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1251ウサギとカメ2さくらあおい 2/9-15:44


前のツリーにつなげるつもりが・・・・落ちちゃったので、新たに書きます。
今度のキャストは、ウサギ=ヴァルガーヴ、カメ=フィリアです。
前のモノとは別物ですから、混合しない様に気を付けて下さいね。

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昔、むかし、ある所に、金色の甲羅が美しいカメがおりました。火亀王を祭る
巫女で、名をフィリアといいます。しっぽの先にピンクのリボンを付けた、オシ
ャレにはちょっとうるさいカメでした。
ある晴れた日のこと。散歩に出かけたフィリアは、野原の真ん中にティーセッ
トを広げて、一人、お茶を楽しみます。ですが、用意を始めてからお茶を一口す
するまでの間に、日が高く昇ってしまいました。彼女はカメなだけに、何をやら
せても遅いのです。
そこへ、目つきの遅い三白眼の黒ウサギ・ヴァルガーヴが通りかかりました。
呑気にティータイムを楽しんでいるフィリアを見かけると、立ち止まってその一
部始終を傍観していました。すると、彼の耳がぴくぴくと動き、ひげがぷるぷる
と震えます。かなりイラついているようです。いつでも機敏に動き、頭の回転も
早いヴァルガーヴは、のろのろとしたのが嫌いな性分なのです。
見るに耐えかねたヴァルガーヴは、フィリアの元へ歩み寄ります。
「やい、そこのカメ! テメエ、何トロトロやってやがんだ?」
フィリアは驚いて、突然いわれもないいちゃもんをつけるウサギを振り返りま
した。頭上から見下ろすヴァルガーヴに、フィリアは怯えたように聞き返します。
「あなたはどうして怒っているのですか?」
「へん。お前を見ていると、俺はムカついてしょーがないんだよ! どーしてくれる?」
「そんなムチャな。これでも私は懸命に動いているのですよ。それなのに……そ
のような事を言われても困ります」
「どーしてやろうかなぁ?」
フィリアの言葉など聞いていない様子で、ヴァルガーヴは意地の悪い笑みを浮
かべ、いろんな悪さを思い巡らせています。
その隙に、フィリアはその場から逃げ出そうとしますが、広げたティーセット
を片づけるのに手間取り、なかなか立ち去る事が出来ませんでした。
何か思いついたように、ヴァルガーヴの目がキランと光った、その時、
「インバース・ロイヤル・クラーーーシュッ!」
どこからともなく矢のような蹴りが飛び、頭に直撃を食らったヴァルガーヴの体が吹っ飛びました。
「大丈夫、カメさん?」
フィリアにかけられた声の主は、珍しい栗色の毛をしたキツネでした。
「何しやがんだ、テメエ!!」
何とか起き上がったヴァルガーヴが、憤慨と文句を言います。
「あたしは、リナ=インバース。陰険なウサギが、か弱いカメをいぢめてるから
助けたのよ。なんか文句ある?」
ない胸を張り、リナは言いのけました。
「あ。そうそう」
思いついたように、リナは振り返って、フィリアに言いました。
「このお礼は、そおね、金貨100枚ってトコでいいわよ♪」
「え……お金を取るのですか?」
「うん。だって、慈善事業でやってるんじゃないもの」
平然と言いきるリナの言葉に、フィリアは思わず言葉に詰まる。睨み付けるヴ
ァルガーヴと、にんまり笑みを浮かべるリナとを交互に見やり、とうとう決心して、
「……火亀王の神殿に戻ってからでいいですか? 今は手持ちがなくて」
「しょうがないわね。なら、それでいいわ。あなた、名前は?」
「フィリア=ウル=コプトと申します」
「それじゃあ、フィリアさん、よろしく」
にっこり笑って握手を交わすリナに、フィリアは一抹の不安を感じるのでした。
「お前ら! この俺様をシカトしやがって。少しは、俺の話を聞け!」
阻害されっぱなしのヴァルガーヴが割り込んできました。
「あー。はいはい。火炎球(ファイアーボール)」
一抱えもある火の玉がヴァルガーヴ目掛けて飛び、彼はすんでのところで避けました。
「あ、危ねーだろーが!!」
「無視するなって言うから、相手してあげたんじゃないのよー」
「だからって、いきなり魔法を使うな! これは、俺とそいつとの問題なんだ。
部外者がしゃしゃり出るんじゃねーッ」
「お生憎さま。もう部外者じゃないわ。正式にフィリアさんに雇われたもの」
「頼んでませんけどね」
フィリアがぽそりと呟くのを、リナは耳ざとく聞いていました。
「何か言いました、フィリアさん?」
「い、いえ、何も……」
フィリアは慌てて首を振り、密かに涙ぐむのでした。
「そーゆーわけだから、フィリアさんに用事なら、このあたしを通してちょーだい」
「よ、よおし。だったら、俺とそのカメとで競争だ」
「競争?」
フィリアが、目をぱちくりとさせて聞き返します。
「そうだ。そもそも、そいつがトロくさいっつーのが話の論点だったんだ。だか
ら、かけっこではっきり白黒つけてやろーじゃねーか」
突然割り込んだリナへの動揺の為にか、うまく思考が働いていないようです。
ですが、リナはにぃと笑うと、
「いーわよ。その勝負、あたしが見届けてあげるわ」
あっさりと承諾しました。途端に慌てたのは、当事者のフィリアです。
「何を勝手に受けてるんですか! 相手はウサギさんですよ?勝てっこありません!」
「やっても見る前から、そんな後ろ向きな事言うんじゃないのッ。大丈夫。あた
しを信じなさいって」
リナは自信満々に答えます。
「オイ。テメエ、まさか、そいつに魔法をかけて助けるつもりじゃないだろー
な!? そんなのはルール違反だぜ」
「あら、心配しなくていいわ。フィリアさんには一切魔法を使わないから」
「それならいいが……。いいか、もし、そんな真似しやがったら、無条件で俺の
勝ちだからな。そん時は、もう二度とテメエに口出させねえぞ」
「了解♪」
ガリガリガリ。リナは、小枝で地面に線を引きます。そして、少し離れた丘を
指差して言いました。
「そいじゃあ、コースは、ここからスタートして、あの丘の木を折り返し、また
ここへ戻ってくる……でいいわね?」
完全にリナが仕切り、ヴァルガーヴとフィリアは、スタートラインに並び立ちました。
「はう。どうして、こんな事になってしまったのでしょう・・・…?」
なりゆきに振り回されっぱなしのフィリアがぼやきました。
「準備はいい?」
すさまじく耳のいいリナは、フィリアのぼやきが聞こえていたのですが、何食
わぬ顔で聞き流してしまいました。
リナが、小枝を持った手を、すっと振り上げます。
「よぉい――どんっ!!」
リナの掛け声と同時に、素晴らしいスタートダッシュでヴァルガーヴが駆け出
していきます。そして、フィリアは……
「あんた……ほんっとうに遅いわね」
リナが、のろのろ歩くフィリアの側にしゃがみこんで、しみじみと言いました。
「こっ、これでも、私は精一杯早く走っているつもりなのです」
「そんなんじゃ、日が暮れちゃうよ?」
「他人事みたいに言わないで下さい! 元はといえば、あなたがこんな勝負を受
けたりするから……。だから、私が無理だと言ったでしょう。ほら、ウサギさん
は、もうあんなに遠くじゃないですか。どうするんですか!?」
必死にじたばたと手足を動かしつつも、恨みがましくフィリアが言います。
「まあ、頑張んなさい。それじゃあ、あたしは一足先に木の所で待ってるから。
――翔封界(レイ・ウイング)!」
風の結界をまとったリナは、あっという間に飛び去り、残ったフィリアは、た
だがむしゃらに歩くしかありませんでした。
一方、ぴょんぴょんぴょんと跳ねていくヴァルガーヴは、順調そのものでした。
「へへ。ヘンなキツネが邪魔に入ったが、この勝負に勝てばこっちのモンだ。そ
ーすりゃ、誰に邪魔される事なく、あのカメに……へっへっへっへっ」
余裕綽々といった様子のヴァルガーヴは、恍惚とした笑みを浮かべます。彼が何
を想像しているのかは、追求すると恐いので、良い子のみんなはやめましょうね。
その時、彼の視界の端に、何かがかすめました。
「!?」
わき目もふらずに走っていたヴァルガーヴでしたが、優れた反射神経でもっ
て、それに飛びつきます。
「こ、こ、コレは……!」
ヴァルガーヴは、走るのも忘れ、手にした一枚の写真を食い入るように見つめます。
赤いたてがみが凛々しい百獣のライオンが写っていました。
「コレは、ガーヴ様のプロマイドォーーーーー!!」
幸せの絶叫をあげるヴァルガーヴの写真を持つ手が、わなわなと震えます。
「何で、こんな所に……。ふっ。これも、俺様の日頃の行いが良い証拠だな」
しばし悦に入るヴァルガーヴは、ふと我に返って、写真を大事そうに胸のポケ
ットにしまうと、再び走り出しました。けれど、駆け出してすぐ、
「うおおおお! これは、浴衣を着たガーヴ様! をを? ここには、パジャマ
姿のガーヴ様が! ぐおおーーー! これは、禁断のせぇらぁふくばーじょん
(TRY最終話アイ・キャッチ参照)じゃねーかぁっ!!」
次々とガーヴのマル秘プロマイド写真を見つけ、ヴァルガーヴは歓喜の声をあげます。
「くぅー、生きてて良かったぜ!」
すっかり御満悦のヴァルガーヴ。しかし、次の瞬間、彼は見たのです。丘の木
の根本に置かれた、ガーヴ愛用の○○○(想像してみてね・笑)を!
「ををををををーーーーーっ。俺のモンどわぁ〜〜!!」
フィリアとの勝負の事など、きれいさっぱり忘れ去ったヴァルガーヴは、一目
散に○○○目掛けてダッシュしました。伸ばしたその手が○○○に触れる、その瞬間、
「眠り(スリーピング)!」
ぱた。
「ぐ〜。くか〜」
ヴァルガーヴは、その場に倒れ込み、眠り込んでしまいました。
「ガーヴ様ぁ……」
幸せな夢を見ているのか、ニタニタと笑って寝言を呟くヴァルガーヴをよそ
に、遅いながらも確実に歩を進めるフィリアは、丘の木を折り返し、ゴールを目指します。
「むにゃむにゃ、ガーヴ様……ん……?」
山の向こうに日が沈みゆき、空が茜色に染まる頃、ようやくヴァルガーヴは目
を覚ましました。
「あー、いい夢だったぁ……って、ああ!!」
丘の下のゴールライン手前に、歩くフィリアが見えました。
「しまった。勝負の最中に寝ちまったのか。だが、今からでも挽回できる!」
手に入れたプロマイド写真の束がポケットに入っているのを確認し、それが夢
ではなかったのを知ると、ヴァルガーヴは猛然と走りだしました。ただ、残念な
事に、意識が途絶える直前に掴み損ねた○○○は、どこにも見当たりませんでした。
ゴール地点で、フィリアがたどり着くのを見守っていたリナは、突進してくる
ヴァルガーヴに気付きました。
「やだ。あいつ、起きちゃったの!? フィリアさん、早く! もうちょっとよ!」
「は、はい」
リナの声援を受けて、フィリアはラストスパートをかけます。けれども、ヴァル
ガーヴがもう後ろまで迫ってきています。
「はっはっはー。残念だったな。俺の勝ちだ!」
勝利を確信したヴァルガーヴが、ゴールラインまで、あと5mに来た時、
こけっ!
何かに蹴躓き、ヴァルガーヴは、ずさささささぁと、こけてしまいました。
倒れたまま、ゴールに向かっててを伸ばすヴァルガーヴ。しかし、無情にも、
わずか数センチ届きません。
「ゴォーーーール!」
前足でゴールラインにタッチして、フィリアはそのまま倒れ込んでしまいました。
「やったわよ、フィリアさん! あなたの勝ちよ!」
疲れ果てて声も出ないフィリアに、リナが明るい声で言いました。
そこへ、長く伸びた影が割り込みます。
「よ、リナ。オレの光の剣知らねーかぁ?」
のほほんとした口調で声を掛けたのは、金色の毛並みのクマ・ガウリイでした。
「へ? 知んないわよ。どこでなくしたわけ、あたしの光の剣?」
「お前のじゃないって……。確か、この辺りで昼寝した時……あった!」
倒れるヴァルガーヴの足元にあった光の剣を、ガウリイはひょいと拾い上げま
した。さっきヴァルガーヴが足を取られたのは、これだったのです。
「やー、見つかって良かったぁ」
「無効だ! こんな勝負は、無効だ!!」
喜ぶガウリイには目もくれず、ヴァルガーヴが叫びました。
「あのね。勝負は時の運って言うでしょ。大体、あんたが居眠りこいてたのが悪
いんじゃない。あんたも男なら、負けを認めたら?」
ぴしゃりとリナが言い放ちます。
「ほ、ほぉう。なら言わせてもらうがな。俺は、この耳ではっきり聞いたんだ
ぞ。お前が眠り(スリーピング)を唱えたのをな! 言ったハズだぜ。魔法を使っ
たら、俺の勝ちだとな!!」
言って、ヴァルガーヴは残忍な笑みでフィリアに視線を向けます。怯えたフィ
リアは、リナの後ろに隠れました。
「そんな事、言った覚えはないわ」
「何だと? しらばっくれるつもりか!」
「間違えないで。あたしは、『フィリアさんには一切魔法は使わない』って言っ
たのよ。だから、彼女の手助けはしていない。でも、あんたに使わないなんて一
言も言わなかったもの」
リナのへ理屈に、さすがに何か言おうとしたフィリアも、自分が不利になって
は元も子もないので、敢えて口を出しませんでした。また、通りかかっただけの
ガウリイは、そこで展開されている話など、まるっきり関心がない様子で、ぼん
やりと眺めています。
「テ、テメエ……! そーかよ。そっちがその気なら、俺にも考えがあるぜ」
頭に血が上ったヴァルガーヴが身構えます。
「へえ。やるんなら、あたしも受けて立つけど。その前に、あんたの服のポケッ
トの中にあるものを返しなさいよね。手に入れるの、苦労したんだからぁ」
にまにまと微笑むリナの言葉に、ヴァルガーヴは絶句します。
「「やっぱし、テメエだったのか?」
「返してよね」
「…そ、それは……」
「それがイヤなら、潔く負けを認める事ね」
ヴァルガーヴは、悔しそうに歯をギリギリと噛み締め、リナを睨み付けました
が、やがて観念して口を開きました。
「――今回は、俺の負けだ。だが、いいか。これで諦めたわけじゃねーからな。
やい、カメ! いつか、俺のモンにしてやるぜ! 首洗って待ってなっ!」
悔し紛れの言葉を吐き捨てながら、それでも、ポケットの中身がさも大事そう
に手で押さえて逃げ去るヴァルガーヴ。
「二度と来なくていいわよーーーー!!」
哀愁漂うヴァルガーヴの背中に、リナの声が掛けられました。
「さて、と。それじゃあ、火亀王の神殿とやらへ行きましょうか」
リナがフィリアを振り返ります。
「覚えてらしたんですね」
「トーゼンでしょ? そーだ。ガウリイ、あんたも一緒に来なさいよ」
「あ? そーだな。別にいーぞ」
歩くのが遅いフィリアを運ぶ役を押し付けられるとも知らず、あっさりと安請
け合いするガウリイ。
一路、火亀王の神殿へ向けて歩いていくカメとキツネとクマの3匹でした。

このようにして、のろまなカメに油断したウサギは、得意なかけっこで負けて
しまったのです。どんな自信家も、努力を怠ってはいけないという教訓なのですね。
「ちげーだろーがっ!!」
激怒する黒ウサギの声がしたような……気のせいですね、きっと。おしまい。



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初めて書いたヴァルが、こんなのでいーのか、私?(^^;)
ヴァルガーヴファンのみなさん、決して悪意はありませんので。(汗)
そこの手に石を握り締めたあなた。投げるなら、親指大以上の物は、ご勘弁の
ほどを。数も、一読に一個と限定させていただきます。m(_ _)m
さて、突っ込まれる前に、自分で言っておきましょう。なぜ、リナがガーヴの
プロマイド写真など持参していたのか? それは、お役立ちアイテム2号のコウ
モリ・ゼロス(1号は当然ガウリイ)を呼び出して、捨て値で無理矢理買い取っ
たのです。さすがに、ガーヴ愛用の○○○(文字制限なし。ご自由に想像して下
さい)は、持ち出すのが精一杯だったので、レンタルでした。

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1355Re:ウサギとカメ2シェラ 3/3-14:50
記事番号1251へのコメント

おもしろいっ!!
また書いてください。