◆−(ガウリナ) それが人の人たる故に プロローグ−太一 (2003/3/25 22:28:28) No.13735 ┣(ガウリナ) それが人の人たる故に 1−太一 (2003/3/25 22:30:06) No.13736 ┃┗(ガウリナ) それが人の人たる故に 2−太一 (2003/3/25 22:34:05) No.13737 ┃ ┗Re:(ガウリナ) それが人の人たる故に 2−Eしゃん (2003/3/26 16:58:58) No.13743 ┃ ┗Re:(ガウリナ) それが人の人たる故に 2−太一 (2003/4/3 17:58:58) No.13860 ┃ ┗Re:(ガウリナ) それが人の人たる故に 2−Eしゃん (2003/4/4 15:54:41) No.13880 ┗Re:(ガウリナ) それが人の人たる故に プロローグ−中田珂南 (2003/4/1 20:25:02) No.13837 ┗Re:(ガウリナ) それが人の人たる故に プロローグ−太一 (2003/4/3 18:05:14) No.13861
13735 | (ガウリナ) それが人の人たる故に プロローグ | 太一 | 2003/3/25 22:28:28 |
皆様こんにちわ、太一ともうします。初めて投稿させていただきます。 以前からスレイヤーズは大好きだったのですが、時の流れと共に 少しずつ好きな気持ちがマンネリ化していって疎遠になってたのですが。 最近ネクストがケーブルでやってまして、一気に熱が再発しました。 私、スレイヤーズ好きだったんだなーって新鮮な気持ちです。 よって新鮮な気持ちでガウリナです。だけど暗いです。 それでも良い方は宜しければ、ガウリナへのラブレターがわりの この作品を見て頂けると光栄です。 ■それが人の人たる故に■ ふわりと。 鈍く光る刃に小さな雪の破片が落ちた。 光させば、精気溢れる色に囲まれた森の中。 今は漂白された様に色は無く、音も失われ。 月すらも隠す濁った鉛色の空からは粉雪が舞い降り。 それでもーーー剣先にある生暖かな赤い色は、確かな現実の全てだった。 「・・・はぁはぁ」 小刻みに震える手が剣の塚を持つ事を拒絶する。 ぱふんと雪が舞い、沈む様に白い地へと剣が埋まる。 「ーーーオレはこの子を」 横たわる自分で壊した子供の体を抱き寄せて、血の溢れる心臓に手を 置いた。 ドクドクと溢れて止まらない血の流れは互いの服すらも紅く染め上げて。 それでも布が吸い切れなかった血を白い雪が暖かさを奪う様に吸収する。 小さな体はぐたりと力なく。 暖かな体温が徐々に失われつつあった。 「パ・・・パパっぁ」 ゴフっ!! 言いかけて子供の口内から大量の血が吐き出される。 もはや言葉を紡ぐ事すらも許されない体。 それでも必死に父親へと擦り寄り、いつもの様にる甘えの仕種をした。 大きく見開かれた赤い瞳が濡れた睫にゆっくりと伏せられる。 確実な終わり。 死への始まり。 望んでいた訳ではない。 だが。 こうするしかなかった。 この子が産声を上げたあの時から。 いつかは訪れるであろう破綻に怯えながらも。 「死ぬな・・・レナ」 それでも。 それでも良いから守りたかった。 「死ぬなぁ!レナァあぁぁぁっ」 小さな掌にある暖かな命の灯火を。 この身が替わりになれるのであれば、喜んで差し出した。 だが望みとは裏腹に酷なる運命の輪を断ち切れるだけの力はなく。 足掻くだけ足掻いた結果がこれなのかと声にならぬ嘆きで苦悶する。 「お願いだ!頼むレナぁ、死ぬな、死んだら駄目だ」 非力さを呪い 脆弱さを呪い 傲慢さを呪い 自分を構築する全てを呪い憎んでも・・・抱き寄せる愛しい我が子の体は 降り積もる雪に溶け込むかの如く、命の熱を喪失させていく。 「殺したんですよ」 虚空に支配されそうな心がグラリと大きく揺れた。 凄絶に浴びせられた穿つ言葉は閃光の様に焼き付いて。 現実を振り払う様に後ずさるが、背中は直ぐ木の幹にぶつかり 逃げ場を失う。 「なんとも滑稽ですね、認める事も逃避する事すらも出来ない」 一部始終を見ていた黒衣の神官服を身に纏った魔族は優美に 微笑みながら、まるで子供におとぎ話を聞かせるかの如く囁いた。 「その手で殺したんですよ。ガウリイさん」 「・・・ちぃ・・・違・・・オレは」 「違いませんよ。あなたが大切そうに胸の中へと抱いている 小さな命を自らの刃で貫き、その手で壊したのです」 一筋の涙が頬を伝う。 馬鹿馬鹿しい程にそれは熱く。 頬から顎へと落ちた涙は、ぽとりと小さな体に弾け落ちる。 「レナ・・・オレを」 つい先程まで「パパ」と慕ってくれていた命を。 穢れ無き無垢な瞳で。 愛し合った結果に生まれ落ちた命の灯火を。 誰よりも愛しい我が子の親でありながらも壊した。 「許してくれなんて、そんなおこがましい事は言いませんよね」 どこまでも冷静に黒衣の神官は突き放した様な言葉を紡ぐ。 希薄に掠れた現実味を掬い上げて濃縮させるかの様に。 噛み合わぬ歯列から白い息が漏れて闇に溶ける。 白い。 何もかもが白すぎて。 瞳に映る全ての色が、光景が、輪郭だけ残して消えていく。 押し潰されそうな不純物の無いこの白さは心の中までも白く 凍らせ、絶望の色に染め上げる。 「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」 正気を保てず、叫んだ声が音の無い闇の森に無情な声音を まろび立たせていた。 「あなた方は結局、何をしたかったのでしょうか?」 狂人の様に泣き叫び、寄り添う様に小さな骸を必死で掻き抱く 男の醜態を黒衣の神官は瞳を細めて見つめていた。 絶えず覆う様に降り積もる漂白された小さな欠片は清めも汚濁も せず、物悲しい冷たさだけを滲ませて。 黒衣の神官、ゼロスは感情の籠もらぬ瞳で一瞥すると、意味が 判らないとばかりに肩を竦めた。 つづく |
13736 | (ガウリナ) それが人の人たる故に 1 | 太一 | 2003/3/25 22:30:06 |
記事番号13735へのコメント 1 「生まれては落ちてはいけなかった命なの」 妻であるリナの姉、ルナは苦渋を眉根に潜ませてガウリイに告げた。 感情を押し殺し、ただ事実だけを伝えようとするその声音には一切の躊躇 や焦燥は感じられない。暗澹なまでに冷静だった。 「今ならば、まだ悲しみに耐える事も出来るわ。どれだけ辛くてもあの子の 事は忘れなさい。二人でいれば、傷ついた心も時間が癒してくれる」 ガウリイは穏やかな顔をして告げられる要求に対し、横へと首をふった。 「ルナさん、あなたは勘違いをしてる。あの子の命を値踏みする権利も無け れば、オレ達が諦める理由も見つからない」 瞼を伏せ微笑みを絶やさないその面持ちには、柔らかな印象には不釣合 いの決意が垣間見えた。 「オレは、この子が生まれるまでの間、どれだけ幸せな日々だったか・・・ 言葉では言い表せません。そして今も幸せです」 「ガウリイさん、あなた何も判っていない。その子は、リナのお腹から生まれた 子供は幸せとは最も対極なる存在よ。けして認めてはいけない。 この子の親と認識したら戻れなくなる。だから・・・諦めて。じゃないと」 じゃないと世界が滅びる。 ルナは言いかけた言葉を辛うじて喉の奥へとしまい込んだ。 赤竜の騎士として運命を受けたルナのすべき事。 彼女の存在は生まれてきた二人の子供に対して行なわれる行為はけして 祝福ではない。強い力を持った者には責任がある。 力を正しく行使する責任がある。 それ故に、ルナは己へ強く言い聞かせる。 「ガウリイさん・・・あなたを殺してでも、リナを殺してでも・・・私は私の責任 を果たすわ」 淀み無く透き通った瞳でガウリイを睨み据える。 彼女は判っていたはずなのに。 ガウリイも、そしてリナも説得には応じないだろうと。 だが言わざるを得なかった。 二人を心から祝福した者として。 誰よりも近くで見守ってきた者として。 他の誰でも無い。血を分けた妹と、妹を愛してくれた男に対し、説得できる のは自分しかいないのだと。 判ってはいる。 判ってはいるのだが。 割り切れぬ心の揺らぎにルナは焦りを覚えていた。 「殺させない」 きっぱりと。 空気を切り裂く様に。それは言い放たれた。 出産後、本来なら歩けるはずもない難産を強いられた体でリナはルナと ガウリイの元へ歩み寄り、そして夫の隣へと腰を下ろす。 「冗談じゃないわ。あたしがお腹を痛めて生んだ子なのよ」 「でも、その子は・・・」 ルナが焦燥仕切った様に視線を隣の部屋へと移す。 その光景は異様としか表現しようがなかった。 「もはや、人では無い」 産声をあげたその時から。 護符で四肢を包まれ。 母親の腕に抱かれる事もなく。 何人もの高位なる魔道士に囲まれて。 強力な結界を張り巡らされた部屋の中。 その中央で赤子が生を強調する様に声を上げて泣いていた。 一見、ごく普通の赤子。生まれるまでは本当に普通の人間らしい姿で 母体に守られていた。 それが生まれ落ちたと同時に起こった異変。 助産婦の腕に抱かれた赤子の額に第三の赤い瞳が現れる。 瞬時に空気が淀み、咽返る様な瘴気をまき散らした。 生を高らかに主張する泣き声を上げる赤子の形が、酷く質の悪い運命の 悪戯の様にも思えた。 肺すらも腐らせる濃密な瘴気を放つ子が、人間の訳などない。 ルナも リナも ガウリイさえも その瘴気の正体に覚えが合った。 シャブラニクドュウ。 紅い目をした七つの欠片の一つ。 世界に混沌をもたらす魔族の事を。 「あたしの子供なのに随分と過保護なのね」 リナは意味が判らないのかと思われる程に平静だった。 違う。判っているはずなのに、あえてその現実を受け入れた者だけが出来る 達観の域。 リナはもう戻れない。新たなる道を選択し歩き始めていた。 数少ない選択の中で、最も恐れていた答えを選んでいる。 迷いも見せず。この世を全てを敵に回したとしても振り返らず リナは突き進むであろうとガウリイは確信していた。 ルナがルナであるが故に。 それはさも当たり前の如く。 世界を災厄から未然に防ごうと 生まれたばかりの禍に刃を向ける。 リナもリナであるが故に。 それはさも当たり前の如く。 世界をも天秤に掛けた相手との繋がりによって出来た命を どんな事をしてでも守ろうとする。 ガウリイは静かに嘆息した。 リナの意志は誰よりも堅牢だ。 それならば、共に覚悟を決めるのはた易い事で。 憂いがない訳ではない。 躊躇がない訳ではない。 だがリナはけして簡単に全てを投げ出さないだろう。 どれだけ可能性が低くても彼女ならばチャンスをみつけ運命すらも変える力 があるのだから。出会った頃と自分の役目はなんら変わらない。 ガウリイがガウリイであるが故に。 それはさも当たり前の如く。 歩き続けて疲れたならば、彼女が体を癒す時、 背中を預ける大木となるべく。 強く、ひたすらに強く。 ガウリイはリナを信じる。 リナは護符だらけの結界へと足を踏み入れて、生まれたばかりの子供の元へ とそっと近づく。子供は母親が判るのだろうか。 先程まで泣き叫んでいたのを泣き止み、小さな手をリナに向けて、抱擁を 強請っていた。 「ごめんね、一人ぼっちにさせて」 胸に抱き寄せて、彼女は満足げに微笑んでいた。 その光景は誰にも侵される事の無い聖域の様に清らかで。 密度濃い、まがまがしい瘴気がたゆたう部屋の中では唯一清浄な空間の 様にも思えた。 「リナ・・・これでいいんだよな」 ガウリイは問い正す。 答えは判っているはずなのに。 「ええ、この子は・・・誰にも殺させないわ」 リナの言葉には「決意」それだけが明確な意志となり 「世界を全て敵に回してでも?」 ルナは諦めたくないとばかりに、リナへ説得の声を上げる。 「あたしは世界よりも、一人の男を選んだ女だから」 だから、全て降りかかる災厄になっても今更恐くない。 どこか悲しくーーー されど過去を追懐する様にリナは微笑んでいた。 あれからーーー 「パパ!!」 玄関に着くなり、元気いっぱいに助走をつけて依ってくる小さな我が子を受 けとめる様にしてガウリイは抱き寄せた。 「もう、レナはパパが大好きなんだから」 一緒に迎えに来たリナは嬉しそうに頬を綻ばす。 リナの肩を抱き、家の中へと入れば美味しい食べ物の匂いと、馴染む部屋 の色に彼は安堵すると同時に不安をも掻き立てられて。 あまりに不安定な幸せの形。幸せであればある程に。 手放す事など考えられない。だが愛する妻と娘の姿は如実に幸福と焦燥 を具現化させる。 少し、痩せた。 線が細くなった妻であるリナの姿を見てガウリイも薄く微笑む。 自分の不安を知られたくないとばかりに。 じゃれつくレナの額にはリナが以前、付けていた魔力増幅のヘアバンドが 掛けられている。その下には今だ第三の眼が脅威として眠っているが。 ヘアバンドの魔道具構成を改造して、現在は封印の役目を果たしている。 親であるリナだけが魔法力を注ぎ込む事により、第三の眼が開眼するのを 防げると言う代物で。 巨額の研究費とセイルーンの魔道施設を借り、半年掛かりでリナが仕上げ たレナを人間の形に納める為の封印。 だが、封印には耐えずリナの膨大な魔法力が必要とされる。 命を抉り取る様にして摩耗させながら、自分達の娘レナは ーーー人間として、四年。 生の形を保ち続けていた。 だが、その摩耗はいずれ破綻するとルナは忠告している。 注ぐだけの維持。 削られるだけの行為。 けしてそこには永遠の安泰などは無く。 全てが削られ、残ったモノは果たして望んでいる形なのか? リナがもし、削られ擦り切れた時・・・。 ルナはガウリイに一つの約束を強要する。 「破滅の運命を断ち切る刃が必要なの。手遅れとなる前に」 言い淀むルナにガウリイは想念を哀調な声音に乗せて自分のすべき、 望まれる役目を口にした。 「もしも、この子が完全に魔族に落ちるのであれば、せめてオレの手で 人間として、生を終わらせてやれと言うのですか?」 「これはあなたが受け入れるべき責任よ。望みがあるのなら、それが どれだけ他に犠牲を強いられるのか自覚しているならば、せめて・・・ あなたの手で、レナと名付けられた子が禍へとなる前に断ち切りなさい」 リナの夫であり、子供の親であるガウリイ。 だからこそ、妻であるリナの意志を尊重して世界の破滅すら招き兼ね ない現実と、不安定な明日を望んだ事への重さを自覚すると共に。 とても残酷な強要だとはルナも自覚していた。 本来なら、自分がすべき役割を彼に委ねようとしている。 子供を受け入れた責任を真っ当しろと言う名目の元。 愛されて側にいる事が許された者、故に。 ガウリイは、ゆっくりと瞼を伏せて上を向いた。 伏せられた双眸に見えた愛する者の鮮明な残像と。 自分が出会ってきた仲間達の儚き残像と。 淡い色に彩られたリナとの旅は決して楽な事ではなかったが、思い出そうと すると、皆で楽しく食事を取っている場面や、笑いながら道を歩いている 場面。ごく平坦な日常に描かれた幸福の切り取りばかりだった。 幸せな憧憬はどこか切なくて。 それらが溶け合う様に混ざり合うと、瞼に熱い痛みを覚えさせた。 一筋。一筋だけ頬に伝う雫。 選択はこれで正しかったのか。 自分達のエゴにより、世界をも滅ぼしかねない選択肢を選んだ。 だが、生まれた子供を抱き寄せて微笑むリナの顔が脳裏から離れられない。 満ち足りた笑顔にはどれだけの覚悟が納められているのだろうか? 全てを承知した上でリナはこの選択肢を選んだ。 ・・・ガウリイは、リナに従ってばかりで実際は何も選んでいない。 だからこそ、彼は彼自身の意志により自らの役目を定義つける。 「オレ達の子供ですから、愛し合ってリナが腹を痛めて産んだ命ですから」 流した雫が彼の決意を強固な物とさせた。 眼を開き、ルナに対して真っ直ぐな青い瞳を向ける。 厳重なる覚悟を携えて。 自らが刃となる事へ迷いを断ち切るかの様に。 「・・・必ず、人間としての生を真っ当させます。魔族にはさせません」 刃を剣の鞘から出し、輝く鋭い光にガウリイは誓った。 背負う罪と罰の重さは果てしなく。 忠告する事でしか妹を守れないルナ。 命を摩耗してまで我が子を守ろうとするリナ。 奪う罪を背負う事でしか愛する術を知らないガウリイ。 そして、自分の正体も運命すらも判らず翻弄されるレナ。 ゆっくり ゆっくりと 砂山が風に削られて朽ちる様に 破滅の時は静かに近づいていた。 |
13737 | (ガウリナ) それが人の人たる故に 2 | 太一 | 2003/3/25 22:34:05 |
記事番号13736へのコメント 3 リナが風邪を引いた。 レナを産んで以来産後の肥立ちが悪く、しばしば体調を崩す事が多くなった。 レナが育つのと比例して少しずつ、少しずつリナが衰弱していく。 その姿をガウリイはずっと見守っていた。 見守る事が、今の自分に出来る唯一の役目と考えて。 たった四年。 それだけで、ガウリイは我が子を愛するに十分過ぎる時間だった。 リナそっくりの栗色をした長い髪と愛くるしい大きな赤い瞳。 磁器の様に白い肌。リナの因子を多く受け継いでいながらも、顔はガウリイと そっくりで。父親に似たら女の子は綺麗になると言われた典型的な容姿を持ち 合わせている。 二人はレナに注げるだけの愛情を注いだ。 そのレナが・・・今、少しずつ変わろうとしている。 ○○○○○○ ガウリイはリナに薬草でも採取して飲ませようと森へ出かけた。 野道の割りには平坦で、小さな子供達の遊び場としても活用されている木々 は眩しい程に新緑を輝かせ、生の息吹に溢れている。 少し奥まった所に木の生えてない広場的な場所が会った。 そこで、見覚えのある小さな背中が震えているのに気がつく。 「レナ、何してんだ?」 ビクリとレナの体が大きく震えて、ガウリイの方に顔を向ける。 その顔にはいつもの朗らかさが消え、ぽろぽろと涙で頬を濡らしていた。 「パパァ・・・」 親であるガウリイの顔を見て、我慢していた欝憤が弾けたのか、レナは顔を 歪めて声を出し、口を大きく開けて泣きはじめた。 尋常では無いと、我を忘れて駆け寄るガウリイ。 へたり込んで泣くレナを肩にうずくまらせる形で抱き寄せて、背中をぽんぽんと 軽く叩いてやる。そうするとレナは嗚咽を落ち着かせ、ガウリイに頬を擦り寄 せて甘えてくる。 要約落ち着きを見せ始めた頃、安心したガウリイはレナに優しく問いかけた。 「どうした、怪我でもしたのか?誰かに苛められたか?」 ガウリイの問いにレナは大きく首を横に降り、手に持っていた枯れた花を父親 に見せる。一瞬、訳が判らぬと顔を顰めるガウリイ。 レナは地面へと降ろしてくれと頼み、側に咲いていた花を千切ろうとした。 その時・・・精気に溢れていた花がレナの手が近づくだけで水分を全て抜かれ た様にして枯れてしまったのだった。 「パパ・・・あのね、レナね、ママにお花あげたかったの。元気になって欲しいの。 なのにお花枯れちゃうの」 訳が判らないと枯れた花を差し出すレナ。 「レナ?」 あどけない大きな赤い瞳でガウリイを見つめ、レナは首を傾げた。 「ねぇ、どうして??」 「・・・」 ガウリイは声を出す事すらも忘れて絶句した。 ごめんね、ごめんねと泣きじゃくり、何度も花に謝るその姿に彼は、抑え切れ ない娘への悲哀と焦燥の思いを瞳に宿した。 レナの手首を掴んで、眉根を寄せる。 感じた瘴気の密度に吐き気を覚えた。 「もう、こんなに近くまできているのか」 限界がきている。 リナの魔法力が、レナの人間として形を留めるのに。 特に、今はリナが体調を崩し、更に魔法力が弱まっていた。 むくりと顔を覗かせるレナ本来の姿に本能が覚える恐怖。 愛くるしい自分の娘は、やはり人間ではない。 だが、質問にも答えてやれず肯定すらも出来ずガウリイは、溢れて止まらない レナの涙を拭ってる事しか出来なかった。 「レナ、お花だけがお見舞いじゃないよ。ママにお手紙を書こう」 そう、優しく頭を撫でる父親にレナは鼻を啜って上を見上げる。 「・・・お手紙って何?」 「パパが教えてあげるよ。ママ、絶対元気になるぞ」 小さな頭に手を置いて、ガウリイは宥めるようにレナの髪の毛を撫でてやると 気持ち良さそうにレナが目を細めて笑みを浮かべた。 「うん、お手紙いっぱい書く。ママ元気になってくれるかな?」 「ああ、必ずな」 微笑むガウリイにじゃれ付いてレナは満面の笑顔を向けた。 「パパ・・・あのね、レナね、パパ大好き!!」 「オレもだよ、レナ」 親を愛して、涙も流せる優しさを持ち、こんなにも望まれた命。 誰よりも心は人間であるが・・・体がそれを許さない。 自分が枯らしてしまった花のお墓を作り、レナは申し訳なさそうに手を合わせる。 ガウリイはその姿を辛抱強く見守っていた。 そして。 「パパにもお手紙書く」 「オレにも書いてくれるのか?」 「うん。だから元気になってね」 「オレは元気だよ」 力なくガウリイは笑う。 我が子の不憫さに憂いでいたのを気づかれたと。 その悲哀を無理矢理に上から覆い隠す様して笑った。 だが、レナは小さいながらも感の鋭い子だった。 「じゃ、大好きだから書くね」 だが、人間としての生を断ち切る存在がこんなにも近くにいる事をレナは 知らない。 ○○○○○○ 紙いっぱいにリナの笑顔が描かれていた。 ママへ はやくげんきになってね。 レナ それだけの簡素な手紙。 初めて書く事を覚えた言葉は純粋なる愛情に溢れていた。 様々な愛情を集約した様なリナの笑顔にガウリイも穏やかな安堵を瞳に 宿す。 「そっか・・・お手紙書いてくれたんだ」 リナは心から嬉しそうにその手紙を見入り、唇を綻ばしていた。 自分の為に書いてくれた手紙。 元気になって欲しいと。 それだけでリナは幸せだった。 元気になれそうだった。 だが肝心の娘は姿が見えない。 お礼を言いたいのに。 抱き締めて髪の毛を撫でて。 「ありがとう」と心から。 「ガウリイ・・・レナは?」 その問いに夫であるガウリイの顔が少しだけ曇ったのをリナは見逃さなかった。 「済まない、ちょっと我慢してくれ。今、レナに会うと体調が悪化するかも しれないから」 目線を反らし、一人で抱え込もうと無理をしているのがあからさまに見える ガウリイにリナは思わず嘆息する。 「くらげ!良いから話しなさい」 「・・・すまん」 隠せなかった自分の浅さに謝罪したのか。 それとも。体調の悪いリナに負担を強いる事に対して謝罪したのか。 彼にとって自分の考えた結論が思慮に欠けていたのやも知れぬと自覚した時、 知らずに言葉が唇から零れていた。 つづく |
13743 | Re:(ガウリナ) それが人の人たる故に 2 | Eしゃん E-mail | 2003/3/26 16:58:58 |
記事番号13737へのコメント はじめまして!Eしゃんです! いや〜〜、いいですね〜〜、今までのスレイヤーズに無い どシリアスですね〜〜〜最近は、ギャグオンリーの作品ばっかり読んでいたんで(悲)そんなわけで!! いろいろと楽しませてもらっています(> <) まぁ、いろいろと話すべき(?)事はあるんで―― ごげしゃああぁぁっ!!! R:ったく……本編さぼってぐだぐだとコメント書いて理由作ろうとしてんじゃないわよ。 (頭をフリフリと振ってなんとか身を起こす『E』) E:きっ……貴……様……… …………………………… …………もとい………… 何故、貴女は土鍋を片手にこの場に居られるのでしょうか? R:あ・ん・た・が! 本編ほったらかしで! こ〜〜〜んな、事! し〜て〜る〜か〜ら〜でしょうが! (『E』は、手をポンッとひとつ打ち) E:あ〜〜〜〜っあ〜あ〜あ〜あ〜そういう事でしたか。すっかり忘れてました、あっはっはっはっ! R:いっぺん死にさらせ!ヲノレは! E:まっ……まて〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!! 以下 描写の自主制限により千行削除。 R:それでは さよ〜なら〜 ――――――――――――――――――――― 太一様へ これからのご活躍、楽しみにしています。(一礼) おわれば? |
13860 | Re:(ガウリナ) それが人の人たる故に 2 | 太一 | 2003/4/3 17:58:58 |
記事番号13743へのコメント レスが遅くなって済みません(><) はじめまして、太一と申します。 この度は、私の文を読んで頂きまして光栄の極みで ございます。 いつもはアホくせー作品ばっか書いていたのですが 久しぶりにスレを書いたらなんか暗くなってしまって。 また投稿しますので、楽しんで頂けたら幸いです |
13880 | Re:(ガウリナ) それが人の人たる故に 2 | Eしゃん E-mail | 2003/4/4 15:54:41 |
記事番号13860へのコメント こんにちは!Eしゃんです! >はじめまして、太一と申します。 いえいえ、こちらこそはじめまして! >この度は、私の文を読んで頂きまして光栄の極みで >ございます。 そうですか? >いつもはアホくせー作品ばっか書いていたのですが >久しぶりにスレを書いたらなんか暗くなってしまって。 >また投稿しますので、楽しんで頂けたら幸いです 楽しみにしておきます! |
13837 | Re:(ガウリナ) それが人の人たる故に プロローグ | 中田珂南 URL | 2003/4/1 20:25:02 |
記事番号13735へのコメント こちらでは初めまして。お久し振りでございます太一様(笑) 貴女の新作が拝読出来て、望外の喜びというか感激に打ち震えておりまする。 こちらへの投稿が初めてだとお聞きして、何だか意外な気がした、と言ったら笑われるでしょうか? (↑そういう個人的な話はメールで書きなさい) 序盤から意味深かつ悲しい展開ですが、太一様のこと、ここに至るまでにどんな経緯を辿ってきたのか、知るのが楽しみ。 (悲しいのは悲しいんですけどね、勿論) 愛しいからこそ、悲しさもより深くなる。表し方こそ違うけれど、皆が悲しい。 リナとガウリイ、ルナさん、他の登場人物たち、そしてレナ本人。 今後どんな物語が描き出されていくのか、心の底から期待しておりますです。 書き手が太一様なせいか、まるで個メールのような気安い文章になりましたが(←蹴)今回はこの辺で。 忙しいだろうし、書きたい病の発作(笑)も大変かと思うですが、でも無理はしないでね。では。 |
13861 | Re:(ガウリナ) それが人の人たる故に プロローグ | 太一 | 2003/4/3 18:05:14 |
記事番号13837へのコメント こちらこそお久しぶりでございます。中田様(ぷっ) はぃ、実はここで投稿するのは初めてなので緊張 してります。レベルが高くて尻ごみしまくですわ。 久しぶりの新作だと言うのに、救い様がねえ程重い展開 ですが、わたしめ元々こーゆーのが好きな人なので 書いてて楽しいです。 本当に、しよっぱなから悲しさ炸裂ですね。やれやれ。 今後はまた時間が取れたら一気に書こうかなーと思って いるので、また宜しければ読んでやってくださいましね。 >忙しいだろうし、書きたい病の発作(笑)も大変かと思うで すが、でも無理はしないでね。では。 これが・・・一番厄介です。とほほ。中田様と久しぶりに交流? 出来て嬉しかったですよ。浮上したかいがあったって・・・ まるで個メールの様な馴れ馴れしいレスで申し訳ありません。 |