◆-砕かれた鎖-LINA(12/21-18:09)No.914
 ┣砕かれた鎖1-LINA(12/21-18:19)No.916
 ┣砕かれた鎖2-LINA(12/21-18:21)No.917
 ┣砕かれた鎖3-LINA(12/21-18:23)No.918
 ┣砕かれた鎖4-LINA(12/21-18:25)No.919
 ┣砕かれた鎖5-LINA(12/21-18:28)No.920
 ┣砕かれた鎖6-LINA(12/21-18:31)No.921
 ┣砕かれた鎖7-LINA(12/21-18:35)No.922
 ┣砕かれた鎖8-LINA(12/21-18:36)No.923
 ┃┗Re:砕かれた鎖8-ティーゲル(12/22-00:56)No.928
 ┃ ┗ケイン君に幸福を★-LINA(12/22-22:37)No.933
 ┣砕かれた鎖9-LINA(12/22-22:38)No.934
 ┣砕かれた鎖10-LINA(12/22-22:42)No.935
 ┗砕かれた鎖11-LINA(12/22-22:44)No.936
  ┗Re:砕かれた鎖11-ティーゲル(12/23-15:52)No.945
   ┗あはははははは-LINA(12/23-19:13)No.947


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914砕かれた鎖LINA 12/21-18:09

またまたかなりのブランクあったよ〜〜〜な・・・・・・。
ともあれ、御暇があったら読んでやって下さい。
今度は十七世紀、ルイ十四世時代のフランス編です。
ああ・・・・。でもまだ未完・・・・・・・・・・・・。
リナの運命はいかに!!?

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916砕かれた鎖1LINA 12/21-18:19
記事番号914へのコメント
「騒がしいわね・・・・。何なのよ?」
バスティーユの特別室と言っても過言ではない牢獄にここ五〜六年まえに幽閉されているその人物は牢番に聞いた。
「ああ。王様のご機嫌を損ねた一人の銃士が今日処刑されるんですよ。」
何時もの事と言わんばかりに牢番の男・・・ゼロスは事も無げに言う。
「その人も・・・・。さっきまでここ(バスティーユ)に居たの?」
囚人の娘・・・リナは出切るだけ感情を押さえて尋ねた。
「そりゃ〜〜そ〜〜でしょう・・・。何せここは王様にとって邪魔な人、もしくは気に入らない人を問答無用でぶち込むところなんですから。」
リナはどちらかと言えば前者にあたる。
出生を伏せて投獄された辺りを考えると彼女は王家にとって隠ぺいを余儀なくされた存在なのかもしれない・・・・。
ましてや顔かたち、身のこなしなど何所をどうとってもただの「国家犯罪者の娘」で片付けられたものじゃない。
これは国務卿殿や宰相どのに牛耳られているだけでナニも出来ない暴君殿に一喝できるかもしれませんねえ・・・・・・・・・・・・・・。
一寸リナさんにはそれに協力していただきましょう。
ゼロスは窓から見を乗り出すように外の様子を眺めているリナをしげしげと見詰めてそう思った。
「アタシもあんな風にいつか殺されるのかしらね・・・。」
無感情に呟くリナ。
「いいえ・・・。一つ僕の計画に加担していただければ・・・。」


さしものガウリイとは言え、今のケインに声をかけることは不可能な事だった。
それはいつもケインをからかっているレイルや親友のゼルガディスにしても同じ事だった。
「ケイン・・・・。中、入ろう。風邪ひいちゃうよ・・・・・。」
雨の中に今だ傘も差さずに呆然と立ち尽くしている彼にミリィがやっとの思いでそうとだけ言う。
しかし、ケインは反応すらしない。
「やめとこ・・・・。ミリィ。今のケインは・・・・・・。」
哀しそうにキャナル。
「理法などというものがあったらお目にかかりたいものだ。」
吐き捨てるようにゼルガディスが言う。
「アタシも・・・。叔母のペロンネットを国家の都合とやらででしょうね・・・。影で殺されました・・・・。」
怒りに満ちた口調でアメリア。
つい今しがた・・・。ケインの弟にあたる銃士が国王の勝手な言い掛かりでバスティーユに投獄された挙句に処刑された。兄のケインはそれに会う事すら許されなかった。
「ケイン・・・・・。」
叱るような、そして諭すような口調でガウリイは彼の名前を呼ぶ。
「・・・・・。大丈夫だ・・・・。それより・・・。バスティーユの牢番のゼロスと言う男がいまからここに来る。」
「バスティーユの牢番が?」
一応ケインのその一言を反復するガウリイ。
しかし、おおかた処刑された彼の弟についての話であろうことは目に見えていた。
「ああ・・・・。事後処理と言う名目上の来訪らしいがど〜も真意は他にあるな・・。あいつは中々食えない奴だ。」
ケインの瞳に戦慄のようなモノがあったのは気のせいだろうか・・・?
「じゃあ・・・アタシ達はどうすれば良いんです?」
アメリアが気を使ったように聞く。
「同席しててくれ。後々厄介な事になったら困るし証人として。」
言ってケインは疲れ切った微笑を浮かべた。


「これはこれは。皆様おそろいで。」
愛想笑いとも地で、ともつかない微笑を浮かべながらゼロスが来訪してきたのは間もなくの事だった。
「さっさと本題にはいったらどうだ?」
ゼロスと知り合いだったのであろう。ゼルガディスが不機嫌な声をあげる。
「あの二人、滅茶苦茶仲悪いんだ・・・・。」
呆れたようにレイルがガウリイに教える。
「じゃ、単刀直入に言います。言っておきますけれども、絶対に他言無用と誓って戴けますか?」
訳のわからないまま渡された誓約書にサインする一同。
「皆さん、国王を倒したいとは思いませんか?」
本当に単刀直入かつ露骨なゼロスの一言。
「何を言ってるの・・・?行き成り!!革命でも起こせって事?」
あせったようにミリィ。
「いいえ。別の方を国王にたてる。それまでのことです。」
「別の方って・・・・。どう言う事だ!!」
不機嫌にゼル。
「国家の諸事情でその存在すら隠ぺいされているお方がバスティーユにいらっしゃるんですよ。暴君を引き摺り下ろしてその方を謀略によってこの国の統治者に祭り上げる。それだけの事です。」
「統治者?」
あえてであろう。その人物が「国王」にたてるとゼロスが言わなかった事を不審に思いケインが聞き返す。
「ああ・・・・。単純な事です。そのお方の肖像画を持ってきてます。見れば何故僕があえて「国王」と言う言葉を避けたか分かりますよ。」
言って手に抱えていた包みを開いていくゼロス。
「な・・・・・・・・。」
その一言のみを言葉にし、あとは凍りついた様にその絵の人物に釘付けになるガウリイ。服装こそ質素な物だが、綺麗な栗色の髪と紅い瞳。
細身の体つきに色白な女性・・・・・・・。
なるほど・・・。「統治者」と言う言い方ならまだしも「女王」ましてや「国王」などと取って付けた言い方にはかなりの違和感がある。
一同は同様な事を感じてその肖像画にみいったが、流石に微動だにせず絵の中の女性を見詰続けるガウリイには苦笑せざるおえない、と言った所か・・・・。
「彼女の本当の名前は知りません。一応みんな『リナさん』とお呼びしておりますがね。 もっとも自他ともにそのほうが良いのであえて名前について深く追求する必要はありませんが。」
「で・・・・。このリナさんて人を統治者・・・と言うか女王に・・?」
「その辺はお好きなように。で・・・。この方を牢獄から密かに抜け出させ・・。時が来るまで皆さんで庇護していただけないでしょうか?勿論、敵陣と成るであろう連中もこの計画にすぐに気付くとおもいますが。」
アメリアの問いにはぐらかすように答えるゼロス。
「敵って・・・・?」
キャナル。
「そ〜〜ですねえ・・・。国王自身と言うことには最悪の事態にでもならないかぎり無いでしょうが、少なくともコルベーユ様かフーケ様と言ったお偉い方のどちらかあたりは事実を秘密裏に潰そうとなさるでしょうねえ・・・・・。」
暫しの沈黙・・・・。
このリナを救い出す限りなら別に問題は無い。
しかし。
「俺はのったぞ。で、みんなはどうする?」
ガウリイは真っ先に言った。


かくして・・・。全員がこの計画に加担することが決定するまで5分と時間を要さなかった・・・・・。


「リナ・・・か・・・。」
一人部屋に残り肖像画を眺めつつガウリイ。
例え助け出したとしても彼女はあくまで「国家」の物となる。
それは分かりきっていた・・・・。
「ま・・・・。その事は後で考えるか・・・。」
苦笑しつつガウリイはまだ会わぬこの人物に思いをはせるのだった・・・。

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917砕かれた鎖2LINA 12/21-18:21
記事番号914へのコメント
「で・・・・?どうするんだ・・・?」
バスティーユ牢獄の門前。
とりあえず中にはご親切にゼロスが入れてくれるてはずとなっている。
「実際に乗り込むのは野郎の貴方たちだけ。私とミリィとアメリアさんは近くの喫茶店でカフェ・オーレとミルフィーユと洒落こんでますので、頑張ってね(はあと)。」
滅茶苦茶薄情な台詞を残して消え去るキャナル、ミリィ、アメリア。
「いいな〜〜〜〜〜〜〜。」
厄介な事をしなくて済むご身分ではなく、食い物を食いに行ける立場である女性陣に羨ましそうに見送るガウリイ。
「しかし・・・。手段と言っても強硬突破をしてその「リナ」とか言う人物を助けだすんだろ・・・?」
ゼルガディスが言う。
「一応彼女の牢獄には事情があっての来訪と言う事にしてある。そこで、彼女には男装してもらいてい良く脱出というわけだ。」
ケインが行程を説明する。
「失敗したらどうするんだ?」
何時もの如くレイルがチャチを入れる。
「考えてある!!とりあえず今日はゼロスの配慮で正規の兵団ではなく傭兵集団がバスティーユの警護にあったている!!」
「つまり・・・。追撃してくるそいつらに楯突こうがナニしようが罪にはならないって事か。」
悪態つくように言うケインと論理的なゼルガディス。
「まあ、後の事はゼロスが上手く揉み消す、とか豪語してたが・・・。まあ、リナがブルボン朝にとって邪魔な存在ならばそんなカモフラージュは一時的にしかすぎないだろうな・・。その間にこの計画を成功させろ・・・と言うことか・・。」
臍を噛むようにケイン。
「なあ〜〜〜、ケインよお〜〜〜。リナって奴だけどさあ、こんな薄汚い牢獄から出て自由になることはともかくとしてだが・・・。本当に女王・・・て、いうか統治者になること望んでるのか・・・?」
的外れなガウリイの問い。
いつもは年下のケインがボ〜〜っとしているようでも「野生の直感」の働くガウリイに物事を尋ねる事は良くある。
しかし、何故かこの件に関しては立場が全く逆である・・・・。
「本人次第・・・。としか言い様が無いだろ・・・。だがな、確かに言える事は二つある。俺たちを始めとする全ての人民はより良い国王、ないしは統治者を望んでいると言う事。もう一つは・・・・・。ガウリイがどんなに思ったところで身分が違う、って事だ・・。」その「身分」が故に国王に弟を殺されたケインが言う・・・・。
「たがが絵を見たぐらいでお熱か・・?諦めろ。お前くらいの器量ならお姫様もどうなるかは分からんが・・・。カタストロフィーに巻き込まれるのはこっちだってごめんだしな。」
冗談とも本気ともつかない台詞をぬかすレイル。しかし、冷徹なのは変わらない。
「・・・・。そんな単純なものでは無いようなきもするんだが・・・。まあ、良いか・・。」自分に言い聞かせるようにガウリイは呟き、銃士仲間達と共にバスティーユの門を潜った。


「銃士の者だ。至急の所要があっての事だ。後でもう一名来る。まあ、これで適当に酒でもやっててくれ。」
これこそ適当な事を言いながらケインが傭兵隊の隊長らしき男に挨拶と金貨を握らせる。ただでさえロクに仕事をしている素振りの全く無い彼等である。
突然の収入として酒代がはいれば飲むや食うやの大騒ぎは目に見えた事である。
こちらの様子に注意を払うような奴がいたら誉めてやっても良いくらいだ。
「ああ〜〜。早速始めやがって・・・・。」
彼等の騒ぎを聞きとめたゼルが溜息混じりに言う。
「今頃キャナル達も美味いもの食ってんのかなあ〜〜〜。」
まだ根に持ってるらしいガウリイ。昔から食い物の恨みは恐ろしい、とは言うが・・。
「ほっとけ。ど〜〜せ、明日になったら何キロ太っただのビエ〜ビエ〜抜かしやがるのは目に見えた事なんだぜ?まあ、身体に適量な運動を強いられるこちとらとしちゃあ、連中が泣いて騒ぐところを見ると言う乙な楽しみが出来た、って訳だ。」
世の女性が聞いたら撲殺しそうなほど性格の悪い事を言うケインに笑わずには居られない。最も何故かガウリイは幾ら食べても太らない体質なのでその意味を理解していなかったのだが・・・・・・・・・。(胃下垂か・・・?)


「ここか・・・?」
バスティーユの特別室と言っても過言ではない部屋が二つほど並んでいる。
「右の部屋だ。間違っても左の部屋には入るな、と言うゼロスの警告があったから良く覚えてる。」
ケインが説明する。
「そら〜〜まあ、無関係な隣りの囚人の所に間違って入っちまったらもんだいだろうなあ。」妙な事に感心するガウリイ。
「その前に・・・。遠足に行く子供が両親に『ハンカチ持った?』だの『前の晩は早く寝るようにね』とか事細かく言われるのと似たようなニュアンスだと思うぞ、俺は。」
髪を掻き揚げつつレイルが呟く。
「つまりは・・・。馬鹿にされてる、って事か・・・。」
これまた面白く無さそうにゼル。
ゼロスに秘密裏に渡された鍵を使ってリナの幽閉されている部屋の扉を開けるケイン。


他の牢獄と違いその部屋は上質な大理石で彩られていた。
決してその人物に対する待遇を冷ややかにしてはいけない証・・・。
黒塗りの地に豪華な黄金の装飾の織り成された一昔前のバロック式のデザインの暖炉。
普通のサイズに比べては小ぶりだが立派な洗練されたデザインのこれまた重々しい曲線のバロック式のシャンデリア。
最近買い換えたと見られるロココ式の軽快なデザインと曲線のテーブル。
それとペアであろう白いクラシック・チェアー。
ベルベット製品の純白のカーテンとアラビア製品の豪華な絨毯は同色に統一されていた。更に言えば日本製であろう美しい色彩の壷には薔薇の花が飾られている。隣にはヴェネチア製の美しい工芸グラスが今年の産物であろうロゼ・ワインを注がれながら無造作に置いてある。そして人目を引くような程美しいこの部屋の住人が一人窓の外を眺めている。
絢爛豪華、「プチ・チュイルリー宮殿」と言っても過言ではないバスティーユのこの一室には明らかに「自由」と言うものが欠如していた。
本来ならば強い意志を持つであろう、この部屋の虜、リナはなんの感慨すら抱いていないといったようすで外をぼ〜〜と眺めていた。
「・・・・。何をしてるんだ・・・?」
とりあえず話しかけてみたいと言う気持ちが先立ってガウリイは見れば分かる事をいちいち聞いてみたりする。
「・・・・・・・。ぼ〜〜〜としてた所。」
これまた見れば分かる事を一々言うリナ。
「何でだ?」
再度ガウリイの問い。
まあ、無理も無い。こんなところに産まれてこの方、と言う訳でも無いにしても長年幽閉されていたのだ。
感覚が麻痺していない方が不思議である。
これで完全健康、五体満足と言う奴が居たら会ってみたい。
「だった〜〜〜〜〜〜〜〜〜。滅茶苦茶お腹すいたのに!!ゼロスの奴!!『お食事の時間はまだですよ』とかなんとか言って飯くんないんだもん!!お天道様はもうとっくにお空の天辺よ!!お昼の時間って相場が決まってるじゃないの!!それとも何?アタシに飢え死にしろって言うの!!!!???アタシはねえ、寒いのと眠いのとひもじいのだけは我慢できないのよ!!!!」
ズべええええええええ!!!!!!
・・・・・・・・・前言撤回・・・・・・・・・・・・・・・・。
目の前にそ〜ゆ〜奴は居たりする。(5・7・5)
まあ、やせ衰えて気力が無い、何て言うのよりかはマシだが・・・・・・・・。
「それとも何?貴方達新任の食事係り?」
「あのなあ・・・・・・・。」
リナの台詞に抗議をしかけたゼルをケインが身振りで制す。
「バスティーユの時計台はまだ十二時じゃないぞ?」
そう言うケイン。
「アタシのお腹の時計はとっくに十二時よ。」
膨れっ面をして答えるリナ。
「じゃあ、腹時計の食事時間をもう三十分待って十二時半にしてもらえねえか?」
妙に商談臭い口調でケイン。
「と、言いますと?」
つられて口調と声のトーンを変えてリナ。
「どうだ?今日からここの不味い飯じゃなくって外の美味い飯を食う気、無いか?」
ケインの意を汲んだのだろう。
レイルがリナに持ちかける。
「それって・・・・。脱獄しろって事?」
「まあ、そんな所だな。」
ゼルが続ける。
「ただでこんな二重に美味しい話しを持ってくる人がいる訳ないわね・・・。で、アタシに対する見返りは・・・?」
「暴君失脚の足がかり。なに、心配する事は無い。俺達と他三人の仲間とゼロスがサポートする。」
断固とした口調でレイル。
「・・・・。分かった。乗った。」
あっさりとしたリナの答え。
この時だった。
ガウリイとケインの感情に同様な寂寥感が生じたのは・・・・・。

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918砕かれた鎖3LINA 12/21-18:23
記事番号914へのコメント
囚人番号:64389000:L
それがリナに付けられたバスティーユ内での番号だった。

脱走のためのカモフラージュの準備としてリナが着替えを済ますまでの間室外に出たガウリイ、ケイン、レイル、ゼルの四人はあらためてその番号を見入った。
「一体全体・・・。リナとはどう言った素性の娘なんだ・・・。」
レイルが呟く。
「さあな・・・。どうとでも考えられる。先王の隠し子か、さもなくば王家のだれかの私生児か・・・・。もしくは現国王の『正真正銘』の兄弟か・・・。憶測してみれば尽きる事はないが一つだけ言える事はあの娘が暴君の王位に脅威をもたらす存在、という事だけだ。」
いつもながら論理的にゼル。
「女なのにか?」
暢気な考えのガウリイ。
「政略結婚をしてどこかの国、強いて言うならハプスブルク家と組んで国王に楯突くと言う手段もあるんだぜ?」
ケイン。
「そ〜〜か・・・。でも、どちらにしろリナの事を『道具』としてしか見てないんじゃねえのか?そういうの・・・。俺は好かんぞ。」
やけに感情的なガウリイを諭すためにゼルが口を開きかけたその時だった。
唐突に開くドア。そこからそっと出てくる一人の人物。
思わずケインが苦笑して呟く。
「弟が・・・帰ってきたみたいだな・・・・。」
紺碧の地に銀色の質素ながら繊細な刺繍のほどこされた足首までの長さの銃士服。
刺繍同様の銀色のボタンとケインの家の家紋の彫刻された純金とルビーとで造られたエポレット(勲章)。同じく紺碧のベストとズボン。それらにも銀糸で刺繍が施されている。肩から腰にかけてめぐらされている太い造りの皮製の黒いベルト。さらにそこから腰を絞める別の細身のベルトには煌びやかなまでの優美な曲線のサーベルが誇らしげに吊るされている。極めつけは栗色の髪と対照的なコントラストの純白の大きな羽飾りのついた銃士帽。小柄な身長をブーツで補ったとしてもかなりの見栄えの良い銃士である。
勿論その銃士は先ほどまでの物憂げなお姫様のリナだった。
ケインの弟の銃士服を昨夜アメリア、キャナル、ミリィが寝ずに仕立て直したものだった。(それなのに彼女達が修羅場を回避してお茶と洒落こんでいる事をど〜こ〜言う奴!!君は心が狭いぞ!!)
「で、これで良いわけ?」
面白そうにリナが聞く。
何年間もこんな牢獄に閉じ込められていた彼女にしてみれば当然と言えば当然的に始めての経験である。
最も普通の女性と言えども男装して敵の追撃から逃れる、などと言う四面楚歌よろしくな状況に追い込まれる事はそう滅多にあるもんじゃあ無いのだが・・・。
「まあ・・・。な・・・。」
リナを直視できないガウリイがあらぬ方向を向きながら曖昧に答える。
「おい、ガウリイ。慣れない格好でリナが転んだらたいへんだろ?手でも引いてやれよ。」
からかう様にケインが言う。
「え・・・。あ、ああ。ん、ほら。」
躊躇いがちに差し出されたガウリイの手をリナも躊躇いがちに取る。
「じゃ、ま。ド修羅場となるかもしれん脱獄劇、と洒落こむか。」
レイルの一言。
「と、言いますと?」
リナの問い。しかし、怯えてる様子は微塵も無く、むしろ楽しんでいると言った表情。
「傭兵連中も真面目に仕事をしてる奴が居た、と言う事だ。」
微かにゼルが微笑みながら言う。
「へ〜〜え、つ・ま・り。さっさとコンな根無し草よろしくな生活とおさらばする為に常日頃から国王に媚びる為の手柄の機会を狙ってるって言うわけね。」
皮肉交じりの発言をしたのは言わずと知れたリナだった。
間もなく。
「脱獄者」であるリナとその援護者を捕らえるべく無数のリナ曰く「国王に媚びる機会を狙ってるろくでなしども」がわんさかと集まって来た。
「でも。良いの?一応こいつ等倒しても脱獄って犯罪でしょ?」
とリナが悪びれた様子も無く言う。
ここで「皆様を罪人にする訳には参りません。私は牢獄へ戻ります!!お達者で・・。私などの為に死力を尽くして戴いて下さったことを嬉しく思いますわ・・。ご機嫌よ!!」の、言葉の一つも言えば可愛げがあるって言うものだが全くもってその気配が無し、と言う所がミソである・・・・・・。
最もガウリイとしてはそんなありきたりなお約束じみた言葉は期待すらしていないのだが。
「ゼロスが揉み消してくれるんだとよ。最も一時的なしのぎだろうがな。」
ケインまでもがリナにつられたんだろう、面白そうに言う。
「ガウリイ、他にもまだ追っ手は居るとは思うんだが・・。こいつ等風情は俺達が片付ける。リナを連れてアメリア達の所に先行っててくれ。」
「ゼル、分かった!!行くぞ、リナ!!」
「仲間を置いて行くの?」
怪訝な顔のリナ。
「こいつ等がこんな寄せ集めのボロクソ兵団に負けるとおもうか?」
暫しの沈黙・・・。
「まっさかあああ!!この人達がこんなボロクソヘッポコクソバカヘボヘボク糞生意気ゴミスカ烏合の衆媚び売り集団に負けるなんて天と地がひっくり返ろうがミミズに目があろうが蛙にオヘソがあろうが革命が起きようがぜえええええったいにありえそうも無いわね。」
「な。」
傭兵集団と物事の例えをボロックソに言うリナにあきれ果てるとも無くガウリイは返答した。


「居たぞ!!こっちだ!!」
完全にオリジナルティーや個性の無い台詞を言いながらやって来る追跡者。
「リナ、下がってろ。」
繋いだ手を一時的に離しながらその手を剣の柄に運ぶガウリイ。
が、その剣が抜かれる事無く・・・・。
ドンガラガッシャンガラガラガショオオオオオオオンズゴゴゴゴズバビロオオオオ・・。
正体不明の衝撃音と何かが階段から転げ落ちる・・・あえて言えばとっても痛そうなおとがあたり一面に木魂した・・・。
「リナ・・・お前・・・。」
「其処にあったビール樽転がしてやったわ。エヘ。(ハ〜ト)。」
「エヘじゃない・・・。たく!!俺の見せ場を・・・。」
「ま、細かい事気にしてたら大物にはなれないわよ。」
「そんな者になるより!!見せ場貰った方がよっぱど嬉しいぞ!!」
「・・・。じゃあ〜〜、ご一緒に・・・。」
「そ〜だな・・・・。」
左手を左目の目元に持ってきて・・・。
さらに右手を一寸ばかし上げて・・・・。
いっせの〜〜でで「二人同時に中指突っ立てて、舌ベロ出して、追撃者に向かってあっかんべええええええええええええええええええええええええ!!!!!!!」
をする二人。
はたからみれば随分と微笑ましい光景である。
一寸した可愛らしいウィットに富んだフレンチ・ジョークをカマしただけだと言うのに何故か顔色を真っ赤にして怒り狂い罵詈雑言を吐きながら更に激しく追って来る追跡者。
「あ〜〜あ・・・。これだからジョークの分からない奴は困るのよ。」
困ってる、といった雰囲気とは程遠い楽しそうな口調でリナ。
「顔、トマトケチャップやタコよろしく真っ赤だぜ、あいつら。」
つられてガウリイも可笑しくて堪らないと言った様子でリナに呼応する。
「きゃはははは。はやくも酔っ払ってしまったようね!!」
「よ〜〜し、リナ。全速力で逃げるぞ!!酔っ払いはタチが悪いと昔から相場が決まってるからな!!」
「ちなみにワインはやっぱりフランス産のヌーボー!!ビールはやっぱりドイツのミュンヘン・ヴァイス・ビールでしょ?」
「ははは。流れの傭兵らしく本場じゃないフランス産ビール浴びちまったて事か。あいつ等。」
「そ〜〜ゆ〜〜事!!」
再び手を繋ぎ走り出しながらもジョークを言い続ける二人。
「よ〜〜し、ゴールまであともう一寸!!あ、お前、今度はワックス蹴っ飛ばすてかあ?」「滑って、転んでド〜ロドロ!!」
「ははは。さっきのビールに拍車をかけてドロドロの泥酔って事か?」
リナの蹴っ飛ばしたワックスと言う単純な罠に引っかかり次々に追撃者達がスッ転がって行く音がする。
「きゃははははははははは!!!!」
「おいおいおいおいおい!!」
とかナンとか言いつつリナとガウリイは顔を見合わせてニヤリっと笑い「ピシ」と同時に親指を立てる。


ゴールまあとわずか・・・・。
「げげげげげげげげげげげげげげげげげ!!!牢獄外にもまだ追っ手が居るぞ!!ケイン達、早く応援に来てくんね〜かなあ・・・。」
「ほんっと。国民の血税でこんな下らない集団やっとてるなんて!!税金泥棒も良いところよね!!万死に値するわ!!」
はたからみれば追撃者に追われて苦悩する脱獄犯とその共犯者。
しかし、リナとガウリイの表情のそれはあからさまにその状況を楽しんでいた。
「お〜〜い!!無事だったか!!?」
聞き覚えのある声と三つの人影。
「お〜〜い!!ゼル、ケイン、レイル!!無事だったか!!?」
今だ楽しんでいる表情を崩さぬままリナとガウリイは三人に手を振る。
「ああ〜〜。傭兵どもの方はあっさりと片付いた。けどよ、ここまで来る途中、ビール樽は転がって其処ら中に中身がぶちまけてあるは、ワックスで滑って頭壁にぶつけるはでもう大変だったんだぜ?」
みょ〜〜にやつれた様子でケインが言う。
「それは大変だったわね。」
表情一つ変える事無くいけしゃあしゃあとリナがケインを労う。
「で、あいつ等はど〜するんだ?」
まだまだ沢山居る追っ手を指差しゼルガディス。
「それに頭を抱えてた所だ。」
やはりいけしゃあしゃあとガウリイ。
と・・・。其の時である。
ずどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどど〜〜ん!!!!地を揺るがすような轟音、とまではいかないがかなりのドハデな喧しい音がバスティーユの門前に木魂する。
「正しき正義を追いつめし悪よ!!このアメリアが天に変わって貴方達を成敗します!!とう!!」
やおら其処らへんの木から飛び降り、マトモにお池にぼっちゃ〜〜〜〜んするアメリア。が、すぐに這い上がり・・・・。
「リナさん!!このアメリアが来た限り、もうご安心下さい!!」
などとのたまう。
「は、・・。はあ・・・。」
流石のこれには参るリナ・・・・。頭に水草がくっ付いているのがミソである・・。
「ハ〜〜アィ!!ケイン!!」
キャナルが最新式の英国製のアームストロング砲弾を引っ張りながらやって来る。
「どいて!みんな!!」
言うが早いかミリィの銃が連続射撃を繰り出す!!
「アームストロングもミリィの鉄砲も空砲よ。」
言ってキャナルはにっこりと笑う。
「伊達にお茶でもしてたと思った?」
厭味たらしくミリィが野郎ドモに言う。
「謝るよ・・・。それより・・・。何所からこんな者持ち出してきた?キャナル、お前が前前から武器マニアって事は知っていたが・・・。ここからお前の家までざっと五キロはあるぞ・・・。この短時間でしかもアームストロングなんぞ引っ張りながらど〜やって来た?」
ケインが目を白黒させながら聞く。
「正義を愛する心さえあれば!!何事も可能です!!」
追撃者に煮え湯をぶっ掛けながらアメリア。
「お前には聞いてない。(ゴチン!!)、キャナル、ケイン続けてくれ。」
「ゼルガディスさああああああああああああんんん!!ひどいですうううううううううう!いたいですううううううううううううううううううううううううううう!!」
「ケインのお家に密かに武器庫を造らせていただきました。お陰で重宝しております。」
にっこりと微笑みながらとんでもねえ事を言うキャナルの言葉にケインはマトモに卒倒した・・・・・。
「良いじゃないの。たかが武器庫くらい。けち臭いわねえ。」
空砲を鳴らしつつこれまた不条理な事をぬかすミリィ。
「んじゃま、最後に!!み〜〜〜んなまとめてドッカ〜〜〜〜ン!!!」
楽しそうにアームストロングを鳴らすキャナル。
「今のうちに逃げるわよ!!」
「ええええ!!まだ正義の鉄拳制裁が出来てません!!」
「良いから来い!!厄介事に巻き込まれるのは御免だ!!」
おかしな乱入者三名のお陰でアッサリとその場を逃れる。
まあ、責任はすべてゼロスの押し付けとんずらこいたと言う説のほうが有力だったりもするのだが・・・・。

「美味しい所、取られちゃったね、ガウリイ。」
「な〜〜に、またナンかやらかしゃいいさ。今度は二人でな。」
やはり楽しくて仕方ないと言った様子のリナとガウリイだった。

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919砕かれた鎖4LINA 12/21-18:25
記事番号914へのコメント
ガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャ・・・・・・・・・・・。
「クツワムシを部屋にいれるなあああああああああああああああああああああ!!」
ケインの絶叫が部屋に木魂する。
「良いじゃないですか。リナさんはあんまり外に出る事すら出来ないんですよ?」
アメリアの言い分にケインも返事を窮す。
あのあと。
ゼロスに責任を押し付けとんず・・・もとい、何とか死地から逃れリナを救い出した一同はとりあえず今後リナをケインの従兄弟として彼の家に逗留させる事にした。
しかし、事情が事情である。
リナの外出は限られた場所以外は厳禁。
外部の無関係者のリナとの接触は皆無に等しいような状況にせざるおえなかった。
彼女のもっぱらの遊びや話し相手はケイン自身や毎日のように尋ねてくるキャナル、アメリア、ミリィだけだった。
あれいらい仕事が忙しくゼルやレイル、そしてガウリイは尋ねてくる暇が無い。
最もガウリイは顔を合わせるたびに「リナはど〜〜だ」だの「今度会わせろ」などとケインに対して脅迫まがいな要求を突き付けてくるのだが・・。
かくゆうケインも死んだ弟の面影が何所と無く感じられるリナにたいして実の妹のようにおもえてならない時があった。
「ケイン、たまにはリナを外に出してあげたら?」
熱心にクツワムシの写生をしているリナをみつつミリィ。
「さもないと武器庫の武器、全部に点火してこの家ふっとばしてやる!!!」
過激派よろしくな事を言うキャナル。
「そ〜〜言うなって。リナ、今日の庭の散歩付合えそうだし・・・。勘弁してくれよ。」頭を掻きつつケイン。軽く微笑むリナ。
安心したケインはそっと退室した。
「リナさ〜〜ん・・。いいんですか?」
リナを実の姉のように慕うアメリア。
「ケイン、最近忙しくってあんまり相手してくれなかったのよ。でも、一緒に散歩してくれるって今日は言ってくれたしね。それだけでも嬉しいわ。」
本当に嬉しそうなリナの顔。
「ちゃんとリナの相手してくれて無かったの?アイツ!!今度とっちめといてやるわ!」いきまくミリィ。
「う〜〜〜ん・・・。でも・・・。バスティーユよりかはマシよ・・・・。」
何気ないリナの一言に沈黙せざるおえない一同。
下手な外出は再びリナをそこに送り返す事になりかねないので・・・・。


「リナ。」
彼の訪問は唐突だった。
「ガウリイ!!」
不意に現れた珍客にふと読書する手を止めるリナ。
「外に出ないか?」
突然の一言。
しかし、リナは沈黙したまま・・・・。
「このままじゃ、バスティーユに居るのと変わらないぞ?」
なおの沈黙・・・・。
「リナ!!」
「・・・・。じゃあ、お願い聞いてくれる・・・?」
瞳の奥に蠢く企みを秘めた輝き。


「で、こ〜なる訳だ・・・。」
口調こそあえて不満げに取り繕っているが表情と目つきは楽しくて仕方ないと言った様子のガウリイ。
「まあね・・・。貴方の腕前は中々のモノだってまえケインが絶賛してたの。あたしもその筋じゃあバスティーユ内では評判だったのよ?」
ざっと説明すれば・・・・。
ガウリイの様子は頭に純白の布を巻き髪を束ね、簡素だが立派な上着とケインのそれとは違い不信感の無い白いマントを羽織い手には年代物の立派なリラを携えた吟遊詩人スタイル。リナもやはり純白のリボンで髪を束ね、淡いサフラン色の旅行着を歌い手の衣装の代用品としていた。
カペー朝時代を彷彿とさせるこの吟遊詩人の二人組に人だかりが集まるのは時間の問題だった。
「で、謳わなきゃいけないのか?」
「謳うにはアタシよ?」
「じゃあ・・・。弾かなきゃいけないのか?」
「弾いて謳わなきゃ吟遊詩人の商売上がったりでしょ?」
楽しげなリナに苦笑するガウリイ。
しかし、実は全然嫌がっていないと言うのがミソである。
「で、何を?」
「そ〜〜ねえ・・・・・。モロントノ毒の秘密を知っている妃の住居はアイルランドの岸辺にそびえるウェーズフォート城で彼女はこの城で娘のイゾルデ・・・・・・・・
美しいこがねの髪のイゾルデと一緒に住んでいるのであった・・・・・。」
「・・・愛し合う二人は震えあがった・・・。そして、ついにトリスタンがようやくの事で口を開いた・・・。『なるようになるが良い!!はかりしれない愛も大歓迎だ!!死も大歓迎だ!!』・・・・。トリスタンとイゾルデ。好きなのか?こんなのが?」
リナの歌声に続き、ガウリイが謳いそして、質問する。
「暗いかしら・・?」
「リナと謳ううたじゃないな・・・・。」
「じゃあ、ルナール。狐物語!!」
「よしきた!!」
ガウリイが弦を弾く。
噂通りの腕前。
微妙な旋律に思わず聞き惚れたリナだが息を吸い、ガウリイに勝るとも劣らない澄みきった歌声で謳う。

卿らはきかれた、多くの語り手達の物語る、多くの物語を。
パリスがヘレネーを奪い去り、艱難辛苦を経た事の次第や
ラ・シェーヴァルがいともめでたく作り語ったトリスタンの身の上
はたまた数多の小話(ファブリオ)や武勲詩(シャンソン・ド・ジェスト)
世にあまねきなおも多くの物語を
しかし、卿らはかつて聞かれなかった
ルナールとイザングランのかくも熾烈を極め
永きに渡って激しかった戦いの経緯を
この二人の勇者は、まこと一日たりとも和解せず
相次ぐ葛藤、戦闘に、まことや明け暮れた次第であった
さあ、今よりその物語を始める故
聞き給え、喧嘩、軋轢のさてそもそもの事の始めを
いかなる原因、いかなる誤解が両者をして戦端を開かしめたのかを・・・・・・・。


リナの声に何時の間にかつられてガウリイも謳う。
あたりは一面人だかりとなっていた。

「うわああ。お金一杯もらっちゃたねえ・・・。」
「正当な代金だろ?散々リナの歌声きいたんだしな。」
ポケット一杯に溜まったコインを眺めながらリナとガウリイは面白そうに言い合う。
「あ〜〜あ。毎日こんな生活できたらどんなに良いか・・。」
珍しく遠い目をしてリナが呟く。
「したけりゃ何時でも俺がさせてやるよ。」
妙に嬉しそうな顔をするリナに照れ臭くなって思わず目線を上の方に逸らすガウリイ。
と・・・。そのときだった・・・・。
「お〜〜〜〜ま〜〜〜〜〜え〜〜〜〜ら〜〜〜〜〜ああああああああああああああああああ!!!!なああああにいいいいいしとおおおおおるうううううんんんだああああ〜〜〜〜〜〜〜〜〜。」
半ば血相変えて悪霊と化しているケインの呻き声ともつかない声が後方からした。
「悪い!!心配かけさせちまったか?」
きわめて軽い調子でガウリイ。
こ〜ゆ〜時のケインの神経を逆撫でするとロクな事が無い・・・・・。
「心配したなんてもんじゃねええええ!!寿命が三十年縮まっちまったぞ!!それに、そんな格好で何をしとったんだ!!何を!!」
息を切らしながら更にまくしたてるケイン。
「何って・・・・。吟遊詩人の真似事・・・・。」
「だあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ×2000000000!!!!!!!!!!!
そんな事はウィーン少年合唱団に任せとケえええええええええええええ!!!!」
絶叫するケイン・・・・・。
「まあまあ・・・。そんなに騒ぐと血糖値上がるぞ。」
「誰が上げとると思ってるんだああああああああああああああああああああ!!!!」
「少なくともアタシ達のせいとは認めないわ。」
ケインの心配をよそにいけしゃあしゃあと言うリナとガウリイ・・・・。
「ともかく!!心配かけんじゃね〜〜ぞ!!まったく!!」
『は〜〜〜〜い。』
リナとガウリイの気の無さそうな返事がハモる。
「ねえ、ガウリイ・・。また連れてきてくれるよね。」
「勿論だぜ!!」
前方をブツクサ言いながら歩くケインに気付かれないようそっと小声で呟き、ビッシと同時に親指を立てる二人だった。

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920砕かれた鎖5LINA 12/21-18:28
記事番号914へのコメント
「スゴイでしょ?レジャンス様式の猟銃よ!!しかも銀製の弾丸の入ったヴィンテージものなのよ〜〜♪」
嬉しそうにケインの家を無断借用して造った武器庫を駆け回るキャナル。
「すごおおおおおおおおい!!今度貸してね!!」
同様に武器、というよりも猟銃マニアのミリィ。
「ケインさん、今度アタシのヒロイック・サーガ本の蔵書コーナーもここのお家に作っていいですか?」
「・・・・・・・・・・・。お前等・・・・。俺の家をテナントかナンかと勘違いしてるだろ・・・・・・・・・。」
アメリアの要望にマトモに顔を引きつらせながらケイン。
「お前の刃物コレクションとマントコレクションの部屋よりマシだと思うぞ。」
すかさず突っ込むレイル。
「しかし・・・。よくもまあこんなに集めたもんだ・・・。」
キャナルの武器コレクションを見まわし呆れ果てたようにゼルが呟く・・。
その総数、ざっと一万点は下らないだろう・・・・・・。
「これで『この家に在る武器全部に点火してこの家ふっ飛ばしてやる!!』なんて言いやがるんだぜ?堪ったもんじゃね〜〜よ・・・・。」
リナの事といいキャナルの武器庫の事と言い・・・・。
銃士、ケインの心労は耐えない・・・・・・・・・・・・。


「リナさん、どんな風にします?」
待っていたかのように尋ねるアメリア。
「う〜〜〜ん・・・。でも・・・・。また怒られるしなア・・・・。」
一寸困ったような口調でリナ。
「アタシ達が加担するわよ。」
ケインをからかうと言う行為が楽しくてしょうがない、と言った様子のミリィ。
「そ〜そ〜。許してくれなきゃ武器庫に点火するまでよ。」
あくまで武器庫にこだわるキャナル・・・・。もしかしたらカタストロフィーを望んでいるのでは・・・・と疑わざるおえない・・・・。
「うっと、じゃ〜〜ね・・・・・。」
照れ臭そうにリナは一つの注文をした。


「ガウリイさん。リナさんをまたまた連れ出すんですか?」
アメリアに図星を突かれた事に一瞬ビクっとなるガウリイ。
「ま・・・まああ・・ああ・・・。」
とことん誤魔化しが下手な奴である・・・・・。
「大丈夫。アタシ達、加担するつもりよ。」
からかうようにミリィ。
「そ・・・そ〜〜〜か・・・・・。」
安心したような照れたような笑みを浮かべるガウリイ。
と、やおらドアが開き・・・・。
「じゃああああああああん!!」
ヘア・ブラシを片手に持ったキャナルが出てきた後には・・・・・・・。
額が見えるように栗色の髪を左右に分け、後ろ髪と横髪を垂らさないようにふっくらとした雰囲気に編みこむ、と言うドイツの一地方のバイエルン風に結い上げ、ベルギー産の繊細な造りのレースのついた水色のケープを羽織ったその下には青っぽいバイエルン風の普段着のドレス。
そして顔を出来るだけ隠すためであろう、ケープ と同色のやはりベルギー産であろうレースを技巧して造った見事なヴェールのついたシルクの帽子をかぶったリナだった。
「ついでにコレも!!」
咄嗟の機転というのであろう。
銀色のチェーンについた綺麗なアクアマリンのネックレスをリナにかけるアメリア。
当然のことながら茫然自失と見詰めるガウリイ。
「何、クラゲよろしくぼ〜〜っとしてんの?どっか連れてってくれるって約束したじゃない!!」
口調は相変わらずのリナ・・・・・。
「あ・・・・。ああ・・・。う、ううん・・・・。」
本気で返答に窮するガウリイ・・・。密かに『こりゃ〜〜、からかいがいがあるわ』とかナンとか思ったりするリナだった・・・・・。


今回の扮装は何所からどう見ても『ご洋行のバイエルンのご令嬢』と『エスコート役の銃士』である。
流石に今回ばかりは照れ臭いガウリイ。
「で・・・・。何所行きたい?」
ケインの家を無事脱出(?)し、適当にシャンゼリゼ通りをぶらつく二人。
「賭博所。」
あっけらかんとしたリナの返答・・・・・。
「あのなあ・・・。そ〜〜ゆ〜〜事はもう一寸考えてから・・・。」
「冗談よ、冗談!!えっとねえ、オペラ座!!」
「駄目だ!!俺は眠くなるから!!」
「ケチ!!」
「ナンとでも言え!!」
ふて腐れたように言うガウリイにリナもプウっと頬を膨らませる。
「じゃあ、其処らへんに座って話すだけ、っての駄目か?」
シンプルなガウリイの提案。
「其処らへん、てのじゃあなくってこの前完成したってアメリアが言ってた植物公園なら良いわ。珍しい外国の植物とかも一杯あるって言ってたし!!」
「よしきた!!」


「見て見て!!ガウリイ!!」
無意味にはしゃぐリナに苦笑しながらも振り回されるガウリイ。
しかし、楽しんでいない訳ではない。
むしろリナ同様にはしゃぎ回りそうな自分を自制しての苦笑だった。
「きゃはは!!ウツボカズラだって!!ブーゲンビレアにハイビスカス!!ユッカにベンジャミンにドラセナ!!あ、これ可愛い!!」
「蘇鉄の木だな。」
リナの目を止めた木が偶然知っていたものだったのでガウリイは名前を教える。
「ふ〜〜ん。今日のお礼にキャナルに買ってあ〜〜げよっと。」
「武器室のオアシスってか?」
「きゃはははははははははははは。」
同時に笑い声を上げる二人。はたから見ればおかしな外国人の令嬢とおかしな銃士である。


ひとしきり公園を散策し回ったその後。
背の高い緑の木々や芝生の若草色、さらには淡い色の花壇の花や純白の大理石で造られた噴水と言った景色に溶けこむ淡色の水色の衣装と繊細なレースに囲まれたリナをガウリイは見やる。
今日ははしゃぐだけはしゃいだが何時もの悪戯好きな一面を覗かせない。
初対面の時、銃士姿でビール樽やワックスの缶を蹴っ飛ばした彼女が嘘のようである。
何よりもふっくらと結い上げられた異国風の髪型はいつものロング・ヘアーとは別人のようである。
「バスティーユに幽閉される前の数年間、バイエルンに住んでたの。」
観察されているのに気付いたのだろうか。そっとガウリイに話しかけてくる。
「 ドイツにか・・・?」
思わず聞き返す。
「ええ・・・・。でも、その時から薄々だけど。アタシの存在は世間に暴露されたら大変な事になる、って事は感付いていたわ。最も、当時は自分の事をドイツ人、強いて言えばビッテルスバッハ家、バイエルン王家の訳在りの人間だとばかり思って信じて疑わなかったけどね。」
ふっと遠い目をするリナ。
「話してくれないか・・・・?」
「退屈な話よ?オペラ以上に。」
「リナの話じゃ寝れるわけね〜だろ?」
その一言に苦笑するリナ。
「アタシはある貴族の家で育てられてたの。彼はアタシに馬術、剣術、フランス語を始めとする数多くの学問を教えてくれたわ。アタシは慣例により彼のことを『父上』と呼んでたの。」
「本当の父親と思ってたのか?その人の事?」
「うんう・・・。父親にしてはアタシに接する態度が丁重過ぎるんでね・・。こりゃ〜〜ナンかあるな、と思ったのも其処からよ。」
「なるほど。」
言ってガウリイはリナの隣の噴水に腰掛ける。
「とても暑い日だったから・・。良く覚えてるわ。アタシが本を読んでてそのまま昼寝しちゃった時の事よ・・・。」
「お前さんでもあるのか・・・?そんな事・・・。」
「アタシだって人間!!シャルルマーニ(カール大帝)だってしかりよ!!」
ぷうっとむくれるリナに道化よろしく「失礼しました」と言わんばかりに優美なお辞儀をするガウリイ。
「その貴族の人が・・。多分庭からだと思うんだけど・・。『アリス!!アリス!!』って大声出すのよ・・・。」
僅かに眉をひそめて声のトーンを落しつつリナ。
「アリス?」
「アタシの乳母だった人。で、アリスは庭の方に行ったのを夢現ながら覚えてるわ。でも・・・。次ぎのその貴族の人の一言・・・。流石に目が覚めたわ・・・。何て言ったと思う?」
「オネショしちまった。洗ってくれ!!」
「馬鹿!!そんなわけある筈無いでしょ!!『フランスの王家からの手紙を井戸に落としてしまった!!』そう言うのよ!!『もし、誰かに見られてあの子の事がばれたら・・。』続けてアリスもそう言っわ・・・・。勿論、屋敷に子供はアタシしか居なかったし・・。二人が慌てふためいて何所かに行ってるうちに井戸に入ってその手紙を拾ったわ・・。
最も字は滲んでて読めなかったけど・・・。」
そして、リナの表情がたちまちのうちに曇る・・・。
「その事がばれて・・・・・・・。アタシは次ぎの日には捕らえられて・・・。引き摺るようにフランスに送還されて・・・」
「分かった!!もういい!!」
遮るようにガウリイが言う。
・・・・分かってる・・・バスティーユに有無を言わさず投獄された・・・・・・
「悪かった。リナ・・・。帰ろう。もう誰もお前をあんな所に連れ戻そうなんて事出来やしないさ。ケインが待ってる。」
「・・・有難う。ガウリイ・・・・・。」


「リイイイイイイイイイナアアアアアアアアアア・・・・・・・。
がああああううううううううりいいいいいいいいいいいいいいいいいい!!」
帰ってきた二人を迎えたのは恐ろしい形相のケインとそのケインにこっ酷く絞られたのであろう、ぐでええええええっとなってるキャナル、ミリィ、アメリア。
そして止めるに止めれないと言った様子のゼルガディス。
面白くて仕方ないと言った様子のレイルだった・・・・・・。
「ひいいいいいいいいいいいい!!ケイン!!ゆるしてえええええええええ!!」
「お、お、俺達、賭博所なんかに行ったりしてねえぞおおおおおおお!!」
「当たり前だアアアアああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!
おのれらあああああああ!!心配ばかりかけさせおってからにいいいいいいいいい!!」怒り狂ったケイン。
今日ばかりはさしものリナとガウリイもたじろいだ・・・・・・。
「いいか?本当に心配したんだぞ?」
急にトーンを落としてケインが溜息混じりに呟く。
「とは言っても・・・。マトモにリナの相手してやらねえ俺も悪かったし・・・。」
兄貴ぶりも板についてきたと言った所か。
照れ臭そうに『償い』と小声で言いながらリナに右手を差し出すケイン。
その手の上には何かがのっている。
「マーガレットか?」
ガウリイが言う。
それに続きケインの手の上を覗きこむリナ。その顔色がぱっと晴れやかになる。
「エーデルワイス!!!」
嬉しそうにリナは小瓶に入った小さな『高貴な白』の名を冠する花を受け取る。
「少しは大人しくしてくれよ・・・?」
苦笑しつつケインが呟く。
「ガウリイ・・・。アリガトな・・・。」
ケインの小声の礼にガウリイは快心の笑みを浮かべるのだった・・・。

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921砕かれた鎖6LINA 12/21-18:31
記事番号914へのコメント
「噂に名高い宝石泥棒退治!!?」
物語に活躍する銃士達がよく関わる事件そのものがいま巷をにぎわしている。
勿論物語りよろしくココに居る実際の四銃士達もその捕り物に狩り出される、と言った次第である。
「やっぱり予告状なんて来てるんですか?」
こ〜ゆ〜話し、代好きなアメリア。
「そんな律儀なもの出すような奴がこのご時世居たら誉めてやるぞ。」
つまらなそうにレイル。
「じゃあ、誉めて。」
唐突に放たれたリナの一言に一瞬の沈黙が生じた・・・。
「真坂・・・。『来てる』なんて言うつもりじゃあ・・・。」
恐る恐るミリィが尋ねる・・・・・。
「ホント、キザと言うか古典的と言うかオリジナリティーが無いと言うかお約束通りと言うか・・・・。」
リナが手でピラピラと弄る紙切れを横から眺めつつキャナルが零す。
「・・・・・・・。」
この一言を肯定と受け取らねばならないこの世の中の不条理さかな・・・・。
「レイル・・・。誉めてやれよ。」
ここぞとばかりに何時も虐められている仕返しにレイルにチャチを入れるケイン。
「今から誉めてやるところだ!!」
ムキになったりする所がやはり大人げの無いレイル君・・・・・。
「で、予告状には何て書いてあるんだ?」
気を取りなおすようにゼルの質問。
「何時の間にか後ろに回りこみ肩越しに紙を覗きこんでいるガウリイを極力気にしない様にしつつリナが読む。
「今宵、夜十二時。其方の宝物を戴きに参る・・・。コンだけよ。」
あっさりとした文章である。
「つまり、ケインさんのご自宅、つまりココのお家の無け無しのお金、と言うか宝物類を盗みにくる、そ〜ゆ〜事ですね。」
「あめりあ・・・。なけなしのカネとはどおいうことだああああああああああ・・・。」ケインの抗議の声を無視して続ける一同。
「まあ、ココに入ってもさしたる被害総額にはモトがモトだけに(滅茶苦茶強調)ならんとは思うが・・。一連の事件の同一犯に違いない。張りこんでいるに越した事はないな。」
ここぞとばかりに先ほどの復讐を遂げるレイルだった・・・。
「世の中には血も涙も無い奴が居た者だ・・・。こんな貧しい酔狂マント男の家に泥棒に入るとは・・・・。」
ゼルまでヒドイ事を言う・・・。
「ある意味じゃそいつ、かなり無欲かもしれんぞ。もっと金持ちの家に押し入ればもっとがっぽり金盗めるんだろ?こんな所に来たって収入はたかが知れてるじゃね〜〜か?」
今だリナの肩越から喋くるガウリイ・・・。
「酷い事言うわね・・・。みんな・・・・。」
流石に居候の身分では何も言えずケインの味方に回らざるおえないリナだった。」
「俺・・・。今度内職しようかな・・・・・・・・。」
そう言うケインの背中が無性にみすぼらしく感じるのは気のせいだろうか・・?


ガシャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアン!!!!!
大時計の針が丁度十二時を回っただった。
「だああああああああああああ!!窓ガラス割りやがって!!この間取り替えたばかりなのにいいいいいいいい!!!」
滅茶苦茶みみっちい事を言うケイン。
「まあ、窓を割って侵入、って言うのはあ〜ゆ〜奴のお約束だろ?」
諭すようにガウリイが言う。
「じゃあ、お前!!割れたガラスの代金払ってくれ!!」
「嫌だ。」
訳のわからない言い合いをしながらケイン、ガウリイ、レイル、ゼルは音のした方に駆け出して行く。
「コレ以上無け無しの財産を取られたくなかったら真面目に走れ!!」
『無け無しの〜〜』と言うところは否定したいが、確かにコレ以上の出費を避けたい(と、言っても盗難される、だが)ケインは渋々ながらゼルの言葉に従った・・・。
「盗むんならキャナルの武器庫のブツだけにしてくれよおおおおお。」
キャナルが聞いたら怒り狂いそうな台詞を言いつつケインは全力疾走した!!
「ケイン!!」
唐突にかかるガウリイの声!!
振り向くケイン・・・が、その刹那・・・・・。
すてええええええええんころころころころころころころころころこべちゃあああああん
「マントが足に絡まってコケるぞって・・・・もう遅かったか・・・・。」


「貴様らか・・・?この男の貧しい財布から金品を強奪しようとする血も涙も無い輩は。」今だダメージから立ち直れないケインに更に追い討ちをかけることを言うゼル・・。
最も、彼としては「血も涙も無い輩」こと泥棒に対して発破をかけたつもりだったのだが・・・。
しかし、そんな言葉の綾にかまっている暇は無い。
いっせいにサーベルを腰の鞘から抜き出す四銃士。
しかし、侵入者達に動じる気配は無い。
深く被った帽子越しの表情にはむしろ嬉々としたものすら伺える・・・・。
「何が可笑しい?」
不愉快そうにケインが聞く。
「嬉しいんだよ・・・。お前達噂に名高い四銃士がいとも簡単にあっさりとこんな罠に引っかかってくれてな・・・。」
弾むような声・・・。
「しまった!!」
事の重大さに真っ先に気付いたのはレイルだった。
「如何したと言うんだ・・・?レイル・・・?」
きょとんとした様子でガウリイ。
「今すぐリナ達の所へ行け!!ガウリイ!!」
その一言に流石に状況を把握したガウリイは青ざめる・・・。
「リナを如何するつもりだ!!?」
焦りに声が自然と上ずる・・・・。
「王家の大切な宝物・・・。こちらとしては邪魔なのでその命を奪う・・・。それだけだ。安心しろ。あの娘以外の者の命は奪いやしない。」
侵入者・・いや暗殺者は平然と答える。
「いま流行りの宝石泥棒をカモフラージュしたやり口か。汚ねえぞ!!悪いけどなあ!ガラスの弁償代くらいは払ってもらうぜ!!」
怒気に満ちた声を上げると同時にケインが暗殺者に飛びかかる!!
続いて別の敵とまみえる残りの二人。
「任せたぞ!!」
言ってガウリイは全速力でリナと物見遊山気分のアメリア達カが宿泊している部屋に駆け出した!!


「リナ!!!」
扉を突き破り中に入る。
「駄目!!明かりを消されてるうちにリナだけ外に攫われちゃったみたいなの!!」
慌てた口調ながらミリィが辛うじて説明する。
「リナさんが目的だったんですね・・・。」
臍を噛むようにアメリア・・・・・。
「早く!!追って!!今なら間に合う!!」
まくし立てるキャナルに頷きガウリイは再度全力疾走し夜の町に駆け出した。


「リナ!!」
その姿を発見し大急ぎで駆け寄る。
素手で自分を攫った暗殺者と奮戦するリナを敵から引き離し、剣を抜きあっさりと斬りつけるガウリイ。
一瞬にして勝負はついた。
どうやらリナとのとっくみあいで敵はかなり体力を消耗していたらしい・・。
「よくやったなあ・・・。お前・・・・。」
「こ〜〜見えてもバスティーユに入る前はアルプスを駆け回って鍛えてたのよ?」
言ってリナはニッコリと微笑んだ。
「まったく・・・。今回ばかりはしてやられたぜ・・・。」
今更ながら全力疾走した事がこたえたガウリイはその場でヘナヘナと座り込む。
偶然持っていたのであろう。
リナのハンカチが汗をふき取るのが心地良い。
「いやあ〜〜〜。お見事でしたネエ、ガウリイさん。」
ぱちぱちぱちぱちという無意味な拍手と共に現れたのは予想通りの顔・・。
『ゼロス!!!』
二人は同時にその人物の名を呼ぶ。
「見てたんならさっさろ助けなさいよ!!」
苛立った口調でリナが責める。
「そ〜したらガウリイさんの努力が水の泡ですよ?それに・・・。ビール樽とワックスぶちまけた事と、さらに言えば空砲とは言えアームストロングや拳銃などと言ったシロモノを真昼間っから、しかもバスティーユ牢獄で ぶっ放した事の責任を全て僕に転嫁して逃げた事、忘れたとは言わせませんよ。」
「うぐ!!痛い所を・・・・。」
リナは心底思う事を口にした・・・・。
「で、今日はなんの用だあ?」
暑くて仕方ないと言った様子でガウリイが髪を掻き揚げる。
「今日は警告にきたんですよ。」
「警告?こう言った敵対勢力に対する注意勧告?」
ガウリイにのされて今だのびている暗殺者の頭を無造作に蹴っ飛ばしつつリナ。
「いいえ。違います。リナさんは黙っててくれませんか?」
何時になく強い調子のゼロスの口調に思わず閉口するリナ・・・。
「て、事は俺に用事って事か?」
怪訝な面持ちでガウリイ。
「ええそうです。どうもココのところの貴方達、つまりガウリイさんとリナさんの素行には僕としてみれば目に余るところがありましてね・・・。まあ、僕に責任転嫁したような事を必要に迫られて仕方なくするんなら許し様もあるんですが・・・。」
「リナ・・・。ぐちぐち言ってるぜ・・・。(小声)。」
「うん・・・・・。そ〜〜と〜〜根に持ってるね・・・。(小声)。」
「一つ、忘れないで戴きたい事があるんですよ。ガウリイさん。」
ゼロスに凝視され僅かに戸惑いの表情を見せるガウリイ。
「と・・・。言うと・・?」
「あくまでリナさんはいまの暴君を退けるための切り札としての重要人物です。不用意に情が移る、などと言う事が無いようにくれぐれもお願いしますよ・・・。最も、貴方に限った事では無いようですが、特にご執着している様子なので。」
そうとだけ言い去っていくゼロス。
取り残されれ呆然とするリナとガウリイ・・・。
あからさまにリナが震えているのが分かる・・・・。
「リナ・・・・。」
ガウリイはその名を呼ぶ・・・。
「嫌・・・・・。もう二度とバスティーユに戻るのは嫌・・・・。でも・・・。」
痙攣がさらに激しくなる・・・。
「アタシの存在を抹消した王家に戻れですって!!?暴君を退ける切り札!!?冗談じゃないわよ!!アタシは道具でしかないわけ!!存在すら今の今まで殺されていたってのに今更な何よ!!人を抹殺することすらナンとも思わない連中の所にアタシを放り出すって言うの!!!??アタシを闇に葬った連中の所に!!!!!??」
今まで見た事も無い苦悶に満ちた表情のリナ。
「あ・・・アタシは・・・・・・・。」
その目は血走り何処とも見ていない・・・・。
「ぎゃあああああああああああああああああああああああああああああ!!!」
何年もの間堪えに堪えた感情の爆発と言っても過言でない有様。
地に突っ伏してただただ栗色の髪を掻き毟り、狂ったように泣き叫ぶ!!
「止めろ!!」
強引に起き上がらせ、咄嗟の判断でリナの腕を押さえつけるガウリイ。
「行かせて堪るか・・・。泣き叫ぶほど・・・。お前が嫌がる所に・・・。」
ガウリイ自身、その言葉を絞り出すのがやっとだった・・・。
腕の中でリナがまだ微かにしゃくり上げ震えてるのが感じられた・・・。
「もう暫く・・・。夜の町でも散歩しよう・・・。」
カクンっとリナが頷く。
こんなリナをケインやアメリア達に見せたくなかった・・・・・・。

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922砕かれた鎖7LINA 12/21-18:35
記事番号914へのコメント
「アタシの暗殺を企てた奴ってコルベールなの?」
国家のお偉方の一人、コルベールの名が出る。
勿論、その質問をしたのはリナである。
「正確に言うとその側近だ。コルベール自身は敵対する政的ニコラ・フーケ失脚を企てているんでお前どころではない。大方お節介な腹心が独断でやらかした事だろ。主人のコルベールに断りもなくな。」
調査書を読み上げながらレイル。
「フーケにコルベール・・・。どちらもろくでなしだな・・・・。」
ゼルが興味無さそうに呟く。
「不細工なコルベールに比べたらまだ見栄えの方はフーケの方がましよ。」
「それは違いますよミリィさん。横領罪なんていう非人道的な悪事に手を染めているフーケに比べれば人とは思えぬヘリグロヒキガエル、もしくは南米産ベルツノガエルよろしくな容貌のコルベールの方がマシです!!」
「アメリア・・・・。キャナル的にはどっちも嫌だと思う・・・。そんな風にボロクソ言っちゃあ・・・・・・。」
「どちらでも良い!!」
苛立った様子でケイン。
「ともかく・・・・。速急に何らかの手段を取らないとな・・・・。リナを狙ってる連中を一網打尽に出来ればいいのだが・・・・。」
「ガウリイ・・・。耳の穴穿りながらそんな事言っても全然緊張感無い!!」
冷たく言い放つリナに寂しげな視線を送るガウリイだった・・・・・・。


「とは言うものの・・・。アタシ的にも責任感じてるのよネエ・・・。」
ワインレッドのゆったりとしたケープ。
深深と被った帽子はすっかりと容貌を隠しきり、その中にご自慢の栗色の髪はしまいこまれている。
さらにはケープと不釣合いなほど簡素な動きやすい黒っぽいシャツとズボン。
しかし、腰には立派な剣が安物のベルトに吊るされてある。
そして、踵の高めな白っぽい灰色のブーツ。
そんな服装の「銃士志願者」よろしくな若者が女言葉で喋るのは多少の違和感を感じざるおえない・・・・。
ただ一人、当てもなくパリの町並みを一人歩くその人物。
紛れも無く男装したリナだった。
髪を隠し目深に帽子を被り、さらには眉を黒く塗りつぶしたこの扮装ともなれば例え良く知っている人物(まあ、バスティーユで育った彼女が良く知っている人物はガウリイ、ケイン、アメリア、ゼル、キャナル、ミリィ、レイル、そしてゼロスに限られているが)とは言えそう滅多にリナと気付くはずが無いほどの出来ばいだった。
「アタシにだって責任はあるし・・・。こうやって町に出て自分の事を狙う奴の捜査ぐらいしたいわよ・・・。」
柄にもなくブツブツと独り言を呟くリナ・・・。
かと言って当てが在るわけでも無いのだが・・・・・・・。
「あ!!」
唐突にかかる知った声・・・。
げ!!レイル!!!!?????
「貴様、何て事をするんだ!!?」
へ・・・?気が付いていないらしいが・・・・。怒られて困惑するリナ・・・。
クイクイっとレイルは足元を指差す!!
あ・・・・。ボ〜〜っとしてて彼の足を踏んでいたらしい。
今ココで正体がばれる、と言う事態だけは死んでも避けたいのだが・・・・。
「何時まで足を乗せているつもりだ?」
苛立ったレイルの声・・・。さっとリナは足をどけてそのばを立ち去ろうとする。
「待て!!詫びも無しに立ち去ろうって言うのか?」
ううう!!!!シツコイ!!
「急いでいるもので!!」
声のトーンを押さえながらリナは早口にそう言う。
「分かった。用事が済んだら裏通りの広場に来い!!」
「何故?」
一刻も早くこの場を離れたいリナはやはり早口で言う・・・。
「決闘だ!!!!」
げげげげげげげげげげげげげげげげげげげげげげげげげげげげげげげげげげげげげげ!!しかし。ココで断れば後々が喧しい・・・・。まあ、いっぺん決闘と言うのも悪くないかも・・・。
「分かった。正午に大広場で!!」
そう言ってひとまずこの場を去るリナ。レイルも逆方向へと去っていく。
もちろん、本気でリナがレイルと決闘するつもりなのは言うまでも無い・・・。


「さ〜〜てと、正午までにナンカの情報集めなきゃネエ♪」
妙に浮かれた口調でリナは再度当ての無い散策に出る。
「おっと!!」
街では正午にもなってはいないと言うのに酔っ払い同士が大喧嘩。
その飛んでくる物を避けようとしてリナは軽く身をかわす・・・が・・。
すてええええええええええええええええええええええんんんんん!!!!!!!!!!
バナナの皮にマトモに滑り、その場に尻餅をついた・・・・・・・・・・。
「あれ・・・?痛くな・・・・!は・・・・。」
言いかけてリナはハッと言いよどむ・・・・。
「てんめえええええええええええええええええ!!!何時まで俺をクッションにしてるつもりだあああああああああああああああああああああああああああ!!!!!」
痛くなくて当然である。
リナは良く知った人物・・・・ケインをクッションにしていたのだった・・・・・。
「悪い!!物を避けようとして!!」
男言葉で謝るリナ。
「だああああああああああああああああああああああ!!!!本当に悪いと思うんならさっさとどけえええええええええええええ!!!!水溜りの上なんだぞ!!ここ!!ついでに言わせてもらえば午後一時、四番街の時計台の下で決闘だあああああああ!!!!!!」 げげげげげげげげげげげげげげげげげげげげげげげげげげげげげげげげげげげげげ!!
ケインとも決闘する事になったわけえええええええええええええええええええええ!!?
けど、レイルと決闘してケインと決闘しないと言うのは公平性を欠いてるし・・・・。
「分かった!!午後一時に時計台の下で!!」
「その前に俺の上からどけえええええええええええええええええええええええええ!!」


「あ〜〜〜ああ♪ま〜〜た面白い事になっちゃた〜〜♪」
完全にこの状況を楽しんでるリナ。
「この角曲がったらガウリイとぶつかって今度はサン・ポール処刑広場で午後二時にガウリイと決闘する事になっちゃたりして♪」
うかれながら角を曲がるリナ・・・。
どん!!
ぶつかっちゃった上、弾みで彼の持っていた本をふっ飛ばしてしまった・・・。
予想が外れて・・・ゼルのだけど・・・・・・。
「貴様、良い根性してるな・・・・。」
不敵な笑みを浮かべつつゼル・・・。
「悪い・・・。」
「この本は畏れ多い方から拝領した物だ・・・・。黙って見逃すわけにはいかんな・・・。」「と、言うと・・・?」
「午後二時、サン・ポール処刑広場で決闘としよう。逃げるなよ。」
「午後二時・・・。サン・ポール処刑広場か・・・。」
リナは苦笑しながらその言葉をリピートした。

「一日に知ってる人三人と決闘かア・・・・・。」
正午も近くなった頃・・・。リナはちょっぴり反省しつつ呟いた・・・・。
「良かったら半分、俺が代理に引き受けようか?」
「三をどうやって半分にする?」
癖になったのだろうか・・・。声のトーンを落しつつ男言葉で呟くリナ。
「まあ・・・・。決闘沙汰をお前さんが起こした事だって訳ありなんだろリナ?」
「いや・・・。話す事も馬鹿馬鹿しいんだけど・・・て!!ガウリイ!!ど〜してアタシが分かったの!!?ケイン達だって分からなかったのよ!!?」
「う〜〜ん・・・。何となく・・・。」
「野生のカンね・・・・。」
安心したせいか何時もの声のトーンと女言葉で話すリナ。
「とにかく、介在人くらいにはなってやるぜ?」
「ついて来たら度肝抜かれるような相手に会うと思うわ・・・。でも、その相手に会って何を質問されても『俺はコイツの決闘立会人だから』と以外言わないでね・・・。」


「ガウリイ!!!?」
「レイルじゃないか!!!?」
予想通りの二人の会話にリナは密かに苦笑する・・・。
「なんでお前がこんな所に、しかも俺の決闘相手と一緒にいるんだ!!?」
パニックしている様子のレイル。
「イヤ『俺はコイツの決闘立会人だから』。」
リナに言われた通りの台詞を言いきるガウリイ。
「そうか・・・。俺の決闘立会人は二人だ。もうじき来る・・・」
レイルが言い終わるか終わらないかのうちだった・・・。
「レイル!!ソイツは俺の決闘相手だ!! 手を出すな!!」
ケインの声。
「ついでに言えば、俺の決闘相手もソイツだったりする!!」
続いてゼルの声。
「リナ・・・・・。お前・・・(小声)・・・。」
「あははははははははははははははははは・・・。成り行き上仕方なかったモンで(小声)。」「とにかく・・・・・。」
ケインが言いかけたその時だった・・・・。
「隊列の音!?」
何者かの兵団が近付いてくる大量の馬の蹄の音・・・・。
やがて九人の正規兵団であろう男達を編成した隊長らしき男がこの場に現れる。
「コルベールの家の家紋の入った装束だ。」
ゼルが小声で呟く。
「コルベール様側近ガーヴ様の命により四銃士貴様達を逮捕する!!」
隊長らしき男が言い放つ!!
「どうやら・・・。そのガーヴとか言う奴が主犯格らしいな・・・。」
ガウリイが何時になく厳しい声で言う。
「どうする?此方は四人、あちらは十人ときたもんだ。」
ケインが吐き捨てるように言う。
「いいえ。五人よ!!。」
唐突にかかる済んだ声。一斉に其方を振り向く四銃士。
『リナ!!!』
ケイン、レイル、ゼルの声が見事にハモる。
「剣は大丈夫だろうな?今回ばかりはガウリイの旦那もお前にばかりカマっていられないんだぞ?このまえの傭兵ドモのようなよせあつめ集団とは訳が違う。」
挑むように質問するゼル。
「剣は口以上に達者なつもりよ。最もガウリイには到底敵わないでしょうけれど。」
リナの返答にゼルは苦笑で応えた。
「たく!!このお転婆娘は!!」
ケインの一言を戦闘許可とみなしてリナは四銃士の横に並び剣を構える。
ぎいいいいいいん!!!
彼方此方での乱戦。剣と剣のぶつかり合う音。
足元を狙った敵の剣を難なく飛び越えるリナ。
激しく打ちかかる、あるいは攻められ防御に回る。
が、剣の質の違いだろう。あっさり敵の剣をへし折り隙をついて攻撃。そして殲滅・・。更に次ぎに敵も難なく倒す。
「アイツ・・・。なかなかやるな・・・。」
感心したようにレイル。
リナですらやすやすと倒せるような敵である。
ガウリイ、ケインなどにしてみればむしろ「物足りない相手」といっても過言ではないのが現状であった。
すなわち・・・。
勝負は当初の予想に反してアッサリとついた、ということである・・・。


「ったく!!世話かけさせやがって!!おいリナ!!帰るぞ。」
リナは呆然とその場に立ってうごかない。
もう少し先に見える町外れの森をぼうっと見詰めている。
「ケイン・・・。先帰ってて。」
軽く微笑し、リナは敵の隊列が乗ってきた馬を一頭かっぱらい見事というより他の無いくらいのスピードをあげ一目散に森の方に駆けて行く!!
暫く唖然とする一同・・・。
だがやがて気を取りなおしたかのように・・・・むしろ青ざめたか顔をし茫然自失とした口調でガウリイが言う・・・。
「リナを・・・・追うぞ・・・。」
「そりゃあまあ・・・。追うさ・・・。でも、如何したんだ?」
「ケイン・・・。聞こえなかったか・・・?新手の敵の襲来だ・・・・。馬の蹄の音がさっきの比じゃない・・・・。かなりの大軍だ・・・・・・。」
「真坂!!リナは俺達を逃がすオトリに!!!!!?」
背筋に寒気が走る・・・・・・・・・・・・・・・。

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923砕かれた鎖8LINA 12/21-18:36
記事番号914へのコメント
その時だった。
ただ一人、剣を振りかざし大軍の編隊長であろう赤毛の男にリナが猛進し突っ込んでいったのは・・・・。
しかし、実力の差は明らかだった。
剣と剣がぶつかり合った瞬間。
衝撃に耐えきれずマトモに落馬するリナ。
辛うじてあった意識も鳩尾を強打されたために手放さざるおえなくなった・・・。


「遅かったか!!」
悔しげに地面を拳で殴りつけるゼル。
其処には既に何者も居ない。
リナが敵の手の内に落ちた事は疑う余地も無い。
「糞!!コルベールの側近!!ガーヴだな!!」
唸るように叫び駆け出すガウリイ!!
「何所に行く!!ガウリイ!!」
レイルの制止の声。
「殴り込みに決まってるだろ!!」
逆上し叫ぶガウリイ!!
「まあ、待て。敵の次ぎの行動は察しがついている。ここは一つ最高の演出をしようじゃないか・・・。」


「いでえええええええええええええええええええええええええええええええ!!!」
石牢の中で目覚めたリナが上げた第一声はそれだった・・・・・。
「ちょっと、アンタ誰?アタシの持ってた武器は?」
目の前の赤毛の男、強いて言えば先ほど敗北を余儀なくされた人物にリナは悪態をつくように尋ねる。
「俺の名はガーヴ。貴様剣はここだ。」
言ってリナが持っていた剣を抜き身のまま彼女の目の前にちらちかせる。
「なかなか良い造りだな。何所で盗んだ?」
「盗んだんじゃあ無いわ。ケインの弟サンのを貰ったのよ。つまり、一応アタシのって事ね。だから、返してくんない?」
自慢の栗毛を掻き揚げながらリナは言う。
「俺は剣を集めるのが趣味なんでな。自分の殺した相手のをな。この剣も今は俺の戦利品だ。」
「アタシはまだ死んでないんですけど?」
方眉を上品にピョイと吊り上げあからさまに怪訝な声を出すリナ。
「同じ事だ。だが、四銃士の居所を教えたら助けてやっても良いが。」
「家にいないの?」
「だから聞いている。答えろ。」
剣が喉元に突き立てられる。
「知らない。」
「しらばくれるのか。まあ、良い。ケインとか言う銃士の弟と首切り役人によろしくな。」「・・・・。待って・・・・。」
疲れた様に言うリナ。
「言う気になったか?」
「知らないものは言い様がないわよ?」
どうみても嘘などついていない様子で返答するリナ。
「知っていたら?」
「知っていても言うわけないでしょ?」
眉間にシワを作って言うリナ。
「処刑は明日の朝だ。せいぜい首を洗っておけ。」
そう言い残して去って行くガーヴ。
「・・・。待遇だけならバスティーユの方が百万倍マシね・・・。」
馬鹿にしたような口調でリナはそう呟いた・・・・。


騒ぎ立てる民衆。
布製の仮面を被った死刑執行人達。
悪態をついた様子でリナはそれらを見入る。
一段上の席に陣取ったガーヴが中世の悪徳王者よろしく椅子にこしかけその光景を眺めている。
「あ〜〜〜あ・・・。ワンパターン・・・。」
うんざりしたようにリナは心底からの感想を述べる。
首切り台と共に斧が運びこまれて来る。
「悪趣味・・・・・。」
恐怖よりも呆れが先に出る。
「ホントだよな・・・・・。」
腕を押さえる仮面を被った死刑執行人が同調したように答える。
やはり予想した通りの声。
ステージ状になった場所にはあともう三人の執行人が同様に仮面を被り佇んでいる。
「心配するな。俺達が居る。」
その言葉が発せられると同時だった!!
今まで執行人だとばかり思っていた四人の男が仮面をかなぐり捨てる!!
言わずと知れた四銃士の面々の顔がそこにはあった。
警護に当たっていたガーヴの配下たちをあっさりとねじ伏せて行く!!
「受け取れ!!リナ!!」
ゼルが何かを投げ付ける!!
「あ!!アタシの剣!!」
「こっちだ。」
喜んでいるリナを引き摺るように待機した馬車の方に連れて行くガウリイ。
それに続く残りの三銃士。
「逃がすな!!追え!!」
追撃が始まるかのように思われた。
が・・・・・。
ズバン、ズバン、ズバン、ズバン、ズバン、ズバン、ズバン、ズバン!!!
響き渡る轟音。
それと同時に動きを遮断される追撃者達!!
「ぎゃああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!ミリィ!!!なんと言う事を!!アンリ四世時代のヴィンテージ物の猟銃を持ち出してつかうなんてええええええええええ!!」
けたたましいまでのキャナルの抗議の声!!
「何よ!!こ〜〜ゆ〜〜のは平和の為に有効活用すんのが筋ってものでしょう!?」
現行犯ミリィの声。
「そうです!!キャナルさん!!正義を貫くためなら何をしたって許されるんです!!」アメリアの一言と同時に馬車に乗り込むリナとガウリイ。
すこし遅れてレイル、ゼル。そして、ケイン・・・・・・・・・・・・・。
「ぎゃあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!」
乗り込んで発車した途端、やおら絶叫するケイン!!
「アメリア!!その手に持った物はなんだああああああああああああ!!」
「何って・・・。馬車に隠してあったケインさん、貴方のへそくりです!!」
胸を張って答えるアメリア。
「それをど〜〜する気だああああああああああああああ???????????????」「こ〜〜します!!」
しつこく未だに追ってくる追撃者目掛けて手に持った袋の中身をばっわああああああああああああああああああああああっと窓の外にぶちまけるアメリア!!
散らばる金貨に、銀貨・・・。そして圧倒的な数を誇る銅貨・・・。
『ぎゃあああああああああああ!!もったイなアアアアアアアアアアアい!!』
リナとケインの声がハモる・・・。
「良いじゃないか。それで命が助かるんだ。安い物だ。」
ガウリイの一言。「安い」の言葉に完全に硬直するケイン・・・・・・。哀れ・・。
それでもその金を拾い集め様と我先に追撃を中断する追っ手・・・。
「みみっちい・・・。ケインといいあの追っ手といい・・・。みみっちい・・・。余りにもみみっち過ぎる・・・・。」
遠い目をしてミリィが呟く。
「アタシの可愛いコレクションちゃん・・・・。」
未だに愚図るキャナルからの逃避である事はあからさまだった・・・。
「何時まで泣いてるんだ・・。ケイン。」
レイルがケインをつつく。
「ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ。俺のお金ええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
あの金で新しいマントを買おうとおもってたのにいいいいいいいいいいいい!!!!」
頭を抱えて泣き出すケイン。
「正義のためです!!多少の犠牲はつきものです!!」
毅然とした口調でアメリア。
かくして・・・。
多少どころか(ケインにとっては)大量の犠牲を払って彼女の正義(?)は遂行されたのである・・・・・・・・・・・。


前々からガーヴと仲の悪かったフィブリゾと言う高官が彼の犯罪を暴露しガーヴをバスティーユに送りこんだのはその翌日の事だった。
すなわち。
リナを「殺そう」と狙うものは事実上抹殺されたも同然の事であった。


「コレで計画の邪魔者は消えたわけです。」
中庭を一人散歩していたリナにゼロスが話しかけてきたのはその日の午後だった。
「で、これからどうするの。」
「暴君を排斥する。それまでです。」
「そればっかり。」
溜息混じりにリナ。
「とにかく。計画は用意周到に出来ています。僕はこれからフーケの買収にかかります。」
「ガーヴのご主人様・・。コルベーユの政敵ね。いずれそいつがコルベーユの罠に嵌るのは時間の問題だと思うけど・・・?」
「でしょうね・・・。だからこそ都合が良いんです。どうせ逮捕されるような人ですから。」「それで、その人を買収してどうしようって言うの?」
「今度、彼の館ヴォー城で国王に対するセレモニーが開かれるのをご存知ですか?」
「・・・・噂には聞いたわ。ケインやガウリイ達、銃士隊も招待されてるって聞いたし。」気の無さそうにリナ。
「そうですか。では、その集いにリナさん達も随行して下さい。」
「アタシとアメリア、ミリィにキャナル?」
「そうです。ご婦人の同伴は可能ですしね。」
「で・・・・。どうしようって言うのよ。」
「政権の交代劇を其処で演じましょう。」
「つまり・・・・。戦うって事・・・?王家の連中と・・・?」
あからさまに怪訝な顔をするリナ。
「そういうことですね。」
言ってニッコリ微笑むゼロス。
呆然と立ちすくむリナ。
何時も間にかゼロスの姿は夕闇に中に消えていた・・・・。


「リナ・・・・。」
はっとして後ろを振り返る。
「・・・・ガウリイ・・・。聞いてたの・・・・?」
「やっぱり・・・・。王家に行っちまうのか・・・?」
「真坂・・・・。行きたいわけ無いよ。そんな所。」
「なら・・・。逃げるぞ・・・。」
エっと言った眼差しをガウリイに送るリナ。
「ヴォー城の祝宴の時・・・。お前をつれて地の果てまで逃げる。例えケインやゼル、レイル達に止められてもだ!!」
揺るぎ無い言葉。
それ以上何も言わないガウリイ。
信じられないと言った思いで見詰めるリナ。
陰謀渦巻く祝宴は一周間後に迫ろうとしていた・・・・。

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928Re:砕かれた鎖8ティーゲル 12/22-00:56
記事番号923へのコメント
どうもティーゲルです。ケイン泣いてますねー力一杯。怪しい部屋が一杯の彼の家
に幸おおかれってかんじです。ではつづきを楽しみにしつつまた。

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933ケイン君に幸福を★LINA 12/22-22:37
記事番号928へのコメント

>どうもティーゲルです。ケイン泣いてますねー力一杯。怪しい部屋が一杯の彼の家
>に幸おおかれってかんじです。ではつづきを楽しみにしつつまた。
有難うございます〜〜。
今回のケイン君は不幸な人にしたかったんです。
裏話ですがアメリアちゃんは問答無用で彼のお家にヒロイック・サーガ本の蔵書コーナーをつくっちゃったりもします。
しかもへそくり失うしいいいいいい・・・・!!
では、彼の幸せを祈りつつ・・・・。

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934砕かれた鎖9LINA 12/22-22:38
記事番号914へのコメント
「他の連中は?」
ヴォー城の祝宴のその日。
待ち合わせの場所となったケインの家に着いたガウリイがケインに問う。
「まだ来てない。」
片眉をピンっとはね上げ答えるケイン。
片手にはフランスで一般的に飲まれているカフェではなく、焼け付くようなブラックのコーヒーを持ち椅子に座っている。
「アンタが早すぎたのよ。」
その向かいに座っているリナはまだ朝食らしい。
彼女もまたミルクを入れないコーヒーを抱えている。
ハタから見ればそれでも充分にブラックに見えるのだがリナの場合は小匙四分の一ほど砂糖を入れなければ飲めないと言うところがミソである。
無論、ガウリイはそんな事を知る余地が無い。
ケインとリナは同時にカップを取り上げ、中身の黒い液体を飲み干す。
「・・・・・。良く飲めるなあ・・・。そんな物・・・・。」
日ごろ甘ったるいカフェ・オ・レしか飲まないガウリイは呆れたように二人を見回す。
「自分だってお酒をストレートでガポガポ飲む癖に。」
片眉をピンと跳ね上げリナが反撃する。
このごろ癖まで本物の兄妹よろしくケインに似てきた節がある。
「俺は支度してくる。リナ、ガウリイの相手、よろしくな。」
この為に早めに来た事はどうやらケインにはばれていたらしい・・・・。


僅かに砂糖を入れてリナが二杯目のコーヒーを陶磁器のポットから注ぐ。
その動作が無性にケインを連想させて笑わずにはいられない。
「何が可笑しいの?」
押し殺したつもりの笑い声を聞きとがめてリナが尋ねてくる。
「いや・・・。お前最近ケインに似てきたなあって思って。」
またまたリナが片眉だけピンっと吊り上げる。
どうやら本気で感化しているらしい。
「まあ・・・。今まで人に接する機会って少なかったし・・・・・。多分、水鳥の雛が最初に動く物を見て親鳥と思うのと同じようなニュアンスだと思うわ。」
言われて見ればそうかもしれない。
リナにとってケインは言わば生まれて初めて出来た「家族」のような者である。
「ケインの弟・・・。目の色こそ奴と同じ青だったんだが・・・・。髪の色はリナ、お前と全く同じの栗色だったんだ・・・・。ついでに言えば名前を『リュナ』と言った・・。」天真爛漫だったケインの弟、リュナを思い出すようにガウリイはリナに言う。
「リナにリュナねえ・・・。弟さんの代わり、少しでも出来てると嬉しいんだけど・・。」笑っているような、リュナの事を思って哀しんでいるような・・・。
複雑な表情でリナはガウリイをみつつコーヒーを飲む。
「カフェは飲まないのかア?」
違った生き物でも見るかのような顔つきでガウリイ。
「イヤ。バスティーユ牢獄の味がする。」
何か相当厭な思い出でもあるらしい・・・・。
「ガウリイとケインってさ、同じ目の色なのに全然雰囲気違うよね。」
何気なしにリナが言う。
「そ〜〜か?」
「そうよ。ガウリイ、貴方の青い目って良く目立つのにケインの目って言われてみればそうだって感じだもん。」
言ってもう一杯コーヒーを入れる。
小匙四分の一の砂糖も忘れずに・・・・。
「で、どっちの青の方が良い?」
困らせてやろうとばかりにリナにガウリイが問う。
「どっちも好き。」
「そりゃ無いだろう?」
「だって、好きなものは好きなんだからしょうがないでしょ?種類だってちがうし優劣のつけようなんてないでしょ?」
「そう言われればそうだが・・・・。ど〜〜ゆ〜風に違うんだ???」
ココに来てリナが一寸考え込む。
「そ〜〜ね〜〜、強いて言うなら・・・。ケインの目がドーヴァー海峡みたいな青さだとすればガウリイの目ってカリブ海とかエーゲ海みたいな青さ、かな?」
「余計に分からんのだが・・・。それに・・・。ドーヴァーやエーゲ。ましてやカリブになんて行った事あるのか?」
「無い。ただキャナルが退屈しないようにってドーヴァーとエーゲ、カリブの絵を買ってくれたわ。ガウリイ、其々の海見た事ある?」
「ドーヴァーなら以前イングランドに用事で行った時見た。エーゲは旅行で一回だけ。カリブにおいては銃士の安給料では行こうにも行けん。」
「そっか・・・。ドーヴァー海峡の青さって寒々としてて何となく『青くって当然』って雰囲気でしょ?」
「まあ・・・。確かに・・・・。」
「それに引き換えエーゲ海って風景的にも島が多い南国風の光景で海の青さも際立って目につく。それと同じことよ。受ける感じが違っていても綺麗な事には変わり無いでしょ?」言われてみれば・・・である・・・。
「ケインって良い奴だよな・・・。」
何となくそんな言葉が出る。
「そ〜〜ね。立派な銃士よ。」
「俺ほどではないが(一寸強調)そこそこ腕は立つ!!」
「真実一直。」
「仕事に抜かりは無いしな!!」
「でも、尾行は無理!!」
その一言にハッと顔を見合わせるリナとガウリイ。
が・・・。やがて・・・。
「ぎゃはははははははははははははははははははははははははははははははは!!」
その意をはかりやおら大爆笑する。
「何が可笑しいんだ?」
不意にかかる声。
支度を終えたケインだった・・・。
「イヤ・・・。別に・・・・。」
こんな晴れの席の正装でも黒いマントを手放さないこの男・・・・。
まったくもって『尾行』は無理である・・・・・・。
「まあ・・・・。とっても良く似合ってるんだし・・・・。それで良いんじゃないかしら。むしろマント無しの方が違和感ありよ!!」
半分涙目でリナ。
「お、みんな来たぞ!!」
言って仲間を迎えるべくそのばを逃げるようにして駆け出すリナとガウリイ。
後には・・・。
訳のわからないこの二人の言動が腑に落ちない、と言った様子のケインが取り残されたのだった・・・・・・。

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935砕かれた鎖10LINA 12/22-22:42
記事番号914へのコメント
「当初の予定とは随分違う事になっちまっやな・・・。」
初めて出会った時同様、リナの手を握りながらガウリイ。
「でも・・・・。逃げる予定は変更してないわよ?」
空いた方の手で額の汗を拭いながらリナが答える。
「でも・・・・。少なくとも最初の行程ではもっと緩やかな『逃避行』だったんだぜ?」ガウリイが言う。
「コレじゃ『単なる逃走劇』ね・・・。まあ、実際そうなんだけど・・・。ケイン達、無事かしら?」
「例え・・・。どんな相手でも・・・。あいつ等が負けると思うか?」
一寸リナは考える。
「まっさかあああ!!あの人達があんなボロクソヘッポコクソバカヘボヘボク糞生意気ゴミスカ烏合の衆媚び売り集団に負けるなんて天と地がひっくり返ろうがミミズに目があろうが蛙にオヘソがあろうが革命が起きようがぜえええええったいにあるわけすら無いわね。」
「な。」
状況により多少の変更こそあったが何時しかと同じ台詞をリナは言った。



リナ、ガウリイ、ケイン、アメリア、ゼル、レイル、キャナル、ミリィの一同がヴォー城についてすぐの事だった。
「計画のご相談があります。皆様、部屋に来てください。」
ゼロスがそんな事を言ったので一同はある一室に向かった。
「何ですか?この部屋!!ココから覗くと下の階のお部屋が丸見えですよ!!」
来た早々、サイド・テーブルの足に躓いてスッ転んだアメリアが床に這いつくばりながら言う。
ハタから見れば随分と情けない光景だが彼女の方に注目が違った意味で集まる。
「転んだ事、誤魔化そうとしたそんな事言ってるんじゃあないでしょうね?」
ミリィが疑った声を出す。
「本当ですよ!!見て見て下さい!!」
尚も疑いの眼差しを彼女に向ける一同。
「まあ・・・。正義を愛するアメリアが嘘をつくなんて事、考えにくいし。」
言ってリナはアメリアを起こし自分が床に寝転がる。
「あ!!ホント!!偏頭痛起こしそうなほどやたら滅多ら豪華な部屋が見える!!」
「でしょ!!でしょ!!」
嬉しそうな声を上げるアメリア。
「リナが言うなら間違い無さそうね。」
言ってミリィも床にしゃがみ込み無意味にツンツンと突つく。
「ナンでそんな事したの?」
キャナルがゼロスに問う。
「まあ、正直言って、『覗き見専用』ですね・・・。」
言いにくそうにゼロス。
「まだるっこしい。いっそマスケット銃で床打ち抜いて覗けば良いのに!!」
怒ったように言うキャナルを流石に怯えたような目で見るゼロス。
「キャナルさんの言う通りです!!悪人の密談の場を押さえるのは覗きなどと言う卑劣極まりないあくどい手段ではなく正々堂々とし、なおかつ過激な演出!!これに限ります!!」
「そ〜〜そ!!ついでに悪徳商人が悪徳官僚に渡そうとしている賄賂も乗り込んで行ってみいいいんんな貰っちゃっても良いのよ!!ど〜〜せ悪人に人権なんて無いんだから!」
言わずと知れたリナさん・・・・・。
「ついでに言えば人権と平行してそんな外道ドモにゃ生存権もね〜〜ぜい!!」
おどけた様にケイン。
「いえ・・・・・・。それも一寸・・・・・。」
危険極まりない発言をするアメリアとリナとケインに閉口せざるおえないゼロス・・・。
「でも・・・。何故こんな物を?」
やっとマトモな話しに持ち込んでくれた事をゼルに感謝しつつゼロスが口を開く。
「良くぞ聞いてくださいました。一時はどうなる事かと。これはですね、昨夜ココでお休みになられた暴君様をバスティーユに導くのを見届けた穴です。」
「・・・・?どう言う事だ・・・?国王の姿はさっき見かけたぞ・・・。」
レイルの問う声が上ずっているのは当然の事だろう。
「したの寝室にちょっとした仕掛けをしましてね。今頃昨日までの暴君は監房の中ですよ。」「その『暴君』を退かせる為にアタシを利用しようとしてたんじゃ無かったの?今からここで反乱を起こすっていったじゃないの?アタシを旗頭としてね!!」
流石にリナの声も冷静さを欠いている。
「名目上は、ね。敵、強いて言えばこのまえのガーヴのような連中に僕と僕の上司様の計画を邪魔されたく無かったもので。強いて言えばリナさん、貴方はたんなる『オトリ』だったんですよ。」
「リナが『オトリ』だと!!どう言う事だ!!ゼロス!!」
怒りの声をガウリイが上げる。
「リナさんのおかげで穏便に暴君にはお退き戴きましたよ。今頃はリナさん、覚えておいでですか?バスティーユに貴方の隣りの部屋にも同じような境遇で特別室に入っている方がいらっしゃたのを・・・?」
「・・・・。鉄仮面をつけたあの囚人ね・・・。それがどうしたの・・・?」
「その囚人こそ、ルイ十四世陛下の隠蔽された双子の弟君です。そして、昨夜バスティーユに幽閉された暴君たる兄君に代わり、只今より国王とならせられたのですよ。」
感情の篭もらない声でいってのけるゼロス。
「な・・・・・?」
流石に答えに詰まるリナ。
「ならば・・・。リナの役目はもう終わりだろ?リナ!!ケイン!!帰るぞ!!長居は無用だ!!」
言ってリナの手を取り踵を返しかけるガウリイの頬に冷たい感触が走る。
「銃剣か・・・・・。」
何時の間にやら回り込んできたゼロスの手に握られているそれを見届け、苦笑しつつ言うガウリイ。その頬からは血が流れ出している。
「計画をしられた用済みの者たちは生きては帰さない・・・てか?」
右手で頬の血を拭い、さらに腰の剣を抜く。
「いいえ。死んで戴くのはリナさんだけで結構です。あとあとの厄介事はごめんですから。」
こんな事をにこやかに言うゼロス。
「リナを殺したりしたら、後々の俺の恨みの方が厄介かもしれんぞ。ケインやアメリアだって許しはしないしな。」
「でしょうね・・・。」
ゼロスの一瞬の隙をつき、空いた方の手でリナの手を握り瞬時に部屋から駆け出すガウリイ!!
「逃げるぞ!!このまま!!」
「ちょ!!ガウリイ!!」
引き摺られるように走り出すリナ。
「戦わないの!!?」
気が動転し、訳のわからない質問をするリナ。
「あの場でゼロスと殺りあってたらお前も俺も、蜂の巣だったぞ!!」
「は・・・蜂の巣ってええええええええ!!?」
「そんなに下手な射撃の的になりたかったか!?」
冗談とも本気ともつかないガウリイの言葉にリナはマトモに青くなった。
「ゼロスの奴!!射撃班なんか待機させてたの!!?」
「ああ!!気配を消してないところからするとズブの素人集団って事は疑い無いだろ〜〜な!!」
グイグイ手を引っ張られますます引き摺られるように走るリナ。
「皆は平気かな?」
「殺すのはお前だけって言ってただろ?まあ、追われているとは思うが・・・・。」
「あ・・・。そ〜〜か・・・。」
追っ手の気配がする・・・・。
「右!!」
「いだああああああああああああああああああ!!!!引っ張らないでエ!!」
飛んでくる的外れな銃弾。そして罵詈雑言。そんなものでも逃走とは結構疲れる物である・・・・・・。


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936砕かれた鎖11LINA 12/22-22:44
記事番号914へのコメント

「当初の予定とは随分違う事になっちまっやな・・・。」
初めて出会った時同様、リナの手を握りながらガウリイ。
「でも・・・・。逃げる予定は変更してないわよ?」
空いた方の手で額の汗を拭いながらリナが答える。
「でも・・・・。少なくとも最初の行程ではもっと緩やかな『逃避行』だったんだぜ?」ガウリイが言う。
「コレじゃ『単なる逃走劇』ね・・・。まあ、実際そうなんだけど・・・。ケイン達、無事かしら?」
「例え・・・。どんな相手でも・・・。あいつ等が負けると思うか?」
一寸リナは考える。
「まっさかあああ!!あの人達があんなボロクソヘッポコクソバカヘボヘボク糞生意気ゴミスカ烏合の衆媚び売り集団に負けるなんて天と地がひっくり返ろうがミミズに目があろうが蛙にオヘソがあろうが革命が起きようがぜえええええったいにあるわけすら無いわね。」
「な。」
状況により多少の変更こそあったが何時しかと同じ台詞をリナは言った。


銃声・・・。
それから一秒と掛からないうちにリナの片腕から鮮血が滴り落ちる。
「リナ!!」
ガウリイが叫ぶ!!
「下手な鉄砲、数撃てば当たる・・・。ソレだけよ・・・。」
痛みを堪えて無理に微笑するリナ。
それでも走るのを止めるわけにはいかない。
「く・・・・・。」
僅かなリナの苦悶の声。さらに彼女の足を銃弾が掠める!!
床を伝う真紅の血・・・・・・・。
これまでか・・・・?
彼自身にも所々の疵ができているにもかかわずガウリイはリナを背負い上げる。
そして・・・。祈るような気持ちで中庭に通じる扉を押し開く・・。
「!!!!!!!!」
二人は声も無く見詰める・・・・。
中庭中に配備された拳銃を持ったざっと五十人は越えるであろうゼロスの配下達を・・。


「・・・・・・・・。これまでか・・・・・・・。」
リナはそっとガウリイから降り、地面に傷付いた足を下ろす。
一斉に二人に銃口の照準があわせられる・・・・・・。
やがて銃口が轟く・・・・・。
「安心しろ。刀で言うならみねうちだ!!」
聞き覚えのある声。
ゼロスの配下の動きが止まる。
そして、一斉に其方の方に視線が移される。
「貴方達ですか。何も危険を冒してまで来る必要無いんですよ?」
ゼロスがその集団に向かって無機質に語り掛ける。
「かもな・・・。」
ゼルがゼロスを軽蔑したように言う。
「確かに俺達の身の安全は保障されている。」
皮肉笑いを浮かべつつレイル。
「だがなあ!!友を選ばば三銃士・・・・いや、四銃士!!そうだろ?ガウリイ!」
三人を代表したかのように爽快な笑顔を浮かべつつケインが颯爽とこちらにやって来る。「正義の使者!!アメリアも忘れちゃ困ります!!」
「銃のプロ、このミレニアム様もね!!」
「ケインのある所このキャナル在り!!よ!!」
やがて。
銃口を構えた四銃士の後ろにリナ・キャナル・アメリア・ミリィが並ぶ構図が出来あがる。
「何を皆さん、生き急いでいるんです?リナさんさえ居なくなれば皆さんも無事は保証しますよ?それに・・・。皆さんだって今はバスティーユに居る元暴君を恨んでいるんでしょ?リナさんはその人物の血を引く人間なんですよ?そんな者の不幸なら願っても無いことなんじゃありませんか?」
あくまで冷徹な口調のゼロス。
「・・・・・。確かに・・・。私は暴君に叔母を殺されました・・・。でも・・・。リナさんと言う全く持って無関係な人・・・ましてや大好きなお友達をそれだけの理由で失いたくはありません!!」
アメリアの絶叫。
「これはまた・・・。アメリアさん。貴方の口から『正義論』ではなくて『感情』が聞けるとは思ってもみませんでしたよ。」
「勿論、ゼロスさん。貴方のしようとしていることは正義にも反してます。」
皮肉に厭味を返すアメリア。
「構いません。皆さん。この人達、全員処刑して下さい。」
まるで品物の注文でもするかのように命令を下すゼロス・・・。
再度向けられる銃口・・・・。
「待って!!」
突如痛む足を引き摺りながらリナはゼロスの前に進み出る!!
「アタシを殺して!!」
「リナ!!?」
言ってガウリイは強くリナの腕を掴み引っ張る!!
「ガウリイ!!」
ケインが止めようと割っては入る直前に事は遂行された・・・。
勢いで地面に尻餅をつく形となったリナが轟然とガウリイを睨む!!
「本気で殴ったわね!!ガウリイ!!」
口から血を流し、リナは憎憎しげに言った。
「殴った!!」
「ナンで殴られなきゃいけないのよ!!」
「弾丸で顔中が疵だらけで二目と見れなくなるよりかマシだろ!?病院代も馬鹿にならん!!」
「煩いわね!!ここで皆を犬死させる訳にはいかないでしょ!!?」
「余計なお世話だ!!それに死ぬって決まったわけじゃないだろ!?」
「だからって・・・・。ナンで殴るのよ!!痛いじゃない!!」
「俺達が守ってやるって言ってるんだぞ!!?それなのに『アタシを殺して』だぁ!!?おふざけも大概にしろ!!」
「おふざけであんな事言えると思うの!!?」
「なら!!俺達に対する裏切りだ!!裏切り者に制裁を加えた!!それだけだ!!おふざけをする子供にお仕置きをするのとは訳が違う!俺のしたことにいちいち文句をつけられる筋合いは無い!!それになあ、拳銃で怪我させられんのはこんなのよりももっともっと痛いんだぞ!!それだけ傷を受けててまだ分からないのか!!?」
「関係ない!!処刑だもの!!」
「黙れ!!また殴られたいのか!!!?」
沈黙するリナ・・・・。
「それくらいにしといてやれ・・・。ガウリイ。頼む・・・。」
ケインの声。
その優しさと心使いが余計にリナに痛いという感情を増やさせた・・。
支えてくれるキャナルの腕が心地良い・・・。
同じ位痛い・・・・・・。
「暴力には関心せんが・・・・。俺もガウリイと同意見だ。」
ゼル。
「まあ・・・。そういう事だ。」
レイル。
「リナさん・・・。ガウリイさんのした事・・・。女の私から言わせれば正義に反してます。けど・・・・。一人の人間のした事と見れば絶対に間違ってませんよ。」
そっとアメリア。
「ま。死ぬと決まったわけじゃないけど・・。其の時は一緒よ?」
ニッコリとミリィ。
「ごめん・・・・。アタシ・・・。ただ皆が無事で居て欲しくって・・・。ただ・・・。無力なもんであんな事しか言えなくて・・・・・。」
軽く微笑みながらリナ。そっとガウリイの方に歩み寄り・・・・。
パチイイイイイイイイイン!!!!
有りっ丈の力でガウリイの横ッ面を平手打ちする!
「・・・・・・・・・何するんだ!!」
今だ暗い低い声でガウリイ。
「あら・・・?拳での方が良かった?」
反対に明るい声、にこやかな口調でリナ。
「ナンでリナが俺を打つ?」
溜息混じりの苦笑した声。
「当たり前よ!!よっくも人の顔、血まみれにしてくれたわね!!」
今度はがあああああっと怒った口調でリナ。
「頭の方が良かったか?」
「当たり前よ!!」
「もうあんな事、言わないと約束するなら謝る。」
「約束するも何も!!金貨一山積まれたっていいやしないわよ!!あんな事!!さ、さっさと誤ってよ!!」
はあっと今度は嬉しそうな溜息・・・・。
「悪かった。許してくれ・・・・・。顔、まだ痛むか・・・?」
「これまでの人生の中で一番痛かった!!」
リナは言ってゼロスを睨む。
「そ〜〜ゆ〜〜訳よ。トコトン刃向かわせていただくわ!!」
「その必要は無いわ・・・・・。」
唐突に掛かる声。
マトモに慌てた様子のゼロス。
「ゼ・・・ゼラス様!!」
「もう良いわよ。アンタの手下達退散させて。」



「ゼラス様は僕の上司です・・・。」
急に畏まった様子でゼロスが金髪の女性を紹介する。
「この計画の主犯格か・・・。」
ゼルが呆れたように呟く。
「リナ。今日はアンタにお礼をしにきたの。もちろん、貸し借り無しの命を助ける、と言うお礼をね。」
言ってゼラスはにっこりと微笑む。
「アタシ・・・。貴方に何もした覚えないけど・・?そもそも貴方が今回の計画の主犯格ならゼロスにアタシを抹殺するように命じた張本人って事でもあるんでしょ?それがど〜して?」
不審そうにリナ。
「ガーヴが逮捕された事は知ってるわね?」
「まあ・・・。フィブリゾって高官が逮捕したんでしょ?」
「そ。単に貴方達が騒ぎを起こしてくれたお陰でね。あのセクハラ親父、いい気味だわ。アタシもダルフィンも貴方に感謝してるのよ♪」
「助けてくれる理由は・・・。ホントにソレだけ?」
挑戦的なリナの台詞。
「さあ・・・。ど〜〜でしょ。なにせ貸し借り無しですしねえ・・・・。」
言って颯爽と去って行くゼラス。
リナは苦笑しつつそれを見送る。
「ゼロス。三つ質問があるの。いいかしら。」
ガウリイに強く手を握られたままリナが言う。
「はい。何なりと。」
「アタシをバスティーユから脱獄させる時は大騒動だったじゃない?どうやって国王の双子を連れ出したの?」
「適当な囚人と偽って釈放したんですよ。もちろんその後、間違いだったと言って今バスティーユに居る方の王様を牢屋に入れましたがね。何せ双子だけありそっくりですし。で、二つ目は?」
「アタシは誰・・・?何者なの?ゼラスがアタシを助けた理由もその辺りにあるんでしょ?」
睨みつけ言う。
「知りたいんですか・・・?」
感情の読めないゼロスの声。まるで何かを警告するよう・・・・。
暫しの沈黙・・・。だが・・・。やがて。
「やめとく。その様子からすると、このままじゃ居られなくなる事は見え見えだしね・・・・。ケインの妹で一生過ごしたいわ。最も、ケインとガウリイがそれで良ければだけど。」ガウリイが繋いだ手に力をこめる。
後ろでケインが嬉しそうに微笑する。
アメリア達がはしゃぐ・・・。
肯定、どころか大歓迎と言った様子。
「じゃあ、最後に一つ。アンタにゼラス。一体何者なの?」
「それは秘密です。」



リナとケインの養子縁組が決まったのはそれから数日後の事だった。
「平和だな。」
「平和ネエ・・・。キャナルの武器庫さえ無ければもっと平和。」
リナの一言に苦笑するガウリイ。
「まだあるのか?」
「ある、どころか増えてるのよ・・・・。」
あの後・・・。
「何時何所で命の危険にさらされるか分からない!!」とかナンとか言う理由でアメリア・ミリィまで一緒になって武器を買い漁る始末・・・。
最近ではレイル・ゼルガディスまでもがそれに協力的な態度を取っている・・・・。
「でも・・・。もう外出自由だろ?」
ガウリイの一言に嬉しそうにリナ。
「何所行く?」
「面白い者が一杯あって、美味しいものが一杯あって、綺麗な景色が一杯在る所!」
「欲張り!!」
「たまには良いでしょ!」
「そ〜〜だな!!よし、そ〜〜ゆ〜〜場所を地の果てまででも探しに行くぞ!!」
「おう!!」
はじめてあった時同様、手をしっかりと繋ぎながら二人は散策の旅に出るのだった。



【お終い】

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945Re:砕かれた鎖11ティーゲル 12/23-15:52
記事番号936へのコメント
 どうもティーゲルです。ケインの家、そのうち地下に潜水艦でもひそんでそうで
すね。アメリアの部屋、キャナルの部屋・・・・ミリィが料理すると台所吹っ飛ぶ
でしょうし・・・・・・官憲に踏み込まれたら終わり(笑)
 しかし、今回は3銃士ですねぇ。しかも鉄仮面編とゆーなかなかコアなところを
・・・・
 ラストのゼラスがリシュリューのよーでした。(でもルイ14世の時って枢機卿
いないんですよね)
 ではまたを楽しみにしつつ・・・では。

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947あははははははLINA 12/23-19:13
記事番号945へのコメント

> どうもティーゲルです。ケインの家、そのうち地下に潜水艦でもひそんでそうで
>すね。アメリアの部屋、キャナルの部屋・・・・ミリィが料理すると台所吹っ飛ぶ
>でしょうし・・・・・・官憲に踏み込まれたら終わり(笑)
それこそバスティーユに放りこまれますね。
それともギロチン刑でしょ〜〜か?(あ、ギロチンが発明されたのはフランス革命時代くらいか・・・・。)

> しかし、今回は3銃士ですねぇ。しかも鉄仮面編とゆーなかなかコアなところを
>・・・・
昔アニメ三銃士とか言うのやってましたよね?
結構好きで見てました!!鉄仮面は「仮面の男」とかいう映画、前にありましたよね?(見れませんでしたが・・・・。)
> ラストのゼラスがリシュリューのよーでした。(でもルイ14世の時って枢機卿
>いないんですよね)
リシュリュー・・・・・。
あの冷徹枢機卿ですね・・・・。まあ、そんな所かもそれません。
(じゃあ・・・。ゼロスはマザランかなあ・・・・?)
> ではまたを楽しみにしつつ・・・では。
>ではまた!!