◆−初投稿です。−ぱった (2003/4/5 00:09:29) No.13907 ┗百万の盗み方2−ぱった (2003/4/5 00:12:20) No.13908 ┗Re:百万の盗み方3−ぱった (2003/4/5 10:21:27) No.13909 ┗百万の盗み方4−ぱった (2003/4/5 16:36:21) No.13914 ┣Re:百万の盗み方4−無限 劉人 (2003/4/6 16:04:35) No.13923 ┃┗Re:百万の盗み方4−ぱった (2003/4/6 19:00:40) No.13927 ┗百万の盗み方5−ぱった (2003/4/6 18:48:28) No.13926 ┣Re:百万の盗み方5−無限 劉人 (2003/4/7 12:04:05) No.13935 ┃┗ありがとうございます〜!−ぱった (2003/4/8 11:27:03) No.13952 ┗百万の盗み方6−ぱった (2003/4/8 11:02:11) No.13951
13907 | 初投稿です。 | ぱった | 2003/4/5 00:09:29 |
みなさんはじめまして。 凄くさかんな投稿を見て、私も出してみたくなりました。 つたない面もあるかと思いますが、よろしくお願いします。 とある映画のパロディです。 カップリングはあってなきが如しといった感じですが、ガウリナだと思います。 百万の盗み方 1, ラッタッタッタッ。 1950年代花のパリ。 大通りをコケティッシュな音をたてて白い小さな車が走っていく。 この二人乗れば精一杯といったような車に乗っているのは大きなサングラスと真っ白なヘルメットをかぶった女性だ。 白いスカーフをなびかせながら、慣れた様子で車を操っている。 オープンカーの屋根を開けて風を浴びている様子が実に気持ちよさそうである。 車は最新のファッションにあふれた通りから抜け、レンガ造りの古めかしい建物が立ち並ぶ一角に入っていく。 そしてその中の大きな館に入っていった。 キイッという音をたてて車が止まる。 中から出てきたのは小柄な女性。 ヘルメットをはずすと美しい栗色の髪がふわっと広がった。 彼女はハイヒールをカツカツと鳴らしながら優雅な歩き方で館に入っていった。 ぎいぃっ。 扉が重厚な音をたてて開いた。 中にいたのは白髪に近いプラチナ・ブロンドの青年。 気難しそうな雰囲気が魅力を半減させている。 「…どこに行ってたんだ、リナ?」 少し怒ったように彼女に話し掛ける。 「るっさいわねえ。細かいことばっかり気にしてるとはげるわよ?ゼル。」 サングラスをはずしながら彼女―リナは言った。 そこに見えるのは少し童顔だが赤い大きな瞳が印象的な可愛らしい少女である。 ただし、浮かんでいるのはかなり人の悪い笑みだが。 「…あのなあ…。今日は早く帰るようにと、旦那様がおっしゃってただろう。お前が帰ってこなくて当られるのは俺なんだからな。」 溜息をつきながら彼−ゼルガディスは言う。 「さっさと旦那様の部屋へ行くことだな。もうかなり前からお待ちだ。」 「はーいはいはい。」 「ハイは一回!」 「はーーーーーーーーいっ!!」 リナは階段を上り、父親の部屋をノックした。 「ちょっと、とーちゃん??」 返答は無い。 仕方なくリナはそのままドアをあける。 部屋の中には誰もいない。 リナはあたりを見渡す−と、部屋の隅の古いクローゼットが少し空いているのに気付く。 それを見付けたリナは、腰に手を当ててはあっと溜息をつく。 「あの馬鹿親父…まあ〜たやってるわね。」 そういうと、やおらクローゼットを開け中に入る。 そこには隠し扉があるのであった。 暗い部屋の中には油の匂いが充満している。 隅のほうに小さな電気がともっていて、そこには大きな油絵用のキャンバスがあり、その前には長い黒髪の男性が座っていた。 「ちょっと、とーちゃん。またやってんの?」 リナが声をかけると、彼はくるっと振り向いた。 「おう、リナか。」 彼はタバコ(しかし火はついていない)をくわえていて、やはり絵筆を持っていた。 画家である。 「…今日は何を描いてるわけ?」 むすっとした表情でリナは聞く。 「おう。聞いて驚け。ゴッホのひまわりとダ・ヴィンチのモナ・リザだ。」 彼リナの父はきひひ、と笑いながら答えた。 その答えにリナはまた溜息をつく。 …リナの家は代々続く贋作家であった。 |
13908 | 百万の盗み方2 | ぱった | 2003/4/5 00:12:20 |
記事番号13907へのコメント 百万の盗み方2 「あーのーねーっっっ!!いいかげんにやめたらどーなのよっ!」 一瞬の間をおいてリナは爆発した。 「人の絵写してヒト騙して儲けてっ!娘を持つ父親がいい歳してお天道様に顔向けできないよーな仕事してるんじゃないわよっ!」 「あんだとっ!?これはウチの家で代々伝わってきた誇り高〜い仕事だっ!だいたいなあ、本物か偽者かなんてモンは主観の問題なんだよ!俺の絵がすばらしいことには変わりはねえだろうが!買ったやつだってそれで満足して幸せになってんだからそれでいいんだよっ!」 「いい歳こいて屁理屈言うんじゃないわよっ!だいたい最近は技術だって発達してんのよっ!?贋作なんてすぐにばれるのよっ!」 「へ!俺がそんな間抜けなことするわけねえだろうが!タッチや色はもちろん、キャンバスや絵の具だって、その時代のものを使ってるんだからばれっこねえんだよっ!」 「威張るなああああああああああああっっっ!!」 きんこーーーーーーーーーん そのとき、入り口のチャイムが鳴った。 二人はぴたっと言い争いを止めた。 リナの父はポケットの中から懐中時計を出して呟く。 「やっべえ、そんな時間か。」 そうして、隠し部屋から走って抜け出す。 「ちょ、ちょっとなんなのよっ?」 リナも慌てて後を追う。 「うるせえ!おめーがグダグダとうるせえから客が来ちまったじゃねえかっ!」 「客ぅ!?聞いてないわよ!」 「だから今説明するはずだったんだよ!…っとくだらねえ事ばっかり言ってる場合じゃねえや。おい、リナ。ネクタイとってくれ。つーか、締めてくれ。」 そういいながら彼は仕事着を脱ぎ、白いシャツとジャケットを着込む。 リナはタンスからネクタイを取り出し、締めてやりながら尋ねる。 「客って誰なのよ?」 「ん?ああ、メタリオム氏だ。ルーブル美術館の館長。」 「はあっ!?そんな人が何でウチにくんのよ!?」 「ああ?それはだな…っと、リナ。ネクタイ終わったら髪の毛まとめてくれ。」 「ん…とっと。」 リナは父の長髪をくしで丁寧にすき、一つにまとめた。 「とーちゃん説明っ!」 「ああもう時間がねえっ!!お前も一緒に来い!出かけてたんだから格好はそのままでいいだろう?来りゃあ解らあ!」 リナは慌てて軽くスカートを直し、父親に続いて部屋を出た。 一階のホールにはゼルガディスと、黒髪を肩で切りそろえた青年がいた。 「よう、待たせてすまねえな。」 リナの父は軽く手を上げてその青年に挨拶をした。 青年はこちらを向き、にこりと笑って言った。 「いえ。インバースさんのことですからね。予測してましたよ。」 「…言うじゃねえか。」 まるで東洋人のように細い目をしたその男性こそ、ルーブル美術館長ゼロス=メタリオムであった。 「今回は本当にありがとうございます。」 ゼロスはそう言い、インバース氏に右手を差し出した。 「なあに良いって事よ。素晴らしい芸術は全ての人間が見るべきだからな。」 言いながら、インバース氏もその手を握り返す。 「こちらはお嬢さんですか?あなたのお父様は本当に素晴らしい方です。」 そう言って、ゼロスはリナにも笑いかけた。 そういわれても、リナはなにが起きているのか理解できない。 「えっと…?」 あいまいな笑みを返す。 その笑いをどう取ったのか、ゼロスは大げさなほど両腕を広げて言った。 「あなたの家の家宝、伝説のミケランジェロのヴィーナス像をルーブルに貸してくださるんですから!本当に心が広い!」 「!!!!!!」 インバース家家宝ミケランジェロのヴィーナス像。 それはリナのひいじいちゃんがひいばあちゃんをモデルに作った完全なる贋作であった。 |
13909 | Re:百万の盗み方3 | ぱった | 2003/4/5 10:21:27 |
記事番号13908へのコメント 百万の盗み方3 「ど〜〜〜〜〜〜するつもりなのよぉぉっ!!」 ヴィーナス像は縦50cmほどの小さな像である。 一階の応接間に飾ってあり、インバース氏はいつも客に自慢していた。 そこから噂が広まり、ゼロスの耳にも届いたらしい。 「うるせえな、いーじゃねえか別に。つーかお前もっと喜べよ。祖父ちゃんの芸術がルーブルに認められたんだぞ?つまり、世界に認められたって事だ。」 ゼロスが帰った後、鬼のような剣幕のリナに対し、インバース氏はホクホク顔で応接間のソファに身を沈めている。リナはさらに詰め寄った。 「贋作でしょうがっ!ばれたらどーするのよっ!!」 「大丈夫だっつってんだろ?ありゃあ祖父ちゃんの最高傑作だ。ばれるなんてありえねーよ。」 「ルーブルよっ!?その道の一流どころがわんさか見に来るのよ!?」 「そりゃウチに飾ってたときからそうだっただろうが。だいたい偉そうな事言う奴らに限って実際は何にも解っちゃいねえんだよ。はじめから疑ってかかるっていうなら話は別かもしんねえが、今回は違う。ルーブルのお墨付きだ。疑う奴なんて居やしねえよ。」 「あのねえっ…ちょ、ちょっととーちゃんどこ行くのよ!?」 興奮さめやらぬリナに目もくれず、インバース氏はひょいっと身を起こすとすたすたと玄関に向かって歩いていく。 「釣りの約束の時間だ。」 「待たんかああああああっっっ!!!」 その日の夜。リナはベッドでいつまでも寝付けずにいた。 結局あれから父親は帰ってこない。 釣りの後どこかで仲間と飲んだくれているのだろう。 帰りは朝になるに違いない。 「何考えてるのよあのクソ親父…。」 どうしてあそこまで楽観的で居られるのかはリナには解らない。 ゼルに言ってみたが、彼も心配などしていない。…インバース氏には言っても無駄だと諦めているだけかもしれないが。 慌てているのはリナ一人である。 「そりゃ確かに曽祖父ちゃんの腕は確かだけどさ…。リスクが高すぎよ。」 そこら辺の好事家に売りつけるのとは訳が違う。 ルーブルに展示されれば何万人もの目に触れる。 つまりルーブルを騙すということはパリ全体、いや、世界中を騙すということだ。 「何とかしなきゃ。」 言っては見たものの、どうも出来ない。 あのゼロスとかいう男、意外に手ごわく、リナの口車にも引っかからなかったのだ。 悶々とした時間がすぎていくだけ。 リナもだんだんと諦めがつき、うつらうつらしかけてきていた。 …かたんっ! 階下から聞こえる小さな音に、リナの頭が覚醒する。 この時間、ゼルは家に帰っているし、父親が帰ってくるには早い時間だ。 リナは様子を見に行こうとベッドから降りた。 そのままドアから出ようとしたが、思い直して枕元のタンスから小さな女性用の拳銃を出し、それをしっかり右手に握った。 改めてゆっくりと自室のドアをあけ、廊下に何も無いことを確かめると、そのまま音を立てないように部屋から出て、階段に向かった。 音を立てないように階段を降りていると再び一階のホールからカタッと音がした。 音の方を見ると、飾ってある絵画の前で大きな人影がごそごそしている。 (…泥棒。) リナは思った。 「動かないで!!」 突然かかった声に、青年は驚いて振り向く。 そこには鬼のような形相の少女が拳銃を構えていた。 彼は慌てて両手を挙げる。 「あ、あ〜っと。俺別に怪しい者じゃあ…。」 「動くなっつったでしょ!しゃべんな!」 リナは拳銃を構えて叫ぶ。 「そんなあ………す、すまん。」 情けない表情で、両手を挙げた彼は、長いブロンドで長身の綺麗な青年であった。 「この泥棒!さっさと出て行きなさいよっ!」 そう。いくら見た目が良かろうが、泥棒は泥棒である。 「ええと…。わ、わかったよ出て行くよ。落ち着けって…な?ほら、な〜んにもしやしね〜って…。」 いいながら、両手を挙げてリナのほうに顔を向けたままの状態でドアに向かってカニ歩きで進んでいく。 その間リナは拳銃を向け続けていた。 彼は歩き続け、ドアまでやってきた。 「ほら、今出るからな?」 そう言ってドアに手をかけた。 もう大丈夫だ。リナはほっとする。 ばっ!! その一瞬の間がいけなかった。 彼は手近な絵に向かってダッシュをかけた。 「!!」 ズガアアアアーーーーーーーーーーーーンッッ!! 「ぐあっっ!」 彼の行動に驚いたリナは発砲し、それは見事命中してしまった。 |
13914 | 百万の盗み方4 | ぱった | 2003/4/5 16:36:21 |
記事番号13909へのコメント 百万の盗み方4 「痛っつうぅ…。」 「あ、あ、え、う、あ?」 弾は彼の左腕を掠めただけだった。 一応血は出ているものの、たいしたことは無いだろう。 しかしリナは錯乱していた。 拳銃を放り投げて、意味も無く右往左往している。 当然である。生まれて初めて、泥棒とはいえ、人を撃ったのだ。 青年は左腕を抑え、しゃがみこんでいる。 「ちょ、ちょっと、大丈夫…?」 リナは少し近づく。 すると青年がぱっと顔をあげる。 リナはびくっとして、その場で立ちんぼうになる。 「包帯…。」 「へ?」 「だから…止血するから包帯くれ…。」 「あ、ちょ、ちょっとまって。」 リナは包帯を取りに走った。 一階の応接間で、リナは泥棒氏の手当てをしていた。 くるくると器用に包帯を巻いていく。 彼はおとなしく、されるがままである。 リナは改めて彼を観察してみた。 上等のスーツに身を包み、長い金髪にも手入れが行き届いた様子だ。 こうして座っている姿もきちんとしている。 (ど〜も、民家に忍び込んで泥棒を働くようには見えないのよね。) そんなことを思いつつも、手当てを進める。 丁寧に包帯を巻き、手ごろなところで結んだ。 「ほら!これでいいでしょ!」 「おお、すまんなあ助かった。」 そう言って彼はにかっと笑う。 リナはその表情に毒気を抜かれそうになりながらも、なるべく怒ったような表情を保ちつつ、告げる。 「もうイイでしょ!さっさと出て行きなさいよ!」 そう言って、指でびっと入り口のドアを指す。 早くこんなことは終わりにしたい。 ただでさえ嫌なことがあって機嫌が悪いのだから。 「あ〜、それなんだがなあ。」 リナの剣幕など気にもせず、青年はのほほんと呟く。 「ホテルまで送ってくれないか?」 今日何度目か、リナは爆発した。 「じょおっだんじゃないわよ!な〜ん〜であたしが泥棒にそんなことしなけりゃならないのよ!」 「なんだよ〜。それくらいしてくれたって良いじゃねえか〜。こんな腕じゃ運転出来ねーだろ。俺が泊まってるホテル遠いんだよ。」 「手当てしたんだから十分でしょうが!後の事なんか知らないわよ!」 「ひでえお嬢ちゃんだなー。俺をキズ物にしといて…よよよ。」 「デカイ図体して泣きまねなんてしてんじゃないわよ!だいたいあんたが泥棒しに入ったんでしょうが!」 「そこをなんとか!」 「あほかあああっ!!」 数十分後、ニコニコしてリナの車の助手席に座る青年の姿が見られた。 外に蹴り出したものの「ひでえな〜。開けてくれよ〜。」などと騒ぎ出すから始末に終えない。 なんだかんだ言ってあまり騒ぐことはリナにとっても都合が悪かったのだ。 なにしろ彼が盗もうとしていた絵も当然のごとく贋作である。 近所の住人に警察でも呼ばれようものならたまったものではないのだ。 仕方なく、リナはネグリジェの上にコートを着込み、車のエンジンをふかしているというわけである。 「いや〜悪ィな〜嬢ちゃん。」 「………で、どこに行けばいいのよ。」 こんな茶番は早く終わらせたい。 リナはその一心で怒りを押し殺して尋ねる。 「リッツ。」 「はあ!?」 「あれ?知らないか?ホテル・リッツ…。」 「知ってるわよ!!何で泥棒がそんなとこ泊まってんのよ!!」 ホテル・リッツ…言うまでもなく、最高級のホテルである。 間違っても犯罪者の泊まる場所ではない。 「最近の泥棒はお洒落なんだ。」 「………。」 呆れながらもリナは車を出発させた。 ライトをつけて、暗い道をリナは器用に運転していく。 「嬢ちゃん小さいのに凄いなあ。車の運転完璧じゃねーか。そういやあさっきは拳銃も扱えてたし…。」 何を考えているのか青年はのほほんと言う。 「…やかましい。喋るな。」 リナの実際の年齢は19歳である。 しかし小柄な容姿と童顔のせいで、いつも16位に見られてしまう。 しかし泥棒に対してわざわざ教えてやる義理も無いので、凄んでみせるだけに止めて置く。 青年は、やれやれといったように肩をすくめてみせた。 そうこうしてるまにホテルが見えてきた。 腹が立つくらいに立派な外観である。 リナはちょうどよさそうな場所を見つけて、車を端に寄せて止めた。 むすっとしているリナを尻目に、青年は車から降りる。 「ありがとな嬢ちゃん。」 「どーも。」 青年は固い表情のリナに、にかっと笑いかけ、 「じゃあ。またな!」 そう言って颯爽とホテルに入っていった。 「二度と会うか!」 リナがそう叫ぶと彼は後ろ手に手を振っていた。 リナは溜息をついた後、家に帰るために車を走らせた。 次の日の目覚めは最悪だった。 結局あの後ベッドに入ることができたのは朝方近かった。 そのうえ気が立っていたものだからなかなか寝付けず、空が白んできてからやっとうとうとしたという感じであった。 目覚めた頃にはもう日もかなり高かった。 「よーうリナ…ってなんだあ、そのツラは?」 寝ぼけ眼をこすりつつ階下に降りていくと、父親が咥えタバコのまま器用にコーヒーを飲んでいた。 「…寝不足よ。」 「若ぇモンがなっさけねえなあ。この俺やゼルガディスを見習えよ。」 誰のせいだ。 リナは咽元まで出かかった言葉を飲み込む。 この親父には言っても無駄どころか、不用意に泥棒のことなぞ言ったら殴りこみに行きかねない。下手をすれば拳銃を扱った事で自分にまで被害が及ぶ。 「どっかのオヤジと違って繊細なのよ。」 「あんだあ?この馬鹿娘…。」 がるるる…。 「そんなことをしてる場合じゃないんじゃないですか?旦那様。」 性懲りも無く始まりそうになった親子喧嘩を止めたのはゼルガディスの一言だった。 「…ッ、そうだ、おいリナ。お前そんなカッコしてないで着替えて来い。」 「ちょ…なんなのよ。」 「メタリオム氏がな、昨日言い忘れたことがあるとかで、もうすぐ来るんだよ。」 「はあ…?」 「ほれ、いいから着替えて来い。時間ねえぞ?」 「ちょっとお、とーちゃん!」 リナはぐいぐいと自室に追いやられた。 だが来客があるとなれば仕方が無い、リナはとりあえず着替える事にした。 「いやー、連日すいません。」 一時間後、ゼロスがニコニコしながら現われた。 インバース氏もそれを笑顔で迎える。 「なあに、いいってことよ。」 「ありがとうございます。」 そう言ってゼロスは次にリナのほうに顔を向ける。 「こんにちは、リナさん。今日もお美しい。」 「ごきげんよう、ゼロス館長。」 歯の浮くような挨拶にひくつきながらもリナは何とか対応した。 「で、今日はどうした?」 インバース氏が尋ねると、ゼロスは苦笑しつつ答えた。 「いえ、本当にたいしたことじゃないんですよ。何でこんなことを言い忘れたのかわからないんですがね。全く僕もまだまだといったところでしょうか。」 「?」 親子は顔を見合わせた。 ゼロスは続ける。 「実はあの像にX線検査をかける事になっていまして。あ、いえもちろん疑わしいとかそういうことじゃないんですよ。儀礼的な事でしかありません。もちろん像には支障は何もありませんよ。」 へえ…と、リナは思った。やっぱりルーブルは慎重である。 まあたいしたことは無いだろう。 そう思って横を見ると…なんだか父親の様子がおかしい。 「へ、へえ…でもなんか気持ち悪くねえか?その何とか線って奴も…。」 ゼロスは苦笑して答える。 「おや、案外インバースさんは迷信深いんですねえ。大丈夫ですよ。ルーブルの作品は全てX線検査を受けましたが、なんともありませんから。」 「で、でもよ…。」 「検査は五日後です。今日はこれだけ伝えに来たんですよ。ね?ほんとにたいした用事じゃないでしょう?」 飄々としたゼロスに対し、インバース氏は汗だらだらである。 リナは不審に思うが、ゼロスの手前問いただすわけにはいかない。 「それでは、今日はこれで失礼します。お邪魔しました、インバースさん、リナさん。」 「…っ。」 そう言ってゼロスは去っていった。 一方残された親子。 「…どうしたのよ。」 リナは父親に問いただす。 「…まじい。」 「何が?」 聞くリナにインバース氏は怒鳴り返す。 「X線に決まってんだろ!そんなことしてみろ、一発で贋作だってばれるぞ!?」 「はあ〜〜〜〜〜〜っ!?だだだだって父ちゃんいつも言ってるじゃない!材料も全てその時代のものを使ってるから大丈夫だって!」 「そりゃ俺の話だ!祖父ちゃんの時代そんなこと気にするかよ!確かに外側は完璧だが中見てみろ!土台は新聞だぞ、ありゃ!!」 「んな〜〜〜〜〜〜〜〜〜っっっ!?」 驚き慌てふためくリナに、インバース氏はすでに憔悴しきったような顔で呟く。 「クソお…インバース家の栄光も残り5日間か…。すまねえ、リナ。お前まだ19だってのに…。」 「ちょ…?父ちゃん。」 「いや!安心しろ、リナ!お前一人ぐらい、父ちゃんが責任もって面倒見るからな!」 父はリナの肩をがしっとつかみ、宣言した。 「冗談でしょ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜っっっ!!!!???」 インバース館にリナの悲鳴がこだました。 |
13923 | Re:百万の盗み方4 | 無限 劉人 | 2003/4/6 16:04:35 |
記事番号13914へのコメント 始めましてv 無限劉人です!百万の盗み方おもしろかったですvv 続きが楽しみです!ものすごぉくvvv わらしはゼロゼルラバーな人間です。ひじょーにマイナーカプ。 >「そんなことをしてる場合じゃないんじゃないですか?旦那様。」 ゼルの『旦那様』に心討たれたり;世渡り上手そうだよなぁ;ゼル。 そっ、それでは;乱文にて失礼でした! |
13927 | Re:百万の盗み方4 | ぱった | 2003/4/6 19:00:40 |
記事番号13923へのコメント はじめまして! ぱったといいます。 ひえーこんな駄文にレス、ありがとうございます〜!! >百万の盗み方おもしろかったですvv まじですか! ひゃあ〜すっごい嬉しいです!! >続きが 今続き投稿しました〜。 まだ終わってないですが…ていうか始まったばかりですが(汗)よかったらv >わらしはゼロゼルラバーな人間です。ひじょーにマイナーカプ。 おお〜!ゼロゼル! クールなカップリングですねー! >ゼルの『旦那様』 まとも(?)な人間が彼くらいしかいなかったり(泣) レスありがとうございました〜〜〜! すっごく嬉しいです! |
13926 | 百万の盗み方5 | ぱった | 2003/4/6 18:48:28 |
記事番号13914へのコメント 百万の盗み方5 青年はご満悦だった。 昨夜は失敗したが、まあたまには仕方が無い。 そんなことよりも今彼はホテルのレストランの朝食(昼食?)に酔っていた。 特にこのふわっふわのオムレツが彼をとりこにしていた。 ウェイターがちゃんとしているため、彼の前に皿が重なることは無かったが、もし食べ終えた皿をそのまま重ねていたら、えらい事になっていただろう。 とにかく、彼は至福の時を過ごしていたのである。 しかしそんな静かな時間も突然さえぎられる事になる。 「お、お客様困りますっ!!」 なんだかレストランの入り口付近がうるさい。 「やかましいわねえっ!用がすんだらすぐに出て行くって言ってるじゃないっ!」 わーわーきーきーぎゃーぎゃーがたんがたん。 周りの人間も何事かとそちらに走っていく。 はじめは無視していた青年だったが、あまりの騒ぎにそちらに目をやる。 すると 「見つけたああっ!!泥棒!!」 彼は口をあんぐりとあけ、思わず手にしたフォークを取り落とす。 そこに居たのは昨夜の元気なお嬢ちゃんだった。 「と、とにかく出るぞ。」 息を弾ませて近づいてきた少女に青年は言い、自分も席を立った。 今の騒ぎでものすごい注目を集めている。 少女の用事が何であれ、とてもじゃないが会話のできる状態ではない。 少女も回りに目をやって状況に気付いたらしく、コホンとひとつ咳払いをしてから青年に従ったので、二人はそのままホテルを出た。 取り合えずという事で、二人はホテルの前にある公園のベンチに座った。 いい天気である。 目の前の噴水が非常に綺麗であり、子供たちもはしゃぎまわっている。 幸せそうなカップルも何組か歩いている。 「おい…冗談じゃねえぞ全く…。だいたい昨日『二度と会うか』って言ってなかったか?」 「状況が変わったのよ。」 少女はにべも無い。 青年は軽く溜息をついた。そうして、話を促す。 「で?お嬢ちゃんが泥棒に何の用事なんだ?」 皮肉な言い方を気にもとめず、リナは言った。 「あんた、プロの泥棒よね。」 「……まあ、そう…かな。」 プロの泥棒…なんだかよくわからない響きではあるが、彼は一応うなずく。 「仕事を依頼したいのよ。」 「…はあ?」 彼は再び口をあんぐりとあける事になった。 「だから。あんたに泥棒してもらいたいのよ。」 リナは一言一言確かめるように、しかしきっぱりという。 「…お嬢ちゃん。自分が何言ってるか解ってるか?」 彼は頭痛がするとでも言うように額を抑えながらもリナに尋ねた。 「解ってるわよ。あ、もちろん御礼はするわよ。」 「そういうことじゃない…。」 彼は、はあっと溜息をひとつついてから、リナのほうをキッと見て話し出す。 「いいか、お嬢ちゃん。泥棒ってのは遊びじゃあないんだ。なんか欲しいもんがあるのならパパに言え、パパに。金持ちなんだろ?きっと喜んで買って…」 「んなことわかってるわよっっ!!」 リナは大声で叫んだ。あまりの迫力に彼はひるむ。 回りの人間が何事かと注目する。 その視線にはっとしたように、リナは声のトーンを落として話す。 「とーちゃんに頼めることならあんたみたいな泥棒に頼むわけ無いでしょうが。どうしようもないから言ってんのよ。こっちだって遊びじゃないわよ。」 「………。」 「…こんなことを他人のあんたに頼むのが非常識だって事くらいわかってるわ。無理を承知で言ってるのよ。御礼は弾むから。お願いよ。」 リナの真剣な様子に、青年は何も言えなかった。 彼女にどんな理由があるにしろ、こんな少女に犯罪を犯させることがいいとはどうしても思えない。断るべきなのであろう。 しかし彼女の真剣な様子を見ていると、自分がここで断っても、一人で実行しそうな勢いである。こんな少女の犯行では、成功するはずがない…。 「………っ。」 彼はがしがしと頭をかいた。 気が乗らない仕事だが、ここで彼女を見捨てるわけにも行かない。 「…わかったよ。受ける。その代わり、礼は弾んでもらうぞ。」 その言葉に彼女はぱあっと顔を輝かせる。 「ありがとう!もちろんよ!どうしたらいい?」 彼は少し考え込む。それから、はたと思いついたように彼女に告げる。 「…絵を、くれないか?」 「…え?」 「そう。俺が最初に盗もうとしていたヤツ。あれをくれ。」 「!!」 その言葉に、リナはひるんだ。 「なんだよ?礼は弾むっていったくせに…やっぱこの話はナシか?」 そう言って青年はリナの顔を覗き込んだ。 リナにとってはむしろ良い話だ。何しろあれはとーちゃんの贋作。 元手はゼロである。ただ、ばれたときの危険性はあるが… 「…いいわ。あれをあげる。」 どうせ何もしなければしないで五日後にはばれるのだ。 リナは顔を上げ、青年に告げた。 「…じゃ、商談成立だな。」 「ええ。よろしくね。」 二人はにやっと笑って握手をした。 「俺はガウリイだ。ヨロシクな、嬢ちゃん。」 「嬢ちゃんじゃないわ。リナ、よ。よろしくね。んで、早速仕事の話だけど。」 「急ぐなあ。」 はきはき進めるリナに、ガウリイはのほほんと呟く。 「時間が無いのよ!あのね、あなたには五日以内にルーブルから彫刻を盗み出して欲しいの。」 すいません、まだ続きます。 |
13935 | Re:百万の盗み方5 | 無限 劉人 | 2003/4/7 12:04:05 |
記事番号13926へのコメント 二日続けてレス。うぁ・・・学校休みだから暇人だぁv >「時間が無いのよ!あのね、あなたには五日以内にルーブルから彫刻を盗み出して欲しいの。」 無理。ルーブルはとってもキビち〜セキュリティですよ。 ガウリンだいじょーぶっ!? はらはらはら・・・ >「やかましいわねえっ!用がすんだらすぐに出て行くって言ってるじゃないっ!」 >わーわーきーきーぎゃーぎゃーがたんがたん。 >周りの人間も何事かとそちらに走っていく。 流石リナ! さらに続きを期待しまうまvvv |
13952 | ありがとうございます〜! | ぱった | 2003/4/8 11:27:03 |
記事番号13935へのコメント うわわ、再びのレスマジうっれすぃです!! >無理。ルーブルはとってもキビち〜セキュリティですよ。 そーなんですよねー。 これは昔の映画が元なのでまただいぶ違いますが。 続き、書きました! 長々すんませんです。良かったらどおぞ。 |
13951 | 百万の盗み方6 | ぱった | 2003/4/8 11:02:11 |
記事番号13926へのコメント 初投稿なのに続き物で申し訳ないです。 百万の盗み方6 「……………無理だ。」 「早っ!!」 あの後二人はとりあえずルーブルに下見にやってきていた。 今のは、美術館から出たときにガウリイが呟いた一言と、それに対するリナのツッコミである。 「あんた、プロでしょ!?やってみる前から諦めてんじゃないわよ!」 「泥棒ってのはやってみて駄目だったらそれで終わりなんだよ!何なんだありゃ!どこの馬鹿がたかが美術品にあんだけの警備をするんだよ!」 「フランス人よ!」 「…………。」 ガウリイは黙った。 ……なんだか解らないので、ちょっと時間を戻してみよう。 ルーブルが相手だと知ったとき、ガウリイはごねにごねた。 上手くいくわけがない、リスクが高すぎる、相手がやばすぎるetc… その上、話が違う、やっぱナシにしてくれとまで言い始めた。 もちろんそれで引き下がるリナではない。聞くだけ聞いて逃げるなんて許されないとか、プロの泥棒でしょ!?とか、終いには、公園のど真ん中で「酷いっ!!あたしを見捨てるのねっ!?」とか叫び、座り込んで泣き喚いた(嘘泣き)。 ものすごい注目を浴び、中にはガウリイに対する非難めいた視線も混じっていた。 …そういう事で、結局ガウリイが白旗を揚げる事になったのである。 実行するにあたって、まずは現場を見たいと言い出したのはガウリイだった。 そういえば、リナもまだ見たことはないので、二人で連れ立って美術館に向かった。 検査はまだだが、実はすでに展示してあるのだ。 ゼロスにとっては本当に儀礼的なものでしかないというのがこのあたりからもうかがえた。 美術館に着くと、当然だが門の入り口に警備員が立っていた。 その後、建物の入り口にも当然警備員が立っている。 展示コーナーに向かう途中にも数人の警備員が見受けられる。 「これ雇うだけでもそーとーお金かかってるでしょうねー。人数が半端じゃないわ。」 リナはこそっとガウリイに告げた。 「夜になったらきっともっと増えるぞ。どーするかなあ…。」 ガウリイもぼそぼそと返す。 二人は展示品を見る振りをしながら、警備員の位置などを確かめつつ、ヴィーナス像に近づいていった。 ヴィーナス像は、展示コーナーのど真ん中、一番目立つところに飾ってあった。大体リナの身長と同じくらいの高さの土台に乗っている。 「これか?」 見ながら、ガウリイがリナに尋ねる。 「そうよ。どう?」 「いや…凄い。綺麗だ…。」 ガウリイの言葉に、リナはちょっと気分がよくなる。 リナとて、凄腕だったといわれる曽祖父のことを誇りに思っていたことには変わりは無いのだ。 「けど…それだけじゃあないな。」 「?何よ?」 なにやら考え込んでいるガウリイにリナは賢しげに尋ねる。 「う〜ん…なんだろうなあ…。……何か………。」 ガウリイは像をじいっと見つめていたが、ふと気付いたようにリナに目をやる。 「な、何よ。」 じっと見つめてくるガウリイに、リナは戸惑う。 ガウリイはそれでもかまわずに、リナを見つめていたが、はたと気付いたようなしぐさをする。 「解った!この像、お前さんにそっくりなんだ!」 「!!」 ぎくり。 リナは冷や汗をかく。 「何でだ〜?ほんとに、びっくりするぐらい似てるぞ。…これって、ミケランジェロ作品だろ…?」 ガウリイはもっとよく見ようと彫刻に手を伸ばそうとする。 リナは焦って声をかけようとした。 「ストーップ!!」 そのとき、二人の後ろから声がかかった。 二人は何事かと振り向いた。 「ようこそ、リナさん。わざわざ見にきてくださって嬉しいですよ。」 そこにいたのはゼロスだった。 「こ、こんにちはメタリオムさん。」 慌て挨拶するリナに、ゼロスはにこやかに微笑んで言う。 「ゼロス、でいいですよ。それにしてもリナさんは今日もお美しい。」 相変らずのうわついた言葉にリナは少し引き、また、ガウリイは呆れるが、ゼロスはそれにかまわず続けた。 「いや、突然声をかけてすみません。こちらの方が像のほうに手を伸ばされていたようなので。」 ゼロスは“こちらの方”、と言った時にガウリイを目線で示し、リナにそういった。 「あ…申し訳ない。」 ガウリイは軽く頭をかきながら謝った。 ゼロスは微笑を崩さず、ガウリイの顔の前で手を振りつつ言った。 「いえいえ。そういうことではないんです。」 「?どういうことですの?」 リナはゼロスに尋ねた。 それに対し、ゼロスはさらに微笑を深くして言った。 「その像の周りにはですね、目には見えませんが、上下方向に赤外線が張ってあるんです。それでですね、もしそれに触れてしまうと、ものすごい勢いでブザーが鳴り、警備員も寄って来ると、こういう訳なんです。ついでに言うと、重量のセンサーもついていて、もし赤外線を超えて像に触れたとしても、持ち上げたとたんにやはりブザーが鳴りますね。」 二人は目を丸くする。 「リナさんのお家からお借りした大事なものですからね。警備は万全ですよ。」 ゼロスはにっこり笑って続けた。 「それではリナさん、楽しんでいってくださいね。僕はこれで失礼します。お父様にもよろしくお伝えください。」 固まっている二人を尻目に、ゼロスは飄々と去っていく。 「……ご、ごきげんよお…。」 リナはそれをいうのが精一杯だった。 …そして冒頭に戻るというわけである。 「あれじゃあ、仮に上手く忍び込めたとしてもどうにもならないじゃないか…。」 「…うう…。」 二人は今再びもとの公園のベンチに戻ってきていた。 二人並んで腰掛け、仲良く頭を抱えている。 「なあ、やっぱり諦めたらどうなんだ?…どんな事情があるか知らないけどさ、ド級の犯罪者になるよりましだろ?」 諦めたら諦めたで犯罪者の娘って事になるんだい、と、リナは心の中で呟くが、それは言葉に出さずにこうとだけいう。 「嫌。」 「………。」 ガウリイは溜息をつく。 二人はしばらく口を利かずにベンチに座り込んでいた。 相変らず噴水はまぶしい。 カップルも楽しそうだ。 子供も元気がいい。 「…………。」 ふ、と、ガウリイが顔をあげた。 リナは、え?と思ってガウリイの方を向く。 するとガウリイは、やおら近くの子供たちのグループの方に近づいていった。 そこでは数人の男の子がおもちゃのブーメランを使って遊んでいた。 ガウリイはそのうちの一人に近づくと、にっこり笑ってこういった。 「楽しそうだなあ。俺にもやらせてくれないか?」 男の子は一瞬びっくりしたような顔をするが(そら、いきなりでかいスーツ姿の男が近づいて来たらびっくりするわな…)、にやっと笑ってガウリイに言った。 「いいよ。ほら、貸してやるよ。」 「お、さんきゅー。」 ガウリイはにかっと笑ってブーメランを受け取り、そのまま宙に向かって投げた。 しかし手元に戻ってくるはずのそれは、ガウリイからだいぶ外れたところに落ちた。 「あれ?おっかしいなあ…。」 ガウリイは頭をぽりぽりとかきながら言った。 「オッサン、ヘッタクソだなあ。」 少年は腰に手を当てて呆れたように言い、駆け足でブーメランを拾いにいく。 「お、おっさん…。」 どうやらガウリイはへたくそという言葉よりも、オッサン扱いされたことがショックだったようである。 そんなことにはかまいもせずに、少年はブーメランを拾ってからガウリイに向かってこう言った。 「こうやるんだよ!そぉれっ!!」 少年は、勢いよくブーメランを投げた。 それはガウリイが投げたときよりもずっと遠くに、そしてずっと綺麗なアーチを描いて少年の手元に戻ってきた。 「…どうだい?」 「へえぇ〜!すっげえなあ〜!だいぶ練習したんだろ?」 ガウリイは感嘆の声をあげる。 「へっへー。まーねー。」 少年はかなり得意げだ。 「なあもう一回やらせてくれよ。」 「えー。何度やっても無駄じゃねえの?」 ガウリイと少年の二人はそのままブーメランを何度か投げあった。 一方、それをずっと傍で見てきたリナはそろそろ限界であった。 「ちょっとガウリイ!!」 仁王立ちで大きな声でガウリイに向かって叫ぶ。 ガウリイと、それにつられた少年はそろってリナのほうを向き、その閻魔顔を見た。 「おっさん…戻った方がいいんじゃねえか?駄目だぜ〜。可愛い彼女をほっといてこんなことしてちゃあ。」 「……は、はは…じゃあな、ぼうず。ありがとな。」 ガウリイは少年の言葉はとりあえず聞き流し、リナのほうに戻っていった。 「あんたねえ!何してんのよ一体!」 完全にご立腹のリナに、こめかみに冷や汗をたらしながらガウリイは告げる。 「ま、まあ落ち着けよ、リナ。」 「あーのーねーっっっ!!!」 「…あのな、もしかしたら何とかいけるかもしれないぞ?」 「…ほへ?」 なんだか笑顔のガウリイに、リナは間抜けな呟きを返した。 続く |