◆−Dark Silence プロローグ−鎖夢 (2002/11/30 20:17:51) No.11812
 ┣Dark Silence 1.前兆−鎖夢 (2002/11/30 20:19:45) No.11813
 ┃┗Re:Dark Silence 1.前兆−夏青龍 (2002/12/1 09:14:33) No.11822
 ┃ ┗Re:Dark Silence 1.前兆−鎖夢 (2002/12/5 19:33:24) No.11911
 ┗Dark Silence 2.鏡の中の不協和音−鎖夢 (2002/12/5 19:36:04) No.11912


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11812Dark Silence プロローグ鎖夢 E-mail URL2002/11/30 20:17:51



お久しぶりの方はこんにちは。初めての方は初めまして。
鎖夢こと、神無月鎖夢ですm(_ _)m
かなり久しぶりの投稿なので忘れ去られているかもしれませんが、
どうぞよろしくお願いします。

前まで連載していた『Programized Heaven』は色々と思う事がありまして、
打ち切らせていただきます。感想を下さっていた皆様、ありがとうござます。
もしかしたら、また改めて違う形で投稿させていただくかもしれません。

今回は、オリキャラを交えつつオールキャラぽいでスレ世界の話を書きました。
かなり長めの話になりそうですが、よろしくお願いします。

なお、私の書く話は少々ダークらしいので、苦手な方はやめといた方がいい
もしれません。そして、基本的にはガウリナでゼルアメな人です。
が、カップリング的な要素は少ししかありません(特にガウリナ)

では、本編へどうぞvv

************************************************************************************









 真白き雪に閉ざされた、古き伝説を携えし平原






      『アルゲンテゥム』







 その平原の奥に、かつてその地に降り立った一族の軌跡がある



 四つの塔と、中央の建物からなるアニムス遺跡



 この世界の遺跡で最も謎が多く、危険とされる遺跡



 アニムス遺跡が使われていたのは約五千年前まで、神魔戦争が終結した直後までとされている









    その遺跡に訪れた調査隊はたった一つ









                            そのリーダーの名は────










               【 Dark Silence プロローグ 】











            ────── 不思議な夢だった ──────












 延々と続く砂の大地と、腐食した空の色。

 どこまでも澄みながら、闇を携えた海。

 そして墓場のような姿を見せる巨大な月。



 ただそれだけしかない風景。どこまで行っても、それだけしか見えない。

 波もなく、ただ静かに冷たい風に吹かれている海面の奥には、見た事もない形としている建物が

 沈んでいた。死んだ世界のようなその光景を、自分は呆然と見つめていた。






                    ココハ ドコ??






 ふと、歌声が聞こえたような気がして振り返る。

 そこには一人の少女がいた。

 長い紫銀の髪と深海のような蒼い瞳。年齢は十七、八歳ぐらいだろう。

 静かに紡がれる歌は、美しく、それでも聞いた事のない言葉で綴られる。

 やがて、彼女は自分の姿を見つけると静かに微笑んだ。






 見覚えがあるようなその微笑の後、目が覚めた。







  「あれ?何だっけ………?」

 思わず呟くが、何も浮かんでこない。浮かんでくるのは少女の微笑みだけ。

  「まぁ、いっか」

 そう結論付け、彼女は起き上がった。

 カーテンの間から僅かに零れる朝日に、瞳を細める。

 そして、彼女は夢を忘れる事にしてしまった。







     その夢が、後に大きく関わっている事も知らずに──── 












    悲しみは終わらない 一筋涙を流し

    永遠の眠りにつく 時の彼方までは

    明日 この心が壊れてしまったとしても……



    零れてゆく幸せと 崩れ落ちた心と

    近すぎるから 迷う愛と

    この胸に抱えた傷は深すぎて

    心さえも沈んでく
 


    誰が 明日は また来ると決めただろう?

    当たり前の日常に溺れて 何も見えない

    儚く散っていく華のように生きよう

    いつか来る 終わりまで 精一杯

    君の為に・・・・・・・




    闇の中で一人 膝を抱えて蹲って

    ただ光に背を向けて

    生きてきた 仮面をつけて

    本当の自分など 見向きもしなかった





    華はいつか枯れて 魂だけが置き去りに

    それでも永遠に そこで輝く

    この胸の思いは激しすぎて

    きっと誰かを傷つける




    永遠の沈黙に包まれて 開けない瞼

    終われない物語の中で

    何を望むのだろう・・・・・








                     - word by SAKURA†K -












   NEXT⇔1. 前兆
************************************************************************************

序章の序章って感じです。
後半の詩は、この話全体のイメージだったりします。
センスないなぁ・・・・相変わらず;;
視点は考えてません。あくまでイメージ・・・・・
もし、「こいつだ!」ってのを見つけたら言ってやってください(T_T)

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11813Dark Silence 1.前兆鎖夢 E-mail URL2002/11/30 20:19:45
記事番号11812へのコメント


一話目です。まだ話の一角も見えてない気がします(ーдー;)

************************************************************************************



 彼は、情報を元にとある町の宿屋に入った。この宿屋に、"二人"がいるはずだ。この時
間ならば、食堂の方にいるはずだと思い、そちらに続いている方の入り口から入る。食堂
にはそれなりに人が入っており、それでも目的の人物達はかなり目立っていた。

 呆然としている他の客達の視線を縫い、彼は二人へと近づく。食事に夢中になっていた
二人もそんな彼に気づいたらしく、ふと視線を上げた。全身白ずくめのその姿を見止め、
二人が驚いたように彼を見る。

 「久しぶりだな。リナ、ガウリイ」

 口元を覆う布を僅かに下げ、彼はそう告げた。自然と、僅かだが微笑が浮かぶ。

 「ゼルじゃないか。久しぶりだなぁ」
 「ゼル!あんた、どうしてここに?」

 二人の反応を見て、ゼルガディスは辺りを伺った。こちらに視線を向けている客はもう
いない。彼は空いている椅子に座ると、どこか二人を試すような光を瞳に浮かべた。

 「おもしろい話を持ってきたんだ。乗らないか?」

 彼にしては奇妙な言い方に、二人は思わず顔を見合わせる。それに彼はただ、二人を見
つめているだけだった。










             【 Dark Silence 1. 前兆 】










 「はぁ………」

 アメリアは、本日二桁目の溜息をついた。穏やかな日差しの中、それでも彼女の気分は
深く沈んでいる。目の前には父親であるフィリオネルから任されている書類。最近補佐を
始めた彼女は、ある程度の書類ならこなす事ができる。いつもなら、手早く済ませてしま
うはずなのだが、今日は何故かペンを持つ手が重かった。

 そんな彼女の脳裏にかつての仲間の姿が浮かぶ。別れてから、まだ半年程しか経ってい
ないというのに、何故か遠い出来事に思えた。そして、彼女は十一回目の溜息を着く。そ
して、やや乱暴に羽ペンを投げ出した。

 「集中できないですぅ………」

 思わず机に突っ伏し、気の抜けた声を上げる。それだけで頭がぼんやりと霞がかり、眠
気が襲ってきた。そんな時、突然彼女の後ろからカップが差し出される。

 「お茶でもいかがですか?」
 「あ、はい。ありがとうござ…………!?」

 体を起こしてカップを取ろうとしたが、その瞬間に気づく。この部屋には自分以外いな
かったはずだと。慌てて立ち上がり、振り返ると、そこには見覚えのある男の姿がある。
黒を基調とした神官服、黒髪に常に笑みを象っている表情───。

 「ゼ、ゼロスさんっ!?」
 「どうも、お久しぶりです♪」
 「どうしたんですか?一体」

 久々に見る、獣神官の姿にアメリアは驚いたように問い掛けた。それにゼロスは、香茶
を勧めながら口を開く。アメリアも、香茶に口をつけながら彼の言葉を待った。

 「ちょっとヤボ用でして……」
 「ヤボ用ですか?」
 「えぇ。聞きたいですか?」
 「教えてくれるんですか?」

 問い返すと、ゼロスはにっこりと笑みを浮かべながら頷く。

 「今回はちょっと、アメリアさんにも関係あるんですよ」
 「え?私にですか?」
 「そうです。厄介な事になってしまいましてねぇ」
 「………何だか、ゼロスさんが厄介って言うと、相当すごい事に思えるんですけど」
 「あはははは。そうですかぁ?」

 ゼロスの答えに、彼女は僅かに表情を引きつらせた。一方ゼロスは気が抜けそうな程に
にこやかな笑みを浮かべている。それに思わずアメリアは溜息を着き、やや諦め気味に告
げた。

 「まぁ、厄介事はリナさん達ので慣れてますけどね」
 「……………あれから半年ですか。もうそろそろ、貴女もリナさん達に会いたいんじゃ
ないですか?」

 彼女の、どこか呟きにも近い言葉に、ゼロス僅かに紫色の瞳をを覗かせて問う。その瞳
に見つめられながら、アメリアはどこかしどろもどろになりながら答えた。

 「え?確かに会いたいですけど………」
 「けど?」
 「でも、私にだってやる事ありますし……そうそう抜け出すわけにも…………」

 ゼロスは言葉を切ったアメリアを追求するように問う。それに彼女は困ったような表情
になり、静かにカップを机上へと置いた。そしてどこか寂しげな表情で、床に視線を落と
す。それに、ゼロスは一瞬だけ瞳を細めた。

 「そうですか。まぁ、貴女がそれでいいのならいいですけどね」
 「それで、厄介事って何ですか?」
 「あ、そうでしたね。実は………」

 アメリアの言葉に答え、話を始めようとした時だ。突然、ゼロスが虚空を睨みつけた。
急に鋭利な色を見せる表情に、彼女は小首を傾げる。

 「ゼロスさん?」
 「覗き見ですか?随分悪趣味ですねぇ」
 「え?」

 唐突な言葉に意味が分からず、アメリアは疑問符を浮かべた。しかし次の瞬間、ゼロス
が睨みつけていた空間から、魔族が現われる。それに思わず彼女は息を飲んだ。冷たい汗
が頬を流れ落ちる。

 「ま、魔族………」

 思わず後ずさるアメリアの前に、ゼロスが笑みに何かを含ませて立った。その姿を見て、
魔族はややくぐもった声で呟く。

 「ゼロスか……」
 「おやおや、貴方でしたか。こんな所で何をしていらっしゃるんですか?」
 「貴様には関係のない事だ」
 「そうです………っ!?」

 探るように問い掛ければ、素っ気無い返事が返ってきた。それに、言葉を紡ごうとした
ゼロスは、突然現われた気配に背後を振り返る。見れば、アメリアの背後に一人の男がい
た。闇をそのまま切り取ったような漆黒の髪に、見るものを凍らせるような銀色の瞳。年
齢は二十代半ば程度であろうか。だが、人間にはありえない気配をしていた。

 彼は無表情で、アメリアの首筋に手を当てている。その指先が魔力の光を帯びていた。
それに彼女は硬直して目を見開く。

 「っっ…………」
 「アメリアさんっ!!」
 「おとなしく退いてもらおう。それとも、この娘を切り裂いた方が早いか?」

 静かなトーンで告げられた言葉は、かなりの威圧感を伴っていた。それに思わずゼロス
は内心舌打ちする。彼は両腕を広げながら僅かに肩を竦め、諦めの表情を作った。

 「分かりました。退きましょう」
 「なかなか聞き分けはいいな」
 「………と、僕が言うとでも思いましたか?」
 「なっ!?」

 男の言葉を聞き、ゼロスはにっこりと笑ってみせる。その瞬間、ゼロスは男に杖を向け
た。黒い錘が現われ、男と魔族に向かっていく。その錘は魔族のみを消滅させ消えた。男
はゼロスの攻撃を避ける為、アメリアを前方に突き飛ばして一度姿を消す。

 「ぎゃぁぁっ!!?」
 「うきゃっ!?」

 魔族の断末魔と、アメリアの悲鳴が同時に響いた。その数瞬後、少し離れた場所に男が
現われる。それを見て、ゼロスはアメリアを抱き上げた。

 「アメリアさん、しっかり掴まっててくださいね」
 「えっ!?ちょっ……ゼロスさんっ!??」

 慌てたように声を上げるアメリアに構う事なく、ゼロスは消える。それを見送り、男は
僅かに眉を吊り上げた。そして、小さく舌打ちをすると、そのまま消えてしまう。後には、
まだ湯気を上げているカップだけを残して。










 「アニムス遺跡?」

 リナは怪訝そうにその名前を聞き返した。ここは宿屋の一室である。あの後、立て込ん
だ話になると言うので、三人はリナが使っているこの部屋へと移ったのだ。ゼルガディス
は窓の横の壁に寄りかかりつつ、静かに頷く。

 「あぁ。大陸の奥地にあるらしいんだが……相当危険な所らしい」
 「何だって、そんな話をあたし達に?」
 「失われた古代種族の遺跡………興味が沸かないか?」
 「そりゃね。でも、どうしてその遺跡に目をつけたの?」
 「昔、家で見た本を思い出してな。何で急に思い出したのかは分からんが、何となく、
そこに行けば何かが見つかる気がしたんだ」

 どこか漠然とした表情で、ゼルガディスは苦笑した。その表情には、郷愁の色が僅かに
映っている。それに気づかないふりをしつつ、リナは探るような視線を向けた。

 「ふ〜ん。ちょっと、あんたらしくないわね」
 「オレもそう思うさ。それで、乗るのか?乗らないのか?」
 「勿論行かせてもらうわ」
 「それでこそだな」
 「で?詳しい情報は?」
 「あぁ……それなんだが………」
 「何よ?」
 「実はな、場所の名前ぐらいしか分かっていないんだ」
 「へ?」

 言いにくそうに告げられた言葉の意味が分からず、リナは眉を顰める。それに彼はどこ
か気まずそうに肩を竦めた。

 「昔の事でよく覚えていないからな。だからと言って、この姿のまま本を取りに行くわ
けにもいかないだろう?」
 「あ…………こうゆう時、ゼロスでもいれば楽なんだけど………」
 「おや、僕がどうかしましたか?」
 「「えっ?」」

 気まずい空気を感じつつ、リナは膝の上で頬杖をつく。そんな時だった。不意に、聞き
覚えのある声が室内に響き渡る。それにリナとガウリイは立ち上がり、ゼルガディスも壁
から僅かに離れた。その瞬間───。

 「きゃぁぁっ!!?」
 「うわっ!!??」

 これもまた、聞き覚えのある悲鳴が響き、更にゼルガディスが声を上げる。そちらを見
れば、一人の少女が『上から落ちてきました』と言わんばかりの体制でそこにいた。その
懐かしい姿にリナは彼女の名を呼ぶ。

 「ア、アメリアっ!?」
 「ったたたたた……リナさん、ガウリイさん!お久しぶりです!」
 「すみません。ちょっと失敗しちゃいましたvv」

 どうやら、落ちた時に腰を打ったらしい。アメリアは腰を抑えながらうめいていた。だ
が、リナの声を聞いてこちらを向き、リナとガウリイの姿を見止めて表情を輝かせる。そ
んな彼女の横に、ゼロスの姿が現われた。いつも通りの笑みを浮かべつつ、床の上に着地
する。

 「ゼロス、あんたまで………しかもアメリア、あんたなんでドレスのままなの?」
 「いえ、これにはちょっとわけがありまして………」
 「お前等、どうでもいいが俺を無視して話を進めるな」

 リナの問いにアメリアが答えようとした瞬間、彼女が座り込んでいる下から、静かな怒
りを纏った声が聞こえた。しばしの沈黙の後、彼等はその方向へと視線を向ける。その先
では、アメリアの下でゼルガディスが半眼になっていた。そして更に沈黙が流れる。

 「あ………す、すみませんっ!ごめんなさい!大丈夫でしたか、ゼルガディスさんっ!?」
 「まぁ、大丈夫だがな……」

 慌ててゼルガディスの上からどき、アメリアはやや大袈裟に頭を何度も下げた。それに
彼は苦笑しながら立ち上がる。

 「それより、何であんた達が?」
 「なぁ、リナ……」
 「何?言っとくけど、誰?とかいう質問は受け付けないわよ」
 「…………じゃあ、いいや」
 「やっぱりか……おひ…………」 
 「あはははは。相変わらずですねぇ」

 あっさりと退いたガウリイを見て、思わずリナは半眼になって口元を引きつらせた。そ
んな二人を見てゼロスがどこか楽しげに笑う。リナは呆れたような溜息の後、ゼロスとア
メリアに視線を向けた。

 「ん〜でぇ?何でゼロスがアメリアと一緒なわけ?」
 「ちょっと厄介事でして………。それより、ゼルガディスさんがいるなんて珍しいじゃ
ないですか。どうしたんです?」
 「あぁ。まぁ、少し……色々とな」
 「それよりゼロスさん!何でいきなり魔族が現われるんですかっ!?」

 肩を竦めたゼルガディスの隣で、アメリアが思わず叫んだ。その言葉に、彼は表情を僅
かに険しくする。

 「魔族?どうゆう事だ?」
 「いきなり、私の部屋に現われたんですよ」
 「実は、アメリアさん狙われちゃったりなんかしてるんですよ」
 「………へ?」

 眉を顰め、先程の出来事を思い出して、彼女は自分の両腕を強く掴んだ。一方ゼロスは
いつもの笑みを浮かべながら、大して大事でもないように気楽に言ってくる。それにリナ
がその言葉の意味を掴みかけた。いや、その場にいた全員が同じような視線をゼロスに向
けていたが───。

 「数週間前から、下級を中心とした魔族が行方不明になっていたんですよ。その方達が
姿を見せるやいないやいきなり反乱。人手不足だって言うのに、本当困っちゃいましたよ」
 「それで?」
 「何でも、その方達が『ジュネシス』『ラグナロク』という名前の二つのマジックアイ
テムを探しているらしいんです。それで、そのアイテムにアメリアさんが関わっているら
しいのですが………」
 「えっ!?私がっ!?」

 聞いた事もない物の名前に、自分が関係していると言われ、アメリアは困惑したように
声を上げた。ゼロスは黙って頷き、肯定をする。

 「何か心当たりはないの?」
 「いえ……聞いた事もありません」
 「そうですか。参りましたねぇ……」

 申し訳なさそうに首を振るアメリアを見て、彼は考え込むような仕草をした。が、唐突
に他の三人を見ると、話を切り替える。

 「それより、皆さんはどうして集まってたんですか?」
 「あぁ……遺跡の話を、持ちかけたのさ」
 「遺跡ですか?」
 「アニムス遺跡という遺跡だ」
 「アニムス遺跡って……あの、アニムス遺跡ですかっ?」
 「ゼロス、知ってるの?」

 珍しく慌てた様子のゼロスに、リナは怪訝そうな視線を向けた。この獣神官が慌てた様子
を見せる事はかなり珍しい。ゼロスは、しばし迷ったように考えた末、やや言いにくそうに
口を開いた。

 「えぇ。前に一度、調査に行ったんですよ。入れませんでしたけど」
 「入れなかった?」
 「結界があって、外からは見えないようになっているんですよ。それで、結界を突破し
ようと思ったら、見事に弾き返されてしまいまして………」
 「相当みたいね。その遺跡」

 リナは眉を顰めて視線を僅かに落とす。彼が入れない遺跡という事実だけで、相当厄介
に思えてきた。更に彼は続ける。

 「それに、アニムス遺跡のある場所は、一年中雪に閉ざされているんです。しかも平原
はかなり広くて、僕でも迷う可能性があります。変な生き物もいましたし」
 「………ゼロス。お前は、どの程度遺跡について知っている?」
 「神魔戦争終結前にはすでにあった事。その周辺のアストラル・サイドは魔族でも干渉
ほぼ不可能な事。後は…………その辺りはやけに精霊が多い事ぐらいですね」
 「精霊が多い?」
 「はい。やたらと多いんです」

 ゼルガディスの、やや鋭い視線を受けながら、ゼロスは淡々と言葉を述べていった。だ
が、最後に告げられた言葉が気になり、リナが怪訝そうに問う。それに頷きながら、溜息
をつくゼロスを見て、彼女は困ったように腰に手を当て、頭を掻く。

 「う〜ん……それだけじゃ情報不足よねぇ」
 「あ、そう言えばこんな話も聞きました」
 「何ですか?」
 「昔、まだ結界ができる前に調査隊が行っていると」
 「え?そうなの?」

 思わぬ言葉に、彼等は顔を見合わせた。だが、ゼルガディスだけはその言葉に一瞬、ほん
の一瞬だけだが、僅かに瞳を細める。

 「はい。ただ、その調査隊も大した成果は上げられなかったらしいですけどね」
 「ふ〜ん。じゃあ、あたし達が成果を上げれば……初って事よね?」

 リナは、どこか挑戦的な視線をゼロスへと向けた。それにゼロスは目を開き、じっと見つ
め返す。そして、またいつも表情に戻ると、にっこり笑いながら頷いた。

 「リ、リナさん行くんですかっ!?」
 「おいおい、リナ。大丈夫なのか?」
 「ふっ。今更その程度でびびっちゃいられないわよ」
 「さすがリナさんですねぇ。そうくると思いましたvvいやぁ、頑張ってくださいね」
 「ゼロス。あんたも来るのよ」
 「えぇっ!?僕もですかっ!?」

 焦ったように声を上げるアメリアとガウリイに、彼女は不敵な笑みを向ける。こうくると、
彼女が退く事は滅多にないだろう。そんなやり取りを平和そうに見つめつつ、ゼロスはにこ
やかに笑った。だが、次のリナの言葉で、驚愕と焦りを混じらせた声を上げる。彼女は更に
頷き、告げた。

 「そうよ。こん中で遺跡行った事があるのあんただけなんだから。案内しなさい」
 「そんな事言われましてもねぇ……僕、まだお仕事片付いてませんし」 
 「どうせアメリア関わってるなら、一緒に行動してりゃ分かるわよ。ね?アメリア」
 「それって、私も強制参加って事ですかぁ?」
 「あったり前でしょう」

 同意を求められ、アメリアは僅かに引きつった表情で自分を指差す。それでもその瞳は、
期待と嬉しさに輝いていた。そんな彼女を見て、リナも笑みを深める。

 「はぁ………まぁ、いいですけど。ゼロスさん。父さんに手紙届けてくれますか?」
 「まぁ、それぐらいならお安い御用ですけど」
 「よっし決まり!とりあえず、大陸に行く船がないか探しましょう」


 こうして彼等は、遺跡へと向かう事となった。


          そんな彼等を待ち受けるものは────?








        NEXT⇔2. 鏡の中の不協和音
************************************************************************************

ここまで読んでくださった方ありがとうございます。
こんな感じで続いていくので……。
偏るキャラは多分、ゼル、アメリア、ゼロスっぽいですね(汗)
リナ、ガウリイゴメン。0・(ノД`)0・。

『アルゲンテゥム』、『アニムス』はラテン語だったりします。
意味は『銀』、『霊魂』です。
遺跡の謎を中心に、これからはオリキャラを交えつつ、私的キャラ感も含めて、
色々話進めていくつもりでいます。
3日に一回ぐらい投稿できたらいいなぁ……。

では、撤収!!

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11822Re:Dark Silence 1.前兆夏青龍 E-mail 2002/12/1 09:14:33
記事番号11813へのコメント

 初めまして。夏青龍といいます。

 【 Dark Silence 】、面白いです。不思議な感じがしてて、それぞれのキャラの面白さがでてて。ラテン語のところも不思議で格好いいです。リナの挑戦心もすごいですしね。遺跡に行くっていうところもいいですね。人跡未踏って感じで。

 短くてすみません。では。

 

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11911Re:Dark Silence 1.前兆鎖夢 E-mail URL2002/12/5 19:33:24
記事番号11822へのコメント

夏青龍さん、初めましてvv
鎖夢といいます。

面白いと言っていただけて、嬉しいです。
一応不思議な雰囲気を目指しているので、それが少しでも出せればいいと・・・・。
ラテン語は、本当私の趣味に走らせてもらいました(笑)
遺跡とか、未踏とか、そうゆうのすごく好きで・・・・。
リナならそうゆう所に挑戦してくれるかなぁ〜って思って書きました。

かなり長い話なのですが、これからもよろしくおねがいしますm(__)m
では、コメントありがとうございましたvv

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11912Dark Silence 2.鏡の中の不協和音鎖夢 E-mail URL2002/12/5 19:36:04
記事番号11812へのコメント


連載二回目です。
今回はちょっと……ほんの少しですが鎖夢色が………(どんなんだ)
オリキャラも、名前が出てないのもいますが多めに出ておりますvv
オリキャラが女の子ばっかりってのは、あんまり突っ込まないでください(T_T)
ちゃんと後半から男キャラも出ますので・・・・・・

************************************************************************************


 

 真っ白な夢を見た


   降り積もる雪の中、白いドレスの少女



      あまりに純粋で綺麗な笑顔



  その膝の上には真っ白な羽根が散っていた







                  それなのに────








      何故こんなにも





           彼女が恐ろしく感じられるのだろう?














          【 Dark Silence 2. 鏡の中の不協和音 】














 彼は、延々と続く白い廊下を歩いていた。
静か過ぎる廊下に、彼の足音だけが響いている。
それを聞き流しながら、彼はふと前方に視線を向けた。
僅かに表情を顰め、それと同時に立ち止まる。
彼の視界には、一人の少女が映っていた。

 「フェローチェ……」

 少女は、彼の姿を見止めると寄りかかっていた壁から身を起こし、静かに歩み寄る。
金髪碧眼。おそらく、十五、六歳といったところだろう。
白と水色を基調とした、天使のように愛らしい容姿の少女。
だが、その瞳は剃刀のようにぎらついた光を放っている。彼女
はその口元に不敵な笑みを浮かべると、彼に向かって告げた。

 「その様子だと、失敗したみたいですね」
 「貴様には関係のない事だ」
 「あら、関係ありましてよ?」

 無表情で言い放たれた言葉に、彼女はどこか妖しげな笑みを浮かべる。

 「一応、私と貴方はチームを組んでいる身ですもの。足手まといは必要ありません」
 「貴様こそ、足元を掬われないように気をつけるんだな」
 「ご忠告、ありがとうございます」
 「ちっ………」

 フェローチェは、刺を含んで告げられた言葉ににこやかに笑うと、
そのまま彼が歩いてきた方向へと消えた。それを見送り、彼も再び歩き出す。











 「う〜、さっむぅ〜っ」

 船から降りるなり、リナは思わず震える声でそう告げた。
ここは、滅びの砂漠を挟んだ、反対側の大陸である。
彼等は、何とか船を捕まえて、ここまでやってきた。

今、アメリアが船長や乗員達に向かって大きく手を振っている。

 「ありがとうございました〜」

 ガウリイと共に手を振っているアメリアを見て、リナは呆れたような苦笑を浮かべた。
乗員達も、彼等に向かって手を振っている。
それに他の三人も手を振り返し、船が去っていくのを見送った。
最後まで手を振っていたアメリアの隣に並び、彼女が手を下ろしたのを見計らって声をかける。

 「元気ね……相変わらず」
 「え?そうですか?」

 リナの苦笑を含んだ言葉に、アメリアは小首を傾げた。

 「でも、何か王宮にいる時より表情が明るいのは確かですよ」
 「と、ともかくっ。宿屋さん探しましょうっ。ねっ?」
 「ちょっと待ちなさいよ」
 「あぐっ!?」

 さっそく歩き出そうとするアメリアのマントを、リナが思い切り掴む。
そのせいで首がしまったらしく、彼女は悲鳴を上げた。
マントを離すと、彼女は非難の眼差しを向ける。

 「もう、何するんですかぁ。リナさん」
 「よく考えてみると、あたし達こっちのお金持ってないんじゃない?」

 その言葉を聞き、思わずアメリアが「あ……」と声を漏らした。
それをガウリイはのほほんと。ゼロスはにこやかに聞いている。

 「俺が少しだが持っている」
 「え?そなの?」
 「あぁ。大陸を回っていたからな」
 「ふぅん。んじゃ、行きましょうか」

 思いがけない言葉に、リナが彼を見た。
頷く彼を見て、リナは先頭に立って歩き始める。

 その背後でアメリアが文句を言うのが聞こえた気がしたが、特に気にすることもなく。











 暗い闇の中で、それは目を覚ました。
白い、白い、果てしなく白い闇。
どこまでもただ白く、純粋な負の存在。

それは翠色の瞳をすっと細めると、誰かに似た面持ちに、
穏やかでありながら、どこか薄ら寒いものを感じさせる笑みを浮かべた。

 「…………私を呼ぶのは、誰ですの?」

 彼女はそう問いかけ、立ち上がる。
その視線の先にはぼんやりと浮かぶ、銀色の鏡。

 「そう、あなたですの。いいですわ……もう、こんな所はこりごりですもの」

 彼女の言葉に答えるよう、その鏡は妖しげな輝きを放つ。
そして、彼女の手元へと現れた。彼女はそれを、何の迷いもなく手に取る。

 「ふふっ。さてと……十年振りに暴れてさしあげようかしら」

 唇を舐め、彼女は闇の中に浮かびがった。
その瞳が、獲物を狙う獣のような輝きを放つ。
そして、鏡を虚空に向かってかざした。

 「災厄を生みし魔鏡よ 今こそ全ての者に災いを!」

 その瞬間、全てが弾けた。










 宿屋は、意外にもすぐ見つかった。
彼等は部屋を借り、客室がある二階へと向かう。

 「とりあえず、明日からに備えて今日は色々揃えないと……」
 「僕はまだいいですけど、防寒具は揃えませんとね」
 「でも、この寒いのにその格好じゃかなり怪しくないか?」
 「まぁ、適当に姿変えておきますんでvv」

 そんな会話を交わしながら、五人は階段を上がろうとした。
階段の前に、大きな姿見がある。不自然ではあるが、自然でもあった。
何気なく、アメリアはその姿見に視線を向ける。
何の変哲もない、ただの鏡だ。しかし、その瞬間だった。

 「っっ!??」

 鏡に映ったアメリアの口元が、邪悪な笑みを象る。
それに思わず彼女は息を飲んで立ち尽くした。

 「アメリア、どうした?」
 「い、いえっ。何でもありません」

 階段を上がりかけ止まったゼルガディスが、
立ち尽くすアメリアに気づいて声をかけた。
しかし彼女は、それに答えるとすぐに四人へと追いつく。

 冷たい汗が背筋に流れた。











 「……あー、何かむかつくなぁ」

 闇の中で、少女は不機嫌そうに呟いた。
ただ闇だけが続くその場所で、彼女は半眼になって何かを考えている。
しかし、そんな闇の奥底からふわりと幾つもの淡い輝きが浮かび上がる。

それを見て、彼女の眉が吊り上った。

 「あ?うっせぇよ。こっちとら寝起きだったんだ。
うっせぇ……てめぇらだって気づかなかったじゃねぇか。
んだと、こら。焼かれたいか?いいからてめぇら、散れ散れ散れぇっ!!」

 そう叫んで立ち上がると、淡い輝きが慌てたように散っていく。
それを見送って、再び彼女はその場に座り込んだ。


 何も聞こえない。何も見えない。


 そんな世界で彼女はその静寂にだけ耳を澄ます。

 だが、やがておもしろくなさそうに胸元のペンダントをいじりはじめた。
紫色の水晶がついた、シンプルなデザインのペンダントだ。

 「ちっ。深淵領域は嫌いだぜ。静かすぎる」

 そんな彼女の頭上から、ふわふわと雪のようなものが舞う。
それを見て彼女は静かに瞳を閉じた。
深淵に降り注ぐ命の雪は、ただ彼女に伝える。



 『平穏を……』と。



 「さぁってと、悪ガキをおしおきしにいくか。ったく、いい加減うぜぇっての」

 もう聞きなれてしまった、その叫びにも似た声に彼女は立ち上がる。
その瞳は揺ぎない強い意志に満ち、またその瞳の中には更なる深淵が広がっていた。

 「深淵に宿りし精霊よ 天秤の名において 今こそ我が手に集え」

 言葉と共に現われた、銀色の天秤を手に彼女は不敵な笑みを浮かべる。
そして、彼女は生命の雪と共に消えた。











 「ふぅ…………」

 部屋に入るなり、アメリアはさっそくベッドに倒れ込んだ。
疲労感にも似た、どこか重い感覚がのしかかる。
それでいて、生ぬるい粘液に浸かっている感覚でもあった。
そんな彼女に、リナは怪訝そうな視線を向ける。

 「何アメリア?あんた、疲れたの?」
 「いえ、そうゆうわけじゃないんですけど……何て言っていいか………」
 「ならいいけど。あ……さっそく降ってきたわね」
 「え?」

 ベッドに沈みながら、やや掠れた声でアメリアは答えた。
それに、やや心配そうな視線を向けながらリナは荷物を窓際に置く。
リナは荷物を置いて視線をあげると、窓の外を見つめた。
白いものが、宙をひらひらと舞っている。

 「ほら、雪」
 「あ………………」

 ゆっくりと降っている雪に気がつき、アメリアは目を見開いた。
いつもならば、心踊る光景だったはず。
しかし、アメリアは雪を見た瞬間に背筋が凍るような感覚を感じた。

 「アメリア?」
 「っっ……………」

 目を見開き、立ち尽くしているアメリアの姿に、彼女は怪訝そうに問い掛ける。
だがその瞬間に、ひどい耳鳴りを感じてアメリアは床に膝をついた。
頭の中が掻き乱されるような頭痛を、侵食されていく感覚。
僅かに、その唇から苦しげな声が漏れた。

 「ちょっと、アメリアっ?どうしたっての?」

 思わず近寄ろうとしたが、突然アメリアの気配が変わった気がした。
そしてアメリアは、ゆらりと緩慢な動作で立ち上がる。
立ち上がった彼女は、ゆっくりとその顔を上げた。


 藍色の瞳が、翠色に変わっている。


 「ア、アメリア?」
 「貴女がリナ=インバースでしてね?」
 「え?」

 突然の出来事に、今度はリナが立ち尽くした。
だがそんな彼女の事などお構いなしに、アメリアであった少女は微笑み、告げる。
その微笑は穏やかでありがなが、何か不吉なものを感じさせた。
そして全く違う口調で告げられた言葉に、リナはただ困惑する。

 困惑するリナを心底可笑しそうに見つめ、少女は更に続けた。
アメリアとは、響きも何もかも違う声で。

 「リナ=インバース。アメリアにとっては姉のようであり、大切な友人」
 「アメリア?あんた何言ってるの?」
 「死んでいただきますわvvリナ様vvv」

 状況が把握できず問い掛けるが、彼女はそれを無視して何かをリナへと向ける。
銀色の、美しい装飾が施された手鏡だ。
その手鏡の表面が割れたように見え、その破片がリナへと襲い掛かる。

 「っ!?」

 慌てて避けると、それは壁に刺さって霧散した。
しかし、少女はそんな情景すら楽しげに見つめて笑う。

 「あら、避けましたのね。さすがですわvv」
 「リナ!どうしたっ!?」

 今の音を聞きつけてきたのだろう。
ガウリイが部屋の扉を勢いよく開けて入ってきた。
彼と共に、ゼルガディスとゼロスもいる。

 その異様な気配に気づいたらしい。

 「あらあら。そちらはガウリイ様とゼルガディス様、それからゼロス様ですわね?」
 「アメ………違いますね。貴女はどなたですか?」
 「名乗る程の者ではありませんわ」

 にっこりと笑うものの、その笑顔はやけに人形じみている。

 「アメリアはどうした?」
 「アメリアでしたら、眠っていま……っ!?」

 鋭い視線を投げかけ、告げられたゼルガディスの言葉に、少女は答えようとした。
しかし何かに驚いたのか、その言葉は途中で遮られる。
そして再び、少女は床に膝をついた。

 「っ……天秤…………もう、上がってっ…………!?」

 意味の分からない言葉を呟き、彼女は自らを抱きしめ震える。
しかしその震えはすぐにおさまり、再び彼女は立ち上がった。
今度は、先程とは違う機敏な動作だ。

 纏われる気配も、どこか違う。
それに全員が警戒して、少女を見つめた。

 「な、何今度は?」
 「ふぅ……面倒かけちまったな」

 顔を上げた少女の瞳は、右が銀色、左が蒼という色に変わっている。
そしてやはり、その口調はアメリアのものではない。
更に言えば、先程の少女よりも、アメリアよりも声が低かった。

 「誰あんた?」
 「なぁに、通りすがりの守護者だよ」
 「守護者?」
 「あぁ」

 思わず顔を見合わせる四人を見て、少女は可笑しそうに笑う。
その笑みは、やはりアメリアとも先程の少女とも違う。

 「まぁ、ともかくさ。オレの話、聞いてみねぇ?」

 そう告げた彼女の瞳は、まるで女豹のようにも見えた。






     
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何を言っていいのやら・・・・・・・・。
ひたすら謝りたい気分です。
ここから大幅に・・・・・とまではいかないものの、かなり遺跡から離れます。

ちなみに、フェローチェは、何語だか忘れましたが
『荒々しく、残酷な』という意味です。