◆−特別の意味 〜千年越しの賭・番外−エモーション (2002/11/12 23:24:08) No.11303 ┗特別の意味 1 訪問者−エモーション (2002/11/12 23:39:08) No.11304 ┣Re:特別の意味 1 訪問者−D・S・ハイドラント (2002/11/13 16:09:20) No.11322 ┃┗私にしては、確かに珍しいです。−エモーション (2002/11/13 21:01:53) No.11332 ┣特別の意味 2 特別と言う言葉−エモーション (2002/11/15 23:14:50) No.11396 ┃┗Re:特別の意味 2 特別と言う言葉−D・S・ハイドラント (2002/11/16 13:30:40) No.11415 ┃ ┗Re:特別の意味 2 特別と言う言葉−エモーション (2002/11/17 23:27:33) No.11458 ┃ ┗二重投稿のこと−一坪 (2002/11/18 23:01:12) No.11477 ┃ ┗Re:二重投稿のこと−エモーション (2002/11/19 00:14:07) No.11481 ┣特別の意味 3 君の味方−エモーション (2002/11/19 00:07:09) No.11479 ┃┗Re:特別の意味 3 君の味方−D・S・ハイドラント (2002/11/19 17:22:43) No.11491 ┃ ┗Re:特別の意味 3 君の味方−エモーション (2002/11/19 21:49:05) No.11509 ┣特別の意味 4 そして、特別の意味−エモーション (2002/11/21 22:23:56) NEW No.11575 ┣エピローグ 永遠の風景−エモーション (2002/11/21 22:48:41) NEW No.11576 ┃┗Re:エピローグ 永遠の風景−D・S・ハイドラント (2002/11/22 12:56:42) NEW No.11582 ┃ ┗Re:エピローグ 永遠の風景−エモーション (2002/11/22 21:58:08) NEW No.11604 ┗後書きの雑談−エモーション (2002/11/21 22:55:29) NEW No.11577
11303 | 特別の意味 〜千年越しの賭・番外 | エモーション E-mail | 2002/11/12 23:24:08 |
こんばんは。 この話は、「千年越しの賭」の番外……といいますか、後日談です。 とりあえず全4話くらいで終わります。(今、エピローグを書いてるので) はっきり言ってオリキャラしかでてきません。 せいぜいゼロスが、回想や話題で出てくるくらいでしょうか。 ですから、 1.あなたの作品、はじめて読みました。 2.書いていたのは知っているけれど、あんな長いの読んでない。 と言う方には、多分、何が何だか分かりません。ついでに言えば、 3.読んだけれど、もう内容忘れた。 と言う方もいるのでは……。 ……できれば、「千年越しの賭」をUPしている間、もしくはツリーが沈む前に UPしたかったのですが……。 以上の条件に当てはまる方で、「読んでみます」と言う親切な方は、 1.前回の話(「千年越しの賭」)は女神像とやらが出てくるお話だった。 2.ティア(ヒュパティア)は前回の話で、結構それなりの役まわりだった。 3.その女神像のおかげで、ティアが住む町は、何だかとんでもないことになった。 4.フィリシアというキャラ(巫女)が、その女神像を封印した。 5.しかし、根気と時間のかかる封印なので、住人の行動次第では、封印は失敗する。 6.理由は不明だが、フィリシアはゼロスと一緒に旅をしている。 7.この話は、降魔戦争が起きる直前くらいの時代を舞台にしている。 「千年越しの賭」は著者別に入っていますが……以上のこの7つだけ、覚えていただければ、 多分、なんとなく分かると思います。 それでは、はじめさせていただきます。 |
11304 | 特別の意味 1 訪問者 | エモーション E-mail | 2002/11/12 23:39:08 |
記事番号11303へのコメント 「特別の意味」 千年越しの賭・番外 1.訪問者 ため息をついて、ティアはペンを置いた。あの女神像の件から3ヶ月。 もう半月もすれば新年になる。はっきりと言えば、問題が起きてくるのは これからなのだが、ひとまず町も神殿の内部も落ち着いてきた。 そこで、ティアは今回の件を記憶が風化する前に記録しようと、当時の自分の記憶や 長老などから聞いた話を書き纏めたのだが、どうも上手く進まない。 原因は──「黒衣の神官」、ゼロスだ。 長老をはじめとする、他の人々から得たティアの知らないゼロスの言動を まとめて見ていくうちに、ティア自身の視点でも、かすかに不思議に感じていた事が、 不審に変わってきたからだ。 はっきりとした理由のない不信感に、ティア自身、戸惑っていた。 そんなある日、ティアは神官長から呼び出しを受けた。 他の神殿から招かれる形でこの神殿へやって来た神官長は、女神像の力ではなく、 本来の、正規の手順で神官になったティアに目をかけ、一定の信頼を置いてくれるが、 他の者に対する配慮もあって特別扱いはせず、むしろ、少々厳しい。 もっとも、そのくらいでなくては、他人をただ妬むだけの者に煩く言われ、 足を引っ張られるばかりだと分かっているので、ティアに不満はない。 それでも急な呼び出しに、ティアは、自分は何か問題を起こしたのだろうかと、 あれこれ考えながら神官長室のドアをノックした。 応答の声に入室すると、室内には神官長の他に、黒髪に青い瞳をした青年 ──おそらく、騎士だろう──がいた。 「来たわね、ティア。 ティア、こちらはレージュ大神殿にお仕えしている騎士のダグラス様。 ダグラス様、この者が先程お話しました、ヒュパティア=バーンズです」 神官長の言葉に合わせて、ティアはダグラスに一礼する。レージュ大神殿 と言えば、赤の竜神スィーフィードを祀る神殿の中でも、中心的な役割を持つ 権威ある神殿だ。その神殿に使えているのであれば、彼は所謂「聖騎士」と 呼ばれる者なのだろう。 間違っても無礼があってはならない相手がいる場所へ、何故自分が呼ばれたのか 分からず、ティアはひたすら困惑していた。 「ティア、ダグラス様は先程こちらへ見えたのですが、御用をお伺いしたところ、 あなたが応対するのが適任のようです。用件をお聞きして差し上げて。失礼の ないようにね。 ダグラス様、私はこれで失礼いたします。終わりましたら、隣におりますので 声をおかけ下さい。では」 「あ、あの、神官長様……」 ますます混乱したティアに、神官長はふっくらとした微笑みで言う。 「ティア、私がこの場を離れるのは、どうやら内密のお話のようだからです。 あなたはただ、質問に答えて差し上げれば、それでいいのですよ。 あなたの分の香茶も用意させてありますから、まず、それで気を落ち着けなさい。 頼みましたよ」 そう言われては、ティアの方も神官長を引き留めるわけにいかず、部屋を 出る姿を見送るしかなかった。 とりあえず香茶を2人分入れたティアに、ダグラスは表情を和らげて言う。 「どうも……驚かせてしまったようです。それほど気を遣われなくても構わないのですが」 笑うと、とても親しみやすい顔になるダグラスに、ティアは半分ほっとする。 しかし、気を抜くわけにはいかない。 「ですが、聖騎士である方が、私にどのような御用がおありなのでしょうか」 ティアの問いに、ダグラスは一瞬、目を丸くし、次いで小さく笑った。何が 可笑しいのか分からないティアに、ダグラスは笑いをおさめる。 「ああ、失礼。私は、騎士叙勲を受けてはいますが、聖騎士ではありません。 レージュ大神殿の騎士、と言えば聖騎士が有名ですから、勘違いされやすいのですが、 『聖騎士』と呼ばれるのは、ほんの一握りの者だけで、大半は普通の騎士です。 ですから、気を楽になさってください」 例え聖騎士でなくても相手が騎士では、気楽にと言うわけにはいかないのだが、 すんなりとそう言うダグラスに、ティアは好感を持った。 レージュ大神殿の騎士をしていて、聖騎士を目指さない者はいないだろう。 相手が勘違いしていれば訂正しても、心情としては不快に感じるのが普通だ。 しかし、ダグラスには全くそんな素振りが、内心はどうあれ、見られない。 ティアが恐縮しないように気を遣っているのだ。 「申し遅れました。私はダグラス=アッテンボローと言います。理由あって、 今は神殿にとどまらずに、旅をしています」 ダグラスの用件は、3ヶ月前の女神像の件についてだった。出来るだけ詳しく 説明しながらも、ティアは内心、何故自分が説明することになったのか、不思議で 仕方がなかった。 単純にレージュ大神殿の騎士にこの件を説明するのであれば、階級的に見て 神官長の方が失礼にならずに済むし、ティア以外知らない部分が必要なら、 神官長が主に説明し、ティアが補足するのが普通だろう。何より、これが神官長が わざわざ席を外すような「内密の話」とは、とても思えない。 多少警戒しながらもティアが話し終えると、ダグラスは少し何かを考えて いるようだった。無礼だと怒られるのを覚悟で、ティアは思い切ってダグラスに訊ねる。 「失礼ですが、何故、私に3ヶ月前の事を訊かれたのでしょうか?」 「……と、言われますと?」 ダグラスは考え事を中断して、ティアに聞き返す。別に不快に感じた様子は 見られない。 「今、私が申し上げたことは、この町の者であれば誰でも知っています。取り立てて、 神官としてはまだ駆け出しの私が申し上げる必要性も、何より神官長が席を外すほどの 『内密の用件』とも、思えません」 真っ直ぐな姿勢と瞳でそう言うティアに、ダグラスは正面からその視線を 受け止めて答えた。 「確かに、そのとおりです。私は、どうやらあなたを甘く見ていたらしい。 あなたがまだ15〜16歳で、神官としてはまだ駆け出しだとお聞きして いましたから、こんな形で急に呼び出せば、どんなにしっかりした娘でも、 緊張して普段なら口にしないことを、口に出してしまうだろうと。 それなら特にこちらの事情を話さなくても、私の知りたい事がすんなり分かるだろうと、 そう思っていましたから。 ですが、それは間違っていました。よく考えれば、あの方が信頼した方なのですから、 そんなはずは無いのに。 二重三重に、あなたに対して失礼なことをしてしまいました。申し訳ない」 そうダグラスは頭を下げると、言葉を続けた。 「実は、私が一番お訪ねしたかったのは、封印を行ったという『巫女』の事なんです」 「『純白の巫女』の事……ですか?」 「ええ。私は、ある方をお探ししていますが、その『純白の巫女』は、アザロ神官長から 伺ったお話や、町の者の話を聞いていますと、年齢や外見の特徴、立ち居振る舞い…… 聞けば聞くほど、よく似ています。 ですから、間違いはないと思いましたが、確認のために名前を知りたかったのです。 しかし、不思議なことにどなたもご存じではない。 ただ、アザロ神官長から、知っている者がいるとすれば、あなたぐらいだろうと 伺いました。正直、初めは半信半疑でしたが、お会いしてみて、私もアザロ神官長と 同意見です」 今度は、ダグラスが真っ直ぐにティアの目を見つめ返す。嘘や誤魔化しを する気になれない、曇りのない、強い瞳──。だから、ティアは何も言えなかった。 そして、沈黙を破る質問。 「ヒュパティアさん、『純白の巫女』は『フィリシア』という名前ではありませんか?」 ティアは目を閉じて、ゆっくりと頷いた。 「……はい。3年前はともかく、3ヶ月前は女神像の力のこともあって、 お名前を伏せられていましたが……。 もっとも、そうでなくても、お二人はあまり名前を出すのはお嫌なようでしたので、 誰にも言わないようにしていました」 女神像があるうちはともかく、「封印」を行ったあとであれば、別に名前 を出しても問題はなかったはずだが、ティアは人に聞かれても「知らない」 と誤魔化してきた。 2人が神殿に滞在している間、世話係も兼ねて一緒にいたので、2人がそれを 望んでいないと分かったからだ。 「そうでしたか……。 では、一緒にいた『黒衣の神官』は『ゼロス』という名前で間違いありませんね?」 「はい」 肯定するティアの声に、ダグラスは深い安堵ともため息ともつかない息をはいた。 どこか複雑そうな表情で。 「どうやら、ご無事でいるようで安心したのですが……。 それにしても3年も前から一緒だったんですか。フィリシア様とゼロスと いう神官は……」 つまりフィリシアが神殿を出奔して、たいして間を置かないうちに出会ったことになる。 どうりで、初めのうちは手がかりが見つからなかったはずだと、ダグラスは つくづく思った。 フィリシア1人の旅だとばかり思っていたので、当初は神官と巫女の2人連れなど、 全く気にもとめていなかったのだ。 しかし、そうと分かったら余計にダグラスは心配になってきていた。それが 顔に出ていたのか、ティアが怪訝な顔で訊ねてくる。 「どうかなさいましたか?」 「……あの、 町での流れている噂の事なんですが……」 町では「神官と巫女は夫婦もしくは恋人同士」という噂が定着している。 それを聞いたとき、ダグラスは本気でへたり込み、引いた手綱ごと愛馬に引きずられかけた。 さすがにダグラスも1年半程前から、フィリシアにゼロスと言う名の神官 が同行している事を知っていたし、男女2人の旅では誤解されやすいのも承知している。 実際、念のために話を聞いたところ、単なる憶測と判断できる程度だったので、 全く気にしないわけではないものの、あまり神経質に考えないようにしていた。 何より、フィリシアが神殿を飛び出した理由を知っているだけに、それは まずないだろうと思ったこともある。が、この町で聞いた噂は、そんな考えを 見事に粉砕した。これがフィリシア以外の人物の話なら、ダグラスも普通に 「権力を持ったバカに屈しず愛を貫いた夫婦、もしくは恋人同士の話」と聞いていたに 違いない。 「ああ! あの噂のことですか?」 比較的明るい、普段の調子になりつつあるティアとは逆に、ダグラスはどこか 引きつった笑顔になった。 「ええ。どうなのでしょう。実際のところは……」 「とても親しい間柄なのは確かです。でも、お伺いしたとき、お二人は否定なさいました」 「……否定はなさっているんですね……」 とりあえず、その言葉でダグラスはほっとした。不安は残るが、フィリシアは その手の方面では、腹芸の出来ない人だ。そう言ったのであれば、それが事実だろう。 「ただ、フィリシア様はゼロス様を『特別』だと、そう言われたのです」 少し首を傾けながらそう言ったティアの言葉に、ダグラスの目が点になる。 「……『特別』……ですか……?」 「はい。私にも、どのような意味でそう言われたのか、良く分からないのですが」 ★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★ H.長い……。 D.長いですね……。 H.他もだいたいこの長さです。覚悟してください。 D.さすがに前回みたいに、毎日UPはしませんが。 H.では、今日はこれで失礼いたします。 |
11322 | Re:特別の意味 1 訪問者 | D・S・ハイドラント | 2002/11/13 16:09:20 |
記事番号11304へのコメント >原因は──「黒衣の神官」、ゼロスだ。 さすがに人間達には有名ではないようですねえ・・・。 まあ降魔戦争前ですからねえ。 >権威ある神殿だ。その神殿に使えているのであれば、彼は所謂「聖騎士」と どんな騎士でしょうか >「『純白の巫女』の事……ですか?」 ましゃか >「ヒュパティアさん、『純白の巫女』は『フィリシア』という名前ではありませんか?」 やはり >「そうでしたか……。 > では、一緒にいた『黒衣の神官』は『ゼロス』という名前で間違いありませんね?」 で、それがどうかしましたかダグラス殿。 >「……『特別』……ですか……?」 >「はい。私にも、どのような意味でそう言われたのか、良く分からないのですが」 特別・・・いろいろ取れますねえ。 それでは焦らずにがんばってくださいね。 |
11332 | 私にしては、確かに珍しいです。 | エモーション E-mail | 2002/11/13 21:01:53 |
記事番号11322へのコメント 書き上げていないものを、投稿し始めるのは。 こんばんは。 >>原因は──「黒衣の神官」、ゼロスだ。 >さすがに人間達には有名ではないようですねえ・・・。 >まあ降魔戦争前ですからねえ。 そうでなくても、聞かれない限り、自分から名のりませんしね、ゼロス。 >>権威ある神殿だ。その神殿に使えているのであれば、彼は所謂「聖騎士」と >どんな騎士でしょうか 王族・貴族ではなく、神殿に仕えている、とだけ決めて、あとは特に決めてないです(笑) 相撲の横綱・大関みたいなものというイメージだけあります。 また、聖騎士は全員、魔法剣を持って(与えられ)ます。 まだドワーフが絶滅危惧種じゃなくて、エルフたちへの虐待も起きていなかった(と思われる) 時代ですから、造る技術はあったと思うので。 >>「そうでしたか……。 >> では、一緒にいた『黒衣の神官』は『ゼロス』という名前で間違いありませんね?」 >で、それがどうかしましたかダグラス殿。 これは、単なる確認です。 >>「……『特別』……ですか……?」 >>「はい。私にも、どのような意味でそう言われたのか、良く分からないのですが」 >特別・・・いろいろ取れますねえ。 はい、いろいろです(笑)フィリシアには心理的な描写等で、苦労しっぱなしです。 ……性格の雛形のせいかなあ(笑) >それでは焦らずにがんばってくださいね。 ありがとうございます。とりあえず今は、「エピローグまで長くなりそう〜!」と 頭抱えてますが(笑) では、これで。いつもありがとうございます。 |
11396 | 特別の意味 2 特別と言う言葉 | エモーション E-mail | 2002/11/15 23:14:50 |
記事番号11304へのコメント こんばんは。「特別の意味」第2話です。 この部分は「千年越しの賭」に付け加えるつもりでいて、結局やめた部分です。 何故なら話が無意味に混乱するから(笑) フィリシアの過去話……みたいなものです。では。 ※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※ 「特別の意味」 千年越しの賭・番外 2.特別という言葉 フィリシアとゼロスが、長老の屋敷から神殿に移った翌日のことだ。 事前にティアが理由を説明していたので、名前は伏せたままであっても特に 問題なく、正式にアザロ神官長や神殿上層部への挨拶をすませて、早々に宿坊へ 戻ってしまった2人に、ティアは香茶を運んだ。 ゼロスもフィリシアも「休養」の名目で宿坊のそれぞれの部屋に籠もっているが、 昨日魔獣退治をしたゼロスより、フィリシアの方が疲労の色が濃い。体調を 崩していたのは知っていたが、ティアにはそれが気になった。それはゼロスも 同じだったらしく、出来るだけ注意して見ていてほしいと、頼まれた。 「ただ、こちらにそうと気づかせずに、さりげなく行動することもあるので、 完全には無理でしょう。ですから、出来るだけ、で構いません」 そう言ったゼロスは、苦笑するしかないといった面持ちだった。 「でもヒュパティアさんが目に涙をいっぱい浮かべて、『無茶はやめてください』って言えば、 おとなしくなるでしょうね。僕では通用しませんが、ヒュパティアさんなら 通用します。いざとなったらやってみてください」 ゼロスからそんな「助言」をされたと話したところ、フィリシアは肩をすくめて笑った。 「……見抜かれてる……。それじゃあ、おとなしくするしかないわね」 ……それって……ゼロス様の言うように、無茶をする気満々だったと言う ことですか? ティアは思わず心の中で突っ込んだが、口にしたのは別の言葉だ。 「フィリシア様もゼロス様も、本当にお互いの事が良く分かっているんですね」 「……それくらいは。3年近く一緒だったもの」 「でも、長い時間一緒だからって、必ず良く分かるってものでもないです。 やっぱりそれなりに特別な間柄だからですよー(はあと) そこまでお互いに 想いあえるなんて、素敵でとても羨ましいです(うるうる)」 ごちん! ティアが1人で夢見る乙女の世界に浸っていると、そんな鈍い音がした。 我に返るとフィリシアが突っ伏している。どうやらテーブルに額を打ち付けたらしい。 「フィリシア様!? ああ、どうしましょう。やっぱりまだお加減が……。 横になられていた方が……」 「……そ、そーじゃないの……。ちょっと……ね」 慌てるティアに、フィリシアはどこか引きつった声で答えると、軽くため息をついて言う。 「……ティア、ゼロスは確かに『特別』だけど、ティアが思っているのとは、 違う意味で、『特別』なの」 「……違うって……どういうことですか?」 きょとん、とするティアに、フィリシアは軽く微笑んで答えた。 「ゼロスは私を『私』として見てくれるから。それに……」 何故か、少し間を置いて言葉を続けた。 「……私がゼロスを友人だと思うことと、ゼロスがどんな存在かは、矛盾しないことなの。 ……だから『特別』……」 優しいけれど、でも少し悲しげにも見える、そんな笑みで。 「……そうですか。フィリシア様は、そんなことを……」 カップに新しく入れられた香茶を飲んだダグラスは、軽く息をつく。ティアの 言葉を通して、ダグラスはフィリシアの心の声を聞いた気がした。 神殿にいたとき、ダグラスは……おそらく一番フィリシアの身近にいた人間だ。 何より、理由あって身よりのないフィリシアは、神殿が規定する入会年齢になるまで、 ダグラスの家で育てられていた。所謂幼なじみで、そう言っても良いのなら 兄妹のようなものだ。 だが「ある程度」は分かっても、「良く分かっている」とは自分でも言えない。 他人から見てもそうだろう。 『長い時間一緒だからって、必ず良く分かるってものでもないです』 ティアは何の気なしに言ったのだろうが、この言葉はダグラスにとって正鵠を 射ていた。そう、分かるはずがないのだ。 ダグラスは、いや、ダグラスに限らず彼女の周囲の者は、一度もフィリシアを 本質的な意味では、「フィリシアという人間」として見ていなかったのだから。 例外だったのは、ドワーフのガーティや恩師のセーガン神父ぐらいだろう。 しかしセーガン神父は、それが上層部の不興を買い、形だけは「本人の希望」を汲んで、 カーファの──そう言えばこの近くだ──アロウイーツへ赴任させられている。 「……ダグラス様?」 深刻な面持ちで俯いたダグラスを、ティアが心配げに窺っていた。極端に 沈み込んでいるように見えたらしい。 「ヒュパティアさんは……フィリシア様を一言で言えば……どう表現しますか?」 不意の質問に、ティアは目を丸くする。 「一言……ですか? ……『聖女』……です。おそらくあのような方を『聖女』と呼ぶのだと思いますから。 上手く言えませんけれど、どこか……私たちとは違います」 初めて会った時や、この間の事を思い出しながらティアはそう答えた。 フィリシア本人はティア達に対して、むしろ親しい態度をとってくれていたが、 ティア達の方はどうしても……遠慮がでてしまうのだ。憧れ、慕っている事を 差し引いても、例えば、年齢や階級こそ上だが、アザロ神官長に対してできるような、 親しい態度はどうしてもできない。特にそう意図してはいないものの、自然に そうなってしまう。 「……『聖女』、それに『どこか、違う』……。ヒュパティアさんもそう思いますか。 私も同じです。だから……ゼロスという人はフィリシア様にとって『特別』 なのでしょうね」 「あの、フィリシア様は一体どのような立場の方なのでしょうか? おそらく 巫女としては、かなり高位の方ではないかと思いましたし、ダグラス様がわざわざ お探ししているくらいですから、それは間違いないようですが」 フィリシアと同じ言葉を、同じように悲しげに言うダグラスに、ティアは 素直に疑問をぶつけた。「特別」の意味はそれを知って理解できるのだと、 そう思ったから。 ダグラスは軽く一呼吸置いてから、口を開いた。 「ご存じだと思いますが、レージュ大神殿には、他の神殿と違い、いくつか 特別な地位があります。フィリシア様は、年齢が満たない、という理由で正式な 就任をしておられなかっただけで、実質的には、その中でも特に特別な地位に 就いておられました……お聞きになったことはあると思いますが…… 『赤竜神の巫女神』……です」 静かに、聞き取れないわけではないが、小さな声で言われたその言葉に、 ティアは絶句した。 「赤竜神の巫女神」……通称「赤竜の姫」と呼ばれている、レージュ大神殿における 最高位の巫女だ。対等な地位と言えば、教皇くらいだろう。「神の愛娘」とされ、 神殿の実務的な部分より、精神的部分を象徴している存在だが…… 「ですが、『赤竜神の巫女神』は、この50年ほど出ていないと、お聞きして いますが……」 確かに、フィリシアが「赤竜の姫」と言われれば素直に納得できる。だが、 「赤竜の姫」が正式に就任したという話は、少なくともティアの記憶にない。 「ええ。それにふさわしい能力を持っていなければ、けして就けない地位ですから、 この50年ほど空位でした。 フィリシア様は、その身にスィーフィード様の意識と力の一部……魂の欠片を 持ってお生まれになられました。ですから、神殿に入る前から『赤竜神の巫女神』に なる事が決まっていたのです」 「あの、ですが、そのような方はスィーフィード・ナイト様とお呼びするのでは……?」 「スィーフィード・ナイト様はきちんと別におられます。私では詳しい事は 分からないのですが、フィリシア様とスィーフィード・ナイト様では、同じ 『魂の欠片』を持つ者であられても、力の方向性が全く違うのだそうです」 一般的に、赤の竜神・スィーフィードの意識と力の一部を持つ者は 「スィーフィード・ナイト(赤竜神の騎士)」と呼ばれるが、神殿で神官や 巫女をすることなど滅多にない。というよりも向かない。力の方向性だけでなく、 本来与えられている役割そのものが、全く違うのだろう。 「ヒュパティアさん。私は、神殿にいた頃、フィリシア様を『聖女』として 見ることはあっても、普通の人間として見たことはありません。むしろ、 『聖女』扱いする自分をおこがましいと思っていました。 周囲はフィリシア様を『神の化身』としか見ませんでしたし、私たちなどとは違う、 何もかも超越したずっと遠い存在……。そう言われて育ちましたから、それが 当然だと思っていたんです。 ……実際には、そんなはずないのに……」 それに気づいた、というより気づかされたのは、フィリシアが神殿を出奔してからだ。 ドワーフのガーティに怒鳴られなければ、今でも気づかないままだったに違いない。 「今でも私はフィリシア様を『聖女』として見てしまいます。頭で分かっていても、 どうしても、遠慮してしまいますから。 でも、ゼロスという人は、フィリシア様を、フィリシア様個人として、見て いるんですね。おそらく、神殿での立場を知ったとしても、態度の変わらない方 なのでしょう」 ダグラスの話を通して、ティアはフィリシアの強い孤独が、垣間見えた。 何一つ、事情を知らない自分たちですら、フィリシアをごく自然に「特別な存在」として 見るし、遠慮が出てしまう。知っていたら尚更、いや、それではすまなかっただろう。 誰からも大切にされ、最高の扱われ方をする「特別」な存在。それは、王族などにも あてはまる。しかし、王族はまだマシなのだ。身分は高くても「人間」としては、 見てもらえるのだから。 フィリシアは……存在として、「1人の人間」とは見てもらえなかった。 誰もが彼女の周りに見えない壁を作り、けして近づかない。周囲にどれほど人が いても、彼女は「1人」なのだ。 ……これは「差別」だ。「特別な存在」という名の……「逆差別」……。 通常の差別とは、確かに扱いも形も違う。だが、何かにつけてはっきりと 区別され、けして対等には見てもらえず、周囲から受ける圧倒的なまでの疎外感。 まして彼女の場合、周囲に人がいるだけに、余計に孤独感は深い。 ……これを差別と言わないとすれば、何と言うのだろうか? 「だから……『特別』……なのですね。フィリシア様にとって……」 短期間しか関わりのない自分たちでさえ気づいたこと、感じたことに、3年も 一緒にいたゼロスが気づかないわけがない。 しかし、言葉遣いや振る舞いこそ丁寧だが、ゼロスは概ねフィリシアをごく普通に、 特別だとしても──恋愛感情の有無はともかく──友人だからと分かる扱いを していた。 フィリシアを個人として見ていなければ、そんな風には出来ないだろう。 今のティアはゼロスに対して疑問に思う部分が多い。だが、フィリシアが ゼロスを特別だと言った気持ちは、よく分かった。 ※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※ H.「千年越しの賭」ではぼかしまくっていた、フィリシア様の階級や過去でした。 また、視点が私・ヒュパティアとダグラス様なので、フィリシア様やゼロス様から 見たらちょっと違う部分大ありです。 D.人に言いふらすようなものじゃないですから。私も頭で回想しても、 ヒュパティアさんに言ってない部分がありますし。 H.神殿最高位の巫女……。どこかの元副将軍か自称旗本の三男坊が、本格的に 家出したようなものです。……それでは、追っ手くらいかかります。 むしろ、追っ手がダグラス様1人と言うのが不思議(笑) D.神殿も面子があるので極秘ですから(笑)他国では大っぴらに探せません。 また、一番苦労したのが階級の名称だそうです。どーしても特殊なのが 考えつかなくて、結局ありきたりになりました。 H.あとは無意味にこだわったシリーズは名前。ほとんどがSF系の方々から 使わせていただいてます。 D.アザロ神官長が「スコーリア」シリーズのキャサリン・アザロ、セーガン神父が カール・セーガン、私の姓名は「銀英伝」のアッテンボロー、ヒュパティアさんは 歴史上の人からですが、愛称がティアなのは、歌う船シリーズの「旅立つ船」の ヒロインからです。可愛いので絶対使おうと思ったそうで。 H.とどめに国名等は全部「星界」シリーズのアーヴ語です。レージュ大神殿の レージュはアーヴ語で「白」と言う意味。赤の竜神の神殿の名前が「白」……。 D.国名が「クナスレージュ(黒白)」なので。深く気にしないように。ついでに アーヴ語の「赤」は、ちょっと響きが筆者Eの好みじゃないそうです。 H.ただのワガママ……。 では、長くなりましたので今日はこれで失礼します。 |
11415 | Re:特別の意味 2 特別と言う言葉 | D・S・ハイドラント | 2002/11/16 13:30:40 |
記事番号11396へのコメント >昨日魔獣退治をしたゼロスより、フィリシアの方が疲労の色が濃い。 まあ魔族ですし・・・。 >「……私がゼロスを友人だと思うことと、ゼロスがどんな存在かは、矛盾しないことなの。 >……だから『特別』……」 まあ魔族は矛盾を嫌いますし多分 >『赤竜神の巫女神』……です」 何か凄いですねえ。 > 「赤竜神の巫女神」……通称「赤竜の姫」と呼ばれている、レージュ大神殿における >最高位の巫女だ。対等な地位と言えば、教皇くらいだろう。「神の愛娘」とされ、 >神殿の実務的な部分より、精神的部分を象徴している存在だが…… ほええ、かなり凄いですねえ。 フィリシア・・・凄い人だったんですねえ。 逆差別ですか。 赤の竜神を恨んだり、呪ったりしたこととかあるんでしょうか。 それでは〜。 これからもがんばってください。 さようなら〜 |
11458 | Re:特別の意味 2 特別と言う言葉 | エモーション E-mail | 2002/11/17 23:27:33 |
記事番号11415へのコメント 何故かエピローグが短めの4話になって、現在エピローグVr2書いてます。 >>「……私がゼロスを友人だと思うことと、ゼロスがどんな存在かは、矛盾しないことなの。 >>……だから『特別』……」 >まあ魔族は矛盾を嫌いますし多分 しかも当人達にとっては無問題ですから。周囲が煩いだろうなあという発言です。 >>『赤竜神の巫女神』……です」 >何か凄いですねえ。 もうちょっとましな名称にしたかった……しくしく。 >フィリシア・・・凄い人だったんですねえ。 「欠片」持っているので、そのくらいは……。 >逆差別ですか。 通常の「赤竜の姫」候補の扱いとも違っていて、極端すぎたんです、要するに。 普通に「赤竜の姫」候補として扱っていれば、何も問題なかったんです。 また、他の地位の候補との扱いの差も激しかった……というのが決定的でした。 それに気づけないほど、人の気持ちに鈍感だったら、ある意味、幸せだったのでしょうが。 >赤の竜神を恨んだり、呪ったりしたこととかあるんでしょうか。 きっぱり言うと「ない」です。その辺りは「筋違い」と思ってますから。 例えばゼロス辺りにその事で、同じように聞かれたとしても「どうして 恨まなきゃいけないの?」の一言です。 彼女の周囲の状況は、人が勝手に祭り上げて行った結果です。赤の竜神の 責任ではありません。その点は踏まえているし、八つ当たりする気もないんです。 また、そうなってしまう人の気持ちも分かるので、人も恨めないと。 仕方ないなあと、ため息ついている。もう、そう言う域に達しちゃてます。 もっとも、孤独感がなくなるわけじゃないので、かなりキツかった、と。 ……まあ、「欠片」を持って生まれたことは「かなり運が悪い」と思ってますが(笑) >それでは〜。 >これからもがんばってください。 >さようなら〜 ありがとうございます。エピローグVr2、がんばって仕上げます。 |
11477 | 二重投稿のこと | 一坪 E-mail | 2002/11/18 23:01:12 |
記事番号11458へのコメント こんばんは一坪です。 いつも投稿ありがとうございます! で、タイトル通り二重投稿に関してですが、 『修正・削除 連絡伝言板』でエモーションさんが言ってたように、 ブラウザの「戻る」を使うのが原因です。 「戻る」「進む」を使うと一度投稿したデータを再送してしまうのです。 ブラウザによっては「再送しますか?」みたいな警告メッセージが出るんですが。 というわけで一番簡単な対処方法は、投稿したらいったんブラウザを閉じることです。 ブラウザを閉じたら送信したデータもクリアされるので。 まあブラウザ閉じたら「戻る」使えないですけど。 では、これからもよろしくお願いします! |
11481 | Re:二重投稿のこと | エモーション E-mail | 2002/11/19 00:14:07 |
記事番号11477へのコメント ありがとうございました。 m(__)m やはりプラウザの「戻る」が原因ですか……。 分かった以上は、十分注意します。 今後はダブらせないように。 わざわざありがとうございました。 |
11479 | 特別の意味 3 君の味方 | エモーション E-mail | 2002/11/19 00:07:09 |
記事番号11304へのコメント こんばんは〜。 やっとエピローグを書き上げたので3話目の投稿です。 ******************************************** 「特別の意味」 千年越しの賭・番外 3.君の味方 翌日、そのつもりはなかったものの、結局神殿に一泊することになった ダグラスが出発の準備をしていると、見送りに来たらしいティアが訊ねてきた。 「昨日はお伺いしませんでしたが、カーファのアロウイーツという村で、神官長を しておられるセーガン神父をご存じでしょうか」 「ええ、勿論です。私にとっても恩師ですから。ですが、何故セーガン先、 セーガン神父をご存じで……」 まさかここで聞くと思わなかった名前に、意外な面持ちで訊ね返すダグラスに、 ティアはこれを、とだけ答えて一通の手紙をダグラスに手渡す。目を通して、 人目があるから内容を口に出来なかったのだと分かった。 セーガン神父からヒュパティア……ティアへ当てられた手紙には、フィリシアが セーガン神父の元を訪れたこと、彼女から頼まれた事などについて書かれていた。 また探さなくてはならないと思っていた、フィリシアの足取りだ。 「……ありがとうございます。早速、セーガン神父をお訪ねます」 手紙をティアに返し、そう言うダグラスにティアは少し肩をすくめて言う。 「お礼は仰らないでください。本当は黙っているつもりでしたから。ですが ……ダグラス様があの方をお探ししていらっしゃるのは、同行なさるためだと お見受けしましたので」 「……何故、それが……?」 「昨日、お話をお伺いした時のご様子で、何となく……です。ただのカンですから 違っていたら、あの方に申し訳なかったのですけれど。ですが、例え違って いたとしても、あの方には1人でも信頼できる味方が必要だと思いましたから」 どう転んでも、ダグラスはフィリシアの味方にしかならない。 一晩ティアが考えに考えて出した結論だ。何より、ダグラスは信頼に値しない 人物とは、とても思えない。おそらく自覚していないだけで、神殿にいた頃、 フィリシアから信頼されていたはずだ。 ティアの言葉に、ダグラスは一瞬惚けたような顔をし、次いで軽く微笑した。 そう言って貰えたことが嬉しく、だから何も言えずに、ただ、一礼する。 「天候が安定していますから、ここ数日は、アロウイーツまでは、雪の心配 はないと思います。ただ最近は、確か……レッサーデーモン等の魔族が増えて きているそうです。この辺りはそれ程でもないようですが、それでも以前に 比べれば増えていますので……」 「レッサーデーモン……ですか。確かにここ数年、増えています。そろそろ、 国家レベルで対策を取るべきでしょうね。……人間同士で争っていないで」 ほとんど余所の土地へ行くことのないティアに比べ、旅をしているダグラスは、 実際に各国の現状を見ている。所謂「英雄」と呼ばれる者たちが戦争で倒れ、 命を落としている事実と、急激……と言っても良いほど増えてきたレッサー デーモン等による被害に、強烈な危機感と不吉なものを感じて仕方がない。 「集団になるとさすがに無理ですが、レッサーデーモンぐらいなら、私程度 でも倒せます。ですが、それ以上のものが現れてしまったら……。 ……ご存じですか? 魔族は、強いものになればなるほど、人に近い姿を 取るそうですよ」 ぽつり、とダグラスは呟くようにそう言った。自分でも、何故そんなこと を言ったのか分からない。 「そう……なのですか?」 「そのようです。私は見たことはありませんが」 「でも、きっと、とても恐ろしい姿をしているのでしょうね」 ティアは素直にそう言った。3ヶ月前の魔獣騒ぎの時、一緒に現れたという レッサーデーモンやブラスデーモンの姿の異様さは、遠目で見た程度でも不気味で 恐ろしいものだった。強い力を持つ魔族の話は、法話や伝説などにも出てくるが、 ねじれた角や爪を生やしていたり、コウモリのような羽を持っていたり、口が 耳まで裂けていたりと、想像するだけでも恐ろしい姿で表現されている。 それなりの技量が要るとは言え、人の手で退治できるようなレッサーデーモンが あんな姿なら、それ以上に強いものは、どんなに人に近い姿でも、もっと グロテスクな姿に違いない。それこそ、人間を嘲笑するような。 「それが……違うそうです。以前、スィーフィード・ナイト様やあの方から、 伺ったことがあります。『魔族は強いもの、高位のものになればなるほど、 人間から見て好感の持てる姿を取り、もっともらしい言動をする』……と」 ダグラスの脳裏に、神殿にいた頃のフィリシアとスィーフィード・ナイトとの 会話が浮かぶ。たまに神殿に訪れるスィーフィード・ナイトと会うことは、 フィリシアにとって公然と行える息抜きだった。ダグラスとしても、無意味に 尊大でわがままな上流階級や金持ち相手よりは、フィリシア同様、気疲れ しなくてすむ。 そんな、会見の中での会話だ。さすがに、どのような経緯でそういう会話 になったのかは、覚えていないが。 「私の……スィーフィードの記憶にある高位の魔族はほとんどそうね。外見の 年齢やタイプは、それぞれ全然違うし、好ましい言動と言っても表面上だけど」 「信じられません……何故ですか?」 本来なら会話に混ざることなど許されないが、スィーフィード・ナイトは そう言った事を嫌う。だからスィーフィード・ナイトとの会見の時だけは、 ダグラスも会話に加わることを許されていた。当時のダグラスも、ティア同様に 魔族は恐ろしい姿をしていると思っていたので、この話は意外だった。 「……まあ、そうでなければ、人間は誰も惑わされたりしないでしょうね」 肩をすくめてそう言うスィーフィード・ナイトの言葉に困惑していると、 フィリシアが助け船を出す。 「ダグ、人を見かけで判断しないと言っても、どうしても限度があるでしょう? いかにも恐ろしげな相手から、直接悪い思想を吹き込まれて……普通の人は ついていくかしら?」 「あ……」 確かに、最初からそのつもりならともかく、ごく平凡に生きている普通の 人間が、いくら何でもあっさりとついていくわけがない。 納得した様子のダグラスに、フィリシアは微笑んで言う。 「ね? 表面上だけでも、人にとって好ましいもの、心地よいものだから、 人は惑わされてしまうのよ」 「……好感の持てる姿ともっともらしい言動……ですか」 「表面上は……ということですが。……何だか、変な話になってしまいましたね、 すみません」 「いいえ。ひとつ、知識が増えましたわ」 笑顔でそう言うティアに、ダグラスは笑い返すと一礼した。 「……では、私はこれで」 「道中、お気を付け下さい。旅の安全とあの方にお会いできることを、お祈り いたします」 「ありがとうございます。ヒュパティアさんも、お元気で」 「平和と良きことが、御身と共にありますように」 去っていくダグラスを、一礼して見送り、神殿に戻ろうと振り向くとエリックが 所在なげに立っていた。 「……どうしたの?」 「いや、そのー、ちょっと……南の空にピンクのカバが飛んでるとか、吟遊詩人が 歌ってたから……」 「何それ。変なの」 レージュ大神殿の騎士と、妙に意気投合しているのが心配だったとは言えず、 意味不明な事を言うエリックに、ティアはくすくすと笑って答えた。ティアが いつエリックの気持ちに気づくかと、生暖かくウオッチングしている者たちが、 エリックへの同情のため息をついていたのは、言うまでもない。 「結構……話、弾んでたな」 神殿のティアの自室に戻る途中でぽつりと、エリックが──本人にとっては かなり勇気が要ったが──そう訊ねてきた。 「ええ、色々と。エリックも、遠慮しないで私に声をかけてくれば良かったのに。 為になること、聞けたかも知れないわよ」 「遠慮するなって言われても……相手は騎士様……だぞ」 「そういうの、気にしない方よ。ダグラス様は」 朗らかな笑顔でさらりとそう言われたら、エリックは心の中でため息をつく しかない。 「あーゆーの、好み?」 「そうね、好感は持てるわよ。でも、どちらかと言えば『同志』ね、私と ダグラス様は」 「『同志』……?」 一瞬玉砕しかけて、言葉の後半の、単語の意味を聞き返す。 「私はお側には行けないけど、あの方の信頼を裏切らない味方でいるってこと。 そう言う意味での『同志』」 「あの方って……まさか、巫女様のことか?」 あの方とは誰だと思い、すぐに思い当たった。ティアが心酔している純白 の巫女……。エリックの問いに、ティアは明るい顔で頷いた。 「だから、女神像のことは、これからちゃんとして行かなきゃ駄目だって、 心底思ったの。多分……私たちの代で片が付くとは思えないから。封印が 解かれたり、何も無かったことにされたり、話が変な風にねじ曲げられたり しないように、事実と私たちの意思をきちんとした形で残していかなきゃって……。 私たちは一度過ちを犯したわ。巫女様たちの手を借りてどうにか収めたのに、 また繰り返してしまうのは……それは信頼を裏切ることになるもの」 フィリシアが行った女神像の封印は、かなり困難な……根気と手間と時間 のかかる手段だ。自分たちのしたことの責任を取らせるため、と言うのは確かに あるのだろう。しかし、出来ると信じてくれなければ、こんな手段はけして 取らなかったのではないだろうか。 少なくとも、ティアがフィリシアの立場なら、無理だと判断する。はっきり 口には出さなかったが、ゼロスがおそらく、そう思っていたように。信じる ことなど出来ない。出来るはずがない。その根拠が多すぎる。 しかし、欲望に囚われ、過ちを犯し、人の醜い部分を見せつけた自分たちを、 それでもフィリシアは信じてくれたのだろう。 信じた気持ちを裏切られ、落胆する可能性を十分、承知の上で。 ……この方にはかなわない。多分、一生。 本当に、そう思う。 確実に出来るとは誰にも言えない。でも、過ちを繰り返さないことを願い、 信じてくれた相手を裏切ることだけは、絶対にしたくない。 「俺も……手伝うよ」 穏やかな表情で、エリックはそう言った。嫉妬の対象としては、純白の巫女は 位置が高すぎて勝負にもならない。何より、ティアにも「信頼できる味方」は 必要なのだ。他人のことは見えすぎるほどよく見える、聡明な娘なのに、 自分のことに関してはまるで見えていない、危なっかしい娘なのだから。 「ありがとう」 エリックの言葉に、柔らかく、ティアは微笑んだ。 ******************************************** E.久々に混ざります。はい、3話目でした。 書きながら「ある意味では、惑わされているのよね、フィリシアも」と 思ってました。この部分。 H.惑わされているんですか? E.自覚してるだけ質悪いかも。まあ、ゼロスとフィリシアは、妙に仲が いいかと思うと、案外、互いに相手に対して、凄くシビアな部分がある 間柄なので、それでもいいかなと。 H.……友人なんでしょうか、その関係……。 D.フィリシア様……友達はよく選んでください……。 E.他は書きながら思ったことは……エリック君、不幸! D.……無自覚なだけに悪魔ですね、ヒュパティアさん……。(思わず同情) H.何がですか?(即答) E.……気が付いたらこうなってたのよ……。……哀れな……。 D.ところで、私はここで退場ですか? E.うん。一応目的は果たしたから。 H.目的って、「千年越しの賭」で出番カットされたダグラス様救済措置。 ……ですか? D.……救済、されているんですか……? E.あとはエピローグの予定だったので、ここで退場が自然でしょう。 ただ、本来のエピローグが短めの4話になって、先程エピローグを 書き上げました。……エピローグにしちゃ長いけど。 H.あとは推敲だけですね。 E.軽く、ですが。 D.では、長くなりましたが、今回はこれで失礼します。 |
11491 | Re:特別の意味 3 君の味方 | D・S・ハイドラント | 2002/11/19 17:22:43 |
記事番号11479へのコメント >「天候が安定していますから、ここ数日は、アロウイーツまでは、雪の心配 >はないと思います。ただ最近は、確か……レッサーデーモン等の魔族が増えて >きているそうです。この辺りはそれ程でもないようですが、それでも以前に >比べれば増えていますので……」 ついに降魔戦争が・・・。 >「それが……違うそうです。以前、スィーフィード・ナイト様やあの方から、 >伺ったことがあります。『魔族は強いもの、高位のものになればなるほど、 >人間から見て好感の持てる姿を取り、もっともらしい言動をする』……と」 まあ微妙に違うものもいるような >「だから、女神像のことは、これからちゃんとして行かなきゃ駄目だって、 >心底思ったの。多分……私たちの代で片が付くとは思えないから。封印が >解かれたり、何も無かったことにされたり、話が変な風にねじ曲げられたり >しないように、事実と私たちの意思をきちんとした形で残していかなきゃって……。 > 私たちは一度過ちを犯したわ。巫女様たちの手を借りてどうにか収めたのに、 >また繰り返してしまうのは……それは信頼を裏切ることになるもの」 そして本に残そうと思ったと・・・。 さてと、コメント自体は短いですが・・・。 これで失礼させていただきます。 さようなら〜 |
11509 | Re:特別の意味 3 君の味方 | エモーション E-mail | 2002/11/19 21:49:05 |
記事番号11491へのコメント こんばんは〜。 >>「天候が安定していますから、ここ数日は、アロウイーツまでは、雪の心配 >>はないと思います。ただ最近は、確か……レッサーデーモン等の魔族が増えて >>きているそうです。この辺りはそれ程でもないようですが、それでも以前に >>比べれば増えていますので……」 >ついに降魔戦争が・・・。 あと、半年もすれば、と言うところでしょうか。 >>「それが……違うそうです。以前、スィーフィード・ナイト様やあの方から、 >>伺ったことがあります。『魔族は強いもの、高位のものになればなるほど、 >>人間から見て好感の持てる姿を取り、もっともらしい言動をする』……と」 >まあ微妙に違うものもいるような 誰のことかはさておき(笑)対峙したことのあるスィーフィード・ナイトは そう思ったのでしょう。魂と記憶は同じでも、それぞれの代ごとの人格は別ですし。 (この辺りはスタトレDS9の「ダックス」と歴代のホストパーソンの 関係みたいなものをイメージしてます。いや、あれよりは希薄かな) >>「だから、女神像のことは、これからちゃんとして行かなきゃ駄目だって、 >>心底思ったの。多分……私たちの代で片が付くとは思えないから。封印が >>解かれたり、何も無かったことにされたり、話が変な風にねじ曲げられたり >>しないように、事実と私たちの意思をきちんとした形で残していかなきゃって……。 >> 私たちは一度過ちを犯したわ。巫女様たちの手を借りてどうにか収めたのに、 >>また繰り返してしまうのは……それは信頼を裏切ることになるもの」 >そして本に残そうと思ったと・・・。 そうです。あとから少し変わりますが、基本はこの考えからです。 >さてと、コメント自体は短いですが・・・。 >これで失礼させていただきます。 >さようなら〜 ありがとうございました〜。 |
11575 | 特別の意味 4 そして、特別の意味 | エモーション E-mail | 2002/11/21 22:23:56 |
記事番号11304へのコメント こんばんは。 今日はラストなので、投稿記事数多いです。しかも4話よりエピローグ の方が長い……。 では、いきます。 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇ 「特別の意味」 千年越しの賭・番外 4.そして、特別の意味 部屋に戻り、セーガン神父からの手紙を丁寧にしまうと、ティアはこの間 から中断したままだった記録を、聖務や仕事が終わった後、すぐにでも書き 進められるように一纏めにした。疑問に思う部分はあっても、ゼロスの行動 そのものは否定できない。今書いているのは、ほとんど忘れないための覚え 書きのようなものだし、叩き台でもある。手を加える必要があれば、後から いくらでもできる。 ふと手に持っているパピルスに視線を落とすと、ゼロスが神殿にいるティアを 訪ねてきた部分が目に留まった。気配も感じさせずに不意に現れ、ほとんど 一瞬のうちに立ち去った、文字通り、闇に紛れた……黒衣の神官……。 ……本当、人間業とは思えないことしているのよね、ゼロス様も……。 フィリシア様にばかり目がいくから、気にも留めなかったのだけれど。 一瞬で場所を移動する術があるとは知っているが、人の身で使える者の話など、 聞いたことがない。もっとも、使える人間がいたとしても黙っているだろうが。 それこそ、神業でなければ、魔の── 視界が、霞んだ。急激に眩暈や貧血に似た、上下左右の不安定感が襲う。 周囲の音の消失。否、ピーンという張りつめたような、奇妙に高い音のみ、 耳というより、頭の中に響く。 次いで感じる、何か計り知れない存在と、意識。カミナリに打たれたような、 ピリピリとした、強い衝撃が身体中に走る。同時に、言葉が、脳裏に閃く。 まさに「降りてきた」としか言い様がないほど、唐突に。 すべてが、一瞬の出来事だった。 力が一気に抜けて立っていることができず、ティアはその場に崩れるように 座り込む。周囲にせっかく纏めたパピルスが散乱し、舞った。 「な、なに……? 今の……」 ティアは両方の二の腕を掴んだ。すでに、身体に起きた変調はなくなったが、 身体の震えが止まらない。それが、神託と呼ばれるものだと知るのは、もう 少し後のことだ。 『魔族はアストラルサイドを通じて空間を渡る』 脳裏に閃いた……降りてきた言葉を、ティアは口に出さずに反復した。 これは、自分の知っている知識ではない。しかし、確認の取れることでは ないのに、不思議と事実だと分かる。疑いようのない、事実だと。 「どうして、こんな言葉が……」 苦笑しながら、散らばったパピルスを拾う。その手は、震えがまだ治まらない。 ……それも、魔族のことなんて……。 そんなことを思ったせいか、先程のダグラスとの会話を思い出した。いくら 神官でも普通なら、おそらく知ることはなかっただろう、魔族に関する知識……。 『魔族は、強いものになればなるほど、人に近い姿を取るそうですよ』 ……人に、近い姿……。 『強いもの、高位のものになればなるほど、人間から見て好感の持てる姿を 取り、もっともらしい言動をする』 ……つまり、それは人間にしか見えない言動ができる、ということで……。 パピルスを拾う手が、止まった。 ティアの脳裏で、パタパタとパズルのピースが埋まるように、疑問に思って いた部分が埋まっていく。 一見すると好感の持てる外見。もっともな事ばかりだったけれど、でも…… 気のせいだと思いつつも、何となく感じていた、醒めたというより、どこか 見下しているような言動。そして、呪文を唱えることもなく行った、一瞬での 移動……。 くしゃり、と、我知らずに加わった力のために、パピルスが手の中で音を 立てたが、ティアには聞こえていなかった。 「まさか……でも……そんな……ことって……あるわけ、ない……」 思わず、ティアは片手で口元を押さえた。今度は、先程とは違う理由で身体が 震えだした。ティアにとっては信じたくない考え。フィリシアが「特別」だと、 「友人」だと言った相手が、そんなはずあってはならない。 『……私がゼロスを友人だと思うことと、ゼロスがどんな存在かは、 矛盾しないことなの』 脳裏に浮かんだその考えを否定しようとした時、不意にフィリシアの言葉が 浮かんだ。 ……どんな存在……。 どんな存在かは、矛盾しない──!? 不思議な言い方だと思っていた。そして単純に身分や階級などを差していると 思っていた、「存在」という言葉。しかし、身分や階級のことなら「矛盾しない」 とは言わないだろう。それはつまり……。 「フィリシア様……承知しておられたんですね……。『どんな存在』なのか……」 スィーフィード・ナイトとは力の方向性が違う、と言っても、仮にも 「スィーフィードの魂の欠片」を持っているのだ。3年も一緒にいて、正体 に全く気づかないとは思えない。 あの時の、優しい、けれど、どこか悲しげに見えた、フィリシアの表情。 いや、本当に悲しかったのかもしれない。あの笑みに、どれほど複雑な思いが 混じっていたのだろうか……。 「友人関係」は身分や年齢、性別に関係なく、基本的に「対等」で好意的な 間柄、互いに相手を認めるから成立する関係だ。 そう言う意味では、フィリシアには友人はいないと言える。フィリシアが どう思っているかは別として、誰も彼女を対等の存在として扱わず、近づかれれば 遠慮して一歩引いてしまうのだから当然だ。例外はスィーフィード・ナイト くらいだったのかもしれないが、心情としてはおそらく、家族、姉妹等に近いの かもしれない。 『ゼロスは私を『私』として見てくれるから』 フィリシアにとって、これは……皮肉な現実だったのだろう。どれほど 望んでも、魔族のゼロス以外、誰もフィリシアを対等とは扱わないのだから。 ゼロスを友人だと思っているのも事実なら、友人が、本来は相容れない 存在であるのも事実だ。フィリシアには矛盾しない事実でも、周囲は否定し、 理解するはずもない事実。そして、フィリシアにとっても「例外中の例外」と 言い切れる事実。だから…… 「……だから『特別』……。『特別』の意味は……もうひとつ、あったんですね……」 呟くと同時に、ティアの瞳から涙がこぼれた。 ゼロスが魔族だということが。 よりにもよって魔族を友人に選んでしまうほどの、フィリシアの孤独が。 人は悪気も何もなく、無自覚に相手を追いつめてしまえるという、事実が。 1人の人間を、その意思も気持ちも全て無視して、「神」や「聖女」として 縋りつき、救いを求め、安心を得てしまう。その根本にある、卑怯にも思えるほどの ……弱さが。 それでも……人を見捨てることが出来ないフィリシアの……強さが。 それが……悲しくて。ただ、それが、何もかもが、悲しくて──。 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇ D.神託って、こんなに派手な現象で降りるんでしょうか? H.最初ですから。 E.いきなり自分たちの理解を超えた存在と接したら、ショックの一つや二つ 受けるよね、ってことで、こんな表現になりました。二回め以降は「つなぎ」が 出来ているので、ここまで酷くないと。 あと、4話の補足って言ったら、「パピルス」くらいだよね。ここに 出てくる「パピルス」は現実のエジプトのとは違います。あれと紙の 中間のようなもの、と設定しました。でも「字を書けても保存や本の 装幀には向かない」と言う代物です。 「紙」はあるだろうけど、さすがにまだ「超高級品。王族でもたまに しか使えない」という状態だと思うので。 スレ世界ってこの辺りどうなっているのか、さっぱりなので……。 リナたちの時代は……多分、普通に使っているの……かなあ? スレSPで貴重書の書写に羊皮紙使ってたよーな……。単に装幀技術の 問題で本にするときは羊皮紙、なだけかもしれないけど。 ということで、エピローグに続きます。 |
11576 | エピローグ 永遠の風景 | エモーション E-mail | 2002/11/21 22:48:41 |
記事番号11304へのコメント 続き、です。4話より長い、エピローグです。 ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆ 「特別の意味」 千年越しの賭・番外 エピローグ 永遠の風景 「……あら? これ、ルーン文字の文字の綴りだと、どうなるのだったかしら?」 羊皮紙に走らせていたペンを止め、ティアはルーン文字の辞書を手に取った。 降魔戦争の後、必要に迫られてルーン文字を覚えたが、やはり時々分からない 文字が出てくる。どこも降魔戦争後の、苦しく貧しい状況だった中、この辞書を 買うための出費は痛かったが、当時、無理をしてでも手に入れて良かったと、 本当に思う。このレベルの辞書は、今ではもう、手に入らない。再び出回る ようになるには、もっと時間かかる。 ──女神像の封印から、もう10年ほど経っていた。 封印から1年ほど経った頃、今では「降魔戦争」と呼ばれる戦争が起きた。 その昔、赤の竜神スィーフィードに7つに分けられ、封印されていた赤眼 の魔王(ルビー・アイ)シャブラニグドゥの七つのうちの1つが覚醒したのだ。 魔王は聖地カタート山脈に住んでいた水竜王、ラグラディアを滅ぼしたが、 水竜王に最後の力で封じられた。 神と魔のバランスは大きく崩れたものの、それでも世界は落ち着きを取り戻し、 復興仕始めている。 ただ、それ以降、カタートを中心とした地域では、神の力が及ばなくなった。 「魔王の腹心である5匹の魔族が、神封じの結界を張った」と、戦いでほとんど 滅ぼされた中、何とか生き残った水竜王配下の竜族が、そう語ったと聞く。 現実に、神聖呪文が使えなくなっている以上、それは確かなのだろう。 それまでは、個人的な教養もしくは趣味程度でしかなかった魔道の呪文を、 ティア達神官が学び始めたのはそのためだ。 ティアは女神像の件を、3種類の文字で書き残すことにした。全く同じ 内容のものを、違う文字で書く理由をエリックに聞かれたとき、どれかが 読めれば、内容が理解できるようにするため、と答えた。それは嘘ではない。 だが、本当はもう一つ理由がある。 確かに、内容はどれも同じ。しかし、あえて詳しく描写する対象は、それぞれ 変えることにしたからだ。 共通語の文には、起きた事実を。女神像のこと、町の住人たちの様子、言動を、 そのまま、一番詳しく書き記した。 共通語で書いたのは、誰にでも読める文字だからだ。だから、一番重要な事を 書いた。後の人々が、これを読むことで、自分たちと同じ過ちを繰り返さないように。 そう願って。 神聖語の文にはフィリシアのことを。神聖語を読めるのはほとんどが神官や 巫女だし、この神殿の者には、なるべくこちらを読んでもらうつもりだ。「純白の巫女」がどんな思いで「女神像」を封じたか、「女神像を祀る者たち」 にこそ、分かっていてほしいから。 ルーン文字の文にはゼロスのことを。正直迷ったが、書かないのは事実を ねじ曲げるのと同じだ。だから……正体が分かるほど詳しく書きすぎないために、 一番書き慣れていないルーン文字を選んだ。もっとも、それでも気づく者は いるかもしれないが、それはもう仕方がない。 この2つは今、同時進行に近い形で書いている。だが、フィリシアとゼロス。 どちらの名前も、文には書き残さないと決めている。 フィリシアの名前を書けば、必ず「赤竜の姫」と知られる。「赤竜の姫」 が封じたのであれば、封印を解こうと考える神官などはまずいないだろうが、 同時に名前だけいいように使われてしまうだろう。それは、ティアには 耐えられない。第一、高名だから言うことを聞く、無名だから無視すると 言うのでは、あまりにも情けなさすぎる。 ゼロスは……平気のような気もするが、ゼロスのことを書いているルーン文字は、 魔道士の使う文字だ。そして、魔道士はどうしても魔族などには詳しくなる。 降魔戦争の後だけに、意外に名前を知っている者がいるかも知れず、どこから 正体が知られるか分からない。 しかも、どちらも正体が知られた場合、名前に傷がつくのは、どうみても フィリシアの方だ。それだけは絶対に避けたい。 だから、あえて両方、名前を伏せた。もっとも片方だけ記すのも変なので、 それで丁度良いのかもしれない。 「ヒュパティアせんせ〜、ご本読んで〜!!」 唐突にドアを開けて、ぱたぱたと足音を立てながら5〜6歳の子どもが3人、 部屋に入ってきた。神殿で育てられている子供達だ。ほとんど田舎とは言え、 この辺りも降魔戦争の影響は受けている。戦争で親を亡くした子どもは多いし、 戦後は貧困から子どもを捨てる親も多いのだ。そんな子どもたちの世話と教育が ティアの主な仕事だ。この辺りはセーガン神父の影響を受けたのかもしれない。 「こら! 部屋に入るときは、ちゃんとノックすることって言ってるでしょ?」 「……はぁ〜い……」 叱られて、子供達はしゅんとする。反省している様子とその反応が可愛くて、 ティアはくすりと微笑む。 「先にお部屋へ行っていて。すぐにここを片づけてそちらへ行くから」 途端に子供達は顔を輝かせた。は〜いと、元気に返事をすると、やって 来たときと同様に、ぱたぱたと賑やかな足音を立てて去っていく。 「まったく、ドアはちゃんと閉めなさいとか、廊下を走らないこと、とも 言っているのに」 そう言いつつも、くすくすと笑いながらティアはペンを片づけ、羊皮紙を 引き出しに入れて、立ち上がる。──少し、腹部を庇いながら。 あの後しばらくして、ダグラスから一度だけ手紙が届いた。フィリシアたちと 合流できたと知らせる手紙だ。その後の消息は分からない。──降魔戦争が 起きたので。 できれば、とティアは思う。 フィリシアとゼロスが、あの戦争で対峙せずにすんでいればいいと。魔族 の内実は分からないし、フィリシアが全て承知の上でも、それは……多分、 互いにとってかなり酷なことだと思うから。 ティアは腹部をそっと撫でると、手を当てながらゆっくりと歩きだす。 ティアの中に宿っている新しい命。結婚したのは3年前だが、子どもを授かった のは初めてだ。 お腹の子や神殿の子たち。この時代に生まれた子供達の生きる世界が、 魔族の支配が強くなったこの地域だと思うと、不安がないと言えば嘘になる。 だが、大丈夫だとも思うのだ。人はそれほど、弱くはない。めげずに生きて、 喜びや幸せを見つけてくれる。そう思うから。 正直に言えば、ティアは降魔戦争の後、何度か封印を解いてしまいたい衝動に 駆られた。 ……どんな代償が取られても構わない。現状が良くなるなら。人を救えるなら。 そんな思いとフィリシアの信頼を裏切ることになる苦悩の中、踏みとどまれたのは、 子供達を見たからだ。 するべきことを何もかも放り出し、封印を解きたがる大人を後目に、子供達は 生きるために必要なことを、出来る範囲で黙々と行っていた。女神像の力を よく理解していなかったから、というのもあるが、その対照的な様子は酷く 大人達を滑稽に見せた。自分たちの力で目の前の状況を少しずつ変えていく 子どもと、自分では一切何もせず他力本願に走ろうとする大人……。 現状をきちんと見て行動しているのはどちらだろうか。 そのうちに、子供達の影響を受けたのか、大人たちも動き始めた。自らの力で 動く者が増える度に、少しずつ町は復興し、状況は好転していく……。 その様子を見て、ティアは思ったのだ。あの女神像は「代償」とは別に、 人から「生きる力」も奪っていたのではないかと。勿論、それは結果的に そうなっただけだろう。人が勝手に楽をすることに慣れ、そうなっただけの ことだ。だが、ティアにとってはそれで十分だった。 もう、けして迷わない。そう決心するのには。 ティアの迷いを吹き飛ばした、子供達の「生きる力」。自分の力でしっかりと 立って生きようとする、そんな力を持っていれば、きっと大丈夫。どんなに 弱く頼りないものに見えても、それは誰にでもある力なのだから。 だから、伝えていこうと思うのだ。「女神像」のことを。自分たちの犯した過ち。 人の持つ弱さや愚かさ。そして、人の持つ強さ。 フィリシアが願い、信じたのは、きっとそういうものだと、今のティアに はよく分かる。 フィリシアはおそらく、もうこの世にいないだろう。消息は分からないが、 何となく、そう思う。だが、今でもフィリシアはティアの憧れの存在で、そして、ティアは彼女の味方だ。 見ていてほしいと思う。どこかで。 自分たちが、彼女の信頼を裏切らずにいることを。 どれほど時代が変わっても、フィリシアの「信頼できる味方」が、必ず いることを。 そして、いつか、女神像が完全に封印される……その日を。 見上げる空の彼方にも 希望はあふれているよ いつでも君の味方……大丈夫信じていて 子供達の部屋から歌が聞こえる。声からすると少し年長の子達だろう。 最近になって町で流行りだした歌だ。大切な人を思い、希望を歌う歌……。 人は誰でも とまどうけれど 再び歩き出せる 勇気を持っている 見上げる空の彼方にも 希望はあふれているよ いつでも君の味方……大丈夫……forever more 見上げる星の数ほどに せつない想いもあるね いつでも君の味方……大丈夫……信じていて…… 「大丈夫……信じていて……」 歌詞を呟き、ティアは微笑むと子供達の部屋へ入っていった。 ──「特別の意味 〜千年越しの賭・番外」・終── 歌詞(一部引用):「永遠の風景」 唄.ERI ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆ 以上、「特別の意味」無事、終了できました。 何とか書き上がったよ〜と言う気分です。今まで、書き上げていないものを 人目にさらしたことがなかったので。 ラストで引用したのは昔OVAになった「創竜伝」のEDです。 当時、さすがにビデオは買えず、OPとEDのCDだけ買ったのですが、 この話を書いてたら、メロディーが頭に浮かぶ浮かぶ。EDの歌詞がやたらと フィリシアやティアの心境にぴったりだったので。 本当は全文使いたいところですが、著作権のこととかありますので、自分で 特にぴたっときた部分のみ引用しました。 前回同様、後書き雑談もありますので、よろしければ、そちらもご笑覧ください。 では、読んでいただいて、ありがとうございました。 |
11582 | Re:エピローグ 永遠の風景 | D・S・ハイドラント | 2002/11/22 12:56:42 |
記事番号11576へのコメント >「魔王の腹心である5匹の魔族が、神封じの結界を張った」と、戦いでほとんど 匹・・・? > 共通語の文には、起きた事実を。女神像のこと、町の住人たちの様子、言動を、 >そのまま、一番詳しく書き記した。 > 共通語で書いたのは、誰にでも読める文字だからだ。だから、一番重要な事を >書いた。後の人々が、これを読むことで、自分たちと同じ過ちを繰り返さないように。 >そう願って。 > 神聖語の文にはフィリシアのことを。神聖語を読めるのはほとんどが神官や >巫女だし、この神殿の者には、なるべくこちらを読んでもらうつもりだ。「純白の巫女」がどんな思いで「女神像」を封じたか、「女神像を祀る者たち」 >にこそ、分かっていてほしいから。 > ルーン文字の文にはゼロスのことを。正直迷ったが、書かないのは事実を >ねじ曲げるのと同じだ。だから……正体が分かるほど詳しく書きすぎないために、 >一番書き慣れていないルーン文字を選んだ。もっとも、それでも気づく者は >いるかもしれないが、それはもう仕方がない。 > この2つは今、同時進行に近い形で書いている。だが、フィリシアとゼロス。 >どちらの名前も、文には書き残さないと決めている。 > フィリシアの名前を書けば、必ず「赤竜の姫」と知られる。「赤竜の姫」 >が封じたのであれば、封印を解こうと考える神官などはまずいないだろうが、 >同時に名前だけいいように使われてしまうだろう。それは、ティアには >耐えられない。第一、高名だから言うことを聞く、無名だから無視すると >言うのでは、あまりにも情けなさすぎる。 > ゼロスは……平気のような気もするが、ゼロスのことを書いているルーン文字は、 >魔道士の使う文字だ。そして、魔道士はどうしても魔族などには詳しくなる。 >降魔戦争の後だけに、意外に名前を知っている者がいるかも知れず、どこから >正体が知られるか分からない。 > しかも、どちらも正体が知られた場合、名前に傷がつくのは、どうみても >フィリシアの方だ。それだけは絶対に避けたい。 > だから、あえて両方、名前を伏せた。もっとも片方だけ記すのも変なので、 >それで丁度良いのかもしれない。 なるほど、なるほど > ……どんな代償が取られても構わない。現状が良くなるなら。人を救えるなら。 > そんな思いとフィリシアの信頼を裏切ることになる苦悩の中、踏みとどまれたのは、 >子供達を見たからだ。 > するべきことを何もかも放り出し、封印を解きたがる大人を後目に、子供達は >生きるために必要なことを、出来る範囲で黙々と行っていた。女神像の力を >よく理解していなかったから、というのもあるが、その対照的な様子は酷く >大人達を滑稽に見せた。自分たちの力で目の前の状況を少しずつ変えていく >子どもと、自分では一切何もせず他力本願に走ろうとする大人……。 おお子どもってすごひ > その様子を見て、ティアは思ったのだ。あの女神像は「代償」とは別に、 >人から「生きる力」も奪っていたのではないかと。勿論、それは結果的に >そうなっただけだろう。人が勝手に楽をすることに慣れ、そうなっただけの でも、冥王辺りがそこまで考えてその女神像を創り出すって可能性も・・・。 > ──「特別の意味 〜千年越しの賭・番外」・終── > 歌詞(一部引用):「永遠の風景」 唄.ERI うおおおお終わった〜 って感じです。 >何とか書き上がったよ〜と言う気分です。今まで、書き上げていないものを >人目にさらしたことがなかったので。 へえ、私はさらしまくってます(冥王の騎士も先ぼんやりとしか考えてないし) 感動しました〜 それでは〜 |
11604 | Re:エピローグ 永遠の風景 | エモーション E-mail | 2002/11/22 21:58:08 |
記事番号11582へのコメント >>「魔王の腹心である5匹の魔族が、神封じの結界を張った」と、戦いでほとんど >匹・・・? 何となく(笑)五体の方が良かったかな。 >> ……どんな代償が取られても構わない。現状が良くなるなら。人を救えるなら。 >> そんな思いとフィリシアの信頼を裏切ることになる苦悩の中、踏みとどまれたのは、 >>子供達を見たからだ。 >> するべきことを何もかも放り出し、封印を解きたがる大人を後目に、子供達は >>生きるために必要なことを、出来る範囲で黙々と行っていた。女神像の力を >>よく理解していなかったから、というのもあるが、その対照的な様子は酷く >>大人達を滑稽に見せた。自分たちの力で目の前の状況を少しずつ変えていく >>子どもと、自分では一切何もせず他力本願に走ろうとする大人……。 >おお子どもってすごひ 一応、ちゃんと動いてる大人もいたのだけれど、一応対比で。 この町の場合は、どうしても子どもより大人の方がダメダメに なりやすいんです。特に女神像の記憶がはっきりしている世代は。 >> その様子を見て、ティアは思ったのだ。あの女神像は「代償」とは別に、 >>人から「生きる力」も奪っていたのではないかと。勿論、それは結果的に >>そうなっただけだろう。人が勝手に楽をすることに慣れ、そうなっただけの >でも、冥王辺りがそこまで考えてその女神像を創り出すって可能性も・・・。 条件が揃わないと無理でしょう。 まず、人間の側が心底それを望んでいること。魔族の方で勝手に創って与える、 と言うのはないと思う。それやったら、すぐにでも神族が横やり入れます。 横やりを入れさせないためには、必ず「契約」という形を取るはずです。 で、「契約」の形をとるから当然、相応の「見返り」が要ります。 そして、多分これが重要。契約者が、冥王が直接お出ましになるくらいの 魔力や能力がある人間であること。 最低、この3つは要ると思います。この条件を揃えるの、難しいんじゃないかな。 本編でゼロスはさらりと説明したけど、あの女神像も最低、この3つの条件を 満たしているから出来たものですので。……魔王を呼び出せたのだから凄いよな……。 >> ──「特別の意味 〜千年越しの賭・番外」・終── >> 歌詞(一部引用):「永遠の風景」 唄.ERI >うおおおお終わった〜 >って感じです。 既に私の中では勝手にテーマソングです、この曲〜!! 出来れば歌詞全部引用したかったー。 >>何とか書き上がったよ〜と言う気分です。今まで、書き上げていないものを >>人目にさらしたことがなかったので。 >へえ、私はさらしまくってます(冥王の騎士も先ぼんやりとしか考えてないし) いえ、単にトータルでチェックしないと気がすまないだけですが(笑) >感動しました〜 >それでは〜 ありがとうございました。m(__)m 冥王の騎士、がんばってくださ〜い。 |
11577 | 後書きの雑談 | エモーション E-mail | 2002/11/21 22:55:29 |
記事番号11304へのコメント ∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽ 後書き雑談会 E.以上を持ちまして、「特別の意味」 千年越しの賭・番外 無事終了 しました。 この番外では、とにかく「千年越しの賭」の方で、書き込みが不完全 燃焼状態だったティアを書きたい、というのがありました。とりあえず、 好きなだけ書けたので自分では満足です。 D.……あの〜、私の救済措置では……? E.うん、一応それもあったけど、基本はティア。ダグはやろうと思えば、 この後いくらでも出せるけど、ティアはもうないから。 H.何かいきなり母親になりました(笑)予定にはなかったと思いましたが。 E.考えてはいたけど、迷ってました。でもエピローグ書いていて「やっぱり 母親になってもらおう」と。神殿の子達だけではちょっと弱いですから。 D.旦那さんはエリックさんですよね。 H.そうですよ。(さらり) D.即答されました(笑)3話後書きでの無自覚っぷりとは凄い差です。 E.それは、最初から……エリック創った時から決めてたから。ついでに言えば、 読んでいてそうじゃないとは……思わないでしょう(笑)作中には出て こなかった人、と言うのも有りだけど(笑)ついでに作中出なかった エリックのフルネームはエリック=ファインタック。 H.何だか韻を踏んでるんですよね。私の結婚後の名前は、ヒュパティア= バーンズ=ファインタック……となります。何故か後世では、名前の方だけ 知られていますが。 D.ちなみに「ファインタック」も「銀河の荒鷲シーフォート」シリーズの 作者ディビット=ファインタックからです。趣味でSFから取ってますね。 E.ほんとは全部「銀英伝」からピックアップしようかと思ったけど……。 フィリシアの姓名も一応「銀英伝」から決めてたけど……書いている うちに「貰った名前をまるごと使う」になったので、決めていた姓名は、 そのままフィリシアも知らない本当の姓名という設定になりました。 フィリシア=キルヒアイス、というのが本名。でも本人……というより、 誰も知らない。ほんとに裏設定になりましたね。前回暴露しそこねたので、 ここで暴露(笑) D.私の父も、ほとんど虫の息だったフィリシア様の母上から「フィリシア をお願いします」とだけ言われたので、フルネーム知らないですしね。 それにしても……キルヒアイス……。何か思いっきり……。 E.……だからその姓名にしたんだけどね。「銀英伝」知らない人には、 全然分からないネタだけど。 H.それと、4話よりエピローグの方が長いですよね(笑) D.しかも4話は元々はエピローグだった(笑) E.内容がダグを見送った直後と10年後になるので、分けた方が自然だった せいです。そのため4話がやけに短め。……それでも他の方の「通常」 レベルなのが……。長文体質でごめんなさい(しくしく) また、エピローグは歌詞を引用した分、長くはなると思ってました。 でも……降魔戦争の説明は邪魔だったかなあ……? D.10年も経てば、考え方などは変わりますよね。プラス降魔戦争も挟んでますから。 E.ティアの中では、初めはフィリシアの意思だけが優先されてた。10年 の間に迷って迷って、自分でいろいろ考えて経験積んで、その上で フィリシアの意思に賛同した。この差は大きいですよ。 「千年越しの賭」で不完全燃焼だったの、その部分なの。「千年越しの賭」で それをしたかったけど……あの話、わざわざティアがフィリシアの忠告 を破ってまで、願い事しようかどうか、迷う必要が全然ないんだもん。 だから今回は「ティアが封印を破りたいと思った」って、文を書けて 満足してる。 D.実はエピローグが本題だった(笑) H.本題って「特別」って言葉のことだと思ってましたが。 E.話の本題は「千年越しの賭」の書きそびれ部分を書く、です(笑) フィリシアに関しては「特別」な理由、ティアに関してはエピローグ部分、 ダグは出番(笑)……ほら、全部書けてる(笑) D.出番って……(頭を抱えてる) E.……とまあ、後書きが長くなっても仕方ないので、この辺でお開きにします。 短めで終わらせようとしたら長文の嵐になってしまいましたが、本文どころか 後書きまで読んでくださり、ほんとうにありがとうございました。m(__)m ∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽ |