◆−下る坂道−夜宵 吹雪 (2003/5/3 23:23:31) No.14149
 ┣下る坂道−夜宵 吹雪 (2003/5/4 12:12:24) No.14151
 ┃┗Re:面白い坂道(違?)−オロシ・ハイドラント (2003/5/4 15:50:45) No.14152
 ┃ ┗どっちかてーと下らない坂道?−夜宵 吹雪 (2003/5/4 17:15:25) No.14155
 ┣下る坂道−夜宵 吹雪 (2003/5/5 13:14:45) No.14159
 ┣下る坂道−夜宵 吹雪 (2003/5/6 18:42:39) No.14166
 ┣下る坂道−夜宵 吹雪 (2003/5/8 21:10:13) No.14185
 ┣下る坂道−夜宵 吹雪 (2003/5/18 17:41:27) No.14254
 ┗下る坂道−夜宵 吹雪 (2003/5/21 17:24:43) No.14285


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14149下る坂道夜宵 吹雪 E-mail 2003/5/3 23:23:31



 旅の吟遊詩人は詠う

 そこ行くお嬢さん、お兄さん方、私の歌を聞きますか?
 お代はもちろん、いりません
 どうか、この悲しく優しい出会いの物語を聞いてください


 ある時代の物語、世界は乱れていた

 偽善者は言う
 いつか、世の中は平和になる

 詐欺師は言う
 世の中は、平等に出来ている

 誰が決めたのか、わからないけれど、生きている
 誰が生んだのか、知らないけれど、生きている

 そんな少年の物語―――

 傷つき、傷つけられることに慣れてしまった、悲しい少年の物語

 ある時代、ある場所で起きた始まりの序曲
 そして物語は幕を開ける



あとがき
吹雪:えー、この話の別名は「アホか、私は物語」です(爆)
B:ええ、救いようの無いほど馬鹿ですね。投稿1での連載も終わってないと言うのに・・・・・・。
吹雪:あ、あいさつ遅れました。1の方でちょくちょく顔を出しております、夜宵吹雪です。今回、私のオリキャラの知られざる物語でも書こうかと。
B:そのために1の連載をストップしたら・・・・。どうなるかわかってますよね?わかってないのなら身体に刻み込んで差し上げますよ?
吹雪:はい、書きます書きます!!死んでも!!んでもって君を出す話を書きますよ!!
B:わかっているのならいいんです。あなたに気に入られてる割に、私の出番は、現在の連載小説が終わった後に書く予定ですし。かなり先になります。
吹雪:みゅー、理想と現実の差は激しい。
B:・・・・・・・・・・・・。それで?この詩みたいなのはなんですか?
吹雪:この下る坂道は、最初の方を詩みたいにしてみようかと。今回のは詩だけ。単なる手抜きではない!!
B:・・・・・・・・本当ですかね。まあ、しかしこの話の主人公、誰だか分かる人はいるんですかね?
吹雪:うーん、一応、登場してるけど。ってか私のオリキャラ、今のところ出てるの二人じゃん。多分分かるだろ。
B:まあ、暇つぶしに答えてくださいね。
吹雪:では、1での投稿も頑張りながら、次回で!

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14151下る坂道夜宵 吹雪 E-mail 2003/5/4 12:12:24
記事番号14149へのコメント


ある日ある場所で起きた物語
出会いはほんの些細な出来事

運命の歯車は回る

 第一話 出会いと始まり

「泥棒っ!!」
物騒な声が響き渡る。しかし問題はその後だ。
「それは俺の盗んだ物だ!」
この街は荒れていた。窃盗、殺人は当たり前で、孤児がうろつき、犬が残飯をあさり、盗みは日常茶飯事だった。
「よう、嬢ちゃん、いいねぇ。その服!!」
「俺たちさあ、見ての通り、食うのにも困ってるんだよ。」
「だからさぁ、恵まれないオレたちにご寄付を頼みたいんだよねぇ。」
何人かの男が、一人の少女にからんでいる。助けようとするものはいない、ここはそうゆう所だ。人より自分の事、それが当然だった。
少女は何も言わない。ただ口をつぐんだ。その顔に恐怖は無い。顔には呆れと軽蔑の表情が浮かんでいた。
「恵まれない?よく言う。人に恐喝する元気はあるのなら、普通に働けるだろ?」
「んだと!?」
「この場で身包みはがしちまってもいいんだぞ!!」
しかし少女は恐怖した様子を見せず、クスリと馬鹿にしたような笑みを浮かべた。
「・・・やれるものならどうぞ、死にたいのならね。」
「!!このアマ!!」
男たちが殴りかかる。誰も助けない。
ごぅ!!
風が吹く。男たちが一瞬で吹き飛ばされる。何人か頭を打ったらしく、呻き声を上げる。
「・・・・・・・くだらない。あ、僕は男だから。勘違いだけはしないでね。」
それだけ言うと少女―――いや、少年ケレル・コアトルは人ごみに去っていった。


坂道の裏通りで一人の少年がうずくまっていた。何も言うのでなくただうずくまっていた。
「・・・・・・・・・。」
「気に入らねぇな。」
ふと上から男の声がして上を見上げた。不機嫌そうな顔を見せた、そんなにいい身なりの男ではない。自分と何処か同じ匂いのする男だ。おそらく自分と同じくこの街で育ったのだろう。
「・・・・・・・・・。」
「何とか言えよ!!」
がっ!
顎に鈍い痛みがはしった。蹴られたようだ。ズキズキと顎が痛み、血が流れていた。
「・・・・・・・・・。」
地面に寝そべったように這いずる。しかし、それでも少年は何も言わない。苦痛の表情すら見せない。それが気に触ったのだろう、男はさらに少年を蹴り上げた。
「・・・・・楽しいかい?それ。」
そこを通り過ぎた少年、ケレルが声を掛けた。
「!!何だ、テメェ!?」
「これが失礼、僕の名はケレル・コアトル。ただの暇人さ。」
からかうような口調で言う。
「そうじゃねぇ!何のつもりでここにいるって聞いてんだよ!!」
ケレルはやれやれとため息をついた。こんな人種ばかりなのか、この街は、と嫌悪の思いをのせて。
「聞いただけさ、弱い者イジメするのは楽しいのかって。」
「うるせぇ!テメェには関係ない!失せろ!目障りだ!!」
ケレルはやれやれと肩をすくめた。
「関係はある、僕の視界でそんな事してるんだから。」
「・・・へぇ?正義の味方気取りか?何だ、このクソガキを助けてって言うのか?」
にやりと舌をなめずるような声で言う。助けて欲しければ、とでも言うのだろうか。
クス・・・・・
ケレルは笑みを浮かべた。

「好きにすれば?」

「なっ・・・・・・!?」
男は絶句した。
「その子がどうなろうと関係ない、殺したければ殺せばいい、・・・・・ね?」
ケレルは微笑んだ。とても冷たく。
「僕には関係ないんだから・・・ね?」
男は身震いした、この少年、ケレルは普通ではないと感じたのだろう。
恐いぐらいに美しいその笑みに戦慄した。
「殺さないの?」
男は何か言おうとしたが、すぐに何処かへ去った。逃げた、と言った方が正しいかもしれない。
「・・・・・・・根性なし。」
ケレルはつまらなそうに吐き捨てた。
「・・・・・・・・。」
「・・・・・・・・。」
ケレルは少年を見下ろした。
「・・・・・・・君は」

それが始まり、それが出会いだった。

物語は始まったばかり。



あとがき
B:・・・・・・・・・・。
吹雪:下る坂道(元ネタは私と出身県が同じアーティストの兄ちゃん3人組のグループの歌)、主人公はケレルです!
B:ケレルだけじゃないですか、出てるのは。
吹雪:いや。キリがいいかなーと切ったんだけど。・・・だめ?
B:自分の意見に自信があれば、聞く必要など無いはずですよ。
吹雪:もっともな意見です。
B:しかし、詩の方は早くもネタが切れそうですね。
吹雪:くっ・・・、出て来い、アイデア!カモン!!
B:やめなさい、見苦しい。
吹雪:うー、次回は多分もう一人でてくるんだけど・・・。
B:まあ、期待せず待つのがよろしいかと。それでは。


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14152Re:面白い坂道(違?)オロシ・ハイドラント 2003/5/4 15:50:45
記事番号14151へのコメント

下る←→くだらない←→面白い、ということで…
こんばんはラントです。
風魔の方、自分のことのせいで止まってます。
暇なときにまとめ読みしますので…
序章といった感じですね。
にしてもケレルくん、集英社スーパーダッシュのフェアリーランドクロニクルという話のサイフリートといキャラっぽいような。
あちらは本当に女装してたし、女しか助けないけど…
どうしようもないレスですみません。
それでは携帯からのラントでした。

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14155どっちかてーと下らない坂道?夜宵 吹雪 E-mail 2003/5/4 17:15:25
記事番号14152へのコメント

>下る←→くだらない←→面白い、ということで…

吹雪:坂道だけでは寂しいかな、と思い、下る坂道です。
B:深い意味は無いんですけど。

>こんばんはラントです。

吹雪:こんにちはです。

>風魔の方、自分のことのせいで止まってます。
>暇なときにまとめ読みしますので…

吹雪:読んでくださるだけでもうれしいですvv

>序章といった感じですね。
>にしてもケレルくん、集英社スーパーダッシュのフェアリーランドクロニクルという話のサイフリートといキャラっぽいような。
>あちらは本当に女装してたし、女しか助けないけど…

K:モデルはいないんだけどね。
吹雪:うーん、私は角川か富士か、もしくはファミ通か電撃でしか読まないですからねぇ。今度、オススメを教えてくれませんか?参考にまで。

>どうしようもないレスですみません。
>それでは携帯からのラントでした。

吹雪:ありがとうございましたvv

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14159下る坂道夜宵 吹雪 E-mail 2003/5/5 13:14:45
記事番号14149へのコメント


彼らは出会った
誰に命令されたわけでもなく

諦めた少年と、滅びを望む少年
彼らの行く末に、何が待つのか知る者はいない

 第二話 弱さの確立

「何で抵抗しないの?」
ケレルの第一声がこれだった。疑問だった、なぜ少しも抵抗しなかったのか。少年は答えない。うずくまり、顔を隠し全てを否定するような、印象を受けた。
おそらく、まだ十歳も過ぎていないだろう。顔は埃で薄汚れ、緑の瞳に光は無い。赤い髪はボロボロで、何日も洗っていないのだろう。まるで人生に疲れた老人のようだった。
それだけ苦労しているのだろう、ケレルは少年の顔を覗き込んだ。
「僕が質問してるの、答えろ。」
ニッコリと笑いながら威圧するが、恐ろしい事に無反応だった。
「・・・・・・・・言わないのはこの口か!ああ?この口かっ!」
「むひゅあああっ」
ケレルは少年の頬を引っ張った。よく伸びた。
「ええ?君は人と話す時はちゃんと向き合って、話さないといけないってしらないのかい?無知ってのは時として罪になるんだよ?知らないじゃ済まないんだよ?わかる?」
「ひひゃい!ひひゃい!ほへふらはい!!」
少年はこくこくと頷いた。無意識的にケレルの本性を垣間見たのかもしれない。
「わかればよろしいっ」
ぱっと手をはなす。少年はまだ少し赤い頬を押さえていた。
「さて、少年。名前を聞いておこう。君の名前は?」
「・・・・・・・・・・・・・。」
しかし少年は答えない。
「ん?どしたのさ?」
様子が先程と明らかに違う。
「・・・名前なんて・・・・ないっ・・・!僕は・・・・いらない子だから・・・・・!」
少年の瞳には涙。ケレルは大体何があったのか、予想できた。この子は孤児か虐待でも受けた子供なのだろう。この街では特に珍しくも無い。
「なるほどね・・・、ねぇ、いい事教えてあげようか?」
「・・・・・・・・?」
少年は何?と言いたげにケレルを見上げた。
「人を蔑み、痛めつける人間は弱い人間。それに屈すれば、痛めつけられた人も弱い人間。強く在りたければ自我を確立させ、己を認めよ。」
「???」
「あははっ、難しかったかな?大きくなればいつかわかるよ。」
言ってケレルは少年の頭をなでた。びくりと怯えたが、撫でられているという事がわかると、安堵の表情が見えた。
「・・・さて、じゃあね。」
ケレルは立ち上がり去ろうとした。が。
「待って!」
ケレルの服の裾をつかんだ。ケレルはひっくり返りそうになったが、なんとか踏み止まり振り返った。
「何?」
「僕、お兄ちゃんの言ってたこと、わからないけど、わかるようにがんばるから・・・、だから、また、会ってくれる?」
ケレルは一瞬、目が点になった。その後ブッと吹き出してしまった。
「ふふふっ、あはははっ!」
「お、お兄ちゃん?僕、へンなこと言った・・・・・?」
ケレルは捨てられた子犬のような目をした少年を見た。面白い。
「いや、明日、また来て、色々話してあげるよ。」
少年は笑った。始めて見た、彼が子供らしい表情を。

弱さは罪でない

その事を知るのはもう少し先の出来事



あとがき
吹雪:むうー、少年の正体に気付いた人って何人いるのでしょうか。
B:いないんじゃないですか、これじゃ。
吹雪:ですねー。
B:それで・・・・、一体何時になったら私の出番は・・・・・。
吹雪:ストーリは出来てるが、やっぱ完結させないと。
B:早くしてくださいね。
吹雪:がんばります・・・・。
B:もうすぐテストですし。とっとと終わらせないとマズイのでは?
吹雪:ああ、幻想世界の住人になりたい・・・、出来れば人間。魔法が使いたいなぁ・・・。
B:あなたが魔法を使えたらとんでもない事になるでしょう。馬鹿言ってないで、早く書き上げなさい。
吹雪:はい、そですね。がんばります。しかし、詩の方はスラスラ書けるのに本編がイマイチ書けない・・・。イメージが固まってないからかな?
B:こっちのは遅いでしょうね、更新。もしかしたら完結せず、永遠に・・・・・。
吹雪:え、縁起でもない事を・・・!いや、真実味に溢れてて、とっても恐ろしいが!
B:では私の名前が早く分かる事を祈りながら、次回で会ってくださいね。
吹雪:誰も祈らんだろ・・・・。
B:五月蠅いですよ?
吹雪:じ、地獄耳・・・・(汗)

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14166下る坂道夜宵 吹雪 E-mail 2003/5/6 18:42:39
記事番号14149へのコメント


彼なら大丈夫だと、根拠も無い理由だった
引き止めて、笑った表情がとても穏やかだった

本当は触れてはならないほどに綺麗な人だけれど
求めてしまう

頭を優しく撫でて、「大丈夫だ」よ囁いて

 第二話 触れられない優しさ

家路に向かう人々、その中に自分の姿はない。隣には、不思議な男の子、ケレルさん。
彼の名はケレル・コアトル。僕の名を聞きだすために、僕の理不尽な要求を呑んでくれた。
僕の名前は無理に言わなくて言い、言いたくなったら聞いてあげると優しい言葉と共に。
こんない優しい言葉をかけられたのは初めてだった。いつも殴られては謝る事の出来なかった僕が。初めて、誰かに必要とされた気がした。僕の勝手な想像かもしれないが。
「ふーん、君、家に帰らないんだ。」
僕は黙って頷いた。僕に帰る家なんて無い。あるのはただの暴力だけしかない壊れた家庭。母親は毎日、僕の顔が気に入らないと頬を殴り、父親は酒乱で僕を何度も蹴り入れる。恥ずかしい事に彼らに、親らしいことをしてしまった記憶など、僕には無い。あるとしたら、それは僕が生まれる前か、もしくは薄れてしまった赤ん坊の記憶だ。僕は無論、そんな事は覚えていない。そんな事があるのかも怪しいかもしれないが。
「ケレルさんは帰る所はあるの?」
「まーね、親・・・みたいなのもいるし、兄弟もね。」
「・・・そっか。」
僕はケレルさんが羨ましかった。僕もそんな所に生まれていたら、幸せだったかもしれない。
「まあ、そうは言ってもずっと一人だった記憶が多いけどね。」
「え・・・・?」
ケレルさんは微笑んだ、始めて見た時よりも強く。
「で、でも・・・、淋しくないんですか・・・・・?」
「・・・さあ、一人でいたのが、どれほど長かったのか、僕自身にも分からないから。もしかしたら気の遠くなるような時間だったのかもしれないし、ほんの一眠りにも満たない時間かもしれない。」
「・・・・・・じゃあ、何で・・・?」
「・・・さあね、秘密。」
ケレルさんは立ち上がる。
「ケレルさん・・・、行っちゃうの?」
嫌だ、大きな声でそう言ってしまいたい。けれど、そんな事を言う権利など僕には無い。
「・・・いーや、子供をほおっておくほど、嫌なヤツじゃないから。」
ふわりと、いい匂いがした。
何の匂いだろう。
優しい、けれど何処か張り詰めた、懐かしい匂いだ。
僕はケレルさんのマントに包まれていた。
「僕も一緒に寝てあげるよ、少年。一人の夜は淋しいんだろ?」
「・・・・・!」
僕は何も言わず、泣き出した。ケレルさんの胸に抱きよった。ケレルさんは僕を何も言わず受け入れてくれた。頭を撫でてくれた。

今だけだから、眠らせて
優しい朝を見たいから

今だけだから、傍にいて
淋しい夜は過ごしたくないから



あとがき
吹雪:うわ、短っ!
B:今回は少年視点ですが・・・、本当に短いですね。
吹雪:うーん、だらだら続きそうな予感。
B:書きなさい、ちゃんと。
吹雪:はいはーい、あとプロット考えないとなー。BとRが出る話。
B:そうです、私の事気に入ってるのならとっとと出してください。
吹雪:いや、そー言われても。・・・あ、そーいやこの話でRがチラッと出る予定です。楽しみにしててください。
B:・・・話をうまくそらしましたね。
吹雪:何の事ですか?ではでは

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14185下る坂道夜宵 吹雪 E-mail 2003/5/8 21:10:13
記事番号14149へのコメント

吹雪:しまったあぁぁぁぁぁっ!!
B:なんですか、突然。
吹雪:しくしく、この話、第四話だった・・・・・。
B:・・・おや、前回のは二話になってますね。
吹雪:どちくしょう・・・と後悔しつつ始まります・・・・・。

―・―・―・―・―・―・―・―・―・―・―・―・―・―・―・―・―・―

ただの気まぐれだった

いつもの、暇つぶしに遊んでやった
それだけだった

では、何故だ?
何故、自分ともあろう者が、心を砕いていると言うのだ?

くだらない、と呟いて
彼は少年の元へ走る

何が待っているか知らないで

彼は向かう

 第四話 捨てられた子供

「・・・・・・・。」
少年からあって早一週間がたった。ケレルはいつものように、裏路地へ向かった。少年はケレルのお気に入りの『玩具』であった。いちいち反応する様子が見ていて楽しい。ケレルは裏路地を見回した。しかし、少年の姿が見当たらない。
おかしい。
雨が降ろうと、嵐が吹こうと待っていた少年だ。雨にうたれ身体が冷たくなっているというのに、少年はやって来た。なにがあったのだろうか。
すぅっ
目を閉じる。意識を集中してみる。
嫌がる少年を黒服の男たちが無理矢理連れて行くのが『見えた』、隣りには、黒服の男たちに愛想笑いを浮かべている、年老いた二人の男女。おそらく、まだ三十代なのではあろうが、なにかに疲れたかのようにぐったりとした印象を受けた。神には白髪が混じり、手には紙のような何かが握られていた。
おそそらくは―――――
「人間ってヤツは・・・・・・。」
ケレルは、不快感をあらわにし呟いた。自分の考えは推測と言うより、事実と言った方がよいかもしれない。
「本当にくだらない・・・、壊してしまいたいくらいに・・・・・・。」
それは誰に吐いた言葉か、ケレル自身にもわからなかった。
びゅうっ、と風が吹いてケレルが消えた。

彼は、走った
この感情を、何と言うのか、彼は知らない

ただ、人間の持つ感情である事は確かだった



あとがき
吹雪:もうすぐテストでメンドいぞ!提出物!!
B:・・・と言っても出てるのは一つじゃないですか。しかも、いつもより少ない。
吹雪:メンドいモンは、メンドいの。
B:ただの怠慢でしょう。
吹雪:くぅっ!もっともな意見を・・・・・。
B:・・・それにしても・・・、段々、いい加減になっていませんか?これ。
吹雪:言うな・・・、書いてる私が良くわかってる。
B:もう少し考えてから行動してくれません?1の方の投稿はどうするんです?
吹雪:とりあえず、テストが終わるまで休む。
B:・・・本当に早くしてくださいね。
吹雪:前向きに検討します・・・・。

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14254下る坂道夜宵 吹雪 E-mail 2003/5/18 17:41:27
記事番号14149へのコメント


 見捨てるのは簡単だ
 見なかったふりをすればいい、それだけ――――

 彼はどうするのか
 見捨てていくのか、それとも・・・?

 第五話 拾う事と捨てる事

ケレルは、悩んだ。助けるべきか助けざるべきか、真剣に。
確かにあの少年は気に入っていないと言うのなら嘘になる。しかし、だからと言って、助けを求められてもいないのに助けると言うのも、変だ。
ケレルは大いに悩んだ。
そして、結論。
「・・・・・・見送りだけはしてやるか。」
我ながら、アホだと思った。たかが人間のガキ、一人で何を悩んだのだろう。
もしかしたら、自分の姿と重ねてしまったのかもしれない。
らしくない、と実感した。
ため息をつき、少年がいると思われる馬車の中を覗き込んだ。他に子供はいない。
姿を隠しているので、少年は気付かない。しかし、少年は
「・・・・・・お兄ちゃん?」
気付いた。
馬鹿な、とケレルは絶句した。
「お前・・・見えるのか?僕の姿が。」
「・・・・うん、そのせいでいつも変な子供って言われてたから。」
はあ、とケレルは複雑な顔になった。俗に言う霊感体質と言うものか。ケレルは隠れていたが、これを見破られるのは、自分と同じ、位の高い魔族か、神族だ。人間に見破られる事はない。
「はあ、意外な特技だな。・・・それで?逃げないのか?」
「・・・・・・・何で?」
ケレルは眉をひそめた。
「だって、お前売られたんだぞ。不安じゃないのか?」
ケレルがそう聞くと、少年は天井を見上げた。どこか悲しい横顔だった。
「逃げても同じだよ、僕は、疲れた。死にたいと思った事も一度や二度じゃない。・・・・疲れたんだ、ごめんね、お兄ちゃん。」
ケレルは形容しがたい不快感に覆われた。
ひどく、ごめんね、と言われたことが不快だった。
どかっ!
ケレルは無意識に少年に蹴り入れた。少年は目を白黒させ、何が起こったかわからなかった。
「おにい、ちゃん・・・・?」
「五月蠅い、ムカつくんだよ、お前。」
ケレルは吐き捨てるように言った。
少年の顔が誇りで汚れてていたが、本人は気付いていないようだ。
「何で、そんな事が言えるんだ?」
何故、抗う事をしないのか。
「僕はそういう受身の体勢が殺したいほど嫌いだ。」
決められたことに従うなんて、冗談じゃない。
「足掻けよ、見せろよ。言えよ、助けてって。」
言葉にしなければ伝えられないのに―――
「ムカつくんだよ、悲劇の主人公面してりゃあ、助けてもらえると思って。」
自分を、納得させるのは、自分自身だから。
「言えよ、僕に何して欲しいか。」
「・・・・・・・・。」
少年がゆっくりと口を開く。

そして、彼らは、自由をつかむ―――



あとがき
吹雪:えーっとあとがき、次の話で!!
B:メンドクさいだけでは?それにあとがきって、あるんですけど。
R:あ、本当。
吹雪:がーっ!!いいの、これはただのお知らせ!あとがきは次回!


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14285下る坂道夜宵 吹雪 E-mail 2003/5/21 17:24:43
記事番号14149へのコメント


少年は、閉じ込められた鳥かごから出てしまう。

それが、彼の決めた自由

そして――――

 第六話 そして彼らは旅に出る

「・・・それから少年はどうなったかは、誰も知りません。おしまい。」
「えー、なんだよ、それー!」
「そうだよ、続きは?その男の子どうなったのか知らないの?」
子供にまとわりつかれ、吟遊詩人は苦笑を浮かべた。
「んー、そう言われてもねー。このお話の続きはしらないんですよ。君達はどうなったと思います?」
そう言われて、子供たちは考え込んだ。
「うーん、オレはケレルと幸せに暮らしたと思うよ。」
「お嫁さんをもらって、二人で仲良く暮らしたのよ!うちのパパとママみたいに。」
「僕は旅に出たと思うよ。」
子供たちの言い合いを見て、吟遊詩人は楽しそうに微笑んだ。
「・・・・けど、全部ハズレ。」
誰にも聞こえないように呟いた。
「さて、早く帰らないとね。怒られるよ、坊やとお嬢さんたち。」
「あ!本当だ。まっくらだ〜。」
子供の言ったとおり、あたりは暗くなり始めた。人の歩く姿も徐々に少なくなっている。
街の広場の噴水が、夕焼けの光を浴びて輝く。それを見て、吟遊詩人は子供たちにニッコリと笑みを見せた。
「さあ、お母さんやお父さんが心配するからお帰り。君達はこの物語の少年じゃないんですから。」
「うん!吟遊詩人のおっちゃん、ばいばーい!」
「また明日ね、おじさん!」
さよならの挨拶をしながら、吟遊詩人は苦笑を浮かべた。
「・・・・まだ、そんな歳じゃないんですけどねー。お兄さんって呼んで欲しかったのになー。」
吟遊詩人は苦笑を浮かべ、服のポケットに入れておいた手鏡を取り出した。
「まだ、ぴっちぴちのつもりなんですけど。」
ぱちん、と手鏡をポケットに入れる。
「さて・・・・・。」
吟遊詩人はリュートを抱え、歩いた。もうこの街は出て行くつもりだった。
「・・・・・・・・。」
風が吹いた。冷たい。しかし吟遊詩人は平気な顔で歩いた。街を歩くと、夕食の匂いを漂わせる家々と、帰路へ向かう子供。そして、酒場に向かうのか、やけに上機嫌な大人の群れが見えた。
魔法の灯りが、夕闇を照らす。夕日の光が徐々に消える。金色の光が美しい。夕日の光を眺め、吟遊詩人は夕日と反対方向にある街から背を向け、街の門の真下に来ると歩くのをやめた。
何かを待っているようにも見えた。
「あーあ、見つかった!あたしってかくれんぼの才能ないんですかねー。」
唐突に。独り言を喋っているのか、吟遊詩人は空虚な空に向かって喋った。
「ねえ、あなたはどう思います?ガルーダさん。」
ぅぅ・・・
空間が歪んだ。すると、そこには生真面目そうな若者の姿が浮かび上がった。その端正な顔は怒りと、呆れと、なにかを諦めた表情で染まっていた。吟遊詩人は悪戯をしかけた子供のように、くすくすと意地の悪そうな笑みを浮かべた。
「何の、つもりですか?」
「何のって何が?主語が足りてませんよ。」
ガルーダはキッと吟遊詩人を睨む。
「何で、あなたが私の・・・!?」
吟遊詩人はガルーダの言葉に、にんまりと笑みを浮かべた。
「おんや〜、何のことです?」
「とぼけないでください!あなたが話したあの物語!あれは・・・・・・!」
「あなたが、・・・・いやケレル・コアトル様が拾った人間の子供の話・・・。さっき、話した物語に出てくる少年。それがあなたですね。騎士ガルーダさん。」
「・・・・・・・・・。」
ガルーダは何も言わなかった。否定する気は無いらしい。
「・・・・・・ま、どうでもいいんですけどね。」
吟遊詩人はやれやれと肩をすくめた。ガルーダはきょとん、とした顔になった。
「ガルーダさんのこと、気に入ってますから。」
吟遊詩人は人差し指を上に向け、ニッコリと微笑んだ。
「誰にも言いませんよん♪ご安心を。」
ガルーダは苦笑を浮かべた。この同僚は、ケレル以上に底が読めない。彼の上司の影響かもしれない。
「・・・・・それじゃ、リクエストしていいですか?吟遊詩人さん。」
ガルーダは悪戯っぽく微笑んだ。
「はいはーい、何ですか?お客さん、安くしときますよー。」
「では・・・・下る坂道、という曲を。名も無き少年がいつも、口ずさんだ曲ですよ。」
吟遊詩人は苦笑した。よく知っている曲だ。彼が、ガルーダがいつも、口ずさんで歌っている曲。
「それじゃ、いきます。リクエストは・・・・。」
すう、と大きく息を吸う。
「下る坂道」

ある日ある場所で起きた物語
運命の歯車は回り、二人は出会った

何も求めない少年は、鳥籠から出ることを望んだ
鳥籠の鍵はどこにもなかった

しかし少年は外に出れた
鍵はすでに持っていたのだから
少年がただ気付かなかっただけ

自由になった少年はそれでも傷ついた
しかし後悔はない

どこまでもある、下る坂道
下っては上り、その繰り返し

清らかな、穢れを知らないものなどない
少年に願望は無く、あるのは自由という名の孤独の刃

怒りと憎悪の切っ先で薙ぎ払い
夕暮れを走る

壊された、歪んだ矛盾の世界に微笑んだ
全てはあるがままで

どこまでもある、下る坂道
下がっては上り、その繰り返し

物語の終幕を引くのは誰でもない
ある日ある場所で起きた物語


歌が終わると、ガルーダは素直に拍手をした。
「上手ですね。」
そう言って、吟遊詩人にワインを渡した。
夕暮れは沈み、静かな夜が訪れた。

・・・END


あとがき
吹雪:終わらせたぜ、こんちくしょう!
B:ジンクス・・・きいてませんね。
R:おお!祝完結!あたしも最後の最後で出てきたし〜♪
B:最後の歌は吹雪のオリジナルです。
吹雪:この話の題名の元ネタから、ちょびっと。
B:製作時間、5分。短いですね・・・・。
吹雪:まあ、冒頭部の詩からいくつか取ったし。結構、気に入ってます。
R:ってか、なんであたしがあんな事してるかと言うと・・・・!
B:どうでもいいはないですか、そんなこと。
R:ヒドッ!聞いてくださいよー、謎は残したままだと、迷宮入りなんですよぉ〜?
吹雪:ささっ、どうぞ。
R:はいっ!あたしは、・・・・ただの暇つぶしであんなこと、やってました。
B:・・・・・低俗な理由ですね。
R:あ、B様、ヒドイ。今の傷ついた。あたしの一回でいいからやってみたかった事なのに・・・・。
B:・・・そういえば服装が違いましたね。今の格好と吟遊詩人のときと。
吹雪:よく気付いたな・・・、まあ、書いてないけど、補足。Rは髪を珍しく解いて、フードを被ってました。顔は見えそうで見えません。んで、フード被っている以外はいつもどおり。
R:えー、全然違いますよ。
吹雪:どこが?
R:つけてるアクセとか。色々と。
B:さて、補足も終了したので、失礼しますね。
吹雪:あ、こら!勝手に終わらせるな!
R:B様、あたし、まだまだ言いたい事が・・・・!
B:黙りなさい(ニッコリと笑う)
吹雪&R:・・・・・・・・・ハイ(危険なモノを察知した)