◆−Eternal Seed  Act.28−飛龍 青夏 (2003/5/24 17:53:03) No.14306
 ┣Re:Eternal Seed  Act.28−オロシ・ハイドラント (2003/5/28 17:28:20) No.14322
 ┃┗Re:Eternal Seed  Act.28−飛龍 青夏 (2003/5/29 19:09:20) No.14327
 ┗Eternal Seed  Act.29−飛龍 青夏 (2003/6/7 19:21:45) No.14381
  ┗Re:Eternal Seed  Act.29−オロシ・ハイドラント (2003/6/11 20:59:52) No.14446
   ┗種…シード−飛龍 青夏 (2003/6/13 23:54:47) No.14458


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14306Eternal Seed  Act.28飛龍 青夏 E-mail 2003/5/24 17:53:03


 こんにちは。飛龍青夏です。ツリーがいつのまにやら落ちてしまいました…(汗)。
 
 26日からテストなので、少なくとも一週間は投稿できなくなると思います。なのでコメントも返せなくなるかもしれません。

 では二十八話!!

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

  自分を信じることこそが、きっと一番難しい
  簡単にできることならば
  きっと誰も迷いはしないから

     Eternal Seed  Act.28 自分という存在

 ハヤテの指示に従い、樹の幹を登ること約一時間。双子は辺りに生えている植物や、時々視界に移る遺跡のような建物に、興味津々のようだった。
 紫銀色の髪の青年は、ふとその頤を上げた。上を見上げた彼の視線の先にあったのは、細長い、透き通った柱。クリスタル製のようだ。
「変わらないな…ここは」
「ハヤテ、来たことがあるのか?」
「ああ。十年前に一度…な。まあ、ずっと前にはここに住んでいたようなものか」
「?」
 シーウの問いに、ハヤテは答えた。怪訝そうな顔をするシーウに、ハヤテは穏やかな瞳を向けた。
「ここは“神族”発祥の地。そしてこの世界全ての…いや、この世界の外までもを創った者の場所」
「創った者…?」
「そのうちわかる」
 青年はそのまま、階段のようになったところを上り始めた。後を突いていった四人は、その先に人影を見た。
「!」
とっさに身構えるシーウとヴァルスに、ハヤテは言った。
「心配するな。敵ではない」
 二つの人影は、それぞれ二十代の男女だった。
「やっぱり貴方だったのね。ハヤテ、いえ、ヴォイド」
「久しぶりだな」
黒髪の女性と、白髪の男性が言葉を口にした。どうやらハヤテの知り合いらしい。シーウとヴァルスは、なんとなくその二人に懐かしさを覚えた。
 ふとその二人がシーウとヴァルスに目を向ける。そして、驚愕に目を見開いた。
「あ…」
「おまえ……」
「え?な、何だ?」
「知り合いに似てたとか?」
 シーウとヴァルスはきょとんとして二人に聞き返す。双子が後からひょこりと顔を出し、口を開いた。
「え〜と、あの、こんにちは」
「あ、初めまして!」
 凍りつく寸前だったその場の空気を、双子の高い声が中和した。


 二人の男女の案内でやって来た神殿のような場所で、五人は紅茶と菓子を振る舞われた。だが、その二人がどういういきさつでハヤテを知っているのかがわからない。そもそも、十年前といえばハヤテはまだ十代のはず。その彼がこんな砂漠地帯に来たこと自体も不思議だが、それならこの二人もそのくらいの年頃だったはずだ。ここに住んでいるにしては、他に人の気配がなさ過ぎる。
 たった二人で、ここに住んでいたとでもいうのだろうか。
「シーウさんと、ヴァルスさんというんですね」
 黒髪の女性が問いかけた。双子は少し離れたテーブルで菓子をほお張っている。辺りに飾られた調度品や活けられた花、にも興味があるらしく、立ち食いや立ち飲みはしないものの、うろうろと辺りを歩き回っている。
 そんな二人を視界の端に捕らえながら、シーウは頷いた。ヴァルスもだ。
「私はコスモス、といいます。よろしくおねがいします」
「オレはクロノス。よろしく」
 黒髪の女性、白髪の男性が、それぞれ挨拶してきた。
「シーウ。シーウ=ウィア=ヴィンセント」
「ヴァルス=イクシード。よろしく」
「ハヤテからさっき、少し話を聞きました。あなた方が、ここについて疑問を持っているであろうことはわかっています」
 コスモスは、寂しげな表情でシーウを見つめた。そのせいで、シーウはなんとなく切なくなってしまった。
「あの」
 シーウが思い切って口を開く。
「なんですか?」
「知り合いの誰かに…私が似てるんですか?」
「…知り合い…ね。ううん。幼馴染だったの」
「幼馴染…?」
「ええ。ヴァルス君もそっくり。そっくりで当たり前…かな」
 シーウとヴァルスはきょとんとした顔で話を聞いていたのだが、だんだんと真剣な顔になっていった。
「ハヤテにここに連れてきてもらって、私たちを見てどう思った?」
「懐かしい…と思った」
「でしょうね。貴女の中にまだ残っているカオスの心の欠片がそう感じさせているのね。ハヤテのときもそうだったでしょう?」
「あ…」
シーウはそうだ、と思った。この二人は、ハヤテと始めて会ったときに感じた懐かしさと同じものを持っている。この樹も。
「その…カオスって…」
 シーウが訊きにくそうにいった。
「カオスはね、私とクロノスと、ハヤテ…ううん、ヴォイドっていったほうがいいのね。四人で小さいころからここに住んでいたの。小さいころからって言っても、千年前のことだけどね」
「千年!?」
ヴァルスが驚いて声を上げる。
「驚くのも無理は無いわ。私とクロノスはもう千年間、ここで過ごしているの。外に出たことがないわけじゃないけどね」
「オレたちは…アーキタイプなんだよ。“神族”の」
「元型?」
「そう。私は“秩序神”。秩序、理、摂理を司っているの。クロノスは“時空神”。時と空間を司る神族よ」
シーウとヴァルスは圧倒された。この二人の言っていることが、信じられない。けれど、嘘を言っているのではないのだと、確信めいたものがあった。
「そして貴女は“混沌神”。生命の系譜、あらゆる力と物質を司っているわ。ハヤテ――ヴォイドは“虚無神”。死と暗闇の深淵、静寂を司っている…」
「あの、だから私が訊きたいのは、そのカオスって人と私の関係です。貴方たちの様子からすると、何らかの繋がりがあるんでしょう?」
「……」
「教えてください。もう、理由もわからずに、自分が自分として扱われないのに耐えるのは…我慢できません。ハヤテも、私を違う人と重ね合わせていました。私は何なのですか?」
シーウは、勇気を振り絞って言った。自分が何らかの答えを恐れていると知った上で。それでも、訊かねばならなかった。
 ゆっくりと、コスモスが口を開いた。かすれた声で、呟くように言う。
「貴女は…」
 いつのまにか、ハヤテがコスモスとクロノスの後ろの壁に背を預けていた。話し合いに参加する気はなさそうだが、ただシーウとヴァルスの様子を伺っている。
「もう、わかっているのかもしれないけど……貴女は……

――カオスの生まれ変わりよ」

 静寂が、辺りを包んだ。
 シーウの思考が空白と化す。その瞬間、砂漠で見たあの夢のような精神世界での出来事が、脳裏に蘇った。
『私は…あなたの…』
 ――聞きたくない…
 シーウの心が、その声に対して反発する。全身の熱が外へ逃げていく感覚。寒気というより、純粋な恐怖。
『私はあなたの…』
 ――その先は…聞きたくない…
全細胞が、その言葉を聞くまいと拒絶する。それでも、自ら封印した記憶の中で語られた言葉は、否応なく再生されていく。
『前世の人間』
 ――やめろ!!
『カオス』
 何かが、彼女の中で音を立てて切れた。


「…あ?」
 最初に視界に飛び込んできたのは、バラバラに砕け散った椅子だった。どうやら自分は風圧で吹き飛ばされたらしい。双子を庇いながら、ハヤテが隣の部屋から顔を出すのが見えた。コスモスとクロノスはシールドを張って攻撃を防いでいた。
 痛みが走った。吹き飛ばされて落ちたとき、どうやら右肩を打ち付けたらしい。受身も取れなかったというのは情けない。
「シーウは…?」
 よろよろと起き上がり、シーウを探す。視界のうちには確認できない。コスモスが、両膝をついて顔を覆った。涙が流れる。
「……クロノス…私っ……ひどい人間ね…あの子……怖がってたのにっ…」
「仕方ない。受け入れなければ、どの道そのツケが回ってくるところだったんだ」
「……わた、し…心のどこかでっ…あの子をカオスだと思ってたのぉ……カオスが帰ってくるんだって……生き返ってくれたんじゃないかって…ひどいこと…ばっかり……」
クロノスが、コスモスの髪を優しく撫でた。ハヤテが双子を連れて出てくる。周りの調度品もばらばらだ。花が活けられていた花瓶も砕け散り、破片が散乱している。
「ヴァルス兄、シーウ…傷ついた顔してた」
「行ってあげて…」
 双子も、完璧ではないながらも、状況を把握していたらしい。ヴァルスが、一瞬呆然として、ためらうようなそぶりを見せた。
 刹那、ぱん、という音が響いた。ヴァルスがバランスを崩し気味に後退る。
 鋭い痛みが頬に走ったのがわかった。平手打ちされたのだと、数秒してから気づく。ヴァルスは、呆然としてハヤテを見る。怒りでちりちりとした空気をまとわりつかせながら、ハヤテが彼を睨みつけていた。
「ヴァルス!」
「!」
「我は、今のおまえのような奴のために、シーウを諦めたのではないからな!」
「あ…」
「早く行け!!この馬鹿!」
「…さんきゅ」
 言って、ヴァルスが走り去った。そのすぐ後、今度はハヤテが俯く。
「ハヤテさん?」
 シャルが心配げに問いかけるが、ハヤテは震える声で呟いただけだった。
「諦めたはずだったのに…」
苦しげな、声。
「まだ、こんなに未練があったとはな……情けない……馬鹿は…我か」
 泣きそうな顔をしても、もう慰めてくれるあの少女はいないのだと、ハヤテは知った。過去に失ったものは大きすぎた。けれど、彼は今ある全てを投げ出せるほど、弱い心の持ち主でもなかった。


「シーウ!」
 びくんと少女が反応した。神殿の外、断崖絶壁のようになっているところに立っているその少女が、先ほど衝撃波を発して部屋のものを吹き飛ばしたのだ。
 ゆっくりと振り向いた彼女は、泣きそうな顔をしていた。
「ヴァルス……」
ほっとして、ヴァルスが歩み寄る。が、
「来るな!!」
シーウが叫ぶ。そしてその瞬間、ヴァルスの足元に魔力弾が飛んでくる。地面を数センチえぐり、魔力弾は消失する。
「シーウ…?」
「来るな…来るな!誰も私に近づくな!!」
 目を閉じ、耳を塞いで叫ぶ少女は、長い紫銀色の髪を振り乱していた。涙がその瞳に滲んでいる。
「私は私じゃなかったんだ!どうせ私は代替品で、今の私じゃ誰の役にも立てないし、ただの邪魔者だったんだ!初めて力を使ったときも、初めてハヤテに逢ったときも、そのとき気づくべきだったんだ!私はただの偽者だって!!」
「シーウ…おまえは」
「所詮私は忌み嫌われるために生まれてきた、望まれない、必要とされない人間で、でも“彼女”は誰からも好かれてた。少なくともハヤテや、コスモスやクロノスには!きっと他の誰かも、カオスのことは好いていたんだ!でも私はそんな…そんなふうにはなれない……!!」
 ヴァルスは、精神波動を通じて、シーウの痛みを感じた。シーウが発している精神波動。それは胸を抉られるような心的な痛みだった。息が苦しい。泣きたくなるほど胸が痛い。
「ハヤテがここへ私たちをつれてきたのは、私を“カオス”にするためだったんだ!記憶が戻れば、きっと“彼女”が生き返ったのと同義になる。だから私は……私はそれだけの存在で、道具で、ただの器だったんだ!」
「もうやめろ、シーウ!」
「近づくな!」
ヴァルスの制止の声も聞かず、シーウは狂ったように叫ぶ。魔力弾が、地面に穴を穿つ。自分に当たるのも時間の問題だろうと、ヴァルスは思った。
「おまえだって、こんな私は必要ないんだろう!?ただの…ただの器になんか!!」
 自分が自分でいられなくなる。それは、シーウにとっては死に等しいことだった。シーウはどんなときも、自分の存在を感じて、それを頼りに生きてきた。疎外され、苦しみ傷ついても生きてこられたのは、自分という存在があったからだ。命と、心が。それを、前世という言葉で否定される痛み。それが事実であるという証拠をつきつけられた苦しみ。
 ヴァルスは、もうためらわなかった。
 ばしゅっ
 血飛沫が、宙に舞った。赤い血液が、地面に落ちる。魔力弾の直撃を受けた肩から、血が流れている。シーウはいまだに気がつかない。ヴァルスが、自分のすぐ近くまで来ていることに。
「それ以上近づくな!どうせ、こんな私のために命がけでここまでくるなんて馬鹿なこと、しないくせに!!」
「シーウ」
「おまえはいつもそうだ!いつも自分を犠牲にしてでも、私を傷つけないように守ろうとする!本当はそんなことしたくなかったんだろう!?そうなんだろう!?」
「シーウ」
「おまえなんか要らない!私がいらないなら、私が必要とする誰も、何も…!!」
 意味のわからない言葉が、シーウの口を次々に割る。けれど、ヴァルスにはその意味がなんとなくわかった。
 次々と体に魔力弾が直撃する。衝撃で倒れそうになりながら、それでもヴァルスは前進をやめない。
 いつでもそうだった。自分はシーウを守れなくて、いつも傷つけて、逃げさせてばかり。追いかけるのに精一杯で、その傷を癒すのもままならない。そんな自分に、シーウが鎮められるのかどうかわからない。でも、試してみようとは思った。
 ヴァルスの足音にはっとして、シーウが顔を上げる。血まみれになりながら、自分に向かってくる青年。青い髪に、赤い眼。くもりの無いまなざし。
 気がつくと、目の前にヴァルスが立っていた。魔力弾が、まだシーウから放たれている。防衛本能のためか、反射的に魔力弾が近づこうとするものに向かって飛んでいく。
 シーウが、怯えたように数歩下がる。そのすぐ目の前で、ヴァルスのわき腹に魔力弾が当たった。
「かはっ…」
 魔力弾を既に十発は浴びている体では、体勢を立て直しきれなかった。ヴァルスは片ひざをついて、わき腹を押さえる。咳き込むと、血が混じっていた。このままでは危ないと、ヴァルス自身にもわかった。
「…ちか…づくな……もうそれ以上…私に…」
「シーウ…」
 ふらつきながら立ち上がり、少女に手を伸ばす。少女は、呆然とヴァルスを見上げた。
「駄目だ…ヴァルス…私はっ…!」
 最後の魔力弾が放たれた。もろにそれを受け、ヴァルスが後ろに倒れる。それを見て、暴走が止まったシーウが叫んだ。
「ヴァルスっ!!」
 泣きそうな顔で駆け寄り、必死で抱き起こす。
「はは…かなり効いたぞ…今の」
「冗談ばかり言うな!早く手当てして…」
「その…前に、シーウ……」
「…?」
 ヴァルスの血まみれの手が、シーウの頬を撫でた、そこに、涙が流れていた。
「俺は…別に前世とか関係なくて……“お前”が…“シーウ=ウィア=ヴィンセント”が…好きなんだから…な…」
「……っ」
 シーウが、涙をこぼした。ヴァルスにすがるように、彼の体を抱きしめて、泣いた。ヴァルスは自分で治癒魔法を唱えて、ゆっくりと傷の治癒を開始した。
「ごめんっ…ごめん……ヴァルス…」
 ヴァルスの優しい手が、シーウの髪を撫でた。
「嘘なんだ……要らないなんて…嘘…」
 髪を撫でていたその手がシーウの顎にかけられ、ほんの少しだけ上を向かせた。
 シーウは、頬にヴァルスの吐息がかかるのを感じた。


 ハヤテが神殿の外へ出たのは、ヴァルスが出て行った数分後だった。シーウの暴走が止まったのを見届けると、ハヤテは空を見上げた。
 ここは、空に一番近いところ。
 “自分たちを創った彼女”が、世界を見るための場所。
「……っ」
 涙が出そうになる。情けないとは思いながら、片手で顔を覆った。
「アーク…っ…」
 自分はなんて都合のいい人間なのだろう。カオスが――シーウが駄目だったから、アークにのりかえるとでも言うのだろうか。自分が守れなかった、もう一人の女性。
 カオスも、アークも、ハヤテの目の前から完全に消え去った。彼にはもう、想うべき者は誰一人いなくなったのだ。
 風が吹いていた。
 それぞれが得、失った、その人々の心に。
 それぞれの心に。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
 
 ついにシーウの正体がばれました(もうとっくにばれてたりしたかも・汗)。でもこの流魂樹編はまだ続きます。ええもう長々と…。多分、しばらくクレスタ君たちは出てこないでしょう。

 読んでくださった方、ありがとうございました!では!

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14322Re:Eternal Seed  Act.28オロシ・ハイドラント URL2003/5/28 17:28:20
記事番号14306へのコメント

 こんばんはラントです。
 27話出てることに、気付かなかったのでまとめ読み、まとめレスといきます。

>短編をちょくちょく書き始めた今日この頃。長く続けることはできるのですが、なぜか短くまとめるのが難しくなってきました…。
>やっぱり短くわかりやすくという風にまとめてみるのも大変ですね。
 私は結構短く納まるタイプですねえ。
 説明不足になること多いですけどね。

 シーウが、カオスの生まれ変わり。
 これが一番大事な部分ですかね。
 それによって発生したシーウとヴァルスのシーンはまさに良かったです。ヴァルスのセリフに打ち震えました。

 敵方のボスの秘密も分かったような?
 いわゆる魔族みたいな存在でしょうか?
 造られたとなると、ロスト・ユニバースのデュグラディグドゥの方が近い?
 
 やはり文章が上手で、羨望の眼差し向けちゃってたりします。
 にしても……空の平原いきたいよ。

 それではラントでした。

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14327Re:Eternal Seed  Act.28飛龍 青夏 E-mail 2003/5/29 19:09:20
記事番号14322へのコメント

 こんにちは(こんばんは?)。飛龍です。コメントありがとうございます。

> 27話出てることに、気付かなかったのでまとめ読み、まとめレスといきます。

 な、なぜか私が投稿した直後にツリーが落ちてしまったのです…(汗)。もうちょっと早く投稿していれば。

> シーウが、カオスの生まれ変わり。
> これが一番大事な部分ですかね。
> それによって発生したシーウとヴァルスのシーンはまさに良かったです。ヴァルスのセリフに打ち震えました。

 シーウの正体というか、前世がわかったことで、彼女は自分を再認識することができました。一度、ヴァルスに助けられたときもなのですが、疎外され続けた自分と、もしかしたら自分になっていたかもしれない人間を区別するための要素が無かったのです。
 ヴァルスはそんなシーウをもう一度救いました。というか、そうしなければ気がすまなかったのかもしれません。彼にもまた、ちょっとした(?)暗い話が設定としてあるのですが、多分そのうち出るでしょう。

> 敵方のボスの秘密も分かったような?
> いわゆる魔族みたいな存在でしょうか?
> 造られたとなると、ロスト・ユニバースのデュグラディグドゥの方が近い?

 「ロスト・ユニバース」の小説、学校の図書室にあったので読んだのですが、なぜか一巻だけ行方不明っ!おかげで読み出すのにかなり勇気が要りました。
 ちなみに、強いて言えば魔族と「ロスト・ユニバース」のデュグラディグドゥを足して二で割った感じ…です。ちょっと無理があるか…?(混乱中)

> やはり文章が上手で、羨望の眼差し向けちゃってたりします。

 ありがとうございます。でも、多分私もまだまだです。説明不足が多すぎて…。
 あ、ラントさんのHP見ましたよ!謎掛けが面白かったです。でも私の足らない頭では答えはわかりませんでした…。

> にしても……空の平原いきたいよ。

 私も行きたいです〜!真っ青な空!広がる緑!透き通った水!自然の作り出した芸術です。

 毎回ありがとうございます。では!  

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14381Eternal Seed  Act.29飛龍 青夏 E-mail 2003/6/7 19:21:45
記事番号14306へのコメント

 こんにちは。飛龍青夏です。結構間が開いてしまいました〜…すみません。

 先日、金曜ロードショーでやっていた「マトリックス」なる映画を見ながら、なぜ学校の男子が「マトリックス」という言葉を使っていたのかやっと理解した私。というか意味は別にあるのか…?私の感想としては映画は面白かったですね。戦闘シーンがかっこよくて。
 
 とうとうあと一話で三十話です。よければこれからもお付き合いください。
 では二十九話!

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

  風のようにすりぬける
  君の身体が輪郭を失くして
  水のように抱けない
  君の瞳が色を失くして
  君が消えたその刹那

     Eternal Seed  Act.29 遠い日の記憶

「ヴァルス、私は…何か……間違っていたのか?」
「……」
「いつも、考えてた。里が滅ぼされる前から。私が里を出る前から」
 問いかけてきたシーウに、ぼろぼろのヴァルスは複雑な瞳をした。
 魔力弾の攻撃であちこちに傷を負った彼では、まだ一人で歩くことはできなかった。シーウに肩をかしてもらい、何とか立ち上がったヴァルスは、長く青い髪を片手で払った。
「私が私でなかったら、きっともっと楽だったんだろうって。でもそれを認めたくなかったから、ずっと……自分を異端者として見てた」
 自分が異端者でいることで、過去の、もしくは全く違う、自分となっていたかもしれない人物との区別をしていた。そうでもしなければ、他に自分を証明することができなかった。
「シーウ」
「…?」
「誰でも、それは思ってる。自分が誰かって考えて、すぐに答えることができる奴はそんなに多くない。けど、だから人間はそれを証明しようとするんだ」
「…ああ」
「だから…それを善悪とか、間違ってるとか正しいとか、言い切ることは俺にはできない」
「…ああ。そうだな」
 シーウの口元に、微笑が浮かんだ。
「ありがとう。ヴァルス」
「どういたしまして」
 二人はそのまま、飛び出してきてしまった神殿へと帰っていった。


 ハヤテは夢を見ていた。神殿の上で、寝転んでいたのだ。夢の中にいるのだということを、彼は単純に受け止めた。
 懐かしい風景が広がっている。過去の、この樹がまだ神族たちで溢れていて、人々が幸せに暮らしていたころの。そこに過去の自分と、彼女がいた。――アーク。
“ヴォイド!”
 赤い髪の青年を追いかけてきた精霊族の少女が名を呼ぶ。ヴォイドはいらついた眼で振り向き、苛立った声で言い放った。
『お前はもう用がすんだのだろう?だったらさっさと帰れ!家族が心配するだろう!?』
“家族なんていない”
『え?』
驚いたように、言葉に詰まる。言ってはいけないことを言ってしまったと、後になって後悔する。
“私の家族は皆…私を捨てて人間たちのところにいっちゃったもの!不老不死とかいう馬鹿馬鹿しいものに魅かれてね…!”
叫ぶように、それでも早口にまくし立てる。
『アーク…』
“私だけここに捨てて、行っちゃったのよ!あの人たちは!!”
『…すまない』
“いいわよ……気にしてないし”
 そう言いながらも、アークは悲しげな顔をしていた。ヴォイドは俯いた。人を傷つけたと知って喜ぶ者は、この楽園と称された樹上都市にはあまり存在しない。
 アークがふわりとヴォイドの目の前に移動してくる。
“…なんて顔してるのよ”
『我には…親というものがいない。だから……』
“そんな顔しなくていいじゃない。あなたはあなただもの。それにどの道、あなたにも家族はできると思うわ。妻とか子供とか…それも素敵だと思うけど”
『……』
“まあ、それまでここが無事だったら、だけどね”
『そう、だな…』
 二人はその場から、外を眺めた。遠くの空には暗雲がたちこめ、その下ではきっと不老不死者が暴れているのだろう。時折爆音のようなものが響いてくることもあるのだ。結界内に退避している彼らも、いつまで無事でいられるかはわからない。
 そんな、いつ終わるとも知れない幸せの中に、彼らはいたのだ。
 ハヤテは、目を開けた。今ある現実に復帰するために。過去の幻影に浸ってばかりいられないからだ。
 今も、いつ終わるとも知れない幸せを守ろうとしているのだから。


「シーウちゃんっ、ごめんね!ごめんね!私ったらあなたのこと何も考えなしで…!!」
「うっわぁ!?」
 神殿の中へ入り、先ほどの部屋へ戻ったシーウに、コスモスが突然飛びついてきた。泣きながらも、あらん限りの力で締め付けるように抱きしめてくる。
「コ…コスモスさん、苦し…!?」
「きゃあっ、ごめんね!大丈夫!?」
やっと開放されたシーウはぐったりしてコスモスを見上げた。どうやら、いったん走り始めたら止まらないタイプらしい。慌ててかがんだコスモスが、シーウの両肩に手を置いて、そのまま俯いてしまった。
「ホントに…ごめんね…シーウ……」
「あ…」
「ごめんね……」
「いえ。もう、大丈夫です」
 シーウは穏やかな目で、言った。驚くほど、心が凪いでいる。コスモスが泣きながら謝ってきて、シーウは何かに救われた気がした。
「だから泣かないでください。大丈夫…ですから」
「…ありがとう…」
 涙を拭いながら、コスモスが離れる。それを見ていたヴァルスと双子が、微笑んでいた。
「でも、貴方たちが知っていること、教えてください。私が私であるためにも」
 シーウの、意志の込められた言葉を聞いて、クロノスが頷いた。
「わかった。何が訊きたいのか、教えてくれ。こちらから話そうとすると多分きりがない」
「まず、千年前のこと。それから、ハヤテが私たちをここへ連れてきた理由」
 クロノスは神妙に頷いた。
 ハヤテはまだ戻ってきていない。クロノスはその理由を知っていた。彼の心の欠落が、再びその穴をぽっかりと開けているのだ。さすがに彼でも、そのショックは大きいだろう。
 クロノスはどうにか無事だったソファに双子を座らせ、椅子を“空間転移能力”を使って呼び寄せて、シーウとヴァルスに勧めた。自分とコスモスは、さっき自分たちと一緒に攻撃を免れた椅子に腰掛ける。
「それは千年前何があったのか、ということか?それともオレたちの関係のことか?」
「両方が訊きたい」
「そうか。まあいいだろう」
 クロノスが、瞳を閉じた。その刹那、シーウとヴァルス、双子の視界が、星空を見上げたときのような景色に支配された。暗い、闇のプールの中に、小さな光球が数え切れないほど浮かんでいる。その中の一つを、おもむろにクロノスが拾い上げた。その光の球を手に持ったまま、クロノスが呟くように言ってくる。
「ここはオレが再現した、過去の記憶の保管場所のようなものだ。オレは時を統べることができるからな。過去の知りたいことがあれば何でも聞いてくれてかまわない。未来は無理だが」
「千年前のことを」
「千年前か。これだな」
 そう言いながら、白髪の青年は別の光球を手に取った。
「封印解除」
青年の持っていた光の球が、だんだんとその輝きと大きさを増していき、その場にいた全員がそれに飲み込まれた。
 気がつくと、さっきの神殿と同じような場所にいた。変わっていることといえば、自分の立っている足場の感覚が無いことと、自身の体が透けていることくらいだった。
「ここは…」
「過去の神殿だ。過去のオレたちが住んでる」
 セピア色がかった風景のなかで、クロノスとコスモスが一緒に歩いているのが見えた。今よりも少し幼い感じがするだろうか。
 そこへ走ってきたのは、青い髪の女性。シーウはどきりとした。彼女がシーウの前世だというのだから、驚くなというほうが無理だ。そしてもう一人。燃えるような赤い髪の青年が歩いてきた。なんとなくハヤテに似ているとシーウは思った。
「あれは?」
「オレとコスモス。それにヴォイドと…カオス」
 クロノスが説明する。四人は何か話し合っているようだった。しかしその雰囲気はあわただしく、落ち着かない。緊急事態なのだろうか。
「ここは昔、不老不死者の攻撃にさらされていた。結界を見破るような奴が出始めたんだ。それで結界を強めに行ってきた帰り道、浄化神の一人が協力してくれといってきた」
彼は、自分たちだけでは不老不死者の暴走体を殲滅できない。力を貸して欲しいといってきた。当時ここにいた神族の数は約四百。ここは神族の都市だったのだ。
「だがそれより以前、オレたちを作った“創造主”は、浄化神たちに力を与えていた。それで、オレたちはあまり乗り気ではなかった」
「創造主?」
「…まず、そこから話さなきゃならないか」
 クロノスはため息混じりにそういって、セピア色がかった過去の映像を切り替えた。
 暗い、闇の中に光る、金色の泉。そこからあふれ出す光が、世界にだんだんと広がっていく。
「これは…?」
 ヴァルスの問いに、クロノスが光の泉に近づいて説明し始める。
「この泉は、世界の根源だ。いや、混沌のことじゃない。“世界そのもの”を作り出す、創造主の力の具現」
「創造主の力の…具現」
「この泉から溢れる光は、数々の世界。創造主…本当のエターナル・シードを持つ、全ての世界、全ての魂の母の力だ。オレたちは、その母に創られた。本来は人間が創れないはずの特殊能力を持つ人間としてな」
「創られた……?」
「私たちも?」
 双子が呟く。驚きを隠せないのだろう。旧世界では、この星の外――宇宙というらしい――にいく術も開発されていたと聞くが、その更に外があり、あまつさえそこで世界が創られているとは。
「創造主は気まぐれだ。ここにいる。だがここにいないようなものだ」
「はあ?」
 ヴァルスが間の抜けた声を上げる。
「単刀直入に行こう」
クロノスが言った。それから一呼吸置いて、その事実を口にした。
 驚くべき事実。信じがたい現実。だが、それほど違和感は無かった真実。
「この樹が、創造主だ」

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 ついにそれぞれの過去が明らかに。ただ、前世のシーウたちの関係はさら〜っと解説するだけで終わりそうな予感…。
 ではまた!

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14446Re:Eternal Seed  Act.29オロシ・ハイドラント URL2003/6/11 20:59:52
記事番号14381へのコメント

こんばんは

> 先日、金曜ロードショーでやっていた「マトリックス」なる映画を見ながら、なぜ学校の男子が「マトリックス」という言葉を使っていたのかやっと理解した私。というか意味は別にあるのか…?私の感想としては映画は面白かったですね。戦闘シーンがかっこよくて。
「マトリックス」はあんまり覚えてないです。
随分と前に見ましたから。
まあ面白かったとは思いますけど……。

> 自分が異端者でいることで、過去の、もしくは全く違う、自分となっていたかもしれない人物との区別をしていた。そうでもしなければ、他に自分を証明することができなかった。
辛いですね。
異端者といえば、私も異端者っぽいと思ってますけど、全然スケールが違いすぎる。
私には、自分の証明とか、全然気にしたことないし、リアルにという意味では全然分かりませんから、こんな一文が書けるのは凄いと思います。

> そんな、いつ終わるとも知れない幸せの中に、彼らはいたのだ。
> ハヤテは、目を開けた。今ある現実に復帰するために。過去の幻影に浸ってばかりいられないからだ。
辛いでしょうが、前向きにいきましょう、ということですね。

>「この泉は、世界の根源だ。いや、混沌のことじゃない。“世界そのもの”を作り出す、創造主の力の具現」
>「創造主の力の…具現」
>「この泉から溢れる光は、数々の世界。創造主…本当のエターナル・シードを持つ、全ての世界、全ての魂の母の力だ。オレたちは、その母に創られた。本来は人間が創れないはずの特殊能力を持つ人間としてな」
>「この樹が、創造主だ」
これまた凄いものに出会えましたね。
エターナルシード……種って比喩でもなく、「種」なのでしょうか?


それにしても、今回、投稿いつの間に! って気持ちです。
(軽い)風邪でダウンしてた時でしょうかねえ?
今回もお疲れ様です。
今後もがんばってください。

それではこれで失礼致します。

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14458種…シード飛龍 青夏 E-mail 2003/6/13 23:54:47
記事番号14446へのコメント

 こんばんは。飛龍青夏です。コメントありがとうございます!

>> 自分が異端者でいることで、過去の、もしくは全く違う、自分となっていたかもしれない人物との区別をしていた。そうでもしなければ、他に自分を証明することができなかった。
>辛いですね。
>異端者といえば、私も異端者っぽいと思ってますけど、全然スケールが違いすぎる。
>私には、自分の証明とか、全然気にしたことないし、リアルにという意味では全然分かりませんから、こんな一文が書けるのは凄いと思います。

 「自分が自分である事」については、私は以前とても深く考え込んでいました。たとえば、自分の両親が出会わなかったら、私はここにいなかった。もし出会っていたとしても、性別が違ったらまったく違う性格だったかもしれない。名前だって違っていただろうし、育った環境も今と全く同じではありえない。
 もし、自分が記憶喪失になったとしたら、別の人格が現れるだろうとか。
 もし、自分に兄や姉がいたらもっと甘えていただろうとか。
 もし、自分が「あのとき」「それを」「受け取らなければ」……。
 とかなんとか、いろいろ考えていたわけです。でも、今ある現実は現実で、事実なのだろうと。そういう結果に落ち着きました。
 ただ、もっと深く考えると、今ある現実は「本当に現実なのか?」などとさらに深みにはまってしまうので、とりあえず今回はこの辺でとめます。

>> そんな、いつ終わるとも知れない幸せの中に、彼らはいたのだ。
>> ハヤテは、目を開けた。今ある現実に復帰するために。過去の幻影に浸ってばかりいられないからだ。
>辛いでしょうが、前向きにいきましょう、ということですね。

 ハヤテはある意味とても前向きなんですが、一番「過去」に縛られている人かもしれません。彼の性格上どうしても記憶に縛られてしまうのです。

>>「この樹が、創造主だ」
>これまた凄いものに出会えましたね。
>エターナルシード……種って比喩でもなく、「種」なのでしょうか?

 種=シード。ということで、育っていくもののイメージでこの言葉を使っています。ですがまだまだ裏があったりなかったりと…(おい)。
 それから、このちょっと後にちょっとL様風の女性が登場します。ええ、おそらくL様風です。たぶんというかほぼ間違いなく。気まぐれだが最強、のような…(汗)。

 次回で三十話達成です!ハイドランドさんのコメントや、読んでくれている人たちのおかげでここまで続きました。これからもよろしくおねがいします!

 ではまた!