ほめて(笑)6もおきんるい E-mail URL12/18-01:19
記事番号767へのコメント
ははは、まだおわらないよ〜(涙)

その6


「まてってば、リナー!」
「おそいぞ、くらげー!!」
職員室の窓から見える校庭ではしゃぐ二人に、目を細めて微笑む
担任の教師を、困惑ぎみに覗き見る少女。リナの姉、ルナである。
「元気だなあ。リナちゃんは。もう、小学1年になったんだっけ?」
「はあ・・・」
ルナは苦笑する。
『くらげ』と呼ばれているのは、ルナよりも1つ学年が上のガウリイだ。
(ったく、あの子は・・・あとでぎゅっといわせてやる)

ルナの妹、リナは今年同じ小学校の1年に入学してきた。
姉のルナは小4。そして『くらげ』のガウリイは小5だ。
結構人見知りするリナが、ガウリイには懐いた・・・いや、自分の子分か
下僕と思っているのか、あの態度だ。
学校に入学するまでは心配していたルナだった。
「人見知りのリナ、学校に慣れるかしら?」
ところが、いざ入学してみれば。
毎朝ガウリイを従えてのご登校だ。
金髪でハンサム(?)のガウリイは、女子にすごく人気がある。
このリナの態度に腹を立て、ルナに苦情を言ってきたりするので
彼女も気苦労が絶えないのだった。

「リナ!ガウリイくんに対するあの態度、やめなさい。彼はあんたよりも
4つも上なのよ」
すると、きょとんとしてリナは言う。
「だって、くらげだもん、ガウリイは」
「年上に、そーゆーくちのききかたをしないの!」
「ぎゃー、いたいよう、ねーちゃん」
「どの口だあ?そーんな悪い言い方をする口はー」
リナの両頬を引っぱるようにつねる。
「ういらーいい!(痛ーい!)」
「おい!やめろ!」
後ろからガウリイがルナをリナからひっぺがした。
「ガウリイくん」
「うえーん、ガウリイ」
リナはガウリイの身体にしがみついた。彼は極上の笑みでリナの頭を
わしわしとなでる。
「よしよし。泣くな。・・・おい、妹を苛めるのはよくないぞ」
「・・・」
「じゃ、リナはつれていくぞ」
「じゃーねー、ねえちゃん」
おい・・・
ふう、とため息のルナであった。

「ただいまー」
「おかえり。王子様と、たのしかった?」
ルナはちょいとひやかす。が、まだ小1のリナに恋だのなんだの
判る訳が無い。
「王子様じゃないよ、ガウリイだよ」
「はいはい」
「ねえ、ねえちゃん。明日のあたしの誕生日、なんかくれる?」
「かんがえてませーん」
「ふん、ガウリイは、くれるっていったもん、いいよーだ」
リナはちょっとふくれていたが、ガウリイのくれるプレゼントがよほど
楽しみなのだろう。にこにこして『早く明日にならないかなあ』と
何度もつぶやいていた。
ルナは、ちょっと良い気分ではなかった。

次の日。
リナは突然風邪で熱を出し、学校を休んだ。昨日、薄着で夕方まで
遊んでいたからだ。
「おーい、リナー、学校いくぞー」
ガウリイ呼びに来た。ルナは事情を説明する。
「リナは、風邪ひいちゃったの。お休みよ」
「そっかあ。じゃあ、誕生日のプレゼント、渡しておいてくれよ」
ルナに渡すと、彼は走って行ってしまった。
ルナは家に戻り、リナの部屋に行こうとする。が、立ち止まる。
『ふん、なによ、こんなもん』
そして学校に行く途中の池に、ほおり投げた。
ぽちゃんと、ちいさな音がしてそれは沈んでいった。


「ねえちゃん!ガウリイのプレゼントは?」
まだ熱のあるリナが、学校から帰ったルナに物凄い剣幕でどなる。
どうやら彼が見舞に来て、リナにばれたのだろう。
リナは高熱なのか、声はまだ枯れていて、少し目も澱んでいる。
「あんなもん、コーノ池に捨てたわよ」
「ねえちゃんの、ばかあ!」
リナはばたんと扉を締め、部屋に閉じ篭った。

流石に時間が立つと、気持ちも落ち着いて整理出来、反省したルナだ。
夕食を口実に、リナに謝ろうと部屋に入る。
「リナー、ご飯だよ」
ところが部屋は真っ暗で、人気がない。
窓をなにげなく見ると、カーテンが揺れているのに気付く。
ルナは身体が冷たくなる。リナは、どうやらコーノ池に行ったのだと
悟ったのだ。


「リナ!!」
コーノ池に、リナはいた。
全身濡れ鼠になり、何度も潜っては浮いてを繰り返している。
必死でプレゼントを探していたのだ。
「やめなさい!!死んじゃうわよ!!」
「やだ!ガウリイが、くれたんだもん」
そして、もう一度潜る。
「リナ!!」
ルナは涙が溢れる。『どうしよう、どうしよう、どうしよう』
心が乱れ、混乱する。リナはきっと、見つかるまで潜り続けるだろう。

「あった!!あったー!」
リナはくちゃくちゃの紙袋を抱きしめる。
「あった・・・」
あんなに元気な声で喜んでいた少女は突然、動かなくなり・・・沈んだ。
「り、リナ!!」
ルナは誰かを呼びにいこうとして、目の前の人影を見つけ、叫ぶ。
「誰か、助けて!!」
「どうした?ルナ」
ルナの身体はぎくりとして動かない。それはガウリイだったからだ。
「なんだ?泣いてるのか?」
「・・・」
ルナは黙る。
『いわなきゃ、リナが大変だって。でも、あたし、悪いことした。
知られたくない。きっと、怒って、あたしをきらいになる』
ルナの様子が変なのに困惑の目で見ていたガウリイは、池の方を
なにげなく振り向く。
「・・・り、な?」
その声に、ルナは身体ががたがた震える。ゆっくり、池を見ると・・・
薄いピンクのパジャマが池面に浮いていた。栗色の髪が黒く見える。
「おまえ!リナなんだな?ルナ!!返事、しろ!」
しかし黙ったままのルナに業を煮やし、ガウリイは池に飛び込んだ。
すでに季節は10月で、水はかなり冷たい。
「リナ!しっかりしろ!おい!」
少女を岸に引き上げ、少年は身体を揺する。反応がない。
「リナ・・・」
ガウリイは口づけて人工呼吸を施す。その姿をみて、ルナは胸が
張り裂けそうになりこの場からの逃避をする。
「あたし、大人を呼んでくる!」

『あたし、ガウリイが好きだったんだ。今、気付いた。だから、リナに
あんな意地悪したんだ。ごめん、リナ、ごめん、ガウリイ』
泣きながら走って近くの民家に助けを呼んだ。


リナは命はりとめたものの、さらに高熱を出し肺炎を併発させていた。
「今晩が、峠だそうだ」
疲労困憊の表情の両親の目に、涙がうかんでいる。
リナの枕元には、ガウリイがプレゼントした大きな金色の玉のイヤリング。

「リナ」
ベッドの傍にはガウリイがつきっきりで看病していた。
ふいに、リナの目が開く。
「ガウリイ」
「めざめたか?」
にっこりと笑って返事をする少女。だが、ルナは直感する。
リナは、もうすぐ死ぬ。ガウリイにお別れするために全ての力を
出しているのだ。
「ぷれぜんと、ありがと・・・」
「早く良くなって、大きくなって・・・そして、きれいになって、
これが似合うようになったら・・・嫁さんにしてやるよ」
ガウリイも、気付いているのだろう、声が涙声になっている。
リナがもうすぐ、この世からいなくなる事を。

「がうりい、ね、みみに、ちゅけて、よ」
「うん」
リナの小さな耳たぶに、そっとイヤリングを付けてやる。
大人用なので、異様に大きい金色の飾り。だが、リナは喜ぶ。
「にあう?」
「うん、かわいい」
「また、こどもあつかいする、がうりいは」
ルナは目を疑う。
目の前の二人の姿が、大人に見えるのだ。
ベッドに横たわる栗色の髪の娘と、その傍らに寄り添う金髪の青年。
「お前さんは、いつも無茶ばかりする」
そっと髪をいとおしげに撫でる。
「がうりいは・・・あたしがいないほうが、しあわせになれるね」
「馬鹿なことを言うな。お前じゃなければだめなんだ」
「ごめん・・・」
そして、息を引き取る娘。
傍らの青年は、亡骸を抱き上げる。
「リナ、お前のいるところは、オレの傍だ」
きし・・・
ガラスを擦るような嫌な音に、ルナは顔をしかめる。
どこからそんな音がしたのか、あたりを見回すがなにもない。
ふと気付くとふたりの姿が無い。
「リナ!ガウリイ!!」
慌てて両親の元へ、この事を知らせようとリビングにいくと、両親は
お笑い番組を見て大笑いしているところだった。
「ああ、ルナ。今、すごく面白いところよ。一緒に見ましょう」
「かあさん!なに暢気にわらってるのよ、大変よ!」
ものすごい形相のルナを、両親はきょとんとした顔で見ている。
「なにが大変なの?」
「部屋ー・・・あれ?」
誰の部屋と言おうとしたのだろうか?
そもそも、なにを言おうとしていたのだろう?
誰が、部屋にいるというのだろうか。このリビングには、両親と自分。
全員そろっているではないか。
「幽霊でも見たのか?」
父親が茶々をいれる。ルナは背筋がぞくっとした。
「ほらほら、そんな怖い事、笑ってわすれちゃいましょう」
母親はルナの身体を優しく抱き寄せる。
『なにか大事なことが、あったような。でも、もういいや。あまり
いいことじゃなかったようだもん。そうよ、わすれちゃおう』
ルナは両親とテレビを見て笑う。


リナの部屋の隅に、クリスタルの砕けた破片。やがて、砂になり、消えた。


まだつづく・・・(大泣き)

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893完結できたら、ほめて(笑)7もおきんるい E-mail URL12/18-13:01
記事番号767へのコメント

その7

「ガウリイ!!」
だが、映像だけの彼の姿。ゼルガディスは、捕まえようとした
手がすりぬけるのを見て驚愕する。
映像・・・影のようなガウリイは、クリスタルの迷路に消えた。
「ち、」
ゼルガディスは自分もクリスタルに取り込まれたことに気付く。
「さて、どうしたもんかな」
きらきらと光る壁。なにげなく触れると、不思議と暖かい。

『ゼルガディスさん、ゼルガディスさん』
少女の泣き声。聞き覚えのある声。
『ごめんなさい、あたしが、あたしが・・・ゼルガディスさん』
クリスタルの壁に写る映像。
黒髪がぴょこんと跳ねた、愛らしい少女。
大粒の涙をポロポロこぼして泣いている。
「・・・アメリア」
自分が消えたことで、誰かが泣くなんて一度も考えたことがなかった。
「アメリア!俺はここだ!」
『俺の声よ、あいつに届け!!』
強い”念”。気ともいう、エネルギーが身体から放射される。
それは金の螺旋を断ち切り、拡大した。

『アメリア。俺はここだ』
「ゼルガディスさん!!」
彼の声に素早く反応する。が、姿はない。

『聞こえるんだな?俺の声が』
「はい・・・御免なさい、ご免なさい・・・」
『いいから。泣くな、アメリア。お前に泣かれる方が困る』
「っ笑わないでください!大丈夫ですか?」
『ああ、笑う余裕があるくらいだからな』
「出られますか?そこから」
『・・・分からん』
「そう・・・ですか」
アメリアの目から、再び大粒の涙が溢れる。
『泣くな』
「だって」
『泣くな、アメリア。泣くな・・・』
抱きしめてやりたい。
もう、大丈夫だと安心させてやりたい。
・・・アメリア・・・!
ゼルガディスの目の前が眩しく輝き、段々強くなった光は閃光になる。
身体の気が、熱く感じた。


閃光で焼けた視力が元に戻ったとき、彼はアメリアを抱きしめていた。
アメリアの方は、今何が起ったのか理解できないといった表情だ。
「ゼルガ・・・ディスさ・・・ん?」
「戻れた・・・は!す、すまん!」
慌てて後ろずさるが、マントを踏んでひっくりかえる。
「ゼルガディスさん・・・ゼルガディイスさん!!」
ようやく事態を理解したアメリアは、ひっくり返った状態の
ゼルガディスに飛びつく。
涙を流し、おいおいと泣く少女に、閉口しながらも心は安堵していた。


「もう一度、クリスタルに入るですって??」
アメリアは猛反対、猛反発だった。
「なにをいってるんですか!今回は戻ってこれたけど今度はそうは
いかないかもしれないんですよ!」
「だが、これしかガウリイ達を救う方法はなさそうだしな。それに」
アメリアに極上の微笑みを向ける。
「お前が俺をひきあげてくれるだろう?」
アメリアはどぎまぎとした表情で、慌てながら口をとんがらせてそっぽを
むく。顔全体がむくんだように真っ赤だ。
「もう、うまくいかなくっても、知りませんから!」
「ああ。うまくやるさ。お前さんを、またからかいたいからな」


再び部屋に戻ると、クリスタルの大きさが先程よりも小さくなっていた。
徐々に端から崩れている。
「いかん!早くなっている!早速やるぞ!」
「は、はい!!お気を付けてください!」
ゼルガディスは小さな破片を床に叩き付け、細かい破片を浴びると消えた。

アメリアは祈るように手を結び、ゼルガディスの『声』を待った。


彼は金色の螺旋の壁を彷徨ううちに、ぼやけた煙のようなものを見つけた。
その煙から、不思議な景色が見えた。だだっ広い草原だ。
どうやら、全く別の知らない空間のようだ。
その広い草原に人影を見つけ、ゼルガディスは目を凝らす。
それは、ガウリイとリナだった。数人の男に追わているらしい。
ガウリイが突然草むらに倒れる。
みると、身体中刀傷だらけでかなりの重傷だ。
「ガウリイ!」
リナは駆け寄ろうとするが、ガウリイは叫ぶ。
「いけ!にげろ!!」
「だって、ガウリイが」
「オレには構うな!早くいけ!」
すぐそこに、追手が迫り、ついにガウリイは囲まれる。
「お嬢さん、さあ、こっちに来な。そうすりゃあ、こいつは助けてやる」
「リナ!!」
「だまってな、色男さんよお」
ガウリイの頭を、追手の一人の足が踏みつける。
「ガウリイを、助けるのが条件よ!」
「リ・・・ナ、よせ・・・」
リナはゆっくりと近づいていく。
追手の一人が、素早くリナの背後に回り、羽交い締めにした。
「よーし、よくやった。悪いなあ、お嬢さん。あんたの要求はのめねえ。
こいつには散々やられたからなあ。あばよ、色男!」
そして剣を振りかぶる。
リナは悲鳴を上げ、目をつぶった。
『ガウリイ!!』
突然の男の声。耳ではなく、頭に直接響く声だ。
「?」
ガウリイは気配を感じる空間を”見た”。
そこには顔見知りの異形の男がいた。その男に腕を引っぱられる。
『さあ!リナ!!お前もだ!』
だが、リナはうずくまったまま、こちらを見ようともしない。
みし。
音と共に、リナのいた空間が煙が消えるように消滅した。
「り、リナ!!」
ガウリイは戻ろうとしたが、間に合わなかった。
きし、ぱき。
ガラスの軋むような音があちこちに響く。
「いかん!!ここもくずれる!アメリア!!ここだ、わかるか?!」
『ゼルガディスさん!!帰ってきてください!』
その声と共に閃光が辺りを染める。


どたどたどす。
アメリアの上にゼルガディス、そしてその上に傷だらけのガウリイが
乗っかった状態で出現した。
「お、おもいですうう」
「すまん、アメリア。旦那、早く退いてくれ」
「り、な・・・リナを置いてきちまった!!リナが、リナが」
「ガウリイ!落ち着いてくれ!まだ、助ける手段はある!」
こうも狼狽するガウリイを見たのはゼルガディスもアメリアも初めてだ。
いつもぼーっとしているというか、落ち着いているというか頼もしい
彼が、今は情けないほど無様である。
「!・・・そうでもないようです、ゼルガディスさん。もう、クリスタルが
こんなに小さくなってしまっています!」

赤ん坊の握り拳くらいまで小さくなっているクリスタルに、ゼルガディスは
焦る。
「これは、もうチャンスは1度だけだ。ガウリイ、リナを呼べ!」
「呼べったって、どうやって?」
「アメリアは俺を呼んでくれたぞ。旦那なら、きっとリナも気付く!」
「・・・わかった。お〜い、リナ〜、めしだぞお〜」
ゼルガディスとアメリアはそっくり返って床に倒れる。
「ふざけないでください!!ガウリイさん!真面目にやってくださいっ!」
「うー。どうやるんだ?」
「だから。心からリナさんの事を思って呼びかけるんです」
「ふーん。じゃあ、アメリアも心からゼルを呼んだ訳かあ。うりうり」
「いやですう、ひやかさないでくださいよう、ガウリイさんてばあ」
「・・・真面目にやれ、おのれらは!」


まだ、続く。でも、なんかみえてきたかなー?(どきどき)

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1005完結できないままですんません(涙)もおきんるい E-mail URL1/5-23:03
記事番号767へのコメント

あらら。
旅行にいってるすきに、もうこんなに下にきてるのね。

この続きは、もおきん亭でUPします。
おたのしみに〜。


もおきんるい