◆-やまなし、おちなし、いみなし-卵(2/5-19:26)No.1219
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1219やまなし、おちなし、いみなし2/5-19:26


初めまして、卵と申します。
図々しくも今回、いきなり投稿させていただきます。

<諸注意を兼ねた小話>

「教授、大変です!」
「どうしたんだね、君」
「何やら某所で卵が自作を投稿するらしいんです」
「何、どんな話だね?」
「なんでもスレイヤーズでガウリナを書くとか・・・」
「ふむ・・・・まぁなんにせよ奴の書くものだ。どうせやおいな話だろう」
「え!?」
「・・・君、何を赤面しておる。やおいとは『やまなし、いみなし、おちなし』・・・・つまりその存在自体を力一杯否定したくなるような話のことなのだよ」
「あ・・・そうでしたか。いえ、私はてっきり・・・・」
「全く、何を考えておるのやら・・・・」
(以後しばらく教授の愚痴のため、割愛)
「あの・・・・教授」
「何だね」
「ちょっと怖い考えが頭をよぎったのですが・・・・」
「うむ?」
「ひょっとして・・・私たちのこの会話もいわゆるやおいなのではないでしょうか・・・・?」
「・・・・・!?(絶句)」

以上、諸注意でした。
ガウリナ以外の方、また時間をとても大切にされている方はお気をつけ下さいませ♪

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1220『寒い日』2/5-19:34
記事番号1219へのコメント

 『寒い日』

 寒いのは嫌い。
 雪は嫌い。
 なんだってこの世界に冬なんてあるんだか。

 一面白の世界。すべてが雪に覆われている。
 それでも物足りないのか、灰色の空からは未だ雪が静かに降り続ける。
「さっっむーーーーい!!」
 リナはがちがちと震えながら叫んだ。
「まぁ、こんだけ雪があればなぁ」
 こちらも寒さに首をすくめつつ、だがそのくせのんきな声音でガウリイが言う。
「あたしは寒いのだいっきらいなのにー!!」
「そんなこと言ったってなー。次の村までまだだいぶあるんだろ?」
 ガウリイは目の上に手を当てて遠くを見る。しかし、リナお墨付きの彼の目の良さを以てしても村の姿はかけらも見えなかった。
「そうよ!村までまだまだだいぶあるわよ!!!夕方にならないとまずたどり着けないでしょうね!!」
「・・・・・何か、やけになってないか?お前さん」
 ちなみに今はまだ昼前である。
「だから寒いの嫌いなんだってば!」
 小さな肩をいからせて、リナは寒さに震えながらもずんずん歩く。
 やれやれと笑ってガウリイはそのあとに続いた。

 風が徐々に強くなる。それにともない、降る雪もだんだん激しくなってきた。
「リナ?」
「・・・・・」
「おーい、リナ?」
 先ほどからずっと無言の彼女にガウリイが声を掛ける。
「リ・・・」
「・・・・何よ」
 ぼそりとリナが答えた。けれどその声は不機嫌というより元気がない。
「いや、お前さんさっきから黙ったきりだが、大丈夫なのか?」
「・・・・・全然大丈夫じゃない」
「おい?」
「でも、とにかく今はあるかなきゃ。村までまだ遠いんだし」
 ぽつりと言ってリナはまた足を早める。

 寒いのは嫌い。
 ・・・・・暑いのも、じめじめしたのも嫌いだけど。
 けど特に、寒いのはあたしの魔法でもどうしようもないから。
 だからだいっきらい。

 突然、肩を掴まれた。
 少し思考に沈んでいた意識がそれとともに引き戻される。
「・・・・何!?」
 リナはびっくりして振り向いた。
「何、じゃない。本当に大丈夫なのか?リナ」
 ガウリイが心配そうに彼女の顔を覗き込む。
「それならさっきも言ったでしょ?大丈夫じゃないって」
「だったら・・・・・」
 言いかけてガウリイは黙り込む。
「けど、どうしようもないでしょ?」
 リナは言った。
「まぁ、火炎球の一つ二つ、そこらにぶちかますというのも一興だけど」
「・・・・いや、それはやめてくれ・・・・」
「冗談よ。そんなことやったら雪崩が起きるじゃない。
 とにかく、そんな心配してくれなくたっていいから」
「しかしなぁ、お前が八つ当たりもしないなんてよほど・・・・いや、いい」
 視線に含まれる殺気に気づき、言葉を濁すガウリイ。
 すっと手を伸ばし、リナの頬に触れる。
 それから眉をひそめた。
「やっぱり。ずいぶん冷えきってるじゃないか」
「・・・・ガウリイの手は暖かいね。何で?」
「あのなぁ、オレは剣で食ってるんだぜ?」
「そっか。手がかじかんでちゃ剣を握れないもんね」
「そういうこと」
「ふーん、今度コツを教えてもらおうかな。手を冷やさない」
「ああ」
 ガウリイは両手で小さなリナの顔を挟むようにする。
 リナは少しだけ目を閉じた。
 ガウリイの手から徐々に暖かさが伝わってくる。互いに体温を分かち合う感覚がとても心地よかった。
 それから名残惜しげに目を開く。

 寒いのは嫌いだった。ずっと、
 だけど・・・・

「もういかなきゃ。早く村に入って暖かいところで休みたいもんね」
「そうだな」
 風は更に強くなってきている。さすがに遭難はしないだろうが。
 頷いてガウリイは防寒代わりに体に巻いた布を広げた。
「ガウリイ?・・・・て、ちょ、ちょっとぉ!?」
 リナはふわりとその布に包まれていた。
 ガウリイと一緒に。
「こうすればだいぶ暖かいだろ?」
「あ、あのねぇ!いいってば。こんな事してくれなくてもぜんっぜんいい!!」
「そんな顔色で言われても全然説得力無いぞ。
 あ、でも少し顔色よくなったみたいだな」
 それは違うってば!
 心の中で叫んでリナは赤くなった顔を彼から逸らす。
「と、とにかく。そんなに心配だったらそのマント貸してくれればいいから!」
「そしたらオレが寒いだろうが」
「ガウリイだから大丈夫!」
「・・・・おい」
「だいたいこんなとこ人に見られたら・・・・」
「いるのか?人」
 ひゅぉぉおおお
 いかにも寒そうな音で吹き抜ける風。
 辺りはただただ雪原とそれを囲むやせた木々ばかり。
 もちろん人はいない。
「よし、じゃあ行くか」
 ガウリイの言葉に今度はリナも異を唱えなかった。
 暖かかったから。
 そっと抱き寄せられた肩からガウリイの体温が伝わる。
 寒さに凍えていた体が少しづつとけてゆくような気がする。
 ほっと力が抜ける。
 その暖かさがあまりに心地よくて。
 あまりにもリナを安心させて。
 今更離れるにはそれは名残惜しすぎた。
「けど、ガウリイ。これじゃあたしは前が見えないんだけど」
 二人の身長差故に、リナはほとんど顔まで布にうずもれてしまう格好となっている。
 その分暖かいのは暖かいのだが。
「大丈夫。前と頭上はオレが見るから、リナは自分の足下だけ気をつけてりゃいいさ」
 ガウリイがあっさりと言う。
「ん。わかった」
 小さく頷き、リナはそっとガウリイの胸に顔を寄せた。
 今なら、彼にも自分の顔は見えないから・・・

 寒いのは嫌いだった。
 我慢なんかできないくらい。
 でも、寒いからこそ小さな温もりもはっきりと感じとれる。
 寒いからこそ、その温もりをいつもより素直に受け入れられる。
 だから、今はそんなに嫌いじゃないかもしれない。 
 
 
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はい、すみません。なにを書いてるんだか・・・・(汗)
けどせっかく冬なので勢いらしきものに乗って書きました。
・・・・・・夜道を歩くときは気をつけよう(汗)

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1267『流星の夜』2/10-19:50
記事番号1219へのコメント

『流星の夜』 

 黒の天蓋。
 星星が瞬く。
 新月のため、いつもよりもその輝きは増している。
 そんな夜のこと。

 「あ、流れ星」
 リナが空を見上げる。
「こっちも流れたぜ」
 ガウリイが別の方角を指さした。
「しっかし、星ってのはこんなにたくさん流れるもんだったか?」
「今夜は特別なのよ。あ、また流れた」
「特別だからこんなにやたらめったら流れるのか」
「まぁそういうこと」
 説明してもどうせその端から忘れていくに違いないのでリナは適当に頷いておいた。
 言っているそばから星は次々に流れて行く。いちいち首を巡らせその軌跡を追うのも煩わしいくらいに。
「あ、こっちの方が楽だぜ、リナ」
 ガウリイがごろりとその場に寝ころぶ。
「ほんとだ。たまには冴えてんのね、ガウリイ」
「それってほめてんのか?」
「ほら、ガウリイ、また流れたわよ」
 リナが指さす。
「・・・・そういえば、流れ星が流れている間に願い事三回言えたら願いが叶うらしいけど」
「珍しいな。リナがそんな女の子じみたこと言うなんて」
「うるさい」
 めきょ
 ガウリイはしばし静かになった。
 
 「けど、流れ星が流れるなんてあっと言う間だろ?その間に三回も願い事言えるのか?」
「あ、もう復活しちゃったの?」
「・・・・今のは結構効いたぞ」
「ふぅん・・・・ま、それはいいとして」
 リナが不敵に笑う。
「んっふっふっ、あたしこう見えても早口にはちょっと自信があるのよね♪」
 そう言ってばっと両の手を天に向かって広げる。
「それにこぉんなにお星様が流れてるんだもの。もう願い事なんか唱え放題♪叶え放題♪よね」
「そっか」
 優しく目を細め、ガウリイは笑う。
「ま、がんばれよ」
「もっちろん!」
 リナは当然、とばかりに言い切って・・・・・
「・・・・・・・あ」
 その目が夜空に吸い寄せられる。
 星の雨。
 そう言ってもけして誇張ではないくらいに無数の星が流れる。
 地面に寝転がっているとまさに星が降って来るかのように感じられた。
 今までの流星とはまったく比べものにならぬほど。
 二人は言葉を失い、その様に魅せられた。

 くたっと肩の力を抜く。
「はぁ・・・・すごかったぁ・・・・」
「・・・・・・ほんとうだな」
 まだ完全に現実へと戻れぬまま二人は呟いた。
 言葉がうまく出てこない。何かがぐるぐると胸の内を駆け回っているというのに。
「ああぁぁああっっ!!!しまったぁぁあ!!」
 唐突にリナが身を起こす。
「ど、どうしたんだ、リナ?」
「あんなに星が流れたのに、願い事一つも言ってないぃいっ!!」
 悔しそうに頭を抱えて叫んでいる。
「けど、一応まだ流れてるぞ。ぽつぽつと・・・・・」
 ガウリイが空を指さす。確かにわずかながらそこは流星群の名残をとどめていた。
「足りない!そんなんじゃぜんっぜん足りないぃっ!!」
「一体、いくつ願い事があるんだ・・・・?」
 小さくいれられたつっこみを無視して、まだ悔しそうにリナは言う。
「ああ、もう。今度これだけすごいの見れるのは数十年・・・・下手したら百年以上あとになるかもしれないのに」
「へぇ、じゃあオレたち珍しいのを見れたんだな」
 のんびりとガウリイが言った。体を起こして軽くのびをする。
「そうよ。すっごく珍しいんだから」
「そっか。ならもし次のが何十年後かだったらまた見ような」
「うん・・・・て、あたしも?」
 リナは大きな目を丸くして振り向く。
「?そりゃそうだろう」
 きょとんと彼女を見返すガウリイ。
 何十年も先まであんたあたしと一緒にいるつもり?
 思わず言いかけた言葉を飲み込んで、リナは答えた。
「そうね。その時は願い事言い忘れないようにしなきゃ」
 それからくるりと体を返し、ガウリイの隣に座る。
 その顔がなんだか嬉しそうだったのを彼が見たかどうか・・・

 「ところでリナ。お前さん、一体何を願うつもりだったんだ?」
「えぇとねー、永遠の美貌でしょ?金銀財宝に、楽しい盗賊いじめに、おいしいものをたくさんに、それから・・・・・」
 楽しそうに指折り数えるリナ。
 以下、数百項にわたる願い事が延々と続く・・・・
「・・・・・で、それから・・・・・これは秘密♪」
「何だよ、秘密って?」
 尋ねるガウリイにリナは悪戯っぽくその瞳を巡らせた。
「いいの♪もう半分叶ったから」
 そう言って空に目を移す。
「ほら、まだ星は流れてるんだから。最後までお星様を楽しみましょ♪」
「そうだな」
 並んで天を見上げる二人。
 それは星降る夜の一つの話。