◆−初投稿:Passing Season−織原 瑞穂(3/10-02:13)No.1381
 ┣Passing Season(序)−織原 瑞穂(3/10-02:16)No.1382
 ┣Passing Season(1)−織原 瑞穂(3/10-02:19)No.1383
 ┃┣すてきですっ!−春眠(3/10-23:40)No.1392
 ┃┃┗春眠さん、ありがとうございます♪−織原 瑞穂(3/11-02:05)No.1393
 ┃┣つ・・・続き、読ませて下さい!−穂波(3/12-00:44)No.1399
 ┃┃┗穂波さん、ありがとうです♪(笑)−織原 瑞穂(3/14-01:53)No.1406
 ┃┣Re:Passing Season(1)−ルイ(3/12-18:03)No.1403
 ┃┃┗ルイさん、ありがとうございます♪−織原 瑞穂(3/14-02:01)No.1407
 ┃┗すばらしい−シェラ(3/13-13:53)No.1404
 ┃ ┗シェラさん、ありがとうございます♪−織原 瑞穂(3/14-02:07)No.1408
 ┗Passing Season(2)−織原 瑞穂(3/14-02:12)No.1409
  ┣くううう〜ッ−春眠(3/14-04:06)No.1410
  ┣Re:Passing Season(2)−むつみ(3/14-06:29)No.1411
  ┗続きだ続き(^_^)−穂波(3/14-23:38)No.1413


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1381初投稿:Passing Season織原 瑞穂 E-mail 3/10-02:13


 こんにちは、はじめまして。
 初投稿させて頂きます、織原瑞穂と申します。
 どうぞ宜しくお願いします(ぺこっ)。

 えっと、私の拙い駄文に付き合って下さる心優しい方に、いくつかお断りしておかなくてはいけないことがあります。
 今回投稿させて頂きます「Passing Season」。
 私のオリジナルではありません。
 こちらに投稿されてる穂波さんのゼルアメ小説「冬物語3」、その続きとして、私が勝手に考えさせて頂いたものです。
 ですから、こちらを読まれる前にぜひ「冬物語3」をご一読頂けると嬉しいです。(というか、読んで頂けないと意味が通じないと思います(汗))
・ 『著者別作品リスト』から『穂波』さんの『冬物語』を探す。
・ 『読みまくれ(1)!!!』の『過去の記事』から『投稿番号5804』の『冬物語』を探す。
 のどちらかをして頂いてから、ツリーの最後の方の小説『冬物語3』をお読み下さい。
 とっても切ない良い小説です。(ここでファンコールをしてしまっていいのか判りませんが(笑))


 で、この「Passing Season」、基本的にシリアス、長文で、ゼルアメです。(ゼル→アメということで、間違いありません(^^;))
 全てUPするのに多少時間がかかると思いますが、気長にお付き合い頂けると嬉しいです(ぺこっ)。

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1382Passing Season(序)織原 瑞穂 3/10-02:16
記事番号1381へのコメント

Passing Season(序)


 蒼く澄んだ夜空を見上げる男がいた。
 ごく普通の街、ごく普通の往来。どんな街でもほとんど変わり映えのない酒場の前。薄汚れた白い貫頭衣にマントを身に付けているその男は、喧騒にざわめく屋内から出てきたばかりだった。
 すでに深夜にさしかかっている時間に人通りは無い。
 しかし、そんな時間とはいえ屋外に足を運ぶ客の姿は、それなりにある光景の一つだった。
 酔い冷ましのため。帰るべき暖かい場所に戻るため。
 肩を震わせ、襟元を合わせながら、吐く息の白さに笑う。星明かりの明るさに、月明かりの柔らかさに、心を和ませる。
 そんな光景が簡単に予想出来る、そんな場所だった。
 ただ、その男がいた、その時は何処か違った。
 男が特に変わったことをしているわけでもない。
 蒼く照らす月を見上げているだけ。月光の向こう側を見ていただけ。それぐらいなら、どんな人でもやっていることだけど。
 男の風貌は普通とは違った。
 月明かりを不自然なまでに跳ね返す金属質の銀髪。硬質な触感しか与えないと思える青黒い肌。そして、元は白かったはずの衣服には、明らかに血痕だと判る染みが点々と残っている。
 かといって、その男が剣呑な雰囲気を醸し出している訳ではない。
 むしろ――泣き出したくなる程の切なさを見て取ることが出来た。
 今にも泣き出しそうな、悪いことをして母親に見捨てられた子供のような、そんな眼差しで月を見つめている。
 その瞳が。
 その想いが。
 その場所を寂しい場所へと変えていたのだった。


『……セイルーンのお姫さんが今度ティルズの王子さんと結婚するんだってさ』
 男がその話を聞いたのは、彼女が彼の元を去ってから一月も経たないうちのことだった。
 自分の影の長さが増してくる暑さと共に短くなっていくのが判る。そんな狭間の季節。
 基本的に人目を避けた生活をしていた彼がその噂を耳に出来たのは単なる偶然で。道ですれ違った旅人同士が話している言葉を聞きとめることが出来たのは天の采配か、それとも魔の悪戯か。
 とにかく、男にその情報は非常に早く届いた。
 ……でも、彼はどうもしなかった。
 ただ、結果的に無為に終わった数々の行動――元の身体に戻る方法を探すこと、それだけしかしなかった。
 彼は彼女自身だけを選ぶことなど出来なかったから。
 彼は彼女が本当に望んでいるものを知らなかったから。
 彼は――呪われた身体の彼は、彼女の希望に溢れた未来を見守ることしか出来ないと考えていたから。
 だから……その噂を聞いた瞬間に胸に走った激痛を彼は意図的に無視することにしていたのだった。


 男がその選択を後悔したのは、一つの季節が過ぎ去った後のことになる。


 そこは静かな場所だった。
 小高い丘の上。夜風が墓標の前に置かれた花を揺らしていた。
 晩秋の夜。柔らかい月光が辺りを照らしていた。
 本格的に寒くなるには、ほんの少しだけ早い季節だけど。風は凍える程、冷たい。
 白い墓石が月明かりに照らされて青白く目に写った。
 墓標に刻まれた名前は『アメリア=エルバ=ライ=ティルズ』
 ……ティルズ王国の皇太子妃としての名前だった。
 結局ティルズ王国は彼女をあくまで自国の妃として扱った。
 彼女の死を悼む肉親や国民に彼女を返すつもりが無いのは明確だった。盛大な葬儀を上げ、莫大な慰問金と多大な同情を集めたこの国はすでに次の新しい皇太子妃を探している最中らしい。
 ……つまり、彼に取って大切な――かけがいの無い存在だった彼女は、この国に取ってただの外交の道具でしか無かったのだ。
 その認識が彼の頭に染み渡ると同時に……笑みが我知らず浮かんだ。


 ……完膚無きまでに破壊しつくされた墓標の前で彼は実に1年ぶりに声を上げて笑った。
 笑うしかなかった。
 泣くことも出来なかった。
 泣くことも出来ないほどの悲しみがあるのを彼は初めて知った。……もう二度と笑うことも泣くことも無いだろうと思いつつ、彼は笑い続けた。


『ゼル! やり過ぎよ!』
 それからしばらくして、かつての仲間と再会をした。
 彼らは必死になって彼を探していたようだ。
 刻々と寒さを増す風の中に血の匂いが漂う。夕暮れ時の夕日が辺りを紅く染めていた。
『お前は、早く逃げろ』
 真剣な表情で言ったのは金髪の剣士だった。
 その言葉の先は地に伏せた賞金稼ぎ。
 男の容赦のカケラも無い攻撃に、すでに恐怖以外の何も感じていなかったようだ。地に倒れた段階で、理不尽な死が訪れるのをただ脅えた目で待っていた。
 そんな彼にとどめを刺そうとしていた男の剣を、剣士が己の剣で止めながらのセリフだった。
『……邪魔をするな、ガウリイ』
 その言葉に答えたのは栗色の髪の少女。夕日を受け、その髪は血の流れのように紅く見えた。
『いくらなんでもやり過ぎよ。あなたの腕だったら……これだけの力量の差があるんだから見逃すのが道理ってもんでしょ』
 そう言い放ちながら少女は男に対してスキを見せようとはしなかった。
 説得に失敗したら自分達が敵に回らなくてはいけないことを少女は知っていたから。
 それはかつて命を共にした仲間との懐かしい再会風景、という響きからは程遠い光景だった。


『……ふん』
 おれたのは男の方だった。
 己の物ではない血に濡れた剣を引いて、かつての仲間にあっさりと背を向ける。
 どうでもよかった。
 相手を殺すことも。
 殺さないことも。
 戦いが終わった段階で、血の沸き立つような、冷えるような感覚は消えるのだから。
 生きていることを自覚する短い時間の後にはただ空しさだけが待っていた。
 だから。
 どうでもよかった。


『待ってよ! ゼルっ!』
 慌ただしい足音が後ろから追いかけてくるのを無視する。
 すでに日は暮れていた。
 虫の声が道ばたの草むらから聞こえる。
『…………』
 追いかけてくる人間が煩かった。
 用件を尋ねることは簡単だ。一言、口を開けばいいだけのこと。
 でも、面倒だった。
 お節介を焼きに来たのだろうと簡単に予想がついた。
『ゼルっ! ちっとは人の話を聞きなさいって!』
 聞かないつもりで早足で歩く。
 と、攻撃呪文の断片が男の耳に届いた。
『……ちょ、ちょっと待て!』
 彼が慌てて振り返るのを見て、少女はにっこりとしながら竜破斬(ドラグ・スレイブ)の詠唱を止めた。


『……で、なんの用だ?』
 とりあえず食べろと言って、大量の食事を目の前に積み上げた少女に聞く。
『そんなの決まってるでしょ。あんたに会いに来たのよ』
 小さな村の小さな宿屋。
 最初は敵意を含んだ目で迎えられた一同だったが、少女が床に大量の金貨を投げ打って暖かい食事と安全な宿を得た。
 もっとも、こんな金に物を言わせるようなことは、男がいなければ必要も無いことだったが。
 そう思うと、男は無性に可笑しくなった。どうでもいい自分を気にかける奴がいる。それはひどく滑稽な行動のように思えた。
『……会ってどうするって言うんだ?』
 久々に人と話す感覚に男は皮肉に笑う。くすぐったく、鬱陶しい。
『ゼル……自分の今の状況、判ってる?』
 男にとって人の手のこもった食事は本当に久しぶりで。
 胃が全くといっていいほど受け付けなかったが。匂いで吐き気すら感じていたが。
 それでも食べろと言わんばかりの少女の目線に仕方なく匙を運んだ。
 それに満足そうに微笑む少女に、男は呆れるしか無かったが。どうして自分にかまうのかが判らない。
『状況? ああ、面倒くさい状況になってるな。お前らがいなければ単純なんだが』
 疲れた表情をして答える男に、少女は顔をしかめる。
『そういうことじゃなくって……』
 少女は大きくため息を付きながら言う。
 髪を掻き上げながら。
『……さっきみたいなことばっかり最近やってるみたいだけど、ちゃんと世間に出て、情報収集とかやってる?』
 その言葉に、怒られてるような雰囲気を感じて男は不機嫌になった。
『…………お前らには関係ない』
 男はつまらなそうに匙を放り投げる。
 目の前の皿の上の様子は、ほとんど変わっていなかったが。少女の促す目線を無視する。
『……用件はそれか?』
 言うだけ言って立ち上がりかける男に、少女は一瞬怒りの表情を見せる。
『逃げないで!』
『逃げてなんかいない。時間を無駄にしたくないだけだ』
 淡々と言葉を返す男。身体はすでに席から離れかけていた。
『待ちなさい! ゼル!』
 少女が本格的に怒りの色をあらわにする。と、ただそばに座っているだけの剣士が少女の腕を引っ張り、諌めるように首を振った。
 その行動に少女は我に返ったらしい。
 苛立った様子を見せながら、落ち着こうとしてるのか、大きく息を吐く。そして気を取り直したように瞳を男に向けた。
『――あたしが悪かったわ。お願いだから席について。これから話すことは、あんたにとって有益な情報のはずよ』
 その言葉に男は振り向き、訝しげな顔を向ける。
『――お願いだから座って』
 少女にとって、このセリフは大幅な譲歩だった。それを感じとって、男は席に戻る。少女の顔が安堵で緩みかけたが、再度引き締め直して、言葉を発する。
『ついこの間、2週間も経ってないけど、ティルズがあんたに賞金を懸けたわ』
『……ふーん。暇なことをするもんだな』
 男は純粋にそう思った。
 墓を壊しただけの男に金を掛けるなんて、暇なことをしているとしか思えない。
 その男の様子に少女はこめかみを引きつらせながら言葉を続ける。
『――生死不問で――』
 少女が上げた金額は、平凡な一家が20年は遊んで暮らせるもので。ただの墓荒らしに対しては超破格と言ってもいい金額で。どこぞの領主を殺して逃げたらこれだけの金額がつくかもしれない。
 ただ、男を殺すには全くと言っていいほど足りないものだった。
『――で、質問よ。ゼル、あんた、ティルズに何をしたの? してるの?』
 真剣すぎる表情で問い掛ける少女を男はつまらなさそうに見る。心当たりと言えばあれぐらいしか思い出せなかった。
『……くだらんものを一つ、壊しただけだ』
『くだらないもの?』
 その言葉に男は、そっぽを向きながら答えた。
 胸に痛みが、小さく走った。
『……あのバカの……くだらん墓をな……』
『……バカ……?』
 一瞬、戸惑った少女だったが、思い付くものがあったらしい。
 想い出だけの存在となってしまった少女の記憶を。
『たったそれだけのことで、一つの国がこんなことをするはずないでしょ?!』
 突然、上げた大声には……泣き出しそうな響きが含まれていた。
 男が顔を上げると。
 少女が顔を歪めて――怒りと涙を堪えているのが見えた。
『……リナ』
 剣士が少女に声をかける。
 その口調はあくまでも少女を気遣うもので。
『…………』
 永遠に失われた仲間の思い出が引き金になったのか。そこには、今までの冷静さも無く、感情的になった女の子が一人いた。
『……あんたが……あんたが……壊したっ……てことは……理由は……判んない訳じゃ無い……けど』
 震えた声のまま、顔を背ける少女。顔は上げたまま。――男の前で頭を下に向けることは出来ないから。
『…………』
 理不尽に人生を終わらされた仲間への想いは同じに見えて。
 少女は泣いたのだろうか。泣けたのだろうか。男はふと疑問に思ったが。
 聞く気にはなれなかった。
 少女と自分は全くといっていいほど違うから。
『……生憎と、それ以外の心当たりが無いんでな』
『…………』
 振り向いて疑わしそうに見る少女の瞳が男には鬱陶しかった。
『……本当か?』
 口を開いたのは、それまで男に無言を保っていた剣士だった。
 それは、いつもの呆けた口調では無く。真剣そのもので。でも、どこか非難されてるように思えた。
『……お前らは……何をしたと思ってるんだ?』
 剣士の瞳は綺麗な冬の空の色をしていて。それは、どこか、失ってしまった少女の瞳を思い出させて。
 男は嫌悪感を抱いた。
『――考えてみろ。俺があいつのために何が出来るっていうんだ? あいつは魔族の襲撃からガキ一人を守るために死んだんだぞ』
 何故か口が止まらなかった。身体が勝手に立ち上がる。
『――あいつは自分の身分も考えんで、取るに足らん人間をかばって、たかが……戦いに混乱した人間ごときに背中から切られるなんて間抜けをしたんだ。俺はいつも言っていた。あいつに! 自分の身を第一に守れって!!』
 堰を切ったように喋る男に、少女も剣士も息を呑む。
『……はっ! 自分の正義のために死ねたんだ。あいつは本望だろうさ! じゃあ、俺はどうすればいい?! あいつを切った奴を殺せばいいのか? もうとっくに処刑されてるさ。じゃあ、あいつがかばったガキを殺せばいいのか? 魔族なんかに襲われる王宮をつぶせばいいのか? 魔族を絶滅させればいいのか?!』
 沈黙がその場を占めた。
 男は荒い息を吐きながら、鈍く光る目を二人に向けた。
『……俺に出来たことなんて、なに一つないんだ』
 あいつのために。自分が出来ることは。
 過去も。未来も。
『…………ゼル』
 しばらくして。
 疲れきったように座る男に、少女は声を向けた。
 その声には、寂しげな調子が宿っていた。
『――あたしは、あんたがあの子の仇を討つために何かをしたのかと――してるのかと思ってた……』
 それは独り言だった。人に聞かせるためのものでは無く。己自身を納得させるためだけのもの。
『……買い被りすぎだ……』
 認められない思いに揺れる気持ちは少女も同じで。
 本当に、あんなことで死ぬような子ではないと思ってたから。
 別の敵が欲しかった。自分が認められる、本当の仇が。
 でも、そんな者はいない。
『本当に、ティルズに狙われる心当たりは……それだけなの?』
 小さく尋ねる言葉に肯く。
『ああ』
『……判ったわ』
 浅く息を吐いてから、少女は気を取り直したように笑う。
『まあ、今晩はあたしのおごりだからゆっくり食べて、ゆっくり休んで。で、明日から一緒に旅をさせてもらうから』
『……は?』
 にっこり笑っていう少女に男は一瞬唖然とするが、すぐに苦々しく吐き捨てる。
『……お断りだ。俺は勝手にやらしてもらう。ついてくるな』
『あたし達がついていくって言ってるのよ。あんたの意見は聞いてないわ。とりあえず宣言だけはしておいてあげてるんだから、感謝しなさい』
 おうへいに笑って言う少女を睨めつける男。
『……俺の行動を監視する気か?』
『――まあ、監視っていうより、制止だな』
 声を上げたのは剣士だった。剣士はゆっくりと静かに言う。
『……お前さんは、ここしばらく、人を殺しすぎだ。まあ、仕方なく殺してしまった、というのだったらオレ達も止めんが、むやみやたらにすることじゃない』
 少女が静かに――賛同するように頷く。
『そんなことをする奴は、いつか無意味に殺される。少なくてもオレは、お前さんにそんな終わりかたをして欲しくないからな』
『……人の心配か? 旦那も人がいい』
『……ああ、心配だ。今のお前さんは見ていて不安になる。そばで見ている人間が必要だ』
 その言葉が男の神経に酷くさわった。
 見ていて欲しい、そばで笑っていて欲しい、たった一人の人間はもういない。
『……はっ! そんなことお前らには関係ない! 自分の始末ぐらい自分でつけられる。命だって取れる奴にだったらくれてやるが――』
 引き攣った笑いを見せる。
『――実際取れる奴なんかいない』
 剣士が顔を歪める。
 その瞳を見て、男はふと破滅的な考えを思い付く。普通だったら――かつての自分だったら、考えることはあってもまず言わなかったこと。言えなかったこと。
 胸が背徳的な予感に踊った。
『……そういえば、新しい賞金が俺にはかけられてるんだってな。何だったらお前さん達で俺の首を取ってみるか? 俺はそれでもかまわんぞ』
 瞬間、男の頬が鳴った。
 一瞬なにが起こったのか把握出来なかった男だったが、目の前で怒りに息を切らしている少女と、少女の赤く腫れ上がり始めた手のひらを見て、叩かれたのだということを悟る。
『ばかっ! あんた一体なに考えてるのよっ! あの子がどんな気持ちで、どんな想いであんたの無事を祈っていたのか判って言ってるの?! あんたが安全に旅が出来るようにどれだけ無茶を言ってあんたの手配を解いていってたか……』
 少女の言葉が不自然に切れた。
 完全にしまったという顔をしている少女に、男も少女の失言に気付く。
『……ちょっと待て。それはどういうことだ?』
 少女はしばらく、気まずそうな顔をして黙っていたが、男が苛立ち混じりに再度促すと、仕方無しに口を開いた。
『……あの子はあんたに内緒であんたの昔の手配を解いていたのよ。あの国で――セイルーンでする最後の我が侭だからって、フィルさんにかなりの無茶を言ってね』
 その内容に男の顔が怒りに歪んだ。
 最初、顔をわざと晒して歩いても、ほとんど狙われなかった。世の中に無視されているような気すらしていたは。
『……なんで、あいつはそんなことをしたんだ!』
『……あんたのために何も出来なかったから――守られてばかりで、何もしてあげられなかったから、せめて、自分にしか出来ないやり方であんたを守っていたいって……』
 一瞬、時間が凍り付くような感覚を覚えた。
 手が震えた。剣を抜いて、がむしゃらに何かを壊したくなる衝動にかられる。
『だからっ、あんたがあの子のことをまだ想ってるんだったら、自分を大事にして! あの子の想いを無駄にしないで!』
 違う。
 壊したいのは――。
『……そうか』
 声色を変えて発された言葉に少女は不安そうに顔色を変えた。
『……あいつが自分勝手な奴だってことをすっかり忘れていた』
『ゼル!』
『ちょっと待て! ゼル!』
 その場から離れようとする男を、少女らは慌てて引き止め、追いかけようとしたが男は今度こそ相手にしなかった。
 男の頭の中は、死んでしまった者への……そして自分自身への怒りで一杯だったから。


 それからしばらくして。
 男はティルズの魔族襲撃が本当は内乱であったという噂を聞くことになったが。
 セイルーンもティルズも沈黙を保っていたので。噂の段階で立ち消えになると思えた。
 ……真相を探ろうという気にすらならなかった。
 今更、知って何をどうするというのか。
 そんな虚無的な思いに男は取り付かれていた。


「…………」
 見上げていた月から目線をはずし、男は足を一歩踏み出した。
 いつまでもここにいるつもりは無かった。
 かなり前に完全にまいたつもりだが。少女たちがいつ現れるかもしれなかったし。さっきまで体内に入れていたアルコールは、酔いの代わりに睡眠欲を与えていたから。
 今日はどこで眠ろう。
 顔を隠すこともせずに旅を続けている男を泊めてくれる宿屋は、すでに無くなっていたが。
 それもそうだろう。
 いつ、男を狙いに来る刺客との戦いに巻き込まれるか判らないのだから。
 かといって、高額を払って隠れるように宿に泊まる気にもなれなかった。
 暖かい宿の部屋より、身の凍える地面の方が良かった。生ぬるい人の気配の感じる所より、獣の殺気に身を貫かれる所の方が、はるかに居心地が良かった。
「…………」
 今晩の、野宿をする場所を考えながら歩き出そうとする。――その時、一つの声が聞こえた。
「……おやすみなさーい」
 ――それは、ごくありふれた就寝の挨拶。
 声は酒場の二階、普通なら宿屋として使われている場所の一つの窓から聞こえた。おそらく同室の誰かに言った言葉だろう。それだけなら男は全く気に留めなかったはずだった。
 ――ただ。
 問題は、その声が男の求めて止まない――そして永遠に失われたはずの人物の声だということ。
 男の背中に、雨戸の閉まりかける軋んだ音が聞こえた。
 ……期待するだけ無駄だ。
 ……期待しちゃいけない。
 そう、なんど裏切られたことか。
 街で似たような髪型、似たような声、似たような背格好。それらを見かけるたびに期待して、そして裏切られてきた。
 ――だけど。


 ――振り向いて見上げる。
 つややかな髪は肩が少し隠れる程度。
 月明かりを写してか。
 墨を流したような色に見えるが。
 明るい太陽の下で見れば黒のはず。
 薄い肩の先は。
 良く動きそうな腕。
 瞳も。
 表情も良く見えないけど。
 ……けれど。
 間違いない。
 記憶の中で微笑むだけ存在となった。
 記憶の中で悲しそうな瞳を見せるだけの。
 失われたはずの。
 ――「彼女」だった。

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1383Passing Season(1)織原 瑞穂 3/10-02:19
記事番号1381へのコメント

Passing Season(1)


 ……信じられなかった。
 こんな――まるでおとぎ話のようなことが現実にあるはずが無いと思っていた。
 これこそ、自分が待っていたことだと――待ち望んでいたことだと、そう心が訴えていたが、それでも……。
 信じ切れるものでは絶対に無かった。


「……だ、旦那っ! 待って下さいっ!」
 酒場の主人が必死の形相で止めようとしていた。
 ……それもそうだろう。
 端から見れば、ゼルは今にも刃傷沙汰を起こしそうな勢いで二階に駆け登っていたのだから。
 しかしゼルの心の中ではそんな抑制など全く気に止まらないものとなっていた。
 駄目だ。
 信じてはいけない。
 期待してはいけない。
 裏切られるだけだ。
 そういう心の声と……それに反した、切実なまでの思いが身体を勝手に酒場の二階に向かわせていた。
「……アメリア!」
 見上げた窓はこの部屋のものに間違い無いはずだった。返事を待たずに扉を勢い良く叩く。
「旦那! 待って下さいよっ!」
 鬱陶しく付きまとう酒場の主人に影縛り(シャドウ・スナップ)をかけて足止めをする。生かしておく必要も本当は感じていなかったが、殺す方が面倒だった。
「アメリアっ!」
 扉が開くのがあと一秒でも遅かったら、おそらく戸は蹴破られていただろう。しかし、薄い木製の扉はその運命をたどることは無かった。
 ゆっくり内側から開いた扉の脇で、警戒しながら言葉を発したのは――30代後半の女性。
「……誰だい、あんた?」
 おそらく傭兵か剣士か・・・旅の空の下で生きることを生業としているような女。短かい銀髪、女にしては大柄で、鍛え抜かれた体。パジャマ姿に剣を鞘に入れたまま携え、こちらを睨み付けていた。
 しかし、ゼルにとって問題だったのは、彼女ではなかった。
 すばやく部屋の中を見渡すと、二人部屋の端、窓の脇にやはりパジャマ姿で、困惑した眼差しでこちらを見ている「彼女」がいた。
 髪は、つややかな黒。瞳の色は、さっきまで男が眺めていた、月の浮かぶ夜空と同じ蒼。童顔で大きな瞳はそのままで。なめらかな頬のラインもそのままで。最後に会った時から、少し髪が伸びたみたいだけど。
 ……間違いなく、アメリアだった。
 失われた、二度と出会うことのないはずの。
「…………アメリア…………」
 男は不意に胸に込み上げてくるものを感じる。と、視界が急に移動した。
「……ちょっと、聞いてるのかいっ?!」
 気が付くと、さっきの女が男の襟首を掴み上げていた。
 反応の無い彼に苛立ったのだろう。
 しかし、そんな行動をゼルが大人しくされるがままにしている理由は無かった。
「…………」
 襟首を掴んでいる女の腕を、反対に捻じりあげる。力を込めるとあっさりとゼルの衣服から手は外れたが、ゼルは更に力を込める。女の額に脂汗が浮かんだ。
「……う……」
「…………マリアっ!」
 女の呻きに答えて叫んだのは少女だった。
「……その手を放しなさいっ!」
 ゼルが少女の方を向くと……少女は手の平の上に、おそらく精神系の精霊魔法の魔力光を浮かべてこちらを睨み付けていた。その瞳には敵意しか浮かんでいない。
「……アメリア、どうしたんだ? 俺だ。ゼルガディスだ」
 一瞬唖然としたが、すぐ苦笑に変えて言うゼル。
 少女はそんなゼルに間髪入れずに――苦しそうに叫んだ。
「あなたなんか知りません! いいから早くマリアを放して!」
 ゼルはその言葉に呆然とした。……身体から力が抜ける。手の中から何かが滑り落ちて、木の床にぶつかる重い音がした。
「……アメリア……冗談か?」
 引き攣った笑いを浮かべるゼルに見向きもせず、少女は女に――床に膝をついて腕を押さえているマリアに声をかける。
「マリア、大丈夫?!」
 と、腕を押さえたまま、憎々しげな眼差しでゼルを睨み付けマリアは立ち上がった。
「……この、馬鹿力のヨッパライっ!」
 吐き捨てるように言い、ゼルを殴り付けようとする。
 ゼルはそれを避けようとしたが、ふと考えを変えて大人しくされるがままにされた。
「…………っ!」
 床に倒れるゼルに少女は思わず駆け寄りそうになる。
「……リリア。よしな! こいつを助けることはないよっ!」
 マリアの声に、びくっと動きを止める少女。恐る恐る、困惑しながらマリアを見上げた。
「こいつは今、あたしにワザと殴られたんだ。あんたの反応を見るためにね。そんな奴を本気で助けることはないよ」
 白けきった口調で、女が言う。おそらく男を殴った時に痛めたのだろう、手を振りながらの言葉に、ゼルは何故か笑いの感覚に取り付かれた。
「……ああ、良く判ったな」
 床に転がったまま、無性に笑いたくなった。
頭の回転の早い女は嫌いじゃない。
ゼルのその様子に、女はふと不機嫌そうな顔をした。
「……あんた、今日の所は見逃してやるから、とっとと帰んな。あたしらはヨッパライに付き合って睡眠時間を減らすまねはしたくないからね」
 そういって廊下の方を顎で示す女に、男は鼻で笑ってみせる。
「……こっちはそういう訳には行かないもんでね……アメリア、どういうことなんだ?」
 起き上がりながら少女の方を見る男に、少女は困惑した眼差しを向けるだけだった。
 困惑、混乱、当惑。その瞳の意味が男には判らない。
 ――怒り、喜びなら判るのに。
「……あんたがさっきから『アメリア』って言ってるのは、リリアの、こいつのことかい?」
 女はそう言いつつ、男に挑戦的な瞳を向ける。そして少女を守るように、剣を持ったまま移動する。
「……マリア……」
 少女は困った目をただ女に向けるだけだった。その瞳は、男が見たことの無いほど、弱々しいもので。
 胸の奥が軋んだ。
「……あんたが何を勘違いしてるのか判らんけど、この子はあたしの大事な相棒なんだ。妙ないちゃもん付けないでおくれ」
 その言葉に少女の瞳が、喜びと――微かに苦しみに歪むのを男は見逃さなかった。
「……貴様こそ何を言ってる」
 間違いない。
 アメリアだ。
「そいつは、アメリアだ」
 女が笑って反論しようとする前に男は言いつのる。
「――アメリア=ウィル=テスラ=セイルーン。……聖王都セイルーンの第2王女だ」
 もう王女ではないけれど。
 セイルーン王家の籍は外されているだろうけれど。
 男にとって、アメリアは、アメリアだったから。
 その言葉に眉を顰める女を無視して、男は少女に目を向けた。
「……アメリア、どうして今まで教えてくれなかったんだ? 生きているなら生きていると。俺が今までどんな思いでいたか――」
 ふと記憶に浮かんだのは悲しみの涙を流す少女。
 先に拒絶したのは――自分だった。
「――いや、それはどうでもいい。――元はと言えば、俺が悪かったんだからな。……アメリア――」
「……あの……」
 声を出したのは、アメリアだった。
 完全に困り切った表情をしている。
「…………?」
 謝罪の言葉を口にしようとした、その矢先のセリフに、ゼルは顔を顰めた。
 ――何かが違うような気がした。
 大きな瞳も、感情を隠せない顔も、よく通る声も、柔軟に動く体も、間違いないはずなのに。
「……あなたは、私をご存知なんですか?」
「…………っ!」
 記憶喪失。その単語が男の頭の中を回った。
「……アメリアっ! 何も覚えてないのか?!」
 詰め寄ろうとする男の前に女が立ちはだかった。その表情は険しい。
「ちょっと待ちなよ、兄ちゃん。あんたこそ何を言ってるんだい」
「いいからどけ! 邪魔だ!」
 剣に手を伸ばしかける。と、女の鞘に収めたままの剣が、男の喉元に押し付けられていた。
「いいから、待ちな」
 その常人よりもはるかにすばやい動きに、男は女を見くびっていたことを後悔する。
 見た目だけの女だと思っていたが、実際はかなりの剣の腕――ひょっとしたら、男以上の腕の持ち主かもしれない。
「……あんた、この子がアメリア姫――あの悲劇のお姫様だって言ったのかい?」
「……ああ、そうだ」
 言葉で肯く男に、女は静かな冷めた口調で言う。
「――あんたみたいな薄汚れた人間が、どうやってお姫様とお近づきになったのか判らんけど、生憎と人違いだよ」
「……何を根拠に言ってる」
 怒りの眼差しで睨み付ける男に女は静かに笑って言った。
「あたしもティルズの話は知ってる。でも、彼女が死んだのは二ヶ月近く、もうそろそろ三ヶ月近く前のことだろ?」
「……ああ、そうだ」
「じゃあ、間違いなく人違いだ。……この子はあたしと、かれこれ、四ヶ月近く一緒に旅をしているからね」
 言い切って、女はゼルの喉元から剣を放した。そして、男の胸をとんと押しのける。
「判ったら、とっとと帰んな」


 そして部屋から追い出される男の瞳に。
 不安そうな少女の瞳だけが写っていた。
 それは、荒く男を押し出す女を心配しているようにも。
 荒(すさ)んだ生活を続けていた男を気遣っているかのようにも、見えた。

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1392すてきですっ!春眠 E-mail URL3/10-23:40
記事番号1383へのコメント

はじめまして。
一気に読んでしまいました。

ゼルとリナ&ガウが口論するところ、ゼルの絶望が良く現れていてちょっと泣けました。
いろいろと伏線がおありのようで、続きが楽しみです。
リリアちゃんとマリア姐さんの関係とか、ゼルの首にかけられた賞金の意味とか。

感想、短くてごめんなさい。続きお待ちしてます。

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1393春眠さん、ありがとうございます♪織原 瑞穂 3/11-02:05
記事番号1392へのコメント

 こんにちは、春眠さん♪
 HPの方、いつも読み逃げさせて頂いてます(汗)。
 こんな所で言っていいのか判りませんが、実はファンです(滝汗)。
 (感想メールの一本も送らずにすいませんっ!)

>一気に読んでしまいました。
 ありがとうございます♪
 
>ゼルとリナ&ガウが口論するところ、ゼルの絶望が良く現れていてちょっと泣けました。
 えっと、この部分、読む方もツライかと思ったのですが・・・・・・書かないと話が続かないので書かせて頂きました(汗)。
 でも、春眠さんに『良く現れている』と言って頂けると嬉しいです。
 (絶望なんて感情、本当は書いてる方もツラかったので非難だけが来たらどうしようかと思ってました(苦笑))

>いろいろと伏線がおありのようで、続きが楽しみです。
 はい♪
 伏線だけは本当、山のように張ってるので期待していてください。
 (本文中で書ききれるかどうか、ちょっと不安ですが(滝汗))

>感想、短くてごめんなさい。続きお待ちしてます。
 いえ、電光石火の感想、嬉しかったです♪
 これからもよろしければ、お付き合い、よろしくお願いします(ぺこっ)。

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1399つ・・・続き、読ませて下さい!穂波 3/12-00:44
記事番号1383へのコメント

瑞穂さん、今晩は。

うきゃぁぁぁっ、とうとうこのお話の続きが読める日が来たのですね!
嬉しい・・・お待ちしていました!
「冬物語3」にまで、言及してくれてどうもです・・・こんな良いもの読めるなんて、得した気分っす、続きが気になります(笑)。

えと、それではちょこっと感想など。

序、でリナがリナらしく、彼女たちといるときのゼルがちょっとだけまっとうになっていたのが、妙に笑えました・・・その後、アメリアの手配ときで、逆切れしちゃうのが、彼らしいと言うか・・・不器用というかなんですが。

ラスト、アメリアを見上げるあたりの心情、たまらないです(^_^)

で、いよいよ本編。

>「……その手を放しなさいっ!」
あああ、アメリアっっ、ゼルに呼びかけてくれたのね!!(嬉)
・・・何か、違うな(笑)。

> 少女はそんなゼルに間髪入れずに――苦しそうに叫んだ。
>「あなたなんか知りません! いいから早くマリアを放して!」
なんで、苦しそうなんでしょう・・・うう、ゼルのことは綺麗さっぱり忘れてし
まったのか?(泣)

>「…………っ!」
> 床に倒れるゼルに少女は思わず駆け寄りそうになる。
ああ、アメリアってば変わってないわ(うっとり)。

> 少女は困った目をただ女に向けるだけだった。その瞳は、男が見たことの無いほど、弱々しいもので。
> 胸の奥が軋んだ。
うん、何か・・・気持ち、わかるぞ、ゼルガディス。<(共感してどうする)

> 「……アメリア、どうして今まで教えてくれなかったんだ? 生きているなら生きていると。俺が今までどんな思いでいたか――」
・・・憂さ晴らしに、殺しまくってましたね(笑)。

>「じゃあ、間違いなく人違いだ。……この子はあたしと、かれこれ、四ヶ月近く一緒に旅をしているからね」
> 言い切って、女はゼルの喉元から剣を放した。そして、男の胸をとんと押しのける。
>「判ったら、とっとと帰んな」
うーん、一ヶ月のずれかぁ・・・あああ、ここまできて完全別人だったらどうしたらいいんだぁぁ(泣)。

ううう、たいそう続きが気になりますです。

ホントに、楽しみにしてますので・・・書いたら読ませて下さいね(笑)。

それでは、良いもの読ませてくれて、ありがとうでした。

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1406穂波さん、ありがとうです♪(笑)織原 瑞穂 3/14-01:53
記事番号1399へのコメント

>瑞穂さん、今晩は。
 ・・・・・・こ、こんにちは♪(汗笑)>穂波さん
 (穂波さんにこのP.N.で呼ばれるのって、予想はしてましたけど、やっぱし精神的なショック大きかったです。(^^;))

>うきゃぁぁぁっ、とうとうこのお話の続きが読める日が来たのですね!
 す、すいません・・・・・・、非常に遅くなりました(滝汗)。
 更に、以前、送り付けさせて頂いた序文からして、もう完全別モノとなってしまってますね・・・・・・(ゴメンなさいっ!)。

>続きが気になります(笑)。
 ぐはっ!(大量吐血)
 ・・・・・・す、すいません、穂波さん御自らのレスを頂く前に全部UPしちゃおうかとも思ってたんですけど、パソに打ち込んでる内にキャラの性格の訂正や付け足したいことが山のように出来ちゃって、直してる内にどんどん別ストーリーに。
(はい、すでに方向が変わってしまってます(滝汗)。元のストーリーでは、(1)で、マリアが自分の持ち情報を言ったあげくに、ゼルに殺されかかってたんですけど・・・・・・、なんでゼル、呆然自失になってるんだろう?(^^;))

 今、改めてストーリーを作ってる状態なんで・・・・・・気長に待っていてください。(^^;)

>えと、それではちょこっと感想など。
 あ、ありがとうございます♪<感想

>序、でリナがリナらしく、彼女たちといるときのゼルがちょっとだけまっとうになっていたのが、妙に笑えました・・・
 あ・・・・・・(^^;)<リナがリナらしく
 はい、この部分は思いっきり付け足し訂正させて頂きました。<改稿前と比較
 多少は「らしい」リナが書けたかな〜? と、思ってたんで、こう言って頂けると嬉しいです♪
 で、彼女たちと一緒にいた時のゼルが「ちょっとだけ」まっとうになっていたのは、無理矢理にとはいえ、ご飯を食べたから(笑)
 (実際に美味しいご飯を食べると判ると思うんですけど、病気じゃない限り多少は落ち着きます(笑)。脳に血が行かなくなるせいかと思ってるんですけどね(笑))

>ラスト、アメリアを見上げるあたりの心情、たまらないです(^_^)

 穂波さんにそう言って頂けると、本当、嬉しいです♪

>本編。
>>「……その手を放しなさいっ!」
>あああ、アメリアっっ、ゼルに呼びかけてくれたのね!!(嬉)
>・・・何か、違うな(笑)。

 思いっきり違います(笑)。
 第一、呼びかけるとしたら「・・・・・・ゼルガディスさん!」が基本でしょう?(笑)。

>> 少女はそんなゼルに間髪入れずに――苦しそうに叫んだ。
>なんで、苦しそうなんでしょう・・・うう、ゼルのことは綺麗さっぱり忘れてし
>まったのか?(泣)

 えっと・・・・・・ここらへんの「――(ダッシュ)」付きの補足として書かれていることは、伏線の一部なんで、詳しい説明は無し♪(笑)
(ただし、ゼルがこの手の情報を得た場合に予想したことは、文章中で語らせるようにしたいと思ってます(笑))

>> 床に倒れるゼルに少女は思わず駆け寄りそうになる。
>ああ、アメリアってば変わってないわ(うっとり)。

 変えたら「アメリア」じゃ無いですから(笑)。

>> 胸の奥が軋んだ。
>うん、何か・・・気持ち、わかるぞ、ゼルガディス。<(共感してどうする)

 まあ♪
 穂波さんってば、感受性豊かなんですから♪(笑)<共感

>・・・憂さ晴らしに、殺しまくってましたね(笑)。

 はい(汗笑)。
 でも、まあ、この時点で再度培われてしまった「過ち」。
 その報いを、ゼルがどう受けていくか?
 そこらへんも、入れられたら入れたいです(汗笑)。
 (キャラが勝手に走り出してしまったため、すでにストーリー予測不可能状態(滝汗))

>>「じゃあ、間違いなく人違いだ」
>うーん、一ヶ月のずれかぁ・・・あああ、ここまできて完全別人だったらどうしたらいいんだぁぁ(泣)。

 ですから、それはヒミツです♪<アメリア(リリア)が本物かどうか?

>それでは、良いもの読ませてくれて、ありがとうでした。
 その言葉をENDマークの後で再度、聞けたら・・・・・・嬉しいです(^^;)

 これからも、お付き合い、よろしくお願いします♪

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1403Re:Passing Season(1)ルイ 3/12-18:03
記事番号1383へのコメント

はじめまして、ルイと言う者です。
しかし、この小説すごいです!!!
なんでこんなうまく書けるんですか。
文章の書き方とか、すばらしいと思います。
ゼルの思いが、良く伝わってきます。
では続きがんばって下さい。

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1407ルイさん、ありがとうございます♪織原 瑞穂 3/14-02:01
記事番号1403へのコメント

>はじめまして、ルイと言う者です。
 こんにちは、はじめまして♪
 下の方のルイさんのツリー、拝見させて頂いてます(汗)。
 (す、すいません。基本的に筆不精なもんで感想も書かずにROMらせて頂いてました(汗))

>しかし、この小説すごいです!!!
 あ、ありがとうございます♪(照れ照れ)

>なんでこんなうまく書けるんですか。
>文章の書き方とか、すばらしいと思います。
 えっと・・・・・・私なんかは基本的に語彙が少ないので、動作とか情景描写で感情をうまく表現することが出来ないんです(^^;)
 なので、感情表現の判りやすい小説で、一番感覚的にしっくり来ていたお気に入りの作家さん(ライトノベル作家)の文体の一部を真似をさせて頂いてるんですけど・・・・・・。
(けど、その方と比べて、かなり文章が性急で若すぎるので何とかしたいと思ってる所です(滝汗))

>ゼルの思いが、良く伝わってきます。
 ありがとうございます♪

>では続きがんばって下さい。
 ・・・・・・は、はい、頑張らせて頂きます(^^;)

 で、ルイさんのガウリナ小説。(・・・・・・ですよね?(汗))
 続き、楽しみにしてるんで頑張って下さい♪
 では、では♪

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1404すばらしいシェラ 3/13-13:53
記事番号1383へのコメント

すごいです。
すばらしいです。
一気に読んだ・・。と、いきませんでしたがね・・。
時間がなかったもので・・、
でも・・少し読んだだけでわかるこのすばらしさ!!
ゼルやアメリアの気持ちが伝わってきます。
これからもすーーーーーばらしい作品を作ってください。


あっ!!
自己紹介まだでしたね・・。(しなくていいけど・・)
シェラといいます。
今「腕輪の秘密」を書いてます。
初めてなので辺ですが呼んでください。


はっ!?
こんなところで自分の作品を紹介するとわ・・、
ごめんなさ〜い・・。

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1408シェラさん、ありがとうございます♪織原 瑞穂 3/14-02:07
記事番号1404へのコメント

 こんにちは、シェラさん♪
 シェラさんのツリー、拝見させて頂いてました(^^;)
 (すいません、完全ROMしてました(汗))

>すごいです。
>すばらしいです。
 あ、ありがとうございます♪(照れ)

>一気に読んだ・・。と、いきませんでしたがね・・。
>時間がなかったもので・・、
 ネット時間、限られているんですか?
 大変そうですね(^^;)
 本当に暇な時間があったらで、読み流して頂けると嬉しいです(苦笑)。

>でも・・少し読んだだけでわかるこのすばらしさ!!
>ゼルやアメリアの気持ちが伝わってきます。
>これからもすーーーーーばらしい作品を作ってください。

 あう・・・・・・(タメージを受けている)<すばらしい作品
 す、すいません、誉め言葉に慣れてないもんで(汗)。
 えっと、興味を持って読んで下さる方がいらっしゃる限り、誠心誠意、頑張らせて頂きたいと思ってます(^^;

>シェラといいます。
>今「腕輪の秘密」を書いてます。

 はい、読まして頂いてました(^^;)
 続き、楽しみにしてます♪

>はっ!?
>こんなところで自分の作品を紹介するとわ・・、
>ごめんなさ〜い・・。
 あはははは(笑)<紹介
 なんとなく、したくなる気持ちは判らないでも無いのでいいですよ(笑)

 では、宜しければこれからも宜しくお願いします♪>シェラさん

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1409Passing Season(2)織原 瑞穂 3/14-02:12
記事番号1381へのコメント

Passing Season(2)


 町はずれに。
 街道に沿って鬱蒼とした林があった。
 下草の間には、見事な霜が降りていて。木立ちの間には、うっすらとした霧が立ち込めている。
 しかし、それらも日が高くなればすぐ消えるはず。
 夜さえ明けてしまえば、日が射し込めさえすればすぐ消える儚い存在。
 そんな夢のような存在でしかないものも届かない所。
 飛びぬけて高い梢の先端近くに危なげなく立っている男がいた。
 はっきり言って不自然この上ない。
 普通なら、そんな場所にまで人がたどり着けるはずがないのだから。
 樹はしっかりと立っているように見えても、その枝先は実に柔軟に動くもの。
 そこまで登るにはかなりの身体捌きが必要となる。身体を安定させるにはかなりの平衡感覚が必要となる。
 そんな技量を兼ね備える人間はそうはいない。
 しかし、男にはそれが可能だった。
 そのキメラの男は、それだけの体術を持っていたし、またそうで無かったとしても魔術の力を借りればあっさりとそれを成し遂げることが出来た。
 男の名はゼルガディス。
 魔剣士ゼルガディスと呼ばれる男だった。


「…………」
 男の視線の先は、少し先に見える町の宿屋の一室だった。
 正確に言えば、その一室に泊まっていたはずの少女の動き。
 それを見定めようとしての行動だった。
 しかし。
 いくら彼と言えども、これだけの距離があれば部屋の中の様子を見て取ることは出来ない。
 せいぜい部屋の明かりの有無、そして宿から少女が出てくるか否か、それぐらいしか見て取れないことを男は経験上知っていた。
 かといって、男が町中で少女を探るのは無謀というものというもの。
 いつ襲い掛かってくるか判らない刺客を相手しながら、少女の動きを探るというのは、どんなに優秀な人間でも無理だと判っていた。
 それに。
 彼にはゆっくり考える時間が必要だった。
 少女について。


 昨晩、少女のあまりな言葉に。女の少女についての言葉に。呆然としてる間に追い出されてから後。
 我に返ってからも、男は、すぐに少女を問いただす行動には出なかった。
 行動に起こす前に、考えが必要だった。
 少女を取り戻すための。
「…………」
 動きがあった。
 部屋の雨戸が開いて。
 ゆっくり顔を覗かせて、あたりを観察してるのはあの女。
 銀髪が朝日を受け、鈍く光っていた。
 ――第一に。
 女は自分を煙たがっている。
 昨晩、自分を急いで追い出したことからも判ったが。
 少女に隠していることがあるのだろうか。
 もしくは、少女を騙しているからかも知れない。
 確実なことは。
 女は恐れているということだ。
 自分が少女に何かを知らせるということを。
 それは少女の過去に関することに間違い無いはず。
「…………」
 女が引っ込んだ後、少女が不安そうな動きで、窓の外を伺うように身を乗り出した。
 不意に黒髪が柔らかそうに揺れる。
 少女が慌ててすぐに顔を引っ込めたのは、風が冷たかったせいか。
 男の顔が淡く笑った。
 第二に。
 少女は自分のことを間違いなく知っている。
 それは確かな記憶で無いかもしれないが。
 自分の存在に感情を動かしていた。
 男が女にワザと殴られた時に、少女は慌てて駆け寄ろうとした。男を知らないと叫んだ時に、確かに苦しそうにしていた。……部屋から押し出される時に、少女が自分を心配そうに見ていたと思うのは勝手な思い込みかもしれないが。
 男は少女が『彼女』であると確信していた。
 それは、ティルズが自分にかけた賞金からも、そう思えることで。
 たかが、墓荒らし。だが、その墓に収まっていた遺体が偽者のだとしたら。その秘密は。それは国家の威信にかけて隠し通さなくてはならないことのはず。王族の生死を偽ったということに繋がるのだから。そして、それは内乱の噂を裏付けるものになる。国家の上層部が、そういう偽りを行っていたということの理由。その動機を好意的に考えれる理由付けは、男には考え付かなかった。
 だから。
 少女は、きっと『彼女』で。
 でも、男のことをほとんど――。
「…………」
 胃がキリっと痛んだ。
 久しぶりのその感覚は、以前は良く感じていた感覚で。
 そう、かなり前に捲いた少女達と、彼女と、旅をしていた時は常に付きまとっていた痛み。
 当時は、思うように進まない自分自身の旅のせいだと思っていたが。
 本当は……半分ぐらいは、違っていたのかもしれない。
 迷惑ばかりかけられていた旅で。
 自分の実になるものは殆ど無かった旅で。
 必ずと言っていいほど大事件に巻き込まれて。
 最終的にはお互いの、仲間の命を守ることに精一杯だった旅で。
 自分が一番大切にしていたのは――。
「…………」
 気が付くと窓は閉まっていた。
 彼女らはこれから着替えて、朝食、そして出立するのだろう。
 そこまで見極めて、男は樹から飛び降りた。
 することがあった。
 二人を追う前に。
 確実に行動の時間があると判る、今。


「……おはよう」
「…………」
「…………」
 男が声をかけたのを無視して、無言で目の前を通り過ぎて行こうとする二人組み。
 二人といっても反応はそれぞれ違った。
 片方はあからさまに不機嫌な表情で。
 もう片方はかなり気が咎めているような表情で。
 少女は明らかに男を気にしている様子だった。
 場所は、町近くの街道。
 先ほどまで男が野宿をしていた所のすぐ側だった。
 霧はもうとっくに晴れていて。
 かといって、霜は溶けきっていない。
「……挨拶をしてるんだ。挨拶を返すのが礼儀ってもんじゃないか?」
 皮肉そうに笑いながら言う男に、
「…………あたしらにとってはおはようだけど、あんたにとっては違うんじゃないかい?」
 俯き加減で早足に移動しながら女は答えた。
 女は昨晩のラフすぎる格好とは違い、軽装鎧(ライト・アーマー)を身につけていた。彼女の瞳の色に合わせてか濃い翠色のものを。
 対して少女は、以前身に付けていたのと良く似た、一般的に良く売られている白の法衣に、動きやすそうな白のズボン、マント。そして、意外なことに白のショルダーガードと短剣を身につけていた。
「…………まあな」
 女の言葉の内容にでは無く、少女の服装に内心驚きながらも、男は表面上は極めて冷静に言葉を返す。
「じゃあ、この子はあんたの探している子じゃない。そのことは判ったんだろ?」
 女は苛ついた様子を隠そうともしなかった。
 それに対して男は表面上は淡々と言葉を発する。
「……約四ヶ月前、南のカレッズ共和国のヴィグモント・シティ――ティルズ国境から約五日という所か――その付近で発見。服装や所持品からの身元の割り出しは出来なかった。過去の記憶、個人的な記憶は全て無くなっていたので――」
 それは、男が今朝方、宿屋の主人に『極めて平和的に』聞き出したことから、推測したことだった。
 昨晩、女から聞いたことの裏付けとして。
 ……少女の記憶が無いのなら、何らかの方法で身元を探し出そうとしていると、そう考えるのが普通だったから。
 女から『あのこと』を言われて。
 ――最初に男が立てた仮説は、女が嘘を付いているということだった。
 自分で言うのもなんだが、自分みたいな胡散臭い男に、真っ正直に真実を話すとは思えなかった。
 そう、自分だったら、絶対に嘘を付く。
「――旅をしながら、自分の身元を探している。探し出すカギは――」
 だが。
 たとえ、男に対して嘘を付こうとしても。
 女は捜索の段階では嘘は付かないと思った。
 そんな捜索には全く意味が無いから。
 そして。
「――高度な精霊魔法・白魔法、そして一部の高位黒魔法が使えるということだけ。――まあ、この条件にあう女魔道士など、そうはいない。これだけでも、あっさり身元も判るはずだが――」
 女が自分に言ったことは彼らにとっての真実らしい、ということは判った――が。
 時間のことだけを除けば、これほど『彼女』に条件が合っている者は、そうはこの世にいない。
 白魔法、精霊魔法に――自分が昔、教えた黒魔法。
 世界のために――仲間のために『彼女』が魔族に対抗する方法を悩んでいた時に。請われて教えた。
 実際問題、巫女に黒魔法を教えることに抵抗が無かったわけでは無かったが。それ以上に『彼女』の願いは強かったから。その想いに彼は折れた。
 そして。
 当の本人が、あの魔法役に立ちましたっ、ありがとうございますっ、と力強く嬉しそうに笑っていたから。
 まあ、いいか、と男は思った。
 その時、感じたむず痒い感覚。
 それを思い出した時、何故だか泣きたくなったが。
「――何故か、隠密裏に身元を探している」
 男は、女を冷ややかな目で睨み付けた。
 そう。最初、宿屋の主人に話を聞いても、さっぱり要領を得なかった。その理由は、この点においてで。女は世間話風に、こういう、現在行方不明の人間がいないか、さらりと尋ねただけで。それだけで、この町での探索を打ち切っていたのだった。
 ――第二に男が立てた仮説は、女がアメリアを何かに利用しようとしていて……アメリア自身に嘘をついているのでは無いか、ということで。
 しかし、それを確認する方法は。
 己が確認した確実な情報を少女に知らせ、その反応を見ること。女の反応を見ること。
「…………くっ」
 微かに苦々しい顔を見せる女に、男は、やはりと思いながら、確信を強めた。
 横目で見ると……少女は、話について来れてないみたいで、唖然としていたが。
 この、ぼけている所は変わってない。
 男は痛くなってきた頭を、押さえたくなる手を止めるのに苦労した。
「……なんで、わざわざ秘密裏に探す必要があったんだ? 大っぴらに探せば、これだけ特殊な特徴だ。あっさりと判るだろうに」
 男は、少女にも判りやすいように、女に聞く。
 女の行動は、少女の命を助けていたのかもしれないが。
 逃亡した王妃を、謀殺の手から。
 でも。
 昨晩の奇跡が無かったら。
 自分はいつまでも知らなかった。
 いつまでも後悔を抱えて。いつまでも絶望を抱えて。
 誰かに殺される日まで生きていただろう。
 そう思うと、男の目は凍り付きそうな程冷ややかになった。
「…………ち、違いますっ! それは、私がお願いしたことなんです!」
 慌てて止めに入ったのは、やっと事態を悟った少女だった。
「……リリアっ、あんたはいいから黙ってな!」
 苛立ち混じりの女の言葉に少女はびくっとするが。それでも、男の顔をしっかり見上げて言う。
「……マリアに私からお願いしたことなんです。だから……」
 少女の顔は、今にも泣き出しそうな、怒っているような顔で。自分のせいで、いわれの無い非難を甘んじて受けている親をかばうような顔で。
 男は……自分自身でも理由が判らなかったが、少女に庇われてる女に敵意を抱いた。
 自分が話した分の情報に嘘が無かったことで。
 女に対する疑いは晴れたはずなのに。
「……判った、俺が悪かった」
 そんな敵意――嫉妬を隠して。男はため息を付いた。
 少女の怒っている顔を見るのは本意ではなかった。
 少女の泣き顔を見るのは、もっと本意でない。
 少女は男の言葉に安堵の息をこぼして……改めて、始めて見るもののようにじっくりと男を観察し始めた。
「……な、なんだ?」
 何故か心拍数が上がるのを感じながら、男は平静を装って聞いた。
 それに少女はにっこり笑って言う。
「見た目がもの凄くアヤしいですから誤解してました。本当はすっごく良い人なんですね。私の心配をしてくれるなんて」
 その言葉に、男と女の目が丸くなった。
「でも、身なりはちゃんとしておいた方がいいですよ? ちゃんと清潔なものを身に付けて、ちゃんと夜は睡眠を取るっ。人は一番最初は見た目で判断されちゃうんですからねっ!?」
「リ、リリア?」
 女が慌てた風に少女に呼びかけるのを聞いて、少女は苦笑しながら振り返る。
「……うん、ゴメンね。マリア。けど、放っておけなくて……」
「……リリア」
 頭を抱えながらも怒っている女の表情に――少女に申し訳なく思う気配が、ほんの少しだけ混じっていたことに男が気付いたのは。
 少女に間接的にとはいえ『汚らしい格好をしている』と言われて。
 足元の霜が完全に溶けて、足の形にぬかるみが残り。
 更にかなりたって、そのぬかるみすらも乾きかけた頃。
 昨晩から数えて二度目の呆然自失状態――当然、その間に少女達は立ち去っていた――から立ち直った後だった。


 第三の仮説。
 それは。
 『彼女』が、何者かによって。
 助けられた後。
 移動させられたかもしれないということだった。
 時間と場所を。
 未来から過去へ、ティルズからカレッズへ。
 一ヶ月と五日分を。
 それは、結果論としてだったが。
 あるいは――神族か、魔族になら――可能なのかもしれないと。
 ――そう、思えた。

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1410くううう〜ッ春眠 E-mail URL3/14-04:06
記事番号1409へのコメント


以前は姫がゼルの後をついて歩いていたのに、今はゼルが姫を追いかけるようになったなんて・・・。

「見た目アヤしい」とは懐かしい言葉ですねえ。
確かTVのほうでゼルとお初だった姫が思いっきり彼を指差していった率直すぎる言葉でした。
何気にゼルを心配してしまうリリアちゃんの言動に光明を見出そうとしているのはゼルだけじゃないです〜。

なにやら大きな展開が待っているようですね。魔族といえば・・・。

ともあれ、ひとたびは無くした筈の失せものをゼルがもう一度手にできることをいのりつつ。

続き楽しみにしてます〜!


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1411Re:Passing Season(2)むつみ E-mail 3/14-06:29
記事番号1409へのコメント

織原 瑞穂さんはじめまして。(で、いいのかな?鳥頭だから、自信がない)
むつみと申します。
読ませていただきました。

なんてうれしい!!
穂波さんの「あの」お話の続き!!
しかも、ドラマチック!
伏線と秘密が、ゼルの足下でとぐろ巻いているわっ!
たのしみたのしみ。(^^)

え〜〜っと。
わたし、感想は作品のエンドマークを見てからつける主義なのですが・・・。
あまりの嬉しさに、カキコしてしまいました。

頑張って、続き書いてくださいね。
心の底から、応援します。

ではでは。


>

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1413続きだ続き(^_^)穂波 E-mail 3/14-23:38
記事番号1409へのコメント

織原さん、こんばんは(笑)。

早速の続き、とっても嬉しいです。
更に続きを頂けるともっと嬉しいです(鬼か・・・)。

では、ちょっとばかり感想を。

>「…………」
> 男の視線の先は、少し先に見える町の宿屋の一室だった。
> 正確に言えば、その一室に泊まっていたはずの少女の動き。
> それを見定めようとしての行動だった。
・・・ゼル、スト○カー?
はっ、いや、せいぜい覗きですね(笑)!

> 男が女にワザと殴られた時に、少女は慌てて駆け寄ろうとした。男を知らないと叫んだ時に、確かに苦しそうにしていた。……部屋から押し出される時に、少女が自分を心配そうに見ていたと思うのは勝手な思い込みかもしれないが。
・・・リリアが、単に優しい子で、初対面の男に気を使っているのをゼルが勝手に解釈したのではありませんように(笑)。

> 最終的にはお互いの、仲間の命を守ることに精一杯だった旅で。
> 自分が一番大切にしていたのは――。
アメリア!(断言・笑)。

> 少女の顔は、今にも泣き出しそうな、怒っているような顔で。自分のせいで、いわれの無い非難を甘んじて受けている親をかばうような顔で。
> 男は……自分自身でも理由が判らなかったが、少女に庇われてる女に敵意を抱いた。
うひゃひゃ、そんな・・・女性相手にやきもちやかんでも。

>「見た目がもの凄くアヤしいですから誤解してました。本当はすっごく良い人なんですね。私の心配をしてくれるなんて」
ぎゃははは、いいぞ、リリア(アメリア)!


> あるいは――神族か、魔族になら――可能なのかもしれないと。
> ――そう、思えた。
 おお、話が大きくなりそうな気配・・・ふふふ、続き楽しみ!

 それでは、今回も面白かったです。
 次回、楽しみにしてますね。