◆−Eternal Seed  Act.7 −夏青龍 (2002/11/22 19:57:05) No.11589
 ┣Eternal Seed  Act.8 −夏青龍 (2002/11/22 20:04:10) No.11590
 ┃┗Re:Eternal Seed  Act.8 −D・S・ハイドラント (2002/11/22 20:29:17) No.11592
 ┃ ┗Re:Eternal Seed  Act.8 −夏青龍 (2002/11/23 09:21:24) No.11609
 ┣Eternal Seed  Act.9 −夏青龍 (2002/12/1 09:02:47) No.11821
 ┃┗Re:Eternal Seed  Act.9 −D・S・ハイドラント (2002/12/1 20:52:59) No.11833
 ┗Eternal Seed  Act.10 −夏青龍 (2002/12/8 19:21:40) No.11951
  ┗Re:Eternal Seed  Act.10 −D・S・ハイドラント (2002/12/8 19:46:35) No.11952


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11589Eternal Seed  Act.7 夏青龍 E-mail 2002/11/22 19:57:05


 こんばんは。しばらくテストでまた投稿ができなくなるので、イッキに投稿しちゃいます!
 おそらく今後一週間ほど投稿できなくなると思います。というか、Act.6からかなり長い間投稿してませんでした・・・すみません。

 では、第7話です。

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

  寂しい思い 悲しい思い
  人の心にのこる記憶
  それをあなたは優しく癒してくれますか…?

    Eternal Seed  Act.7  傷

 目の前が、真っ赤だった。
 夕日の赤で、視界がいっぱいだった。
 あの日。僕が居た孤児院の中で、うっかり力を使った僕が、世話をしてくれた女性たちにこう言った。
――僕が怖いの?
 孤児院の女性たちは、びくりと震えて僕から離れた。すぐに他の子供たちを連れて、散歩と銘打って外へ行ってしまった。僕はただ、独りぼっちで池の方へ向かい、そこで目を閉じていた。どうせ来年にはここを出て働くことが決まっていたが、それでもなんとなく悲しかった。
 僕は要らない子供なんだ。
 だから親にも捨てられたし、皆にも必要とはされない。
 だったら。
『消えたいのか?』
 不意に、男の声が聞こえた。はっと顔を上げると、そこに1人の男性が立っていた。男は、こう言った。
『必要とされたければ、私について来い』
 僕は、その手を取った。赤い、燃えるような夕日を背景に。
 僕が、3年前、まだ17歳だったとき。自分が、そこにいる必要性が無い事に気付いた日の出来事だった。


「僕は、少しは大人になれたのかな」
 力もつけたし、成長した。クレスタはそう思っている。そう簡単に、そこらの人間に負けるような少年ではない。
 “あの方”に使えるようになってから、クレスタはその身に眠っていた潜在能力を発揮し、どんどん力をつけていった。こなした任務のほとんどは、世間一般からすれば悪事であったが、クレスタにとって、恩人でもある“あの方”の命令なら、そんなことはどうでもよかった。自分がやったという証拠を残さずに仕事をしているので、別に役人や軍に捕まるような事にはならないからでもある。ただ問題は、この力をうっかり使ってしまうことが多くなった事だ。おかげで、“同調神”の力は有名になってしまった。まあ、“混沌神”に比べれば、天と地ほどの差があるのだろうと本人は思っていたが。
 あの時。孤児院でついに疎外され、自分の居場所を無くした日。“あの方”が来てくれなければ、自分は死んでしまったかもしれない。
「スウォード様……」
 “あの方”も、辛い過去を持った人なのだ。“大切な人”を殺された過去を持つ、悲しみの傷をもった人間だ。だから、僕を助けてくれたのだろうと思う。そうでなければ、誰が何の特技もなさそうな少年を拾って育てたりするものか。
「シーウさん……」
 あの少女も辛い過去の持ち主のはずだ。自分よりずっと。彼女は今もその過去の延長で苦しんでいる。だがそれでも、彼女には理解者が居た。それで彼女は救われている。
 クレスタも、救われたかったのだ。今も、救われたいと願っている。
「僕は……」
――貴方の、その純粋な想いが欲しい。
 あの紫色の瞳も、プラチナ・パープルの髪も、冷めたまなざしすらも、クレスタにとってはシーウの魅力のひとつひとつだった。
(あなたなら、僕をわかってくれる。僕を否定しないでいてくれる)
 直感的に感じた彼女の性格、そして同調能力で“視”た彼女は、自分なんかよりずっと綺麗な心の持ち主だった。水晶のように澄みきった、汚れない心の持ち主だ。暖かく、優しい心の持ち主だ。そして、それでなくてもきっと自分は、シーウに惚れていただろうと思う。一目惚れも、ひとつの理由であった。
 寂しかったから、という理由だけではない。そんな、溝を埋めるための存在としてシーウと一緒にいたいのではない。ただ、本当に好きなだけ。
 クレスタは、任務を全うするために、彼女たちの後をつけた。自分では、そう思っていた。


 シーウ達一行は、ある王都へと向かっていた。別にあてのある旅というわけではないし、気ままに歩いているだけだ。それでも、王都へ向かおうと言った途端、フォルとシャルは大騒ぎだった。
 目指すは聖王都、シャイニング。セントライト王国の都である。セント・ライト王国は、治安も比較的良く、かなり自由な国でもあった。王国は、今は女王であるシルヴァー=カレン=セントライトが国を治めていて、他国との仲もよい。しかし実は、シルヴァー女王の姉、ゴールド=サン=セントライトが床に伏しているということで、代理で国を治めているとも言われている。
 シルヴァー女王には子供が2人いて、兄妹だそうだ。兄のほうの名はグレイ=クラウド=セントライト、妹のほうの名はクリア=ウィンド=セントライトというらしい。みな容姿端麗な王族であった。
 セントライト王国は、別の名でも呼ばれていた。それは、“色と光の国”だった。
「王都って初めてだよね!シーウ!」
「ああ。多分不足していたものが全部揃うだろうな」
 王都はその名の通り、王族の直轄地でもある。すなわち、物流も交通もかなりきちんと整備されているのだ。不足しているものはほとんどが揃うだろう。シャルは王都へ行くのは初めてなので、かなりはしゃいでいる。
「そういや、明後日って双子の女王の誕生日だったよな」
「へぇ。じゃあ、式典とかやるかもしれないな」
ヴァルスの言葉に、フォルもわくわくしながら言った。きっと、王族をこの目で見られるということに喜んでいるのだろう。
「あ、見えた〜っ!シーウ!街が見えたよ!」
 森を抜け、丘の上から王都が見えた。大きな都だ。城壁もしっかりしているし、なにより、大きな城がここからならはっきりと見える。城は3本の剣のように塔が3つ。それから、その塔を繋ぐように通路があり、それに3階建てくらいと思われる建物が繋がっている。
 シーウ達は王都へ向かってまた歩き出した。


 都へ入ると、すでに明後日の女王誕生式典の準備が始まっていた。花屋では式典の為に店の掃除と、花の売り場がさらに綺麗に見えるように花の並びを変更していた。食堂や露天も同じように、店の周りや看板を綺麗にしていたし、子供もその手伝いで駆け回っていた。
「賑やかだな〜」
「ここの女王は人気があるからな」
 シーウは目を細めた。自分の誕生日は、今までまともに祝ってもらった事は一回しかない。故郷にいたときは、里の者の目も気になって、ヴェスィアたちもあまり盛大に祝ってやれなかったし、何より生活自体がかなり苦しかったので、ヴェスィアが結婚するまでは食事も特別料理にできなかった。ヴェスィアが結婚してからは――それ以前からも気にしないでと言っていたが――シーウが遠慮していたし、間もなく旅に出たので14歳までの誕生日で、盛大に祝ってもらえた事など無かった。だが――。
 賑やかな都の中を、買い物をしながら4人は歩き、食事をとって宿を探そうと店を出た。その時、目の前に3人の貴族らしき人間が現れた。
 シーウは反射的にフォルとシャルを背後へ庇い、ヴァルスは前へ進み出た。
「何か?」
「“浄化神”、ヴァルス=イクシードだな?」
「そうだが」
「女王、シルヴァー=カレン=セントライト様がお前を城へ招待なさっている。城までご同行願う」
 ヴァルスは胡散臭そうに顔をしかめた。が、それをすぐにいつもの表情へ戻し、
「女王陛下が、私に何の用なのでしょうか。用件次第ではお断りいたします」
ヴァルスは堂々と言った。男たち3人のうち1人が、困ったようにため息をついた。
「この件に関しては、この国の最重要機密と同等の扱いがされています。このような人ごみの中で話せるような事では」
「じゃあ、場所を変えれば話していただけるので?」
「この件は女王陛下自らがお話すると私達に仰られました。私達も、詳しい事は知らないのです」
 ヴァルスは呆れたように息を吐き、顔を上げると、
「わかりました。ただし……」
「そうそう、女王様からもう一つ伝言をお預かりしております」
シーウたち3人は訝しげに男を見た。男が言ったのは、ヴァルスが訊こうとしていたことだった。
「『ヴァルス=イクシードの王城への招待に伴い、連れであるフォル=ウィア=クランベルト、シャル=ウィア=クランベルト、並びにシーウ=ウィア=ヴィンセントの同行を許可する』」
 シーウは、その時本気で驚いた。女王の気が狂ったのか、さもなくば、自分の耳がおかしくなったのだと思った。だが、フォル達の反応からすると、そのどちらでもなさそうだ。女王は、“混沌神”である自分まで城に招待すると言ってきたのだ。正気の沙汰ではない。世間の目を気にする一方で、自分のような指名手配犯とほとんど同様の扱いをされている人間を城に入れるとは。
「馬車は用意してあります。どうぞ」
 シーウ達は断るに断れず、ゆっくりと馬車に乗り込んだ。


 謁見の間へ通された4人は、おろおろしながらも言われた通りにしていた。玉座に座っているのは、見目麗しい女性だった。銀の髪と瞳、淡い水色のドレス、そしてほんの少しの装飾品と、女王という地位を証明するかのように、頭にはティアラ。
「お初にお目にかかります、女王陛下」
「頭を上げてください。どうぞ、あまり気になさらずに」
「ではお言葉に甘えさせていただきます」
 4人が跪いたまま顔を上げると、女王は柔らかな笑みを浮かべていた。美しい笑みだ。
「貴方をここに呼んだのは。貴方の力を必要としたからです」
シルヴァー女王は真剣な目で、ヴァルスに向かって言った。
「私の双子の姉――ゴールドの事なのです」
「姉上が…?」
 ヴァルスが問い掛けると、女王は悲しそうな顔になった。
「私の娘、クリアが昨晩何者かに襲われ、怪我を負って倒れました。幸い大したことはありませんでしたが、この城の警備は完璧でした。何者かが侵入した形跡もありません」
「では誰が?」
「城の手伝いをしている者は、こう証言しました。昨晩、いつも部屋で眠っているはずの姉と廊下ですれ違ったと。姉が向かった先は、私の娘の部屋に間違いありませんでした」
 シーウは、この件を女王が隠したがった理由がわかった。
「姉が、私の娘を襲ったのです」


 その夜。王宮という一度も足を踏み入れたことのない場所の中で、シーウたちは眠りにつこうとしていた。まだ、シルヴァー女王の言った事が信じられない。
 横では、カーテン付きのベッドでシャルがはしゃいでいる。普段泊まっている宿屋とは比べ物にならないほど上質な布や、部屋の装飾品。テーブルクロスなどには刺繍が施され、床には絨毯がひかれている。現実感が伴わずに夢でも見ているのかと自問するが、手足から返ってくる感覚は本物である。
「料理もおいしかったし、ベッドも大きいし、すごいね〜!」
 シャルは部屋の中の物を一つひとつ珍しそうに眺めたあとで、ベッドに飛び乗り、言った。喜ばないシーウが不思議とでも言いたげな目で見ながらだったが。
「王族の人達って生まれたときからこうなんだよね。私達がいつも食べてるような料理って見たこともないんじゃないかなぁ」
「そうだろうな。だから国民の不満を高める者もいる」
 権力者というのは、悪戯に自分の力を誇示したがる傾向がある。もちろん例外もあるが。上品な衣服や、豪華な部屋や食事。そういったもので、自分は他者とは違うと認めさせようとするのだ。
「でも、シルヴァー女王は優しい人だったね」
「ああいう人がいるから、国がもってるんだよ」
「私、王子様とお姫様にも会ってみたいなぁ」
「王子は14歳…だったか」
「うん。私達より2つ上。王女様は同い年だって」
 シャルも女の子だから、一時期王子様というものに憧れた事もあったのだろう。フォルは逆にお姫様だろうか。
 唐突に、部屋のドアがノックされた。
「はい」
シャルが返事をすると、扉の向こうから話し声が聞こえた。
「お、王女様!お止めください!ケガをなされたばかりでしょう!?どこの馬の骨ともわからない者たちと面会など…!」
「いいのです。私は城の中だけでなく、外の知識もほしいのです。あの方たちは旅人と聞きました」
「ですが、そんな事を許せば私の首が…!」
がちゃり、とドアが開いた。王女が開けたのだ。
 刹那、シーウは王女に違和感を覚えた。いきなり城に呼ばれた人間にわざわざ会いに来た状況にか、それとも彼女の雰囲気なのか、シーウにはいまいち解らなかった。だが何かが、ひっかかる。
「初めまして。私は、この国の第一王女、クリア=ウィンド=セントライト。よければお名前をお聞かせ下さい」
「え、あ、あの…」
ショックを受けたかのように、教育係らしき女性はふらふらと部屋から出て行った。シャルは驚いたまま、口をパクパクさせている。
「緊張なさらないで下さい。できれば、いつもと同じ口調で話していただけると嬉しいですわ」
「じゃ、じゃあお言葉に甘えて…」
 シャルはベッドから下りるとぺこりと頭を下げ、
「初めまして。シャル=ウィア=クランベルトです」
「シャルさん……でよろしいのですか?」
「あ、はい!クリア王女」
 王女は苦笑し、
「できれば、クリアと呼んでいただけませんか。私もあなたのことをシャルと呼びたいんです」
「どうして…ですか?」
「私、母以外から呼び捨てにされたことがありませんの。友達もいませんし、王宮に同い年くらいの子供もいません。血縁の方たちは私よりずっと年上ですし……ですから、ここにいる間だけで結構です。私と友達になっていただけませんか」
シャルはしばらくぽかんとしていたが、明るく答えた。
「そういうことなら、よろしくお願いします。クリア王…じゃなくて、クリア」
「ありがとう、シャル。ところで、そちらの方は?」
「シーウ。私と、隣の部屋にいる双子の兄の叔母にあたる人」
「お初にお目にかかります、クリア王女。シーウ=ウィア=ヴィンセントと申します。お見知りおきを」
 紫色の虹彩。銀色に紫色がかった髪。綺麗な女性だとクリアは思った。
「こちらこそ、よろしくお願いします。シーウさん」
「シーウと呼び捨てで構いませんよ」
「では、シーウ」
 クリアとシャルは、すぐさまいろいろな話を始めた。シャルも旅をしているので、友達がいないのだ。クリアは逆に、閉鎖的な空間の中で、友というものを失った。シーウはその微笑ましい様子を、しかし何の感情もこもらない目でみつめていた。
 外を見ると、夜の街の光がまるで宝石をちりばめたようだった。


 血が半分しか繋がっていないという妹の面倒を、必死で見てくれた姉。何のつながりもないはずの二人の幼い少女を助けてくれた義兄。姉の夫、兄の妻、幸せそうな甥と姪。あの場所はもう、あの時はもう、もどりはしない。


―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 今回はお城の動乱話(?)になります。とはいいつつ、お家騒動というわけではないです。4人の王族とシーウたちの関係や、暗躍する者たちも出てきます。

 では。

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11590Eternal Seed  Act.8 夏青龍 E-mail 2002/11/22 20:04:10
記事番号11589へのコメント
 今回は連続で投稿しちゃいます。今、10話を書き始めたところなので、たぶん9話も近々投稿できると思います。

 では第8話。

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 赤い夢。紅い夢。
 それは忘れ難い過去の。
 それは忘れたい過去の。
 そして信じたくない、彼の――……。

     Eternal Seed Act.8  夢幻

 どうして。
 頭の中が、それだけでいっぱいになった。
 紅い炎。紅い血。それが視界の隅々までを埋め尽くす。もう見たくない。もうこれ以上傷つきたくない。壊さないで。傷つけないで。
 心に、またヒビが入った。
「……」
 無言で立ち上がり、自分の甥と姪を抱えて魔法を使う。飛翔魔法だ。ここから一刻も早く脱出する必要がある。姉をここにこのまま置いていくのは嫌だったのだが、女性とはいえ成人後の人間と、子供2人を抱えていくのは流石に無理だ。
 そこまで考えて、シーウははっと気付いた。
 ヴェスィアの近くに、地面に突き立てた剣にもたれるようにしている、青年の姿を。
「サルファ……」
もう既に息がないことは、見ただけでわかった。きっと、ヴェスィアを守ろうと戦ったのだろう。あちこちに傷が見受けられるし、剣から離れていないのがその証拠だった。
 ヴェスィアは、幸せだったはずだ。それだけ自分を愛してくれた夫がいて、息子も娘もいて。自分が里にいなかった間に、きっと姉は幸せになれたのだろう。
 すぐさま飛翔魔法を唱えて近くの森まで飛び、着地した後にフォルとシャルのケガを調べる。二人ともかすり傷程度だった。
 炎と黒煙が、暗い空に向かって立ち上っていた。その紅い光の中に、人影が見える。
「!?」
 それは、先ほど見た青年とは全く違う外見をしていた。
 黒い髪、緑の瞳、白い肌。しかし、自分の知っている青年ではない…。彼の黒髪はもっと短かったはずだし、緑の瞳は片目が失明していたために髪で隠していたはず。白い肌も、あれほど白くはなかった。あれでは色素欠乏症に近いほどだ。そして、人間離れしたシルエット。これでは、まるで彼ではない。
(ザードではない……!?)
 刀を持ち、もう一度魔法を唱えようとする。が、くいと後ろから誰かに手を引かれた。
「っ!」
 ばっとその手を振り払い、相手を睨みつけようとして、それが自分の甥である事を知った。シャルも目を覚まして起き上がっている。
「シーウ……?」
シーウはどう反応すればいいのかわからなくなってしまった。彼らの両親の死は伝えるべきだ。だが、まだ幼い彼らに、その現実が耐えられるのかどうかわからない。自分は大丈夫だった。もとから親という存在がいなかったのだから。だが、この2人には、幸せだった時間がある。それが壊れたときのショックは並大抵ではないだろう。
「……」
 シーウはこらえきれなくなって、目をそらした。フォルもシャルも、自分たちに何が起きたのか、だんだんとわかってきたようだった。
 恐怖と絶望が、彼らの心を蝕んでいく。それが、手にとるようにわかってしまった。
「シーウ、お母さんは…?お父さんは…?」
シャルが涙目で問い掛けてくる。シーウは、意を決して口を開いた。
「里が襲われた。お前たちの……両親も殺された。誰がやったかはわからない。だけど、今は逃げるしかないんだ」
あれほど苦しんで出した声だったのに、それはまるで感情がこもっていなくて。フォルとシャルは呆然としながら、シーウを見つめた。
「嘘…だろ?シーウ…」
「嘘じゃない。私にも止められなかった。助けられなかった……」
 できるなら、まだ眠っていて欲しかった。ここから逃げ切るまでは、目を覚まさないで欲しかった。そうすれば、自分も落ち着いて話ができただろうに。
 シャルが肩を震わせていた。シーウができるだけ優しく少女を抱きしめると、シャルはわっと泣き出した。
「お母さん……っ…お父さん……うっ……」
涙を零して泣きじゃくる少女に、シーウは言葉をかけてやることができなかった。どう言えばいいのかわからない。だが、この場合は下手に声をかけるよりも、黙っていてやるほうがよかったのかもしれない。フォルは背を向けて、震えていた。零れた涙が光って見えた。
 2人がなんとか落ち着いた頃、シーウは1つの事を決断した。
「2人とも、私についてきてくれ」
泣き腫らした目で自分を見つめる双子に、シーウは言った。
「頼れる人がいる」


 目が覚めると、まだ夜明け前だった。女王の誕生式典を翌日に控えた王城。その王城の部屋のベッドの上で自分が眠っていた。
「っ…」
 胸が苦しい。あの時の夢を見ると、何故か胸が苦しくなる。
 あの時、自分がもっと強かったら、里は滅びずにすんだのかもしれない。ヴェスィアたちは、死なずに済んだのかもしれない。自分が、もっと、強かったら……。
 暗闇のように黒い心が、今の自分を押しつぶそうとしている。気を紛らわせようと、部屋の外へ出る。バルコニーのところへ行って風にあたっていれば、少しは落ち着くかもしれない。
 ため息をつき、バルコニーへ出ると、思ったよりも寒い風が拭いていた。
「!!」
悪寒が走った。何か、悪いものが近くにいる。
 『虚空』は持ってきていない。使えるのは能力と体術、あとは魔法だけだ。
 振り返ると、扉が消えていた。どうやら結界に放り込まれたらしい。
(術者がいるはずだ……宮廷魔法士か……?)
とん、と結界の中の庭に、誰かが降り立った。青年だ。
「クレスタ…!?」
「こんばんは」
「何でお前がここに……」
「ちょっと用がありまして。でも貴女にじゃないんです。残念ながら」
 クレスタは柔和な笑みを崩すことなく、続けた。森で出会ったあの時とは別人のような雰囲気。笑みを浮かべつつ、その裏に冷徹さと冷酷さが隠されている。
「ちょっと女王姉妹にね。それから王子と王女にも」
「何をする気だ……?」
ぴりぴりとした空気の中、シーウは油断せずに言った。相手に恩があるとは言っても、恩を仇で返さないとも限らない。それにこの結界はかなり高度なものだ。
「僕の仕えている方の頼みです。これ以上は言えません」
「誰かに危害を加える気か?」
「黙秘です。ああ、それと」
 言って、クレスタはふっと目の前に出現した。シーウは突然の事で反応が遅れる。
「ちょっと言いたい事が」
「何だ」
さっと身を引き、クレスタを睨みつける。油断したら、何をされるかわからない。
「貴女の大切な人、僕たちには邪魔なんです。だから、いつか僕が“消し”に行きます」
「なっ…」
「僕にとっても、“邪魔”ですしね」
ふわり、と風になびいた髪に口付けられる。クレスタの手に、シーウの髪がつかまれている。満足げに笑い、青年は顔を上げた。
「綺麗な髪ですね」
「っ!!」
 彼がそう言った途端、姿は消え、結界も解かれた。呆気にとられた表情のまま、シーウは硬直していた。
(な…何なんだ…あいつは……)
あんな目で、あんな事を言うのはずるいと思った。びっくりするくらい綺麗に笑うのだから。怖いくらいに。それなのに、どうして好意的な、いや、それをもっと超えるような感情を込めてあんなことを呟くのか。
 突然、自身を襲った恐怖に、シーウは自らの肩を抱いた。不安が襲い掛かってくる。彼とほんの少しあったというだけのことが、何故か後ろめたく感じられる。それに、心細い。
「シーウ?」
 唐突に聞こえた、声。なのに、それを自分が待っていたとすぐにわかった。
「ヴァルス」
「眠れなかったのか?」
「あ、いや…」
言葉を濁し、視線を逸らす。暖かい。心が軽くなった気もする。
「そんなカッコしてると風邪ひくぞ?」
「大丈夫だ」
「何かあったのか?」
「…いや」
ヴァルスがすぐ横に歩いてくる。シーウを見つめ、彼女が心拍数の急激な上昇で驚いているのも知らず、言葉を紡ぐ。
「結界の気配がしたから来たんだけどよ」
ぎくりとシーウが反応する。
「やっぱ何かあったな」
「…おまえに隠し事はできないな」
「洞察力が優れていると言え」
「お前と合流する前に森であったクレスタって男が、ここに結界を張って私に話をしてきた」
「目的は?」
「言わなかった。ただ、お前が邪魔だと言っていた」
「はぁ!?」
 素っ頓狂な声をあげ、ヴァルスは問い返した。
「何で俺が!?」
「多分、お前がここに呼び出されたことと関係があるんだろう」
「女王の話か」
 シーウたちは、昨日女王に話された事をもう一度思い出した。内容は、こんなものだった。
 数日前、クリア王女が何者かに襲われ、負傷した。その際、王女の部屋にゴールドが入っていこうとしていたのを目撃した使用人が数名いる。クリア王女は軽傷で済んだが、ゴールドの居場所はその後数時間に渡ってわからず、王城内をくまなく捜索してやっと見つかったところは、王城の塔の一番上の部屋だったという。ドアは開けっ放しになっていて、おまけに本人は意識不明だったという。目を覚ましたゴールドに、シルヴァーは何をしていたのかと問い詰めたが、ゴールドは混乱しているのかしらばっくれているだけなのか、何も話そうとしなかったという。ゴールドの自室には見張りがいたはずだし、なぜゴールドが1人で王女の部屋へ向かったのかが全くわからない。意図的に王女を狙ったのであれば、もっと綿密に計画を練っていたはずだ。
 継承権争い、というわけでもないだろう。シルヴァーには子供がいるし、ゴールドはシルヴァーが即位する前から女王の地位につくことを拒んでいたという。その理由はわからないが、いずれにせよ、ゴールドが継承権を奪おうとしていたというのはおかしい。
 何かの恨みかと聞かれても、それも無いだろう。ゴールドとシルヴァーは昔から仲のよい女王姉妹と有名だった。シルヴァーは既婚者だが、ゴールドはまだ結婚もしていない。それについての怨恨というのなら、もうどうしようもないことだ。シルヴァーの夫は、数年前に病死している。ゴールドはその男の元恋人だったという説もあるが、本人が死んでしまった今、真相はわからない。
「で、ゴールドが乱心したんじゃないかとか、不老不死者じゃないかとか、そんな説があるから俺が呼ばれたんだよな」
「本人に会わないと分からないがな」
「今日シルヴァー王女に頼んでみるか」


 扉をノックし、開く。あまり音を立てずに静かにそれを済ませると、シーウとヴァルスは部屋の中へ足を踏み入れた。静かな部屋だった。少しだけ開かれた窓から入る風がカーテンを揺らし、ベッドの上で眠っている女性は少しも動かずに、ただ穏やかに呼吸を繰り返しているだけ。
「ゴールド様……?」
 シーウがそっと名を呼ぶ。女性が瞼を開き、シーウとヴァルスを交互に見比べて、不思議そうな顔をした。
「貴方たちは……」
「突然の面会、申し訳ありません。私達はシルヴァー女王に招待された客人です」
 ヴァルスの言葉に、女性は金色の髪を揺らして、一度軽く会釈をした。
「“浄化神”様なのですね」
「突然不躾で申し訳ありませんが、体に、どこかおかしいところはありませんか。勝手に体が動くとか、突然意識がなくなるとか」
「いいえ。この持病はずっと前からのものですし、このひと月、一度もおかしなことはありませんでした。5日前のことを除けば」
 5日前、というのはクリア王女が何者かに襲われた日のことだ。
「気が付いたら、塔の一番上の部屋にいましたの。どうして自分がそこにいるのか解らなかったのです」
嘘をついている様子はない。ゴールドは目を伏せた。この美しい女性が、クリア王女にケガを負わせたとは思えない。第一、ゴールドは病気で1人で塔の頂上の部屋までいけるほど体力がないのだ。
「失礼」
 言って、ヴァルスはゴールドの額に自分の手のひらを当てた。ゴールドは怪訝そうな顔をしていたが、身動きはしなかった。
「わざわざ話を聞かせてくださってありがとうございました。それでは」
手を放し、ヴァルスはシーウを伴って部屋を出ようとする。そこに、
「貴方たち」
ゴールドが声をかけた。
「妹を……シルヴァーを、助けてください」
「…?」
 シーウはわけがわからず、首をかしげた。だがヴァルスは静かに頷き、その場を後にした。


 シーウは、ヴァルスに食って掛かった。
「何故詳しく話を聞かずに引いた?もう少し内部の情報も知っておくべきだろう?」
「ゴールドは不老不死者じゃない。そうでなければ、クリア王女を襲ったのはゴールドじゃないってことになる」
「それは解っている!」
言って、ヴァルスの正面に回りこむと、
「私が言いたいのは、何故ゴールドの話を聞かなかったのかと言う事だ!」
「ゴールドはシルヴァーのことを心配している。とすれば、何か知っていることは間違いない。だがそれを、俺たちに直接伝えるのならわざわざあんな言い回しするか?病人で、いつ倒れるかわからないのは彼女自身が一番よく知ってるだろ」
「それはそうだが…」
 シルヴァー女王が危ないというのなら、クリア王女の次に狙われたと言う事なのだろうか。とすれば、犯人はあの親子に恨みでもあるのだろうか。
「ああ、そうだ。昨日の夜のことなんだが…」
「何だ?」
「結界に取り込まれる直前、グレイ王子を見た。王族の部屋のほうだったが、何かを持ってどこかへ走り去ったんだ」
「走り去った…?」
「終われているという感じではなかったがな」
 肩をすくめて言うと、ヴァルスは何か考え込む仕草をし、シーウと一緒に中庭へ出た。今日の朝、クレスタが最初に現れた場所だ。綺麗に手入れされた芝生、水をたたえる噴水。町の広場とは違った雰囲気を作り出しているそれぞれの要素が、どれも高級感をかもし出していた。
「この王城の中に、クリア王女の一件以降に入ってきた召使などの人間はいないそうだ。私達を除いてな。とすれば、その事件の前にこの王城に入り込んでいた人間が犯人になる」
「……」
 ヴァルスは顔を上げ、今日はここまでだと言って部屋へ戻っていった。残されたシーウは1人庭の花を眺めながら、自分の近くにやって来た小鳥を肩にとめた。数羽の鳥たちはシーウの肩や腕にとまり、シーウは手近にあった椅子に腰掛けた。
 静かな時間だった。こんな風に、平和に暮らしていられたらどんなに幸せだろうかと思った。気持ち良さそうに目を閉じ、柔らかな日光に当たる。
(こんな時間が続いたら……)
こんな時間の中で、皆と仲良く暮らせたら良いなと考える。小鳥たちがさえずり、時々羽を羽ばたかせて羽毛を散らせる。
「――こんなところで昼寝か?」
 声をかけられ、シーウは目を覚ました。別に眠っていたわけではなく、意識を遮蔽していただけなので、すぐに普通の覚醒状態に戻る。だが意識がなんとなくぼんやりしているのは、何故なのだろう。視線を向けると、相手は少年だった。グレイ王子だ。灰色の髪、灰色の瞳。そして身に付けている服は王族のものだ。
「寝ていたわけではありません」
「そうか」
シーウが返すと、グレイは手に持った本をシーウの座っている椅子の近くにあるテーブルに置いた。その後鳥たちを手招きし、餌を撒いた。シーウはどことなくぼんやりした気分で、それを見つめた。無関心さとはまた別の、夢を見ているような気分。儚い幻。それとも、触れることができない蜃気楼。
「一瞬、妖精かと思ったぞ」
「妖精?」
「この花に囲まれて鳥と戯れる、妖精だ」
「そんな可愛らしいものでは」
「いや、美しかった。絵画から抜け出た女神のようでもあったな」
 次々と誉め言葉が飛んでくる。シーウはほんの少し頬を紅潮させて、それでもすぐそれを振り払い、王子と目を合わせた。灰色の、しかし綺麗な目をしていた。
「お前が“混沌神”とは、信じられない」
「しかし、現実です」
シーウはいつもの瞳に戻ると、立ち上がった。鳥たちは、餌を食べ終わってまた飛んできた。
「では、私は失礼させていただきます」
「1つ聞きたい」
「何でしょう?」
「クリアの……件だが。調査は進んでいるのか?」
「ある程度は。情報もかなり詳しく得られました」
「そう…か」
 王子は何かに困っているような顔をしていた。シーウはそれを見逃さなかった。テーブルに置かれた本の題名も。踵を返してその場を立ち去る瞬間、鳥たちがバッと一斉に飛び立った。

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
 
 それと、クレスタが登場した辺りで、”少年”と”青年”と言う言葉が混同してしまっていましたが、クレスタは20前後なので”青年”です。混乱してしまった方、すみませんでした。

 では。





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11592Re:Eternal Seed  Act.8 D・S・ハイドラント 2002/11/22 20:29:17
記事番号11590へのコメント

お久しぶりです。

> それは、先ほど見た青年とは全く違う外見をしていた。
> 黒い髪、緑の瞳、白い肌。しかし、自分の知っている青年ではない…。彼の黒髪はもっと短かったはずだし、緑の瞳は片目が失明していたために髪で隠していたはず。白い肌も、あれほど白くはなかった。あれでは色素欠乏症に近いほどだ。そして、人間離れしたシルエット。これでは、まるで彼ではない。
まさか・・・ザード人間やめちゃった、とか

>「クレスタ…!?」
何故彼が・・・。
>「こんばんは」
あれっ夜明け前ってこんばんは何ですかねえ。


>「貴女の大切な人、僕たちには邪魔なんです。だから、いつか僕が“消し”に行きます」
>「僕にとっても、“邪魔”ですしね」
本性・・・?
怖い。

> 王子は何かに困っているような顔をしていた。シーウはそれを見逃さなかった。テーブルに置かれた本の題名も。踵を返してその場を立ち去る瞬間、鳥たちがバッと一斉に飛び立った。
本の題名・・・?
気になります。

それでは短いですがこの辺で・・・。
失礼しました〜

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11609Re:Eternal Seed  Act.8 夏青龍 E-mail 2002/11/23 09:21:24
記事番号11592へのコメント

 こんにちは。夏青龍です。
 
 毎回感想ありがとうございますっ!

>まさか・・・ザード人間やめちゃった、とか

 多分もう少しで明らかになります。当たらずとも遠からず・・・というところです。 

>>「こんばんは」
>あれっ夜明け前ってこんばんは何ですかねえ。

 はい(汗)。本当は「おはようございます」なんでしょうけど、辺りがまだ薄暗かったって事で・・・(言い訳)。クレスタの生活リズムにも関わるんですけどね。

>>「貴女の大切な人、僕たちには邪魔なんです。だから、いつか僕が“消し”に行きます」
>>「僕にとっても、“邪魔”ですしね」
>本性・・・?
>怖い。

 クレスタは裏に残忍な性格が隠れてます。とはいっても、完璧に冷酷になりきれるわけではなく、時に心が揺れ動きます。クレスタの仕えている”あの方”も、実際はそれほど残酷で厳しい性格というわけではなく、クレスタに汚い仕事を押し付けてばかりいるというわけではないんです。

 説明つきで返事をしてしまいました。これからもよろしくお願いします。
 では。  

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11821Eternal Seed  Act.9 夏青龍 E-mail 2002/12/1 09:02:47
記事番号11589へのコメント

 こんにちは。夏青龍です。
 やっとこさ期末が終わりました。つ、辛かった・・・(汗)。
 
 7話、8話からかなり日が経ってしまいました。おかげでツリーが落ちるかとハラハラドキドキしました。

 では第9話。

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 時間が止まることは、決してない。だから、今を生きなければならないのだ。時を無駄にしてはいけないのだ。
 自分は、上手く今を生きているのだろうか。無駄にしてはいないだろうか。
 自分は、心の時を止めてはいないだろうか。

     Eternal Seed  Act.9

 『不老不死者と人間の戦いの歴史』。それが、グレイ王子が読んでいた本の題名だった。それは、人間が不老不死者を倒すために研究を重ねた歴史、そこへ“浄化神”が現れ、人々を救った歴史だ。
 王子が何故、そんな本を持っていたのかは解らない。王子の教育係に尋ねても、今の歴史のカリキュラムはその範囲ではなく、もっと近い時代のことを勉強しているという。王子はそれほど不老不死というものに興味があるようには見えなかったが、最近、書庫に入っては不老不死者に関係する本を読み漁っているとも言っていた。
 不老不死者とはつまり、いずれは暴走し、体が魔物化してしまう人間たちだ。とはいっても、その暴走が一生の内に現れない、つまり隔世遺伝のため自分の代を通り越す場合もある。誰が不老不死者かは、浄化神などの神族にしかほとんどわからない。シーウも、その見極める力は持っている。
(魔物の討伐でもする気か…?)
 冗談混じりにそんな事を考えつつ、シーウは城内を歩いていた。この城内に、“力”の気配は少ししかない。気配を絶つのと似たような方法で隠すことも可能だが、シーウの能力を持ってすれば、それを看破することも簡単なのだ。もっとも、ヴァルスのような、手練レベルの者たちならば、息を潜めているくらいならできるかもしれない。
「―――でしょう…?」
 話し声が聞こえた。少女の声。クリアだった。近くの部屋から聞こえてくる音を、シーウは耳を澄ませて聴いた。
「あなたは何をしてくれるの?」
どうやら、もう1人相手がいるらしい。シーウは扉を横目に通り過ぎ、部屋が廊下と壁一枚をへただけの空間である事を利用して、壁へ耳を近づけて聴覚を研ぎ澄ませた。
「ちょっとしたお手伝いを」
(クレスタ…!?)
 反射的に、シーウは扉へ向かおうとした。だが、下手に出て行っても、クリア王女を人質にとられてしまうかもしれない。
「じゃあ、お願いがあるの」
「どうぞ。なんなりと」
シーウはますます会話を聞き取ろうと耳をそばだてた。その時。
「シーウ、何してんだ?」
「フォル」
驚いて騒ぎはしなかったものの、最後の重要な会話を聞き逃してしまった。フォルは事態が飲み込めず、ため息をついたシーウに怪訝そうに首をかしげた。
「誰かいるのか?」
「いや…いい」
シーウは、中の気配が一つ消失した事を知っていた。クレスタはまた姿を消したらしい。
「シャルがいねぇんだ。見なかったか?」
「シャルが?」
「この時間だし、部屋か庭にいると思って探したんだけどよ」
 昼食より少しだけ前の時間帯。シャルには午前中は事件の調査で一緒にいられないからと、朝食の後すぐ別れた。シャルは頑張ってねと言って、部屋にいったん戻ったはずだった。
「今、ヴァルスが歩き回って探してるはずなんだ」
 ヴァルスが探しているのなら、すぐに見つかるだろうとシーウは思った。シャルの行動パターンは大体わかっているだろうし、使用人や召使に聞けば足取りもつかめる。さして困難な作業でもあるまい。だが、そのとき。
「シーウ!」
「ヴァルス?どうした、そんなに急いで」
「シャルが行方不明だ!使用人も召使も、朝食の後一回も見かけてないらしい!」
「な…」
 その事実に驚きを隠せず、絶句する。自分と別れた直後、シャルは消えてしまったというのか。ヴァルスは城中を走り回ったらしく、シャルの足取りが全く掴めない事に、シーウやフォル以上に危機感を感じていた。
 はっと気付き、シーウは先ほどの部屋へ飛び込む。王女なら、シャルと友達になりたいといっていた彼女なら、何か知っているかもしれない。
「油断した…!」
王女がいなくなっていた。部屋のどこかに隠れているわけでもない。自分たちが話している間に抜け出したのだろう。シーウは歯噛みした。クレスタとの会話のことも聞かなければならなかったのに、みすみす見逃してしまったのだ。その上、シャルの居場所を特定するための証言も得られない。
「王女がいたのか?」
「クレスタも一緒だった。王女と何か話していたんだ」
「クレスタって…例の結界張って侵入してきた奴か?」
「間違いない。あいつの気配だった」
「シャルがそいつに捕まったのかもしれないのか?シーウ」
 フォルの疑問に、シーウははっと思い出した。クレスタが“消す”といっていた者は、『シーウにとって大切な人物』。だとすれば、シャルもそのうちに入りかねない。
「フォル、女王にシャルがいなくなったことを話して、私達だけで捜索すると言ってきてくれ。クレスタははっきりいって危険だ」
「わかった!」
 そう言って、フォルは走り出した。
「ヴァルス、フォルと一緒にシャルを探してくれ。私は1人で行く」
「なんでだ?一緒のほうが安全だと思うんだが」
「私が出て行けば、多分あいつは現れる。お前たちを危険にさらしたくない。」
「俺そんなに頼りないか?」
落胆したように、ヴァルス。シーウは首を振り、
「シャルのことを後で頼むためだ。私がいなくなったとき、お前がいないと困る」
シーウはヴァルスの横をすり抜けて走り出した。ヴァルスは、悲しげな目でその姿を見送った。


「ん……」
 小さな声を上げ、シャルは目を覚ました。なんだか、頭がぼうっとする。
「ここ……どこ…?」
 暗くて、辺りが良く見えない。自分が横たわっていたのはどうやらベッドらしいが、自分たちに与えられた部屋のそれではなかった。もっと硬くて古い感じだ。
「私…」
 朝食を食べ終えて部屋へ戻ろうとして、次の角を曲がれば自分の部屋だというところまで歩いていったのは覚えている。だが、そこで記憶が途切れている。攻撃された衝撃も、魔法を使われたような感覚も、何も無い。なのにどうして自分は気を失っていたのか。
「扉……どこだろ……」
 魔法の呪文を唱え、灯りをともす。空中に光の球が現れ、辺りを照らす。その途端、シャルの喉がひっと鳴った。
 辺りに散らばっていたのは、動物の骨――と思われるもの。白くて細長いそれが、床のあちこちに散らばっている。小さなネズミの骨から、馬の骨のような大きなものまで、それらに何かの法則性や規則性があるようには見えない。シャルは震えそうに鳴りながら、灯りを少し自分から離して浮遊させた。もう少し向こうに移せば、扉が見えるかもしれないという期待を込めて。
 現れたのは、大きな牢屋だった。何か、大型の獣でも閉じ込めるような大型の。その奥で、何かが唸り声を上げている。獣…なのだろうか。
「な…何……?」
 怯えの混じった声で、シャルは言った。言ったつもりだった。実際には、声になるはずの音は聞こえず、振るえた呼吸音だけが耳に聞こえた。
「あ…」
 そこにいたのは、純白と言っていいほど真っ白な毛並みをした狼だった。いや、獅子に見えなくもないだろうか。鬣(たてがみ)のようなふさふさとした毛が、首の辺りに生えている。その後ろから、何か触手のようなものが、4本伸びている。これも毛の色と同じく白かった。幼い子供の腕くらいの太さのそれが、不意にシャルの方に伸ばされた。反射的に、シャルは身を守ろうと腕を前に交差させた。だが、白い触手は優しくその腕を撫でただけだった。
「え…?」
良く見ると、触手の先のほうは半透明になっていた。それが淡く発光し、光が弱まったり強まったりを繰り返す。狼の目を見つめると、意外に優しい目つきをしていた。白い、透きとおるような綺麗な瞳。角度を変えれば、虹色に色が変わりそうな、銀色といってもいい色彩。
 触手は、伸ばしたり縮めたりできるらしく、狼は体を動かすことなくシャルに触手で触れた。今度は、シャルの腕を引っ張るように触手が絡まった。シャルは恐る恐る狼に近づき、素早く観察した。狼でも獅子でもなく、その中間のような姿。自然の生物ではないのかもしれないと、シャルは思った。
「あなたは……」
シャルは狼の瞳と自分の視線を合わせた。そして次の瞬間、彼女の精神に映像が送り込まれてきた。
 幼い少女。王族の服装。クリア王女だ。そこへ、何者かが現れる。女性のようだが、顔はよく見えなかった。その人物が、クリア王女に手のひらを向け、刹那、王女の姿がコピーされた。女性がクリア王女と同じ姿に変わったのだ。本物のクリア王女は怯えたように後ろへさがり、再び女性だった偽物の王女が手のひらを向け、そこで光が弾けた。
(何!?)
 王女の姿がその場から消え、場面はこの牢屋に移される。牢屋の中に押し込まれた狼は、触手を使って鍵を開けようとしていたが、流石にそこまで複雑な動きをさせることはできなかった。そこへ、いきなり男が現れる。女性のような顔立ち。魔法士の服装。シャルはまだ知る由も無いが、その男は間違いなくクレスタだった。
『こんな姿に変えたんですね。まあ、蛇や蛙よりはマシでしょうが』
男は一方的にいい、シャルは男を見ようと意識を集中させた。そうすれば、カメラの視点が変わるような気がした。
『全く……ファロンさんは強引なんですから…』
白銀の獣は男を睨みつけたが、男はそれをさらりと受け流す。
『心配しなくてもいいですよ。あと数日もすれば、出して差し上げます。その時に貴方の母上が生きているかどうかは、わかりませんが――』
 映像が、そこで途切れた。


 シーウは、城の敷地内にある地下牢へ向かっていた。裏庭の方に入口があり、そこから螺旋階段を下りていく。迷わずここへ来たのは、人を捕まえておくのには牢屋が一番手っ取り早いからだ。あいにく、この城には緊急用の脱出通路があるだけで、隠し通路などはなく、人目に触れずに人を1人を隠せる場所は無いに等しかった。
 地下へ降りていけば降りていくほど、空気が冷たくなっていく。何か、嫌な予感がした。こんなところに魔物が居るはずはないのだが、悪い気配が複数感じられる。
「シャル、いたら返事をしろ」
 あまり大声をださずとも、声が反響して広い地下牢の隅々にまで響く。静かな地下牢で、今のところ誰も入れられていないようだった。
 そこまで考えた次の瞬間、あるはずのない空気の流れを、感じた。
「ふっ」
刹那。横殴りの風が自分に向かって来た。反射的に、シーウは『虚空』を抜き放ち、自分の背後に迫っていたものに斬りつけた。どさりと倒れ伏したそれは、間違いなく魔物だった。
(何故こんなところに……)
 ゆぉぉおおぉ……
 おおぉぉ…
 魔物の、唸り声が聞こえた。どうやら、他にも数体いるらしい。
 面倒くさいな、などと思いながら、シーウは刀を手に、歩を進めた。牢屋の中を確認しながら、暗い地下牢を歩き回る。
 グオオッ!!
 無表情に、襲ってきた魔物を斬り伏せる。風の流れるはずの無い地下牢。物が動けばすぐにわかるのだ。複数の魔物であろうと、シーウは簡単に倒しきる事ができる。その自信も力も持っている。表情一つ変えずに、魔物を次々と斬り倒し、進んでいく。――何の障害も無いかのように。
 自分の前では、何者も無力な存在でしかないとでも言うかのように。1人、歩を進めていく。


 映像が途切れてから、数分が経過した。暗い牢屋の前で、シャルは狼に問いかけた。
「私、いつからここにいるの?」
狼の触手が、空中に文字を書いた。それは、数十秒の間文章として空間に刻まれていた。その文章の意味が真実なら、どうやら自分は2時間前くらいからここにいるらしい。狼はまた空間に文字を書いた。
“ここはずっと前、王族の1人が動物を飼っていたところです”
「へえ…だからこんなにいっぱい動物の骨が……」
 言いながら、自分の周りの動物たちの骨に視線を移し、やはり怖くなって目を背けた。
“飼われていたのは猛獣だったのです。ここに残っている骨の持ち主たちは、餌にされてしまったものたちです”
「猛獣…?ってことは、肉食の動物だよね」
“その猛獣は、突然変異で生まれた猛獣だったらしく、珍しい動物だったので、王家が引き取ったと聞いています”
 巨大な、それこそ人の背丈ほどもある獣。尖った爪は多大な攻撃力を有し、走る速さも尋常ではなかったという。いったい、どのような過程でその動物が生まれたのか、はっきりとはわかっていない。魔物との合成獣では、という説もあったが、どう考えても一つの種類の外見しか有していなかった。その獣を引き取った王族の者は、獣を飼いならし、服従させようとしていた。が、十数年前に脱走し、行方がわからなくなったという。
“その獣は今の私とは正反対で、闇のような漆黒の毛をしていたそうです”
「真っ黒な…獣…」
 白銀の獣が、不意に顔を上げた。何か、足音が近づいてくる。
「だ…誰…!?」
“私の後ろに来て下さい”
光の文字が並びを変えて、シャルの目の前で文章を組み立てた。
「え?」
“早くしないと、気付かれます”
 シャルはかなり間隔が広く鉄棒が立てられている牢の中に滑り込んだ。狼の後ろに、隠れるように移動する。
 足音が、近くで止まった。近づいてきた人物の灯りと思しき光が、ずっと向こうの扉の隙間から入り込んだ。人影と共に。
「さて……“あなた”の出番ですよ」
扉を開いて入ってきたのは、どこか女性的な印象を受ける顔の、20歳前後の男。金髪碧眼の、かなりの美男子だ。魔法士らしく、神官服のようなものを身に纏っている。
「準備が整ったんです。女王のところへ行きましょう」
(シルヴァー女王のこと…?準備って…)
 狼は唸り声を上げて相手を睨みつけていた。男は柔らかな微笑を浮かべていながら、それは何の感情も持たない仮面のような表情だった。
「もうここを嗅ぎ付けてきている人もいますし」
 ぐるるる…
男の穏やかな声とは正反対に、狼は憎悪の眼差しで彼を睨みつけていた。唸り声まで上げている。シャルは狼が飛び出していきそうでびくびくしていた。
「ファロンさんの許可ももらってますからね。さあ、早くここから――」
出ましょう、と言いかけて、男は黙った。背後から、冷たい氷のような空気をあてられたのだ。
「すごい闘気ですね」
「お前の気配の絶ち方も普通ではないがな」
 少女の刃が、すぅっと首筋にあてられる。そのまま、微動だにせず紫色の目をした少女は続けた。
「おまえがここへきた理由は何だ」
「ですから、王家の方たちに用があったんですよ」
「過去形…か」
「ええ」
 クレスタが、ふっと動いた。杖を振り、シーウを刀の射程距離外に突き飛ばす。シーウはバランスを何とかたて直し、再び構える。
「シーウ!!」
突き飛ばされたシーウを見て、シャルが檻から飛び出してくる。クレスタの視線が、その姿を捕らえる。男は何の躊躇いもなく呪文を唱え、
「!バカっ、出てくるな!」
シーウの声も時既に遅く、シャルに向かって攻撃魔法が放たれる。しかしそれがシャルにぶつかる寸前、白銀の狼の触手から放たれた光の筋ようなものが、それを撃ち落とす。男はそれにすら何の感慨も抱かぬ様子で、シーウに向き直る。そこへシーウが斬りかかった。
 クレスタは杖を操り、シーウの刀を弾いていた。それでもシーウは次々と、斬撃クレスタに浴びせ続けた。
(読まれている…)
 柔和な笑みを崩さぬまま、クレスタは次々とシーウの連撃を受け、弾いていく。常人なら、既に何度となく斬りつけられている。それを、軽々とかわし続けているのだ。同調能力の成せる技だ。
「黒焔破爪(ダーク・クロウ)!」
クレスタの唱えた魔法が、黒い蛇のようにシーウに向かって飛んでくる。
「破っ!」
それを、シーウも易々と叩き落とし、クレスタに詰め寄る。間合いを詰め、2つの刀をクレスタめがけて振りかざす。が、すっとクレスタが身を引き、刃は空を切った。
「双蛇追撃砲(ホーミング・ブラスト)!」
2つの魔力球が、シーウを挟み撃ちにしようと迫り来る。シーウはクレスタへの攻撃を中断し、2つを両の刀でほとんど同時に消し去る。その隙に、クレスタは別の魔法を解き放つ。
「暗灰塵魔弾(ダーク・ダスト・ブレイク)!!」
黒い塵のようなものが、シーウの周りに漂い、様々な方向からぶつかってくる。しかしシーウも律儀に剣技だけで対応しようなどとは最初から思っていない。
「光竜壁陣(ライティング・シールド)」
 ばしゅっ
 光の壁のようなものが黒い塵を弾き飛ばし、シーウは無言のまま、再びクレスタに近づいた。しかし、今度はゆっくりと。
「さすがですね」
「お前も、な。まだ本気は出していないのだろう?」
クレスタはいまだにこにこと笑っている。シーウは彼のつかみ所がなくて困惑した。
「シーウさん、場所を変えませんか?ここでは狭すぎますし、そこの銀髪のお嬢さんも危ないでしょう。何せ地下牢ですしね」
「逃げる気か?おまえは一体何を企んでいる」
「教えて差し上げる事はできません。ですが時がくれば…」
そのとき、獣が咆哮した。それはまるで超音波か何かのように、3人の頭に響いた。
「きゃあっ!」
油断していたシャルが頭を抱えて倒れ、クレスタまでもぐらりと体制を崩す。無事に立っているのはシーウだけ。シーウは獣の雄叫びと共に虚空を振り、衝撃波を作り出して相殺していたのだ。
(これは……)
「くっ」
 クレスタが、魔力球を放って獣を焼き尽くそうとする。獣は檻の中からでありながら、うまく応戦していた。
「シャル、早くこっちへ!」
「わ、わかった!」
シーウに声をかけられ、やっと頭を上げたシャルは、急いでシーウに駆け寄った。足元がおぼつかないのは、先ほどの音波のせいだろうか。
 狼が再び雄叫びを上げる。シーウとシャルは、クレスタに注意しながら階段のほうへ向かった。早くここから出て、広いところに行かなくては。あの“2人”の攻撃で、ここが壊れるのも時間の問題だろう。
 何故か、あの“2人”が地下牢を破壊するであろう事が、はっきりとわかった。
(戦いが始まる――…!)


―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 因みに、毎回の最初の詩のような部分は、それぞれ違う人物の呟きであったり、こころの内であったりします。基本的に、誰だかわからなくても本編を読む際に影響はない、と思います。少なくとも、最初の詩が誰だから話が変わる、とかそういうことは、私が不器用なのでできません(汗)。

 では。

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11833Re:Eternal Seed  Act.9 D・S・ハイドラント 2002/12/1 20:52:59
記事番号11821へのコメント

クレスタ意外に強いですね。
何かゼロスっぽいよーな。

それにしてもグレイ王子の本のことと、
>『こんな姿に変えたんですね。まあ、蛇や蛙よりはマシでしょうが』
>男は一方的にいい、シャルは男を見ようと意識を集中させた。そうすれば、カメラの視点が変わるような気がした。
>『全く……ファロンさんは強引なんですから…』
が気になります。

それでは短いですが次回に期待しつつ。
さようなら〜

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11951Eternal Seed  Act.10 夏青龍 E-mail 2002/12/8 19:21:40
記事番号11589へのコメント

 こんばんは。夏青龍です。
 
 やっと10話目までやってこれました!私にとっては10話というのはかなり長い感じがするので、すごく嬉しいです。
 感想をくれたD・S・ハイドラントさんには、この場を借りてお礼を。これからもよろしくお願いします。
 期待にそえるかどうかは解りませんが、「Eternal Seed」シリーズを皆さんよろしくお願いします。
 
 実はこの話はシリーズ化(?)するかもしれないのです。あ、あくまでも『かもしれない』ですけど。別の時間軸の話とか、時間軸は同じだけど別の人達の話とかを書くかもしれないんです。
 
 とまあ、いろいろ話しましたが、まだまだ10話目なのでどうなるかはわかりません。でもできたら長く続けたいと思ってます。

 では10話目です!

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
  
  時がくれば。
  時がくれば、“私”は会う事ができる。
  時がくれば、“私”は“それ”になることができる。
  その、時が、くれば……。

     Eternal Seed  Act.10  王城内戦闘

 大きな揺れが、城全体を襲った。
「なっ、何だ!?」
「爆発…!?」
 フォルとヴァルスは爆発音と衝撃に驚きながら、音のした方向を向いた。窓から見える場所に煙はない。今2人がいるところは、裏庭を眺められない場所だったのだ。
 辺りでは使用人やメイドたちが、壁に手をついて、皆ざわざわとどよめき始めている。
「!」
 ぴくん、とヴァルスが何かに反応する。フォルはその様子を見逃さず、勝手に走り出したりする事は無かった。
(シーウの魔力とシャル……それに……)
感じたことの無い、不可思議な魔力の気配。不老不死者に似ているようで、違う気配だった。とはいえ、この強力な魔力なら、どこでどのように使っているかくらいはわかるものだ。それが、つかみ所の無い波動のせいで、しっかりとした場所の特定ができない。
(今……北側…裏庭の……地下…!?)
渦のようにその一点へと集まっていく魔力。ヴァルスはその気配を頼りに、場所の特定をできる限り精密に行う。そして、もう一つの魔力の気配が見つかった。こちらは、人間の魔力の気配だ。だが、人間が魔法を使っているわりには、魔力の動きがおかしいようにも感じる。
「ヴァルス兄、行ってみるか?」
「ああ……」
 感覚を通常状態に戻し、ヴァルスは返事をした。気配を広範囲にわたって読み取る事ができるのは、ひとえにヴァルスの努力の賜物である。本来、これほど広範囲の索敵は、“浄化神”であってもできないはずなのだ。
「裏庭の方だ。急ぐぞ!」
 言って、ヴァルスとフォルは駆け出した。その後ろに、今こんなところにいるはずのない、王女の姿があったことに気付かないまま。
「始まったわ……」
王女は12歳の少女とは思えない妖艶な表情で、くすくすと笑った。そして、ヴァルスとフォルの消えた方向とは逆の方へ、向かった。


「あ、危なかったぁ…」
「ケガは?」
「ううん」
 飛翔魔法を使って高速で螺旋階段を上がり、地上についたところで下から爆音が轟いた。さらに次の瞬間、地下牢ががらがらと崩れていったのだ。
 シーウは冷静にシャルの様子を見、ケガがないと知ると安堵のため息をついた。
「どうして、あそこにいた?」
「わかんないの。朝ご飯食べた後、部屋に戻ろうとしたら、いきなり意識がとぎれて…」
「近くに人の気配は?」
「なかった…と思う」
 シャルの記憶は、部屋につく前で途切れている。まるでその場で眠ってしまったかのように。
「!!」
 シーウがシャルを抱えてさらに飛び退る。崩れ落ちた階段の下から、新たな攻撃魔法が放たれ、穴をあけたのだ。巨大な魔力球が、空に向かって飛んでいった。
「あっ!」
シャルは巨大な穴から飛び出した2つの影を目で追った。ひとつは人間、ひとつは獣。
「あの獣……」
シーウは目を凝らし、狼のような獣を見つめた。明らかに自然界の生き物ではない。獣は四肢を地に付け、クレスタは宙に浮いている。両者の間には、緊張感がはりつめていた。
 シーウは『虚空』を持ち、シャルに安全なところ――中庭――まで逃げるように言い残し、相対するものたちの間に突っ込んでいった。
「何のつもりです?」
「この獣に何の用だ。私の見方が正しければ、この獣は普通の獣ではない」
「ふふ…さすがは“あの方”が目をつけただけはある」
「答えろ。この獣は、本当は“人間”なんだな?」
 獣が、後ろで反応したのがわかる。
 シーウは、獣の本当の姿を見破っていた。雰囲気がただの獣ではない。まるで、獣の形をした人間のような感じだったのだ。この狼が魔法を使える点からも、ただの魔物や突然変異の動物でないことはわかる。
 高い知性を持ち、魔法を使い、クレスタと敵対した者。獣の姿はしていても、明らかに異なる種族の雰囲気を持ち合わせるこの獣は――。
「しかし誰かはわかっていないでしょう」
「確信は無いが、見当はつく」
「ほう?」
 クレスタは面白そうに目を細めた。肩の辺りまで届く金髪が、風で揺れる。シーウは視線をクレスタに向けたまま、静かに続けた。
「――クリア王女、だな」
「……ご名答」
途端、狼が輝き、光の中で形を変えていく。人間の形に。
「あ……」
“本物の”クリア王女は、自分の手足をまじまじと見つめ、それからシーウ視線を移した。
「ありがとう……ございます…」
「…そんな格好では風邪をひきます。こんなものでも、ものの足しにはなるでしょうから、着て下さい」
言って少女に自分の上着を渡す。王女はおずおずとそれを受け取り、薄着の上に着た。おそらく、数日前に襲われたときには誰かとすり替わっていたのだろう。
「この呪いはですね。正体を見破られるともとの姿に戻るように仕組まれているんですよ」
「なるほどな」
「さて、そろそろお仲間が来ますよ」
クレスタの視線の先には、走ってきたヴァルスとフォルの姿。中庭に行く途中で合流したのか、シャルも一緒だった。
「初めまして。“浄化神”一行」
 クレスタのその声は、やたらと穏やかで、しかし邪悪な雰囲気を帯びていた。


 その頃、王城の中では恐ろしい事が起こっていた。
「クリア王女!?」
 使用人たちが廊下で呻き声を上げながらもがいている。その廊下をたった今歩いてきた少女に、シルヴァー女王の部屋の警備についていた兵士は声を上げた。
「一体…!?」
「お母様に、会わせてください」
「は、はあ。しかし今シルヴァー女王は……」
王族としての仕事をしている最中で、しばらくは部屋に誰も入れないでくれと数分前に頼まれのだと兵士は少女に告げた。少女は、そう、と呟き、
「なら、無理にでも会わせていただきます」
 直後、少女の目の色が変わった。その名と同じ透きとおった色彩が、赤という色へ変貌する。兵士はそれを見た次の瞬間、どっと倒れた。
「私にたてついたりするからです」
兵士は、すでに虫の息だった。さっきの使用人たちは、何とか軽いケガで済んでいるが、少女の華奢な腕は、王族の警護を任されるほどの兵士の脇腹を貫き通していた。
 少女は扉を押し開け、部屋へ足を踏み入れた。
「……!」
 部屋の奥で仕事をしていたシルヴァー女王は、自分の娘とそっくりな、しかし瞳の色が異なる少女を驚いたように見つめた。
「時が来ました。一緒にきていただきます」
「何者…です…?」
少女はくすくすと笑い、女王と目を合わせた。
「ファロン、と言います」
 刹那、女王はどさりと床に倒れ伏した。ファロンの魔法で気絶してしまったのだ。少女はそれを見て満足げに笑い、姿を変えた。文字通り、少女の姿から大人の女性へと変身したのだ。
「さて、お祭りの始まりねん」
 ファロンと名乗った女性はシルヴァー王女を魔法で自分の近くに浮かせ、飛翔魔法を使って窓から飛び出した。


 シーウは『虚空』を握り直すと、クレスタに向かって言った。
「もう一度聞く。一体何をしに来たのか」
「お祭りの準備…とでもいいますか」
「お祭り?」
「この世界の秩序を崩すための、お祭りの準備ですよ。“混沌神”」
はっとシーウは空を見上げた。見たことのない女性が、シルヴァー女王を連れて降りてくる。
「あら、お話の途中だったかしらん?」
「ちょうどいいですよ。ファロンさん」
 女性は濃い茶色の髪に、赤い目をしていた。長い茶髪を後ろに流して、妖艶な微笑みを浮かべている。
「あなたが“混沌神”さん?初めまして。ファロンって名前なのんv」
 語尾にハートマークがついていそうなノリで話す女性に、シーウは圧倒されてしまった。圧倒されつつ、その女性もかなりの強敵である事を悟っていた。
「それよりクレスタちゃん、どうするのん?このヒト。あの狼さん、もとの姿に戻っちゃってるじゃない。スウォード様の…」
「ファロンさん!!」
ファロンは慌てて口を抑えるが、時既に遅し。シーウは主の名前だろうと見当をつけることができた。クレスタはファロンをそれ以上は責めずにおいたが、ファロンは自分のうかつさに後悔しているようだった。
「聞かれちゃったからには、あっちの人達は始末しないとねん?」
「“混沌神”の連れですか」
「わかってるじゃないん」
「それじゃ、僕はこの人を」
言ってクレスタは、シルヴァー王女に杖をつきつけた。
「っ!お母様っ!!」
「下がって!」
 シーウが叫ぶ王女を背に剣を構える。そのまま、クレスタのほうへと突っ込んでいった。が…。
 がぎぃんっ
金属音がしたかと思うと、目の前には魔法士姿の青年ではなく、女性の姿があった。女性は軽々とシーウの『虚空』をそのグローブの爪で防いでいた。
「そんな直線攻撃じゃ、クレスタちゃんには効かないわよん?」
ファロンのつけているグローブからは金属の爪が伸びている。攻守どちらにも使えそうな外見。もしつかまったら、あっさり引き裂かれてしまいそうだ。
「心配は無用です。ファロンさん。あちらへ行ってください」
「はぁ〜い」
彼女はシーウの目の前からふっと消え、ヴァルスたちの眼前に出現した。
「くっ」
 急いでそちらへ行こうと体を向けると、首筋に冷たいものが押し当てられていた。
「動かないで下さい」
クレスタの杖だった。杖の先には綺麗な宝石がはめ込まれているのが見える。
「黙れ!」
シーウは目にもとまらぬスピードで杖を刀で叩き、クレスタに連撃を浴びせる。しかし、さきほど戦っていたときよりも焦りが出ている所為か、動きがめちゃくちゃになってきている。
 間合いを取り、対峙すると、クレスタにはこれといって隙が無かった。自分が攻めていけそうな場所ほど隙をなくしている、といった感じだ。
「“同調能力”がそれほどのものとはな」
「便利な力でしょう?」
 クレスタは、自分と相対している者の心を読むこともできる。故に、相手がどこに突っ込んでくるとか、どう切り払おうとしているのかということが手にとるように解るのだ。半分は予知能力に近いかもしれない。
(クリア王女とシルヴァー女王がいたんじゃ…)
 二人の存在が、シーウやヴァルスたちの動きを封じている。普通の人間である2人、しかも王族にケガをさせたりなどできない。ちらりと2人を一瞥し、クレスタに再び斬撃を浴びせる。そこへ、灰色の髪の少年が走ってきた。
「母上、クリア!」
「お兄様!」
クリア王女が少年に気付き、駆け寄っていく。シーウは2人の近くに着地すると、防御魔法を使った。
「静寂封陣(サイレント・ウォール)」
 この魔法は外からの攻撃を遮断し、さらに中の音を外にもらす事が無いという作戦会議にもってこいの魔法だった。シーウは少年と少女を交互に見、目線を合わせていった。
「これから、私があの男の隙を作ります。王子と王女は、母上を連れて私の魔法で逃げてください」
「で、でも貴女が…」
 王女が心配げにシーウを見るが、シーウは相変わらずの無表情ぶりで、
「私は大丈夫です。飛翔魔法をかけますから、女王を連れて少し離れたら準備をして下さい」
静かに告げるシーウに、王子は決心したような顔と声で言った。
「…わかった」
「お兄様!?」
「必ず母上を助ける。手助けを頼む」
「……お兄様」
「女王をよろしくお願いします。では」
シーウは結界を解き、クレスタに向かって魔法を放つ。
「雷爆砲撃(サンダー・フレイム)」
雷光が青年に向かって突き進み、途中で分裂、四方八方から襲い掛かる。だがそれだけではなく、シーウ自身もクレスタの所へ飛び込む。煙が立ち込める中へ、少女の姿がかき消えたのを見て、グレイ王子が走り出す。多少なりと、武術の稽古もつけられているので、足もそれなり速い。
「母上!?」
 空中にふわふわと浮いていた母親の手を取り、背負うと、妹を連れてその場から離れる。煙の中から、剣戟が幾度も耳に届く。
 刹那、煙から飛び出してきた少女の手のひらから魔法が放たれる。魔法の光は親子三人を包み込み、その場から離脱させる。
「逃げられましたか。まあ別にかまいません。僕の管轄じゃありませんし」
「管轄?」
「僕らの役目はそれぞれ違うんですよ」
「お前…一体何を企んでいる」
「ですからさっきも言ったでしょう。この世の秩序を…」
 突然間合いを詰められ、シーウが刀を振るうよりも速く、青年は彼女の両手を封じた。
「崩すための計画だと」
優しい微笑みに戦慄し、シーウはもがいた。
「僕たちのところへいらっしゃいませんか?あそこなら、誰も貴女を非難したりしない」
「な…にをっ……ぐっ!」
 外見からは想像もつかない力で腕を掴まれ、からんと『虚空』が地に落ちる。ぎりぎりと音がしそうなほどの握力。シーウはそれでもクレスタを睨みつけた。
「僕に勝てないかもしれないと思いましたね」
笑顔を崩さぬクレスタ。しかし声は真剣だ。
「あなたを待っている人が、こちらにはたくさん居るんです。“あの方”も、僕も……」
「お前たちが何を企んでるか知らないが、幼い少女に呪いをかけて牢屋に閉じ込めるような奴らと組む気はさらさら無い」
「そんなことを言っていても、心の中では期待しているじゃないですか。自分の居場所があることを」
「違う。私の居場所はもうここにある」
 ヴァルスと、フォルとシャルの側で、旅をし続けている。今のこの状態が、シーウにとっては今までで一番幸せだ。たとえ戦いに巻き込まれようと、人から非難されようと、3人が――ヴァルスがいてくれれば自分は生きていられる。
「そんな言葉で、自分を騙し続けるのですか。あなたは知っているはずです。この世界がこのままなら、あなたはずっと辛い思いをし続けるということを。貴女の気が休まるところなど、今の世界にはどこにもないのだと」
「そうだとしても、おまえたちの方に行くつもりは無い。絶対にな。それに…」
「何です?」
手の先に血が届かなくなっているのを悟り、だがシーウは毅然と青年に言い放つ。
「ザードの名前を語るような奴のところではなおさらだ」
 ザード。彼は、魔剣士一族の長になるはずだと、そう言われていた青年。英雄と呼ばれるような、そんな男だった。シーウとヴェスィアの面倒を見てくれた、恩人であり、シーウにとっては歳の離れた兄のような存在。彼の名が、ザーディルス=アルスター=スウォード。
「“あの方”が、その“ザード”だったら、どうします?」
 すっと、シーウの顔色が変わった。
「ありえなくは無いと、思いましたね。解りますよ。僕には」
「ザードは……ザードはそんな事をしたりしない。少なくとも、子供に手を出すような真似は――」
言い募るシーウ。そこへ急に、クレスタの手の力が強くなる。そのまま骨が砕かれそうな勢いだ。シーウはさすがに苦悶の表情を浮かべ、逃れようと抵抗するが、両腕を捕まれてはそれもおぼつかない。
「“あの方”の姿をお見せしてもよろしいのですが」
「そんなもの…」
「いらない、と。自分はその“ザード”を信じていると」
「当たり前だ!」
シーウが言い放つと、クレスタはため息をつき、
「……すみません」
 直後。
 シーウの腕の骨があっけなく折られた。


「シーウっ!!」
 シャルが悲鳴じみた声をあげ、駆けていく。ヴァルスはそれを、横目で見つめた。さっきから、こちらではファロンを相手に奮戦していた。ヴァルスとフォルの2人がかりでも、この女性はやっかいだった。
「どぉしたの?かかってこないのん?」
「このぉっ!!」
 フォルが細身の剣で斬りかかる。ファロンの爪は盾のようにそれを遮り、もう片方の爪がフォルに迫っていく。
「くっ!!」
ぎりぎりのところで飛び退き、剣を構えなおすフォル。服は幾度か爪に引き裂かれたらしく、皮膚には達していないものの、すでにぼろぼろになっている。
「影縫不動(シャドウ・ストップ)!」
フォルが投げた剣がファロンの影を貫き、ファロンの動きが一瞬止まる。
「翔竜撃破槍(ドラゴン・ブレイク・ランス)!!」
そこへ、ヴァルスの攻撃魔法が突き進む。しかし、最後までファロンは笑みを崩さなかった。
 着弾した魔法が煙をもくもくと立ち上らせ、女性の姿は見えなくなる。フォルとヴァルスはそれ以上の攻撃を中止し、シーウとシャルの方へと向かった。
 くすくすと笑う声が、煙の中から聞こえた。
「なかなか、センスはいいのね…だけど、これくらいじゃわたしは倒せないわよん」


 地面に倒れ、声を押し殺しているシーウに、シャルが駆け寄った。
「シーウ、しっかりして!シーウ!」
「両腕の骨が折れてるんですから、下手に動かすより魔法で治した方がいいのでは?」
「貴方が……!」
「僕はこれ以上シーウさんに手を出すつもりはありませんから心配しなくてもいいですよ」
シャルはまだ警戒を解いたわけではないが、回復魔法を使った。
「治癒聖光(ヒーリング・ライツ)…」
難易度中級の回復魔法だ。普通なら、12歳の少女が使えるような魔法ではない。白い温かな光が、シーウの両腕にかざされる。治癒神の能力よりは弱いが、少し時間をかければ骨をつなぐのもさして困難ではない。
 刹那。
 シャン……
クレスタの杖が音を立てた。シャルはしばらく、自分が攻撃されたという事に気付かなかった。
「きゃああぁっ!!」
「シーウさんには手を出しませんが、貴女に手を出さないとは言っていませんからね」
 右肩をクレスタの杖の先端――槍の穂先のようになっている――が切り裂いていた。クレスタはシーウと話しているときとは全く違う、冷たい瞳でシャルを見つめていた。
「シャル!」
「このっ……」
少し離れた場所からフォルが叫び、ヴァルスがクレスタに突っ込んでいく。
「はあっ!!」
気合いと共にヴァルスがクレスタに殴りかかろうとする。が、あっさりとそれを杖で弾き、クレスタは余裕の笑みを浮かべた。
「無理ですよ。貴方ではね」
ヴァルスは一瞬かっとなりそうになったが、すぐに気を落ち着かせ、手を何かを握るような形にした。
「それは……」
決意したような笑顔を浮かべ、
「これを見てから言うんだな」
 ざっ……
 青とも紫ともつかぬ色の血液が、ほんの少しだけ、宙に散った。


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 クレスタの血がっ・・・(汗)。彼の体がどんな状態なのかはこれから明かされていきますが、彼が人間ではないことは確かになりました。
 さてさて次回はヴァルスの武器が初登場っ!(テンション高い・・・)浄化神の新たな力が明かされます。彼ら”浄化神”の”伝説”についてはまだまだ謎が多いのですが、それはこの物語の重大な鍵にもなっています。

 では!

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11952Re:Eternal Seed  Act.10 D・S・ハイドラント 2002/12/8 19:46:35
記事番号11951へのコメント

> 感想をくれたD・S・ハイドラントさんには、この場を借りてお礼を。これからもよろしくお願いします。
いえいえ、勝手に読んでるだけですから・・・。

>「始まったわ……」
一体何が!

>「――クリア王女、だな」
>「……ご名答」
へえなるほど

> 直後、少女の目の色が変わった。その名と同じ透きとおった色彩が、赤という色へ変貌する。兵士はそれを見た次の瞬間、どっと倒れた。
凄い能力

>「この世界の秩序を崩すための、お祭りの準備ですよ。“混沌神”」
シーウを利用するんですか

>「ザードの名前を語るような奴のところではなおさらだ」
えっ!
やっぱりあれは違う人?

> クレスタの血がっ・・・(汗)。彼の体がどんな状態なのかはこれから明かされていきますが、彼が人間ではないことは確かになりました。
> さてさて次回はヴァルスの武器が初登場っ!(テンション高い・・・)浄化神の新たな力が明かされます。彼ら”浄化神”の”伝説”についてはまだまだ謎が多いのですが、それはこの物語の重大な鍵にもなっています。
はい期待します。

それでは〜