◆-バレンタインは人の名だねえ-もおきんるい(2/3-17:33)No.1206
 ┣だからどうだといわれても-もおきんるい(2/4-06:32)No.1209
 ┣戦略に乗せられてるかな-もおきんるい(2/5-09:00)No.1212
 ┃┗のっちゃいましょうよ(笑)-wwr(2/5-14:43)No.1215
 ┃ ┗Re:のっちゃいましょうよ(笑)-もおきんるい(2/5-15:53)No.1218
 ┣おいしいチョコは誰のもの-もおきんるい(2/6-12:25)No.1221
 ┣男にあげるなんてもったいない-もおきんるい(2/7-22:43)No.1232
 ┣だけど誰かに送りたい〜-もおきんるい(2/7-22:47)No.1233
 ┣私の気持ちをうけとって〜-もおきんるい(2/8-11:03)No.1237
 ┗「ごめん」どか〜ん!玉砕・・・(完結!!)-もおきんるい(2/8-11:08)No.1238
  ┗そーか、今年のバレンタインは日曜日か-wwr(2/9-13:35)No.1249
   ┗Re:そーか、今年のバレンタインは日曜日か-もおきんるい(2/10-16:27)No.1264


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1206バレンタインは人の名だねえもおきんるい E-mail URL2/3-17:33


どおも、もおきんです。


ゼロスのつぶやき・・・

いや〜、もうすぐクリスマスですよ、ガウリイさん。
え?ちがうって?
プレゼント交換して、愛を語り合うんでしょ?
クリスマスじゃないですかあ。
別の日だって?
はあ?
異教のおっさんの名前を付けた日・・・ですか。
おっさんの名前を付けるなんて、悪趣味な宗教ですねえ。
ははは、滅ぼされるって?リナさん、ご心配なく。
ぼく、こうみえても・・・え?心配なんかしていない?
はあ、そりゃ・・・あれ?おふたりでどちらに
いかれるんですかあ?
ついてくるな?そーんなこといわれてついていかない奴なんか、
いませんよ〜、まってくださ〜い!


では、はじまりはじまり・・・
現代版すれいやーず〜
『せいんとばれんたいんずないと』
************************************************************


『オレ、チョコきらいなんだ』
『俺も苦手だ』
『ぼくも・・・ちょっと、辟易です』
ガウリイばかりか、ゼルガディス、そしてお調子者のゼロスまでが
チョコレート嫌いと言い放つ。


ここはアメリアのマンション。
アメリアは有名財閥のお嬢様で、父親所有のマンションに住んでいる。
彼女の家からはこの学園は通学するには遠い。で、一番学園に近い
このマンションに住む手配をした。
勿論ひとりで暮らすのは許さん!!というわけで、同じ高校の同級生
をルームメイトにという条件を出した。そんなとき、遠方からこの
聖流学園に進学してきたリナとフィリア、下宿を探していたふたりは
入学説明会でアメリアと意気投合、ルームメイトとなるのだった。
という訳で、3人はここで共同生活をしているのだ。
5LDKのばかっぴろい億ションで、今日も姦し娘は元気である。


本日のリナ、アメリア、フィリアの姦し娘は作戦会議の真っ最中だ。
この3人共に高校2年生。いわゆるお年ごろってヤツだ。
「今年のバレンタインは、ちゃ〜んと本命にあげられる初めての
年だっちゅーのにい!!あほガウリイ!!」
去年の夏、ようやくガウリイのアタックが実り、めでたく付き合い
はじめたリナ&ガウリイと、こちらは捨て身タックルで見事ゲットの
アメリア&ゼルガディス。まだ初々しい付き合いだして2か月だ。
『みんなくっついたんだし、ついでに・・・』となにげなく便乗して
付き合いはじめたフィリア&ゼロス。このふたりもまだ日が浅い。

3人の通う聖流学園の人気者ベスト3をみごと獲得した3人娘。
だが、ライバル達は諦めていない。
彼女1号の座は無理でも、2号、3号・・・そしていつかは1号へと
虎視眈々とねらっていたりするから恐ろしい。
でも、この姦し娘を侮るなかれ。
顔はかわいいし、小柄のリナは見ためでは華奢な雰囲気だが、この
3人のなかで1番の暴れん坊だったりする。平気でヤンキーに眼たれる
こともやってのける。
リナよりも小柄なアメリアは、クンフーの達人で、全国大会にも上位
入賞する実力。どーんと大柄なフィリアは怪力で有名だ。この前も、
お尻を触った痴漢をブン投げて表彰されていた。


「でも、なんできらいなのかしらねえ」
「わかりましたよっ!リナさん、フィリアさん!」
「へ?なにが?」
「あの3人がチョコが嫌いな理由です!
きっと、ゼルガディスさんのように、頭が良くて優しくておまけに
スポーツ万能でなにをやらせてもソツなくこなせて」
「で、理由はっ!」
「横道おもいっきりそれていますよ!」
「ああ・・・すみません〜。・・・で、もてもてだった彼等は、毎年
膨大な数のチョコをもらっていたとおもうんです!!それで、もう見る
のもいやになっちゃったんです!そうに違いありません!!」
「ふむ、なるほどねえ、食い意地はったガウリイでさえ、いやになるほど
貰っていれば・・・それ、今度、バザーで売って一儲けしちゃろうかしら」
「やめてください、そういう『怨念』のこもったチョコを売るのは」
「だめ?やっぱし」
「わたしなら買いません・・・だって、去年、ゼロスに届いたチョコに
くっついている『念』、見ちゃって・・・わたしも一時チョコ食べられ
ませんでしたもの」
「げえ、あの3人、そーゆーの敏感だから?」
「そりゃあ、いやになるかもしれませんねえ」
はあ。
3人娘は大きなため息。
形式だとか、商人の手口に乗ったと言わば言え。
やっぱり、大好きな人にチョコを渡したい年ごろなのだ。
それも、今年はちゃーんと渡す相手もいるのだ。
それなのに・・・
「マフラーとか、他のものにします?」
「いや。ぜーったい、やだかんね!あたしは意地でも渡すわよお!
これは小さい頃からの夢だったんだからあ!!」
「結構、かわいい夢、ですよね(ぼそ)」
「こういうところが、ガウリイさん気に入ってるんじゃ?(ぼそ)」
「なんかいってるかなあ?」
「いーえ!!じゃああたし達も!!あたしもこういう事したかった
んですう!!」
「わたしも。まあ、自己満足ですが」
すっくと立ってリナ、絶叫!
「そのとおり!バレンタインはおんなのこの自己満足の愛の押しうり!
覚悟しなさい!!ガウリイ!!」
続いてアメリア、フィリアも立ち上がる。
「あたしもですっ!ゼルガディスさん!」
「みてらっしゃい!ゼロス!わたしだって料理上手なところを
みせつけてあげるわ〜〜っ!」
「よーし!極甘の手作りチョコでげんなりさせるわよお!」
『おーーっ!!』


決戦の日まで、あと5日。


続く〜ん

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1209だからどうだといわれてももおきんるい E-mail URL2/4-06:32
記事番号1206へのコメント


その2


今年のバレンタインディは日曜日。
リナ、アメリア、フィリアの姦し娘は駅前のハンバーガーショップで
アルバイトをしている。
月曜はリナ、水曜はアメリア、金曜はフィリアというようにそれぞれ
お休みを取っている。
だが、間近に迫ったバレンタインディに向けて、休日を返上するかわりに
早くバイトを終わらせて貰えるように店長に交渉し、OKを得る。
6時には店を後にし、3人は食料品売り場へと向かった。
もちろん、目的は手作りチョコの材料を買うことである。

店ではバレンタインセールを催していて、女の客でごったがえして
いる。
「結構手作りにこだわる人、いるのねえ〜」
「リナさんみたいに『ちいさいときからの夢だった』なんて人なの
かもねえ〜」
「アメリア、あんた、喧嘩売ってるの?」
「まあまあ、リナさん、アメリアさん、ここのフロア、チョコがいっぱい
展示してありますよ〜!どれにしましょう〜」
フィリアはナイスタイミングでリナの注意を引く。
「クーベルチュールって、なんという意味でしょう」
「・・・さあ。金持ちのアメリア、こーゆー上等の食材、わかる?」
「ただの高級製菓用チョコです。仕上げのコーティングなんかに使うと
艶もあって香りもいいので『リッチ』な感じが出ると思います」
「さすが〜。あたしゃあ、わからんわ、そーゆーことは」
リナは感心している。アメリアは照れ臭そうにウインクする。
「この前うちに帰っとき、コックのエードさんにチョコレートのこと
いろいろ聞いてきたんです」
「ははあ、あんたにしちゃあいろんな事知ってると思った!ね、フィリアは
なにかつくるものきめてるの?」
「本でいくつか候補を選んだんだけど、どうしようか迷ってるの」

楽しそうに買い物をする3人を、偶然ガウリイは見つける。
彼は一人暮らしですぐ近くのアパートに住んでいるので、いつも食品はこの
デパートで購入しているのだ。
「リナ達か・・・チョコレート売り場でなにやってるんだ?・・・ああ、
そういえばもうすぐバレンタインだなあ」
毎年うんざりするほどチョコレートを貰うガウリイは、苦笑する。
「もしかしてオレにチョコくれるのかなあ?・・・出来れば、ハンバーガー
のチケットの方がうれしいんだけどなあ」
そんなことを言いつつ、彼女が作る様子を想像するとくすぐったいような
感覚・・・それでいてうれしいような、てれくさいような・・・
そう、なんともいえない幸福感。
たしかにいままでだって手作りチョコをくれた子もいた。
しかし、どれもが『愛情』というラッピングで誤魔化した、お粗末な出来の
なんとも食指の湧かない品であった。こんなもので、好きだから食べて
くれなんて図々しいにもほどがある。これなら、同じ額で買える既製品を
くれたほうが何倍も気が楽だった。
だけど今度は違う。好きで好きで、なんとか告白してやっと承諾して
もらい付き合い始めた大本命の手作りなのだ。
「手作りかあ。どんなものを作るんだろうか」
リナが作るのなら、トリュフがおはぎのような不細工な形であっても、
中味もかちかちで甘さも極端であっても食べる気でいた。
そう。『彼女のお手製』は、格が違うのだ。
ガウリイは生まれて初めて2月14日が待ち遠しいと思うのだった。
そっとしておこうと、彼は声をかけることなく人ごみに消えていった。

「この本のここ!これがいいかな〜って思ったんだけど」
デパートの近くの本屋で3人はチョコの作り方の本を物色する。
フィリアが以前から目を付けていた本に載っている作り方を、リナと
アメリアは読みふける。
「いいじゃん?フィリア!これは簡単だし、結構リッチにみえるし!
しかも『低コストで大量に出来る』!なにより『甘さ控えめ』が
ポイントよねえ!」
庶民派のリナらしい意見である。
「うん、これならあたしにもなんとか出来そうです!」
アメリアの声はとおるので、少しはなれたところで本を立ち読みしていた
ゼルガディスは彼女とその仲間を発見する。
「はあ、あそこは料理の本のコーナーだな。そうか、バレンタインのお菓子
の作り方の本を読んでいるんだな」
くす。
思わず笑みがこぼれる。
アメリアが実に楽しそうに笑いながら仲間と本を読み比べしている。
その他ふたりの声は、なにか話している程度で聞き取れないが、
アメリアの声ははっきりとわかる。まるで、自分と話しているのかと
錯覚してしまう程だ。
「えー?だめですう、これも簡単ですよ?」
・・・くすくす。
『あいつの声は本当、よく判るよな・・・』
ゼルガディスは立ち読みしていた雑誌をなにげなくめくっていた。
すると、今人気のAV嬢のピンナップ。
「だめです!そんなのいやですう!」
『げ?』
アメリアの声がなんというか、グッドタイミング。
慌てて雑誌を閉じる。
『・・・俺、なにしてるんだ?』
苦笑しながら彼は本を置くと、買う予定の本だけ持ってレジへ向かう。
『2月14日、なにを食わされるかわかったもんじゃなさそうだ』
そんなことをつぶやきながら、彼はどこか楽しそうだった。

「おや?あれは姦し娘さん達じゃないですか」
ゼロスは交差点で信号待ちしている3人を見つける。彼は自家用車、
リンカーンコンチネンタル最新型の後部座席にひとり座っていて、
なにげなく外の景色を見ていたら・・・目立つ大女。フィリアを
発見した。そして、その両脇には”ちびのお嬢さん方”。
「まるで神社の仏像と狛犬達ですねえ・・・」
くすくす。
車は赤で停車、フィリア達の歩行者用信号が青となり、目の前を3人が
楽しそうにおしゃべりしながら横断歩道を渡っていく。
窓を開けると、声も聞こえた。
「・・・どうする?あのケーキもすてがたいよねえ?」
「こうなったら、全部作っちゃいましょう!フィリアさんが、勝利の
カギですよ!」
「うふふふふ、まかせなさい!!このわたしの手にかかれば・・・」
ここまでは聞こえたのだが、雑音で聞こえなくなり、横断歩道を渡り
きった3人も、雑踏の中に消えていった。
「ケーキ、ですか・・・」
車の窓を閉めながら独り言。
そういえば、バレンタインが近いんだっけ?
通りを見れば、デコレーションの旗には『セイントバレンタイン』などと
書かれ、ずらーっと飾られている。
「・・・ケーキ、作ってくれる気なんでしょうかねえ?ぼくの口にあう
んでしょうか・・・」
日頃、有名ケーキ屋やお菓子を口にする機会の多いおぼっちゃまのゼロス、
味にも形にもうるさい。素人の素朴なおやつだとか、愛情の押し売りの
ようなへんちくりんのお菓子と呼ぶには人を馬鹿にしているとしか思え
ないといったものなど見たくもないのが本音だ。この辺はガウリイと
同意見である。
「でも、フィリアさんなんか自信あるげでしたよねえ・・・くすくす。
いいでしょう、2月14日、このぼくが『採点』してあげようじゃ
ないですか!!」
・・・なんやかんや言っても、結局うれしいようである。


決戦の日まで、あと4日・・・

つづく〜

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1212戦略に乗せられてるかなもおきんるい E-mail URL2/5-09:00
記事番号1206へのコメント

その3


遅刻ぎりぎりに教室へ滑り込んだリナは、自分の席に着席すると
急いで今日の1時限目の用意を整える。
もう、クラスのみんなは理化学室の方へ行ってしまったので、教室
はがらんとしてひとっこひとりいない。
アメリアはA組、フィリアはD組、みんな違うクラスだ。
リナは特別進学クラス・・・特進組で、ゼルガディスと同じだ。
ちなみにガウリイはA組、ゼロスはC組である。

「わあ、今日はあたしらの班がレポートの発表だったわあ!」
理化学室に入るとすでに先生は授業を始めていた。
「リナ・インバース!珍しいわね?遅刻なんて」
「すみません!ヴィオラ先生」
「はい、レポートちょうだい」
ち、ちゃっかり覚えていたか・・・
心でぼやきつつ、先生に手渡しする。

くん・・・
ヴィオラ先生は鼻をくんくんと小さく動かす。
「甘い・・・チョコレートの匂いねえ?リナ・インバース?」
すると、教室の全員が『ええ〜〜〜〜っ!!!』と絶叫。
その反応にリナは食って掛かる。
「なにかなあ?その反応はあ?あたしがチョコいじると変かなあ?」
『変!!!!』
すかさず返答のクラスメートにリナは教壇からずっこける。
「ははははは!リナ・インバース、席につきなさい」
笑いを押し殺しながら先生は彼女の席を指差す。
苦虫を噛みつぶすような顔で、リナは着席した。

リナの班にはゼルガディスがいた。
「お前。レポートどう書いて提出したんだ?」
「P122の要項に沿ってるわ」
「ほい。・・・グルムグン、だそうだ」
「おいよ」
「なによ、グルムグン、まだ提出してないの?」
「お前だけだ、提出したのは・・・とゆーより、俺達がチェック
するまえに先生が先手打ったのさ」
「あー、あたしの写すつもりだったんでしょ?」
「あはは、そーそー」

「そこ、静かに!・・・で、この図は・・・」
ヴィオラ先生はじろりとこちらを睨む。
「くそう、インケン年増めえ」
そっとつぶやくグルムグン。
「グルムグンくん?あとで、職員室にいらっしゃる?」
「わあ、すみません〜」
くすくす。
そして、授業は続けられた・・・

「なんとか、レポートは提出できたし、やれやれだ」
ゼルガディスとグルムグンは背伸びをしながら教室へ向かう。
「おい、リナ?アメリアも遅刻したのか?」
「あのこは教室で授業だったからセーフよ。気になる?」
「遅刻はいかんからな!」
彼はぷい、と少し顔を赤くしてそっぽを向いた。
リナはそんな表情のゼルガディスを冷やかす。
「ゼルちゃん〜、2月14日、楽しみねえ?」
「え・・・」
こちらを振り向くその顔は、あまりにも初々しい戸惑いの表情。
リナまでが思わずどきりとしてしまった。
ゼルガディスのファンが見たら失神もんだ。
一瞬見とれてしまったが、すぐに正気に戻る。
「あ〜、くらくらきたわあ〜」
「きたあ〜」
隣のグルムグンも、くらくらしている。
「おれ、男に惚れそうだ・・・」
「げ、こらこら、普通の世界に戻ってこーい」
「どうした?グルムグン?」
ゼルガディスはグルムグンの肩に手を乗せる。
「わあああ!!やめろお、やめてくれえ、おれはまともなんだあああ」
手を振り払い、彼はあっち方向へ走り去る。
「なんだ?あいつ」
「ああ、ゼルちゃん、罪なひと・・・」
リナは腹を抱え笑うしかなかった。


「ふう、遅刻しなくてよかったあ」
アメリアは1時限目が終了したあとつぶやいた。
次の体育の授業の着替えに向かう途中、ガウリイに呼び止められる。
「おい、アメリア、リナも遅刻ぎりぎりだったのか?」
「うーん・・・今日は理化学の授業が1時限目のはずだもの、遅刻ね」
「あちゃあ、インケンヴィオラの授業じゃないか。ま、あいつは優等生
だからそつなく逃れているだろうけど・・・あ、いい匂い」
「え?」
「甘い匂いがするなあ、アメリア。チョコ・・・」
ガウリイの声を、アメリアは途中で遮る。
「し〜〜〜っ!!だめですう!内緒なんですから!・・・絶対、ゼルガディス
さんには秘密ですからねえ?」
「へいへい」
アメリアはたたたと軽い足音をたてて走っていってしまった。
残されたガウリイはひとりごちる。
『チョコかあ。もしかして、リナもオレの分作ってくれてるのかな』
ガウリイの顔が綻ぶのだった。

「やれやれ・・・今日もリナさんとアメリアさんを特訓しなければ!」
昨日の夜、フィリア指導でチョコレートの手順をレクチャーしたのだが、
リナは凡ミスをするわ、アメリアはチョコに致命的ダメージを与えるわ、
なかなか進まなかったのだ。

フィリアの料理の腕前はプロ並みだった。彼女は幼い頃に母親と死別した。
それを不憫に思った父親は、自分が忙しくて彼女と会えない時も
淋しくないようにと乳母を2人つけたのだ。
この乳母達は実に料理上手で、お遊び代わりに料理の手ほどきをフィリアに
みっちりと仕込んだのだ。悲しいことに、この乳母達は数年前に二人とも
他界してしまった。フィリアは高校受験を自分の家から遠い、この聖流学園
を選んだのも、ふたりの乳母のいなくなった家にいたくなかったからである。
だが、運命は・・・
ルームメイトのふたりは、どことなく乳母達と性格が似ていた。
人見知りの激しいフィリアが友人を作るなど、いままでなかった事だった。

「おや?いい匂いですねえ?フィリアさん」
ぎくり。
背後からいきなり呼ばれ、フィリアは身体が硬直する。
「この声は・・・はあ、ゼロス、おどろかさないでください!」
振り返るとプリントの山を抱えた少年が立っていた。
「あら。・・・もしかして、手伝って欲しいかしら?」
「お手数ですが、助かりますよ」
上の方のプリントの束を受け取り、ゼロスの横に並んで歩く。
「これ、何処に持っていくの?」
「ぼくのクラスまでです。・・・チョコの匂いがしますよ?フィリアさん
・・・あああ!!」
ゼロスの台詞で硬直したフィリアは、持っていたプリントを廊下にぶちまけて
しまったのだった。
せっせ、せっせ。
廊下にはいつくばり、プリントをかき集める彼女を苦笑して見つめる。
「ねえ、フィリアさん〜」
「・・・・・・」
無言。
「チョコ」
硬直。

くっくっくっ。
笑うゼロスをようやくプリントを拾い終えたフィリアが睨む。
「ねえ、ぼくにもくれませんか?そのチョコ」
「・・・のこったらね」
ぷい、とそっぽをむいてゼロスの教室へすたすたと先に行ってしまった。
「残り物なんですか、はあ」
ゼロスは心底落胆する。

「リナさんとアメリアさんがこれ以上失敗しなければ、ね・・・」
フィリアは心の中で付け足ししたのだった。


決戦の日まで、あと3日〜

つづく

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1215のっちゃいましょうよ(笑)wwr 2/5-14:43
記事番号1212へのコメント

こんにちわ。wwrですぅ。
わらかして頂いてますぅぅ。(大笑)



>「ゼルちゃん〜、2月14日、楽しみねえ?」
>「え・・・」
>こちらを振り向くその顔は、あまりにも初々しい戸惑いの表情。
>リナまでが思わずどきりとしてしまった。
>ゼルガディスのファンが見たら失神もんだ。
くうぅぅっっっ。
ここで一瞬意識が飛びました、私。(某NTTの一角で)

しかし、手作りチョコに対する男性陣の反応は・・・・・・こーゆーもんなのでしょうかね?
彼女が作ったか、それ以外かに対するギャップが・・・・・・・うぷぷぷぷ(笑)

>決戦の日まで、あと3日〜
>
>つづく
三組のカップルの、戦闘準備はおっけーですね(笑)
楽しみに待ってますぅ。

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1218Re:のっちゃいましょうよ(笑)もおきんるい E-mail URL2/5-15:53
記事番号1215へのコメント

>こんにちわ。wwrですぅ。
>わらかして頂いてますぅぅ。(大笑)
うわーっ!!きたあ〜、ゼルの保護者(自称)だあ〜!!

>>こちらを振り向くその顔は、あまりにも初々しい戸惑いの表情。
>>リナまでが思わずどきりとしてしまった。
>>ゼルガディスのファンが見たら失神もんだ。
>くうぅぅっっっ。
>ここで一瞬意識が飛びました、私。(某NTTの一角で)
わはは、ここでとびましたか。でも、どこでとんでるんですか・・・

>しかし、手作りチョコに対する男性陣の反応は・・・・・・こーゆーもんなのでしょうかね?
>彼女が作ったか、それ以外かに対するギャップが・・・・・・・うぷぷぷぷ(笑)
こーゆーもんらしいです(どきっぱり)。
手作りに愛を込める方、腕に自信ありますか?

>三組のカップルの、戦闘準備はおっけーですね(笑)
>楽しみに待ってますぅ。
いえいえ、まだまだもたもたしているようです。特に、アメリア姫。
ゼル、あやうし!おはぎのようなトリュフ責めになるか??

ではでは、もうちょっと続きますが、たのしんでけろ〜

もおきんるい

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1221おいしいチョコは誰のものもおきんるい E-mail URL2/6-12:25
記事番号1206へのコメント


その4


ハンバーガーショップのアルバイトを終えた3人は、材料の買い出しに
出かける。
昨日の特訓で、材料が底をついてしまったためである・・・
リナはなんとか、チョコレートの温度での変化を覚えたのだがいかんせん、
高校にはいるまで自分で料理を作ったことのなかった『お嬢様』アメリアは
手先が不器用でつい、チョコの大敵『湯気』を湯煎の最中にぽたぽた垂らし
固まりにくくしてしまうのだった。

「すみません〜」
「あんたが払うのよ!!チョコレート代!!」
「はあ〜い・・・」
お金にはとことん厳しいリナ。自分の分まで失敗され、怒りまくりだ。
「でも、あの『失敗チョコ』、どーする?フィリア」
「チョコブラウニーとか、クッキーなんかを作ってみるのもいいですね。
ああ、カカオマスは『鶉のチョコソース添え』にするのもイギリス風
ですし」
「鶉のチョコソース?あたし、大好き!!是非作って!フィリアさん!」
「なによ、肉にチョコなんてまずそう〜」
「リナさん、今でこそチョコは甘くてお菓子として食されていますが
19世紀初めまではこういう料理のスパイス代わりに使っていたんですよ」
「ほええ・・・でも、お貴族様の食卓だけでしょ?」
「まあ、高級食材のチョコは・・・庶民は『チョコレートハウス』という
場所で飲み物を飲んでましたよ、。でも、ココアを只のお湯で溶かしただけ
の苦い飲み物でしたけど」
「くわしいのね、フィリア」
「えへん、まいったか〜」
「すごーい!どうやってそんなことしったんですか?」
「昔ね、乳母に教えて貰ったの」
「乳母!!はあ、フィリアもお嬢様なのねえ、あたしだけなんだわあ、庶民
なのはああ」
「ああっ!当たり散らさないでください!」
「庶民パワーを思い知るがいいわー!!」
リナはバッグを振り回してどしどし歩きながらあちこちの電柱やごみ箱を
蹴り飛ばしていく。
『リナさーん!!』170の大女と145のちびすけは一人の野獣を
取り押さえるのに必死だった。


製菓コーナーには山のようなチョコ。
わしづかみで買い物カートにリナはチョコをぽんぽん入れていく。
「アメリアのあのペースじゃあ、この前の倍いるわね」
「そ、そんなこと・・・ないはずですう・・・」
「がんばりましょう?アメリアさん」
「あとは生クリームのダブルだけね!リキュールはフィルさん秘蔵の
あれをつかうでしょ〜」
「アテにしてますね?父さんを」
「香りが命って、フィリアも言ってたじゃん?」
「そうですけど・・・」
レジで精算を済ませ、3人はタクシー乗り場へ向かう。
「さあ!!フィルさん宅にいくわよー!!」
「えー!!ここから車でも2時間ですよお!そんなお金使うなら、
お酒買った方が安上がりですう」
「アメリア」
くるりと振り返るリナ、顔がマジである。いや、切れている。
「あたしは『とびきり極上』を目指したいの、わかる?
そんじょそこらのコギャルのつくるよ〜な、『うそっぱち』じゃなく
どかーんと『店で買ったのか?』と言われるくらいのを作りたいのよ!
それにはあんたんとこにこの前遊びに行ったときに見つけた『ドンペリ
ピンク』でシャンパントリュフを作るわ!ウイスキーボンボンには
シャボーの50年樽出、オペラにはクレームドカカオの特級瓶詰めを!」
「リナさん、なにひとん宅の酒蔵チェックしてるんですう??」
「だから、協力しなさいよね?アメリア〜。嫌とは言わせないわよ?
あたしの作るチョコ台なしにしてくれたんですからねええ」
「ひいいいいい」
「り、リナさん、で、タクシー代は誰がはらうんですか・・・?」
「そんなもん!!決まってるわよ、ねえ?ア、メ、リ、ア〜(ぎろり)」
「わああああん」

「おや?姦し娘さん方、なに騒いでいるんです?」
3人一斉に振り向くとおかっぱの少年。一度に振り向かれ、一瞬後ずさる。
「ゼロスこそ、なにしてるのよ」
「ぼくはこのビルで英会話習ってるんです。迎えの車を探してるんですよ」
「迎えの・・・」
リナはそうつぶやきながら目が光る。
「ゼロス・・・覚悟してね・・・」
フィリアはため息をつきながら耳打ちする。少しくすぐったくてちょっと
ゼロスはうれしい。だが、彼女はなにをいってるのだろう?
・・・答えはすぐ理解できた。
「ゼロス。あたし達をアメリアん宅までつれていくのよ!!」
「はああ??」
そのとき、ゼロスを迎えにきた大型の外車が横付けする。
「ぼっちゃま、お迎えにあがりました」
「ごくろーさん〜!!さあ、みんなのりこめえ〜!」
「きゃは!はーい!!」
「ゼロス、ごめんね?リナさんにはさからえないの〜」
「あ、ちょっと!みなさん!!」
「アメリアは道案内で前の席よ!ささ、ゼロスは両手に花!真ん中に
すわんなさーい!!」
「わああ!!フィリアさん〜」ゼロス、半泣き。
「はは!ね?リナさんにはさからえないでしょ?」
ぶつぶつ文句をいっていたゼロスだが、ひさしぶりにフィリアが隣に
いるのでため息つきながらも『ま、いいでしょう・・・』と思うのだった。
運転席の執事は困惑顔でゼロスを見ている。
「あ、あの、ぼっちゃま?どうされるんで??」
「・・・そのお嬢さんの家まで行ってくれませんか?携帯で、お母様には
ぼくから遅くなることを伝えますから」
「あ!ゼロスのおかーさん、美人で気が若いあの人?電話かわってかわって!!」
「んもうリナさん!!・・・あ、お母様ですか?ぼくです・・・すみませんが
帰るのが遅くなります・・・あ!」
携帯電話をひったくり、リナは軽快にしゃべりはじめる。
「もしもーし!原因は、あたし達がゼロスくんを拉致したためでーす!!
はーい、あたしはリナ・インバースでーす!いつも学校でお世話してます!
いえいえ、とーんでもない!!きゃははは、今度、おじゃましちゃいますよー!
はーい!!ええ、それで何故車借りたかとゆーと・・・」
「は、はずんでる・・・あのお母様と話して・・・」
ゼロスの母親は『超マイペース』人間。
我がままなのか、ごり押しなのか、梃子でも動かない強情さを秘めたかなり
おっかない人物である。見ため26〜7歳の若々しさで、根っからのお嬢様
的我がままをし放題。名家で金持ち、政財界にも顔が利くやり手である。
そんな母と対等、あるいはその上を行く饒舌のリナ。
縦筋顔に張り付け、びびるゼロスをしり目に、さらにおしゃべりを続ける。
「もうかえしてくださいよう、リナさあん!」
「だめ〜、おかーさまとはなしてるのよ、ねー?えへへ!ですよねえ、
ゼロスって、そーそー!!さすがおかあさま!ええ、いますよ、フィリア〜!」
「ぎく・・・な、なにをふってくるんです、わたしに!」
フィリアはびびっている。ゼロスのお母様が苦手なのだ。
はじめてのデートを妨害されて以来、なにかにつけ横槍があるのだ。
「今度一緒に食事しましょうって!!・・・そーなんです、あんましいじめ
ないでくださいね〜?ははは!そうなんです、こーゆージョーク通じない
んですから!はーい、じゃ、ゼロスと替わり・・・え?いいって?じゃ
切りますよー」ぷち。
車内の全員、呆然。『あの』ゼロスの母親とタメ張っておしゃべりできる
貴重な存在であることを知った執事、リナには逆らわないほうがよいと判断
したようだ。リナがなにか話しかける度に「は、はい!お嬢様!」と慇懃?に
対応してくるのだった。

「あれ?リナ??」
ガウリイは駅前のハンバーガーショップへ行くと彼女はもう帰った事を知り、
テイクアウトしての帰り道、車内の人となっているリナを目敏く発見する。
『もうかえしてくださいよう』
『だめ〜』
ゼロスと楽しそうに話している。彼の位置では、奥のフィリアやアメリアが
見えなかった。(外車で、左ハンドルのため)
「・・・なんで、ゼロスなんかと・・・?」

車は一路アメリアの家へ向かっていく。
ガウリイは走り去る車を呆然と見つめていた。


決戦の日まで、あと2日!


つづく〜

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1232男にあげるなんてもったいないもおきんるい E-mail URL2/7-22:43
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その5


アメリアの実家に着いたのは夜の9時も廻った後だった。
「じゃあ、ぼくはこのへんで」
「ゼロス、ありがとう!お母様によろしくいっておいて!今度お礼を
しにいくって伝えておいてよね〜。あ、そうそう、ここに来たこと、
ガウリイには内緒よ〜!」
「はいはい・・・やれやれ、人使いがあらいんだからなあ」
リナは運転席の執事の元へ行くと、ぺこりと礼をした。
「執事さんも、ありがとうございました。ご迷惑をお掛けしてご免なさい」
「・・・なんで、ぼくよりも丁寧な態度でお礼を言うんです?」
「だって、運転してくれたのは執事さんだもん」
「う。たしかに・・・」
「ゼロス、本当にありがとう」
フィリアがにっこり微笑んでいるのを見て、彼は苦笑する。
「まあ、フィリアさんの役にたてたんですし、良しとしますか」
ゼロスの乗った車が見えなくなるまで見送ると、アメリアはびしい!と
指を自分の家に向けて叫ぶ。
「さあ!!いきますよ!!銘酒強奪作戦!!」
『おー!!』
そして3人はきゃあきゃあ騒ぎながら門をくぐったのだった。

「おおおお!!アメリア〜!!!!」
「おひさしぶりですっ!とーさんっ!」
がしいいいいっ!親子のがぶりよりだ。
「全く、いちいちオーバーな親子よねえ」
「今年のお正月に帰省して会っているのに『ひさしぶり』なんて」
抱き合っていた身体を離し、アメリアの父、フィリオネル氏は豪快に笑う。
「おお!!リナさん」、フィリアさん!いらっしゃい!!・・・で、アメリア?
平日でまだ学校があるはずだが何用でここへ帰ってきたのかな?」
リナはすかさずアメリアの前に割って入ると、饒舌に説明をし始めた。
「おじさまっ!!あたし達、『調理実習』で隠し味にお酒が必要なんですの!」
リナの上品な話し方に、アメリアとフィリアは鳥肌が立つ。
「それで是非、おじさまの所有するお酒を少し拝借したくてここまで来たん
です!お願いします!少し分けていただけませんか?」
目をうるうるさせ、バックには花と水玉、点描的効果が浮いている。
「わっはっはっ!!まあ、そう改まった話し方をせんでも。よろしい、
何本かもっていくといいだろう。・・・もう、夜も遅いんだ、今日は
泊まっていきなさい」
「やったああ!!」
3人は手と手を合わせ、はしゃぐ。
「まあ、今のは本当かどうだか怪しい理由じゃが・・・アメリアに会えた
んで、わしは機嫌がいい。特別じゃよ?リナさん」
「たは!ばれてるか。やっぱ」
「とうさん、あたし達、まだ夕食食べてないんですう」
「おお、そうかそうか。リナさん、フィリアさん、食事にしようじゃないか。
もう、今から作るのはコックに悪い。外で食べよう。エミ・レミルなんかは
どうじゃ?あそこのフレンチはいけるぞ?」
「エミ・レミルはおいしいんですよ!リナさん、フィリアさん」
「きゃー、フレンチ、だってさ!フィリア!」
「やったあ、ですね!リナさん!!」
こうして3人はアメリアの父、フィルと連れだってリッチなディナーを
食べに行く丁度その頃・・・

ガウリイはひとり、アパートの炬燵に寝転がりテレビを見ていた。
夕食に買ったハンバーガーに付いていたポテトをぼちぼち食べながら
テレビを視線は追っているが、頭の中は別のことを考えていた。
「ゼロスとどこいったんだろう・・・」
がさがさ。
ふと目の前を見ると、ポテトは無くなり紙屑をくしゃくしゃさせ、手は
ポテトを求めて彷徨っていた。
「もう、寝よ」
おい、ガウリイ。炬燵で寝ると風邪引くぞ。


「あれ?風邪か?ガウリイ」
「ゼルガディスが登校途中、呼び止める。
ほらいわんこっちゃない・・・みんなも炬燵でごろ寝はやめようね!
「・・・ああ、炬燵で寝ちまってな」
「しょうがないなあ、部活は止めておけよ?皆にうつるからな」
ゼルガディスもガウリイも同じ剣道部だ。3年は既に引退していて
主将にゼルガディス、副主将にはガウリイが勤めることになった。
「身体に無理するな、とか言えよ・・・」
「あはは、まあ言ってる意味は同じことだ」
「ったく・・・」
「じゃあ、俺は先にいくぞ」
自転車通学のゼルガディスは先に行ってしまった。彼の自転車はMTB
だが、二人乗りが出来ない。それに、ガウリイのような大男を乗せたら
自転車の方がガタがきてしまう。しかたがないといえばそうなのだが、つい
愚痴をこぼしてしまう。
「なんだよ、ゼルの薄情者」
のろのろと通学路を歩く彼の目に、ゼロスの車が飛び込む。
次の瞬間、ガウリイは車道に出て車の前に立ちはだかっていた。
ききいいいっ!!
タイヤが焼けた臭いとともに、煙をあげて車は半分スピンしかけて止まった。
「あぶないじゃないか!!」
運転手の執事はまだ気が動転しているのか、顔が引きつって大声で怒鳴れない。
「あれは・・・ガウリイさん?あぶないじゃないですか!」
窓から顔を覗かせるゼロスに向かって猛ダッシュ、首根っこを引っ付かんで
車外に引きずり出す。
「わああ??な、なにするんですう?ガウリイさん!!」
だが、ガウリイの顔を見てゼロス、初めて恐怖を味わった。
『え??これが人間の顔ですか??』
なにか気に入らないことでも言おうものなら、とんでもない事を仕出かす・・・
狂気の顔・・・今のガウリイは、まさしく爆弾だった。
「リナは・・・どこだ」
「へ?」
「リナだ・・・どこにいる」
「あはは・・・それは・・・秘密です」
ぐい!!勢いよく持ち上げられ、ゼロスの首が締まる。
「ぐえ・・・い、言うなって・・・リナさん・・・に・・・」
「なんでだ?」
「ほかにも・・・フィリアさ・・・んも・・・ア・・・メリ」
「フィリアやアメリアも一緒なんだな?」
かくかく。首を縦に振って『頷く』。
とたんに手は外され、ゼロスは地面に崩れた。
「そっか!」
にぱっ!!とたんに笑顔。今までの雰囲気が180度変り、いつもの
ガウリイに戻っていた。
「内緒ってあいつがいうんじゃ、しょーがねーな。悪かったな、ゼロス」
「それだけですかあ?車は事故しかけるし、ぼくは殺されかけたのに・・・」
「うーん。じゃ、オレの風邪を、うつしてやろうか?」
「いりませんよっ!それじゃあ!」
ばむ!!車のドアを力任せに閉め、走り去った。
「あー。ついでにのせてくれればいいのになあ」
ゼロスの怒りも何処吹く風、ガウリイはぼんやりとつぶやくのだった。


その日一日、3人の姦し娘は学校に来なかった。
昼までには来るかと思い無理して登校したガウリイ、熱で頭がくらくらだ。
今日は土曜日なので、ガウリイは部活を休んでアパートに帰って寝る事にした。
部室に置いてある剣道着を取りに行くと、マネージャーのシルフィールが
道具入れを武道場へ運ぶところだった。
「あら、ガウリイさま(ガウリイのファンはみんな『さま』を付けるらしい)
今日は部活に出ないのですか?」
「ああ、今日は風邪で具合が悪いんだ。帰って寝る」
「まあ・・・それは大変、わたくし、付き添いに帰ります!」
「え?いいよ、部のことあるんだし」
「いいえ!レギュラーであるガウリイさまの風邪を一刻も早く治さないと!」
頭痛と熱で断わるのも億劫な彼は、辟易の表情で部室を出る。
「待ってくださーい!ガウリイさまー!」
校門を出てしばらくすると、後ろから呼び声がする。シルフィールだ。
「お待ちになっていてくれれば・・・はあはあ・・・」
やっと追い付いて、彼女は横に並んで歩きながら呼吸を整える。
こういう仕草にどきどきする奴もいるのだろうが、ガウリイはその点
変り者である。彼の意中の娘は、ちびで赤い瞳の暴れん坊なのだ。
熱が上がってきたのか、ぼんやりする思考でなんとかアパートまで
たどり着く。しゃべることさえ苦痛だが、一応礼をいう。
「それじゃ、わるかったな。シルフィール」
「あ!ガウリイさま、食事の用意、いたしますわ!」
「いいよ、今は一人で寝たいんだ・・・それに」
「それに?」
「あとで、リナがなんか持ってきてくれるだろうから」
「・・・!そ、そうですか・・・じゃあ、お大事に」
小走りで走り去る彼女を見ること無く、自分の部屋にさっさと戻る。
ドアを閉め、ベッドに倒れこみながら彼はつぶやいた。
「悪い、リナ。口実につかっちまった・・・本当に来てくれると・・・
いい・・・んだがな・・・」
そのまま、ガウリイは眠ってしまった。身体中が熱でだるい。


決戦の日まで、いよいよ明日だ!!


つづく〜

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1233だけど誰かに送りたい〜もおきんるい E-mail URL2/7-22:47
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その6


一方、姦し娘達・・・時間を戻して・・・今は13日土曜日の10時。

アメリアの実家で1泊して朝早く聖流学園に向かう予定だった3人だが、
「折角帰ってきたんだからまだいて欲しい」というフィルの頼みに夕方まで
ここにいることにした。
ついでなので、14日の為のケーキ作りをしようということになり、アメリアの
家のキッチンを借りることにしたのだが、まあ素晴しいキッチンなのである。
まるで、大型ホテルの厨房並の設備が整っていて、フィリアは驚喜した。
「まあ!!撹拌器までこんなに大きいのがあるわ!!一度に何十人のケーキが
やけるんでしょう!ああ、このドラゴンフライ、いい具合だわ!クレームブリュレ
もおいしくこがせるわね!ええ?なんで石窯まであるの?すごい!!」
「ちゃはー、これは驚き!アメリアんところって、自分ちでパーティしたりするの?」
「はい、父さんの仕事関係の方々とかがみえたりすると3、40人には
なってしまいますから」
「ああ、あたしはどおおせ!庶民よおおお!!」
「きゃー、ここであばれないでくださーい!!」
「おちついて!!さあ、ケーキ作りましょう!!」
なんとか『野獣リナ』を静め、ケーキ作りを始めることにする。

昨日買ったチョコを惜しげもなくじゃんじゃん使うフィリア。
「ケーキのコーティングではけちったらいいものは出来ませんよ!
ケーキそのものが嗜好品で贅沢なものなんです、作るときも贅沢に!」
「イエッサー!ティーチャーフィリア!!」
「はい、今度はモカ風味のチョコをつくるわよ、アメリアさんはチョコを
削ってくださいね」
「あたしも、泡立てとかやりたいですう」
「だーめ!一昨日のように台なしにされちゃたまんないわよ!」
「うええ〜ん、フィリアさあん」
「もっとも簡単な『ショコラクラシック』を作るチョコを削って貰って
いるんです。ちゃんと、ケーキつくりましょうね?」
「わあ〜い!!」
「・・・フィリア、あんた、教えるのうまいじゃん。こういうのに才能
あるのかしらね〜」
「料理の先生、とか?・・・いいなあ、そういうのも」
しゃかしゃかしゃか・・・
「この電動の泡立て機つかいましょう。その方が奇麗に仕上がります。
さあ、そろそろ湯煎ですよ?アメリアさん」
「は、はいっ!!」
アメリアは湯煎では妙に手が震え、つい湯をチョコの入ったボールに
入れてしまうというミスばかりを続けていた。しかも、溶けたチョコに
生クリームを注いだ後、かき回しすぎて泡立ててさらに『バター』と
分離するまで撹拌したりとかなり情けなかったりする。
「・・・あんまし気合い入れずに楽に作んなさいよぅ、アメリア」
「わ、わ、わ、わかってますう!!」
まるで余命いくばくもない老人のように、手が震える震える。
命がぽっくりいくのを恐れるように、リナとフィリアは身体を寄せ合い
じっと見守っていた。
およそ10分!ボールの中のチョコは完全に溶けた。
「そっとボールを持ち上げて・・・」
ことん。台に戻されるボール。
ここで3人のバックには感動のエンディングテーマが流れていると思って
いただきたい。
「アメリアー!!やればできるじゃん!!」
「アメリアさん!!よくがんばりましたねっ!!」
「あ、あ、ありがとう!!フィリアさん!!リナさん!!」
三つ巴で、ぐわしいいいっ!!感涙に咽び泣くのだった。
「はっ!!泣いている場合では!!さあ、今度はテンパリンングですよ!」
「はい!!」
アメリアはようやくスランプから抜けた漫画家のように、てきぱきてきぱきと
今までのことが嘘のような働きをみせたのだった。自信をつけたせいであろう。

こうして4時間に及ぶチョコレートとの対決は幕を閉じ、姦し娘の勝利と
なったのだった。夕日に向かってガッツポーズ!!

「おお、いい匂いじゃな?チョコレート菓子をこさえておるのか?」
「あ、フィルさん」
「バレンタインのケーキを焼いていたんです!・・・あれ?フィルさん?」
しーん。
フィリオネル、ぷるぷる身体が震えている。そして突然、がばあっと!!
「アメリアぁー!!どこのどの馬の骨にそのような手作りのケーキを
くれてやるのだあああ?!!ゆるさあああん!!!!」
『どひ〜〜〜〜!!』
フィリアとリナはすささと後図去る。
だが、アメリア。
「はいっ!!これはとーさんのためにやきましたっ!!是非、食べてください!」
「!!!!!」
ケーキの乗った皿を無言で受け取り、じっと見つめる。
・・・ぼろぼろぼろっ!!大粒の涙がこぼれ落ちた。
「あ、あ、あ、アメリア〜、わしは・・・わしは猛烈に感動しておるっ!!
この父にも焼いてくれたのか?う、うれしいい!!うれしいぞおおお!!!」
「よろこんでくれて、あたしもすっごくうれしいです!とーさんっ!!」
「娘よっ!」
ひしっ!!ふたりは抱きしめ合う。勿論、ケーキのお皿はフィルが上に掲げ
妙なポーズでの抱擁だが。
「ははは・・・つかれたね、フィリア」
「なんか、ほほほ・・・ほんとうに」
乾いた笑いでふたりは『感動の親子の抱擁』を見つめるしかなかった。


「またくるのだぞおお〜」
と泣き叫ぶフィリオネルと別れ、バイトの時間に間に合わせて聖流駅まで
戻ってきた3人は、仕事に専念、定時まで続けた後タクシーで自宅である
マンションへと戻るのだった。
その途中、ガウリイのアパートの前を通りがかった時、フィリアが
「もう、出来たてを渡してきたらどうです?リナさん」
と言ったのだが、リナは首を横に振る。
「一日たったほうがしっとりしておいしいんでしょ?じゃ、14日に
わたすわ!サイコ〜に良い出来に仕上がったんだもん!」

その時、ガウリイは熱と悪寒で身体を震わせていたことにリナが気付く
はずもなかった。


決戦は明日だ!!

つづく〜

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1237私の気持ちをうけとって〜もおきんるい E-mail URL2/8-11:03
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その7


14日早朝6時。
3人はほぼ同時に起床。
アメリアはいそいそと支度を整え、朝食にコーンフレークを食べると
玄関に向かった。鍵を開け、外に出る。ふいに振り向き、叫ぶ。
「一番、アメリア!!いきますっ!」
そしてでていった。

「おー、気合い十分ねえ、アメリアちゃん」
リナはごそごそとキッチンで何かを作っている。
「じゃあ、わたしも行ってきます、リナさん」
「あいよ、がんばってね〜、とくに・・・」
フィリアはリナの方を向き、同時にハモる。
『お母様に、注意!ね?』
くすくす・・・ふたりは笑う。

「さてと、あたしも出撃!!」
昨日作ったケーキと、日頃まともな食事をしていない彼のために
弁当を手に、リナはマンションの部屋を後にした。


さて、アメリアは・・・

9時半。駅近くの喫茶店でゼルガディスと待ち合わせをする。
「えへへ、おいしいっていってくれるかしら?ああ、もし『こんな
あまいの、苦手』なんて言われたら!いや、以外に甘党で『にがい』
とかいわれたら!!あああ!!どおしましょう〜!」
「・・・なにをぶつぶついってる?アメリア・・・」
「うひゃあ!!」
いきなり後ろから呼ばれたアメリアは・・・驚いた拍子に・・・
ぽ〜んと・・・
あああ・・・
空中を、スローモーションでケーキの箱が飛んでいく・・・

「ふぬっ!」
ゼルガディス、猛ダッシュ!箱を間一髪で、キャッチする。
「わあ、あわわ・・・だ、大丈夫ですか?ゼルガディスさん!!」
「ああ、ケーキは無事みたいだ・・・中はどうかは」
「じゃなくて!!ああ、やっぱり!膝をすりむいてる!ごめんなさい、
ごめんなさい、ごめんなさい・・・」
大きな黒い瞳が、まるでスライムのように涙で歪む。
「おい、アメリア?」
ぽと。
ぽとぽと。
「ごめんなさい、ごめん、うっ、えぐっ」
苦笑して見つめていた彼は、ふいに不思議なほど優しく
微笑んでアメリアの瞼にキスをした。
「早く食べたいんだが・・・まだ、ここにいるか?」
「・・・!そうですね!早く食べて貰いたかったんです!」
アメリアは慌てて涙を手の甲で拭い、少し歪んだ笑顔で彼を見る。
「じゃ、行こう」
ゼルガディスはアメリアの手を引いて、歩き始めた。
「どこにいくんです?」
「俺ん家くらいだろう?ケーキを外で食べる訳にもいかんだろうし」
アメリアは少し緊張した。
彼の家に招かれるのは、これが初めてだったのだ。
「い、家の人は・・・」
「レゾ(彼の叔父)なら、いない」
「え?」
「去年、結婚しただろ?新婚家庭にお邪魔だろうから最近一人暮らしを
始めたんだ」
「・・・しりませんでした」
「年末に、大掃除と一緒にすませたからな・・・ここだ」
こぎれいな新築のワンルームマンションに、彼は入っていく。
「ほら、こっちだ」
「あ、はい!」
アメリアはますます緊張する。
『一人暮らしの殿方の部屋に・・・かああっ!あたしったら!
そ、そうよ!ゼルガディスさんは、そーゆー軽はずみなことは』
ぎくしゃく歩いてくるアメリアを見て、ゼルガディスは笑いを
堪える。

彼の部屋は1階の角部屋で、しゃれた出窓がついたロフトのある部屋だった。
彼らしく理路整然とした部屋。こ難しい本も何冊か無造作に机に置いてある。
「はあ〜、結構、広いですね」
「ああ、ロフトは見るなよ・・・って、いってるそばから!」
とてて、と添え付けの梯子を登ってロフトを観察。どんどん興味が涌いて
さきほどまでの緊張がどこかへ吹き飛んでいた。
マリンブルーのストライプのカバーが掛けられた布団。ここが寝室のようだ。
「おい・・・早く降りてこい」
「ここで寝てるんですか?あ」
「?」
「ゼルガディスさん、えっち」
「へ??」
梯子に登り、アメリアの方を見ると・・・手に雑誌。
「アクションギャル近所のおねーさん」
「な・・・どわあ!!」思わず梯子を踏み外す。
「大丈夫ですか?」
「・・・いいから、早く降りてこい」
「やです〜」
「こら」
彼は打ちつけてひりひりする脛を撫でながら、もう一度梯子を登る。
「おい、アメリア」
彼女がいない・・・いや、布団に潜りこんでいるのだ。
「なにをやっている・・・?」
「えへ、ゼルガディスさんの匂いがする」
「・・・」
ひょこ、と出した顔が可愛くて。
彼はロフトに上がり、アメリアが潜る布団をはぐった。
「あー、見つかったか」
「ばか。さっさと降りろ。ケーキ、食べるんだろう?」
彼はそっけなく話すが、心の中では葛藤していた。が。
「たべてください〜、あたしを〜」
ぷち。
このアメリアの『おちゃめなギャグ』に理性はふきとんだ。
「・・・本当に、食べるぞ?」
アメリアは意味を履き違えていた。
「どうぞどうぞ!自信作ですよ!」
「じゃ、いただこうかな」
「え?」
いきなり抱き寄せられ、アメリアは何が起ったのか分からない。
「えー?ぜ、ぜ」
「それじゃ、いただきまーす」
「うあきゃー?」
アメリアの大きな目がさらに大きく見開かれた。
「どこを、たべようかなあ?」
ゼルガディスは完全に遊んでいる。
「アメリア、どうしてほしいんだ?」
「え、その、あの、ほ・・・ほんとうに?ゼルガディスさん」
やっと意味を理解したアメリア、顔を真っ赤にして硬直している。

『あんな台詞、ほいほい言った罰だ。ちょと、いぢわるしてやろ』
アメリアが半泣きになるまで、彼はいぢわるをやめなかった。
(アメリアよかったぢゃん、こんなもんで済んで・・・普通もっと
えらいことになってるで・・・byもおきん)


さて、一方、フィリアは・・・
ゼロスは珍しくGパン姿。フィリアもカジュアルな格好だ。
ふたりは駅の近くの公園で待ち合わせをして、そこから電車で
『シーサイドパーク』というカップルがたむろする所へ行き、
そこで開かれている催しを楽しむ予定だ。
今日はそこのギャラリーで『近代美術と市民の暮し・ポスター展』が
開かれていた。その作品の中に、フィリアの好きな画家の作品が展示
されているのだ。

「初めてなの!実物を見られるなんて」
すっかりご機嫌のフィリアに、ゼロスも笑顔がこぼれる。
どうやら、今日は『お母様』の妨害もないようだ。
電車に乗るまでは不安だったフィリアだが、発車してようやく安心する。
電車のざわめきの中でも、ふたりはおしゃべりが尽きなかった。
駅を通りすぎる度、乗客が増え、車内は混雑を増した。
人ごみも不思議と楽しい。二人は身体を密着するかたちになる。
満員の車内、フィリアは彼の肩にそっと額を寄せた。
彼は結構大胆に、彼女の腰に腕を回す。
「こら。それは、いきすぎよ」
「あれ?だめですか?」
しれっと言われ、フィリアは返事に困ってしまう。
うっすら赤く染まる顔を、ゼロスはおもしろそうに見つめていた。
そんなふたりを、遠巻きで監視する、一人の男。

お母様は『シーサイドパーク』を一望できるレストランで、ソフトドリンクを
いただきながら外の景色をぼんやりと見つめていた。
「奥様、ゼロス様は、到着されたようです」
「もう、おそいんだから!!お昼を一緒にいただくように、伝えて」
なんとお母様、先に現地集合。・・・だれも誘っていないのに。
ゼロスがここに来る事を、彼の部屋に入ってこっそり調べる巧妙さ。
・・・フィリア、ご愁傷様・・・束の間の幸せ、グッバイ(涙)。


決戦は、続く!!


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1238「ごめん」どか〜ん!玉砕・・・(完結!!)もおきんるい E-mail URL2/8-11:08
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さいごお〜!!


リナは鼻唄で上機嫌だ。
歩く足取りも軽快で、空まで飛んでいきそうな調子。
「ふふふ、フィリア直伝、傑作オペラ!ああ、あたしって、なにやらせても
天才だわ!味も最高だし、あ〜、自分の才能が怖い・・・」

もう片方の包みは『リナちゃん特製おべんとう』。
鶏の立田揚げに南瓜の煮物、ほうれん草のごま和えにだし巻卵、きんぴらに
茄子の鴫焼きといった純和風。それに胡麻塩をふったおにぎりは、中が
おかか、昆布の2種類の味だ。(す、すげえ、リナちゃん・・・byもおきん)
お重の2段重ねの豪華さ&ボリュームだ。

「ガウリーイ!こら、あけろー!!」
両手が塞がっていてドアノブに手が掛けられない。
・・・が、応答なし。
「あり?どっか、いってるのかな?」
そっとお重を置いてドアノブを回すと・・・開いた。
「わあ、不用心。まあ、一人暮しの男の部屋なんかに誰も盗みになんか
入らないか。おーい!ガウリイ!めしだぞお〜!」
かちゃ。

リナは、硬直していた。
玄関に、女物の靴。そして、部屋のほうに視線を移す。
ベッドに寝ているガウリイ、そして傍には・・・
「シルフィール?」
「あ、リナさん」
しーん・・・
ぼとっ。
リナの手から、ケーキの箱が落ちる。
リナの顔は笑いながらも引きつって、身体なんかぐにゃぐにゃ震えている。
「ふえへへへ、へ、へへへ・・・こ、こりゃあ・・・お、お邪魔したかな?」
かく、かくかくかく。後ろに下がる足が、言うことを利かない。足がもつれ、
どべしゃあ!!ケーキの箱にしりもちをつく。
「h」
「リナさん、静かにしてください」
きっとシルフィールに睨まれ、リナはなすすべがない。
心の中では、猛烈な怒りが沸き上がる。
『な、なんだ?え?ケーキが、あたしのケーキがあ!!なんでガウリイ
シルフィールといるのよ?ふたまた?このドラまたのリナ様相手に大層な
ことしてくれちゃって・・・ちょっとガウリイ、なんとかいいなさいよ!』
「が・・・ガウリイ!!寝てないで起きなさい!!」
「静かに!」
「うっさい!あんたにいってないの!」
お尻に張り付いたケーキの箱をひっぱがし、眠る彼の顔にばし!と
叩き付けた。
「ふぁ?」
いきなりの事に、ガウリイは飛び起きる。
「・・・甘い」
口に入ったクリームを嘗めながら、何が起ったのか必死で考える。
が、分かる訳が無い。
顔に張り付いている箱をひっぺがすと、目の前にリナが立っていた。
「あんたには、これで十分よ。さよなら、ガウリイ」
「ああ・・・?さよなら・・・え??」
寝ぼけていた頭が『さよなら』の文字に反応する。
「リナ?おい??」
くるりときびすをかえすと、リナはずんずん足音をたてて玄関を出て行った。
ガウリイはケーキまみれの頭で、パジャマ姿のままリナを追う。
どべし。
まだ熱がある身体がいうことを利かない。おもいっきり畳に顔から倒れる。
「リ、リナぁ〜!!」
足ががくがくするが、構っていられない。もつれながらも追おうとする
彼を、シルフィールが阻む。
「ガウリイさま!熱がまだあるんですよ!寝ていないと!」
「どけ!!」
ケーキの破片をぽたぽた垂らし、ガウリイは玄関を飛び出す。
足は裸足のままだ。
玄関にはちょこんとお重が置かれていた。
どんな鈍い男でも、判るシチュエーション。
ケーキは、チョコの味がする。

『14日、彼女はいそいそと彼の家にバレンタインのケーキを持って
やってきました。
ところが、家には他の女が先に来ていたのです』

「・・・あちゃああ〜〜・・・」
ガウリイは、とにかく走る。チョコのしずくをぽたぽた垂らし。
道行く人は何事かと彼を見るが、構ってなどいられない。

『ちくしょー!!オレはなあ!お前さんに振り向いて貰うためにどんだけ
苦労したと思ってるんだ!!朝、お前さんが登校する時間に合わせたり、
やりたくもないクラス委員になって話す機会を作ったり!!(リナは
ゼルガディスと共に特進組のクラス委員なのだ)ゼルに頼んでお前さんの
予定を聞いて・・・それに、それに・・・毎日はちょっと辛かったんだぞ、
ハンバーガー食べ続けるのは!!それもこれも、リナに会いたくて、話が
したくて・・・笑い顔がみたくて・・・!!』
ガウリイはかなり無理して走るが、ようやく彼女の姿を発見する。
「り・・・リナーーー!!」
お尻にケーキの汚れ。
だが、それよりも彼女の格好を見て驚く。
ミニスカートなのだ。
制服以外、スカート姿など一度も見せたことがなかったリナが、スカート
をはいているのだ。
一瞬立ち止まった、が。
突然猛ダッシュ!!リナはものすごい勢いで走り出した。
「く・・・!!おのれ、のがすか!リナー!!」
ガウリイも猛スパートをかけてリナに追いすがる。
「リナー!!ま、まってく・・・」
どさっ。
妙な音にリナは振り向くと、パジャマ姿の大男がチョコで頭をべたべたに
させたまま、うつぶせにぶったおれている。足は・・・裸足のまま走った
ため、汚れて少し血がにじんでいた。
「・・・ガウリイ??ちょっと!!こんな格好で追っかけてきたの??」
慌てて駆け寄り、身体を起こす。
「ちょっと?あんた、熱があるんじゃないの??」
「し、しぬ・・・」
くたっ。
「ガウリイ?ねえ、ガウリイ!!ガウリイっ!!」
ガウリイはマジで気絶してしまった。


近くの病院で点滴を受けながら、彼とリナは話をする。
誤解は、あっさりと解けた。

「そっか、わるいことしちゃったなあ〜、シルフィール、心配して
来てくれたんだよ。きっと」
「後で、謝っておくよ」
「・・・はあ〜、なんか、散々なバレンタインになっちゃったなあ・・・
つかれたあ〜」
椅子に腰掛け、足をぷらぷらさせてリナはつぶやく。
ガウリイはにこにこ顔でリナを見つめている。
「ケーキ、うまかった」
「え〜、うそいえ〜」
「味は分かったぞ?でも、ちゃんとした形のが欲しいなあ」
「ふん、あれはフィルさん所のハイパーなキッチンで作ったから出来た
すっばらし〜いケーキなの!うちのへっぽこキッチンじゃあできません!」
「え〜?だめなのかあ?」
捨てられた小犬のような瞳で見つめられ、リナは顔が赤くなる。
「そうね!来年まで付き合っていたら、そのときのバレンタインに焼いて
あげるわ。もう、当分ケーキ焼く情熱は持てません」
「う〜・・・」
「ま、とにかく風邪をさっさと治しちゃいましょ!」
リナは彼のおでこにキスをする。まだ、ほんのりチョコの匂いが残っていた。
外は既に夜。街並が夜景に替わり、もうすぐ今日も終わろうとしていた。


姦し娘はそれぞれのバレンタインの結果報告。
『今日一番の不幸さん』はフィリアということで、乙女の会議は終わった。
さて、このバレンタインで、それぞれのカップルのらぶらぶ度が上昇した
かといえば、思ったほどの成果はなかったようである。

次の日、リナは入院している間にガウリイの部屋を掃除しに来て、エロ本や
ビデオの山に驚く。AVのおね〜さまの巨乳に、ますますコンプレックス。

アメリアはあいかわらず、ゼルガディスに元気に飛びつく。ふとなにかの
視線に気付き、振り向くとグルムグンがこちらを睨んでいる。

フィリアはすっかりむくれ、ゼロスの言い訳にも耳を貸そうとしない。
ずんずん歩く彼女に、必死で後を追いながら説明する彼の姿は涙を誘った。


「来年も、バレンタイン作戦、できるといいね!」
姦し娘はくすくす笑いあうのだった。



えんどおおお

はあ、終わった終わった。
オペラというケーキが、食べたい。うまい店、どこかにないかなあ。
デメル、関西にもできないかしら。

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1249そーか、今年のバレンタインは日曜日かwwr 2/9-13:35
記事番号1238へのコメント


ども、お疲れさまでした。最後まで、わらかしていただきました。
そーか、今年のバレンタインは日曜日なんですねえ・・・・・・・このお話読むまで気がつかなかった寂しい奴(ふっ、どーせあげる相手
なんていないからいーんだ)

姦し娘さんたちのバレンタイン作戦は、二勝一分けってとこでしょうか?(笑)

>次の日、リナは入院している間にガウリイの部屋を掃除しに来て、エロ本や
>ビデオの山に驚く。AVのおね〜さまの巨乳に、ますますコンプレックス。
う・・・ま、まあ観賞用と実用はちがうということで(爆)

>アメリアはあいかわらず、ゼルガディスに元気に飛びつく。ふとなにかの
>視線に気付き、振り向くとグルムグンがこちらを睨んでいる。
・・・・・・・却下じゃぁっ!!!
保護者会より、聖流学園校則提案。不純同性交遊はこれを禁止する!!
アメリアちゃ〜〜ん、ゼルのことはなしちゃダメよぉぉぉぉ。

>フィリアはすっかりむくれ、ゼロスの言い訳にも耳を貸そうとしない。
>ずんずん歩く彼女に、必死で後を追いながら説明する彼の姿は涙を誘った。
おかーさまを恨みましょうね(笑)


>「来年も、バレンタイン作戦、できるといいね!」
>姦し娘はくすくす笑いあうのだった。
来年は、もーっとパワーアップするんでしょうねぇ(笑)
女の子達は、こうやって強くなっていくのですね(なんか違うかも)


フィルさんのハイパーキッチン・・・・・・・きっと大理石の調理台なんつーのもあるんでしょうねぇ?
しかし、なぜ石窯が?インドからのお客様のためだろーか???

なんだかチョコレートが食べたくなってきてしまいました。
ども、ごちそうさまでした。

あ、それから、平日の9:00〜16:00は、私NTT某支店のインターネット体験コーナーから来てます。
だから、意識の飛ぶようなお話を読んだり、魂を抜かれるようなイラストを見たりすると・・・・・・・まずいです、ホントは(爆)




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1264Re:そーか、今年のバレンタインは日曜日かもおきんるい E-mail URL2/10-16:27
記事番号1249へのコメント

わあ、感想その2、ねっ?>>wwrさん
うれしすぎ〜、やっぱ、ゼル効果?(にやり)

>ども、お疲れさまでした。最後まで、わらかしていただきました。
>そーか、今年のバレンタインは日曜日なんですねえ・・・・・・・このお話読むまで気がつかなかった寂しい奴(ふっ、どーせあげる相手
>なんていないからいーんだ)
そんなこといわずに、だれでもいーから渡す相手をゲッチュー!!


>姦し娘さんたちのバレンタイン作戦は、二勝一分けってとこでしょうか?(笑)
わはは、わし的には、ゼルにいぢわるされたいんで、1勝2分ですな。

>>次の日、リナは入院している間にガウリイの部屋を掃除しに来て、エロ本や
>>ビデオの山に驚く。AVのおね〜さまの巨乳に、ますますコンプレックス。
>う・・・ま、まあ観賞用と実用はちがうということで(爆)
ぺたんこは、感度いいそうだが、そうなのか?(当方、75Dなんで)

>>アメリアはあいかわらず、ゼルガディスに元気に飛びつく。ふとなにかの
>>視線に気付き、振り向くとグルムグンがこちらを睨んでいる。
>・・・・・・・却下じゃぁっ!!!
>保護者会より、聖流学園校則提案。不純同性交遊はこれを禁止する!!
>アメリアちゃ〜〜ん、ゼルのことはなしちゃダメよぉぉぉぉ。
わはははは・・・ゼル、ピーンチ!!

>フィルさんのハイパーキッチン・・・・・・・きっと大理石の調理台なんつーのもあるんでしょうねぇ?
>しかし、なぜ石窯が?インドからのお客様のためだろーか???
いや、ピザを焼く釜です(笑)。タンドリチキンやシシカバブは
考えてなかったなあ(まあ、焼けないことはないか)

>あ、それから、平日の9:00〜16:00は、私NTT某支店のインターネット体験コーナーから来てます。
>だから、意識の飛ぶようなお話を読んだり、魂を抜かれるようなイラストを見たりすると・・・・・・・まずいです、ホントは(爆)
だめだよ、とくにいけない画像なんかは(笑)。


また、なんかかいたらよんでくれぃ〜!
もおきん亭で、またなんかやるんで、みにきてね〜!
(近日、UP)