◆−闇龍王――祈――−颪月夜ハイドラント (2003/4/12 21:54:46) No.13971 ┣闇龍王――唱――−颪月夜ハイドラント (2003/4/18 18:20:35) No.14013 ┣闇龍王――辿――−颪月夜ハイドラント (2003/4/23 21:51:09) No.14081 ┗闇龍王――決――−颪月夜ハイドラント (2003/4/23 21:54:44) No.14082
13971 | 闇龍王――祈―― | 颪月夜ハイドラント | 2003/4/12 21:54:46 |
私は紡がなければならない。 この物語を、 未来を知るあなたのために、 紡がなければならない。 それが救いへの標となるのだから・・・。 ――序の章―― ――祈―― 「ああ吾等に救いを ああ吾等に祝福を ああ吾等に永遠を」 静かだ。世界は沈黙している。 光はすでに鬱陶しいのみで、過去に感じた神々しさなど欠片すらも残っていない。 絶望が、そんな名をした悪魔が祭壇を駆け昇って来る。音もなく・・・主に祝福を受けたものの――そう思しきものの――背へ忍び寄って来る。姿はない。 それに彼は気付いてはいた。だが振り払いはしない。 闇の軍勢を退けることは出来ない。主が祈りを聞き入れない限りは・・・。 繰り返した。祈りの言葉を・・・。 だが生まれるのは焦りだけだ。何の意味もない杞憂。 世界の巡りは速くはない。 だが止まらない焦り。偽りにも等しい焦り。 今でなくても近いのは確かだ。闇が、焔が、覆う日は・・・。だがどうでも良いと心の一部が思っている。それすらも焦りだ。 「司教様〜。」 だが張り詰めた心は瞬間にして弾け飛んだ。 それでも緩んだ中で祈りを続ける。空回りに過ぎなかったが・・・。 「司教様!」 声は確かに先ほどよりも明白となった。 それでも彼は続ける。無意味な祈りを・・・。 「司教様♪」 だが不意に呼吸が詰まる。強烈な圧迫感が押し寄せて来た。 「・・・ははは、来てたのか柘榴(ザクロ)。」 締め付けられている首を捻って、背後に引き攣り笑いを浴びせる。 蒼の双眸に映っていたのは1人の少女。歳は15ほどでなかろうか。 光沢の強い栗色の髪をうなじ辺りまで伸ばしている。白い肌にはその真紅に近い瞳が不思議と釣り合う。未成熟ながら確かな美少女だった。その質素な白布の衣を美しいドレスにでも着替えれば一国の美姫にも並ぶであろうほどに・・・。 「うん。司教様いつも遅いし・・・。」 声は少女のものであるが、無邪気さの中に言いようもない魅力が混ざっている。蠱惑か? 「そうか。でも後から襲うのはよくないな。」 「でも・・・私と司教様の仲じゃない・・・」 平静としている彼、熱を浮かべ俯く少女。そんな構図だった。それは2人、闇へと堕ちていくが如し。 だが、 「君と僕の仲でいけば、せめて神殿の外で500ミスレル以内のお弁当を持って12分以内の時間を待っているくらいが精一杯だと思うし、僕としてはそれでも充分いき過ぎていると思うけど、君はどうだい?」 彼の声がそれを冷ます。 「・・・でも・・・私は司教様のそんなとこが・・・好き。」 だがそれにより少女にさらなる熱の大河が走った。 「そうだよね。やっぱり聖職者って良いだろ。でも僕はそれでも威張らない。無能な老人とは違うのさ。ほら、僕ってホントに凄いだろ。」 少女はそっと頷いた。 「じゃあ分かったらその手を離してよ。僕がこんなにあっさり死んじゃったら世界に申し訳が立たない。」 そして振り解き歩き出す。 少女はただ祭壇で震えていた。闇の欲望にも限りなく近いものに・・・。 だが彼は気付かず闇の差す方へ歩き続ける。 (馬鹿な娘だ。この僕と結ばれるわけがないのに・・・。) 見上げれば無限の闇。 絶望を包む不変の闇。 地上の微かな明かりのみの暗き世界だ。 どんなに笑った人々もその下では澱んで見える。 ましてや真の絶望が至ろうとするこの国ではなおさらだ。 (主に祈っても仕方がない・・・か。) 彼、海鼠腸(コノワタ)・カムシーンは1人心に叫び掛ける。 虚無感と疲労が力を増して襲い掛かってくるが、それでも一刀にして振り払った。 再び天を仰いだ。 彼が生まれた時から暗い世界。 だがそれでも幸せであれば良いだろう。 (酒場でも寄るか。) 自らに言い聞かす。それを真には望まぬかのように・・・。 風向きが変わった。 だが世界は変わらず同じ色を見せている。 静か過ぎる。行き交う人々は多いというのに・・・。 次は空ではなく地の果てを見詰めた。 堅牢な石の境界線。世界の果てだ。 それが逃がした絶望を弾き返す。 そして次は蒼き瞳を旋回させる。 見上げたのは巨大なる尖塔。そして地へ連なる巨大な権力の写し身。領主の城館。 唾を吐き捨て、再び正面へ視界を戻した。 漆黒の聖服を惹き立てる、黒き短髪に優しげな風貌を持つ痩身の男。歳は20。 彼の碧眼には神々しさのみしかなかった。 そこは甘い静寂に包まれている。 幸せでも不幸せでもない。絶望も希望もない。 快楽と忘却だけでしかない。くだらない世界。だが至悦の世界であろう。 暗い色の木の板に両手を付いて、 「適当に頼む。」 呟いて天井を眺めた。白の吐息が掻き消されて、黄金の明かりが見えてきた。暗い。 カウンターが微かに揺れた。小さな衝撃が彼の腕まで伝わって来る。静かに震源に指を伸ばした。 冷気が身体まで昇って来る。 吐息を吐き出すと、力を振り絞り、口元に寄せた。 不安定な支えのために揺れる紫の鏡面を夢心地に見詰めていたが、やがて息を吹きかけ、波立たせた。 無邪気に笑うと、瞬間に疲れた表情が露となり、そして液体が口元を濡らし始めて、それは至福の笑顔に変わっていった。 遅れて快楽が奔流し始める。それを拒まず、身にいき渡らせ、そして絶頂に達し、息を張り上げた。 「ううん。美味しいね。」 そして正面に顔を向けて言葉を放った瞬間に、他方では金属の音が鳴響き、世界中に波紋がいき渡る。静かだが印象的過ぎた。 「ここにいたか。」 そして遅れて掛かった声に、彼は背を震わせ、脅えつつ、そっと入り口の方を見やった。 「・・・雲丹(ウニ)?」 湖の如き双眸に映るのは、痩身ながら強さを秘めた肉体。黒の長髪に、裸体を一部晒した黒金の鎧。蒼き瞳は鋭く、美しさに冷たさを足している。25ほどの気高く美しい戦士の姿だ。 「あたしもいるわ。」 甘い声が届いた瞬間、見る男の背の外の闇から飛び出して来たのは紛れもない美女。 「唐墨(カラスミ)・・・だよね。」 煌く薄地の赤きドレスに、長く伸びた鮮やかな赤毛、痩せてはいるが丸みをやや帯びて、潤んだ碧眼と燃えるような唇に純白の肌は妖しげな魅力を匂わせている。歳は男と大差はあるまい。 前の男は静かに、後の女は弾みつつに、それぞれ彼の両隣へと素早く移動した。そしてすかさず思い思いの酒を注文する。 そしてしばし経って静寂が来れば、 「恋人まで連れて僕のこんなところに何の用だい?」 彼は素早く切り出した。右側に座る男へ向けて・・・。 「お前に会いに来た。」 「こんな僕ぐらいにならないとなかなか入れない高級バーに傭兵如きが?」 流れるような声で――だがそれでも侮蔑を含まずに漏らしたが、 「如きとは言ってくれるな、国王の依頼をも引き受けたことのある俺に・・・」 「過去の栄光。今は貧乏。」 「ケンカを売る気か?」 2度の刃にさすがに怒りを覚えた傭兵は、彼に向けて睨みを掛けた。 「ごめん。ついストレスが溜まってて・・・」 視界を避けつつ、再びグラスを掴んで、酒を喉に追いやった。 「退屈な仕事ばかりだからだろ。」 「まあそうだね。祈祷と説法と治療と魔法の教師、そして立場のせいで残業して祈るはめになる。毎日これだけしかもその繰り返し・・・。」 そして盛大に溜息をカウンターへ放つ。 「ねえ、さっきからあたし無視されてない?」 だがそこで、初めて左方向より声が掛かり、疲れを再び蘇らすはめとなった。 「・・・ごめん。」 だがそれも微々たるもの、笑顔を掛けると女もそれを返し、 「良いのよ。」 優しく言った。それだけだ。 「ところで退屈なら良い仕事があるが・・・。」 聞いて首を反対に向ければ、希望の差す光を少しは感じられた。 「何だ。・・・また成果の全くない冒険に付き合えっていうのかい?」 呆れた時のように口調はやや強かったが、それでも表情に嫌気は混じってはない。 「全くない・・・か。今までどれだけの財宝を手にしたと言うんだ?」 相手の男にも疲れが浮き立っている。 だがそれは彼の気にすることではない。 「この前、確かに黝い廃墟の最下層で破壊の女神像を手に入れたけど、換金出来なかったし、仮にお金になったとしても頭数で割れば司教の地位にいる僕には微々たるものでしかないじゃないか。司教の仕事抜けるのも最近大変になって来たし、それに彼女に何度も逆セクハラされたし・・・。全く、禁断の地に1人でいく方がまだマシだよ。」 そして素早くかぶりを振って女を睨む。 彼女は首を顰め、覗き上げるように、 「だってあなたって素的じゃなぁい?」 甘い吐息とともに声を放った。だが彼は冷静を崩さず、 「僕が好きなシチュエーションは、幼馴染で1個くらい上で、いつもは威張ってるけど、実は両親早くに亡くしてて密かに泣いてて、それで優しいお兄さんがいて、それが僕にも優しくて、いっぱい収入あって・・・でも実は悪どいことやってていずれ僕達の目の前で悪役の凶悪な魔法を受けてやられちゃうんだけど、その時、『妹を護ってやってくれ』とか言われて、僕は潜在能力を引き出してもの凄い魔法で悪役撃退して、脅えていた彼女を抱き締めて、そして・・・って、とにかくそんな感じだよ。」 長々しくそして活き活きとして語り始め、両脇に呆れた溜息が吐くのも無視して連ねた。 「馬鹿かお前は・・・」 男の疲れに満ちた声が上がるが、 「そうだな。万が一だけど僕は馬鹿な可能性がある。本当に万が一だけどね。」 「そうか・・・。」 嬉々とした声になお堕落させられ酒を煽る。 「ところで、良い仕事って何のことかな?」 そこで彼は不意にそれを漏らした。 男は一瞬に詰まってはいたが、 「それか・・・シャーブラが攻め込んで来てるのは知ってるだろ。」 それでも饒舌に吐き出すように言った。 「ああ・・・いつも平和を祈ってるよ。」 それにより曇る空気を捉えつつ、彼は敢えて笑みを浮かべた。 「それでな、知ってることかも知れないが、防衛庁は魔道士を必要としているらしい。それも一級戦闘魔道士を越えるようなもの凄い魔道士をな。」 「初めて聞いたな。全く地上最強の魔道士は僕だっていうのに情報が来ないなんて・・・。」 だが次の瞬間には怒りすらも彼は持っていた。 「今から連絡するのも俺には可能だ。名のある魔道士はすでに何人も密かに召集掛かってるが合格してやつはいないらしい。実際計画中止が決定され掛けているらしいが、お前もやってみるか?」 「もちろんやるよ。・・・よろしくウニ。」 「そうだな。今日はお前のおごりだな。」 そこで一時、世界を静寂が占めた。 静かだ。人気も消え始める刻。 空の暗さだけは変わらない。 「1時・・・か。」 呟きすら闇に反映され、冷たく暗い。 「始発が3時発だから2時間しか寝れない。」 過去の輝きが蘇って消える。彼はさらに沈んでいた。 「・・・1日が13時間あったら良いのになあ。」 何度呟いたかも知れぬ言葉だった。だが懐かしみでなく疲れを覚える。 歩は緩慢だったが確実に安らぎの元へ向かっている。領主の城を時折睨みつつ・・・。 「まっ退屈な仕事から解放されるし良いや。」 言い聞かせて、そして歩みを速めた。 厳粛な中。清き中に静けさだけが歌っている。 身体はひどく重かった。枷に縛められたかのように、離れられない。 心地良さはそれでもあった。現実と非現実の狭間に横たわっている。 扉はどちらも開かない。だがそれが幸せとも言えよう。 彼は永遠を感じていた。一時だけの儚き虚栄の永遠を・・・。 笑顔さえも密かに浮かべていた。それでも苦しみがないわけでない。幸せの境地にも変わりはないが・・・。 それでも変動は一瞬だった。 光が差す。それも邪悪で眩い光だ。 すべての眠気が不思議と虚空へ吸い込まれてゆく。 そして刃が移ろう。そんな危機感。 そして一瞬の静かな悲鳴が彼を狭間から流し出した。 飛び上がる。現実感に薄れた世界だ。 暗い闇が蒼の世界を映し出している。 柔らかい布団から半ば抜け出している。下半身も重みに縛られているが、脱出は容易いであろう。 思う通りに素早く起き上がると、すべての脅えを断ち切って第一歩を踏み出した。 彼の住居は神殿内。服は聖服のままであった。 光が今も満ちている。偽りの魔力の明かりであるが、それでも薫る神々しさを否定は消して彼には出来ない。 導かれるように、それが隠れた意志であったように、絶えず紡がれる運命は彼を祭壇へ歩ませた。 だが彼は覚醒を終えていた。生気と眠気が証明している。 だが冷や水を浴びた直後のように不可解であった。すでに絶望した神の元へと赴くのは・・・。 そして光はすべて偽りと真に興醒めした。 だがその感情は今一時だけ・・・。 瞬間に違う流れをそこに感じた。驚愕に脅えが昇って来る。 黄金の輝きのその中央に不可解なほどのさらなる光。 気が流れている。それも激しい。 脅えていた。震えていた。 それが終わるのを待っていた。 終わりが訪れることはなかったが、どこかでその意志は風の向こうを覗こうとしていた。 映るのは・・・ 「なぜだ?」 恐怖に包まれた彼は嗚咽にも近い声を出した。 笑顔が最初に見えた。無邪気な汚れのない笑顔だ。 だが姿はそれに反して、邪悪であろう。赤子のような姿でありながら頭部には2本の鋭利な角。背には蝙蝠を思わす翼。 そして禍々しきほどの黄金色の全身を持つその姿はまさしく・・・魔のものでしかないと自ら告げていた。 笑顔は明らかに彼に向けられている。 燃え滾る何かが込み上げてくる。 「ふざけるな!」 無意識の内に叫んでいた。恐怖を振り払う剣であるとともに、怒りと・・・嫌悪でもあった。 そしてそれは焔を灯すだけでなく意識を鮮明なものとし・・・ 「不浄の悪魔よ燃え尽きろ!!」 魔法の構成を可としていた。 瞬間に体内に秘められていた魔力が形を持って出でる。 彼の心が具現化されたかのような赤黒き焔が迸った。それが彼の放った魔法であった。 大河の如く大地を蹂躙し、それでも燃え跡を残すこともなく祭壇を侵す悪魔へ向けて進撃を始めた。 迅速であった。焔は邪龍の如く悪魔を喰らった。 だが燃える中でその悪魔は・・・笑っていた。 嘲笑っていた。 蔑んでいた。 それが怒りとともに不安を掻き立てる。 「不浄の悪魔よ・・・燃え尽きろ、燃え尽きろっ!!」 それにより何度も彼は焔を生み出す。 やがてなおおぞましき姿となっていって悪魔は崩れ去った。 灰は残らず悪魔がいた位置には何の跡も残っていなかった。 だが恐怖が消えた跡に安堵が来ない。 笑みが聴こえた。悪魔の嘲笑だ。残滓だ。 その幻聴を打ち消そうしたが、怒りが篭るだけであった。 (なぜだ!?) 静かに主に彼は問い掛けた。 ◇◆☆◇◆◇◆☆◇◆◇◆☆◇◆◇◆☆◇◆ 後書き こんばんはラントです。 やっと投稿出来ました。 続くか心配なため控えていたのですけど・・・。 この話、説明足らずな部分があるかも知れません。 それで用語集を作成いたしました。 ただ、それはこれ以降に登場する単語も多く含んでいますので、後ほど公開致します。 それまでは、まあ適当によろしくお願い致します(待て) それでは・・・。 |
14013 | 闇龍王――唱―― | 颪月夜ハイドラント | 2003/4/18 18:20:35 |
記事番号13971へのコメント ――唱―― そして心の呟きがさらに力を奪っていった。 だが馬車の躍動が再び耳に入って・・・意識がもう一段階覚醒した。 (いや僕は凄いんだ。世界が悪いのも僕への嫉妬に違いないさ。) そして無理矢理にも言い聞かす。強さが宿った。 拳を静かに握り締めた。だが刺すような視線を受けすぐにそれは憚られる。 それでも確かに彼の瞳に輝きを灯していた。 だがそこで『夢』が思い出された。 嘲笑う悪魔の・・・。 祭壇が汚されるはずがない。そうあれは『夢』だと信じた。 だが不安は襲い掛かって来る。 しかしそれでも、 (絶対大丈夫だ。僕は天才なんだから。) 奮起し打ち消した。 ラグラディア王国。 常識同然な話だが、王室と、国の宗教体系をそのまま反映させたという3大機関。防衛庁、神殿、貴族議会の各本部が位置する王都カタート。 そして彼はその都にいた。 空の照度はやはり変わっていないが、彼の目は随分、都の放つ光だけの世界に慣れていた。 防衛庁は周りを用途の知れぬ巨大建造物に囲まれている。だがそのすべてを足しても眼前の巨体には敵わないだろう。 それは巨大だった。見上げる顔に感嘆が生まれる。 「さっ早くいきましょう。魔道士殿。」 だが使いの老人の声にその感情が遮られ、小さな憤慨が浮かんで来た。 それでも歩み出す。 怒りはやがて振り払えたが、代わりに生まれ出でたのは緊張感。 (大丈夫だ。) 言い聞かせて心を落ち着かせ、防衛庁本部の敷地を進んでいった。 「連絡は届いておるよ。君がコノワタ・カムシーンかね。」 静寂の湛えられている世界。すべての沈黙は重い。 「・・・はい。司教の海鼠腸・カムシーンです・・・長官殿。」 だがその重さなど彼に感じられたものではない。震えつつも、意識的な笑顔すら半ば浮かんでいた。 「・・・随分緊張しているようだね。司教のコノワタ・カムシーン。」 赤絨毯の大地。白亜の石壁。いくつかの柱が立つ他は、ただ広い空間だった。 そして彼に見えているのはその正面のみ。余分としか言いようがないだろう。 そしてその正面に映るのは、 「まあ楽にしたまえ。」 白髭を印象付けた白髪の、それでも美しい男。体格は緩やかな白衣を纏っており把握出来ないが恐らく頑強な肉体であろうと、そう思わせる老いた男の姿。 「いえ司教の僕は大丈夫です。」 緩やかな声に対し、彼はそう答えたが、それでも震えは止まらない。 無数の妄想が駆け巡る。闇が、光が、生まれて消える。 「そうか・・・まあとにかく話を始めよう。」 空間には数人の兵がいるものの、それは虚無に等しい。 「シャーブラ国が攻めて来るのは知っておるだろう。」 そこでその男の表情が張り詰め出した。それに空気が反映し重みを増す。 「・・・ええ司教ですから。」 だが圧し掛かる虚空に反撃するが如く、彼はさらに笑顔を浮かべていた。完全な逆転。 「そうだな。・・・強国であるシャーブラ国に我々が敵うとは思えん。」 「それで司教である僕の力が何の役に立つと?」 深刻にも思える男に対し、彼はそれでも強く柔らかで鋭かった。 「実はシャーブラ国兵を殲滅する術はあるのだが・・・」 「それに司教である僕の力が必要ですと・・・」 食いつくが如き声であったが、それが彼の全感情ではない。男はすべて見取れているのか、それどころでないのか、さほど彼の口調を気にしてはいない。 「まあそうなるな。どちらかというと魔道士としてだが・・・」 微かに笑った。自嘲にも見えた。 ただやはり表情は昏い。そんな溜息を吐き出していた。 「それでその術というのは?」 いつしか空気の重さは、彼でなくに男に圧し掛かっている。 不意に男が俯くと、場に沈黙が流れた。 だが彼の視線は徐々に鋭さを増していく。 やがて静寂の糸が途切れると、 「魔方陣・・・知っておるだろう。」 固まった顔を男が上げた。 「ええ・・・ですが魔方陣にも種類が様々ですよね。」 沈黙の要求に従わず、彼はなお言葉を紡いだ。再び静かとなったが、 「・・・魔方陣で主を呼び出す。」 すぐに終わり、そして終わって吹雪が流れた。 彼を凍り付かせるために、凄まじい勢いを持って襲い掛かる。 だが笑っていた。 驚きつつも笑っていた。 「主を呼び出す。司教の僕が聞いても面白いですね。」 そして驚愕から解放されて、彼の心は快晴であった。 沈黙する男に向けて、防衛庁長官に向けて、 「司教であり天才魔道士である僕が主を呼び出し、絶対シャーブラの豚どもを蹴散らしてくれますよ。」 彼は強き声を高々と上げた。 「そうか・・・」 男は引き攣り顔であった。だがそれは今に生まれた感情によるものでなく、今露となった陰の感情と取れる。 「当然ですよ。僕はこれまで何度主に祈ってきたか分かりません。その祈った分に時間を全部返してもらわないといけませんからね。」 彼は、男の碧眼からとしては、邪悪にも見えていた。すべてを察知しているでなかろうか。 「それで具体的には何をすれば良いのでしょうか。」 それはさながら激流のよう。彼から男へと向かう流れだ。 受け止めるしかなく、流されるしかなく。 「・・・話は事務官にさせる。控え室で待っていてくれ。」 「・・・はい。」 彼は笑みを消して踵を返した。 (一体あの態度は何なんだ?) 疑問が浮かぶ。だがそれが果てしない闇に見えて、彼は恐ろしくもなった。 それを振り払う。疑問を捨てて、吐息を吐いた。 眼前の立派な木の扉をゆっくりと開き、薄闇の差す方へまた歩みを続けた。 (恐らく利口な男ではないな。) 後書 こんばんはラントです。 ほとんどオリジナルなこの話。懲りずに2話目投稿です。 最近読んだ小説 『アビシニアン』:古川日出男著 最高です。まさしく運命の書?小説書きさんにはややお奨め度アップな感じかも。 そして淡々としてて冷たい感じが、逆に良い。 書き出しの「10億年」・・・とかも良い。 でも読み返したいけど、どうも読めない。読みにくいわけでも読みたくないわけでもないんだけど、読み返したいけどどうも読めない。凄すぎるから。 欠点は短いことかな。 『ザ・キングオブファイターズ98――最大多数の最大幸福――』:嬉野秋彦著 タイトル違うかも・・・。 いやこのゲームやったことないんですけどね・・・。 書いてる作家さんが好きなのとジャンルがギャグなので買ったわけですけど・・・。 面白い。 『ぷよぷよSUN』の小説(入手困難)は今まで読んだ中では最強のギャグ小説だと個人的には思ってますけど、こちらもかなりかなり爆笑。 それでは読んでくださった方、おればどうもありがとうございます。 |
14081 | 闇龍王――辿―― | 颪月夜ハイドラント | 2003/4/23 21:51:09 |
記事番号13971へのコメント ――辿―― 正面の扉が鳴った。 心が晴れ出した。それは一種の安堵だったかも知れない。 赤い床に白い壁。中央に4つの椅子が集う上品な木製の円卓と、奥隅の背の高い 本棚のみが置かれているのみだ。卓には保温カップに入った茶があるのみで、それはほぼ飲み干されている。 白のカーテン越しに注ぐのは闇だけだ。 「ああ入って良いですよ。」 遅れて彼は億劫そうに答えた。それは露骨過ぎていたかも知れない。 「失礼します。」 風とともに影が生まれた。20過ぎほどの清楚な美貌を持つ女だ。 整った白の衣服を着込んでおり、白き腕には黒革のケースが提がっている。 「随分遅かったですね。」 一通り捉えた後、彼はそう発した。表面上は爽やかだ。 「・・・ええ、お待たせしてしまいました。」 言うと、女は扉を閉め、入り口側、つまりは彼と向かい合うように座った。ケースはすぐ床に置いた。 「いえ・・・僕は待つのには慣れてますから・・・。」 静かにそれでも快く答える。だが一瞬、邪悪な笑みが走っていた。 (企みがあるのか・・・) 思考の闇に意識が吸い込まれてゆく。 (・・・でも、長官のあの態度はそういうものとは・・・) 「あっ私は事務官の水瀬(ミナセ)・ウィッシュと申します。」 「僕は司教の海鼠腸・カムシーンと申します。」 言葉を交わらせた後、一時の間を置いて出た言葉に、 「それでまず試験という形で・・・」 「あっはい。」 内では水を浴びた如く驚いた。だがそれでも切り返す。 「そうなると、お話は?」 「その前に試験という形で・・・」 彼は女の表情に探りを入れてみた。 だが明鏡止水・・・動揺は見られない。 (・・・大変そうだな。) 内心、笑みを掛けるだけに終わった。 「ですが、僕には基本的な部分だけですが、内容を明かしてしまったのではないですか、僕がその任務に不採用であれば、秘密を守る必要はないでしょうし、口止めするというのは最初に試験をおこなっていたと考えれば無駄な出費にしかならないと僕は思います。いかがでしょう。」 だが沈黙を破った言葉の連なりは、確実に静かな動揺を誘っていた。彼は心で笑う。 それでも女は冷静に、 「公開した内容はそれほど重要なものではありません。と言っておきます。王室や他機関の上層部にも公開しましたが、反対の意見はありません。」 そして淡々と告げる。 (分からない・・・だけど賢明とは言えないな。) 「まあ良いよ。・・・では試験についてのお話を聞かせてくれないでしょうか。」 そして思考を断ち切る。溜息が昇った。 「・・・単純な試験です。形式にこだわる必要はないのでここで始めましょう。」 言うと女は、ケースを取り上げ、内部より、1つの透明な球体を取り出し、ケースを床に戻した。 表情に変化は見られない。 いつしか静寂の重さを彼は体感した。だが振り払う。 「魔力を魔法以外で放出、出来る力を量る装置・・・そうですよね。」 冷静な声を掛けた。 女は驚きを刹那的に浮かべたが、 「ええ。」 静かにそう答えるのみ。 そして球を卓に置いた。小さな音は大きく響いた。 「両手を触れてみてください。」 そう告げる。その瞬間に彼は微笑んで、 「大丈夫ですよ。この類は本で知っていますから・・・。」 白い手に滲み出す汗を感じつつ、それでも緊張を堪えて、冷静をものとし、 (大丈夫・・・僕は天才だ。) さらに言い聞かす。 球の冷気が伝わって来た。 だがそれも一瞬で、それは熱を持ち出した。 だが心はそれでも穏やかだ。 平常のままであり、柔らかな感情。 彼は意識を沈めていった。 完全な秩序に包まれていた心は容易く別世界へ溶け込んでいく。 そこは荒涼としていた。 虚無だがざわめきとともに風が吹き荒れていた。あまりに攻撃的とも思えたが、それはしばしの時に弱められた。 すると彼はなお残る気流を観察し、読み取っていく。 不規則に揺らめいているが、その中に1本の風の大河が流れていた。 その向こうには光が見えている。終着点が・・・。 しかし不意に不安と脅えが入り込んで来た。 それが世界を打ち破ろうとする。 境界が見える。闇が見える。 だがそれよりも早く彼は解き放った。 自らに眠る凄まじい魔力を・・・。 (見てろ・・・僕の才能を・・・) 輝く矢が走る。ただ一点へ向けて・・・。 彼はそれを笑った。 そして光へと矢が届いた瞬間に、閃光が激しく目を焼く。 それと同時に彼は元の世界への亀裂に飛び込んだ。意識は直後に現実を取り戻す。 だがそこにも光が溢れていた。 「どうですか?」 それが薄れていき、そして静寂の中に残ったのは1つの笑顔。彼の自慢げな笑顔だった。 「・・・・・・・。」 女はただ驚愕に包まれていた。 「なるほどな・・・やっぱり凄いな。」 静寂に満ちているその空間。 美女はいない。並んだ2人。もしやそこのみが喧騒なのかも知れない。 「どうだ。僕は天才だろ。」 彼の表情は幼きものの喜びと思えるほどに明白なものであった。さらに酒を含んでいく。 燃えるような色彩がなお強まった。 「ああ天才だ。」 男はそうして酒を口元へ運ぶ。だが声はどこか冷たい。 だが彼は気にせずに、 「そうさ。僕は世界一だ。誰にも負けない。」 立ち上がり声をとどろかせた。 歓喜が流れ込み彼の五感を撃つ。 「あの・・・お客様・・・。」 「そうだ僕は凄いだろう。天才だ。いやもう僕は神様だ。どうだ参ったか皆ひれ伏せ〜!!」 世界が白く染まり、それがすべて彼を讃える。そう思えていた。 「悪いが、諦めてくれ。本気で酔ったあいつは止められんからな。」 世界から外れた彼を横目に、男はマスターへ呼び掛けた。 「・・・そっそうですか。」 弱気な声の向く方は微かに男をそれていた。 「ふははははははははっ愚民ども!!僕を讃えろ。僕を崇めろ。」 彼はすべてを気にせず叫び続ける。ただ恍惚で純粋な喜びに満ちていた。 「・・・今日の酔い方まともじゃないな。」 対照的に冷めた顔だ。すでに幾多の酒を飲んだであろうに・・・。 「まあ良いか。」 喧騒はやがて遠のいていった。 世界の夜は限りなく続く。 混沌が渦を巻くのみ。 それを誰もが受け入れる夜。 ただ風だけが冷たかった。 |
14082 | 闇龍王――決―― | 颪月夜ハイドラント | 2003/4/23 21:54:44 |
記事番号13971へのコメント ――決―― 「ックション!!」 変わらない闇空。 光は地にのみある。 凍れるほどの風が吹き付けた。それが温まった身を切り裂く。 2人は並んで歩いていた。 「全く・・・お前のせいで風邪ひいただろうが!」 男は怒鳴る彼に向かって、 「僕が悪い?ウニだって勝手に飲んで勝手に寝ただろ。しかも僕のおごりでさ。」 薄笑みで返す。 「お前が許可しただろうが!」 だが怒りは強まった。 「とにかく飲みすぎはいけないよ。これ以上文句言うとおごり取り消しだ。そもそも君は眠り癖があるからだめなんだよ。全く、不幸だね。」 「・・・お前の癖よりよりはマシだ。」 だが寒気と彼の言葉がやがて冷ました。 そこでしばし沈黙が続く。 だが、それは不意に途切れた。 「で、明日はどこで飲むんだ?」 「・・・もう2時だから明日じゃなくて今日じゃないの?」 彼は返したが男はそれを気にも留めず、 「今日のところか、いつものところか、それともまた違う場所にいくのか?」 素早く訊ねた。 すると彼は笑顔を孕み、 「いつものところにするよ。・・・ファンが集まってそうだからね。」 瞳を輝かせて答えた。眠気などまるで感じさせない。 風が吹き抜ける。男は震えるが、彼は平然としていた。 「そうか・・・なら俺は帰るぞ。」 そして男は彼の軌道よりそれ始めた。 「じゃあね。夜に会おう。」 「ああ。」 そして孤独が襲い掛かったが、彼はそれでも平然としていた。 だが、それも歩む内に薄れ、 (・・・後一週間か・・・) 独り虚空に言葉を向けた。空気が震えることはないものの、それは彼には深く浸透した。 だがそれでも止まらず歩き続ける。 大通りであったが人気は少ない。 風も耳を澄ませば哀しげだ。 不意に立ち止まる。 巨大な十字路。そこに気配が1つ。それは背後に・・・。 「誰だ!」 素早く振り向く。その表情に笑顔はない。 刃の如き鋭さを秘めた眼光。 「っ!」 それにより少女の息が逆流した。 「・・・・・・・。」 沈黙し、心を整える。 そして言葉を紡ぎ上げて、 「・・・ザクロ。」 静かに名を呼んだ。 だがその少女は答えない。 「・・・何でこんな夜中に・・・」 口調が強まる。そして少女の表情が曇っていく。 今にも雨を降らすようだ。それに気付き彼は少女を見下ろし笑顔を浮かべた。 「・・・もしかして僕に会いたかったの?」 ほのかだが明るく、優しき心の明かりを・・・。 少女は沈黙の後、小さく軽く頷いた。 そして顔を上げて、彼の碧眼を見詰める。 慈愛に満ちた小さき湖。宝石の如く煌いていた。それは心の光を反射して・・・。 「だめだよ・・・天才魔道士かつ司教の僕と違って君は、か弱いんだ。君が悪い人に変なことされたりしたら僕は凄く哀しむと思うよ。僕の気持ち考えたことある?」 優しく説いていく。そんな言葉を・・・。 「・・・うん。」 美しき少女は頷いた。 「分かったら・・・早くお家に帰るんだ。」 そしてその腕を這わせていった。 空を切りそれは彼女の頭部をそっと撫でた。 だが少女は細き腕で彼の腕を掴む。 「・・・泊まらせて・・・」 闇に反映されたが如く声は儚げに呟いた。 「だめだよ。・・・お父さんやお母さんが心配してるよ。」 彼は笑顔を変えず、それでも微かな哀しみを混ぜてみる。 「嫌・・・私、司教様と寝たい。」 だが少女はすでに熱に侵されている。 「だめ・・・それはだめだよ?」 それに気付きすぐさま覚醒した笑顔に変更した。 だが変わらず、 「・・・何で?」 甘くも聞こえる声を返す。 それに彼は一息の後、 「・・・あのね、僕は聖職者だからそんなことしたらだめなんだよ。」 哀願にも思える声を浴びせた。 「じゃあ聖職者辞めて」 だが返って来る言葉は、彼の心を激しく打ちつけた。 沈黙が走る。それは重い。 天は暗い。変わらず暗い。 だが街の明かりは希薄で、そしてそれ以上に心は無明。 その重さは少女にも浸透した。 朝のない世界でもそこは明らかな夜。 「・・・何か・・・悪いこと・・・言ったかな。」 静止する彼に向けた言葉。届かないほど儚く思えたが、それが彼を氷解させて、 「・・・ごめん、それだけは無理なんだよ。」 言葉を発させた。 だがそれが真に沈黙を生んだ。 見詰め合う。それでも熱はなく。むしろ冷たい。 「・・・・・・・。」 「・・・・・・・。」 吐息だけが昇って消える。 それが続くが・・・突如覚醒する心。 「ごめん・・・僕もう帰らないと・・・」 すべてを縛る時を思い出し、彼は言葉を漏らした。それはどこか震えていた。 「・・・じゃあね。」 そして少女の声は小さかった。 「うん。じゃあまた。」 「また明日よ。」 だが最後にはともに輝きを取り戻し、来ない暁の中、別れて歩き出す。 (そーいえばあの娘、どこの娘なのかな?) そんな疑問も浮かんだが、それでも忘れ歩き続けた。 目覚め、祈祷、説法、怪我人病人の治療、魔法の教育、そして酒を飲み眠る。たまに書類の整理などがあるのみで、司教は楽な仕事ではない。 楽しい出来ごとも待っていたはが、結局はその繰り返し。 単調な輪廻がやがて積り、 (・・・ふういよいよ明日か・・・。) ついに訪れた日の前の夜。 独り寝台に座り、天井を眺める。明かりはない。 深い闇がある。だがそれは光よりも輝かしい。 『司教様・・・がんばってください。』 『応援しています。』 『私達に平和をください。』 浮かぶのは神官達の言葉。 高揚感で溢れていく。 同時に生まれる負の感情を打ち消しつつだが・・・。 それでも彼は笑っていた。 緊張感も笑みで吹き消した。 いつしか彼は眠りについた。 むしろ安堵に包まれて・・・。 闇の中。静か過ぎる空間。 時刻は4時半。事実1時間ほどしか眠っていない。 だがそれでも冷めた顔で空を見詰めている。 石造りの世界に人通りは皆無ではないもののさほど多いとは言えない時刻、彼は神殿前のベンチに1人座っていた。 闇に白息が混ざる。それを視線で追った。 だがすぐに消え去る。視界は虚空。闇空が見えた。変わらない絶望感。 寒気が走った。だがそれすらも受け入れた。 しかし震えは心地良くはない。 (僕がまさか・・・) そう彼は緊張感に襲われていた。 脅えにも近いであろう。 だが今もまたそれを振り払った。 そして消え去る。安堵の溜息を漏らした。 その時、大地が鳴り、空が震えた。 そして闇を切り裂くように現れた光を戴く一台の馬車。 彼は静かに立ち上がり、そして一歩を踏み出す。だがその瞬間。 「司教様〜」 声が響いた。 それに振り向く。そこに映ったのは少女の姿。そして背後に連なる男。 「・・・ザクロっ!・・・ウニっ!!」 それを捉え彼の瞳にそして表情に笑顔が浮かんだ。 「いくんだろ・・・今から。」 「がんばって司教様。」 そして届く声にそれらを強まらせ、 「ああ僕は救世主になって来る。・・・じゃあね。」 そして振り向き馬車へと乗り込んだ。 (さようなら・・・にならなきゃ良いけどね。) そして浮かんだ言葉を彼は笑った。 だが闇の種はすでに彼に・・・。 不安という名の種は・・・。 ◇◆☆◇◆◇◆☆◇◆◇◆☆◇◆◇◆☆◇◆ 続きはHPで・・・。 それにしても読んでくださる方おられるのだろうか・・・。 それでは後書のネタもないので失礼致します。(ここにHPアドレス密かに載せようかとも思いましたけど完成度から見て却下) |