◆−片割れ月 (四) 式神ゼルガディス・2−amy (2002/11/10 02:19:10) No.11233
 ┣Re:片割れ月 (四) 式神ゼルガディス・2−空無 架虚 (2002/11/11 20:49:00) No.11280
 ┃┗お久しぶりですー!!−amy (2002/11/17 00:10:37) No.11430
 ┗片割れ月 (五) 式神ゼルガディス・3−amy (2002/11/17 00:54:23) No.11431
  ┗片割れ月 (六) ケルピー・1−amy (2002/11/19 17:58:49) No.11496
   ┗Re:片割れ月 (六) ケルピー・1−空無 架虚 (2002/11/20 21:27:36) NEW No.11540


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11233片割れ月 (四) 式神ゼルガディス・2amy E-mail 2002/11/10 02:19:10




  何だか前のツリーが落ちてしまいそうだったので、
   新たにツリーを作ってみました。

  この新ツリーのせいで下のツリーが落ちたらどうしましょう?(苦笑)

  神無月桃香さん、
 もしも前のツリーが落ちていたら前のツリーにレス、
   そちらの方に書いておきましたので、どうぞご覧下さいませ。


  ではでは、続きのレゾゼルでございます。

   舞台は現代、テーマは陰陽術と妖怪(爆笑)

     下の注意を読んでからどうぞ♪


  〜注意〜

    これはシリアスレゾゼルです。
       そういった物が苦手な方はご遠慮下さい。
      この注意を無視されて気分を害されても、
    私は一切責任を持ちません。
      非難・中傷メールは送らないで下さい。



==================================



 レゾの投げた符が四方に強い光をバラ撒く。
 それは大きく震えて空に溶け、少しずつ人間の形を形成して行った。
 その様をひどく嬉しそうに眺めるレゾ。
 アメリアも鬼も、思わずその形成される『何か』を凝視した。
 それはやがて人間の青年の形を取り、段々鮮明になって行く。
 バランスの取れた長身。
 中世的で整った顔。
 しゃらしゃらと風に揺られて鳴る髪は銀の糸。
 肌は青黒い岩で出来ていて、、、、、
「式?」
 呟くアメリアに、レゾは微笑みながら首を振った。
「いいえ、『式神』ですよ」
 レゾのその言葉に、アメリアはひどくぎょっとした顔をした。
 そんなアメリアを無視して、レゾは先程『ゼルガディス』と呼んだその式
神に告げる。
「ゼルガディス、鬼を倒しなさい」
 言葉通り、その式神は動いた。
 腰にさしていた剣を抜き、何事かつぶやいて刀身を赤く輝かせる。
 その剣を構えて、一直線の鬼へと突っ込んで行った。
 鬼はすぐに我に帰り、巨大な爪を振り上げる。
 しかし式神は気にすることもなく、大きく一歩を踏み出した。
 ひゅんっっ!
 がきいいいっっ!
 勢い良く下ろされたその爪を、赤く仄かに光る刀身で受け止め、式神はそ
のまま刃を滑らせる。
 たったそれだけのことで、鬼の爪は真横に切れ落ちた。
「抵抗などしない方が楽だぞ、鬼」
 てっきり自由意志がないのだと思っていた式神が喋ったことにアメリアは
驚き、慌ててレゾを見遣った。
 レゾは涼しい顔をして式神の動きを感覚で追っている。
 鬼は式神の言葉に逆上したらしく、今度は大口を限界まで開いて鋭い牙を
覗かせた。
 そのまま式神に突進して食らい付こうとするが、いかんせん、式神の方が
動きが何倍も早かった。
 横に飛ぶようにして鬼の牙を避け、式神は構え直した剣を時計回りに勢い
良く薙ぐ。
 それは丁度式神の横に首を突っ込んでいた鬼の咽を捕らえ、抵抗も無くそ
の中へ埋まった。
 ざどんっ!
 音を立てて鬼の巨大な首が飛び、大地に落ちる前にざらりと消える。
 しばし首を無くしたことに気付かないかのごとく、残った体がびくんびく
んと震えていたが、すぐに倒れてやはりこれもざらりと砂のように崩れて消
えた。
 それらを全て確認した後、ふうっと式神は息をつき、剣を腰の鞘に戻す。
 あっさりと倒れた鬼、そしてそれを成し遂げた式神に驚いて、アメリアは
目をぱちくりとさせたまま交互に式神とレゾを見た。
「よくやりましたね、ゼルガディス。上出来です」
 アメリアの視線を気にも止めず、レゾは微笑みながら式神にそう声をかけ
た。
 主人に誉められた式神は、しかし嬉しそうな顔など一つもせずにスタスタ
とレゾの元へ歩いて来る。
 ちらりとアメリアを見た後、レゾに真正面から体を向けた。
「これでまた徳を一つ積みましたね、順調順調」
「何が順調だ、全く、あの程度の鬼に俺を使うな」
「そんな、あんまり強いのにお前を出すわけにはいかないでしょう?」
 主従の感じられないその会話に、アメリアがますますぎょっとした顔に
なった。
 通常ならば使役されている式神にとって主人は絶対だ。
 口答えなど何があってもすることなど絶対にないし、そもそもほとんどが
主人に操られているのであって、自由意志があるだけでも珍しい。
 しかもこれはヒトガタでありながら異形の者なのだ。
「俺は強いのと戦いたいんだよ、さっさと徳を積みたいからな」
「そう言って無理をして、再起不能になりかけたのはどこの誰です?」
「ぐっ、、、、、、」
 レゾの返しに言葉を無くし、式神は口を閉じた。
 悔しそうに唇を噛み、むすっとして主人を睨んでいる。
「ちょ、、、ちょっとレゾさん、これ、本当に式神ですか?」
「『これ』って言うな、そこの女の妖怪」
「そっちこそ『女の妖怪』なんて言わないでくれません?私の名前はアメリ
ア、座敷童です」
 不愉快そうにそう言うアメリアに溜息をついて、式神はまたレゾに視線を
戻した。
 無視された形になったアメリアは不満そうにむーっと頬を膨らませるが、
式神は気にすることもない。
「何なんですか、貴方は?!人間に使役されてる程度の妖怪のくせに!」
「期待を裏切って悪いがな、座敷童。俺は妖怪じゃない」
 『妖怪』という単語にひどく反発し、式神はアメリアを背筋も氷りそうな
程の瞳で睨んだ。
 びくり、とアメリアが体を震わせて一歩後ずさる。
 頬を冷や汗が流れた。
「まあまあ、落ち着いて。私から説明しますよ」
 緊張感の漂うそこに横から割って入ったのはレゾだった。







  続く

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11280Re:片割れ月 (四) 式神ゼルガディス・2空無 架虚 2002/11/11 20:49:00
記事番号11233へのコメント

 はー・・・お久しぶりです・・・

>「これでまた徳を一つ積みましたね、順調順調」
>「何が順調だ、全く、あの程度の鬼に俺を使うな」
>「そんな、あんまり強いのにお前を出すわけにはいかないでしょう?」
> 主従の感じられないその会話に、アメリアがますますぎょっとした顔に
>なった。

アメちゃん座敷童ですかvかわええ

>「ちょ、、、ちょっとレゾさん、これ、本当に式神ですか?」
>「『これ』って言うな、そこの女の妖怪」
>「そっちこそ『女の妖怪』なんて言わないでくれません?私の名前はアメリ
>ア、座敷童です」
> 不愉快そうにそう言うアメリアに溜息をついて、式神はまたレゾに視線を
>戻した。
> 無視された形になったアメリアは不満そうにむーっと頬を膨らませるが、
>式神は気にすることもない。

なにかを思い出しますねぇ・・・

>「何なんですか、貴方は?!人間に使役されてる程度の妖怪のくせに!」
>「期待を裏切って悪いがな、座敷童。俺は妖怪じゃない」
> 『妖怪』という単語にひどく反発し、式神はアメリアを背筋も氷りそうな
>程の瞳で睨んだ。
> びくり、とアメリアが体を震わせて一歩後ずさる。
> 頬を冷や汗が流れた。

ゼルやんかっこいいっす!!

はう・・・(恍惚)・・・楽しみにしてます!がんばってくださいね!

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11430お久しぶりですー!!amy E-mail 2002/11/17 00:10:37
記事番号11280へのコメント

> はー・・・お久しぶりです・・・
  こちらこそお久しぶりです!
   レス、遅くなってしまってすみません(><;)
  早速レス、書きますね!



>アメちゃん座敷童ですかvかわええ
  アメリアなら座敷童の容姿にぴったりだと思いまして(笑)




>>「何なんですか、貴方は?!人間に使役されてる程度の妖怪のくせに!」
>>「期待を裏切って悪いがな、座敷童。俺は妖怪じゃない」
>> 『妖怪』という単語にひどく反発し、式神はアメリアを背筋も氷りそうな
>>程の瞳で睨んだ。
>> びくり、とアメリアが体を震わせて一歩後ずさる。
>> 頬を冷や汗が流れた。
>
>ゼルやんかっこいいっす!!
  私、ゼルファンですから!(笑)
     妖怪じゃないのに妖怪ビビらす程怖い睨みです(笑)



>はう・・・(恍惚)・・・楽しみにしてます!がんばってくださいね!
  ありがとうございます!!
   続き書くの、毎度毎度遅くってすみません!
  これから頑張りますから!



   短くて大変申し訳ありませんが、これにて。



    ではでは


     amyより



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11431片割れ月 (五) 式神ゼルガディス・3amy E-mail 2002/11/17 00:54:23
記事番号11233へのコメント





「まあ、早い話がですね、彼は『作られた』式神なんです」
 そっぽを向くゼルガディスと怯えるアメリアの真ん中に立って、レゾは平
然とそう言った。
「『作られた』?」
 強いゼルガディスの眼光から逃れたアメリアがやっと体の緊張を解き、お
うむ返しにつぶやく。
 レゾはその通りだと言うかのように頷いて見せた。
「彼は元々人間でしてね、一度死んでるんですよ」



 式神とは陰陽術士の使役する戦闘能力の高い(または特殊能力のある)使
い魔である。
 大抵は術者の命令のみを聞く自由意志のない獣使いの獣のような存在では
あるが、稀に自由意志を持って働く式神もいる。
 そういった式神は術者と主従の関係にあり、常に術者を保護しているの
だ。
 というのも術者の『気』を糧としてのみ生きることの出来る式神は、術者
が死んでしまうと外に出ることが出来なくなり、術者が死んだ状態で無理に
外へ出ればその式神も消滅してしまう運命にあるのである。
 術者が死亡した後、式神が寄り代とする物を新しい術者が手に入れて式神
を使役すればまた式神は外に出られるが、やはりまた新たなその術者を守ら
ねばならない。
 式神はかつて術者に倒された妖怪や獣である場合が多く、使役されるのは
その生物にとってとてつもない屈辱ではあるが背に腹は変えられないのだ。
 しかし、ゼルガディスは違っていた。
 式神である以上、レゾの『気』以外何も糧とすることが出来ないにも関わ
らず、レゾとの主従関係はない。
 レゾを守ろうと自ら外に出ることはせず、式のように符を使って召喚して
いた。
 式というのは符や術者の影などを介して霊獣やヒトガタ(人間の形をした
使い魔)を召喚されるものである。
 式は式神と違ってそれほど強力な力は持ち合わせていない。
 故に術者が『気』を込めるのをやめると元の符や影に戻ってしまうものを
総称していた。
 式神を巻き物や影ならともかく、符から召喚するなんて聞いたこともなか
ったアメリアは、あまりの矛盾に眉を寄せた。
 式神を『作る』技術があることは知っている。
 倒した妖怪や獣を式神にすることではなく、一から作り出したり、他の式
などとかけ合わせて新たな式神を作る技術。
 妖怪である自分からすれば考えもつかないそれだが、手間はかかっても陰
陽術士にとってはそう難しいことでもない。
 それは分かる、ゼルガディスはそうやって『作られた』式神であって、先
程彼本人が言ったように妖怪ではないのだろう。
 それでもやはり、おかしかった。
 例え『作られた』式神とて術者を守るのは絶対条件。
 しかも符で召喚することはしないはずだ。
 さらに言うならば先程のレゾの言葉『彼は元々人間だったんでしてね』。
 これが一番の問題だった。
 人間を式神にすることは禁じられている。
 そしてその技は陰陽術士の間でも最大の禁忌として封印されていると大昔
に聞いた。
 それが何故?
 大体、元が人間でいくら『作られた』からと言っても、ここまで姿形が異
形じみて来るものなのか。
 沈黙するアメリアの思考を読んだかのように、レゾは小さく苦笑した。

「ゼルガディス、、、、フルネームはゼルガディス=グレイワーズ。
   彼は私の実の息子なんですよ。共に陰陽術を学びましてね。
  ある日、スコットランドの方で日本で言う妖怪を相手にしていた時、
  私の不注意で彼を死なせてしまったんです、酷い有り様でした、、、」

 苦笑しつつもレゾは、そう語り始めた。





   続く(ーー;)


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11496片割れ月 (六) ケルピー・1amy E-mail 2002/11/19 17:58:49
記事番号11431へのコメント




「では説明を始める前に、、、、ゼルガディス」
 そっぽを向いていた式神ゼルガディスが、レゾのその呼び声に振り向い
た。
 手の平を上にして右手をあげるレゾに小さく溜息を付く。
「そのままでは辛いでしょう?早く戻りなさい」
「分かっている」
 気遣うように囁くレゾにそっけなく返して、ゼルガディスは差し出された
レゾの手に自分の手を乗せた。
 レゾが小さく何事か呟くと、ゼルガディスの姿は風が霧を吹き消すかのよ
うに消えて行く。
「、、、、彼は?」
「私の体の中です」
 すらりと答えるレゾに、アメリアはますます眉間にしわを寄せた。
「随分と思いきったことをしたんですね。
   波長が合わなければ式神どころか貴方の体さえ崩壊してしまうのに」
「波長が合わない可能性の方が低いものでしたから、親子ですし」
 微笑みながら言ってのけるレゾに、アメリアは『信じられない』とでも言
いたげに首を左右へ振った。
「可能性が低くても、人間は自身に危険が及ぶのを嫌うはずでしょう?」
「時と場合にもよりますよ」
 小さく呟いて、レゾはいつの間にか地面に落ちていた符を拾い上げた。
 軽く埃を払った後、それを自分の懐に仕舞う。
「ですがまあ、これで分かったでしょう?
  何でゼルガディスを符で呼び出したのかが」
「ええ、人間の中から式神を素早く出すなんて不可能ですからね、
     符という媒介を通すことで手間を短縮したんでしょう?」
「まさにその通り」
 満足そうにレゾは頷いて、持っていた錫杖や札を車の中へ投げ入れた。
 次いでアメリアを助手席に勧め、レゾ自身は運転席へと滑り込む。
 エンジンをかけることもせず、レゾはドアのキーだけかけた。
「さて、まずは、、、、ケルピーという妖怪をご存知ですか?」





 ケルピー。
 スコットランドの水棲馬のうちで最もよく知られていて、湖水や海よりも
むしろ川によく出没する。
 人間の姿に変わることも出来、その際には粗野で毛むくじゃらの男となっ
て現れるが、普段は若馬の姿をとるのが常である。
 スコットランドのどの湖もそのケルピーつまり水馬を持っている。
 夏の夕方、ケルピーが岩のてっぺんに座ったり、水面を泳いだり、岸の牧
草地で草を食べたりするのを、羊飼いがちょいちょい見ているという話しも
ある。
 この水の精はたびたび女性や子供を誘って水中の住みかに引きずり込み、
すぐに食べてしまう。
 また川や湖の水かさを増して洪水を起こし、普段なら安全な場所を歩いて
いる旅人を水の中に沈ませることもある。
 他にも伝承に残っているのは、若馬の姿をとるケルピーの馬具を外して人
間の作った馬具に取り替えると、そのケルピーは人間に逆らえなくなってし
まうことなど。
 レゾとゼルガディスがやって来たその湖には、やはり普通の人間の目に写
ることのないケルピーがいた。
 丁度若馬の姿を取っていたそれはとても細く、ボロボロの姿をしていた。
 若馬にしかならないのにも関わらず、それはまるで老馬のようで。
 そっと近付いたそのケルピーからは途切れることのない怒りが迸ってい
た。
 あまりの怒りと恨みにも似たそれに足を止めた二人は、初めてそれが普通
のケルピーではないことに気付いた。
 そのケルピーはすでに人間で言う所『死んでいた』のだ。
 妖怪が死ぬことはあまりない。
 にも関わらず何故こんなにもボロボロのまま死に、化けて出ているのか。
 ケルピーは恨みの篭ったよどんだ瞳で言った。
『人間は我々の馬具を取り替え、普通の馬にないその力を利用して城や塀を
立て、力尽きた仲間達を次々に消して行った』
 使える時だけ使い、駄目になったらゴミのようにポイッと捨てる。
 散々に扱われ結果的に殺されたケルピーは、人間に強い怒りを感じていた
のだ。
 レゾやゼルガディスがこの湖に訪れたのもそれが原因である。
 最近、いつもは静かな湖が荒れて、もう子供が5人も湖で行方不明になっ
ていた。
「一体何年前の人間のことを言っているのか知らんがな、ケルピー」
 妖怪が復活するのに大きな時差があることを知っていたゼルガディスは、
酷く冷静に時間のことを指摘した。
 無論、ほぼ永遠の時を生きる妖怪達にその違いが分かるはずもない。
「お前等を苦しめた人間達はもうとうの昔に死んでいる」
 いくら子供を食い殺したって、復讐にはならん。と呟くゼルガディスに、
ケルピーは持ち前の馬の俊足で襲いかかったのだった。






続く

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11540Re:片割れ月 (六) ケルピー・1空無 架虚 2002/11/20 21:27:36
記事番号11496へのコメント


こりずにまた書きます。

>「では説明を始める前に、、、、ゼルガディス」
> そっぽを向いていた式神ゼルガディスが、レゾのその呼び声に振り向い
>た。
> 手の平を上にして右手をあげるレゾに小さく溜息を付く。
>「そのままでは辛いでしょう?早く戻りなさい」
>「分かっている」
> 気遣うように囁くレゾにそっけなく返して、ゼルガディスは差し出された
>レゾの手に自分の手を乗せた。

    ゼル可愛い!!萌えぇぇぇ!!!!!!

>   波長が合わなければ式神どころか貴方の体さえ崩壊してしまうのに」
>「波長が合わない可能性の方が低いものでしたから、親子ですし」

親子じゃなくて恋人って言いたいんじゃないの〜?レゾさぁん・・・
 大爆発。
「あぐお!!!」

失礼しました。