◆−獣達の恋愛日記(ゼラゼロ)−颪月夜ハイドラント (2003/4/17 15:37:09) No.14001
 ┣混沌−颪月夜ハイドラント (2003/4/17 15:38:30) No.14002
 ┣宇宙−颪月夜ハイドラント (2003/4/17 15:39:29) No.14003
 ┣涅槃−颪月夜ハイドラント (2003/4/17 15:41:32) No.14004
 ┗後書を先に読むのもまた良いのでは?−颪月夜ハイドラント (2003/4/17 15:47:27) No.14005


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14001獣達の恋愛日記(ゼラゼロ)颪月夜ハイドラント 2003/4/17 15:37:09


こんばんはラントです。
魔族カップリングだから場所変えようと思い、2に移動してみました。
逆にこれは迷惑かも知れませんけど・・・。

タイトルである通り、魔王シャブラニグドゥの腹心の1人獣王ゼラスとその部下である獣神官ゼロスの恋愛ものです。
まあツリーみれば分かりますけど3部構成。いきなり2番目や3番目から読んでみるのも案外良いかも?(多分、良くない可能性が高い。)

それでは・・・

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14002混沌颪月夜ハイドラント 2003/4/17 15:38:30
記事番号14001へのコメント

――混沌――

虚空に燦然と輝く太陽。
静かに、そして激しく、絶えず光を放ち続ける。
大地は白い。ただ白色で、途方もなく優しい。またはむなしい。
静寂の中、風だけが通う。
温かな午後。

『僕は彼女と2人歩いている。
平和な時間。安らぎの空間。
彼女の手は温かい。だけど僕は凍えている。
触れてはいけない。そのはず。
だけど彼女の手は温かい。
白い世界を2人歩いている。会話はない。
だが漂うのはけして寂しさじゃない。僕も彼女も平和と安らぎに包まれていた。違う、彼女は包まれていた。
僕は違う。僕は違うのだ。
彼女の優しさに、彼女の温かさに僕は包まれている。平和と安らぎに包まれた彼女に・・・。
それだけじゃない。
これだけは言えないこと。
そう僕は彼女が好きだ。大好きだ。愛している。だけど・・・叶わない。』

足音さえも幻のよう。
静かに陽光の下、歩き続ける2人。
時は流れる。無情に過ぎる。
だが永遠を信じるように、2人は歩き続ける。

『私は彼と2人歩いている。
平和な時間。安らぎの時間。
彼の手は冷たい。氷のよう。
だから私の熱で溶かしてあげたい。だけどそれさえ拒んでいるみたい。
会話はしない。必要がない。
私は彼と歩いている。充分。
だけど、満たされてはない。それは真実。だけど充分。
彼のことは分からない。哀しいけど分からない。
彼は優しい。それに従順。時々違うけど、本質は分からないけど・・・優しい。それに従順。
だけど、それが望みじゃない。
これだけは言えないこと。
私は彼が好き。大好き。愛したい。もっと愛したい。だけど・・・叶わない。』

沈黙が続いている。
動かない時はやはり永遠に見える。
だがそれは偽り。
焔が2人に燃え盛っている。
けして消えない魔性の焔。あるいは業火。

『僕は・・・』
『私は・・・』

身を苛む。告げられはしない。
焔は蝕む。焦らす。
だが沈黙。一見は穏やか。
錯覚は数多に可能。
だが沈黙の意味は2人にしか知れず、1人にしか知れず、そして誰も知らない。

『・・・獣王様が・・・』
『・・・ゼロスが・・・』

心の中までも沈黙に満たされていた。

輝きを増す太陽。
激しく強く、陽射しの勢いに拍車掛かっていく。
大地は白い。ただ白色でそれは無干渉。
温かな午後。
ただ表面的に温かな午後。

同じ情景が何度続いただろう。
どれだけ時を重ねたのだろう。
永遠が終わってまた永遠。偽りの永遠は果てしなく長く単発的に連続する。
背景の形など誰も見はしない。ただ陽射しをそこに感じた。
変化は常に、だが微量。
ゆえに、同じ情景が何度続いただろう。

2人の物語は果てしなく、それでいてむなしく始まった。
違う、数億年も数十億年前よりも始まっていた。原初より、すでに始まっていた。

結び付かず交差する想い。
それは混沌。


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14003宇宙颪月夜ハイドラント 2003/4/17 15:39:29
記事番号14001へのコメント

――宇宙――

世界に天幕が降りた。
同時に、静寂の重きが喧騒を遮らんと大地に迫っていく。
吹く風は冷気を孕んで、同時に感傷を掻き立てる。それが徐々に無機質になっていく。
やがてそれは夜と呼ばれた。
世界も自らも夜となった。
凍えるような闇は夜。それが夜だ。
だが、同時に、夢の扉が世界に開く。それも夜だ。
黄昏を越えた。2人は越えた。
鬱の地獄。寂しい煉獄。それを越えた。
夢の扉を求めて・・・。それを疑うこともなく。
現実の夜の夢は幻想。
ならば、彼らの夢は何であろうか。
むしろそれを求めてか・・・。
その比喩を解くためか・・・。

『1億年待った。10億年待った。
これからも待ち続けようと身体は言っている。
だけど僕は終わらせる。
今も彼女と2人きりでいる。
願うか?
違う。僕はいく。
これは決心ではない。未来の真実だ。
僕に虚偽はありえない。
だから・・・いく。』

時は絶えず流れる。
巨大な砂時計。すなわちやがて、いつかは終わる。
ソファに2人。背もたれは柔らか。
見詰めるのは正面。半透明の別の意味での夢の扉。安易な世界との融合物。
そのワインの水面が揺れていた。2人、さながら共振の如く。当然ながら甘い輝きまでも同じ。
だが見詰めるのは正面?それは偽装。
相違はない。視線は確実に両者に注がれている。1人は、2人は、誰もが気付かない。
その意味もまた・・・。

『ずっと待った。違う、待ったんじゃない。言葉では絶対に足りないくらい望んだことが確かにあった。
それは一本の槍。槍にしかなりえない。
そう槍。傷つける。彼を?私を?
だから噤んだ。永遠に・・・。
だけどそれは存在せずに終わった。
でもまだ続くと思う。私はまだ滅びを信じない。
待っても良い。流しても良い。
だけど、それは嫌。
熱い。興奮している。必死で隠している。
もう耐えられない。
だから終わらす。終わらない地獄を今終わらせる。
願えない。ありえない。
彼は来ない。
だから、私はいく。
これは決心じゃない。未来の真実。
私に虚偽は絶対にない。』

グラスを握る力を強めた。2人に同時にだ。偶然。
悲鳴を訴える。誰も咎めない。
偽りの夢の扉のその先には、闇。そしてそれを照らす夜の王――月。
今宵は金を含んでいる。祝福?
静かにグラスは宙を駆けた。
軌道は同様。そして対象。
やがて波は共振し、共振は伝わり合う。具現。
響き渡った音。逆巻くのは一瞬。
甘く苦い、夜が体内に吸い込まれていった。融合。

『今だ。今こそ。』
『今。絶対、今。』

酒を一口煽り、世界との融合の第一歩を踏み出して、それと同時に2人の鼓動は早まった。
急速に破裂しそうなほど・・・。
そんな中、向かい合う。必然。

『・・・・・。』
『・・・・・。』

初めは無言。
しかし、見詰め合う。狂気じみた交わり。
だが雄弁に見えて、それは不言。
何も伝わりはしなかった。
だが、

『・・・・・。』
『・・・・・。』

その沈黙を重ね。時間を掛けて心と葛藤し、やがて・・・

『・・・・・。』
『・・・・・。』

・・・・・。

『・・獣王様。』
『・・・・・。』

変動か?それとも啓示か?すべて物語の内なのか?
沈黙が終わる。それと同時に対象も消えた。
1人は解かれ。1人は閉ざされたまま。
崩れ落ちた。1つの終焉。
それが2人の夢の扉であろうか。

『・・・獣王様。』

だが1人は沈黙。閉ざされたまま。
だが解かれた1人はすでに違う。
飛翔、拍車が掛かっていく。

『・・・獣王様。僕は・・・あなたが好きです。大好きです。愛しています。
・・・獣王様。
いえ・・・ゼラス。』

1人は自らの言葉に震え。もう1人は、その言葉に赤面した。

『・・・ゼロス。』

優しい声。太陽のそれでなく、まさしく月。夜。夢。
また1人解かれた。もう1人に導かれるまま。

『・・・ゼロス。私は・・・あなたが好き。大好き。愛してる。
そしてゼロス。
・・・あなたに愛されたい。』

それより言葉は不要と化した。
会話しない。必要ない。
それは平和や安息に相応しいものではない。
そう沈黙は・・・。

『・・・・・。』
『・・・・・。』

2人は顔を寄せ合う。
互いの息遣いを鮮明に感じ、その中で接近の瞬間を探る。それは戦い。
沈黙。長すぎたが、時間の連続は意味を持たない。常に一瞬。刹那。
睨み合う。獣の如く。
2人の狼。毛並みは黄金と漆黒か?
譲らない。けして隙を見せはしない。
緊張だけが長さを体感。だが安堵もなく影響も希薄。
集中は尋常ではない。この世の終わりまでも続くが如し。
だが、

『・・・・・。』
『・・・・っ。』

亀裂が走った。
狼は無論それを見逃しはしない。
疾駆。大地を蹴るように・・・。
飛翔。天空へ至るように・・・。
情景などすでに見えていない。ただ相手、それだけを・・・。
光に包まれていく。そして・・・。

『・・・・・。』
『・・・・・。』

2人が口付け合う。
1人は腕をもう1人の背後へ回した。腕までも封じる。逃れられは出来ない鎖。
触れ合った真紅の果実は、濡れ出し、蜜を互いに別け合う。
浅い契り。だが深くなる。
焼けるほどの熱の中、唇はさらに強く交わりを見せた。
それがさらに永遠のように続き・・・。
1人はやがて生気を失った。
縛めを解く。1人は柔らかな地に墜ちた。
そしてその顔は1人の膝元へ・・・。
眠るものの、その金色の大河を細き腕は優しく撫でた。

『ゼラス・・・寝顔も可愛いですよ。』

永遠は移り変わる。
僅かな時にて・・・。

『ふふっ・・・ゆっくり眠ってください。』

想いは繋がり世界は形成された。
それは宇宙。


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14004涅槃颪月夜ハイドラント 2003/4/17 15:41:32
記事番号14001へのコメント

――涅槃――

『僕は彼女を・・・獣王様と、そう呼ぶ。
だけどそれは変な話だ。
僕と彼女は対等じゃないか。
少なくとも、僕と彼女の2人の間では。
でもそれが魔族。
魔族はいつから愛を捨てたのだろう。
あれから100億年の時が流れた。』

『私は彼を・・・ひどく叱る。
だけど、そんな私は私ではない。
彼は内で私を笑っている。
その矛盾を嘲笑っているはず。
だけど・・・それで良い。
それが彼。
そして私。
あれから100億年の時が流れた。
その今でも変わらない。』

空に燦然と輝く太陽。
静かに、そして激しく、絶えず光を放ち続ける。
大地は白い。ただ白色で、途方もなく優しい。またはむなしい。
静寂の中、風だけが通う。
温かな午後。

『・・・あの日と同じ。』
『・・・1つだけ違う。』

2人は歩いていた。
そこに会話はない。必要がない。
平和も安らぎも持っていて、心もすでに埋められているのだ。

『魔族が愛を捨てた今でも、僕らはけしてそれを捨てない。』
『だけど私達は生きている。それを尊厳だと思っているから・・・ねえゼロス。』
『・・・はい。ゼラス。』

2人は歩いていた。
笑顔で白き大地を・・・。
「ふふっ、あの2人、お似合いだね。」
「そうですね・・・フィブリゾ様。」
優しい視線。2人は気付かない。
やがて虚ろな(2人からは)凝視が終わって、
「僕らもああなりたいなよな。」
「・・なっ何言い出すんですかっ!!」
「ふふっ可愛いよ。・・・シェーラ。」
ここにも新たな種子が生まれる。

永遠に続け。
その2人に祝福あれ。
遥か涅槃の果てまでも・・・。

永遠に続け。
愛に生きるものに祝福あれ。
遥か涅槃の果てででも・・・。

ああ聖なるかな。

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14005後書を先に読むのもまた良いのでは?颪月夜ハイドラント 2003/4/17 15:47:27
記事番号14001へのコメント

――後書――

思ったのですが、涅槃→混沌→宇宙と読むとなお良いかも。(多分)
一度しか試せないので慎重に・・・。
ゼルアメ、ヴァルアメと何か暗かったので、今度は午後をイメージしたゼラゼロ話を書いてみました。(真ん中のやつは夜だけど)
分かりやすくはなったと(勝手に)思ってますけど、構成は今1つ。良作とも駄作とも言えるでしょうね私的には。
この2人の会話は事実、原作には出て来なかったですし、実はこんな関係だった、でも良いのではないでしょうか?ダメ?
後、――宇宙――での描写が微妙にヤバかったかも知れない。
ちなみに涅槃は仏教用語ですけど、あんまり関係ないです。「世界とともに滅びる時」感じかも知れませんし、違うのかも知れません。意味についてもあんまり気にすることは必要ないです。

さて、次はゼルリナかな?
ゼルリナで既作のムードは出せるか?
そしてガウリナ。これが一番難しそう。
ファンタジックなガウリナは書けるのか?
にしても短編で時間使いすぎてて良いのか?・・・本気で・・・。

それでは・・・。