◆−初投稿−ARU(2/27-14:42)No.1338
 ┗バージン・ロード〜純白の道〜−ARU(2/27-14:44)No.1339
  ┗いいわけ−ARU(2/27-14:56)No.1340
   ┗Re:いいわけ−ひな(2/28-01:14)No.1342
    ┗ひなさま−ARU(2/28-02:46)No.1343


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1338初投稿ARU 2/27-14:42


以前から拝見してはいましたが、投稿するのははじめてです。
どうぞよしなに。
勢いだけで書いた代物ですので、かなりわけわからんもんですが、一応ゼル×リナ。でも基本はガウ×リナ。
ご笑納ください。

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1339バージン・ロード〜純白の道〜ARU 2/27-14:44
記事番号1338へのコメント

バージン・ロード〜純白の道〜

 やわらかな光が、きれいに舗装された道を照らしている。
 季節は、春。
 道の傍らに植えられた並木が、花びらを舞わせて道を彩っていた。
 その花びらに、そっと足を乗せるように歩む男が一人。
 外気の温かさにもかかわらず、白いフードを目深にかぶり、素肌どころか顔さえ見せない。
 道の先には、その名も高き聖王都セイルーンの城壁がそびえ立っている。
 この男が向かう先がセイルーンであり、おまけにその第二王女アメリアの招待でこの都を訪れた、と聞いて、信じるものはまずいないだろうが。
 
 「あー、やっほー、ゼルガディス」
 腐るほど聞きなれた声が、いとものーてんきに彼の名を呼んだ。
 「リナ?」
 眉を寄せ、いぶかしげに辺りを見回す。
 ・・・いない。少なくとも、彼の視界に入る中には。
 空耳、ではない。それが証拠に、同じ声がまだクスクスと笑っているのが聞こえる。
 「どこだ?」
 「ここ、ここだってー」
 ここ、はどこだ。
 内心で突っ込みながら、声の出所を探す。
 道は、やや小高く土が盛り上げられた上に作られていて、その横に花の並木が植わっている。
 花は満開。
 かすかな微風にもその花びらを散らせていく。
 立ち止まった魔剣士の上に、ひときわ多く花が降りかかっていった。
 「ここだっつーのっ」
 ぽて。
 ・・・何かが頭にぶつかる感触。
 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・リナ」
 降ってきた、白いサテンにこれまた白い絹糸で刺繍を施したハイヒールを握り締め、ゼルガディスは勢いよく空を仰いだ。
 拍子にフードが外れて、彼が忌み嫌う硬質な銀髪と、石の肌が陽光にさらされたが、隠そうという気はきれいに失せていた。 
 視界に飛び込んだのは、高く澄み切った青空をバックに、純白のドレスで微笑むリナ。
 
 「いいのか、今日の主役がこんな所で」
 「ん、いいのいいの。ガウリイに式の手順教えるのに暇かかってたし」
 「あの旦那は・・・・」
 おそらく彼につきっきりであろうアメリアに、深く同情する。
 「本当に、今日中に式が挙げられるんだろうな?」
 「さー、どーだろ」
 「おいおい」
 「ま、いざとなったら誓いの言葉だけ本人に言わせて、後は口パクかな。アメリアは全部本人に言わせるって頑張ってたんだけど」
 「・・・無理だな、旦那じゃ」
 リナとガウリイの結婚式は、あたしが取り持つわ。
 昔から、アメリアはそう言って張りきっていたものだ。
 その度に、リナは真っ赤になってアメリアの首を締め上げ、ガウリイはのほほんとリナの怒りに油を注ぎ、結局ゼルガディスが仲裁するはめになっていた。
 騒がしくて、忙しくて、うるさくて、恥ずかしくて。
 それでも、そんな毎日がけして嫌いではなかった。
 いま。
 アメリアはセイルーンの巫女頭を勤めている。父の引退後、王位を継いだ姉の補佐との兼業はなかなか辛そうだが、しかし楽しそうだ。
 長らく旅の空にあった姉が王位を継ぐさい、御多分の例に漏れず暗殺やら御家騒動やらが多発し、セイルーンの合法的な組織ではどうにも収拾がつかなくなったおり、リナ、ガウリイ、ゼルガディスその他の知り合いが、フリーの立場から手を貸し、ガウリイはその功績からアメリアの側近に任じられた。
 リナにもその話はあったのだが、彼女はその話を断った。
 いわく。魔道師協会では、高位の魔術師が何らかの国家単位の権力を得ることは禁止されている。
 「それに、めんどくさいし」
 ・・・最後の一言は、その場の全員に意図的に無視された。
 ゼルガディスにもその手の話はあった。
 彼の場合は、主に高名な魔道師達が彼の身体を元に戻すための協力をするという話であった。
 その間セイルーンにとどまり、アメリアの補佐をしてくれないか。
 そういう話だったが、リナがそれに強く反対し、彼はそれを断った。
 その頃の彼は知らなかったが、魔道師協会の上位の魔術師らの間で、「赤の魔道師」レゾの遺作となったキメラの身柄の確保がかなり真剣に討議されていたのである。
 当時天才といわれたレゾのキメラを捕獲、研究することによって、更なる魔道の発展を図ろう。
 その意見書の討論を聞いたリナは、表向きはそれに賛成しつつ、隙を見てゼルガディスを国外に脱出させ、キメラの行方不明を理由にその計画を凍結させたのだった。
 
 「・・・まだ、探してる?」
 追憶に浸っていたゼルガディスを、低い声が引き戻した。
 総レースのベールを小脇に抱え、靴を履き直して、彼の傍らを歩くリナは、あの頃とほとんど変わっていないように見えた。
 もちろん背丈は伸びたし(ヒールのせいもあるだろうが)胸の形も整った(パットを入れていないとはいいきれないが)。
 けれど。真っ直ぐに前を見つめて歩くその横顔が、一歩一歩確かな足取りが、背筋を伸ばした後ろ姿が、あの頃と同じだったから。

 (まだ、探しつづけるの?)
 (ああ・・・たとえ、見つからなくてもな)
 (いつまで?)
 (ずっとだ。いつか見つかる日まで・・・)

 あの日。あわただしい別れの日に交わした会話が、まざまざと蘇った。
 あの頃は、自分の体を戻すことしか考えていなかったから、ああ答えるしかなかった。
 「そうだな・・・ずっと・・・って、昔なら言ってたな」
 にやり、と笑う。
 「今なら?」
 いたずらっぽい、笑顔が返ってくる。
 自分は、本当に人間に戻りたかったのだろうか。
 何も知らず、レゾを敬愛し、自分の将来が光に満ちていたあの頃に戻りたいと、むしろそれを願っていたのではないだろうか。
 人は、後には戻れない。
 たとえどんなにそれを悔やんでも、一度選んだ道をもう一度選び直すことは出来ない。
 だから、今は・・・
 「・・・あの頃の俺は、力が欲しかった。そして、それを手に入れた。力を手に入れて、俺が次に望んだのは、この身体を元に戻すことだった。
 ・・・でもな。本当に俺が欲しかったのは、力を手に入れる代償に俺が失った、俺自身の居場所だったんじゃないかって、そう思う。
 今の俺は・・・探してるんじゃない。
 創っていこうとしてるんだと・・・そう思いたいな」
 俺が、俺として、胸を張って生きて行ける場所を。
 彼女のように、陽光の下で微笑んで、歩んで行ける場所を。
 手に入れたい。手に入れてみせる。
 「いつか・・・そこにいける日まで?」
 「いや。必ず、そこをつくりあげるまで、だ」
 目を交わし、にっこりと微笑み合う。
 「探すより、創る方が難しいと思うよ」
 「しかし、探しつづけて何も得られないより、まだましだ」
 からかうように、リナが笑う。大真面目にそれに答えてから、ゼルガディスも微笑みを浮かべた。
 セイルーンの城壁は、もう目の前だ。
 「御伽噺だったら良くある話なのにね」
 「は?」
 いきなりの話題の展開についていけずに、ゼルガディスはリナの方を見た。
 彼女の表情は、逆光で見えない。
 「こうして、王子様はお姫様のキスで元に戻り、二人は王国を継いで幸せに暮らしました。めでたしめでたしって。
 御伽噺なら、あんた絶対ハッピーエンドになれるのに」
 「おいおい・・・王子様って柄か、俺が?」
 「フィルさんよりはね」
 ・・・確かに。いや、今はもう「御隠居さん」なのだが。
 「俺にはお姫様はいないからな」
 本当は、いた。
 その姫は、深窓の令嬢ではなく、無敵の姫将軍だったけれど。
 姫将軍は、蛙の王子ではなく、忠実な騎士に祝福のキスを与えたのだから。
 そして、今日。
 そのキスは誓いのキスに変わる。

 風が、ふと強くなった。たっぷりしたドレスの裾が、大きくまいあがり、慌ててリナは裾を押さえた。 
 「あーーーっ!」
 裾に気を取られている隙に、風がベールを奪い去った。
 「こら、まて、ちょ、やだー、どうしようー」
 「俺が行く」
 邪魔な裾とベールがないぶん、ゼルガディスの方が身軽に動けた。
 ベールが地面につく前に、素早く掬い取って肩に担ぐ。
 「ほら、ちゃんと持っとけ」
 ゼルガディスが差し出した手と、リナが受け取ろうとした手。
 その間に、もう一度風が吹きぬけた。
 ゼルガディスが一瞬風に気を取られる。
 ベールが彼の顔をかすめ、それとは違うやわらかな感触も、一瞬唇をかすめた。
 風が、止んだ。
 「・・・リナ?」
 思わず、唇に手をやる。指先を、ほのかに口紅が染めていた。
 その隙に、リナはベールをきちんとかぶり直していた。
 幾重にも重なったレースのせいで、はっきりと顔色はうかがえない。
 「悪いね、あたしも、お姫様って柄じゃなくて」
 「・・・・・・!」
 気づかれていたのだろうか。ポーカーフェイスには自信があったはずなのに。
 「詫びのつもりか?」 
 「そんなんじゃないわ」
 ばっ、とベールを後ろに跳ね除けて、リナはゼルガディスに人差し指をつきつけた。
 「それ、大事にしなさいね。こんないい女からのファーストキスなんだから。粗末にしたら、ただじゃ置かないわよ」
 不敵な笑みを浮かべて言う。
 「・・・ああ。大事にさせてもらうさ」
 笑みを返す。
 ・・・自分は、うまく笑えただろうか。彼女のように、不敵に笑えているだろうか。
 いつか、彼女のようになれるだろうか。
 肩をならべて、セイルーンまでの道を歩く間に、そんなことを考えていた。
 
 春は爛漫。
 淡い花びらが、セイルーンまでの道を白く染めている。
 その花びらを踏みしめて歩む男女。
 強い風にもかかわらず、顔を隠すことも、そむけることもなく歩いている。
 純白の道を。
                                        END

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1340いいわけARU 2/27-14:56
記事番号1339へのコメント

 即興で書いた代物だけあって、何書きたいんだかわからなくなってますね。
 情景を書きたかったのですが・・・うまく出ているでしょうか。
 キメラの実験どうこうは、書いているうちに出てきたもので、深い意味はありません。
 こういう動きがあってもおかしくないんじゃないかな、とふと思っただけですので。
 コンセプトは前向きなゼルガディス。いい女に育ったリナ。
 で、その二人の大人っぽい会話・・・だったはずが・・・激しく違う方向に話がそれていってしまいました。
 
 

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1342Re:いいわけひな 2/28-01:14
記事番号1340へのコメント

はじめまして、ひなと申します。

いい短編ですね。
かなり深読みが可能な内容ですが、二人の「軽さ」がいい味出してます。
楽しませていただきました。

ではでは。

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1343ひなさまARU 2/28-02:46
記事番号1342へのコメント


>はじめまして、ひなと申します。
いえ、こちらこそ飛び入りの身ですのに。
>いい短編ですね。
>かなり深読みが可能な内容ですが、二人の「軽さ」がいい味出してます。
>楽しませていただきました。
光栄です。実は、ひなさんの話を読んでから何か猛烈に書きたくなってしまったのです。「おお、こんな私好みな話がこんな所にっ」て感じでした。
どうかもっと書いてください。楽しみにしておりますので。