◆-交錯 まえがき-白いウサギ(12/23-00:31)No.938
 ┣交錯 忘却の彼方に 1-白いウサギ(12/23-00:35)No.939
 ┃┣交錯 忘却の彼方に 2-白いウサギ(12/23-00:42)No.940
 ┃┣交錯 忘却の彼方に 3-白いウサギ(12/24-02:05)No.950
 ┃┣交錯 忘却の彼方に 3-白いウサギ(12/24-02:07)No.951
 ┃┣交錯 忘却の彼方に 5-白いウサギ(12/24-02:12)No.952
 ┃┣交錯 忘却の彼方に 6-白いウサギ(12/24-02:19)No.953
 ┃┣交錯 忘却の彼方に 7-白いウサギ(12/24-02:22)No.954
 ┃┗交錯 忘却の彼方に 8-白いウサギ(12/24-02:25)No.955
 ┣交錯 聖王都騒動(セイルーン・ディスターバンス)-白いウサギ(12/26-00:11)No.964
 ┃┣交錯 聖王都騒動 2-白いウサギ(12/28-23:50)No.970
 ┃┣交錯 聖王都騒動 3-白いウサギ(1/3-01:22)No.986
 ┃┣交錯 聖王都騒動 4-白いウサギ(1/10-02:10)No.1044
 ┃┣交錯 聖王都騒動 5-白いウサギ(1/10-02:17)No.1045
 ┃┣交錯 聖王都騒動 6-白いウサギ(1/10-02:24)No.1046
 ┃┗交錯 聖王都騒動 あとがき-白いウサギ(1/10-03:09)No.1047
 ┃ ┣聖王都騒動 読ませていただきました!-むつみ(1/12-07:31)No.1062
 ┃ ┗Re:交錯 聖王都騒動 あとがき-碧昌(1/12-07:42)No.1063
 ┗ロスユニの方の感想です。-ブラントン(12/31-17:25)No.976
  ┗ブラントンさんありがとうございます(^^)-白いウサギ(1/3-00:46)No.985
   ┗久しぶりかも・・・-ブラントン(1/3-20:01)No.990


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938交錯 まえがき白いウサギ E-mail 12/23-00:31

 どぉもっ!お久しぶりの白いウサギですっ!
 いやぁ、泣きたくなるほど忙しい。
 では、また話を書きましたので掲載させていただきます。
 勝手に付けた解釈とか有りますので、嫌は人は読まないことをお勧めします。
 と、言ってもスレイヤーズの世界を際限なく破壊しまくるつもりは毛頭無いことだけは宣言しておきます。
 ちなみに今回は、シリーズ構成をとらさせていただきます。
 と、言っても、オリキャラがレギュラー化しているためにその目印、みたいなものですが。
 その理由はきっぱりあります。
 理由その一に、とある人(?)を登場させたいから。
 理由その二に、リナ達に対してのお助けアイテム的な存在を作り上げる。
 なぜなら、まぁ……カップリングについてちょっかいを出す役も有るんですけど、第三章(予定)がハードなんで、とても二人だけじゃ乗り切ることは難しそうと言うのが主な理由です。
 ちなみに書き上げるのも難しそうなことなんですが……温かく見守ってやって下さい。
 一応、一章、一章、だけでわかるようにしては行くつもりですが、少しは伏線とかあります。
 ほんの、少しは。
 シリーズタイトル、「交錯」
 意味はまんまです。
 その章ごとに何が交錯してるのかは違いますが。
 ともあれ、まえがきなんかを長々と書いても意味無いので私はこれで。
 もし気が向きましたらお付き合い下さい。
 さぁて、気合いを入れるぞっ!
 つーか、気合いを入れないと書けそうにない(大汗)



☆★ 予告 ★☆

 ――光の剣に変わる剣を見つけるまでは一緒。
 その言葉の通り、未だに一緒にいるあたしとガウリイ。
 あたしとガウリイは眉唾ものの噂を追って今日も行く。
 こうやって日々こつこつとした積み重ねが……って、やってられるかぁぁぁっ!
 いい加減光の剣並、とはいかないまでもまともな剣はないのっ!?
 文献あさりをしたあたしの前に「破邪の剣」と言う文字が現れる。
 眉唾ものもいいとこだが……ま、とりあえず行くしかない……わよね。
 よぉぉしっ!行ってやろーじゃないのっ!
 次回、新シリーズ開始っ!
 『新シリーズ「交錯」
  第一章 忘却の彼方に』
 さぁてガウリイ、とっとと行くわよっ!

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939交錯 忘却の彼方に 1白いウサギ E-mail 12/23-00:35
記事番号938へのコメント
 とある町のとある酒場。
 あたしは今、そこにいた。
 数々のざわめき……と言うより、喧噪が耳から離れることはない。
 はっきり言ってここは柄の悪い者達が集まる酒場である。
 何故こんな所にあたしが居るかというと、この町――トゥーライで魔法剣があるという情報を得て、その事について調べようと、情報が集まりやすい酒場に足を運んだというわけである。
 ほとんど収穫ゼロだけど…………
 あたしは軽く溜息をつき、オレンジジュースを口に入れた。
「お嬢ちゃん一人?」
 言って、あたしの正面向かい側の席に断りも無しに座る。
 ちなみにあたしが今座っている席は、二人づつで四角いテーブルを挟む形の四人用の席である。
 歳はガウリイと一緒ぐらいだろうか。髪は綺麗な黒。短髪の青年であった。  服装は青色の服であり、鎧などは着ていない。
「連れが居るわ」
 あたしは冷たく言い放ち、目の前にあったイカフライをつつく。
 ………ったくガウリイの奴……こーゆー時だけ居ないんだから………
 自称とはいえ保護者なら保護者らしくこーゆー奴を追っ払うぐらいはして貰いたいもんである。
「いや……そんなに冷たくしなくても何もしないって」
 言ってへらへら笑う。
 すでに充分迷惑である。何もしてなくはない。
「ちょっとな………思うところがあって」
 やかましい。あんたの言うことなんて聞く気はない。
 あたしは無視して再びオレンジジュースを口に付ける。
「あんたのこと他人とは思えないんだよな……運命って奴かな………?」
 ぶっ!!
 あたしはオレンジジュースを吹き出した。
 青年はひょいっと側にあったおぼんでそれを防ぐ。
 だああああっ!!何だこいつはああああっ!?
 いきなしそーいった大昔のおきまりの口説き文句をぶつけられて一体どーしろとっ!?
「やだなぁ。冗談だよ。
 そんな顔を真っ赤にして照れなくてもいいんだぜ♪」
「あんたねええええっ!!
 一体あたしに何の用よっ!?」
「交際申し込み」
 ずべしっ!
 戸惑いもなくあっさり答えられたその一言に、あたしの顔はテーブルへと突っ伏した。
「何やってんだ、リナ?」
 ふいに聞き慣れた声が後ろからした。
 ガウリイである。
「へえ。リナって言うのかぁ。よろしくな。リナ」
 をい…………
 まるっきしあたしの反応を無視した青年がにっこり笑う。
「誰だ?お前?」
 ガウリイが青年にきょとんとした顔で問いかけた。
「俺?
 俺はソード=グラン。まぁ、通りがかりの旅人Aって奴だな」
 自分で言うか………?Aとかって………
「ふぅん。俺はガウリイ=ガブリエフ。ここにいるリナの保護者だ」
「娘さんを僕にくださいっ!絶対に幸せに………ぐがっ!?」
 たわけた事を言っているソードの顔に、あたしは側にあったお盆を縦の状態で投げつけた。
「あ〜ん〜た〜はぁぁぁっ!
 何処までふざければ気が済むのよっ!?」
 あたしはソードの胸ぐらを掴み、ぐらぐら力の限り揺らす。
「なんだ?こいつ」
「知らないわよっ!」
 大して驚きもせずに、ソードを指さすガウリイに答えるあたし。
「やだなぁ。軽い冗談じゃないか」
 言ってからから笑い出す。
「おもいっきしベタベタでしょーがっ!!」
あたしの叫びが店内にこだました。


「………なんだ。やっぱり父娘じゃなかったのか」
 自分で注文したポテトをつつきながらぽつりと呟いたソード。
 見てわからなかったのか………?こいつは………?
「……ちっ。すでに男が居るのかよ」
「ちっがぁぁぁぁうっ!!」
 あたしはテーブルをおもいっきし叩き、何度目かのこだまを作り出した。
 どーあってもそーいった話に持ち込む気かっ!?こいつはっ!
 こいつは敵だ――あたしは顔が赤くなりながらもそう直感した。
「ま、それはどーでもいいとして」
 どーでもいいのか………?
「あんたらも旅人だろ?
 情報交換をしないか、と思ってさ」
 ………をい。
「情報交換するために話しかけたのがあの会話かっ!?」
「いやぁ……つい。面白かったもんで………許せ」
 にこにこしながらも額に汗を光らせるソード。
「許せるかぁぁぁぁっ!!」
「あの会話って何だ?」
 くいっとあたしのマントを引っ張るガウリイ。
「やかましぃっ!」
 このくらげにいちいち説明してもきりがない。
「そーそー。二人だけのひ・み・つ(はあと)だよな」
「おおっ!そーなのか」
「ちっがぁぁぁうっ!ガウリイっ!笑顔で納得するんじゃないわよっ!」
「いやあ……そー言われても………」
 頬をぽりぽりとかくガウリイ。
「そーそー。別にどーでもいいことだしなぁ………」
 うんうんと隣で頷くソード。
「あんた……喧嘩売ってる………?」
 あたしはすぐ側にあるナイフを右手で握りしめた。
「いや、そーゆーつもりはないんだが………
 ともあれ、なんかここいらの噂とか情報知らないか、と思ってさ」
 またすぐ話を切り替える………まぁ、これ以上こんな話はしたくないし……
「どんな噂よ?」
「リナが興味が引かれる噂」
 言ってにっこり微笑む。
 どーいう意味だ………?
「……何か探してるの?」
「ああ。俺が探してるのは『破邪の剣』と呼ばれるものなんだがな」
 破邪の………
 あたしが聞いた話は破邪の剣と呼ばれる話。
 つまり同じお宝を狙う相手である。
「ふぅん………そういった噂は聞かないわね」
 ここでうっかり口を滑らせよーもんなら、このソードに魔法剣を持って行かれかねない。
「うーん……そっか。じゃ、いーや。
 情報交換ってのは成立しそーもないなぁ」
 言ってソードは口に葡萄酒をぐいっと一気に運んだ。
「では俺はこれで。また会えたらよろしくな」
 ひょいと伝票を取り上げ、ぴらぴらとあおぐ。
 そして、軽く笑って、酒場から姿を消した。
 破邪の剣………あたし達がこの町へと着た最大の理由である。
 ――風 砕 主 選 者 大 力 得――
 あたしが見た文献は所々汚れていて読めなかったりして、とぎれとぎれにそう書いてあった。
 はっきし言って、眉唾もいいとこである。
 主選ってのは持ち主を選ぶとかそーゆーもんだろーけど………よくあるしなー……そーゆー話。
 何にせよ、とりあえず行くだけ行ってみよう、とこの町へと訪れ、酒場で情報収集をしていたのだが…………他にもそのお宝を探している奴がいるらしい。
 あたしはソードが座っていた場所へと目を落とし、溜息をついたのだった。





「あれ……リナ=インバース……?」
 先ほど会った少女のことを思い出す。
 何処かで聞いたことがある。
 えと……たしか……そうだ。
 師匠が言ってた、あのリナ=インバースだ!
 なら……きっとあの二人も目的地は同じだろう。
 ……こりゃ面白くなりそうだ。
 再び軽く笑い、木へと登る。
 我ながら、こんな所を見られていたら怪しまれること間違いなしだと思う。
 普通こんなジャンプ力ないよなぁ……
 二回か三回ほど飛んだとき、もうすでに俺は木のてっぺんに立っていた。
 遠くの景色がかすんで見える。
 額に手をかざし、遠くを見つめる。
「次の町はあそこっと」
 次の情報収集の場所が決まった。
 今は会うのが目的ではない。
 今は破邪の剣を目指して――
 俺はてっぺんからまたジャンプをし、そのまま空を飛んで目的地へと急いだ。
 あれは自分にとって大切な物だ。
 絶対に誰にも渡せない。
 何故かはわからない。
 ただ自分が見る夢が頭に浮かぶ。
 やはり誰にも渡せない。
 不敵に笑って、次の町を目指す。
 ――旅はまだ始まったばかり――



 夢を見た。
 ここは宿屋の一室だ。
 頭がはっきりとしているような、ぼんやりとしているような変な気分だった。
 悪夢なのか良い夢なのかすらわからない。
 ただ何となく頭が重い。
 夢を思い出そうと俺は再び目を閉じる。
 広がる暗いイメージ。
 どうやらあまり感じの良い夢ではなかったらしい。
 ふと、自分の服が汗でべっとりとなっていることに気付く。
 暑い。
 布団を少しずらす。
 冷たく澄んだ空気が身体を包む。
 寒い。
 汗が急速に冷えた。
 俺は布団を再び上に重ねる。
 強引に夢の続きを見ようと眠りに入る。
 頭が……痛い……



                つづく

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

ポイント リナ以外の一人称が最後に登場しています。
      それは一体誰の心理描写でしょう?

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940交錯 忘却の彼方に 2白いウサギ E-mail 12/23-00:42
記事番号939へのコメント
「これはまたなんかありそーね……」
 あたしはソードが支払いを済ませてくれたのでカウンターを素通りしながらそう呟いた。
「なんでだ?」
 ガウリイがその後を続きながら聞いた。
「あのねぇ……例の剣の話はこの間通った国の王立図書館の古ぼけた一冊に載っていたのよ」
 意識して剣の名前を伏せる。
 いつ何処で誰が聞いてるとも限らない。
「あの本は今では殆ど読める人がいないほどの古い字で書かれていたの。
 あんなもんが読めるのはかなりの魔道の知識を持った人だけよ」
「でも魔道の知識ってのが沢山ある奴はみんな攻撃魔術にたけているって訳じゃあないんだろ?」
 珍しくまともなことを言うガウリイ。
「それはそうだけど……魔法剣にそれを目指す深い知識を持つ魔導師……
 こりゃ当たりかも知れないわね」
 んっふっふ。いやー楽しみだわ。
「……お?
 ちょっと待てよ、リナ。
 いつさっきの……ええと……」
「ソード」
 ジト目で言うあたし。
 もう名前忘れたんか?この男は。
「そうそう。ソード。
 そいつがなんで魔導師だと思うんだ?
 格好だって普通……とはちょっと生地が違っていたような気がするが、マントもない服だったじゃないか」
「マントなら魔導師は必ず付けなくちゃいけない訳じゃないわ」
「でも何で魔導師なんだ?」
「なんとなく」
 あたしの身も蓋もない言葉にガウリイは沈黙するしかなかった。
 本当に根拠はないんだけど……なんかそんな感じがするのよね……
 魔導師……と言うよりは何だかよく解らない雰囲気もってたし……
 しかし……また会いそうだなぁ……
 取り合いにならなきゃいーけど。


 情報ゼロ。
 んっふっふ。ここまで情報がないとくると気持ちがよくなってくるわね………
 東の町へ行ってはみたものの、宿屋でおっちゃんに笑顔で問いかけよーが、酒場のにーちゃんを酔い潰させて話を聞こーが、近くの盗賊さん達に優しく聞いてみてもガウリイに犬に話しかけさせてもやっぱり殆ど情報はなかった。
「ガウリイ、今日も酒場に行く?」
「五日連続だぞ……」
 二人ともうんざりとした表情である。
「しょうがないじゃない。
 情報が全くないんだもん」
 ぷうと頬を膨らます。
「だいたいなぁ……かなりの知識持ってないとあの剣の話はわからないんだろ?」
 そんな奴が酒場でうろうろしてるもんなのか?」 
「いたじゃない。あたしとソード」
「う゛……ま、まぁ、ソードはともかく。
 お前は普通の知識を持ってる人とはちが……ぶっ!」
「やかましいっ!」
 今度はガウリイの顔面にあたしの拳がめり込んだ。
「いててて……じゃあソードに話を聞けばいいじゃないか」
顔を押さえながらも言うガウリイ。
「あのねえ!下手すりゃ競争相手かも知れないのよ?
 そんなのに『破邪の剣は何処にあるんですか?』って聞いて、『はいそうですか』と教えてくれると思う?」
「気さくな奴だったしなぁ……それにえらくリナのこと気に入ってたからもしかしたら教えてくれるかもしれんぞ」
「あれはからかってただけよっ!」
 必死に弁解するあたし。
「しかしなぁ……このまま時間が過ぎていってソードがもう剣の所へ行ってたりしたらどーするんだ?」
「う゛っ!?
 いや……それはその……
 でっ、でもっ!何処にいるかわからないんだしっ!」
 しどろもどろに答えるあたし。
「ソードならあそこにいるぞ」
 ガウリイがあたしの後ろの方を指さす。
 深夜なので暗くてあたしには良く見えない。
 あたしはガウリイの言葉を信じ、そちらへと向かった。


「本当に目が良いわね……ガウリイ……」
 向かってみると、やはりそこにソードはいた。
 森の入り口の切り株の上にソードは腰掛けて座っていた。
「いやあ……」
 照れるガウリイ。
「すでに人間じゃないわね」
「をい………」
 にっこり微笑むあたしにジト目で見るガウリイ。
「夫婦漫才ならよそでやってくれ」
 溜息をつきながらソードはぶすっと言う。
 めっ、夫婦だぁぁぁっ!?
「めおとって何だ?」
「やかましいっ!」
 聞くガウリイに顔を真っ赤にしながら答えるあたし。
「そぉぉどぉぉぉ!
 あんた何がなんでもそぉぉいう話がしたいわけぇぇぇぇ?」
 ソードの襟首を掴んでがくがく振るあたし。
「いてててっ!悪かったってっ!」
 やっとあたしはソードを放す。
「ったく……冗談が通じないんだから……」
 笑いながら襟元を直すソード。
「限度があるわっ!」
「をい……めちゃくちゃ低いぞ……その限度……」
 叫ぶあたしに呟くソード。
 あたしにとってはちっとも低くないっ!
「ま、いっか。
 それより、何の用だ?」
 あっさりころりと態度を変えるソード。
 しばしの沈黙。
 そしてあたしは決心して話し出した。
「実は……」


「なるほど。
 つまりは強い剣が欲しくて探してるって訳だな」
 ソードは切り株の上で足を組み、腕を組んでそう言った。
 光の剣の話は伏せた。
 話しても信じて貰えないだろう。ならば黙って置いた方がいい。
「で?あんたはなんで破邪の剣を?」
「自分を知るため」
 雲が晴れ月が輝き出す。
 ソードの姿は逆光で見にくい。
「……どういう意味?」
「内緒」
 笑っているようだが顔は見えない。
「……ま、いいわ。
 それで、剣の場所はわかってるの?」
 人それぞれ色んな理由がある。
 好奇心はあるが、それには触れないで置こう。
「だいたいなら。
 飛竜の谷って所。
 詳しい話はこの町の酒場に行けば婆さんから聞けるらしい」
 手で切り株を押し、そのまま飛び起きるソード。
「一緒に行くか?」
「もちろん」
 あたしとガウリイ、そしてソードは歩き出した。
「ところで……一体何処からそんな情報仕入れたんだ?」
 ガウリイが問う。
 当然の疑問である。
 ましてや、『飛竜の谷』なんて名前すら聞いてない。
「それも内緒」
 にやりと笑うソード。
「お前……誰かに似てるな」
「へ?誰?」
 ぽりぽりと頬を客ガウリイにきょとんとした顔で聞き返すソード。
「ま、それはともかく。
 情報の出所はどーでもいいわ。
 それより、飛竜の谷とやらの詳しい場所はその婆ちゃんに聞くしかないのね?」
「ああ。今のところは。
 ………ま、そのうちわかるかも知れないけどなぁ……」
 あたしとガウリイは首を傾げた。


「ほほう………散歩ねぇ………」
 あたしは酒場にいたソードにこれ以上ないジト目を送った。
 あの日、酒場に行ったのだが、たまたまだかどーかは知らないが、そこにお婆ちゃんはいなかった。
 仕方ないのでその町で宿を取り、何日か通おうと言うことになったのである。
 しかし、今日ソードは夕食を食べた後散歩に行くと言って出ていったのだが……散歩で酒場かい。兄ちゃん
「いや……その……散歩してたらまた腹が減っちゃって………」
 カウンターからぎこちなく振り向くソードの顔には動揺の様子がありありと映っていた。
 ジト目のままあたしはソードの側へと歩み寄る。
 そしてソードの足下に置いてある荷物が視界に入る。
「じゃ、その荷物は何?」
「……ええっと……………」
 こぉぉいぃぃぃつぅぅぅはぁぁぁっ!!
「……逃げようとしたわね」
 びくんっ!
 低く、凄みのきいた声で言ったあたしの言葉にソードの体が大きく波打った。
「勇気あるなぁ。お前」
 後ろでガウリイが心底感心の声を出す。
 どーゆー意味だ……?
「ち、違うって……ただ別口からも情報を集めようかと……」
「あたし達に黙って?」
「う゛……悪かった」
 おし。認めた。
「おっちゃーんっ!こっちにA定食5人前ねっ!
 お代はこっちの兄ちゃんによろしくっ!」
「ちょっとまてっ!」
 ソードが額に汗をしながらも立ち上がる。
 その方をガウリイが押さえつけた。
「やめとけ。これだけで済むならマシな方だ」
「本当か……?それ………」
「おう。リナのこーゆーことだけは絶対に忘れないからな。俺
 ……と言うことで、俺も頼んでいいか?」
 こっちに運ばれてきた料理を見ながら言うガウリイ。
「………どうぞ……」
 ソードは小さく答えたのだった。
 もしかしてガウリイ、自分が食べたいだけで止めたんじゃぁ………?
 ま、そーだとしても、あたしの懐には何の影響もないし、放っておこう。
「ところでさ、ソード。
 情報集めようとしてたって言ってたけど、何か掴めた?」
「いや、何も」
 即答するソードの言葉にあたしはまたジト目を送る。
「今度は本当だって」
 今度は、ねぇ………
 あたしの目は変わらない。
「とっ、とにかく。
 この辺りに飛竜の谷があるのはわかってるんだが……問題は詳しい場所だな」
「谷って言うぐらいだから西の方に見えた山の中じゃないのか?」
 口の端っこにステーキソースを付けたまま、聞くガウリイ。
「だからって詳しい場所がわからなきゃ迷うだけでしょ?」  
 言って、あたしはガウリイの顔を見ながら、自分の右頬を指さす。
「なるほど……」
 ガウリイは右頬を拭った。
「やっぱそのお婆ちゃんに会わないと始まらないようね」
「ま、だろうな……って、丁度良いところに来たな、婆さん」
 へ?
「……おぬしらが、飛竜の谷に行くと言う者か?」
 声は後ろからした。
 振り向くと、そこには老婆が立っていた。
「やめといた方がええ……あそこには竜の化け物が住んどる……」
「竜の化け物………?」
 あたしは訝しげに表情を変える。
「そうじゃ。
 あそこに向かって帰ってきた者はほんの僅かじゃが、その者達の中に、竜の化け物に襲われたという者がおってな………
 一人ぐらいなら何かの見間違いと言うこともあるんじゃろうが………」
 いや……普通は見間違えんと思うぞ。竜なんて大きな生き物。
「そう答えたのは三人ぐらいおってな………どうやら本当らしい……」
「はぁ………」
 あたしは適当に相づちを打つ。
 しかし……なかなかもって回った言い回しが好きなばーちゃんである。
「おお、そう言えば、ちょっと前にも谷へ向かった者がおったな……
 止めたんじゃがのう………」
「へぇ……どんな奴だった?」
 今まで黙っていたソードが口を開く。
「全身黒ずくめで……ローブを身にまとっておったかのう………」
 ……怪しいぞ……その格好はいくらなんでも………
「昼間からフードもかぶっておったな………」
 をいをい。
「おお、そう言えば………確か右手に奇妙な魔法道具みたいな物も持っておったかのう…………」
 え………?
 ……いや、まさか……ねぇ………
 あたしは頭に浮かんだ映像を打ち消した。
「そ、それで、飛竜の谷の詳しい場所、教えていただけませんか?」
「むう……しかしのう……竜の化け物が……」
 ああああああっ!いい加減まどろっこしーっ!
「それは大丈夫です。
 飛竜の谷が竜の化け物なら、こっちはリナ=インバースという化け物が……」
 言葉の途中でハッとするソード。
 どーやらあたしの視線に気付いたらしい。
 あたしは睨んでいた表情からにっこりと笑顔へと変えた。
「デザート5人前追加(はあと)」
「ちょっと待てっ!
 勝手に注文するなっ!」
 慌ててがたんとイスを蹴倒すソード。
「あ、俺も………」
「ガウリイぃぃぃぃっ!」
 ひょいと手を挙げて注文するガウリイに涙するソード。
 大の男が泣かないで欲しいもんである。
「うるさいわねっ!
 あんなこと言われたら誰だって怒るに決まってんでしょーがっ!」
「冗談だったのに………」
 しくしく泣き出すソード。
「冗談で人を化け物呼ばわりすんじゃないっ!」
「愛するが故の冗談さ♪」
「浄結水(アクア・クリエイト)」
 ばしゃぁぁぁぁんっ!
 戯言抜かすソードの頭を水で冷やしてやるあたし。
 ………ったく。よくそんなセリフを照れもなく言えるもんである。
「さて、丸く収まったところで、詳しい場所のことについてなんですけど」
「……いつ丸く収まった……?」
 タオルを取り出し、顔を拭きながら言ってるソードの呟きはもちろん無視っ!
「む、むう……仕方がないのう………」
 老婆は、顎をいじりながらそう答えたのだった。
「詳しい場所じゃが………」
 話をはじめようとする老婆を止めたのはあたしだった。
「あ、すみません。ちょっと待って下さい。
 ソード、聞いといてね」
言って、首の辺りを拭いているソードの方を向く。
 ……おー、困っとる。困っとる。
どーやら定食、デザート五人前ずつを二組と、水をぶっかけられたってのがきいてるらしい。
 まぁ……この程度で済んでるのだからむしろ感謝して貰いたいもんだが。
「……リナは聞かないのか?」
 そう言った瞬間、ソードの顔の前をデザートさん達が横切る。
 オーシュ・パイのクリーム添え、ライスト・パフェ、ミュージュ・リーブの盛り合わせ………って、自分で頼んどいてなんだが、酒場で出てくるよーなデザートか……?
 ま、嬉しいからいーけど。
 テーブルはすでに皿で埋め尽くされて見えないぐらいである。
「………わかった。任せて食ってろ」
 よろしい♪
 なかなか世の中、とゆーもんがわかってきたよーである。
 額に手を当ててるけど。
 ――かくて、あたしとガウリイのフォークの音が、深夜の酒場に響きわたった。

☆☆☆☆☆☆
ヒント 全身黒ずくめ、昼間っからフードをかぶっている。
    右手に魔法具。
    この特徴は、作者の別の話「二翼の翼」のあいつですが、
    わからなくても物語に支障は全くありません。

 宣伝らしき物♪
 二翼の翼はこの書き殴り内に存在してます。

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950交錯 忘却の彼方に 3白いウサギ E-mail 12/24-02:05
記事番号939へのコメント
「あー。やな夢見た」
 頭をかきむしるソード。
 すでにあたしたち一行は飛竜の谷へと向かっている。
「夢?」
「そ。夢」
 聞き返すあたしに面倒くさげに答えるソード。
「次の変な形の石を右……」
「ほーい」
 気のない声で道案内をするソードに答えるあたし。
 言われてから少したつと、丸いボールが潰されたような変な形の石が見えてきた。
 あれのことね。
 あたしは右へと方向を変えた。
 ただいま―――山道。
 険しい山道は旅慣れしてるあたしといえどもやはりか弱い乙女。
 辛いもんは辛いのである。
 ………今か弱いの辺りでツッコミが聞こえたよーな気が………ま、気のせいだろう。
 間違いは言ってない。………たぶん。
 ごつごつとした岩肌に急な坂、登るためには膝を顔の辺りにまで持ってこなくてはならない。
 それが延々と続いていた。
 翔封界で行くにも、道はわからないし、辺りには所々とは言え、木が茂っているので、上空からだと視界が悪い。
「……しかし……いつになったら着くんだ?」
 大して疲れてなさそうだが、ガウリイがあたしの方へと振り向く。
「何であたしに聞くのよ……?」
「いやぁ、なんとなく」
 うんざりした声で言うあたし。
 これだけの山道が続くと機嫌が悪くなるのは人間として当然である。
「いつになったらって言われてもなぁ…………
 とりあえず、この山登りきったら東の方向へと下って、次の山を左の方向へと回り込んで……………って、聞けよ。あんたら」
 ガウリイはそんな説明なんぞ最初から聞かない。
 あたしの精神は道の説明をし始めた時点でへたりこんでいた。
 山を登ってまた下って回り込むぅぅぅっ!?
「なんで登ってるのにまた降りなくちゃいけないのよっ!?
 どーせ降りるなら道を平坦にすればいーのよっ!」
「よくわからんが……仕方ないじゃないか。
 そういった道がないんじゃ」
 あたしが座り込んでいる場所まで引き返しながら言うガウリイ。
「竜破斬(ドラグスレイブ)で道作ればいーじゃない」
「お前……それじゃあ道というより荒野になるぞ……」
 あたしの正論に何故かガウリイは反論を唱えた。
「おーい、置いてっていいのかぁ?」
はいはい。わかりましたよ。
 あたしは軋む足を軽く叩き、立ち上がったのだった。
「そーいえば、ソード。
 さっきから地図も見ないでほいほい進んでるけど、良く覚えてるわね。道」
 膝とマントを軽く払いながら言うあたし。
「別に覚えてないけど?」
 振り返りもせずに答えるソード………って、ちょっと待て。
「あんた今何て言った?」
「覚えてない」
 目の前が真っ白になった。
「が、ガウリイかっ!?あんたはっ!?」
「をい……」
 横でジト目でツッコミを入れるガウリイは無視。
 かまってなどいられない。
「じゃあ、今の今までどーして進んで来れたのよっ!?」
 一瞬にしてソードの隣へと駆け出すあたし。
「そー言われてもなぁ……あのおばあさんも詳しい道なんて知らないって言ってたし………ま、適当に勘だけで進んできたって所かなぁ。はっはっは」
 頬をぽりぽりかきながら悪びれもせずに言うソード。
「はっはっはぢゃないぃぃぃっ!
 じゃ、何?もしかして全くの見当違いの場所にいる可能性もあるわけっ!?」
「んーまぁ、なくはないかな」
 くぉら待て。
「大丈夫だとは思うけどなぁ………」
「何でそう言えるのよっ!?」
 必死の剣幕で言うあたしにソードはにっこりと笑って答えた。
「なんとなく」
 うくあああああっ!!駄目だぁぁぁこぉぉいぃぃつぅぅはぁぁぁっ!!
 あたしは頭を抱え込んで、再びしゃがみ込んだ。
「平気平気♪
 人間死ぬ気でやればどうにかなるって」
「そーゆー問題じゃないでしょがっ!」
「いーじゃないか。なんだって」
「よくないっ!」
 よぉぉくわかった。
 こいつには何言っても無駄だ。
ある意味ガウリイ以上かも………
「でもそれほど間違ってるわけでもなさそうだぞ」
 言って、空を指さすガウリイ。
 ソードとあたしは上を見上げる。
 上には竜が居た。
 ――竜の化け物――
 昨夜お婆ちゃんから聞いた言葉を思い出す。


「……また人間か…
 人間ごときに用はねぇ……とっとと失せな……」
 目の前にいる黄金竜はたどたどしい言葉でそう言ったのだった。
 人間の言葉のたどたどしさ、大きさなどから言って、おそらく子竜だろう。
 まぁ……いくら子供の竜だからってあたし達よりは大きいんだけど……
 でも……竜の化け物とまで呼ばんで良いと思うのだが……ただの臆病風に吹かれた連中が誇大しただけだろーか。
「ちょっと聞きたいことがあるだけどなぁ……」
 竜のことをちっとも恐れていないあたし達三人の一人、ソードが言った。
「……失せろと言ったはずだ………」
 むかっ。
「ちょっと!
 こっちの言い分も聞かずに追い返すなんてそれが誇り高き竜族がやることっ!?
 少しは話を聞きなさいよねっ!」
 びしぃぃっと黄金竜を指さすあたし。
 見る見る表情が変わっていく竜。
 ……お、怒っちゃったかなー……?
「……痛い目を見ないとわからないのか……」
 黄金竜は顔を空へと向け、やがて空気が動いた。
 閃光の吐息(レーザー・ブレス)っ!?
 うあああっ!?
 短気だぞっ!こいつっ!
 あたしは急いでガウリイの元へと駆け寄り、防御呪文を唱えはじめる。
「あーあ。怒らせちゃった」
 おもいっきし他人事口調でこちらをジト目で見るソード。
 ンなこと言ってる場合じゃないでしょーがっ!
 黄金竜はもちろんそんなことで攻撃をやめるわけはない。
 すでに大気の震えは止まっている。
 来る――っ!
 あたしは大地を踏む力を強くして、力ある言葉を――
「必要ない。そんな呪文」
 いつの間に入り込んできたのかあたしの口を右手でふさぐソード。
 何すんだあんたはぁぁぁぁっ!
 るぐおおおおおっ!!
 閃光の吐息っ!まずいっ!
 あたしを後ろから羽交い締めしているソードの右手が離れ、そして前へと突き出される。
 きぃぃぃぃぃぃぃんっ!
 閃光の吐息は跡形もなく消失した。
 そう、跡形もなく。
 場に残ったのは、右手を突き出したままのソード、空中で異変に気付いた黄金竜のみ。
 一体何が………?
 ソードは呪文を唱えた様子はなかった。
 そんなこと出来るはずはない。
 ―――人間なら。
「今――何をしたの?」
 喉がこくりとなった。
「――俺は――」
 ソードの声はいつになく真面目なものだった。
「……いつまでくっついてる気だ……?」
 びくぅぅぅぅんっ! 
ソードが大きく波打った。
 気付くと右手をガウリイに取られて、後ろにひねられていたりする。
 関節決まってるぞ……ガウリイ……
「ちょっ、ちょっと待てっ!
 今のは別に――っ!」
 じたばたもがくソード。
 さっきとは別人である。
「ほほう……『今のは』………? 
今度二人で酒でも飲もうな。ソード」
 にっこり笑うガウリイ。
「とっ、とりあえず今の心理状態のガウリイとは飲みたくない……」
 ソードの声は何故か酷く怯えた声だった。
「……てめえら……いい加減にしろよ……」
 黄金竜はいたくご立腹のよーである。
 ……当然か……無視されまくってたもんなー。
「一つ質問があるわ。
 ここいらに飛竜の谷はない?」
 僅かながらに黄金竜の眉が動く。
「……そこに一体何のようだ……?」
 ほう。やっぱりあるのね。
「破邪の剣を見に」
 とりあえず最初の目的を言って置く。
 その剣を持っていくか、それとも売っ払うか……ともあれ、そこから先はまだわからないのである。
「貴様ら……」
 黄金竜の口調が変わり、怒気――いや、憎しみの色が濃くなった。
「この前の男の仲間かっ!?」
 はぁ?
「……この前の男?」
「グラーガとか言う黒ずくめの格好した奴だっ!」
 グラーガっ!?
 ついこの間。あたしたちはそいつに会っていた。
 低級魔族で、光るナイフ、長剣のような獲物を使う奴で、身の程知らずにもあたしを危機に陥れ、苦い経験もさせてもらった。
 但し――誰があいつの仲間じゃっ!
「あいつが何をしたか――お前達は知っているんだろうっ!?」
 知るかそんなもんっ!
 と、ともかく。誤解を解くことが先決である。
「何があったかは知らないけど、グラーガと仲間なんて言うのは誤解よっ!
 あたしはあいつに殺されかけたんだからっ!」
「口では何とでも言えるっ!」
 あああああっ!やっぱり信じてくれないっ!!
 本当なのにっ!
 くっそー。こーなったら倒すしかないか。
 あたしは少し身体を引き、間合いを整える。
 その前をふらりと動き出す者が居た。
 ソードっ!?
「ちょっと!何処行くのよっ!?」
「…俺の……所へ」
 目は黒くくすみ、意思がみられない。
 一体何が――?
「リナっ!ソードのことは後回しだっ!
 来るぞっ!」
 あたしの前に立ち、剣を構えるガウリイ。
 ええいっ!今は黄金竜を止めるのが先決かっ!





 ちょっと待て。
 何かがおかしい。
 視界がかすむ……?
 黒ずんでいく。
 何で……?
 気持ち悪い………
 ――自分を知りたいのだろう?――
 誰だ……?
 ――本来のお前だ――
 何を言って……
 ――なに。怖がることはない。有るべき姿に戻るだけなのだからな――
 有るべき姿……
 ――そう。有るべき姿だ――
 なんとなくわかった。
 とりあえずお前は俺の敵だ。
 ――なんと取られようがかまわんよ。どうせ何も変わらないのだからな――
 動けないっ!?
 ――すでに貴様の身体はもらい受けた。ご苦労、依り代よ――
 てめぇ……っ!
 ――恐れることはない。全てを元に戻すだけだ――
 ――全てを元に――


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951交錯 忘却の彼方に 3白いウサギ E-mail 12/24-02:07
記事番号939へのコメント
 がああああっ!
 黄金竜のうなり声が響きわたる。
 それと同時に閃光の吐息。
 あたしは右へ、ガウリイは左へとそれを避ける。
 避けながら黄金竜へと間合いを詰めるガウリイ。
「駄目っ!ガウリイっ!
 話を聞かなくちゃ……」
 言いながら先が出てこない。
 倒すことは出来無くはないと思う。
 子竜程度なら倒す呪文のストックは沢山ある。
 だが――誤解されたまま倒すのも何か腹立つし、何より、飛竜の谷のことについて聞かなくちゃならない。
 そして――ソードのあの様子。ただごとじゃあないはず。
 まだ謎が多すぎる。
 今は何よりも情報が先決だった。
「じゃあどーするんだっ!?リナっ!」
 どーって………どーしよ……
「とにかくっ!
 事情もよく解らない相手とは戦えないわっ!
 事情を話しなさいっ!事情をっ!」
 あたしはびしぃっと黄金竜を指さす。
「知ってるくせによくもぬけぬけとっ!」
「だぁぁぁっ!
 知らないって言ってんでしょーがっ!
 だいたいっ!
 もし知っているなら言ったところで問題ないしっ!
 知らないなら誤解をしていたわびとして事情を話すのが筋ってもんでしょーがっ!」
 ぐぐっと唇を咬む竜。
 よしっ!納得しかかってるっ!
 後一押しっ!
「それともっ!
 竜ってのは人間に対してその程度の余裕も持てない生き物なのっ!?」
「ぐぐぐぐ……
 いいだろうっ!話してやるよっ!」
 その黄金竜は小さな少年へと姿を変えた。
 へえ。人間の姿へと変身することは出来るんだ。   
しかし挑発に乗ってくるよーじゃ、まだまだだが。
「まず始めに。
 飛竜の谷には一体何があるの?」
その言葉に僅かながら動揺の色が出る。
「本当に……知らないのか……?」
 知ってたらこんな事質問しないわよ……
 あたしは溜息をついた。
「一応破邪の剣があるとは聞いてるけど……それだって本当のことかどーか知らないわ」
 少年は少し考え込み、やがて口を開いた。
「破邪の剣か……確かに、そう呼ばれるものはある」
 らっきぃぃっ!
 これで魔法剣げっとぉぉぉっ!
「だが……『それ』はそう呼ばれているだけで、実際本物の剣じゃない。
 そう呼ばれているのは宝珠(オーブ)だ」
「宝珠!?
 何でそんなものが剣なんて……」
「言い伝えなんていい加減なもんさ。
 一人一人解釈が違うからわずかづつずれていく。
 まぁ……捉え方が違っていただけで、伝えようとしてた事は一緒だったかも知れないけどな」
 言って少年は溜息をついた。
「とある者が封印された宝珠なんだ。
 実は……高位魔族」
 なっ!?
 魔族っ!?
「俺達飛竜の谷に住んでいた竜は、その封印が解かれないように監視し続けていたんだ。
 ところが……だ。
 どうやって監視の目をくぐったのか一匹の魔族が入り込みやがった。
 さっき言ってたグラーガって言う魔族だよ。
 あんな低級魔族……俺達一族でかかれば仕留められるはずだった。
 おごりじゃなく、な。
 だが……奴は変な魔法具を持っていやがった。
 魔力みたいなもんを吸い取るその道具で、宝珠に触れたんだ。
 そして奴は光るナイフや長剣らしき物を扱える能力を身につけ、宝珠はその異変に気付き暴走をはじめた。
 ………俺達一族は……俺以外………」
 ………なるほど……
「確かに……それなら武器である『剣』と呼ばれるのもわかるけど……
 なんで『破邪』の剣なのよ?魔族なんでしょう?」
 その少年はそこでにやりと笑った。
 何となく悪寒が走る。
「封印された魔族の一部と言ったろ?
 俺達は大昔………」
「あーあ。駄目よぉ♪そこまで話しちゃあ♪
 あたしの仕事が増えちゃうじゃない。黄金竜の生き残りさん」
 声は頭上からした。
 この山には死んでも似合わない、ひらひらどぴんくドレスを来た少女が浮いている。
「お前さん……」
 障気に気付き、ガウリイは起きだした。
 寝るなよ……あんな話の最中に……
 いくらなんでも失礼だぞ……ガウリイ……
「はじめまして♪
 シリアだよ」
 にっこり笑って、地面に音も立てずに着地した。
「あれ?
 ソードお兄ちゃんは?」
 はっ!?
 そーいえばソードは何処に行ったんだっけ?
「ソードなら居ないぞ。
 さっきどっかへふらふら行っちまった」
 そうそう。どっかへふらふらと…………って、放って置いてどーすんのよっ!?
 追いかけないとっ!
 さっきの話を考えると……まずいことになるかも知れない。
 とにかく、今は一刻も早くソードに追いつきたいとこだが……こいつがそーさせてくれるかどーか………
「えー……困るなぁ。
 あんまり失敗できないんだよねー。
 追いかけなくちゃ。
 あ、でも。やっぱりお姉ちゃん達もソードの所に行くの?」
「そうなるわね」
 ひょいと肩をすくめて言うあたし。
 やっぱ……戦わなくちゃ駄目か……
「ごめんねー。
 これ以上関係者を増やすわけにはいかないの。
 どーしてもソードを追いかけるって言うんなら死んでもらわなくっちゃいけないの」
 やっぱり……
 あたしとガウリイは目を合わせる。
 いつでも準備はおーけーっと。
「おい。ちょっと待て。お前ら。
 あんな子供と戦う気か?」
 竜の少年が口を開く。
「……あーみえても魔族よ。あのこ」
「なっ!?」
 少年の顔は憎悪へと変わった。
 い……言わないほーが良かったかな………?
「魔族がここに何のようだっ!?」
 おー……切れとる。切れとる。
「だからぁ、ここじゃなくってソードお兄ちゃんに用が……」
 困った顔をするシリア。
「ソードに何の用よ?」
「死んでもらおうかと思って♪」
「何故?」
「……それは言えないわよぉ……って、急がなくちゃ間に合わないわ。
 さぁ、早く始めようよ♪」
「早くしないとソードが復活させるから?」
 シリアの表情が凍りつく。
 無邪気な顔で笑っていたシリアは、急に冷ややかな顔へと変わった。
「なんで知っているの?」
 声も冷たい。
「なんとなく……ね。
 さっきの話から考えて……そんなところじゃないかなーって」
 それでかまをかけたのだ。
 そして運が良いのか悪いのか当たってしまった。
「良くわからんぞ」
 剣を構えたまま問うガウリイ。
 まぁ……やっぱりガウリイにはわからないよね……
「後で説明したげる。
 もっとも……そんな暇があったらだけど」
 あたしは冷たい表情で凍りついた少女を見る。
「どーやらお互いそれを止めるのが先決みたいね」
 止める?
 魔族が何故魔族復活を止める…………?
「一次休戦。
 ソードお兄ちゃんを止めに行くわ。
 じゃ、ばいばい♪」  
「ま、待てっ!」
 竜の少年の声もむなしく、シリアは姿を消した。





「ふむ……」
 右手を握る。開く。
 特に変なところはない……よな……
 ただの夢だったのだろうか。
 それにしてはあまりにもリアルな声だった。
 そう、変なことも言ってたし。
 本来の自分……か。
 俺はいつも夢を見ていた。
 その夢が現実にあるのか興味を持った。
 だけど……もしかしたらとんでもないことをしているんじゃないのか?
 依り代……
 夢なら良いんだ。夢なら。
 だけど……実際目が覚めたらこんな訳の分からない所に立っているって言うのは……
「どう考えたって普通じゃないよなぁ……」
 つい、声に出る。
 ふと周りに気付いた。
 ここは――飛竜の谷っ!
 暗い空気、薄汚れた石、苔のついたこの雰囲気……間違いない。
 飛竜の谷だ。
 ここで自分の……何かを探して………
 ぐぅんっ!
 体の中の何かが俺を支配する。
 ――さあ、行こうか――
 何処へ?
 ――私の所へ――
 その言葉に俺の意識は再び朦朧としたものとなる。
 思考の術が失われたようだった。
 なのに、周りの情報は入る。
 俺の――いや、もう誰の足かはわからない。
 ただ――景色が後ろへゆっくりと流れていく。
 やがて俺の姿をした『何か』は、白く、鈍く光った場所へと入っていった。
 夢で見た景色だった。
 この神殿らしき物は隅から隅まで知っている。
 この記憶は――俺の物ではない――
 頭が痛い――もう寝てしまおうか
 けだるい脱力感に襲われ、『俺』は全てを失うところだった。
「ソードっ!」
 呼びかけられた、その声に意識は僅かずつだか、冴えていく。
 全身に何かが染みわたり――それは『俺』へと戻っていった。


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952交錯 忘却の彼方に 5白いウサギ E-mail 12/24-02:12
記事番号939へのコメント
上の忘却の彼方に3は4です。
ああ……ミスしてしまった(汗)

「ソードっ!」
 あたしの声がうつろな瞳をしたソードへと飛ぶ。
 竜の少年――ドゥルーの案内で、この場所へとたどり着いたのである。 
 しかし――遅かったのかも知れない。
 破邪の剣――いや、宝珠は、すでにソードの目前である。
 あたしの予測が正しければ――ソードは『高位魔族』の生まれ変わりである。
 いや、そこまではっきりとした存在ではないのかも知れない。
 しかし……そう考えれば全てが説明が付く。
 知らないはずの道を案内した時があった。
 知らないはずのその道を、ソードはこう言ったのだ。
 『次の変な形の石を右』、と。
 実際その石はあった。
 道も知らないはずの人間が先に何があるか何てわかるはずはないのだ。
 しかしそれが――魔族の記憶だとしたら?
 あたしは以前聞いたことがある。
 かつてこの世界の魔王――シャブラニグドウは七つに分断され、封印された、と。
 そして復活した一部が他の自分を解き放とうとするのは必至。
 事実――あたしは聞いたのだ。
 その『赤眼の魔王(ルビー・アイ)シャブラニグドゥ』自身から。
 魔王がそう言った行動をとるのならば、その部下である魔族達もそういう行動をとるのはおかしくない。
 だからソード――いや、ソードの身体へと生まれ変わった魔族は過去に分断され、封印された自分を、取り戻しにここに戻ってきた。
 ソードは……もしかしたらすでにこの世に存在しないのかも知れない。
「リナ?」
 へ……?
「よくここがわかったなぁ」
 頭をかくソードに目が点になるあたし。
「俺が案内したからな」
 じろりと睨むドゥルー。
「ああ、さっきの竜の子供か。
 なんでリナ達と一緒にいるんだよ?」
「ちょっ、ちょっとまってっ!
 あんた……本当にソード?」
「……カエルか犬に見えるか、俺が」
 ジト目で見るソード。
 静寂が――あたりを支配した。
「ところで、リナ。何で急いでたんだ?」
 ガウリイの問いがあたしの頭を通り過ぎる。
 そして起こる永遠とも言える沈黙。
「えと……なにかあったのか?」
「『なにかあったのか』ぢゃないぃぃぃぃっ!
 ああああああっ!
 さっきまでどシリアスやってたあたしのモノローグをどーしてくれるっ!?」「いや……どーって言われても……
 それよりモノローグって……?」
「やかましいっ!
 うぉのれっ!
 こーなった辺り構わず破壊しちゃるっ!」
「どわわっ!
 やめろっ!リナっ!」 
「放せっ!ガウリイっ!」
 ぬぅぅっ!
 背景(バック)に雷鳴出したり魔王まで持ち出したりしてまで例えたあたしの完璧な推理をあっさり壊すとは許せんっ!
 絶対どつき倒すぅぅぅっ!
 逆恨みというなかれ。
 人間頭ではわかっててもどーしよーもないことがあるもんである。
「こんな戯れ言をしにここまで来たのではないぞっ!
 ここまで来た理由を説明して貰おうか、女」
 むかっ。
 ドゥルーは冷ややかにそう言ったのだった。
 ええいっ!こーなったら全部話してやろうぢゃないのっ!
「あたしはっ!
 ソードがこの宝珠に封印された魔族の一部の生き残りでっ!
 それを復活させに来たんじゃないかって思ったのよっ!」
「あ、なるほど。
 だからさっきから変な奴の声が聞こえるのか」
 ぽんっと手を叩いて頷くソード――って、をい。
 ずざざざざっ!
 あたしは一気にソードから離れて間合いを取る。
「露骨に逃げたな……おまい……」
 こちらを見るソードはあきれた顔をしていた。
「まぁ……確かに、それなら説明がつくな」
「もしかして……自分で全く気付いてなかった……?」
「うん」
「あたし……別に意味であんたが怖いわ」
「柱に隠れて顔だけだして言うなっ!
 それも真顔でっ!」
 がやがやとわめき散らすソード。
「おい、リナ。よくわからんのだが……」
 こちらに寄って来てひょいと顔を目の前に近づけるガウリイ。
 あたしもわかんないわよっ! 
「とりあえず、たぶんだけどリナの言うこと殆どあってると思う。
 さっきリナが声かけるまで、事実乗っ取られてたみたいだし」
 ついさっきかい。
「それで……今は平気なの……?」
「ああ。今のところは」
 今のところはってのがすっごくひっかるんですけど……
「怖く――ないの?」
「まさか。
 怖いよ。押しつぶされそうなくらいに、な。
 さっきのもカラ元気で、現実逃避してただけさ」
 ソードは床に腰を下ろし――うつむいて自嘲気味にそう言ったのだった。


 夜はただひたすらに長かった。
 すでにぼろぼろになった神殿の目の前で、あたし達は野宿をすることになった。
 考える時間が欲しい。
 ソードはそう言った。
 もしかしたら――あたしは今の内にソードは倒すべきなのかも知れない。
 このままだと魔族が復活するのは時間の問題。
 それは人間にとって良い結果とは言えないだろう。
 ならば、復活する前に叩け――
 あたしはソードへと目を動かす。
 岩に背をかけ、じっと焚き火の炎を見つめるソード。
「出来るわけないじゃない……」
 あたしは誰にも聞こえない声でそう呟いたのだった。
 ここには木がない。
 よって、小鳥のさえずりも、木々のざわめきもない、無音の空間だった。
 焚き火のこの炎だって、ドゥルーが前いた竜達のすみかから持って来てもらったものだった。
 ここには生命の音がない。
 風はただただ岩を晒しては流れていく。
 止まることはなかった。
 あたしもガウリイもただ黙って食事を続ける。
 何を喋って良いのかわからない。
 ほんの些細な言葉でさえ、ソードを傷つけるんじゃないかと恐れていた。
 ――このあたしが。
「リナ、もう寝た方がいい」
 ふとガウリイがこちらを見て言った。
 すでに深夜。
 夜空には無数の輝きが空を支配していた。
「うん……ありがと」
 ころんと横に転がる。
 眠れるはずがなかった。
 もしあたしが何かの魔族の生まれ変わりだったとしよう。
 その時あたしはどうするのだろう?
 答えは出なかった。





 一同はすでに眠っていた。
 空気が重い。
 やっぱり言うんじゃなかっただろうか。
 俺は全体重を背中にある岩に預ける。
 夜空は暗く、明るかった。
 魔族――
 俺は魔族と戦ったことがある。
 初めて見た時は師匠が戦っているのを怯えながらだったと思う。
 小さな頃から戦いの連続だった気がする。
 最初は生きるための、次は――何だっけ……
 思い出せない。
 俺は立ち上がり焚き火から少しずつ遠ざかる。
 当たりに段々と闇が広がる。
 俺も――こうなっていくのだろうか――
 笑ってしまう。
 自分が戦い続けた相手に俺は変わるんだ。
 こんなおかしな事があるのだろうか?
 こりゃ傑作だ。
 なのに――何で涙が出るんだよ――





 世界はただ時を刻む。
 いつも通りに、当然に、残酷に。

「よ。おはよ」
 いつの間にか眠ってしまったらしい。
 まだ身体に残る眠気を取り払おうと目を擦る。
「起きたか、リナ」
 ガウリイが朝食の準備をしながらそう言った。
「おはよう」
 あたしは笑って答えた。
 長い一日が始まる。


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953交錯 忘却の彼方に 6白いウサギ E-mail 12/24-02:19
記事番号939へのコメント

「仲間の敵を討ちたいからだ」
 何故ここまで付いてくるのかをドゥルーに訪ねると、そう答えが返ってきた。
 しかし……カタキっつっても……あたしとガウリイが倒しちゃってたりするんだよなー。これが。
「それと……嫌な予感がすると思ったが……
 まさかそこまで事態が深刻になるとはな」
 うん。あたしも驚いた。
「どうする?
 あんたのお仲間のカタキの仲間になるかも知れない俺を今のうちに殺しておくか?」
 こっ、こらっ!ソードっ!
「そうさせてもらう――と、言いたいところだが、たかが人間を、それも死んだ目をしてる奴を殺したって何にもならない」 
「あっそ」
 怒りもせずに、軽く返すソード。
「俺はともかく、あんたらの方が気になるがな」
 あたし達を見て言うドゥルー。
「そうそう。逃げた方がいい。
 いつ、俺が俺でなくなるかわからないんだしなぁ」
 あたしは――
 言葉が出る前に。
「魔族……か。
 もしそうなるなら……俺は……」
「死んじゃってくれない?」
 空気に場違いな高い声が現れた。
 シリア。
 そう――まだこいつがいたんだ。
 あたしとガウリイは間合いを取った。
 戦いが――始まる――


「誰だ……?お前は」
 ソードはシリアを見て言った。
「魔族♪
 ちなみに仕事は『ソード』お兄ちゃんの抹殺だよ」
「…………」
 ソードはぴくりとも動かない。
「面白くないなぁ、驚いてくれるかと思ったけど。
 ま、負の感情で一杯になってるから許しちゃうけど♪」
 どんっ!
 ソードから何かが放たれる。
 それはとてつもないプレッシャーだった。
 障気にも似たような――って、まずいっ!
 キレたりしたら魔族化が進むんじゃっ!?
「ソードっ!
 落ち着いてっ!」
「悪いな。
 今俺はお前なんかと遊んでやる気分じゃないんだよ」
 あっさりあたしの声を無視してシリアにそう言ったのは口調すら変わったソードだった。
 ソードは立ち上がり、腰の剣に手を伸ばす。
 本格的にまずいっ!
「そーだよねー。
 人間が魔族に変わるなんて驚異だよね。
 餌が食べる立場に立つんだも………」
 どっ!
 シリアが吹き飛んだ。
 ソードの拳を受けて。
 あたしにすら見えない動きで、ソードは間合いを詰めたのだ。
 これではっきりした。
 ソードは――いや、そいつは素手で魔族を殴りつけたのだ。
 魔法もかけていなければ、特別な魔法具も付けていない、素手で。
 表情は見えない。
 ただ――ソードを取り巻く空気はすでに人間の放つ物ではなかった。
 外見上は全く変わりない。ただ雰囲気は確実に変わっていた。
「口うるさいガキだ。
 俺を殺す気なら全力で来い。『もう』お前には無理だろうがな」
 ゆっくりとソードはシリアに歩み寄る。
「酷いなぁ……子供を殴るなんて……」
 咳き込みながらもまだ言うシリア。
 魔族って咳き込んでも意味あるのか?
「なら蹴ってやろうか?」
 ばきっ!
 倒れ込んだままのシリアを蹴り飛ばす。
 そしてそいつは宝珠へと歩み寄る。
 まずいっ!
 もしあいつの手に渡ったら――ソードはきっともう戻らないだろう。
 いや、もうすでに元には戻らないかも知れない。
 だけど――放っておくなんて出来ないっ!
「何の真似だ?」
 そいつはあまりにも意外そうな声でそう言った。
「リナっ!」
 ガウリイがこちらへと走ってくる。
「宝珠の所へ行って復活する気でしょ?
 それはさせない――って真似よ」
 ガウリイが隣に来た。
 ドゥルーの姿がいつの間にか見えないが、そんなことを気にしてる場合ではない。
「それは無理だ」
 抑揚のない声が辺りに響く。
「無理かどうか――試してみないとわからないわ」
 あたしは呪文を唱えはじめる。
 宝珠は後ろっ!この位置で退かせるっきゃないっ!
 ガウリイは剣を抜こうと手をかけた瞬間。
「無理だったな」
 なっ!?
 声は後ろからした。
 慌てて振り返るあたし。
 ぱきぃぃんっ!
 宝珠は澄んだ音を立てて割れ砕けた。


「もしかして……復活……」
 シリアがとぎれとぎれに言いながら立ち上がる。
「まあ――な」
 そいつはさらさらと流れていく宝珠だった物を見つめながら答える。   
「リオン――かつてそう呼ばれていた者だ」
「ひぃぃっ!」
 シリアは恐れた。そいつの力が自分にはとうてい及ばない者だとわかって。
 そしてその恐怖は、精神体として存在している魔族にとって危険なものなのだが、抑えられるはずがなかった。
 リオン――そう名乗った相手の威圧感というか障気というか、ともあれ、シリアにまるっきり勝ち目がないのはわかっていた。
「ゼロスに伝えろ。
 『厄介者が復活した。
  どうしても倒したいなら貴様が来い』ってな」
 すでに右半身が溶けているシリアはがたがたと頷き、その場から姿を消した。
 それにしても……ゼロス……か。


「ゼロスを……知ってるのか……?」
 ガウリイがリオンを牽制しながらそう聞いた。
「当然だ。自分の同僚みたいな者だからな」
 同僚って……もしかしてっ!
「獣将軍っ!?」
「封印される前はな」
 っなっ!?
 確かに、高位魔族だとは聞いていた。
 しかし――シャレにならないぞ……これは……
 あれ?待てよ――確かゼロスは――
「獣王は部下を一人しか作っていないって聞いたわよ。
 一人しか作らない代わりに――二人分の力を注いだとか」
 実際、ゼロスは自分と同格のはずの竜神官、竜将軍を二人同時に相手して互角の戦いをしたことがあった。
「二人分の力ってのは事実だ。
 俺の力を奪いやがったからな。あいつは。
 任務に必要だとぬかして」
「じゃあ……」
「今は力は殆どない。
 それで力を失って疲れ果てたところに竜の一族に囲まれてこのざま。
 と言っても、中級魔族程度なら軽くあしらう自信はあるがな」
 ぞくり。
 身体が一気に冷える。
「ソードは……どうなったの……?」
「内緒だ」
「………………………………」
 ……もっ、もしかして獣王の部下ってこんな変わりもんばっかかっ!?
「ま、冗談はおいといて、だ。
 実際俺にもわからないんだよ」
 あたしにはあんたがわからない。
「生きてるのか……?」
 ガウリイが剣を構えながらもそう言った。
「ああ。それは間違いないな。
 ただ――この身体に出てこれるかどうかはわからないが」
 いくらこんな変わり者が魔族だったとしても、ソードにとっては身体を奪われた事は変わりない。
 なんとか――元に戻す方法は――
 元に戻れなければ、死んでるのと同じである。
 いや、もしリオンが魔族として動き出し、その中で生きているというのは死ぬ以上に辛いことであろう。
 自体は変化はしても好転はしてないのである。
「おやおや、またリナさんもご一緒ですか」
 黒い法衣をまとった魔族はとぼけた口調で突然現れそう言ったのだった。  


「好きでやっかい事に首つっこんでじゃないわよ……」
 あたしは心底嫌な顔して言った。
「そうかぁ?」
「うるさいよ、ガウリイ」
「……すまん」
 あたしの瞳の奥に眠る感情に気付いてか、ガウリイは素直に謝ったのだった。「それにしても……まさかあなたが復活するとは思いませんでしたけどね」
「俺もお前らに命狙われるとは思わなかったよ」
 にっこり。
 二人同時に笑みを作り出す。
 二人の笑みとは対照的に、当たりにぎすぎすとした雰囲気が現れる。
 こっ、こりは怖いもんあるぞー。
「ま、感動の対面は後にして――獣王様がお待ちです。
 来て下さいますよね?」
「断る」
 身も蓋もなくリオンが言い放った。
 おー、ゼロスの奴、動揺しとる。
「創造主様の命令は絶対で、断ったりすることは出来ないはずですが……」
「安心しな。
 この身体は人間の物だからな。命令に従わないことも出来るんだよ」
 そう。竜王、ガーヴもそれで魔王に反旗を翻した。
「それに、それは嘘だろう?」
「よく――わかりましたね」
「当然だ。すでに獣将軍としての力を失った俺にあの方は用なんて無いだろう」
「その通りです。
 それにあなたの命も狙いましたしね」
 ふと気付いたことがある。
 あたしとガウリイの二人はすっかり相手にされてないことに。
 そりゃいきなりゼロスとリオン二人同時に攻撃されたくないが……何か腹立つぞ。
「何で命を狙っていたのよ?
 力を失ったと言えど、魔族は魔族。
 仲間として迎えに行く――まではしなくても、放っておけばいいじゃない」
「そうはいかないんですよ。
 お忘れですか?
 リオンさんが封印されていた宝珠の呼び名を」
「破邪の剣――」
「そうです。それが答えです」
「ちっともわかんないわよ」
「――由来なら俺が教えてやる」
 声は、今まですっかり忘れ去っていた、竜の少年、ドゥルーの物だった。


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954交錯 忘却の彼方に 7白いウサギ E-mail 12/24-02:22
記事番号939へのコメント
「あんたどこにいたのよっ!?」
 ドゥルーに目をやると。
 その目は狂気に満ちていた。
 そ、そお言えば魔族に一族全滅させられてたんだっけ……
「また変なのが出てきましたね……
 やっぱりリナさんのお友達ですか?」
「『やっぱり』ってぇのはどーゆー意味よ……」
「変なのはみんなリナさんのお友達……怖いです……リナさん……」
 完全に座った目で見ると、あっさり言葉を止めるゼロスくん。
「竜の少年だ」
 いや……リオン、ゼロスならそれぐらいわかると思うけど……
「ドゥルー、操作機は破壊した。
 由来なら口でしか説明できないと思うが?」
「一つだけだと思ったのか?」
「何っ!?」
「行動開始、邪なる敵を打ち砕け」
 ドゥルーの言葉と同時に、ドゥルーの胸にかかっている首飾りの宝石が輝き出す。
 リオンはゼロスへと歩み寄った。
「これが……破邪の剣と呼ばれる由縁であり、僕たちが彼を殺そうとした理由です」
 溜息をつき、こちらに向かって言うゼロス。
 まさか……破邪の剣って言うのは……
「竜族に操られた対魔族兵器だ。
 面白いもんだろう?
 魔族が魔族を滅ぼすんだ」
 少年は狂気の笑いを上げた。
「どうするんだっ!?リナっ!?」
「あたしにそんなこと言われても……」
 足が動かない。
 今何をすればいいか――答えはすぐには出るはずがなかった。


 対魔族兵器『破邪の剣』はゼロスに押されていた。
 先ほどの話を聞くと、当然のことである。
 獣将軍としての力はすでにゼロスの中。
 勝てるはずがなかった。
 あたしとガウリイはただ、その戦いを見ていた。
 何も出来ずに。
「リナ――どうする?」
「たまには自分で考えてよ……」
「俺は考える事なんて出来無いぞ」
「こんな時までふざけないでよ。
 あたしの考え一つでガウリイ――どうなっちゃうかわからないのよっ!?」
「構わないさ。それがリナの出した答えなら」
「…………」
「ソードを放っておくか?」
 あたしは首を振る。
「ドゥルーを放っておくか?」
 首を振る。
「じゃあ、どうする?」
 ……………
「……無茶な注文して良い?」
「今までお前さんに付き合ってきたんだ。
 無茶な注文なんて山ほどされてきたぞ。
 今更断ると思うか?」
「それもそうね。
 じゃ、ガウリイは………」
 あたしは苦笑してガウリイの耳打ちするのだった。


「くそっ!何をしているっ!
 とっとと倒せっ!」
 『破邪の剣』に無茶な注文飛ばすドゥルー。
「さてと……いい加減飽きましたし、そろそろ終わりにしますか」
 ゼロスは杖を振り上げ――急に方向を変えて構える。
 がきぃんっ!
 そしてそれはガウリイの剣を受けとめた。
「何の真似です?ガウリイさん」
「俺にもわからん」
 ……あ、ツッコミ入れたい。
「ま、まあ、なにはともれ……僕と戦う気ですか?」
「まあな」
 ギリギリと音を立てるガウリイの剣とゼロスの杖。
 やがてそれはガウリイが飛ぶことで消えた。
 ガウリイは油断無く、ゼロスは無防備に。二人は構える。
 しばしの睨み合い――もとい、ガウリイ一人の睨みが続き、そのままガウリイは走り出した。
 あたしが見たのはそれまでだった。


 静かに歩み寄る。
 ドゥルーは気付かない。
 注意は予想外の援護に注がれていた。
 つまり――ガウリイ。
 そして慌てて自分の『剣』をゼロスへと向ける。
 その武器は弱かった。
 いや、武器はかなりの強さである。
 本当に弱いのは――使い手――ドゥルーなのである。
 彼は気付いていない。
 自分の感情が逆に魔族を喜ばせていることに。
 彼のまき散らしていた感情は――間違いなく負の感情だった。
 勝負は一瞬。
 ガウリイもゼロス相手ではいつまで持つかわからない。
 そしてもしあたしがミスしたら――ドゥルーは二度と手放さないよう細心の注意を払うだろう。
 失敗は許されなかった。
 ちらりとドゥルーの影を見る。
 太陽に照らし出されたそれは、はっきりと姿を地面へと映し出す。
 あたしは呪文を解放した。
「影縛り(シャドウスナップ)っ!」
 あたしの手から放たれたナイフは、ドゥルーの影を縫い止める!
 それと同時にあたしは走り出す。
「なにっ!?」
 ドゥルーが驚きに染まる。
 しかし――もう遅いっ!
 あたしはドゥルーがつけていた操作機である首飾りを奪うことに成功した。
 不意打ちと影縛り、どちらか一つでも欠けていたら成功しなかったであろう。
「お前っ!」
 ドゥルーがこちらに走り出す。
 こちらに届く前に、ぱりぃんと乾いた破壊音が辺りに響いた。


「何て事を……もうないんだぞっ!これはっ!」
 しゃがみ込み、破片を拾うドゥルー。
「つーことで、ガウリイ、もういいわよ」
 ちらりと後ろを見れば、ゼロスと戯れてるガウリイ君。
「おうっ!うまくいったか?」
「今のところはね」
「もしかして……あれ壊したんですか……?」
「うん」
 口々に問う二人に答えて、あたしはそれぞれの答えを言った。
 そしてそのままリオンの所へと歩み寄る。
「もう正気?」
「ああ、助かった」
 むう……魔族に礼を言われるとは……本当に変わった奴である。
 まぁ……礼を言われて悪いんだけど……
「封魔!」
 あたしは懐から宝珠を取り出し、リオンを封印する。
 白い光が当たりを包み――リオンのいた場所にはソードが倒れていた。
 騙し討ちみたいなことして悪いとは思うが……他にソードを救う手は考えられなかった。
 こうして――後味の悪さだけがあたしの胸に残った。


「何をやったんだ?」
「封印しただけよ」
 そう、あたしはあの時、ドゥルーが操作機は一つだけではないと言った事を思い出したのだ。
 操作機が一つではないのなら宝珠は――?
 決して広くない神殿内を物色――もとい、宝珠と、記録を探し出すのはさして苦労のいることではなかった。
 その探す時間と、ドゥルーの注意を引くためにガウリイにゼロスの相手をして貰ったのだった。
 おそらく、ゼロスは多分それに気付いてのってくれたんだと思う。
 認めたくはないが、あのゼロス、全力で戦ったら苦労らしい苦労もせずにあたし達を倒せる実力を持っている。
 それなのに探している間、ガウリイが無事だったという事は、とりもなおさず、そーゆーことである。
「で、ゼロスはどうするんだ?」
 ガウリイがゼロスに問う。
「もともと、この仕事は僕の物じゃなかったんですよ。
 僕への命令はリオンさんの復活の阻止の手伝いでしたからねぇ。
 来たときにはもうすでに復活しちゃってますし、その上封印されちゃってますから……関係ないでしょうね。
 ですから、ソードさんを殺せと言う命令は来てないです」
「相変わらずのお役所仕事ね。
 モットーは『騙すな誤魔化せ』だもんねー」
「人聞きの悪いことを言わないで下さいよ。
 そうそう、ドゥルーさんの一族の記憶はこちらが消させていただきました」
「いいのか?そんなことして?」
 ガウリイが問うが、ゼロスは笑うのみ。
「どうせ今更元に戻すことは出来ませんし、いいじゃないですか。
 竜族の変な知識を持ってこちらにちょっかい出されては後々面倒ですし、最大限の譲歩はしたつもりですよ」
 とことん問題のある発言だが魔族だし……ゼロスだし。
「では僕はこれで。
 リナさん、やっかい事に首を突っ込むのも程々にしとかないと身を滅ばしますよ」
「あんたに言われたくないっ!」
 あたしの抗議は届くか届かないかの内に、ゼロスの姿は消えた。


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955交錯 忘却の彼方に 8白いウサギ E-mail 12/24-02:25
記事番号939へのコメント

「こぉぉのばかたれぇぇぇぇっ!!」
 どがっ!
 あたしの怒りの跳び蹴りがソードの頭に炸裂した。
「ンなっ!?なんだぁぁぁっ!?」
 頭を抱えながらわめくソード。
「『なんだ』じゃないわよっ!
 勝手に意識乗っ取られて今まであんたはのうのうと寝てたぁぁぁっ!?
 人を馬鹿にすんのもいい加減にしなさいよっ!」
「そんなこと言われても……好きで眠らされてたんじゃないんだけど…」
 聞く耳持たん。
「……それに今回のことではっきりしたし……意識乗っ取られた場合、俺には何もできないし……」
「なぁぁに、男が弱気なこと言ってんよっ!?
 今は出来なくても、いずれ出来るかも知れないでしょーがっ!」
 あたしはバンッと背中を叩く。
「……でもそんなことしたら周りに迷惑が……今回リナ達にも迷惑かけたし……」
「あのねぇっ!
 あたしは自分で勝手に首突っ込んで、自分の好きに行動したのっ!
 あんたに謝られる筋合いはないわよ」
「そういうことだ。
 あんまり考え込むと体に良くないぞ」
 ガウリイも笑って続ける。
 ガウリイ……あんたは少しは考えろ。脳に悪いぞ。
「そういや、あのリオンとかって奴はどうなったんだ?」
 ふと、思い出したように聞くガウリイ。
「俺の中だろ?」
「ええ。いつまた復活するかわからないから注意してね(はあと)」
 しぃぃぃんっ!
 空間が凍る。
「どぅええええええっ!?
 ちょっ、ちょっと待てっ!
 あの……『いつ復活するかわからない』って………?」
「いやあ、宝物庫あさってみたんだけどさー、完璧なのなくって。
 だからさっきの宝珠はスペアだからあんまり効力は大きくないから注意してね」
 もちろん、ゼロスには言っていない。
 ……まぁいずればれる……もしかするととっくにばれてるのかも知れないけど、わざわざ話すこともないだろーし。
「だぁぁぁっ!
 どう注意しろってんだぁぁっ!?」
 ソード……口調変わってる……
「こんぢょーで」
「しくしくしく………」
「ま、人生には少々の波乱があった方が面白いわよ。
 ここは何とか少しずつでも訓練していってちょーだい」
「訓練って……」
「リオンの力を引き出すとか、意識を乗っ取られないよーにするとか……」
「出来るかっ!そんなことっ!」
「出来て貰わなくちゃ困るのよ」
 まぁ……あの性格から考えて、いきなり破壊をまき散らす、とかはなさそーだけど……魔族だし、それはわからない。
「う゛……。
 でもいきなり暴走とかしだしたらどーする気だ?」
「ま、そん時はあたしがリオンにこの操作機で脅して命令聞かすから安心してちょーだい」
 懐からあの、『操作機』を取り出す。
「リナあの時それ壊してなかったか?」
「へえ、ゼロスと戦ってる最中なのに見えてたんだ、ガウリイ。
 アレは偽物よ。宝物庫にあったの。
 まぁ……アレは魔力がこもる前のだから、タダの首飾りよ。
 壊したのが別に操作機とか一言も言ってないわよ。
 まぁ……誤解させるようにドゥルーの目からいったん放してから叩き割ったから、粉々のなら見分けつかないだろーなーって……」
「それってもしかすると……もし暴走してリオンになったらリナの命令は絶対って事か…?
 やっぱり……」
 こくん。
 あたしは無言で頷いた。
 あ、木枯らし。
 ひゅるるるるる〜〜。
 いやあ、秋だなぁ。
「ま、一回暴走命令出して止める事に……そうね、金貨50枚って所でどう?」
「払えるかっ!」
「甘い。
 命令すれば嫌でも払うことになるわよ♪」
「あ゛あ゛っ!
 俺の自由は何処にっ!?」
 ンな物はない。
 とりあえずこれで商談成立♪
 これで相手もあたしも気を使うことはない。
 ……だいたい、暴走してる最中はソードは支配されてんだから自由なんてもとより無いんだし、別にいーぢゃないか。
 ソードは頭を抱えてなにやらぶつぶつと言っていたりする。
 はっきし言ってかなりこわい。
「ところで……だ。
 そうなると……当分ソードも俺達に着いて来るって事か?」
 ……あ、そうか……そうなっちゃうんだ……
 少し考え込んで数秒、あたしの頭の上にガウリイの手がぽんぽんと乗る。
「ま、宿屋にでも行ってゆっくり考えような」
 言って優しく微笑む。
 何だかわからないけど……すっごく安心したのを覚えてる。
「ところで……さ、ガウリイ」
「ん?」
「ゆっくり考えるのって誰……?」
「俺以外だな」
 ………………………………
 このくらげっ!……………ま、いっか。
 あたしは苦笑しながらも、宿屋へと向かったのだった。
 ガウリイにぶつぶつ言ってるソードをずりずりと引きずらせて―――


  交錯:忘却の彼方に         end



白:またまた長い駄文にお付き合い下さり、ありがとうございますっ!
K:いや、まったく(どきっぱり)
白:……………………
K:おまけにこれまだ話続くでしょ。
白:それどころか今回の話自体、まだ収まってないよーな気が……
K:気付いてる人は一体何人いるのでしょーか。
白:うやむやすぎ。
  展開はやすぎ。
K:で、一体どれくらい?
白:えへ(はあと)まだ第一章。
K:予定は何章まで……?
白:四……ぐらいかな……?
K:こぉら待ていっ!
白:あああああっ!あくまで『予定』だからっ!よてーっ!
K:それ以上の可能性もあるってことでしょーが。
白:う゛っ!?しまったっ!気付かれたっ!
K:あんたはぁぁぁっ!
  長さはまぁ、『二翼の翼』(白ウサの別の話です)に及ばなかったからまだ  許すとして、強引なソードの設定は一体いつどこで思いついたっ!?
白:9月の始めに風呂で、ふと。
K:……なるほど……だからいい加減なのね……
白:いい加減って……
  ま、まあ、絶対あり得ないことはわかってるけど……
  獣将軍なんざいるわきゃないし。
K:他にも無視しまくったのあるでしょーが。
白:……まぁ……おりじなりてぃとでも……
K:言えん。言えん。
白:しくしくしく………
K:伏線張りまくってるけど多すぎない?
  読んで下さった方々がついてきてくれてるかどーか不安になったわよ。
  途中で。
もったいぶったのが多くてね。
白:うん。私も伏線多すぎてどんなの張ったか忘れちゃった。
K:……ひどいぞ……それは……
白:酷いと言えば、何度も書き直したことが私にとって辛かった(自業自得)
K:最初の話はルーク、ミリーナがいたもんね。
白:うん、ぢつは。
K:破邪の剣を探してたリナ達と『宝探し屋(トレジャー・ハンター)』である、  ルーク、ミリーナがお宝(破邪の剣)のうわさを聞いてやって来て
  鉢合わせるとゆー……
白:今までの話全て読んで下さった人はわかると思うけど、
  もし出したとしても、出番が少ないんだな、これが。
  何しろ今回の話は圧倒的に戦闘シーンが少ない(意識的にそーしたんだけど)。
  よって、戦闘では殆ど出番無し。
  んで、魔族になるならないの話ではいちいちみんなの様子まで書いてもあま  り良い効果は期待できない。
  事実、今回の話は殆どリナとオリキャラ、ソードばっかの話を書いてたし。
K:オリキャラの一人称やってた部分あったもんね。
白:それもどーすべきかすっごく迷った。
  ソードの心理的な事書くんだったら
  三人称が一番小説としてまとまってるだろうけど……
  やっぱリナの一人称が好きなもんで。
K:じゃ、次の話頑張って。
白:え゛……?
K:自分で言っといてもう忘れたの?
  これは『交錯』シリーズの第一章。
  次の話をさくさくと書くっ!
  神坂さんと違って暇人でしょっ!?
白:いや……神坂さんと比べるなんておこがましいと思うんだが……
  ま、なんにせよ、私は高校二年生。
  青春真っ盛りで忙しいし。
K:言ってて恥ずかしくない……?
白:すっごく恥ずかしい。
K:じゃ言うなよ……
ともあれ、ストーリーアイデアに2分、ぐーたら2ヶ月………
白:ばらすなぁぁぁぁっ!!
K:事実でしょーが。
白:そりゃそうだが……
K:そして全文書き直し4回。
白:だからばらすなってぇぇぇっ!!
K:だから事実だってば♪
白:しくしくしく………
K:ところで、ソードの師匠って誰?
白:とりあえず高笑いを上げる露出度の高い素敵なおねーさんじゃないです。
K:……まだその事については秘密、とゆーことで?
白:そです。
  いずれでてくるかもしれません。
  出てこなかったら笑って下さい。
  皆さんおそらく知ってるんじゃないかと……
  当てた方はもれなく「お前は超能力者かっ!」とゆーツッコミが……
K:また、「でりしゃす」読んだ人しかわからないネタを……
白:いやぁ、あの話、好き♪
K:何でもいーけど……ソードの性格が魔族覚醒前と後とじゃ違うのは?
白:魔族な部分と混ざっちゃったから。
K:なるほど……作者の都合上って事はないのね?
白:……さりげなく厳しいこと突っ込むな……お前……
K:図星かい。
白:まぁ……赤と青が混ざってできた紫に赤たしても赤にはならない、
  そーゆーことです。
K:わかるよーなわからないよーな……
  で、ゼロスとリオンの過去の話、具体的なことは?
白:書く気は無いぞ。今のところ。
K:……いい加減な……
白:リナもガウリイもでなくなっちゃうだろーがっ!
  思いっきり自己満足になるっ!
K:今はそーではないと?
白:いやぁ……それをいっちゃあおしまいよ。
K:誰だ。お前は。
白:ところで……長すぎないか?このあとがき。
K:だいじょーぶ。きっと読んでる人いないから。
白:…………………
K:だから、あたしがあんたに何したって目撃者はいないから……と。
白:その日本刀はどっから……?
K:屋根裏の奥。
白:ちょい待てっ!それって家宝の……
ざすっ!
どくどくどく………
K:あ、真っ赤。
  何でこんな事やってるのかって?
  暇だから♪
  では皆さん、またあいましょうー。
白:…………(声すら出ないらしい)


              長いあとがき 終了

――幕――


 ぴこぴこぴこぴこ……
 何処からともなく聞こえてくる。
 やがて舞台袖からミニサイズのピコピコリナちゃん登場。
 ぺこり
 無言でおじぎ。
 そして手に握っていた丸まった紙を広げる。
『今回はオリキャラ説明的部分が多くてすみませんでした。
 出来るだけオリキャラばっかに絞らないようにしたら
 異様に駆け足展開でしたし。
 何か質問がありましたら出来るだけお答えしまあすのでよろしくお願いします。
 次回は、今回ほど複雑でも、重くもありませんので御安心を。
 次回予告は、リナ=インバースさんお願いしてあります』
 と、何故か真っ赤な血で汚れていたりする。
 ぺこり。
 ピコピコリナちゃん無言でおじぎ。
 ぴこぴこぴこと舞台袖に消え、やがて音が聞こえなくなる。



★☆ 次回予告っ! ☆★

 セイルーンに不穏な動きが、そうあたしはアメリアから相談を受けた。
 どうもこのところ、領主の動きがよそよそしい……って、どの領主よ?
 はぁっ!?
 全員っ!?
 ………それってもしかして……クーデターとかじゃないでしょうねっ!?
 ま、何にせよこのあたしに任せときなさいっ!
 すぱぱぱぱぱっ!と解決してみせるわっ!
 ……何よ、アメリア、ガウリイ、その不安な顔は?
 次回、聖王都騒動(セイルーン・ディスターバンス)!
 いざ、セイルーンへっ!


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964交錯 聖王都騒動(セイルーン・ディスターバンス)白いウサギ E-mail 12/26-00:11
記事番号938へのコメント
交錯 
第二章 聖王都騒動(セイルーン・ディスターバンス)


 今、あたしとガウリイはとある国の王立図書館にいる。
 ちなみに、この間の事件の成り行きで一緒に行動しているソードは今、この付近の森で「訓練中」である。
 自分の中のもう一つの人格との話し合いも含めて。
 それはともかく、この図書館ではいつも通り、あたしが魔法、オリハルコンなど様々な文献をあさり、黙々と読みふけっているのに対し、隣にいるガウリイはぐっすり睡眠中だったりする。
 そりゃあ……今真冬なので、外は寒く、この暖房完備の効いた図書館でうとうとと休みたくなるのはわからないでもないのだが………
 人が真剣に本を読んでいる横でぐーぐーたかいびきをかいていられるのは腹が立つ。
 しかし、いつだったかあたしはガウリイを起こしたせいで図書館を追い出された経験があるのでむげに起こすわけにはいかない。
 おまけにここの図書館はうるさい奴は問答無用で追い出すというかなり厳しい図書館でも有名な場所である。
「ぐううう………むにゃ……」
 ………人間、何事も辛抱である…………
「ごおおおお……」
 …………しんぼう………
「ぐがああああ………」
「……ガウリイ、ご飯食べに行かない?」
「行くっ!」
 がばぁぁっと起きたガウリイはあたしの手をひしぃぃっと掴み、そう言ったのだった。
 ……………はあぁぁぁ………
 あたしは深く溜息をついたのだった。
 自分でやったこととはいえ……起きるなよ……あれで……
 なんとか殴るのを抑えられたのは奇蹟だったが
 まぁ、文献あさりもだいたい終わったし、お腹も空いてきた頃だし丁度いいかもしんない。
 あたしはガウリイの手をほどき、開いてた本をぱたんと閉じる。
「あら、リナじゃない」
 ひききききっ!
 この声は………っ!
「ずいぶんと久しぶりね」
 ぎこちない動きで声の主へと顔を向ければそこには会いたくない奴がいた。
 とげとげのショルダーガード、無意味に露出度の高いコスチューム。
 この二つの特徴さえ明記すればすぐに指名手配できそうな、白蛇のナーガ。
「………知り合いか?」
 隣でガウリイがちょんちょんとあたしの腕をつつく。
「まぁ……そーだけど……」
 間違っても友達じゃあない。
 断じてこれだけは認めん。
「あら、めずらしいわねぇ……
 リナ、あんたが男連れなんて」
 ナーガがにやりと意地の悪い笑みを浮かべる。
 つい顔が紅くなりそうだったがあたしはなんとかそれを抑え、逆に言ってやる。
「まぁね、うらやましい?」
「ほーっほっほっほっほっ!
 笑わせるわね、リナ=インバー……って、あれ?」 
 問答無用でナーガの両脇をがしぃっと掴み、外へ無言でつかつか歩き出す司書さん2人。
 やっぱり高笑いしたな………
 実はああいえばナーガは高笑いをし、話を続けると見越した上で、司書さんに追い出されることを狙って言ったのだが………本当に厳しいんだな……この図書館………
 おまけに体格のいい司書さん二人が無言でがしぃぃっとナーガの両脇掴んだときはあたしでさえ驚いたぞ。
 ともあれ、これでナーガがこの中に来ることはないだろう。
「おい、リナ。飯は……?」
 寂しそうに言うガウリイ。
 なんか無性に情けないもんがある。
 しかし、今外に出たら間違いなくナーガに見つかるだろうし………もう少しここで時間を潰そう。
「ごめん、ガウリイ。
 もう少し待ってて」
 ガウリイは嫌な顔して沈黙し、また再び眠りについた。
 しかし……なんで高笑いはダメで高いびきはいいんだろうか………?
 なかなか謎な図書館である。


 夕日もとっぷり暮れて、辺りが暗くなった頃、図書館が閉館時間になったので外へ出てきたあたし達。
 真っ暗な世界に延々と虫達の鳴き声が響きわたる。
 さすがにお腹が減ったなぁ………
 ガウリイも同じように少し元気がない。
 おしっ!とっとと宿に戻って夕飯を………
「ほーっほっほっほっほっ!
 ずいぶん遅かったわねっ!リナ=インバースっ!」
 あたしの考えを中断させる馬鹿高笑いが響きわたる。
 あ、虫達の鳴き声が消えてるし…………
「久しぶりにあったからって、おとなしくしていればつけあがってよくもあんな卑怯な真似してくれたわねっ!
 こうなったら久々に勝負………って、聞いてるのっ!?」
無視してすたすた歩き続けるあたし達の前に立ちはだかるナーガ。
「さぁっ!勝負よっ!」
 ………なんでこいつはこんなに『勝負』と言うもんが好きなんだ………?
 ナーガと戦えば勝つ自身はあるが、間違いなく夕飯の時間が伸びる。
 一生懸命ナーガを出し抜く作戦を考えてると、ガウリイがあたしとナーガの間にはいる。
「誰だか知らんが、リナは俺と大事な用があってな。
 勝負ならまたにしてくれ」
 ををっ!ガウリイにしてはナイスフォローっ!
 しかし、誰だか知らんがって……もう忘れてるのか……?
 ガウリイ………
「ふっ!そっちこそなんだか知らないけど、あたしとリナの勝負以上に大切な物なんてないわっ!」
 をいをい………
 はっきり言って迷惑だ。
「リナ=インバースの最強最大のライバルと呼ばれた私のことを忘れたとは言わせないわよっ!」
「忘れたもなにもそんな風に呼ばれたことないでしょーがっ!あんたはっ!」
「ふっ。わたし自身が呼んでるからそれでいいのよ」
 髪を掻き上げ言うナーガ。
 いいのか……?
「ともあれ、あなたの意見は聞く耳を持たないわっ!」
 びしぃっとガウリイを指さし言うナーガ。
「何だかよくわからんが………俺とリナはこれから夕飯だから後にしてくれ」
 ガウリイの言った言葉に指を指したまま静かになったナーガ。
「……………ふっ。そういうことなら一緒に着いて行ってあげてもよくてよ」
 着いてくるな。お前は。
「あんたまさかまたたかる気じゃないでしょうねぇ………」
 ジト目で言うあたし。
「たかるとは失礼ね。
 久々のライバルとの再会に感激したあなたがおごってくれることを期待してるだけよ」
「だぁぁぁれが感激するのよっ!?誰がっ!」
 あたしは手近にあった木を殴りつける。
 みしみしみしっ!
 木は嫌な音を立てて横へと倒れた。
「おっ、おい……リナ……」
 後ろでごにょごにょ呟くガウリイをあたしとナーガは無視した。
「ふっ!あなたに決まってるじゃないっ!
 さっき図書室であったとき感激の涙浮かべてたのをわたしは見逃さなかったわよっ!」
「ちっがぁぁぁぁぁうっ!
 あれは『感激の涙』じゃなくて『悲しみの涙』よっ!」
「そんなに照れなくてもいいのよ」
「だぁぁれが照れるかぁぁぁっ!誰がっ!」
「おい、リナ…………」
「うっさいよっ!ガウリイっ!」
「………食堂閉まっちまうぞ」
 はっ!?そーいえばっ!
「……ふっ。いつまでくだらないことやってるのよ。
 早く行くわよ」
 こぉぉぉいぃぃぃつぅぅぅはぁぁぁぁっ!!
 あたしは呪文を唱え出す。
「うわわわっ!やめろっ!リナっ!
 こんな所で呪文ぶっ放すなっ!」
 ガウリイが慌ててあたしを羽交い締めにする。
「でぇぇいっ!放せっ!ガウリイっ!
 こいつだけはっ!」
 じたばたもがくがガウリイの腕から逃れられない。
「ほーっほっほっほっほっ!いい眺めよ、リナ」
「やかましぃぃぃっ!」
「おっ、落ち着けっ!
 何度も言うが飯がなくなるぞっ!」
 ぐっ………
 それを言われると………
 仕方なくあたしはおとなしくなったのだった。


「………本気で着いてきたわね……」
 食堂の喧噪の中にあたしの呟きが混ざり溶ける。
「ふっ。そう言ってなかったかしら?」
 呟きを向けた人物……って、言うのもはばかられる、ナーガ。
「まぁまぁ、いーじゃないか。別に飯ぐらい」
 隣でぽんぽんと頭を叩くガウリイ。
「あら、話わかるじゃない」
「いやーそれほどでも……」
 会話が弾む二人。
 ………二人ともとんでもない旅の連れである。
 こんなのとずっと一緒に旅してたら胃が痛くなるぞ……
「いや……あの……さっきから俺の存在感全くないのは気のせいか……?」
「あら、ソード。いたの?」
「気のせいじゃなかったんだな……」
 あたしの正直すぎる一言に背中がすすけるソード君。
 ま、ともかく。
「おばちゃーんっ!
 ここのお勧めメニューをとりあえず五人前ずつねっ!」
「ふっ。それとブランデーを頂こうかしら」
 あたしの注文にどさくさ紛れに追加する遠慮がないナーガ。
「あんたねぇ………自分の分は自分で払いなさいよ」
「ふっ。そんな小さな事気にしてるようじゃあまだまだね」
 訳の分からないことを言って、持ってきたブランデーを一口。
「それよりリナ。こいつ誰?」
 ナイフをぴこぴこと揺らしながら問うガウリイ。
 ………もう説明するのもやだ………
「俺も知らないんだけど」
 おそるおそる言うソード君。
 なにやらすっかりナーガの方を警戒しまくっているよーである。
 ……当然か。
「私は白蛇のナーガ。リナとはライバルよ」
 だから……違うって………
「そ、そおですか……」
 ひきつりながらも何とか笑顔を浮かべるソード。
「ふぅん……俺はガウリイ。
 ガウリイ=ガブリエフだ。よろしくな。ナーガさん」
 にっこり笑ってナーガの方を向く。
「よろしく。
 あなたも大変ねぇ。リナなんかと旅して。
 苦労多いでしょう?」
 こら待て。
「いやー。わかるか?
 もう大変どころじゃないぞ」
 さらに待て。
「わかるわ。
 私もリナのせいでどれだけ酷い目にあったか………」
「それはこっちのセリフだぁぁぁっ!」
 あたしはバンッとテーブルを叩いた。
「リナ。行儀が悪いぞ」
「そうよ。これだから……」
 ぷちぃ。
 あたしは目の前にあった料理の数々を一瞬で食べ尽くす。
 ガウリイの分も、ナーガの分も、ついでに罪のないソードの分も。
「ああっ!なにすんだリナっ!」
「そうよっ!いくら本当のことだからって……」
 口々にわめく二人をあたしはじろりと睨む。
 慌てて身を引く二人。
 ちなみにソードはすでに人生こんなもん、と諦めているらしく、何も言わない。
「……もう寝るっ!」
 あたしはイスを蹴倒し、二階へと上がっていったのだった。
 ……………勘定よろしくっ!

 ばたんっ!
 いささか乱暴に部屋の扉を閉めて、ベッドの上に腰を下ろすあたし。
 うまく勘定は三人に押しつけたものの、やっぱり腹の虫はおさまらない。
 なによなによっ!ガウリイの奴っ!
 そりゃあたしと一緒にいることは楽とは言えないだろーけど………
 ああ、もう腹が立つぅぅぅっ!
 あたしはベッドにあった大きな枕に突っ伏した。
 大きな枕を抱え込み、そのまま横へごろんと転がる。
 ま、ガウリイはガウリイだからしょうがないとしてもっ!
 それより遥かにぶっちぎって許せないのがナーガであるっ!
 あたしは枕を抱え込んでいる両腕に力を込めた。
 なぁぁんであいつは今頃になって出てくんのよぉぉぉっ!
 てっきりもう会わないですむかと期待していたあたしをあっさり裏切ってくれちゃってぇぇぇっ!
 久々に会う時って普通ちょっとは変わってるもんじゃないのっ!?
 相変わらず高笑いはするは、ライバル名乗るは、食事はたかるは…………
 あああああっ!!腹が立つぅぅぅっ!
 あたしは再び枕をベットに叩きつける形で転がり起きる。
「………でもまぁ、ナーガだしなぁ……変わってるわけないか」
 ぽつりと漏らしたその一言に寂しくなったのは言うまでもない。
何となく枕を右手で殴りつけて、その反動で起きあがるあたし。
 そのままベットから降り、窓へと移動する。
 薄い蒼みを帯びた少し厚ぼったいカーテンを横へとずらす。
 外はもうすでに真っ暗だった。
 暗闇を僅かに照らしているのは輝く月と星。
 少し雲がかかった月がいつも以上に綺麗に見える。
 こんこんっ
 不意にドアからノックの音が聞こえた。
 誰だろう…………?
 少し考え込みながらもあたしはドアの方へと近づいた。
 こんこんっ
 再び規則正しく聞こえるノックの音。
「ガウリイ……?」
 つい出てしまった言葉に慌てて心の中で否定するあたし。
 ガウリイなわけはない。
 ガウリイなら声と一緒にノックするはずだし、あそこまで規則正しくは叩かない。
「誰………?」
「怪しい人魔です」
 ソードか……
 しかし……自分で言うなよ……
「何の用?」
「いや……特に用はないんだけど……
 いいのか?
 あの二人放って置いて」
 あたしはゆっくりとドアを開ける。
「別に構わないわよ。
 ガウリイだって好きであそこにいるんだろーし。
 何かあったらあたしん所来るでしょ」
「ほぉぉ……」
 にやりと面白そうな笑みをする。
「何よ……?」
「俺はお金持ってない二人組置いてきていいのかって意味で聞いたんだけどな」
 だから…何……?
「いやー、リナも可愛いとこあるじゃないか。
 嫉妬するとはなぁ」
 ばんばんとあたしの背中を叩く。
 しっ!?しっとぉぉっ!?
「何でそーなるのよっ!
 別にあたしとガウリイはそんなんじゃ……っ!」
「別に俺、ガウリイとは言ってないけど?
 昔の仲間と今の仲間が仲良くなって
 自分をないがしろにされてむかつくことも嫉妬って言うと思うんだけど♪」
「……………っ!!」
 しまった―――
 後悔があたしの頭の中を波のように押し寄せる。
「いや…あの……さっきのは……えと……」
「さっきのは?」
「………………」
 沈黙するあたし。
 ああああっ!言葉が出てこないっ!
「ま、それはともかく。
 一緒に酒場でも行きませんか?お嬢さん」
「あんた……もしかしてそれ言うためだけに……?」
「当たり」
 にっこり笑うソード。
 こぉいぃぃつぅぅはぁぁっ!
「行かないっ!お休みっ!また明日っ!」
 ばたむっ!
 あたしは乱暴に扉を閉めた。
 そのドア越しに聞こえるソードの笑い声。
 もしかして……あたしが答えに窮してたのに助け船を出すためにあんな事言ったんじゃあ……?
 ………気のせいだろう。
 あたしはばたんとベッドに倒れ込む。
 久しぶりにナーガにあった疲れのためか、あたしはすぐに眠りについたのだった。


 小鳥の囀り、朝日の光、食堂から僅かに運ばれてきたいい香り。
 朝である。
 軽く背伸びをして、ベッドから降りたあたしは食堂へ行く準備をし始めた。
 準備も終わり、軽く目を擦りながらゆっくりと階段を下りる。
 階段を下り終えたあたしはとんでもない光景を目の辺りにした。
「兄ちゃんっ!とっととこれ運んでくんなっ!」
「ちょっとあんたっ!つまみ食いするなって何度言ったらわかるのっ!?」
 そう、食堂のおっちゃん、おばちゃんに叱りつけられてるガウリイとナーガの姿だった。
 しっかりかっぽう着を着た二人の姿を見て、あたしは耐えられずに笑いだした。
 背のでかい二人組がかっぽう着……っ!
 その笑い声に気付いたのか、ガウリイとナーガがこちらを向く。
「リナぁっ!お前のせいでこっちは働かされちまってるんだぞっ!」
「あたしのせい?」
「ふっ。そんなこともわからないとはまだまだ甘いわねっ!
 あなたがあのまま逃げ出してくれたおかげで、食事代払えなくなって働かされたに決まってるじゃないっ!」
 何が決まってるんだ。何が。
 隣でガウリイが神妙な顔でうんうん頷いていたりする。
「払えないって………お金そこまでないのっ!?」
 あたしの心底驚きの声で聞いた問に、何故か二人は胸を張り同時に、
「あたりまえだろうが」
「あたりまえじゃないっ!」
 ………こら待て。あんたら。
 大の大人が夕食代すら払えんのか………?
 あんたらあたしより年上でしょーが。
「じゃ、ソードは?」
「気が付いたらいなくなってた」
 をいをい……気付いてやれよ……
「こらっ!お前らっ!
 何弁言っても働かない気かっ!?」
 おっちゃんの声が店内に響きわたった。
「ふっ。あなたの出番よ。リナ」
「はい……?」
「昨日の食事代。ちゃんと払ってわたし達を解放することねっ!」
 言ってひとしきりばか笑い。  
んっふっふ。
 良いこと考えついた(はあと)
「おっちゃんおっちゃん。
 あのね、あっちのねーちゃん格好はあんなだけど、
 料理とか家事とかはかなりの腕よ。
 そこまで仕事の出来る人に抜けて貰いたくないでしょ?
 と、ゆーことで、後二、三日だけでも雇ってくれない?
 あっちの兄ちゃんはあたしの連れって事もあるし、払うけど……
 あっちのねーちゃんは関係ないんで。
 どんだけこき使っても自由だから。
 くくうっ!お客さんらっきぃっ!」
「う、うーん……どっちみちあの姉ちゃんには
 世間の厳しさ教え込まんといけないと思っていたし……よし!
 好きにしな!」
「やー、おっちゃん話が分かるっ!
 きっと大物になるわよっ!」
 あまりにも話が分かるおっちゃんの手を握り、代金を手渡す。
「ちょっ!?
 りっ、リナっ!?」
 抗議の声を上げるナーガの方へとくるりと向き直り――
「じゃ、頑張って。
 世間の厳しさを教え込んでもらってね♪
 ガウリイ、行くわよ」
「おうっ!」
 言って、元気良くかっぽう着を脱ぎ投げる。
 なにやらわめくナーガの腕をおっちゃんがぐわしぃっと掴み、その声はやがて小さくなっていった。

               つづく

 予告の部分にまだ入れてませんが次あたりには入れるんじゃないかと思います。

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970交錯 聖王都騒動 2白いウサギ E-mail 12/28-23:50
記事番号964へのコメント


「あれ?あのナーガとかって言う人は?」
 宿屋を出ると、出口には壁によりかかったソードがいた。
「勉強中」
 あたしは笑顔で答える。
「………?
 ま、いーか。何となく苦手だし、あの人」
 やはり意味が分からなかったのか、少し不思議な表情をするが、あまり深くは考えないらしい。
「それよりリナ、これから何処行くんだ?」
「うーん……ま、歩きながら考えましょーか」
 問うガウリイに答えになっていない答えを答えるあたし。
「そういや、ソード。
 リオンはどーしてる?」
 実はこのソード。
 とある魔族、リオンの生まれ変わりだったりするのだ。
 意志が強いせいか乗っ取られることもなく、人魔のようになっているようだが。
 しかし、やっかいなことにリオンという魔族、かなりの高位だったりする。
 力を失ったり、奪われたりと力はあまり残ってはいないのだが、人間であるソードには充分驚異に値する。
 それを押さえつけているのが宝球(オーブ)である。
 しかし、それも不完全な代物であるため、意識を乗っ取られる危険性は減ってはいても、無くなってはいないのだ。
 それで、リオンを操る事が出来るのがこの首飾りの形の操作機である。
 とある事件によって、あたしが持っているわけだが……それは何とか一段落するまであたしがリオンを押さえつけなくてはならないことを意味する。
 よって、しばらくソードと旅は一緒、と言うことになるのだが………
「どーって……とりあえず、暴れ出して人間を全て滅ぼしてやる、みたいなことは言ってないけど。
 なんか……変わった奴らしくて……」
「それは知ってる」
 間髪入れず突っ込むあたし。
「ま、しばらくは様子見るしかないけど……
 いつ乗っ取られるかわからないんでその時は頼むな♪」
「はいはい……
 前に比べるとずいぶん気楽になったわね」
「ま、いつまでも気にしてても意味無いし、解決もしないもんな。
 なるようになるしかないだろ?」
「どっかで聞いたセリフだな……」
「ガウリイが覚えてるなんて珍しいわね。
 明日はくらげでも振ってくるんじゃないの?」
「むちゃくちゃ言うな……あんた……」
 ジト目でいるガウリイに、ツッコミを入れるソード。
「そんなことはガウリイだからどーでもいいとして、これからの行き先だけど……」
 あたしが考えようとした瞬間、森に光が射す!
「お待ちなさいっ!」
 やがて朗々と聞こえる声!
 その声の方へと見上げれば太陽の光をバックにびしぃぃっとこちらを指さす影!
「とうっ!」
 その声の主は高い木から飛び上がり、膝を抱え込み、くるりと回転し――
 ごあちぃぃぃんっ!
 ――きれずに頭から直撃する。
 ちなみに頭は地面にめり込んでいて見えない。
 ぴくぴくと動いてた『それ』の痙攣もやがておさまり、両手を地面にぐっと付け、腕を伸ばそうとする。
 しばし地面を押した後――
 すぽんっ!
 頭は地面から抜け、ぷるぷると振る。
 ……世の中広しといえどもこんな事が出来るのはそーそーいるもんではない。
「お久しぶりです。リナさん」
 ずいぶん前に別れた、アメリアは、その数少ない一人だった。。
「相変わらずね。アメリア。
 でもトラブルもないのにあの登場の仕方は………」
「いいんです。
 正義たるもの、悪の居ない所でも格好良さを気にしなくちゃいけないって誰かが言ってましたから」
「よ。ずいぶん久しぶりだな」
 ガウリイも右手を軽く挙げて挨拶を交わす。
「ガウリイさんもお元気そうで。
 えと……こちらの方は?」
 言って、ソードの方を見るアメリア。
「初めまして。
 ソード=グランと言います」
 にっこり笑って右手を差し出すソード。
「初めまして」
 アメリアも右手でそれを受ける。
「それより……リナさん達こんな所で何やってんですか?」
「何って……アメリアこそ、国の方はどうしたのよ?」
「それが大変なんですよっ!
 実は……」
「何か複雑そーだからどっかでお茶でも飲みながらしないか?」
「うーん……そうね。
 ここから少し行けばお店があるはずだからそこでってのはどう?」
 提案するソードに頷くあたし。
「わかりました。では行ましょう」
 久しぶりに見たアメリアは、少し、深刻な顔をしてそう頷いたのだった。
「所でアメリアさん。
 今度は四人じゃなくて二人で一緒にお茶でも飲みに………」
 ばきぃぃっ!
 笑顔で抜かすソードの顔ににあたしの拳がめり込んだ。
 ったく……油断も隙もあったもんじゃないわね……
 この雰囲気の中で、とんでもない奴である。


「つまり――正義の危機なんですっ!」
 店について、軽く注文して、アメリアが開口一番に言った一言はそれだった。
「いや……あの……もーちょっとわかりやすく……」
「これ以上わかりやすくって……無理に決まってるじゃないですかっ!」
 真剣な瞳で身を乗り出すアメリア。
「でぇぇいっ!抽象的すぎるのよっ!
 もっと具体的にっ!」
「……わかりました。言い方を変えます」
 今度から最初にそーしてほしい……
「セイルーンで……と、言うよりは、セイルーンの領主達の行動がおかしいんです」
「と、言いますと?」
 運ばれてきた水を口に軽く含んでからソードが問う。
 何故かアメリアに対して敬語である。
「何て言うか……父さんに対してこそこそしてると言うか……
 顔を合わせるとすぐにこそこそしだしたり、すぐにいなくなっちゃうんです」
「……?
 父さんって……」
「セイルーン第一位王位継承者のことよ。
 こーみえてもアメリアはおうぢょさまだから、軽はずみな言動は控えたほーが良いわよ」
「へぇ…………って、あれ……?
 もしかして俺さっき軽はずみな言動ってしちゃった……?」
 こくん。
 あたしとガウリイは同時に首を縦に振る。
「あああああああああっ!
 すみませんっ!すみませんっ!すみませんっっ!!」
 ひたすら謝り倒すソード。
「いえ……あの……
 そんなに気にしないで下さい。
 あんまりそーゆーの好きじゃないですし」
「はぁ……」
 額に汗をしながらもかすかに笑うソード。
「ところで、話が進めてくれない?」
「あ、はい。
 えーとですね、つまり父さんは一斉クーデターか何かが有るんじゃないかと心配してるわけです」
 ぶぴゅるいっ!
 あたしの吹き出したパイン・ジュースは日光に当たり虹と化した。
「わっ!こらっ!リナ、行儀が悪いぞっ!」
「そーですっ!いきなり何するんですかっ!」
 わめき散らすガウリイ、アメリア。
 ソードなんぞ机に突っ伏してぴくぴくしていたりする。
「でぇぇいっ!やかましいっ!
 んなこと急に言われたら誰だって……ガウリイはわかんないから例外として、
 驚くわよっ!ふつーはっ!」
「私だって驚くと思いましたよっ!」
「じゃこんな所でズバリというなぁぁぁぁっ!」
「正義のためには場所なんて考えてられないんですっ!」
 をぅい。
 それってかなり問題あると思うぞ………
「それって国の極秘事項かなんかじゃないの……?」
「その通りです。
 ですから他言無用にお願いしますね」
「国家機密の話をこんな食堂で堂々と話すなぁぁぁっ!」
 手で、店内を仰ぎ、叫ぶあたし……って、しまったっ!
 ざわざわざわっ!
 あたしの周りでざわめきが起こる。
 ああっ!まづひっ!
「この大まぬけっ!
 国家機密じゃなくて、極秘事項だっ!
 ちょっとの違いと言って甘く見て貰えると思ったら大間違いだぞっ!
 そんなんじゃ今度の舞台の主役は降りて貰うからなっ!」
 は……?
 訳の分からないことをわめき散らすソード。
「……あ、皆さんすいません。
 ちょっとうるさくしちゃいましたね。
 いやぁ、この馬鹿が今度の舞台のセリフ間違えちゃいまして……熱が入りすぎました、すいません。
 もし良かったら今度、この通りの奥にある舞台で見に来て下さいね。
 何度もセリフ間違えるようじゃこいつを主役から降ろさせますけど。
 お騒がせしてすいませんでした」
 ぺこりと食堂にいた一同に頭を下げるソード。
「なんだ……芝居の稽古かよ……」
「紛らわしい……」
 やがて聞こえる声。
 なるほど。
 そのためにあんな訳の分からないこと言ったのか。
 ではあたしもっ!
「皆さん本当にすいませんでしたぁ。
 あたしがぁ……セリフ間違うからいけないんですぅ……
 これ以上迷惑かからないようここからいなくなりますので……
 本当にすみませんでしたぁ……」
 ぶりっこモードで言って、そそくさとその場を離れるあたし達。
「本当にすまなかったな。マスター」
 ぽんっと金貨を何枚か投げるソード。
 食べた代金より多い……
 あたしはそれを羨ましげに見ながら、その場を離れたのだった――


「こぉぉの罰当たりもんっ!」
 ごめげっ!
 あたしの蹴りがソードの後ろ頭に直撃した!
「ああっ!背後からっ!
 リナさん、悪ですっ!」
「やかましいっ!
 あたしは代金より多く払ったソードが許せないのよっ!
 いい?
 確かにあんたの機転で誤魔化せたのは褒めたげるわっ!」
「褒めてあげるわっておまえ……」
 なにやら呟くガウリイは無視っ!
「あたしのこと『大まぬけ』と言うは、『馬鹿』と言うのも芝居の上と言えは許せんっ!
 その上お金の無駄使いっ!
 その方の罪万死に値するっ!」
「リナさん口調変わってます……」
「うるさいわねっ!ノリよノリっ!
 ともかく――」
「なぁリナ」
「なによガウリイ、今ソードに説教してるんだから」
「いや……そのソードだがな。
 動かないぞ」
 おや……?
 ふと気付いて目をやれば、確かに動かなくなっているソード君。
 うーん……ヤワだなぁ……
「へぇぇぇ……こーゆーのをヤワと言うんだぁぁぁぁ……」
 まだ痛むのか、頭に手をやりながらジト目で言うソード。
「当然。
 さっき一緒にいたナーガなんか、一瞬で復活するわよ」
「人間か……?それ……」
 あたしもそー思うけど……半分人間じゃない奴が言うなって。
「リナ、これからどーするんだ?」
 あたしとソードのやりとりに気付いているのかいないのか、無視して別の話題を促すガウリイ。
「うーん……一応聞くけど、何でアメリアがここにいるの?」
「えーと……領主の方たちの様子がおかしいんで探ろうかと思ってお忍びで旅してたんです」
 仮にも王女が一人でか……?
「気付いたら隣の国まで来てたみたいですけど」
 こらこらこら。
 なかなか無責任な奴である。
「よぉしっ!ならあたしがセイルーンに行って事態をすぱぱぱぁっと解決してあげよーじゃないのっ!」
 ぐぐぐっと右手に力を込め力一杯言い切るあたし。
「お前が行ったら事態がよけーややこしくなるんじゃないか?」
 どーゆー意味だ。ガウリイ。
「お父さんに叱られちゃいます……」
 だからどーゆー意味だ……?アメリア。
「……セイルーンもお気の毒に……」
 こら待てソード。
「ソードっ!
 ガウリイやアメリアならある程度旅してたからあたしのこと知ってる上で言ってるんでしょーけど、あんたはまだ大した日数も経ってないのに言われる筋合いはないっ!」
「……良く知ってる上で、と言うことはガウリイ、アメリアさんの言ってることは正しいと認めるんだな?」
 う゛っ!?しまったっ!
「認めるも何もなぁ……」
「取り繕うようもない事実ですし……」
「あんたらはぁぁぁぁっ!!」
 つい叫ぶあたし。
 そこまで言うかっ!?
「ま、どっちにしたって行くんだろ?セイルーンに。
 お前さんがいったん行くって言った以上、止めるって事はなだろーし」
「そりゃそうだけど……」
「いきなり領主の皆さんを呪文で吹っ飛ばす、とかしないでくださいよ」
「いくらなんでもそんなことはしないわよっ!」
 あたしのその言葉にアメリア、ガウリイは顔を見合わせて、
「でもなぁ……」
「リナさんですしねぇ……」
 ぷち。
「爆裂陣(メガ・ブランド)」
 どぐぉぉぉぉんっ!
 はれて、ガウリイ、アメリアはお空のお星様となったのだった。
 ちなみに、ソードはいつの間に浮遊(レビテーション)か何かで空へ逃れていた。
 侮れない奴……


 つづく

やっと予告まで。
次回はいよいよフィルさん登場かっ!?

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986交錯 聖王都騒動 3白いウサギ E-mail 1/3-01:22
記事番号964へのコメント
ちょっと間がありました。
風邪ひいてたもんで……すみません(^^;)
前の「2」の書き込みを最後に、今日まで本気で止まってました。
落ちる前までには二章は書き終わりたいけど……
どーなる事やら。
ともあれ、続きをどうぞ。


「――で、城内に入ったはいーけどどーする?」
「考えも無しにセイルーンの城に入り込まないでくださいっ!」
 あたしの罪のない一言に抗議するアメリア。
 ここはセイルーンの城の中の客間。
 ついさっきまでこの大きなテーブルには豪華なディナーが並んでいたが、主にあた
しとガウリイによってすでにその姿を消されていた。
 いやー、王族に知り合いがいるとおいしーもんが食べれて幸せだなぁ。
「そんなこと言ったって、このまんまじゃ何も情報がないからどーする事も出来ない
じゃない。
 フィルさんには会えないの?」
「今日は忙しいみたいで無理ですよ。
 だいたいいきなりの訪問にご飯と客室が空いてただけでもラッキーだと思って下さ
いよぉ」
「ま、それは確かにラッキーだったと思うけど……
 じゃ、明日にならないと何も話が進まないじゃない」
「……まぁ……そーなりますね……」
 うーん……それじゃあ暇じゃない……
 なら、ば。
 あたしはイスから立ち上がる。
「よぉしっ!ガウリイっ!食後の軽い運動に城内を散歩するわよっ!」
「おうっ!」
「城内を勝手に歩き回らないでくださいよぉぉぉっ!」
 あたしのマントにしがみついて頼むアメリアに渋々あたしは承諾したのだった。


 あたしのために用意された客室は、当然の事ながら豪華だった。
 高い天井にはシャンデリア、窓際には彩り鮮やかなカーテン、ふかふかのベッド…
……
 ……国民の血税ってこーゆーのに使われてんのね……
 あたしはベッドの上にごろんと横になる。
 やはり寝心地は良い。
 しかし……暇である。
 いや……まぁ、寝てしまえばいーではないか、とゆー説もあるにはあるのだが、そ
こはやはり、あたしとて好奇心旺盛なお年頃、部屋に閉じこもらず散歩でもしたいと
ゆーのは当然のことであるっ!
 ……月が光ってるけど。
 ともあれ、そーいったわけで、さすがにマント、ショルダーガード、ショートソー
ドなどの装備ははずしてはいるが、いまだに服装はいつも通り。
 あたしは体をベッドから起こす。
 少しなら……平気だよね……?
 そろり、と外の様子をうかがうためドアを少し開ける。
 うあ……見回りの兵士いるや……
 当然か……ここ、セイルーンの城だし……
 うーん……眠り(スリーピング)をかけたりしたらやっぱり問題あるかなぁ……?

 静かに戸を閉めようとした刹那――
 ばぐぉぉぉんっ!
 爆発音っ!?
 あたしはマントとショルダーガードを掴んで部屋を飛び出した。
 これで部屋に閉じこもっている必要はなくなった。
 らっき(はあと)
 何て言ってる場合ではないっ!
「ちょっとっ!そこの見回りAっ!
 爆発音はどっちからっ!?」
「しっ、知らんっ!
 一体何が起こったんだっ!?」
「兵士が客人に何が起こったか聞くなぁぁぁっ!!」
 つい叫ぶあたし。
 ったく、頼りない。
 あたしが部屋から出てきたのを見てなかったのか……?
 こいつ……
「そんなこと言われても……」
 どーやら、見回りA扱いされたことに対して何も言わない辺り、かなり慌てている
らしい。
 まぁ……ここで平然とされててもそれはそれで問題有るかも知れんが……
 どぐぁぁんっ!!
 また起こる爆発音。
 こりゃ急がないとっ!
 あたしはおろおろする兵士を置き去りに、その音の方向へと走り出す。
 夜とは言え魔法の明かりがあるので視界はあまり問題なかった。
 辺りの様子をうかがいながら赤い絨毯の敷かれた廊下を走り続ける。
 ををっ!?こりはっ!?
 高価なオブジェが目に留まる。
 売っ払ったら儲かりそうだなぁ……
「……一個ぐらい持ってっても罰当たらないわよね……」
「お前……それじゃ火事場泥棒だぞ……」
 びくっ!
 しまったっ!見つかったっ!?
 ぎこちない動きでその声の方へ目をやれば――
「なんだ。ガウリイじゃない♪」
「堂々とオブジェを懐にしまうなよ……」
 ガウリイは溜息をつきながらそう言ったのだった。
 どぉぉぉむっ!
 またまた起こる爆発音。
「それどころじゃないわっ!
 行くわよっ!ガウリイっ!」
「それ置いてけ」
 しくしくしく………
 あたしは仕方なく元の位置に戻したのだった。
 ああ……もったいない……


 現場に向かって走って行って気付いたことがある。
 音が移動しているのだ。
 だんだんと……南の方へ。
 いい加減走り続けて疲れはじめたとき、煙が出ている建物が見つかった。
 ひとまずそこに向かうあたしとガウリイ。
 人が居るっ!
「ちょっとっ!一体何があったのっ!?」
「わからねぇっ!」
 をい。待てや兄ちゃん。
 身体はかなりの傷を負っているように見えるが、話せるところを見ると命に別状は
ないだろう。
「どうやって入ったんだか知らねぇが、城の中に変な子供が居て……とりあえず家に
でも送るかしないとと思って、話しかけたらこちらを見るなりいきなり地面が爆発し
て……」
 子供……?
「吹っ飛ばされて、何となく子供が怖くなったんだ。
 そうこうしていたら爆発音に気付いたのか、黒髪の……確かソードって客人がおと
りになって俺を逃がしてくれたんだ」
 ちっ!先を越されたかっ!これで一番乗りのご褒美はソードの物、である。
 って、待てよ……
 ソード……子供………あっ!
「どうしたんだ、リナ?」
「たぶん……いや、他に考えられない……か。
 ガウリイっ!ソードを追うわよっ!」
「なんで?」
 するべきぐしゃぁぁぁぁっ!!
 つい床に突っ伏すあたし。
 話を聞いてなかったんかっ!あんたはっ!
「いーから行くわよっ!」
「何処へ?」
「だからっ!
 ソードのとこよっ!」
「ここにいるのにか?」
 あたしの後ろを指さすガウリイ。
 振り返ると………
「や。こんばんは」
 笑って右手を軽く挙げて挨拶をするソード。
「な……なんで……?」
「やー、嬉しいなぁ。リナが俺のこと心配してくれるなんて♪」
 いってカラカラ大笑い。
「心配してたのはご褒美の分け前が減るんじゃないかって事よ」
「またまた。照れなくても良いのに」
 ぱたぱた手を振るソード。
 こ、こいつ……っ!
「いーから答えなさい。
 命に関わるわよ。
 『シリア』はどーしたの?」
「へぇ。よく解ったな」
「さっき子供って聞いて思い出したのよ。
 そーいえばあの時死んだりしてなかったなーって」
「らしいな。
 俺自身は覚えてないんだけど。
 さっきの質問の答えだけど、適当にまいた。
 この城の最初の一撃はさすがに間に合わなかったけど、他の爆音は、相手の光術か
き消した音だから、町に被害はないはず」
 いとも軽く言ってのけるソード君。
「そんな呪文なんて無いはずだけど……」
「ま、人間じゃないから。
 何とでもなるんじゃないのか?」
 自分で言うなよ……人間じゃないって……
 開き直ってるな……こいつ……
「まぁ……ともかく……寝るか……?」
「……そだね……」
 深夜のせいで脳味噌が麻痺しているのかガウリイの言葉にあたしは賛成したのだっ
た。

「ああっ!やっぱりリナさんが要ると事件がっ!」
「アメリア。あたしのせいじゃないんだけど」
 にっこり微笑みかけるあたしに何故かアメリアは脅え出す。
 ここは応接間。
 昨夜の騒ぎのこともあって、アメリアがあたし達と会えたのは昼過ぎのことだった

「すいません。
 ご迷惑をおかけして」
 素直に謝るソード。
「ソードさんは悪くないですっ!
 悪いのはやはり、そのシリアとか言う魔族っ!
 やっぱり魔族なんて百害有って一理無し!
 こーなったら城中にレグルス盤仕込んで、生命の賛歌を永遠に流して魔族を来れな
くしましょうっ!」
「それは……魔族じゃなくて客もこれなくなるんじゃ……」
 あたしの当然の答えに頷くガウリイ、ソード。
「魔族なんて一年に一度の大掃除の時に出てくるほこりぐらいヤな奴です。
 生きる価値はありませんっ!」
 大掃除って……あんた仮にも王女でしょーが。
「あの……俺半分魔族……」
 おそるおそる手を挙げるソード君。
 かあいそーに。生きる価値無しなんて言われて。
「ええええええええっ!?
 ソードさんひょとして悪っ!?」
 大げさに驚くアメリア……って、そう言えば言ってなかったっけ……
「そ……そーかな……?」
 ぽりぽりと頬をかくソード。
「まぁまぁアメリア。今は――」
 ちらりと目をやると思った通り、扉が開き、あたしの見知った顔が出てきた。
「――フィルさんの話を聞きましょ」

 フィリオネル=エル=ディ=セイルーン。
この国の第一位王位継承者にして、おうぢ様と呼びたくない王子様常にベスト3に
ランクインしてる人である。
「リナ殿、ガウリイ殿、久しぶりだな」
「どうも、フィルさん。
 あ……ここでは殿下とお呼びした方がいいですか?」
「いや、構わんよ。
 どうもそう言うのは性に合わん。
 して……」
言って、ちらりとソードの方へ目をやる。
「旅先で知り合った、ソードです。
 ま、そこそこなら信用できます」
「そこそこって……」
 ぼそりと呟くソードはもちらん無視。
「ふぅむ……まあ、いい。
 まぁ……だいたいはアメリアから聞いたと思うが、どうも最近領主達の様子がおか
しいのだ」
 そう言う大事な秘密をまあいい、で話すことが出来るのは、彼の大物ぶりなのか、
ただ単に大雑把なだけかはわからない。
「具体的には一体何が起きて要るんですか?」
「うむ。まぁ大したことではないのだが、物陰で何かに見張られてるような気配を感
じることも起きておる」
 じゅーぶん大したことだってば。
「近頃は、目を合わせようともせん。
 よそよそしいことなども含めて、おかしいことはやまほどある」
 そ、それは確かに怪しいなー……
 特に目を合わせないって『もろに怪しいです』と、主張しているようなもんだぞ…

「……心当たりはないんですか?」
 とりあえず聞いてみるあたし。
「ない。
 なにしろわしは平和主義者。
 もとより反感を抱かれるような行動はしておらんつもり……どうした?」
「……いえ……なんでもないです……」
『わしは平和主義者』の所でイスからずり落ちらソード。
 気持ちはわからんでもない。
「そうか。
 では話を続けるが、心当たりはない。
 正直言って何がこの事態を招いたのか想像出来んのだ。
 先ほど領主と言ったが、城の要職につく者殆どが同じ状態だ。
 もちろんわし自身とアメリアはいつも通りなのだが……」
「要職につく者殆どっ!?
 それって下手すりゃ城中が敵って事ですかっ!?」
 つい叫ぶあたし。
「まだ敵だと限られたわけではない。
 しかし……最悪の事態を考えればそうなり得るな」
 ちょっとっ!
 それってとことん大事じゃないっ!
「もう一度聞きますけど……本っ当に心当たりはないんですね?」
「うむ」
「あたしもありません」
 口々に答える親子。
「誰かに聞いてみたりしたんですか?
 いやによそよそしいって」
「うむ。
 『何をそんなに避けておる』と聞いてみたが『そんなことはない』と皆答えは同じ

 と言って、わしやアメリアが何か直接被害を受けたわけではないからな。
 無理には問い正せん」
 そーなると、相手が何か行動を起こさなくちゃ何もできないと言うことになる。
そしてたとえ何か相手が行動を起こしたとしても……いや、実際もう何かは起こし
ているんだろうが、確たる証拠がない以上、フィルさんの性格では動けない、と言う
訳か。
 うーん……全てが後手後手にまわり、おまけに証拠がないと駄目になると……まど
ろっこしいことこの上ない。
「……打つ手無し、ってことですか?」
「いや――そうでもないみたいだぞ」
 あたしの溜息混じりの一言にガウリイが否定する。
 イスから立ち上がったかと思うと、一足飛びに窓へと向かう!
 ばりぃぃんっ!
 窓に体当たりしてぶち破り、屋根の上へ。
「さっきから何こそこそしてるんだ?」
 あたしが窓の側へと駆け寄り、ガウリイの姿を確認したときにはすでに剣を構えて
いた。

       つづく

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1044交錯 聖王都騒動 4白いウサギ E-mail 1/10-02:10
記事番号964へのコメント

「――――っ!!」
 相手は黒ずくめの密偵スタイルだった。
 戦う気はもとより無いらしく、とっとと逃げ出す。
「逃がすかっ!」
 絶妙のバランス間隔で屋根の上でもいつもと変わりなく走り出すガウリイ。
 ううむ、なかなか使える奴である。
「ぬうう、許せんっ!!」
「ああっ!父さん危ないですぅぅっ!」
 外は屋根だというのも構わず外へ飛び出すフィルさん。
 浮遊の呪文はもちろん使えない。
 慌ててしがみついてフィルさんを止めようとするアメリア。
「フィルさん落っこちたら痛いじゃすまないですよっ!
 ここはあたしとガウリイに任せて、待っててくださいっ!
 アメリア、ソード。フィルさんのこと頼んだわよっ!
 ……って……フィルさん何を……?」
 アメリアにしがみつかれたまま、部屋に戻り、いきなりテーブルを持ち上げる!
 ひええええっ!馬鹿力っ!
「くらえ平和主義者ストライクっ!!!」
 ぶんっ!!
 いともあっさりフィルさんに投げ飛ばされたテーブルは勢い良く黒ずくめの頭にぶち当たる!
 ごちっ。
 どがっ!ばたばずりりり………ぼてっ。
 さすがに気絶したらしく、屋根から転がり落ち、下へ落ちる。
 身も蓋もない……
「お、俺の立場は……?」
 ガウリイは屋根の上で呆然と呟いたのだった。
「とっ、ともかく――落ちたとこ行って色々聞き出さなきゃ。
 …………生きてればだけど」
 屋根から落ちただけでも危険であるが、テーブルをもろに頭に受けたのである。
 それもフィルさんの『平和主義』を。
 まぁ……行くだけ言ってみるしかないだろーし……
 一度来たことがあるとは言え、あたしの記憶ではあまり確実ではない。
 ソードは初めて来たから論外。
 ガウリイは言うまでも無し。
 フィルさんはあまり動かない方がいい。
 ならばアメリアに道案内を頼み、あたしとガウリイで様子を伺いに行くしかない。
 あたしは振り返り、アメリアの方へ目を――
「凄いわっ!父さんっ!」
「それ見たことか!偉大なり平和主義!!」
 言って豪快に笑うフィルさん。
 この親子って…………
 思わず立ちくらみを起こすあたし。
「おい、リナ。どうするんだ?」
 ガウリイの声で我に返るあたし。
 すでに屋根からこちらに戻ってきている。
「やっぱり正義が勝つんですっ!!」
「あー、ちょっとちょっと。
 お取り込み注悪いんですけどね……さっきの捕まえなくちゃいけないんでアメリア、道案内頼める?」
 盛り上がってるアメリアに言うあたし。
 この盛り上がりを止めて、現場に向かうのに時間がかかったのは言うまでもない。


「ああっ!何でこんなに現場に向かうのに時間がかかるのよっ!」
「リナさん怒らないで下さいよー」
「誰のせいだぁぁぁぁっ!!」
 あたしとガウリイ、アメリアの三人は黒ずくめが落下したと思われる地点へと向かって走っていた。
 なんかセイルーンに来てから走ってばっかなのは気のせいだろーか……?
 まぁ、広いから仕方ないと言えば仕方ないのだが……
「あそこか?」
「はい、そこのはずですっ!」
 指さすガウリイ、に頷くアメリア。 
一行はそのままそこへ向かい――何の変哲もない床を目にした。
「誰もいない……わね」
「本当にここなのか?」
「あそこから落ちたのならここしかありえません。
 まさかあの状態で呪文を唱えて移動したとは考えられませんし……」
 確かにあれで復活できるのはナーガぐらいだろうが……実際いないというのは……
 いや、待てよ。さっきのフィルさんのことを考えると説明が付く。
 城内の者殆どがグルだったとしたら、あたし達がやってくるまでの間に身を隠させることが不可能どころか、簡単に出来る。
 …………って、ああっ!
 やっぱり相手が行動起こしてもこっちは行動起こせ無いじゃないかっ!
「まぁ……しょーがないわ。
 フィルさんの所へ戻りましょ」
 あたしは心底嫌な口調でそう言ったのだった。


 結局の所――収穫はゼロだった。
 相手が何人かに絞り込まれている場合は相手と会話して舌先三寸でどうとでも出来るのだが、城全てなんぞとゆー常識のない人数相手ではどんな打ち合わせがされてるかもわからないし、助け船が沢山やってくることは目に見えている。
 ならばどうするか――こちらも密偵を放つのである。
「何でそこで俺なんだよ……?」
 返事はやはり良くなかった。
「調査は深夜にまで及ぶ――と、ゆーより、一日中休む時間無いのよ。
 睡眠不足は美容の大敵だし、ガウリイは忍び込むとか、悟られないようにすることは出来るかも知れないけど、肝心の『調査』が出来ないのよ。
 で、美容の心配もなく、頭もクラゲじゃないあんたしか居ないの」
「その決まりかたってヤだな……」
「ええいっ!
 男がぐちぐち言わないっ!
 ともかく、大変だろーけどよろしく」
「……疲れるからなぁ……
 やりたくないっていったらどーする?」
 にやりと笑うソード君。
 ふっ、甘い。こっちには切り札がある。
「目立つところで変な踊りをしろって命令出す」
 胸元の首飾りを取り出すあたし。
 この魔道具、便利な物で、とある呪文をキーワードにし、その後言った命令はどんなことでも服従させるアイテムである。
 文字通り、ソードはあたしの魔法道具(マジック・アイテム)と成り下がっている。
「……ああ……師匠に若い頃は良く寝なくちゃいけないぞって言われてたのに……」
 かくて――ソードの一日二十四時間の行動スケジュールは、当分埋まったのである。


「リナさん、ソードさんは何処に行ったんです?」
「お仕事」
 あたしはセイルーンの王立図書館で借りてきた魔導書をベッドの上で寝っ転がり、読みながら素っ気なく答えたのだった。
 とある人物を見張りに出させて早五日。
 一向に連絡はない。
 本を閉じ、窓へと歩み寄る。
 すでに夜中。
 月は白々とその光を放ち、世界は闇に覆われていた。
 中庭がここから見える。
 中庭の木が騒がしくがさがさ動き、風邪を通していた。
 風が強い。
 木の深緑の色は舞い散り、魔法の灯が灯り……
「?」
 何かが動いたような気がしたのだが……気のせいか……?
「リナさんどうかしたんですか?」
 ひょこりっとあたしの顔を覗き込むアメリア。
「うーん……さっき中庭に何かが動いたよーな気がしたんだけど……」
 アメリアの方へ顔を動かす為、部屋の方へと向くあたし。
 ばりぃぃぃぃんっ!
 あたしの背中の窓が割れ砕け散った!
「っなっ!?」
 中に浸入してきた人影は二人。
 一人は全身黒ずくめで帯剣している。
 もう一人は――ソードっ!?
「何ですか一体っ!?」
 いきなり窓を叩き割ってきた連中である。
 聞いても無駄。
 そんなことに口を動かすより呪文を唱えた方がましである。
 しかし何故ソードが……?
 まさか五日間ずぅぅっと監視させたのが気に入らないとかっ!?
 …………当たり前か。
「眠り(スリーピング)っ!」
 黒ずくめの呪文が解き放たれる。
 しまっ……!
 いきなりそーくるかっ!?
 あたしは奥からわき出る睡魔に……って、アメリアだけの対一用のか。
 だからといって安心している場合ではない。
 これで一対二。
 数の上ではこちらが不利である。
 しかぁぁしっ!あたしだってぼーっとしてたわけじゃないっ!
「氷結窟蔦(ヴァン・レイル)っ!」
 あたしの右手から氷の蔦が部屋全体へと広がっていく!
 外ならともかく、部屋という限定空間の中での呪文である。
 殺傷能力は低くてもこれで足止めできるはずっ!
 蔦はどんどんと広がっていき黒ずくめとアメリア………って、ああっ!
 アメリアのこと忘れてたっ!
 このままじゃアメリアも一緒に氷漬けである。
 ぶんっ。
 何かが空気の抵抗を押し切る速さで動く。
 そしてそいつは黒ずくめ、アメリアを持ち上げ、宙に浮く。
 ソード――
 半魔族。半人間。
「なかなか力の使い方に慣れてきたじゃない……」
「おかげさまでな。
 まぁ、戻った時の共鳴時ほど力はもう出ないがな」
 ソードは黒ずくめ、アメリアを氷の届かない所へ下ろし、そう言った。
「一体何の真似かしら?」
「ふ……まさか忘れたわけではないのだろう?
 俺が魔族だという事を」
「当然覚えてるわ。
 自分が封印した奴を忘れたりしないわよ」
 ひょいと肩をすくめて不敵に笑ってみせる。
 しかしソードは笑い出したのだった。
「何がおかしいのよ?」
「まさか本当にあれで封印したつもりとは思わなかったんでつい、な。
 そうだなこう言えばわかって貰えるかな?
 今まで全て演技だった――と」
「っなっ!?」
「人間の人格に戻ったので有れば容易に手出しが出来まい。
 それを利用されて貰っていたと言っているのだ」
 ソードは黒ずくめへと右手を挙げて合図をした。
 黒ずくめはアメリアを担ぎ――
「アメリアをどうする気よっ!?」
「なぁに、殺しはしない。
 ちょっと借りるだけだ。
 まぁ、俺は気分が変わりやすいがな」
「させると思う?」
「いや――邪魔はするだろうな」
 ソードは外へと飛んで行く。
「邪魔なら好きなだけするが良い。
 気の済むまでな」
「お言葉に甘えてそうさせて貰うっ!」
 ソードが出た窓の真上に、ガウリイが何故か立っていた。
 窓が割れた音が聞こえてここまで来てくれたのだろうか。
 それはともかく、今はアメリアの方を何とかしないとっ!
「ガウリイっ!
 あたしはアメリアを追うわっ!そっちは任せたわよっ!」
「おうっ!」
 すらりと剣を抜き放った。
「無理だな。二人で来い」
 ソードとガウリイは二人とも屋根の上で間合いを取る。
「無理かどうか――試してみるかっ!?」
 ガウリイが疾る!
「無駄だ」
 ソードは高く上空へ大きく飛び――そのまま動かない。
 そういや……空飛べてたっけ……
 そりゃ無駄だわな……
 ならばっ!
 あたしはガウリイの元へと走り出し――
「翔封界(レイ・ウィング)っ!」
 あたしとガウリイの身体がふわりと浮いたかと思うと、そのまま闇の夜空へと飛び出す!
 増幅(ブースト)付である。
 いくらここセイルーンが魔力を弱めると言っても、それは魔族であるソードも同じ。
 あたしはアメリアを連れていった黒ずくめの方へと進行方向を定める。
 当然ソードはそれを追いかける。
 一つ問題がある。
 即ち、あちらは自由に飛び回れ、攻撃もできるのに対して、こちらはガウリイはもちろん、あたしも術の制御で新たな呪文は作り出せないと言うこと。
 そら来たっ!
 風の結界のせいで空気を切り裂く音は聞こえないが、放たれる一条の光!
 あたしは何とか術を制御してそれをかわす。
「おいっ!大丈夫なのかっ!?」
 しがみついたまま情けない格好で聞くガウリイ。
「わかんないっ!
 当たんないよーに祈っといてっ!」
「祈るってお前……」
 ともあれ、ガウリイとのやりとりの最中も光の矢は放たれる。
 しかし何処かおかしい。
 ソードはこちらのことを良く知っているはずである。
 それなら手はいくらでもあると思うのだが……
 だいたい、この光の矢にしろどうも狙いが甘い。
 ただ単に移動しながら放っているので甘いだけなのかそれとも………って、
「氷結弾(フリーズ・ブリッド)っ!」
 いきなり目の前に出現する氷の塊っ!!
 うどわわわわっ!!
 さすがに驚き、まともに術の制御に失敗する。
 風の結界は解かれ、あたしとガウリイは落下した。
 何とか着地し、そちらの方へと目をやるあたし。
 そいつはあたしの良く知った相手だった。

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1045交錯 聖王都騒動 5白いウサギ E-mail 1/10-02:17
記事番号964へのコメント

「ほーっほっほっほ!
 あれをかわすとは運がいいわねっ!」
 まるっきし悪役のセリフを吐いて、びしぃっとこちらを屋根の上で指さす人影。
 ここまで来れば誰でもわかる。言わずと知れたナーガである。
「ナーガっ!
 今はあんたに関わってる暇はないの!」
 あたしはガウリイ共々無視して走り出す。
「ほーっほっほっほ!そんなこと言っても逃がさないわよっ!」
 言って、呪文を唱え出す。
 だあああっ!見失っちゃうでしょーがっ!
 しかし、相手はナーガである。
 もしこちらが逃げようとして後ろを見せたら間違いなく遠慮なく攻撃呪文の嵐になるだろう。
 仕方なくあたしは振り向き――
「くらえ!破弾撃(ボム・スプリッド)っ!!」
 ナーガの足下へ着弾した呪文がナーガを吹き飛ばす!
 しかし、空中で何とかくるりと回転し、なんとあたしとガウリイの前で着地する!
 うぉのれっ!吹き飛ばされながらも空中で立て直すとはっ!
 あんたはあたしの姉ちゃんかっ!?
「ふっ。まさか今のでこの私を倒せるとでも?」
「んっふっふ。そーね。いくらなんでも遠慮しすぎよね。
 やっぱ竜破斬(ドラグ・スレイブ)ぐらいはくらわさなきゃね」
 あたしはひょいと肩をすくめた。
「おいおい。こんな町中でそんな呪文使う気か?」
 隣で突っ込むガウリイ。
 当然冗談である。
 そんな呪文使ったりしたら比喩ではなしに町が消える。
「ふっ!三日間徹夜で説教聞かされた恨みっ!はらさせて貰うわっ!」
三日間徹夜って……あの宿屋のおっちゃん本当に『世間の厳しさ』とゆーもんを教え込んでたのか………
 うーん……ある意味凄いぞ。
「むかしあたしは奢らされっぱなしだったんだから少しは奢ってくれても罰当たらないわよっ!」
「ほーっほっほっほ!甘いわねリナ=インバース!
 私は奢って貰ってもおごり返すとゆーポリシーの曲がったことはしないのよっ!」 
 まぁ、どーとは言わんが……何か間違ってるぞ。
「なぁ、リナ」
「なによガウリイ。
 今ナーガと昔の精算とゆーもんを合わせよーと……」
「アメリア、追わなくていーのか?」
 …………………………………
 ……………………しまったぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!
 あたしは頭を抱え込んで座り込んだのだった。
「ふっ。今更自分のしてきたことを後悔しても遅いわ。
 覚悟しなさい!」
 ナーガは上得意でこちらを見下ろして高笑いを上げ、呪文を唱えはじめる。
 んっふっふっふ。
 そーだ。みぃぃんなこいつが悪いんだった。
「り、リナ……?」
 異変に気付いたのがガウリイがあたしから数歩後ろへ下がりはじめる。
 かくて。
 あたしにぼろぼろにされたナーガがあたしに謝りはじめるのに、さして時間はかからなかった。


「どぉぉしてくれんのよぉぉぉっ!あんたはぁぁぁぁっ!!
 あたしの知り合いがさらわれちゃったでしょーがっ!」
「ひん……そんなこと言われても………知らなかったんだからしょうがないじゃない」
泣くな。頼むから。
「とっとと助けに行かないと……!」
 しかし場所がわからない。
 すっかり見失ってしまったのだ。
 ソードもいつの間にか追撃を止めている。
 手がかり無しである。
「なぁリナ。いったん城に戻らないか?」
 確かに、それしかなさそーである。
 先ほどのソード達の行動は、アメリアの命を奪おうとするわけではなかった。
 おそらく、敵はアメリアをさらったことによって何か要求を突きつけてくるかもしれない。
 ならば、城に戻るしかないのだが――
 他にもいくつか考えられないこともない。
 さっきの行動だって、城で殺すのがまずかっただけで、別の場所で殺す可能性がないわけでもない。
 それに――
 ………どぐぁぁぁぁん………
 あたしの考えを中断するかのように爆音が遥か遠くの方から微かに聞こえた。
 その音の方へ目をやると―――もしかしてっ!?
 おそらく、あそこにアメリアはいるのだ。
 そう。領主の城に。


 ここはセイルーン領主の一人、ガイナ=ガスペルの城である。
 城は古い――と言うよりは年季の入った重みのある屋敷のようなかんがあり、センスは悪くない。
 もうすでに修復作業は済ませたのか、城の周りは異様に静かだった。
 不用心なのか、何か特別な理由があるのか門番は居ない。
「――で、何であんたがここまで着いてくんのよ?」
 あたしはうんざりした口調でナーガへと振り向く。
「ふっ。知れたことを。
 面白そーだからに決まってるじゃない」
 はいはい。まぁそんなとこじゃないかなとは思っていたが。
「なぁリナ。来たのはいーけどどーすんだ?」
 確かに。確たる証拠がない以上、問答無用で呪文をぶち込み、中へ突っ込む訳にはいかない。
だが――こいつがいれば別である。
「そんなとこに登ってお月見かしら?ソード」
 門の側にある木の上。
 隠れるのが下手なのか、もとより隠れる気がないのか目立つところにそいつはいた。
「ふむ。目は悪くないようだな」
 少々驚いたように枝から立ち上がってこちらへと降りるソード。
 どーやら隠れるのが苦手だった口らしい。
今時小さい子のかくれんぼでももー少し気の利いたとこに隠れるぞ……
「用件はわかっているわね?」
「……やはり諦める気はないか。
 残念だ。あまり戦いたくはなかったが……仕方あるまい」
 ソードは右手に白く光る、長剣のようなものを作り出した。
「戦う前に一つ――あんた達の目的はなに?」
「それは言えん。悪いとは思うがな」
 悪いと思うんなら何とかしてほしいもんだが……仕方がない。
 あたしは少し間合いを取り、ガウリイの方へと歩み寄る。
 ガウリイはすでに剣を抜き放ち、ナーガは……って、をいこらっ!
「風魔砲裂弾(ボム・ディ・ウィン)っ!!」
 どぐぁぁぁぁぁんっ!!!
 けたたましい音を立てて門が崩れ落ちる。
 だぁぁぁっ!一体何をっ!?
「ほーっほっほっほ!
 このあたしの存在を忘れて貰っちゃあ困るわね!
 いつまでも勝手に世界作ってるから気付かせるために吹っ飛ばしてやったわっ!どうっ!?」
「寂しさで門を吹き飛ばすなぁぁぁぁぁっ!!」
「やっぱ苦手だ……この人……」
 手で顔を覆いながらよろめくソード。
 ガウリイは全く動じない。別に何も考えてないだけだろーけど。
 はっ!?まてよ――
「ナーガっ!そいつと好きなだけ戦っていーわよっ!」
「ちょっと待てぇぇぇっ!!
 こんなの相手にするのかっ!?俺はっ!」
 さすがにそれはいやだったのか不満の声を上げるソード。
 すっかり平常心を失っている。
「あたしはあんたと戦いに来たんじゃなくて、あくまで助けに来たのよっ!
 ガウリイ、行くわよっ!」
「ほーっほっほっほっほ!
 どうやら怖じ気ついたようねっ!」
 ずずいっとソードへと胸を張りながら歩み寄るナーガ。
 そりゃ怖じ気つくわな……
 あたしはガウリイと一緒にナーガが開けた大穴から突入しはじめる!
 ふと振り向くと、ぽんっと手を打つソード。
「………そーだ。俺も倒すのが目的じゃなくて城内を護るのが目的……と言うより、依頼内容だったんだ。
 そういうことで……」
そしてとっとと空へ浮かび、あたしの位置からは天井で見えなくなる。
 たぶん……逃げるための口実だと思うな……あたし……


 城の中へとあたし達は走り続けていた。
 そう、止まる必要がないのである。
 物陰が何か動いたよーな気がしたらとりあえず呪文一発。
 不意打ちで出てきた奴はガウリイが一蹴。
 たとえ集団で出てきてもナーガの格好と高笑いにびびって行動が鈍いうちに対多数用の呪文で一掃。
 数々の警備兵はあたし達の前ではほぼ紙の壁に等しかった。
 調子に乗ったナーガがどっかへ消えたとゆーことはほんの些細な出来事ではあるし、そちらの方が幸運だったりするのでそこは気にしない。
 適当にほこほこ進むと、そこにはおそらく領主の謁見の間かなにかの偉そーな部屋を発見した。
 あたしは乱暴にそのドアを蹴り飛ばす!
 赤い絨毯、全体的に白い大理石で作られた部屋。
 そして奥にあるお決まりの玉座に座っているおっちゃんに、側で佇むソード。
「っなっ!?もう来おったかっ!」
 奥の玉座に座っているおっちゃんはこちらを見て心底驚いたようだった。
 年の頃なら40過ぎ。
 どーにも悪役三流といった風なおっちゃんである。
「くっ!まさかソード殿がやられるとはっ!」
「やられたとは言ってないが」
 わなわなと肩を震わせながらもナーガから逃げたのは事実なのであまり強くは言えないらしい、ソード。
「どぉぉぉも。おじゃましてます♪
 さて――用件はわかってるでしょーね?」
「なっ何のことだっ!?」
 額に汗をかき、動揺しながらも言う領主。
「今更しらばっくれても無駄だと思うけどなぁ……」
 側で溜息つくソード。
 それについてはあたしも同感である。
「アメリアは何処だっ!?」
 ガウリイが一歩、玉座へ近付く。
 領主――名前は忘れたけど、おっちゃんは後ずさりでもするかのように玉座の背もたれにべたりとくっつく形となる。
「そっ、それは……」
 ちらり、とソードの方を見るおっちゃん。
「戦うのは構わないけど――先にアメリアは無事かどーか知りたいわね」
「無事だ。危害は一切加えてない」
 ナーガが居ないと本来の調子を取り戻せるのかさっきとはうって変わった口調で言うソード。
「そう。聞きたいことは色々あるけど、とりあえず何故あなたがこいつに味方したのか聞きましょうか。
 魔族は自分より上の者にしか従わないはずよ」
 あたしの言葉にソードは笑いながら答えたのだった。
 それは誤解だ――と。


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1046交錯 聖王都騒動 6白いウサギ E-mail 1/10-02:24
記事番号964へのコメント

「リナ殿っ!一体どういう事なのだ!?
 昨夜どう見てもリナ殿の部屋に何かが浸入した形跡があった。
 そう思ったら今度はアメリアの失踪!
 まさか誘拐されたんじゃあるまいな」
 あたし達がセイルーンの城へ戻った後、フィルさんは開口一番にそう言ったのであった。
「いやぁ……まぁ……その……」
 しどろもどろに言うあたし。
 ……他に何て言ったらいいのよ……?
「まさか本当に!?
 おのれいっ!わしだけならいざ知らず、アメリアをさらうとは!
 一体誰が――!?」
 いや……ですから……ね
「なぁ、リナ。本当のこと教えてやったらどーだ?
 無理だった、って」
 小声であたしへ言うガウリイ。
「うーん……」
 だが――あたしには無理であった。
 アメリアを取り戻すことは。


 あの翌日――フィルさんはまた大きな声を城内にこだまさせた。
 一通の矢文が届いたからである。
 文面はこうだった。
『 フィルオネル様
 さぞ心配なされているでしょうがアメリア姫は無事。
 ただし――下記の場所に時間通り来なければ保証は出来ぬ。
 なお、お着きの者として許すのは二名まで。
 それ以上は許すことは出来ぬ。』
 と、以下に場所と日時が書かれていた。
「この事はわし意外ではお主達しか知らん。
 言えば止められるのは目に見えておる」
「わかりました。お共します」
 あたしとガウリイは頷いてそう言った。
「すまん。そなた達には世話になってばかりだが今一度頼む。
 アメリアを助けてくれ。わしよりそちらを優先して貰いたい」
「わかりました。――ですが、アメリアはもちろん、フィルさんだってお守りします」
 あたしはきっぱりとそう答えたのだった。
 胸の奥に使える、後ろめたさを隠して――


 指定の場所はほぼ町の中心地であった。
 いくらか暗いところを選んではいるものの、やはり生活音が聞こえなくなることはない。
 ただし、それでも異様に静かだった。
「約束通り来た!
 そちらも姿を見せて貰おう!」
 フィルさんは堂々とした風に暗闇へと言い放つ。
 確かに気配はするのだ。
 そこから。
 しかし――出てこない。
「何をしておる!?
 アメリアは無事なのであろうな!?」
 一歩前へと踏み出し、その言葉を言いきった後に、場所が急に明るくなる。
「父さんっ!お誕生日おめでとー!!」
 さっきまで影にいたアメリアは元気いっぱいにそう言ったのだった。
「おお、アメリア無事だったか……誕生日?」
「お誕生日おめでとうございます。殿下」
 やがてわらわらと出てくる家臣、領主一同。
 一体何が何だかわからないと言うそこの君。無理はない。
 あたしが初めて聞いたときはマジで暴れるかと思ったぞ。
 何のことはない。
 今までの騒ぎ全てがフィルさんの誕生日を祝おうとしていた一同の行動だったのである。
「さすがにアメリア様はお帰りなさった方がいいと申し上げたのですが……」
「面白そうでしたから参加させていただきました!」
 右手を高く挙げて笑いながら言うアメリア。
 しかしなぁ……フィルさん見てるのつらかったぞ……
「うむ。そう言うことなら仕方あるまい」
 仕方ないって……ンな一言ですます問題かっ!?
「皆の者、礼を言うぞ。こんな誕生日は初めてだわい」
 言って豪快に笑うフィルさん。
 そりゃそうだ。
 ふつーは一生来んぞ。こんなの。
「いえ、そのようなお言葉もったいなく……」
 少々は怒られるのを予想していたらしい。
「そういうわけで、今日は国中父さんの誕生パーティで祭りを開いてるんです!
 今日と明日二日間ですよ。父さん、久しぶりに一緒にまわりましょう」
 アメリアはフィルさんに抱きついてそう言ったのであった。


「と、言うわけでお疲れさま♪」
 何とかフィルさん達一同から離れて、影で隠れていたソードの言葉はそれだった。
「ほんっきで疲れたわよ……」
「まさかそんなことになってるとは知らなかったな」
 今更うんうん頷くガウリイ。
 あんたは領主のおっちゃんとこで事情聞いてたでしょーが。
「いやー、まさか祭りまで用意してたとは知らなかったけどな♪」
 手を目上に掲げ、周りをきょろきょろ見渡すソード。
「その前に何かあたし達に言うことは……?」
 ジト目で見るソードの顔がひきつる。
「いや……だって、誰かれ構わずほいほい話してらせっかく驚かせようとかくしててもばれちゃう危険性が高く……」
「言うことは?」
「……騙してすみませんでした」
「当然よっ!
 あんたねぇぇっ!
 あたしを裏切ったフリするだけならまだしも!
 あんたの中の魔族、リオンに乗っ取られたような嘘をっ!」
 ソードの胸ぐらを掴み、がくがく振るあたし。
「だから冗談だったって……」
「笑えんわっ!
 目ぇ座ってたし!」
「いやぁ……俺って演技派だから。
 嘘にも冗談にもとことんリアルに!ってね」
 いつかいっぺんどつき倒す。
「てね、じゃないぃぃぃぃっ!!」
「まぁまぁ、リナ。
 せっかく祭りが開かれてるし、見て回らないか?」
 う゛。そりゃあ確かに面白そーだけど……ここでソードをほっぽっとくのも腹が立つ。
「あ、行ってらっしゃい。
 二人で夜の町へどーぞ」
 へらへら笑い出すソード。
 二人でって所に強調が入ってた辺り、からかっているらしい。
 いつまでもそんなからかいにのってられるかっ!
「ほぉぉ、ソードはどーするのかなー?」
「俺のことはお構いなく。
 あっちに美人のお姉ちゃんが居るし、行ってくる♪
 つー事で、ガウリイ、こっちのは任せた!」
 どーゆー意味だ……?
 笑って、人混みの中へ走り出すソード。
 さすがにこの人混みの中に見分けがつかなくなるのは早い。
「ちっ。逃げられたか」
 まるっきし悪役のセリフを吐いて、消えた方を見るあたし。
「良くわからんが祭り見て回るんだろ?」
「そーね。行きましょーか、ガウリイ」
「おう。美味しいもん食べるぞぉぉっ!」
「らぢゃーっ!」
 あたしとガウリイは久しぶりに元気良く走り出したのだった。

      聖王都騒動 おしまい

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1047交錯 聖王都騒動 あとがき白いウサギ E-mail 1/10-03:09
記事番号964へのコメント

白:交錯シリーズ、第二章。
  読んで下さり、本当にありがとうございましたっ!

 とんてんかんとんてんかん………

白:最後の最後でシリアスな雰囲気ぶちこわし。
  見抜いてた方、居たらマジで凄いです。

 とんとんとんがきっ!

白:……さっきから何やってるんだ?お前。
  変な音だして。
K:工作♪
白:こうさくって……しゃれか……?
  もしかして……
K:違うっ!そじゃなくてっ!
  この作った箱何に使うと思う?
白:何って……
K:首吊り台♪
白:をい………?
K:まさか忘れた訳じゃないでしょうね?
  話し続けるだの続けないだのって
  さんざん人に迷惑かけてっ!
白:それは確かに。
  ………だけど首吊りはいくらなんでもまづいだろ……
K:それだけのことしても罰当たらないことしたと思うけど。
白:罰当たるとかそーゆー問題かっ!
K:ま、それはおいといて。
  交錯 聖王都騒動 のまずタイトルについて聞きましょーか。
白:タイトルねぇ……まず最初に思ったのが、予告やってる以上、  リナが言いやすいタイトルにしよーと思った事かな。
K:ああ、テレビっぽくってやつね。
白:そ。
  んで、次に考えついたのが舞台がセイルーンだったのでそれを持ってこようとした。
K:安直な……
白:ほっとけ。
  まぁ、そっからスレイヤーズ本編四巻の聖王都動乱(バトル・オブ・セイルーン)みたいに、感じを英語にしたらかっこいいかなーと思って、聖王都騒動という漢字が出来た。
 んで、セイルーンinトラブルにしても良かったんだけど、いまいち格好悪い。
 で、辞書持ち出して格好良いかなーと思って、ディスターバンス、と。
K:確かにトラブルじゃありがちだけど。
白:でしょ?だから、このタイトルはかっこいいから好き♪
K:変な奴……
白:お前に言われたくないっ!
K:どーゆー意味よっ!?
白:いくら受験生だからって、『入試突破』と書かれた日の丸はちまきを顎の下から脳天にかけて結んで、ピアノを優雅に弾く奴の何処が変じゃないとっ!?
K:人の勝手でしょーがっ!
白:見たとき私は本気で突っ伏したぞっ!
K:知るかっ!
白:まぁ……なんでもいーけどさ。
K:じゃ、言うんじゃないわよ……って話が逸れたっ!
白:らっき。
K:……何か言った?(じろり)
白:いいえっ!
K:ま、いーわ。
  それよりフィルさん初登場だけど………
白:ああ、殿下ね。
K:うん。殿下。
(あえて二人はあの単語で呼ばないことにしてるらしい)
K:苦労したとこは?
白:口調。
  最初書いてみたんだけどどーにもフィルさんらしくないんで
  文庫引っぱり出して頭たたき込んだ。
K:だからちらかってたの?あんたの机。
白:いや、それはいつものこと。
K:………そう……
白:アメリアとナーガを合わせないよーにするには
  結構簡単に思いついたんだけどね。
K:ああ、確かに合っちゃまずいわよね。
白:召集つかなくなる。
K:ごもっとも。
  それよりオリキャラのソード君だけど……
白:なに?
K:いいの?あれで。
白:まぁ……しょせん私の頭ん中に住み着いてるキャラだしなぁ。
K:病気だね。
白:ほっとけっ!
  でもまぁソード君、
  実は最初の一章で死ぬかも知れなかったわけで。
K:はい……?
白:だって、忘却の彼方にってソード君死んじゃって悲劇、にしちゃえば楽なことは楽だよ?
K:うーん……
白:でもそのパターンは一度やったんで、まずいし、キャラが死ぬのは基本的に嫌なんで生かす方向考えた。
K:……………。
白:後はまぁ詳しいことはそのうち書くけどさ。
K:そのうち、ねぇ………
白:う゛っ!?詳しい日はまだちょっと予定が……
K:……今までのパターンで言うとあとがきの後に予告がついてるはずだけど?
白:すみません。まだ決めあぐねているんでまだ出来ません。
K:やっぱり……で、どーする予定なの?
  ぼんやりとは考えてるんでしょ?
白:それはもちろん。
  二つパターンがあるんだけどどっちにするか、それとも組み合わせるか……
K:パズルのピースはあるけど、
  組み合わせ方がわからないってこと?
白:そです。
K:死ぬ気で頑張ってね♪
白:死ぬ気っておい……
K:だってそーでもしなきゃ私の出番がないっ!
白:なくてもいーぢゃないか……って、うそですっ!うそっ!
K:ギリギリで許すけど……
白:ギリギリか……?
K:がんばんないとものすごいことが起きるから。
白:それは別の番組のネタ……

 ばきっ!

K:まぁ、いい加減な奴は眠っちゃったし、
  これ以上ここにいてもどーしよーもないですね。
  次回は、少しずつじゃなくて一気に出すんじゃないかと思います。
 失敗してますからね。白ウサ。
 ともあれ、ここまでお読み下さり、ありがとうございました。
 次回は……シリアスになるか、ギャグになるか、
 どっちのパターンが選ばれるのでしょう?
 答えは白ウサ自身出てないらしーです。
 本気でいい加減な奴……
 悩むのもここまで来たら迷惑もんです。
 ともあれ、次は迷惑をかけないですむよーに、頑張ってもらっときますので。
 皆様、本当にありがとうございました&すみませんでした。
 
P.S あとがきの最初の所で続けるの続けないのってもめてるのは……わかる人だけわかって下さい。
 わからない人はお願いです。
 わからないままでいてください……

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1062聖王都騒動 読ませていただきました!むつみ E-mail 1/12-07:31
記事番号1047へのコメント

こんにちわ。むつみです。
読ませていただきました(^^)

ソード君、いいですね。活躍を楽しみにしていましたが・・・。
「おおっ!本領を発揮したか?!」と、思わせておいて、あのオチ。
マジでコーヒー吹き出すところでした。
(パソちゃんの、危機)

白ウサさんの文章は、ノリがよくてとても読みやすいです。
ストーリーテラーだし。好きだぁ。
今回、アメリアが可愛くて、嬉しかったですし。
何よりフィル殿下。あのオチを、「まあいいか」で済ませるか!!
いいなぁ。

すいません。オチの影響でノーミソにひびが入ったようです。
浮かれた感想(もどき)になって、すいませんでした。

それでは。
続きに、ものすごぉ〜〜〜〜〜〜く期待しています。

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1063Re:交錯 聖王都騒動 あとがき碧昌 1/12-07:42
記事番号1047へのコメント

 見抜いちゃいました。
 「城中全部が敵」のあたりで、「ああ、誕生日なんだろうな」って。
 ちなみに、ここにコメント投稿するの初めてなんです。それなのに、こんな自己 顕示みたいな(そのものか?)事で投稿するなんてちょっと自己嫌悪してしまいますが、機会があることはいい事だと思います。
 ソード、いいですね。また出てきてほしいです。 

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976ロスユニの方の感想です。ブラントン 12/31-17:25
記事番号938へのコメント

 過去記事が落ちてしまったのでこちらに。
 遅れに遅れて申し訳ありませんっ! 一応まだ今年なんで許して下さい(爆)

 二作合わせての感想とさせていただきます。

 読み終えてつくづく感じさせられたのは、
「キャナル書かせたら、日本二」だな、と。
 ケインやミリィは、まあギャグのパターンというのがありますし、書きやすいといえばそうなのかと思いますが、キャナルはものすっごく難しいと思います。
 おそらくスレキャラ含めてもいちばん難しいのではないでしょうか。

 物語自体は、よくあるパターンといえばそうで、決して目新しいものでもないですが、同じネタでも書く人によってはここまで面白くなるのか、と唸らされました。
 どうしてもアニメの方が見た量が多かった分、原作風に書くのは難しいと思うのですが、ケインも、それよりもっと難しいであろうミリィも読んでいて原作的だと思えるのですから恐ろしいものです。

>「ううっ……そんな……
> わたしは嫌だって言ったのにコーヒー片手に無理矢理させたんじゃないですかぁ………」

 このセリフを見て、「ああ、勝てないなー」って思い知らされました。(勝負してたんかい)
 なんで、と説明はできないのですが最初から読んでいったときに、そう感じたのです。

 ……本当に誉め言葉しか出ようがないので、いっそお願いします。
「二翼の翼」のような長編をロスユニで書いて下さい。ぜひ。
 キャナル優位だけではなく、他のロスユニの話も読んでみたいです!
 ……それとも、現在連載中のものが終わったら既に次回作の予定があるのでしょうか? 



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985ブラントンさんありがとうございます(^^)白いウサギ E-mail 1/3-00:46
記事番号976へのコメント
ども。わざわざありがとうございます。

> 過去記事が落ちてしまったのでこちらに。
> 遅れに遅れて申し訳ありませんっ! 一応まだ今年なんで許して下さい(爆)

 いえ、予告通り年内。
 謝る必要はございません野でお気になさらず。


> 読み終えてつくづく感じさせられたのは、
>「キャナル書かせたら、日本二」だな、と。

 それは褒め過ぎです(どきっぱり)
 そこまで言っていただけるのはもちろん嬉しいのですが、
 おそれ多いです。
 はい。

> ケインやミリィは、まあギャグのパターンというのがありますし、書きやすいといえばそうなのかと思いますが、キャナルはものすっごく難しいと思います。

> おそらくスレキャラ含めてもいちばん難しいのではないでしょうか。

 うーん……そうでもないですよ。
 キャナルは何となく形があるので書きやすいです。
 あ・とらぶる・おぶ・そーどぶれいかーで、
「頼むから早くキャナル出てきてくれぇぇっ!」
 と言う思いでいっぱいでした。
 私にとってはケイン、ミリィの方が掴みにくいです。
 ケインはまぁなーんとなくわかる(よーな気がする)のですが、
 ミリィは辛い。
 何か形がもやもやしていて掴めないですね。
 あの小説の中でセリフ、出番がなんとなく少ないのは
 そのせいです(をうい)
 ただ、キャナルのギャグの部分を考えるのには苦労しました。
 とりあえずキャナルの場合、周りに負けちゃいけない。
 ケイン達を黙らせるセリフを言わすには、書いてる私自身が黙らせる言葉を思いつかなくちゃいけませんから。
 それがキャナルを書いてる部分の苦労、ですかね。


> 物語自体は、よくあるパターンといえばそうで、決して目新しいものでもないですが、同じネタでも書く人によってはここまで面白くなるのか、と唸らされました。

 はい。確かに物語自体は良くあるパターンです。
 ただ、TVの影響でか、
 あーゆーキャナル書いてる人が少ない様な気がします。
 で、あーゆーキャナルが好きなことと、
 ロスユニ書いてみたいなぁと言うことが重なり、
 特に話を考えずに書き始めたので
 パターン通りになってしまいました。
 次書くときは何か奇抜なアイデアを入れたいです。

> どうしてもアニメの方が見た量が多かった分、原作風に書くのは難しいと思うのですが、ケインも、それよりもっと難しいであろうミリィも読んでいて原作的だと思えるのですから恐ろしいものです。

 そう取っていただけてたら幸いです。
 出来るだけ原作風にしよう!と頑張ってみました。
 ただミリィは上記の通り、めちゃくちゃ難しいです。
 難しかったと過去形じゃないのは、
 まだいまいちな思いがあるからです。

>>「ううっ……そんな……
>> わたしは嫌だって言ったのにコーヒー片手に無理矢理させたんじゃないですかぁ………」
>
> このセリフを見て、「ああ、勝てないなー」って思い知らされました。(勝負してたんかい)
> なんで、と説明はできないのですが最初から読んでいったときに、そう感じたのです。

 うーん。ブラントンさんなら充分勝てると思いますが(汗)
 ともあれ、ここは本来『コーヒー片手に』と言うのは抜けてたんですが、後で追加しました。
 やっぱこーしないと面白くない(笑)
 
> ……本当に誉め言葉しか出ようがないので、いっそお願いします。
>「二翼の翼」のような長編をロスユニで書いて下さい。ぜひ。
> キャナル優位だけではなく、他のロスユニの話も読んでみたいです!
> ……それとも、現在連載中のものが終わったら既に次回作の予定があるのでしょうか? 

 ………………どぅえぇぇぇぇっ!?
 執筆依頼っ!?正気ですかっ!?
 幸せすぎて怖いんですけど………
 ……ま、まぁ一応今書いてる交錯シリーズ以降は詳しく考えてないんですけど……
 ロスユニの長編ですか……考えてもみなかったですね……
 (考え中 考え中 考え中)
 答えでました。
 書きます!書かせていただきます!
 ネタ全然考えてないし、まだ書き途中のがずいぶんあるんで時間かかりますけどそれで良ければ。
 何より面白そうですし。
 ではご期待に添えるよう何とか努力したいと思います。
 あとちょっと質問あるんですけどそれは、九尾さんの所で。

 では、ご感想、執筆依頼ありがとうございましたっ!!


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990久しぶりかも・・・ブラントン 1/3-20:01
記事番号985へのコメント

 では、レスのレスを。

>それは褒め過ぎです(どきっぱり)
 いえ、「私の知っている中では」という条件であればそうです(どきっぱり)
 確かに、ロスユニを書いている人自体が少ないというのもありますが。
>キャナルは何となく形があるので書きやすいです。
 ……い、いや、形自体は確かにわかりますが、その形を書くのが難しいんですって!
>ケインはまぁなーんとなくわかる(よーな気がする)のですが、ミリィは辛い。
 わかりますー。つかみ所がないというのではミリィがいちばんでしょう。
 形がないので自由に動かせる反面、っぽくなくなってしまう可能性も高そうで……
>ただ、TVの影響でか、あーゆーキャナル書いてる人が少ない様な気がします。
 確かにそうなんですが……コミックやTV版ほどではないですが、原作でも、いつもキャナルが上にいる、というわけではないと思うんです。
 たとえば、対ロスト・シップ戦ではケインの無茶な行動の方が勝っているような気がしませんか?
 そういう形のキャナルもぜひ見たいなー、というのがありまして、執筆依頼したわけです。
 それと原作のキャナルは外に出られないので、役回りがケインやミリィと違うので、どう動かすか、というのも難しいのではないでしょうか。
>やっぱこーしないと面白くない(笑)
 そうですっ! その『コーヒー片手に』があるから勝てないんですよ!
>執筆依頼っ!?正気ですかっ!?
 はいっ、私は素面です! 酔ってません!(未成年)
 だって、スレの長編がたくさん見られるようになった最近でも、ロストの長編なんて全然出てこないじゃないですかぁ……もちろんまったくないわけではないですが。
 それなら自分で書くまでだ! と思ったまではいいものの、私の作品なんていつ書きあがることか……
 ――というわけでお願いなのですっ!
 ロスユニはスレよりも自由度が多いと思っているので、どんな話なのかすっごく楽しみです♪
 でも白いウサギ様の作品だと安心して待っていられますー。どんな作品でも必ず面白いですから。