◆−千年越しの賭 3−エモーション (2002/10/2 22:36:41) NEW No.10115 ┣Re:千年越しの賭 3−ドラマ・スライム (2002/10/2 22:50:26) NEW No.10117 ┃┗あらららら(苦笑)−エモーション (2002/10/2 23:56:35) NEW No.10121 ┗千年越しの賭 4−エモーション (2002/10/2 23:47:23) NEW No.10120 ┣Re:千年越しの賭 4−ドラマ・スライム (2002/10/3 09:44:02) NEW No.10125 ┗千年越しの賭 5−エモーション (2002/10/3 22:03:55) NEW No.10198 ┣Re:千年越しの賭 5−ドラマ・スライム (2002/10/3 22:23:11) NEW No.10199 ┗千年越しの賭 6−エモーション (2002/10/3 22:52:08) NEW No.10201 ┗Re:千年越しの賭 6−ドラマ・スライム (2002/10/4 13:11:11) NEW No.10218
10115 | 千年越しの賭 3 | エモーション E-mail | 2002/10/2 22:36:41 |
何だか下のツリーだと明日には消えていそうなので、続きなのに 別ツリーになりました。m(__)m ……ほんと、流れるの早いですね、ここ……。 では、ゼロスの前フリから過去突入です。 ∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽ 「千年越しの賭」 3 2. 記録を読み終えたゼロスは、神殿の奥にある女神像の祀られている部屋に いた。さすがに何人もの神官が必ずついているし、夜は閉めてしまうが、 基本的に誰でも自由に出入り出来るようになっている。 また、神官の説明によると普段は祭壇の前に薄いカーテンを掛けているが、 祭り等の特別な期間中だけはカーテンを上げているという。 祭壇では、職人が根性を入れて磨き上げたような、見事な光沢をした 女神像が、眩い輝きを放ちながら、穏やかな優しい微笑みを浮かべていた。 「ほぅ……これは見事ですねぇ」 素直にゼロスは感心した。正直、ここまでとは思わなかったからだ。 ゼロスは苦笑すると、神殿の外へ出た。そのまま、すたすたとまるで 当然のように神殿の裏へ行き、ひっそりとした場所にある、岩でできた あまり目立たない小さな祠の前で、足を止めた。 周囲がそれなりに手入れがされているところを見ると、一般の者は ともかく神殿の者は存在を知っているのだろう。ただ、何があるのか 知っているのは一部の者に限られるだろうが。 ゼロスはどこからともなく赤紫色の宝石を取り出した。知識があるものなら、 宝石に強い魔力と呪文が込められていると判るだろう。だが、使い方を 考えればジュエルズ・アミュレットと言うよりはマジック・アイテムと 呼ぶ方が良いかもしれない。その赤紫色の宝石を眺めながら、ゼロスは 軽くため息をついて呟く。 「結構忙しかったこともありますけど、さすがに自分でも、これほど間が 開くとは思いませんでしたよ。 でも、貴女はこのくらいは予想していたのでしょう? フィリシア」 『だってゼロスは長生きしそうだもの』 この宝石を渡されたとき、彼女、フィリシアに言われた言葉が頭に浮かぶ。 この場にいたらきっと同じ事を言ったに違いない。フィリシアの瞳の色と 同じ赤紫色の宝石──アメジストが光を反射して輝いた。 「──とても貧しい生活だったけれど、それでも村人たちはお互いに助け合って、慎ましく生活していました。そんなある日、村近くの山にあった遺跡から、あの女神像が見つかりました──」 過去−1 「遺跡で見つけた女神像を鑑定……といいますか、見ていただけないでしょうか?」 旅の途中、たまたま立ち寄った村の長老から、黒い法衣の青年と 白い法衣の娘という、コントラストな組み合わせの2人はそう依頼された。 神官はゼロス、巫女はフィリシアと言う名である。 誰が見ても神官と巫女な2人なので、遺跡から見つかった物とは言え、 神様関係の物ならそんな依頼をされても不思議はないだろう。はっきりと 判るかどうかは保証できない、と前置きした上で、2人は「女神像」のある 長老の家に向かった。 ゼロスが見たところ、フィリシアは興味の方が勝って引き受けたようだった。 普段なら断っているからだ。 出会ったのは数ヶ月前。同じ事件に関わる偶然が2〜3度重なり、 一緒に旅をするようになって1ヶ月経つが、彼女は「神殿に関わる事」を 出来るだけ避けている。以前「我慢が出来なくなって神殿を飛び出して来た」と 言っていたが、どうも関わることで、居場所を知られるのが嫌なようだ。 詳しい素姓は知らないが、そういった事からも、彼女が自分で言うような 「ただの巫女」ではないとゼロスは踏んでいた。 長老の家の前には、どうやら村中の人が集まっているようだ。単に 珍しいものが見つかった、という感じには見えない。周囲の強烈な視線に、 さすがのゼロスも困惑しながら家の中に入った。 「失礼いたしました。何分、村の者にとって、今回の女神像は期待の大きい ものでして……」 「……はあ……そうですか」 「そう、お見受けします」 ゼロスはどこかぐったりした声音で答えた。フィリシアは、というと、 とりあえず平静だが、内心の辟易がゼロスには分かる。さしずめ、今の態度は 「営業用」と言ったところだろう。 「この村は貧しいものですから、実のところ『神像』としての価値に関係なく、 売ってしまおうという意見もございます。しかし、仮にも『神像』。しかも 『神魔戦争』の頃の遺跡から出たものですから、そのように扱うのもどうか と言う意見もありまして……」 「つまり、僕たちの鑑定結果次第で、どうするかお決めになる、ということ ですね」 「……神に仕える方々には、ご不快でしょうが……」 「いいえ。結果に関係なく、どのようになされたとしても、人の助けになる のなら、神も目を瞑られると思います。ただし、欲深い事をするのだけは、 やめてくださいね」 全く躊躇もせずに、慈愛に満ちた聖母のような微笑みであっさりとそう言う フィリシアを、ゼロスは意外な面もちで見つめた。まさか──おそらく 純粋な──神殿育ちの巫女が、言外に「結果はどうあれ、神像を売っても 構わない」と言い出すと思わなかったからだ。 しかし、おかげで長老は多少気が楽になったらしい。先程よりは緊張の 取れた表情で、テーブル上にある木箱に被せられた布を外した。 「ありがとうございます……では、早速ですがお願いできますかな。これが、 件の『女神像』です」 箱の中には、材質が違うだけで全く同じ形をした、二体の女神像があった。 片方はプラチナ、もう片方はオリハルコン。差があるとしたら、ろくに 磨かれておらず、光沢もないオリハルコンの方に比べ、プラチナの方が よく磨かれ、輝きを放っている事だろうか。 「二体……ですね。別々に出てきたのですか?」 「同じ場所から揃って見つけた、とのことです。おそらく同じ場所で 祀られていたのではないかと」 「わかりました。それでは……あの、とりあえず鑑定中は私たちだけにして いただけませんか? あのように覗かれていては、集中できませんので……」 さすがに限界という面もちでそう頼むフィリシアの言葉で、長老はやっと 家の窓という窓から、村人たちが覗いていることに気が付いた。 |
10117 | Re:千年越しの賭 3 | ドラマ・スライム | 2002/10/2 22:50:26 |
記事番号10115へのコメント エモーションさんは No.10115「千年越しの賭 3」で書きました。 > > 何だか下のツリーだと明日には消えていそうなので、続きなのに 僕的には今日沈むような・・・ >別ツリーになりました。m(__)m > ……ほんと、流れるの早いですね、ここ……。 >では、ゼロスの前フリから過去突入です。 おお期待しています。(いやもう読みましたが・・・) >>∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽ > > 「千年越しの賭」 3 > >2. > > 記録を読み終えたゼロスは、神殿の奥にある女神像の祀られている部屋に >いた。さすがに何人もの神官が必ずついているし、夜は閉めてしまうが、 >基本的に誰でも自由に出入り出来るようになっている。 > また、神官の説明によると普段は祭壇の前に薄いカーテンを掛けているが、 >祭り等の特別な期間中だけはカーテンを上げているという。 > 祭壇では、職人が根性を入れて磨き上げたような、見事な光沢をした >女神像が、眩い輝きを放ちながら、穏やかな優しい微笑みを浮かべていた。 >「ほぅ……これは見事ですねぇ」 > 素直にゼロスは感心した。正直、ここまでとは思わなかったからだ。 > ゼロスは苦笑すると、神殿の外へ出た。そのまま、すたすたとまるで >当然のように神殿の裏へ行き、ひっそりとした場所にある、岩でできた >あまり目立たない小さな祠の前で、足を止めた。 > 周囲がそれなりに手入れがされているところを見ると、一般の者は >ともかく神殿の者は存在を知っているのだろう。ただ、何があるのか >知っているのは一部の者に限られるだろうが。 > ゼロスはどこからともなく赤紫色の宝石を取り出した。知識があるものなら、 >宝石に強い魔力と呪文が込められていると判るだろう。だが、使い方を >考えればジュエルズ・アミュレットと言うよりはマジック・アイテムと >呼ぶ方が良いかもしれない。その赤紫色の宝石を眺めながら、ゼロスは >軽くため息をついて呟く。 >「結構忙しかったこともありますけど、さすがに自分でも、これほど間が >開くとは思いませんでしたよ。 > でも、貴女はこのくらいは予想していたのでしょう? フィリシア」 >『だってゼロスは長生きしそうだもの』 魔族だしねえ > この宝石を渡されたとき、彼女、フィリシアに言われた言葉が頭に浮かぶ。 >この場にいたらきっと同じ事を言ったに違いない。フィリシアの瞳の色と >同じ赤紫色の宝石──アメジストが光を反射して輝いた。 > >「──とても貧しい生活だったけれど、それでも村人たちはお互いに助け合って、慎ましく生活していました。そんなある日、村近くの山にあった遺跡から、あの女神像が見つかりました──」 > > 過去−1 >「遺跡で見つけた女神像を鑑定……といいますか、見ていただけないでしょうか?」 > 旅の途中、たまたま立ち寄った村の長老から、黒い法衣の青年と >白い法衣の娘という、コントラストな組み合わせの2人はそう依頼された。 >神官はゼロス、巫女はフィリシアと言う名である。 > 誰が見ても神官と巫女な2人なので、遺跡から見つかった物とは言え、 >神様関係の物ならそんな依頼をされても不思議はないだろう。はっきりと >判るかどうかは保証できない、と前置きした上で、2人は「女神像」のある >長老の家に向かった。 > ゼロスが見たところ、フィリシアは興味の方が勝って引き受けたようだった。 >普段なら断っているからだ。 > 出会ったのは数ヶ月前。同じ事件に関わる偶然が2〜3度重なり、 >一緒に旅をするようになって1ヶ月経つが、彼女は「神殿に関わる事」を >出来るだけ避けている。以前「我慢が出来なくなって神殿を飛び出して来た」と >言っていたが、どうも関わることで、居場所を知られるのが嫌なようだ。 >詳しい素姓は知らないが、そういった事からも、彼女が自分で言うような >「ただの巫女」ではないとゼロスは踏んでいた。 > 長老の家の前には、どうやら村中の人が集まっているようだ。単に >珍しいものが見つかった、という感じには見えない。周囲の強烈な視線に、 >さすがのゼロスも困惑しながら家の中に入った。 >「失礼いたしました。何分、村の者にとって、今回の女神像は期待の大きい >ものでして……」 >「……はあ……そうですか」 >「そう、お見受けします」 > ゼロスはどこかぐったりした声音で答えた。フィリシアは、というと、 >とりあえず平静だが、内心の辟易がゼロスには分かる。さしずめ、今の態度は >「営業用」と言ったところだろう。 >「この村は貧しいものですから、実のところ『神像』としての価値に関係なく、 >売ってしまおうという意見もございます。しかし、仮にも『神像』。しかも >『神魔戦争』の頃の遺跡から出たものですから、そのように扱うのもどうか >と言う意見もありまして……」 うう古ひ >「つまり、僕たちの鑑定結果次第で、どうするかお決めになる、ということ >ですね」 >「……神に仕える方々には、ご不快でしょうが……」 >「いいえ。結果に関係なく、どのようになされたとしても、人の助けになる >のなら、神も目を瞑られると思います。ただし、欲深い事をするのだけは、 >やめてくださいね」 > 全く躊躇もせずに、慈愛に満ちた聖母のような微笑みであっさりとそう言う >フィリシアを、ゼロスは意外な面もちで見つめた。まさか──おそらく >純粋な──神殿育ちの巫女が、言外に「結果はどうあれ、神像を売っても >構わない」と言い出すと思わなかったからだ。 > しかし、おかげで長老は多少気が楽になったらしい。先程よりは緊張の >取れた表情で、テーブル上にある木箱に被せられた布を外した。 >「ありがとうございます……では、早速ですがお願いできますかな。これが、 >件の『女神像』です」 > 箱の中には、材質が違うだけで全く同じ形をした、二体の女神像があった。 >片方はプラチナ、もう片方はオリハルコン。差があるとしたら、ろくに >磨かれておらず、光沢もないオリハルコンの方に比べ、プラチナの方が あっそうだ・・・あの悪魔のペンダントオリハルコンせいにしようっと どうもありがとうございます。 >よく磨かれ、輝きを放っている事だろうか。 >「二体……ですね。別々に出てきたのですか?」 >「同じ場所から揃って見つけた、とのことです。おそらく同じ場所で >祀られていたのではないかと」 >「わかりました。それでは……あの、とりあえず鑑定中は私たちだけにして >いただけませんか? あのように覗かれていては、集中できませんので……」 > さすがに限界という面もちでそう頼むフィリシアの言葉で、長老はやっと >家の窓という窓から、村人たちが覗いていることに気が付いた。 > > 僕の作品読んでくれたのですか。 ありがとうございます。 僕としては著者別に入っている『カオティック・レジェンド』を8章まで読んで極悪暴走兵器を読むのがお勧めです。(もちろんカオティック・レジェンドを最後まで読んでくれるとなおうれしいのですが) それでは〜 |
10121 | あらららら(苦笑) | エモーション E-mail | 2002/10/2 23:56:35 |
記事番号10117へのコメント ああ、とろとろ対談レスを書いていたら、すでにコメントが(汗) ありがとうございます。m(__)m >僕の作品読んでくれたのですか。 >ありがとうございます。 いいえ、とんでもない。面白かったです。 >僕としては著者別に入っている『カオティック・レジェンド』を8章まで読んで極悪暴走兵器を読むのがお勧めです。(もちろんカオティック・レジェンドを最後まで読んでくれるとなおうれしいのですが) 時間の許す範囲でひとうひとつ攻略しています。なかなか追いつかなくて、 すみません。 >それでは〜 では、私も著者別へ行ってきます。(^_^) |
10120 | 千年越しの賭 4 | エモーション E-mail | 2002/10/2 23:47:23 |
記事番号10115へのコメント 「千年越しの賭」4 現在−2 3人の読んだ文献の内容は、ここまで読んだ時点で、すでに一般に 知られている伝承と違っていた。 「ねぇ、これには女神像がふたつあったって書いてあるけど、そっちはどう?」 「こっちもだ。二体になってるな」 「魔道士協会で読んだのと、町で聞いたのは最初っからひとつだったわよね?」 「ええ。町で聞いた方には、これに載っている『黒衣の神官』さんと、 『純白の巫女』さんが出てきましたけど、女神像の方は……今、こちらに あるのは、ひとつだけでしたよね」 アメリアの問いに、担当の神官はそうです、と言い、 「今では一般に知られていませんが、当時は二体あったそうです。この文献は、 女神像がひとつだけになった理由を語ったものですから……」 「あなたは、これを読んだの? ……と言うか、ここの神官でこの文献を 読んだ人って、何人いるわけ?」 「概要でしたら、巫女や神官の資格を取った時に必ず聞きますので、 この神殿の者は知っています。何より、基本的には一般に伝わっている内容と 変わりませんので……。 ですが、直接となると、読むことが義務づけられている神官長や副神官長 以外は、よほど熱心な者ぐらいです。 私はここの管理を任された際に閲覧しましたが、内容を確認した程度ですので、 きちんと読んだとは言えません」 リナの質問に少し申し訳なさそうに答えた。 「ありがと。……ま、とにかく続きを読みましょうか」 少し、何かを考えている表情で、リナはそう言った。 「──あとでお聞きした事ですが、神官様と巫女様は、鑑定すること自体には 時間が掛からなかったそうです。お2人には女神像がどのようなものであるのか、 すぐにお判りになったのでしょう。ですから、今になって私は思うのです。 それだけに、特に巫女様の方は、私たちにどのように話したらよいのか、 とても悩まれたのだろうと──」 ∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽ L.長さとしては、中途半端よね。それでも他の人より長いけど。 X.まあ、一番切りの良い部分ですし。次は過去だけですから。 E.対談に飛び入りで、ドラマ・スライム様にレスです。 下のコメントにありました「良心的な神殿」についてですが、実はこれ 本文には書きませんでしたが、ちゃんと理由があります。 ここの神殿があっさり文献見せた理由には、本文の担当さんの台詞に あったように、ある程度知れ渡っている、というのと、それに加えて 「ヒュパティアの意思」が一般書物にまで応用されたため、所有して いる書物や文書類を一般人に公開する、つまり「図書館」と同じことを、 昔から当たり前のように行っていました。 それでも「閉架式」と呼ばれる形ですが。 「ヒュパティアの意思」がこんな形で、一般書物にまで応用された結果、 「重要文書でも抵抗なく閲覧させられる」なんていう逆転現象が 起きた、という裏設定になっています。 ただ、現実、私たちの世界ではごく普通のことですが、(注:私たちの 知る図書館は「開架式」と呼ばれる形式です)原作を読んで判断した 限り、「スレ」の世界の常識においてはあり得ないことをしているわけです。 これが他の神殿なら、閲覧できるのはアメリアぐらいですから、リナと ゼルが拍子抜けしたのも無理ないです(苦笑) L.……飛び入りが一番長いコメントを……(汗) X.コメントまで長文体質ですね。では、また、明日お会いしましょう。 |
10125 | Re:千年越しの賭 4 | ドラマ・スライム | 2002/10/3 09:44:02 |
記事番号10120へのコメント エモーションさんは No.10120「千年越しの賭 4」で書きました。 > > 「千年越しの賭」4 > > 現在−2 > 3人の読んだ文献の内容は、ここまで読んだ時点で、すでに一般に >知られている伝承と違っていた。 >「ねぇ、これには女神像がふたつあったって書いてあるけど、そっちはどう?」 >「こっちもだ。二体になってるな」 >「魔道士協会で読んだのと、町で聞いたのは最初っからひとつだったわよね?」 >「ええ。町で聞いた方には、これに載っている『黒衣の神官』さんと、 >『純白の巫女』さんが出てきましたけど、女神像の方は……今、こちらに >あるのは、ひとつだけでしたよね」 > アメリアの問いに、担当の神官はそうです、と言い、 >「今では一般に知られていませんが、当時は二体あったそうです。この文献は、 >女神像がひとつだけになった理由を語ったものですから……」 >「あなたは、これを読んだの? ……と言うか、ここの神官でこの文献を >読んだ人って、何人いるわけ?」 >「概要でしたら、巫女や神官の資格を取った時に必ず聞きますので、 >この神殿の者は知っています。何より、基本的には一般に伝わっている内容と >変わりませんので……。 > ですが、直接となると、読むことが義務づけられている神官長や副神官長 >以外は、よほど熱心な者ぐらいです。 > 私はここの管理を任された際に閲覧しましたが、内容を確認した程度ですので、 >きちんと読んだとは言えません」 > リナの質問に少し申し訳なさそうに答えた。 >「ありがと。……ま、とにかく続きを読みましょうか」 > 少し、何かを考えている表情で、リナはそう言った。 > >「──あとでお聞きした事ですが、神官様と巫女様は、鑑定すること自体には >時間が掛からなかったそうです。お2人には女神像がどのようなものであるのか、 >すぐにお判りになったのでしょう。ですから、今になって私は思うのです。 >それだけに、特に巫女様の方は、私たちにどのように話したらよいのか、 >とても悩まれたのだろうと──」 > >∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽ > >L.長さとしては、中途半端よね。それでも他の人より長いけど。 >X.まあ、一番切りの良い部分ですし。次は過去だけですから。 > >E.対談に飛び入りで、ドラマ・スライム様にレスです。 > 下のコメントにありました「良心的な神殿」についてですが、実はこれ > 本文には書きませんでしたが、ちゃんと理由があります。 > ここの神殿があっさり文献見せた理由には、本文の担当さんの台詞に > あったように、ある程度知れ渡っている、というのと、それに加えて > 「ヒュパティアの意思」が一般書物にまで応用されたため、所有して > いる書物や文書類を一般人に公開する、つまり「図書館」と同じことを、 > 昔から当たり前のように行っていました。 > それでも「閉架式」と呼ばれる形ですが。 > 「ヒュパティアの意思」がこんな形で、一般書物にまで応用された結果、 > 「重要文書でも抵抗なく閲覧させられる」なんていう逆転現象が > 起きた、という裏設定になっています。 > > ただ、現実、私たちの世界ではごく普通のことですが、(注:私たちの > 知る図書館は「開架式」と呼ばれる形式です)原作を読んで判断した > 限り、「スレ」の世界の常識においてはあり得ないことをしているわけです。 > これが他の神殿なら、閲覧できるのはアメリアぐらいですから、リナと > ゼルが拍子抜けしたのも無理ないです(苦笑) わざわざありがとうございます。(ぐすん。) > >L.……飛び入りが一番長いコメントを……(汗) >X.コメントまで長文体質ですね。では、また、明日お会いしましょう。 それではがんばってください。 > > |
10198 | 千年越しの賭 5 | エモーション E-mail | 2002/10/3 22:03:55 |
記事番号10120へのコメント はやい……ツリーがすでに中盤に(汗) 今回は過去話だけです。 ∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽ 「千年越しの賭」 5 過去─2 2人から少し離れたドアの前で、鑑定に立ち会っていた長老は少し 怪訝な顔をした。素人が見ても、神官と巫女は女神像が何か判ったようなのに、 巫女は目の前に2つの女神像を並べ、どういうわけか心底困っているのに対し、 神官は隣で余裕たっぷりの態度をしていたからだ。 長老が理解したように、ゼロスもフィリシアも、女神像がどんなものなのか すぐに判っていた。手にとって見たりしたのは、念には念を入れて確認した だけのことだ。 「あの……どうでしたでしょうか?」 さすがに気になって、長老は声をかけた。 「ええ、判りましたよ。これは……」 「神魔戦争の頃のもの、という価値よりも、プラチナやオリハルコンの 価値の方がありますから、売ってしまってください。ご遠慮なさらずに。 ただし、二体セットではなく個別に、全く違う場所へ」 ゼロスの言葉を遮って、フィリシアは、やたらときっぱりとした口調で そう言った。 「この女神像が持っている『力』をご説明しないんですか? 手放すのを 勧めるのは、それからでもいいと思いますよ」 フィリシアの意図に気づいて、あえてそう言ったゼロスを、フィリシアは、 ムッとした表情で睨む。が、文句の1ダースでも言ってくるだろうという 予想に反して、感じていた「怒り」が次の瞬間に文字どおり「遮断」される。 感情を完全に隠すと、なまじ綺麗な娘なだけに、その分どこか近寄りがたい。 「あの『力』は良いものに思えますが、実際はそうではありません。今なら まだ、間に合うます。手放してください」 二体の女神像を見つめて、フィリシアは淡々と長老や、おそらく覗きこそ していないが様子をうかがって、話を聞いているだろう村人に言う。が、 「それは、村の方々に『力』のご説明をしてからでもいいと思いますけど? その上で判断した方が、村の方々も納得なさるでしょう?」 しれっとした調子でゼロスにそう言われ、フィリシアは一瞬言葉に詰まる。 確かにそのとおりだろう。しかし「力」を聞いてしまったら、村人たちは 手放す気にはならないだろうとも、確信していた。 2人のやりとりを見て、長老が訊ねた。 「失礼ですが、『女神像の持つ力』と言うのは……?」 「待って! やめて! 言わないで!」 「この女神像には、どんな願い事でも叶える力があるんです」 フィリシアの言葉を無視して、ゼロスはプラチナの女神像を手にすると、 長老の問いにあっさりと答えた。それと同時に、フィリシアは、ただ深く深く、 ため息をつく。 「願い事を……? 本当ですか?」 「ええ。どんな、と言っても限度はありますけどね。 スケールの大きすぎるものや、他人の心を操るようなもの、既に失ったものを 取り戻すような願い事は無理です。願っても叶いません。 例えば、この世界を支配したいとか、片思いの相手に自分を好きになって もらうとか、死んだ人を生き返らせてくれ、なんて言う願い事は出来ないと 言うことです。 それでも、大抵の願い事は叶いますけどね。それも確実に」 「それじゃあ、俺たちは、もうこんな貧しい暮らしをしなくてすむんだな」 「なんて素晴らしい。売るなんてとんでもない、是非お祀りしよう」 すでに部屋には村人達が入り込んで、口々にそう呟いていた。押し寄せること こそしないものの、ドアは出入りが出来ないほど、ぎゅうぎゅう詰めになっている。 「それでは、そちらのオリハルコンの女神像にはどのような力が?」 この長老の問いには、フィリシアが答えた。 「この女神像は、願い事を叶える力はありませんが、願い事をした人が、 自らの力で願いを叶えると、次第に磨き上げたように、綺麗に輝くように なっています。 それとは別に、プラチナの女神像の力を抑える……『力』そのものを封じる力を 持っています」 それは長老や村人達にはどうでもいいどころか、要らない「力」だった。 「……それじゃあ、そっちは売っちまおうか」 「んだな。プラチナの方があればいいさ。必要ねえ」 口々にそう言っていると、再びゼロスが口を開く。 「でも、そちらを売ってしまったら、プラチナの女神像の力も無くなって しまいますよ」 訳が分からず沈黙する村人達に、ゼロスは両方の女神像をそれぞれ手に持ち、 説明した。 「この2つの女神像は、両方が近くに揃っているときにのみ、『力』を 発揮するんです。そうですね、大体半径500mと言うところでしょうか。 それ以上離れてしまうと、どちらもただの女神像。持っていた『力』は無くなります」 「それでは、一体どうすれば……? 正直申し上げて、オリハルコンの女神像が、 プラチナの女神像の力を抑えてしまうのでは、両方揃っていても何の役にも 立たないように思えるのですが」 「封じるにはそれなりの手順が必要です。近くにあるくらいでは問題になりません」 ゼロスのその言葉を聞いた途端、村人たちから歓喜の声が上がる。 「願いが叶えば、必ず代償を取られます。でも、でも、いつ、何を取られるのかは、 誰にも分からないんです。お願いです、やめてください」 必死でそう言うフィリシアの言葉は、女神像を祀ろうと盛り上がる村人たちの 歓喜の声の中、かき消されるだけだった。 「──お二人のお話を聞いて、村の者は両方の女神像を祀ることにしました。 長老はお礼のあと、お二人のお名前を訊ねたそうですが、名のらなかったそうです。 ただ、巫女様は最後に忠告をなさいました。無理な話だと分かっていても、 言わずにはいられなかったのでしょう。それは、私が言われたものと同じ 内容でした──」 |
10199 | Re:千年越しの賭 5 | ドラマ・スライム | 2002/10/3 22:23:11 |
記事番号10198へのコメント エモーションさんは No.10198「千年越しの賭 5」で書きました。 > > はやい……ツリーがすでに中盤に(汗) >今回は過去話だけです。 > >∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽ > > 「千年越しの賭」 5 > > 過去─2 > 2人から少し離れたドアの前で、鑑定に立ち会っていた長老は少し >怪訝な顔をした。素人が見ても、神官と巫女は女神像が何か判ったようなのに、 >巫女は目の前に2つの女神像を並べ、どういうわけか心底困っているのに対し、 >神官は隣で余裕たっぷりの態度をしていたからだ。 > > 長老が理解したように、ゼロスもフィリシアも、女神像がどんなものなのか >すぐに判っていた。手にとって見たりしたのは、念には念を入れて確認した >だけのことだ。 >「あの……どうでしたでしょうか?」 > さすがに気になって、長老は声をかけた。 >「ええ、判りましたよ。これは……」 >「神魔戦争の頃のもの、という価値よりも、プラチナやオリハルコンの >価値の方がありますから、売ってしまってください。ご遠慮なさらずに。 >ただし、二体セットではなく個別に、全く違う場所へ」 > ゼロスの言葉を遮って、フィリシアは、やたらときっぱりとした口調で >そう言った。 >「この女神像が持っている『力』をご説明しないんですか? 手放すのを >勧めるのは、それからでもいいと思いますよ」 ゼロス・・・。 > フィリシアの意図に気づいて、あえてそう言ったゼロスを、フィリシアは、 >ムッとした表情で睨む。が、文句の1ダースでも言ってくるだろうという >予想に反して、感じていた「怒り」が次の瞬間に文字どおり「遮断」される。 >感情を完全に隠すと、なまじ綺麗な娘なだけに、その分どこか近寄りがたい。 >「あの『力』は良いものに思えますが、実際はそうではありません。今なら >まだ、間に合うます。手放してください」 > 二体の女神像を見つめて、フィリシアは淡々と長老や、おそらく覗きこそ >していないが様子をうかがって、話を聞いているだろう村人に言う。が、 >「それは、村の方々に『力』のご説明をしてからでもいいと思いますけど? >その上で判断した方が、村の方々も納得なさるでしょう?」 > しれっとした調子でゼロスにそう言われ、フィリシアは一瞬言葉に詰まる。 >確かにそのとおりだろう。しかし「力」を聞いてしまったら、村人たちは >手放す気にはならないだろうとも、確信していた。 > 2人のやりとりを見て、長老が訊ねた。 >「失礼ですが、『女神像の持つ力』と言うのは……?」 >「待って! やめて! 言わないで!」 >「この女神像には、どんな願い事でも叶える力があるんです」 虫が良すぎるぞ。 > フィリシアの言葉を無視して、ゼロスはプラチナの女神像を手にすると、 >長老の問いにあっさりと答えた。それと同時に、フィリシアは、ただ深く深く、 >ため息をつく。 >「願い事を……? 本当ですか?」 >「ええ。どんな、と言っても限度はありますけどね。 > スケールの大きすぎるものや、他人の心を操るようなもの、既に失ったものを >取り戻すような願い事は無理です。願っても叶いません。 > 例えば、この世界を支配したいとか、片思いの相手に自分を好きになって >もらうとか、死んだ人を生き返らせてくれ、なんて言う願い事は出来ないと >言うことです。 > それでも、大抵の願い事は叶いますけどね。それも確実に」 >「それじゃあ、俺たちは、もうこんな貧しい暮らしをしなくてすむんだな」 >「なんて素晴らしい。売るなんてとんでもない、是非お祀りしよう」 > すでに部屋には村人達が入り込んで、口々にそう呟いていた。押し寄せること >こそしないものの、ドアは出入りが出来ないほど、ぎゅうぎゅう詰めになっている。 >「それでは、そちらのオリハルコンの女神像にはどのような力が?」 > この長老の問いには、フィリシアが答えた。 >「この女神像は、願い事を叶える力はありませんが、願い事をした人が、 >自らの力で願いを叶えると、次第に磨き上げたように、綺麗に輝くように >なっています。 > それとは別に、プラチナの女神像の力を抑える……『力』そのものを封じる力を >持っています」 > それは長老や村人達にはどうでもいいどころか、要らない「力」だった。 >「……それじゃあ、そっちは売っちまおうか」 >「んだな。プラチナの方があればいいさ。必要ねえ」 > 口々にそう言っていると、再びゼロスが口を開く。 >「でも、そちらを売ってしまったら、プラチナの女神像の力も無くなって >しまいますよ」 > 訳が分からず沈黙する村人達に、ゼロスは両方の女神像をそれぞれ手に持ち、 >説明した。 >「この2つの女神像は、両方が近くに揃っているときにのみ、『力』を >発揮するんです。そうですね、大体半径500mと言うところでしょうか。 >それ以上離れてしまうと、どちらもただの女神像。持っていた『力』は無くなります」 >「それでは、一体どうすれば……? 正直申し上げて、オリハルコンの女神像が、 >プラチナの女神像の力を抑えてしまうのでは、両方揃っていても何の役にも >立たないように思えるのですが」 >「封じるにはそれなりの手順が必要です。近くにあるくらいでは問題になりません」 > ゼロスのその言葉を聞いた途端、村人たちから歓喜の声が上がる。 >「願いが叶えば、必ず代償を取られます。でも、でも、いつ、何を取られるのかは、 >誰にも分からないんです。お願いです、やめてください」 まさか恐ろしい代償が・・・ > 必死でそう言うフィリシアの言葉は、女神像を祀ろうと盛り上がる村人たちの >歓喜の声の中、かき消されるだけだった。 > >「──お二人のお話を聞いて、村の者は両方の女神像を祀ることにしました。 >長老はお礼のあと、お二人のお名前を訊ねたそうですが、名のらなかったそうです。 > ただ、巫女様は最後に忠告をなさいました。無理な話だと分かっていても、 >言わずにはいられなかったのでしょう。それは、私が言われたものと同じ >内容でした──」 > それでは〜 |
10201 | 千年越しの賭 6 | エモーション E-mail | 2002/10/3 22:52:08 |
記事番号10198へのコメント 「千年越しの賭」6 「フィリシアさん! フィリシアさんってば!」 聞こえているのだろうが、ゼロスの呼びかけを無視して、フィリシアは 長いフェアブロンドの髪をなびかせながら、すたすたと足早に歩いていく。 長老の家を出てからずっとこの調子だ。村人達はみんな長老の家に集まって いるらしく、今のところ誰ともすれ違わない。村を出た辺りに来たところで、 ようやく立ち止まった。 「やっと追いつきましたよ。本当に、貴女は歩くのが速いですねぇ……。 あのー、怒ってます? やっぱり?」 ゼロスの言葉に、振り返ったフィリシアの表情は意外に普通だった。が、 「あ・た・り・ま・え・で・しょーっ!! この口は、この口は、この口はーーーーっ!! 言いそうだとは思ったけど、ほんとに言ってくれちゃうんだからっ!!」 ゆっくりと手を伸ばしてきたと思った途端、ゼロスの頬を思いっきりつねる。 「ひ、ひどいですよ、フィリシアさぁん……」 「これから起きること考えたらひどくないわよっ! ああ、もうっ! このやり場のない怒りを、どこにぶつけたらいいのっ!!」 「……たった今、僕にぶつけてたと思うんですけど……」 頬をさすりながらぼそりと呟くゼロスに、フィリシアは頬を膨らませ、 そっぽを向く。 「いいの! あなたは要らないこと言ったんだから」 彼女は確か16歳のはずだが、こういう行動をとると、途端に幼い子ども のようにみえるから不思議だ。そんなフィリシアにゼロスは思わず苦笑する。 「でも、本当のことでしょう? 僕たちは『鑑定』を依頼されたんですから、 『結果』を正直に依頼人に言ったまでのことです。あとは、この村の人たちが 決めることですよ?」 嫌味なほど穏やかに言うゼロスに、フィリシアは怒り出すような、泣き出すような、 そんな表情で答える。 「ええ、『正直』よね。それがどんな状況を招くか分かってても言うんだから、 最高に正直だわ。本当に、腹が立つくらい。……鑑定する前に言っておくん だったわ。何も言うな、って」 「僕、嘘つくのは苦手ですから」 「嘘は言わないけど、事実じゃないことは言うし、それに都合が悪いときは 黙ってるじゃない!」 「それはお互い様ですよ。まあ、今回は、フィリシアさんが何度も止めましたし、 ちゃんと忠告したじゃないですか。詳しい説明を遮って、聞こうとしなかったのは、 村の人たちですし、忠告を聞いた上でどうするかは、やはり村の人たちが 決めることです。僕たちが口出しする事じゃありません」 「分かってるわよ。分かってても頭にくるの!」 そんなやりとりをしていると、2人を呼ぶ声が聞こえてきた。声の方に 顔を向けると、12〜13歳ほどの少女が、息を弾ませてこちらへやって くるところだった。 「良か……ったあ。間に合って……」 濃いブラウンの髪に緑色の瞳をした少女は、息を整えながらそう言った。 彼女の名前はヒュパティア。ティアと呼ばれている。昨日、2人は村近くの道で、 ケガをして立ち往生していた親娘を助けて治療した。親娘はお礼代わりにと、 2人を家に泊めてくれたのだが、その娘の方がティアである。 「……ティア?」 「ヒュパティアさん。どうしたんです?」 「ゼロス様、フィリシア様、これを……」 ティアは小ぶりの袋を差し出した。長老の依頼のこともあって、急いで 彼女の家を出ることになったが、忘れ物等はしていないはずである。不思議そうに 顔を見合わせている2人に、ティアは明るい笑顔で言う。 「少ないですけど、お食事です。遠慮せずに持っていって下さい。この先は、 2日くらい町も村もありませんから」 少ないと言っても2人分だ。自分たちの生活だけでも大変なはずなのに、 ティアは気負いもなく、そう言う。それが、フィリシアにはとても嬉しかった。 「ありがとう、ティア……」 「たいしたことじゃないです」 フィリシアに心底優しい笑みで礼を言われたティアは、はにかんだ笑みで 答える。そんなティアを見つめて、フィリシアは少し切なげに言う。 「ティアは……女神像のこと、もう聞いた?」 「はい。凄いですよね。私も、お願いしようと思ってるんです。早くフィリシア様や、 死んだ母さんみたいに、立派な巫女になれますようにって」 「そう言えば、昨日、ヒュパティアさんの亡くなられたお母上は、巫女だったと お聞きしましたね。お父上のような薬師にはならないんですか?」 「できれば、そっちも目指したいんです。だからそれもお願いしようかな、なんて。 欲張りですね、あたし」 ゼロスの問いに無邪気にティアは答える。彼女が貧しい生活の中で、少しずつ 勉強しているのは、たった1日滞在しただけでも、十分に分かる事だった。 「ティア。それは女神像に頼らなくても、出来る事よ。あなたなら、 今のままでも十分に」 「……フィリシア様?」 静かに、そして悲しげに言うフィリシアに、ティアは不思議そうな顔をした。 「……これはとてもひどいことを言ってると思うけれど……。 あの女神像……プラチナの女神像には、願い事をしないでほしいの。 あなただけでなく、村の人たち全員。できれば、絶対に」 そう言われ、ティアは目を丸くした。 ティアは女神像を祀る祠──じきに、神殿に造りかえられる──に来ていた。 ゼロスとフィリシアが去って1週間。その間、ティアはずっとフィリシアの 忠告について父親と話し合った。そうして、ようやくここへ来たのだ。 願い事をするために。 即席で造ったわりに案外広い祠の中には、有志で見張りをしている村の者が 何人かいた。左右に一体ずつ、女神像が祀られている。 自分の順番になったとき、ティアは入り口で少し立ち止まった。胸の前で 両手を握り合わせ、目を閉じる。背後で気の短い者が文句を言っているが、 構わずに自分の気持ちを落ち着けた。迷いを、断ち切るために。 「おい、間違えてるぞ。プラチナの女神像は、そっちじゃない」 右の女神像に向かって歩き出したティアに、見張りをしていた青年が そう声をかける。それで、子どもの頃よく遊んだ幼なじみだと気がついた。 村を出ていたはずだが、戻ってきたらしい。 「ありがとう。でも、間違ってないわ。あたしはこっちの女神像に願い事をしに ……ううん、願掛けに来たんだから」 ティアはそう明るく言って微笑むと、オリハルコンの女神像の前に跪いた。 「──初めのうちは、巫女様の忠告の事もあって、みんな、プラチナの女神像に 祈願をする事は、出来るだけ控えていましたが、すぐに祈願の回数が増えて いきました。オリハルコンの女神像に祈願をしているのは、本当に一握りの、 一部の者だけ。 そして、プラチナの女神像への祈願が増えるごとに、巫女様の忠告は、 次第に忘れられていきました──」 ∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽ L.フェアブロンドって金髪でしょ? ガウリイの金髪とどうちがうの? X.ガウリイさんは明るい金髪ですよね。筆者Eのイメージではガウリイさんは 「柏レ○ソル」で、フィリシアは「ベ○ルタ仙台」だそうです。 L.……なに、その比喩表現……(ジト目) X.この間のサッカーの試合を観て、そう思ったそうです。こんな感じの 違いだっ!(笑)と。 ちなみにベ○ルタは正のユニフォームでの比喩だそうです。 L.何だかなあ……。で、まだ発端よね、これ。 X.そうですよ。次からは一気に3年後になります。だから、ヒュパティアさんは 一気に変わってきますし、僕とフィリシアも少し、変わってきます。 本文では分かりませんが、この時点では、僕はフィリシアには思いっきり、 警戒されてましたから、名前を全然呼んでもらえませんでしたし。 L.そりゃ無理ないわ。十分に怪しいもん、あんた。(きっぱり) まあ、3年経ってフィリシアは、あんたの取り扱いに慣れるわけね。 X.取り扱いって……その表現はちょっと……。 L.ということで、とりあえずまた、明日。 X.取り扱い……取り扱い……ぶつぶつ。 |
10218 | Re:千年越しの賭 6 | ドラマ・スライム | 2002/10/4 13:11:11 |
記事番号10201へのコメント エモーションさんは No.10201「千年越しの賭 6」で書きました。 > > 「千年越しの賭」6 > > >「フィリシアさん! フィリシアさんってば!」 > 聞こえているのだろうが、ゼロスの呼びかけを無視して、フィリシアは >長いフェアブロンドの髪をなびかせながら、すたすたと足早に歩いていく。 >長老の家を出てからずっとこの調子だ。村人達はみんな長老の家に集まって >いるらしく、今のところ誰ともすれ違わない。村を出た辺りに来たところで、 >ようやく立ち止まった。 >「やっと追いつきましたよ。本当に、貴女は歩くのが速いですねぇ……。 > あのー、怒ってます? やっぱり?」 > ゼロスの言葉に、振り返ったフィリシアの表情は意外に普通だった。が、 >「あ・た・り・ま・え・で・しょーっ!! この口は、この口は、この口はーーーーっ!! >言いそうだとは思ったけど、ほんとに言ってくれちゃうんだからっ!!」 > ゆっくりと手を伸ばしてきたと思った途端、ゼロスの頬を思いっきりつねる。 >「ひ、ひどいですよ、フィリシアさぁん……」 >「これから起きること考えたらひどくないわよっ! ああ、もうっ! >このやり場のない怒りを、どこにぶつけたらいいのっ!!」 >「……たった今、僕にぶつけてたと思うんですけど……」 > 頬をさすりながらぼそりと呟くゼロスに、フィリシアは頬を膨らませ、 >そっぽを向く。 >「いいの! あなたは要らないこと言ったんだから」 > 彼女は確か16歳のはずだが、こういう行動をとると、途端に幼い子ども >のようにみえるから不思議だ。そんなフィリシアにゼロスは思わず苦笑する。 >「でも、本当のことでしょう? 僕たちは『鑑定』を依頼されたんですから、 >『結果』を正直に依頼人に言ったまでのことです。あとは、この村の人たちが >決めることですよ?」 > 嫌味なほど穏やかに言うゼロスに、フィリシアは怒り出すような、泣き出すような、 >そんな表情で答える。 >「ええ、『正直』よね。それがどんな状況を招くか分かってても言うんだから、 >最高に正直だわ。本当に、腹が立つくらい。……鑑定する前に言っておくん >だったわ。何も言うな、って」 >「僕、嘘つくのは苦手ですから」 ・・・やはり魔族なんですね。 >「嘘は言わないけど、事実じゃないことは言うし、それに都合が悪いときは >黙ってるじゃない!」 >「それはお互い様ですよ。まあ、今回は、フィリシアさんが何度も止めましたし、 >ちゃんと忠告したじゃないですか。詳しい説明を遮って、聞こうとしなかったのは、 >村の人たちですし、忠告を聞いた上でどうするかは、やはり村の人たちが >決めることです。僕たちが口出しする事じゃありません」 >「分かってるわよ。分かってても頭にくるの!」 > そんなやりとりをしていると、2人を呼ぶ声が聞こえてきた。声の方に >顔を向けると、12〜13歳ほどの少女が、息を弾ませてこちらへやって >くるところだった。 >「良か……ったあ。間に合って……」 > 濃いブラウンの髪に緑色の瞳をした少女は、息を整えながらそう言った。 >彼女の名前はヒュパティア。ティアと呼ばれている。昨日、2人は村近くの道で、 >ケガをして立ち往生していた親娘を助けて治療した。親娘はお礼代わりにと、 >2人を家に泊めてくれたのだが、その娘の方がティアである。 >「……ティア?」 >「ヒュパティアさん。どうしたんです?」 >「ゼロス様、フィリシア様、これを……」 > ティアは小ぶりの袋を差し出した。長老の依頼のこともあって、急いで >彼女の家を出ることになったが、忘れ物等はしていないはずである。不思議そうに >顔を見合わせている2人に、ティアは明るい笑顔で言う。 >「少ないですけど、お食事です。遠慮せずに持っていって下さい。この先は、 >2日くらい町も村もありませんから」 > 少ないと言っても2人分だ。自分たちの生活だけでも大変なはずなのに、 >ティアは気負いもなく、そう言う。それが、フィリシアにはとても嬉しかった。 >「ありがとう、ティア……」 >「たいしたことじゃないです」 > フィリシアに心底優しい笑みで礼を言われたティアは、はにかんだ笑みで >答える。そんなティアを見つめて、フィリシアは少し切なげに言う。 >「ティアは……女神像のこと、もう聞いた?」 >「はい。凄いですよね。私も、お願いしようと思ってるんです。早くフィリシア様や、 >死んだ母さんみたいに、立派な巫女になれますようにって」 >「そう言えば、昨日、ヒュパティアさんの亡くなられたお母上は、巫女だったと >お聞きしましたね。お父上のような薬師にはならないんですか?」 >「できれば、そっちも目指したいんです。だからそれもお願いしようかな、なんて。 >欲張りですね、あたし」 > ゼロスの問いに無邪気にティアは答える。彼女が貧しい生活の中で、少しずつ >勉強しているのは、たった1日滞在しただけでも、十分に分かる事だった。 >「ティア。それは女神像に頼らなくても、出来る事よ。あなたなら、 >今のままでも十分に」 >「……フィリシア様?」 > 静かに、そして悲しげに言うフィリシアに、ティアは不思議そうな顔をした。 >「……これはとてもひどいことを言ってると思うけれど……。 > あの女神像……プラチナの女神像には、願い事をしないでほしいの。 >あなただけでなく、村の人たち全員。できれば、絶対に」 > そう言われ、ティアは目を丸くした。 > > ティアは女神像を祀る祠──じきに、神殿に造りかえられる──に来ていた。 >ゼロスとフィリシアが去って1週間。その間、ティアはずっとフィリシアの >忠告について父親と話し合った。そうして、ようやくここへ来たのだ。 >願い事をするために。 > 即席で造ったわりに案外広い祠の中には、有志で見張りをしている村の者が >何人かいた。左右に一体ずつ、女神像が祀られている。 > 自分の順番になったとき、ティアは入り口で少し立ち止まった。胸の前で >両手を握り合わせ、目を閉じる。背後で気の短い者が文句を言っているが、 >構わずに自分の気持ちを落ち着けた。迷いを、断ち切るために。 >「おい、間違えてるぞ。プラチナの女神像は、そっちじゃない」 > 右の女神像に向かって歩き出したティアに、見張りをしていた青年が >そう声をかける。それで、子どもの頃よく遊んだ幼なじみだと気がついた。 >村を出ていたはずだが、戻ってきたらしい。 >「ありがとう。でも、間違ってないわ。あたしはこっちの女神像に願い事をしに >……ううん、願掛けに来たんだから」 > ティアはそう明るく言って微笑むと、オリハルコンの女神像の前に跪いた。 いいねえ。 > >「──初めのうちは、巫女様の忠告の事もあって、みんな、プラチナの女神像に >祈願をする事は、出来るだけ控えていましたが、すぐに祈願の回数が増えて >いきました。オリハルコンの女神像に祈願をしているのは、本当に一握りの、 >一部の者だけ。 > そして、プラチナの女神像への祈願が増えるごとに、巫女様の忠告は、 >次第に忘れられていきました──」 そして・・・ > >∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽ > >L.フェアブロンドって金髪でしょ? ガウリイの金髪とどうちがうの? >X.ガウリイさんは明るい金髪ですよね。筆者Eのイメージではガウリイさんは > 「柏レ○ソル」で、フィリシアは「ベ○ルタ仙台」だそうです。 >L.……なに、その比喩表現……(ジト目) >X.この間のサッカーの試合を観て、そう思ったそうです。こんな感じの >違いだっ!(笑)と。 > ちなみにベ○ルタは正のユニフォームでの比喩だそうです。 >L.何だかなあ……。で、まだ発端よね、これ。 >X.そうですよ。次からは一気に3年後になります。だから、ヒュパティアさんは > 一気に変わってきますし、僕とフィリシアも少し、変わってきます。 > 本文では分かりませんが、この時点では、僕はフィリシアには思いっきり、 > 警戒されてましたから、名前を全然呼んでもらえませんでしたし。 >L.そりゃ無理ないわ。十分に怪しいもん、あんた。(きっぱり) > まあ、3年経ってフィリシアは、あんたの取り扱いに慣れるわけね。 >X.取り扱いって……その表現はちょっと……。 >L.ということで、とりあえずまた、明日。 >X.取り扱い……取り扱い……ぶつぶつ。 それでは〜 |