◆−〜PRESENT〜−海月 水 (2002/10/14 02:52:22) No.10610
10610 | 〜PRESENT〜 | 海月 水 | 2002/10/14 02:52:22 |
ご無沙汰しとります。水です。 なんだか、すごーく下の方に行っちゃって、見づらいかなーっと思って新規にしてみました。 では、では、お話をどうぞ。 ▲▽ PRESENT(現在) 「アリア?」 アグネスに声を掛けられ、アリアはハッと顔を上げる。 どうやら何度か声を掛けられていたようで心配そうな顔が目に入った。 「す、すいません…」 「いや、もうそろそろ行こうかと言いに来ただけだ」 いきなり謝った彼女に驚き、取り繕うように殆ど早口で言葉を言っていく。いつも優しい笑顔で答えるが、慌てる姿は珍しく、そして可愛らしくてくすりと笑ってしまう。 「…考え事でもしてたのか?」 こほんっと咳払いをし、いつものペースに戻ったアグネスが口を開き訊ねる。 聞かれて、アリアは笑うのを止め、先程よりも暗くなった。 「夢を見たんです…。私が居て、女の人に男の人が2人一緒にいて楽しく話しをしてる夢を」 ふぅっと息を吐き、アグネスが口を開こうとした直前、アリアが暗い口調で続ける。 「顔は覚えてません…」 心を読み取ったかのように呟く。 「そうか…。 だけど、その人達と再開すれば記憶もすぐに戻るだろう」 「でも、そしたらアグネスさんは…?」 「なに。自分の家に戻って隠居生活でもするさ」 まだまだ若い筈なのに何故だか隠居という言葉がピッタリな気がした。 心の中で苦笑しつつ表情には出さないように心がけつつ話を続けた。 「記憶が戻っても絶対に会いに行きますから!」 ガタンっとイスから勢い良く立ち上がりながら言ったが、すぐにアグネスのチョップでイスに沈んだ。 ウルウルと悲しみを伝える瞳は大きく少々の罪悪感を感じられずにはいらないものだが、彼女にはそんなものなど欠片も現れなかった。 そんな悲しみを表現するアリアを見ながら苦笑し、自分でも歯の浮く台詞だと思いながらもハッキリとした口調で答える。 「まだ旅は始まったばかりだろ…」 その言葉にハッとし、アリアが顔を上げた。その顔は悲しみに満ちていたもではなく、どこか希望という言葉が宿っているようにも感じられる。 「あんまり悲しいことを言うのは止めにしよう。 私達は今だけを考えてればいい。最後を考えてしまえば、いつも最後を考えて行動してしまう。別れは新たな出会いをもたらすもの。悲しいものと考えない方が良い」 「でも…!」 「今は今だけを考えよう。未来ばかり気にしていたら進むことなんてできなくなってしまうから」 あぁ。この人はなんて強い人なんでしょうか…。過去を乗り越えたばかりではなく、今を見つめる事と未来へと進むことの出来る強さを持ってる。 口元を綻ばせ、ゆったりとした声と言葉を掛けていくアグネスに尊敬の眼差しを向け、キラキラと光り輝く瞳がたった一人を見つめる。その瞳に何故だか悪寒を感じ、素早く立ち上がる。 「身支度をしてくる。アリアも早く荷物をまとめて次の街に行く用意をした方がいい。 ウィディッドシティまで行こうと思う。途中村が幾つかあるけど、全て通り過ぎ、夜までにはウィディッドシティまで着こう」 「…はい」 何故だか怖いぐらい恐ろしい感覚から逃げ出したく、急いで言葉を並べ、彼女が頷いた直後、その場所から逃げ出すようにアグネスは自らに割り当てられた部屋へと戻っていった。 そして、なにもしらないアリアは暫くきょとんっとしていたが、用意をしなければと席を立ち、割り当てられた一つの部屋へと戻っていった。 この時期はあまり人が通らない表街道。人が通らない理由は簡単だった。こちらからカルマートへと移動する人がいないためだ。それに、ラルディーク王国の、特にディルス公国やカルマート寄りに近付く人間は限られているからだ。 そんな表街道でアグネスは好意とは呼べぬ気配を幾つか感じ取っていた。こんな田舎の街道を狩り場に選ぶ者も少ないだろうと踏んでいたが、結構いるようだった。 同じく彼等の気配を掴んでいるだろうであるアリアに耳打ちするぐらいの小さな声で訊ねた。 「逃げ切れるか?」 彼女の実力は知らない。記憶を失う前は強かったとしても今はどうだかは不明。ならば、戦うよりも逃げの道を選んだ方が得策だろう。 こくり。彼女が頷くのを確認してアグネスはアリアを手を掴み走り出す。 同時に気配が動き追ってくるのを感じた。 そして、アグネスの考えに誤算が生じた。前にも同じような気配を持つ者が5人ぐらい現れたからだ。 「止まりな。そこの2人」 ハッキリ言って挟み撃ち。街道の横は森で、逃げるのは困難だろうと考え、先導していたアグネスはゆっくりと足を止めた。 「そう良い心掛けだ」 誤算だった。戦士や剣士を見れば襲ってこない筈だが、逃げたことでそんなに強くはないという風に相手に見られてしまったらしい。 暫くして2人を追いかけたいた追いはぎが追い付き、リーダーと思しき男が近付きながらありきたりな台詞をはく。 「金目のものを出せば命だけは助けてやろう」 「茶番に付き合っている暇はない。さっさと退け」 「なに?」 余程アグネスの言葉が信じられないという風に眉を跳ね、部下にアイツはなんと言った?と確認を取る。 「さっさと退けと言ったんだ。耳が余程悪いんだな」 「ア、アグネスさん…!」 なに言ってるんですか!とばかりにアグネスに食い掛かる。が、それすら気にしない様子で腰に下げていたロングソード並みの剣を鞘から抜いた。 彼女特有のなんとも言えぬ殺気が取り巻き、追いはぎ達が気配に圧されて一歩後退する。 「ふ、ふん。こけおどしなんて気かねーぞ! いくぞ、お前達ッ!!」 おうっ! 一斉に声を上げ、双方から迫ってくる。卑怯だと言えるが、この状況に追い込んだアグネスは怖い笑みを浮かべ剣を構えた。 「アリア、少しだけ我慢していろ。すぐに倒す」 確認も取らないまま前に向って走る。 その後ろをアリアが心細かったのか追いかけてくる。 アリアをあまり気に留めないようにし、アグネスは剣をふりはじめた。 最初に斬りかかってきた追いはぎの鈍い斬撃を避け、横から腹部を狙うように斬りかかり、一人。 卑怯にも背後に回り大剣を振り下ろす斬撃を横に飛ぶことで髪の毛を一房斬られることだけで済む。だが、髪は女の命というが、アグネスもその言葉に共感があったらしく、猛威を振るうように2撃食らわし相手を地面に叩き付けた。 「弱いな」 くすり、と笑うと怒り狂ったのか、後ろから不意を付いて2人の追いはぎが剣を振るった。それを軽いステップで避け、次の瞬間、恐怖のともいうべき悪寒を感じ取った。ふと、目だけで後ろを見ると、不敵な笑みを浮かべ今から剣を振り下げようとしている追いはぎの1人が目に入った。 ヤバイ…! 体を反転させて避けようと思ったが、冷静な思考に対し体はついてこない。斬られる、と固く目を瞑る。 どぎゃっ! 派手な音が響き渡るが、アグネスは痛みを感じることがなかった。恐る恐る片目だけを開けると追いはぎを蹴り飛ばしているアリアの姿が目に入り、唖然とした。 「大丈夫ですか!? アグネスさん」 見事な着地後、叫ぶような声でアグネスを心配するが、彼女は別の意味で旅立ちはじめてた。 「あ、あぁ…」 武器を持っている相手に女の子が素手で挑むか…? 普通…。 まるで硬化してしまったような脳でたった一言の言葉を組み立てるまで数秒という時間が掛かる。 「聞きたいんだが、素手で戦うのか…?」 「はい!」 「記憶が戻ったのか…?」 「全然…。気が付いたら追いはぎさんに拳を叩き込んでいました…」 記憶よりも体が自分の行動を覚えているというところなんだろう…。 やっと柔軟性が出てきた頭は簡単に結論を出してくれた。 「じゃあ…って、あれ? もう逃げたしたのか??」 再び剣を構え、相手を睨み付けようとしたが、追いはぎ達はもう姿を消していた。 なんとも不満そうな顔で剣を鞘に納めつつ、 「先に進むか…」 こくり。頷くアリアを見てから再び歩き出したが、どうやら今日中までにはウィディッド・シティには着けないようだった。 「はっ!」 一人の少女が引いていた弓を離し、矢を飛ばした。一般には飛び道具として思われ、卑怯な道具の一種とか、矢が無くなれば不利だ。という理由であまり使う人は少ないが、少女は魔族と戦うための武器として用いていた。 ぎゃぁぁぁ。という悲鳴と共に少女の目の前にいたデーモンは塵へと消えた。 魔力のない武器ではデーモンは倒すことが出来ないのは周知の事実。彼女が易々と倒せる理由は、その矢の一本一本に簡易な魔法が施され魔力が篭った代物へと強化されているのだった。 「しつこいですわねぇ」 吐き捨てるように呟き、背中に掛けられている矢筒から素早く一本の矢を取り、番えすぐに放つ。 その矢は、一匹のデーモンを貫通しその後ろにいたデーモンすら易々と貫いた。2匹は塵と化して宙をさ迷うこととなったが、仲間意識など持たぬデーモン達は何事もなかったかのように一歩一歩女性へと足を進める。 お得意の炎の矢(フレアー・アロー)は何度も飛んできそうになったが、少女に当たる前に味方である筈のデーモンに当たり、直接ダメージを受けることはなかったから注意力は多少削がれている。 「本当にしつこいですわ! それにしても私としたことが抜かりましたわっ! こんなところに迷子の迷子のデーモンがいるなんて…。しかも、矢の予備はなくてただでさえ危機だったというのに…今日は厄日ですの!?」 文句を言う余裕は少なくともまだあった。危機だというのにも関わらず冷静に判断を下し、指を離した。 この程度の相手ならば逃げるという選択肢も通用するだろうが、逃げる行為は女性の美学に反するらしく、機会があっても留まり続けた。 「こうなったら… … …」 人の言葉では発音すら難しい声が女性の口から漏れる。同時に右腕に付けられていたブレスレットの形が変りガントレットへと変化した。 矢筒から矢は抜かずに弦を引きデーモンへ狙いを定めた。だけど、矢がセットされていないのだから手を離すことは出来ない。 「光よ! 我が元に集い矢となせっ!」 ガントレットから光が伸び矢の形を取った。 すぐさま手を離して、弦を引く。 何度も何度もやるうちに数は大分減り、一息つけるほど落ち着ける余裕すら出来るようになった。 が。がさがさ、と草をかき分ける音が後方から聞こえ、少女は意識を集中させた。 またデーモンですの!? 一瞬でも油断をしていた自分を叱咤し後方と前方を避けるように横へと横へと逃げはじめる。 「はぁっっ!」 「烈閃槍(エルメキア・ランス)!」 同時に光の矢が槍がデーモンを貫いた。 どうやらデーモンのお仲間というわけではないようだ。 「誰だか知らないけど、助けてあげるわよ」 「金を請求される前に逃げた方がいいぞ?」 「ちょっと、どういう意味よ!? ガウリイ!」 足を引っ張りに来たのか、邪魔をしに来たのか、助けに来たのか。よく分からない連中が草をかき分けて少女とデーモンの戦いの中にとりあえずは参戦した。 栗色の髪の少女に金髪の髪の男性が。 「助けなんて無用ですわ。私はこんなデーモンごときにやられるほど弱くはありませんものっ! 光よッ!」 現れし光の矢に驚きの色を隠す事が出来ない少女と青年。いや、リナとガウリイ。 少し警戒の表情を浮かべたが、このデーモンを倒す方が先だろうと考え、光の矢を掴んでいる指を離した。 放たれた矢は加速し、デーモン貫き後ろにいたデーモンにぐさりと刺さって消え去った。 「光の弓ッ!?」 リナがそう驚いたのと同時に遠くからの光が最後のデーモンの一匹を貫き、戦いは終結した。 「…私はルナ。ルナティック=シャドゥール。エルフの射手ですわ」 むすーっとした顔でルナはそれだけ言った。 当たり前だ。誰だって目の前で魔法を用意されて「名前を白状しろ」などと言われたら、大人しく言うしかないだろう。 「オーケー。あたしは、リナ。こいつはガウリイ。で、あっちの白づくめはゼルガディスよ」 最後のデーモンを倒した光は、ゼルガディスの烈閃槍(エルメキア・ランス)だった。 「そう。分かったわ。 自己紹介するのは当たり前だということはわかっていますわ。でも、誰も私のインシビルムーンを見てもいいなんて許可はしてませんわよ!?」 まじまじとルナの弓を見ていたリナの手から少々乱暴に取り返した。 「ちょっとッ! そんなに力一杯取り返すことないじゃないのよ!」 「リナが勝手に取るからこんなことになるんだろう?」 腕がか細いにも関わらず、ルナの力は異常に強く抵抗虚しくもすぐに取り返されてしまった。 「こんなところでなにをしている? 街道からも外れた場所で」 「私は…元カルマートの王城へと向うつもりでしたわ。でも、この辺りは自然が多く、いつのまにか迷ってしまったようで」 「あの廃虚にか?」 「はい。私はフィン=アグネスという人を探さなくてはいけないんですわ」 「フィン!? 貴方、フィンを知ってるの??」 思いがけない反応にルナが驚き後ずさる。 「貴方、フィン=アグネスの仲間…?」 「まっさかぁ。私達はフィンに命を狙われてる…かもね」 「そう。倒すなら協力してあげますわ。私の目的も彼女の死ですもの」 沈黙の…鳥の囀りと森のざわめきが支配する。 そして、いくらか時間が経ってリナは口を開いた。 「協力してもらうわ」 右手を出し、ルナも「宜しくですわ」と握手を交わした。 「リナ、あんまりそいつに近付かない方がいい」 珍しく真剣味を帯びたガウリイの言葉にリナの頭の上にはクエッションマークが現われる。 「言わない方が良いと思ってたが、近付かない方がいい」 それだけルナに聞こえない様に言い、口を閉じた。 ▽▲ 「やーっと出ましたわね!」 名前長いよね。 さて、次は・・・・ 「少しぐらい自己紹介させてぷりーず・・・」 正念場、もう少しでこれも終わっちゃいます! 頑張るので応援よろしくです。 では! 「え、もうお終いですの!? 私なにも喋って───」 (音声遮断される) |