◆−病院1(ゼルアメです)−よいどれ侍 (2003/3/1 22:32:11) No.13435


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13435病院1(ゼルアメです)よいどれ侍 E-mail URL2003/3/1 22:32:11


またまたゼルアメです。
この二人は私のベストカップルであり、目標でもあります。
短い挨拶ですが、本文をどうぞ。
 追伸、ホームページ作ってしまいました。よかったら遊びに来てください

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

さすがに俺はまいっていた。
ティッシュは手放せないし、目薬も必需品。
駅などで配っているティッシュをもらうのが習慣になっているのに気づき、ぞっとする。
いつ何時、場所を選ばずにくしゃみは出るし、鼻はむずむず。
だるいのに、きちんとした睡眠が取れなくて頭はボーっとしてしまう。
しかし俺自身の性格から、花粉をさければいいだけであり、そして花粉症なんて一時的なものだと我慢していた。
「課外実習」の名を担当教授から聞くまでは・・・

というようなわけで、俺は病院の門を叩いたのである。

手動のドアを押しあけると、病院特有の消毒臭が鼻をついた。
「こんにちわっ」
その無機質な空間に不似合いな声の方に視線をやると、15、6歳くらいの少女が受付にいた。
「なるほど…」
思わず、誰にも聞こえないくらいの声でつぶやいていた。
この年頃にしては背は低めなのだろう。
やっとのことで受付台から肩が出ているのが、なんとも愛らしい。
そう、彼女は「べらぼーにかわいい」のだ。

友人に評判のいい病院を聞いたとき、彼がにやにやしながらここを紹介したわけがわかった。
そのときは、花粉症を馬鹿にしているのだと思っていたのだが…。
奴にとって「評判のいい」とはこうゆう事だったのを、すっかり忘れていたのを彼は思い出した。

「初めての方ですね?
 保険証お願いします」
「ああ…」
返事をするのと同時にくしゃみがでる。
しかも三連発。
目の前の少女は、大きな瞳をまるくして俺をみた。
「花粉症ですか?」
俺はため息をついてから
「そのようだ」と小さく言った。

平日にもかかわらず、この病院は混雑していた。
そんなに大学の近くではないのだが、おそらく彼女目当ての学生なのだろう。
アレルギー科と皮膚科以外にもリハビリ科・整形外科をやっているからか、老人の姿も目立つ。
「アメリアちゃん、また来たよ」
「あ、こんにちわ」
どうやらこのじじいも常連(ファン)らしい。

初診ということで書いたアンケートを彼女に手渡すと、彼女はかわりに一冊の本を差し出してきた。
「これ、花粉症のことを書いてあるんです。
 今、混んでて診察まで30分くらいかかっちゃうと思うので、良かったらどうぞ。」
そう言ってるそばから、看護婦らしき女から彼女に名簿が渡される。
「塚本さん、なかに入ってお待ちください」
よく通る声だな、と思った。

俺は本を適当にめくりながらも、視線は気がつくと少女にいっていた。
あまり他人に興味がないと思っていた自分なのに、意外だった。
本は、少しわかり安すぎた。
日ごろからすさまじい論文(注1)をよまされているせいか、物足りなかったが、それでも花粉症についての知識は得られた。
気がつくと、無意識のうちに本の内容をつぶやいていた。
「今の時期に飛んでいる花粉はヒノキやスギが代表格」
…恐れている今度の実習地は富士樹海。
…スギやヒノキは死ぬほどある。
「花粉はよく晴れた日に飛びやすい」
…実習は、雨天中止、晴れた日の可能性大。
「室内に入るときは服についた花粉を落としてから入りましょう」
実習=合宿。
…あの集団が一花粉症患者の自分のために、花粉を落とすなどという努力してくれるとはこれっぽっちも思えない。
「はあ…」
俺は本日何度目かのため息をついた。

「またため息ですか?」
気づくと、受付の少女がそばに立っていた。
両手には湯気をたてた湯飲みが握られている。
「これ、どうぞ」
彼女が差し出したそれを、反射的に俺は受け取った。
「ああ、どうも」
「花粉症にきくっていわれてる甜茶なんです」
ふと周りを見回してみると、診察室にいるのは俺と彼女だけになっていた。
(まさかこのお茶で診察終了なんて落ちじゃないよな…)
少し不安になって尋ねた。
「こんなとこで油うってていいのか?
 仕事は…」
「あなたが最後の診察なんです
 …でも…
 前の患者さんが長くなりそうなので、ここに避難してるんです」
「避難?」
聞き返した声は、診察室からの叫び声にかきけされた。

「今度という今度は許さないわよっゼーロースー!!
 患者で来てるからって、セクハラもいいとこですっ」
「やだなぁ僕はびょーきで来てるんですよっ
 もっといたわってくれないと…」
嵐の前の静けさのように、場は一瞬だけ静まり返った。
「…そうね…
 山本さん…この男の馬鹿さ加減を調節するので大至急青酸カリをっ」
「先生っ落ち着いてくださいっ
 相手は患者さんですよっ!患者様は命です」

人がいないせいもあるだろうが、診察室の会話は筒抜けだった。
「…あと十分くらいで先生も落ち着くと思うので…
 もう少し待ってて下さいね」
そういって少女は笑った。
その後ため息混じりに「これさえなければいい人なのにな…」
というのを俺は聞き逃さなかった。
「…バイトか?」
俺は話題を変えるように言った。
「?」
彼女はその質問の意味がわからなかったようで、首をかしげた。
「誰がですか?」
…オマエ、と言おうとして思いとどまり、彼女の名を聞いていなかったのを思い出す。
俺は仕方なしに、人差し指で彼女を指差した。
「?」
彼女もまた、「私ですか?」という風に自分自身を指差した。
傍からみれば、さぞおかしな図である。
二人はそのポーズのまま凍りついたかのようだった。

「アメリアちゃん、ゼロスさんには裏口からお帰りいただいたから、最後の患者さん入れて」
「…は、はい」
彼女は勢い良く立ち上がって、俺のほうを振り返って言った。
「私はアメリアです。
 ゼルガディスさん、診察室へどうぞ!」
「…な、なんで俺の名を…」
なんだか彼女に圧倒されて、いつになく俺は口ごもりながら言った。
「保険証に書いてありましたよ
 …それとも偽名ですか?」
いたずらっぽい笑みを浮かべて彼女は言った。
今になって甜茶のけだるい甘みを感じるようだった。

声で予想はしていたが、いざ現実を目の当たりにすると、俺は少しあわてた。
「ゼルガディスさん、どうぞそこに座ってください」
あいつがこの病院をすすめた第二の理由、それはきっと、絶対間違いなく…女医。
「今日はどうしましたか?」
目の前の女がさっきの罵声の主なのだろう。
言葉は落ち着いているのを装っているが、こめかみの辺りの欠陥が痙攣しているのに俺はきづいた。
「花粉症らしくてな…」
「そうですね…花粉症の方には抗アレルギー剤を出しますが、眠くなると困りますか?」
「効かないほうがもっと困る」
俺は即答した。
「それじゃあ、わりと眠くならないのを出しておきます。
 花粉症の対策などは知っていますか?」
「…さっき本で一通り読んだ
 …読んだんだが、三月に樹海で実習があるんだ。
 四六時中花粉にさらされていることになると思う
 …何か案はないか?」
女は少しだけ考えるそぶりをみせ、
「注射…ですね
 それをうって後は強めの薬をのんで…
 …でも、三月ならまだ時間がありますね、今日出したお薬で少し様子をみましょうか」
「ああ、それでアレルギー検査みたいなのやってもらおうと思っていたんだが…」
「はい、抗体の数を調べることはできますよ。
 血液検査になってお金結構かかりますけど大丈夫ですか?」
「…かまわん」
「…それじゃ、その検査は後で処置室でやって…山本さん、準備よろしくお願いします。
 来週また来てもらえます?検査の結果も合わせてお知らせします」
「ああ…」
「それじゃ右の処置室のほうへどうぞ、山本さん検査よろしくお願いします」

通されたところは処置室というわりにはこざっぱりしていた。
ベットのほかには物はほとんどなかった。
「えっと、ゼルガディスさん
 そこに座って、腕出してくださいね」
アメリアという少女がでてくるのかと少し期待もしたが、看護婦の格好をした違う女だった。
バイトの身分で注射器をさされても困るが…。
看護婦は手際よく消毒をし、なんのまえぶれもなく注射器を入れてきた。
かすかな痛みだけだった。
注射器についた試験管のようなものに血液が溜まっていっているのが見える。
これが今の今まで自分の体をめぐっていたなんて、おかしな気分だった。
その試験管がいっぱいになると手際よく看護婦は次のものに変えていく。
なるほど、何度も注射器をさしなおす必要がないのか…
体の熱いものを吸い取られているような感覚だった。
「…はい、おしまい。
 ご苦労様でした。それじゃ、待合室お会計お願いします」
「…ああ」
そう言って俺は立ち上がった。

受付にはすでにアメリアがいた。
「あ、ゼルガディスさん、検査終わったんですね
 …ちょっと顔色よくないですけど、大丈夫ですか?」
「…なんてこたない」
「そうですか…
 はい、これお薬ですよ。一日二回朝と昼、食後に飲んでくださいね。
 あと、来週には結果が出るので、ちゃんと来てくださいね」
…少しふらつく気がしたのが予兆であったと思う。
「ああ」
適当に返事をして彼女から薬を受け取ろうとした瞬間、
鈍い頭痛が襲い、目の前が真っ暗になり自分の体が倒れるのが分かった。

頭にかかっている重い霧を振り払うかのように、俺は目を開く。
鈍い頭痛はまだ続いているようだった。
少しずつ焦点があってくると、どうやら自分はベットに寝ている状態だとわかった。
「あ、フィリア先生、気がついたみたいですっ」
声のした方に視線をやると、先ほどの少女…アメリアといったか、彼女がいた。
…そうだ、倒れた…んだった。
俺はやっと状況を理解し、身を起こした。
「まだ休んでたほうがいいですよ」
先ほどの女医もいる。
みっともなくて早く退散したかったが、俺の右腕をアメリアが掴んで離さない。
「白目むいて倒れるんですもん!
 子供じゃないんですから、体調が悪いときは検査なんて断ってください!」
彼女は顔を真っ赤にして、怒っているようだった。
「…アメリアちゃんめっちゃ慌ててね、救急車呼ぼうとしたのよ
 ここが病院だっつーの」
さきほどの看護婦がさもおかしそうに通りがかりに言った。
…この病院にもう一度来る勇気が果たして俺にあるのだろうか…

「…私もうあがりなので、ついでに車でおくっていきますから」
有無を言わさぬ口調で彼女が言った。
冗談じゃない、これ以上無様な姿を見せてたまるか。
「自分で帰れる」
彼女の腕を振り払うと同時に、短い車のクラクションが鳴るのが聞こえた。
「…ほら、迎えの車も来ましたし
 あ、勝手にゼルガディスさんのお会計済ましておきましたから、安心してください」
彼女はそういって、切り札のように俺の財布をちらつかせた。
「…大学まで頼む」
そういえば、こんなに自分のペースを乱される奴は初めてだとふと思った。


☆☆☆☆あとがき☆☆☆☆☆

長いようで短い?かもしれません。
実は、こないだ登校させていただいた小説と微妙に関連させていたりします。
設定では、「病院1」ではゼル君大学一年、アメリアちゃん高校二年です。
前回の小説は四、五年後をイメージしてました。
まだ続きます、よかったらお付き合いください。