◆−はじまりの刹那−ひな(3/20-02:01)No.1447
 ┣Once upon a time−ひな(3/23-02:05)No.1463
 ┃┣Re:Once upon a time−ぐっち草(3/23-23:48)No.1470
 ┃┃┗コメント感謝!−ひな(3/25-00:53)No.1475
 ┃┣Re:Once upon a time−灰(3/25-08:24)No.1478
 ┃┃┗おひさしぶりです−ひな(3/26-00:31)No.1482
 ┃┣Re:Once upon a time−灰(3/25-08:25)No.1479
 ┃┃┗すみません!−灰(3/25-08:32)No.1480
 ┃┗Re:Once upon a time−ライム(3/25-15:07)No.1481
 ┃ ┗はじめまして−ひな(3/26-00:45)No.1483
 ┣雰囲気がスゴク好きです!−わたり 涼(3/24-15:42)No.1472
 ┃┗Re:雰囲気がスゴク好きです!−ひな(3/25-00:33)No.1474
 ┗此処より永遠に−ひな(3/26-17:50)No.1488


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1447はじまりの刹那ひな 3/20-02:01


ふたたびお邪魔します、ひなです。
また短編のっけちゃいますけどこんなんばっかだなーわたしは。
しかもありがちネタ。こまったこまった。
なんか、すげーおバカな学園ものとかもやってみようかなと思う今日このごろ。



『はじまりの刹那』




短い生涯
とてもとても短い生涯
六十年か七十年の




あんた、傭兵だね。
おや、違ったのかい。まあ、元傭兵だろうと何でも屋だろうとどうだっていいさ。
こっちへきな。どうせ急ぐ用もないんだろう。
こんな辺鄙なところをうろうろしている旅人なんてそうそういないもんだよ。
いいから、ここにお座りよ。話があるんだ。
こんな眠たくなるほど平和な、小さな町に長く住みついていると、あんたみたいなよそ者が珍しくてね。
ただの詮索好きなばあさんと思わないでおくれよ。
これでも昔は巫女のはしくれだったんだがね、宮仕えにうんざりして飛び出しちまったんだ。巫女の
知識なんてもんは、あそこじゃ権力を支える道具になり下がっちまうんだ。
「知」と「権力」は密接に結びつくってほんとうだよ、まったく。国同士の諍いや権力闘争が何だっていうんだい?
もっと恐ろしいものがこの世に息をひそめているっていうのにさ。
それはいいとして、あんた、流れ者になってからどれくらいになる?
ほう、そりゃ長いね。何の事情があるのかは知らないけど、傭兵稼業をそんなに続けられるやつなんて
めったにないよ。そのうちみんな落着いた暮らしや人並みの生活が恋しくなるもんさ。
金や地位や名誉や女に執着したことはないのかい?
ふん。欲望や煩悩なんかは母親のお腹に忘れてきたって面構えをしているね。
いい若いもんが、年寄りみたいな口をお聞きでないよ。
苦しみがない代わりに大した喜びもなく、憎しみに心を汚されない代わりに愛の高みへと到達することもなく、
心の平安はあっても生きている実感はない。
そんな生き方は死んでるのと変わりないんじゃないかね。
世界を動かしているいちばんのおおもと、最も根源的なものは人間の欲望さ。
ひとの生きようとする意志は、はげしくせめぎあって矛盾に満ちた世界をつくりだす。
人間の世界は恐ろしい混乱と戦、矛盾と悲惨の繰り返しだが、それもこれも、ひとえに人間の欲望が
おおもとにあるゆえだ。
そう、いまは柳に風って風情のあんたも、その混乱のなかにたたきこまれることになる。
あたしにはわかるんだ。
正真正銘のトラブルが、近づいている。嵐が雷を両腕に抱いて近づいてくるように、なにかがあんたに
むかってやって来る。
それはあんたの嵐だ。あんたに生命をいま一度吹き込み、破壊し溶け合わせる風だ。
あんたの世界にふたたび根源的なカオスを賦活するような力を司るもの。
あんたの欲望を生き返らせるもの。
ああ、もちろん正確にはそれが何かわからないよ。
だがようく覚えておきな。矛盾し苦しみなお欲望する、そこにしか人間存在の本質はありえない。
いまから心の準備をしておくんだ。もっと、もっと強く望んでいいのだと。
貪欲に欲しないかぎりなにごともはじまりはしないだと。
あんたのほんとうの生がはじまろうとしている。あまりにも短い、かけがえのない生だ。
嵐がやってくるよ。あんたの心をかき乱す嵐が。
しつこいようだが、欲望を恐れるんじゃないよ。
そして、あんたの嵐をだいじにするんだ……。
なぜなら、あんたの存在理由はそこにしかないからさ。




広大な宇宙の闇に刹那瞬き
消えていく無数の星々のような




あたしが予見することのできる、いちばん確かなことは一瞬の情景だけだ。
黒々とした緑の重なる木々、刺すような真昼の光。
杉のにおいを感じながら、あんたが剣をおさめて振り返る。
そしてあんたの目が、閃光のようなするどい一瞥をとらえる一瞬。
その、ぎらりと光るダイヤのような瞬間、あんたははじめて「生きている」ことを感じる。
何かがかちりと組み合わさるのを感じて、「これからがはじまりだ」と直感する。
賭けてもいいけど、あんたが世界に別れを告げるとき、はっきりこの瞬間を思い出すだろう。
誰にでも、そういう瞬間があるものなのさ。
心の奥深くに金の額縁に飾られておさめられている、永遠を孕んだ一瞬がね。





「お嬢ちゃん、名前は?」
「――リナ。ただの旅人よ」





Fin.


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1463Once upon a timeひな 3/23-02:05
記事番号1447へのコメント

このツリーはガウリイツリーです(いつのまにッ!?)
その割に本人があまり活躍しないよーな気がする・・・(汗)。
ともあれ小話をもう一つ。
しっかし、中途半端な話だなー・・・。



『Once upon a time』



「ガウリイ? ガウリイじゃないか!?」
 とある町の、小さな酒場のカウンターに腰を下ろした途端、野太い大音量が店中に
響き渡った。
 ぎょっとして振り返ると、ずんぐりした体躯の中年男が、目をまん丸にしてこちら
を眺めている。
 ガウリイの知り合い? と考える間もなく、
「えっと……ゼッド!? ゼッド、だよな!?」
 隣に座っていたガウリイが、さっきの声に負けず劣らず大きな声を張り上げた。
 おおっ。めずらしくガウリイが人の顔を覚えている!?
 リナが驚く間もあらばこそ、
「ひっさしぶりだなあ、おい、元気してたかあ!?」
 男は小走りにガウリイに駆け寄り、二人はがっちりと肩を抱きあった。
 ゼッドと呼ばれた男は年のころは40前後、白髪まじりの短い髪の毛で、いかつい
顔立ちに満面の笑みを浮かべている。
「ぜんっぜん変わってないなあ、あんた」
 ガウリイが苦笑しながらゼッドの肩を叩いた。
「おまえは元気そうだなあ、ガウリイ。どうだ、調子は?」
「まあまあだよ。そっか、ここはあんたの店だったんだよな。すっかり忘れてたぜ」
「相変わらずだなあ」
 和気藹々とした雰囲気に取り残されたリナに、男がついと視線をむけた。
「おい、ガウリイ、こちらのお嬢さんは?」
「ああ、こいつは俺の相棒だよ」
 ガウリイがぽんぽんとリナの頭を叩いた。リナは愛想良くにっこりと笑う。
「はじめまして。リナです」
 男は背筋を伸ばし、リナにむかって分厚い手を差し伸べた。
「こちらこそよろしく。俺の名はゼッド」
 


「それにしても懐かしいなあ。5年ぶりじゃないか」
 カウンター越しに酒を注ぎながら、ゼッドが話し掛ける。
「そうだな。ずいぶん昔のような気がするよ」
 目の前にならべられた食事を旺盛な食欲で平らげつつ、ガウリイが答える。
「まあな。しかし、ここらへんはちっとも変わりばえしないぞ。毎日毎日同じことの繰り返しだ。 
傭兵やならず者どもがやって来て、大騒ぎしてクダをまいて帰って行く」
 ゼッドは店の客の面構えを見渡して、「わかるだろう?」と言うように肩をすくめた。
「まあ、店を閉めるまで待っててくれよ。つもる話もあることだしな。今日は俺のオゴリだ」
「やったあ」
 思わずガッツポーズをとるリナをガウリイが小突く。
「おまえもいい加減あつかましい奴だな。あんまり食いすぎんなよ」
「わかってるわよ、そんなの」
 リナがちょっと憤慨したように、ぷうっと頬をふくらませる。しかしすぐに機嫌を直して、
「……いい人じゃない。どういう知り合いなの?」
「ん? 昔、ちょっと仕事で世話になったんだ」
 ガウリイはあやふやに笑って受け流した。
 リナはそれ以上突っ込むことはやめた。彼のこういう態度には一抹の寂しさを感じないでも
なかったが、リナは彼の領域に土足で足を踏み込もうとするほど無神経な人間ではなかった。
 ――そんな権利はあたしにはないんだから。
 リナの子供っぽい部分が、そんな拗ねた声をかすかに上げているのが聞こえる。
 だが彼女は気を取り直し、テーブルの上の料理を征服することに専念した。



 黙々と料理を食べているリナに対して、ガウリイは後ろめたいような気持ちを感じていた。
 ゼッドと会えたことは嬉しかったが、それは否応なしに昔のことを、リナを会う以前の
ことを、あの頃の荒んだ記憶をガウリイに思い起こさせた。
 彼はそっとため息をついた。
 ものごとをフェアに運びたいと思うのはリナの性分のような気がする。俺がかならずしも
ものごとをフェアに運ぶ人間でないと知ったら、リナはどう思うだろう。俺の心の歪んだ部分
を知ったら、リナはどう思うだろう。そのときのリナの反応を思うと、ガウリイは不安になって
しまう。
 当時のガウリイは、ささくれだった心を持て余す若い男だった。彼の心の奥深くしまいこまれた
記憶の数々は、悪夢のなかに現れるイメージに負けず劣らず、ゆがんだ形をしている。
 寒々としたがらんどうの部屋で、血錆びかけた剣をいつまでも研いでいた男。戦場跡で死体の
後始末に明け暮れていた男。窓辺にぼんやりと腰掛け、通風孔を見下ろしながら心を苛む虚無感
にふるえていた男。
 乾いた喘ぎ。耐え抜いた沈黙。異臭漂う戦場の長い夜。そこにおちつくと不快な安らぎさえおぼえて
しまう恥の感覚。自尊心を保つためのいつ果てるともしれぬ過酷な戦い。
 いつかこうした記憶をリナに打ち明けるときが来るのだろうか……。
 ずっと、何も話す必要はないと思っていた。俺は既に過去を乗り越えた、あの記憶を封印して新しい
人生を歩み出したんだと思っていた。だがゼッドと向き合っているいまこの瞬間、本当のところ、俺は
まだ過去を乗り越えられていないんじゃないかという疑念がとめどなく湧いてくる。
 いつか――いつかリナに話すときが来るだろう。
 秘密にしておく理由はないのだし、そんなのを墓まで持ってゆくなんてごめんだった。
 いつかはリナに打ち明けろよ、とガウリイを突き動かすのは、彼の心のなかでも最も清らかな部分だ。
 リナに対して、誠実かつ正直でありたいと願うのなら、いつかは――すべてとは言わないが――
おまえの心の歪んだ部分を理解してもらうよう、努力しなければ。
 おまえがリナに対して愛という感情を抱いているのなら、過去を完全に乗り越えなければ。
 なぜなら愛という感情は、この世でもっとも単純で、もっとも強力で、もっとも容赦ないものなのだから。
……そんなことをうつらうつらと考えながら、いつしかガウリイは夢と現の境を漂い始め、バッカスに
誘われて夢の世界へと旅立っていった。




「寝ちゃったわね」
 しんと静まり返った酒場のなかに、リナの声が響く。
 カウンターに突っ伏して、イビキをかいている相棒を呆れたように眺めているが、リナの表情も
ややほろ酔い気味である。
 ついさっき、ゼッドが客を追い出して店を閉めたばかりなので、酒場は急にがらんとした寂しさに
包まれたように思える。
「やれやれ、ようやくゆっくり話ができると思ったのにな」
 ゼッドがため息をついて、晩酌の用意にとりかかった。
「まあ、仕方ないか。それに、リナの話を聞くほうが面白そうだしな」
 鼻歌を歌いながら、どうやらとっておきらしい醸造酒を取り出した。
 短い太い指が、驚くほど器用にチーズを切り分け、滑らかな動きでふたつのグラスに醸造酒を
注いだ。リナは一連の動作を感心して眺め、いつのまにかこの男に好意を持っている自分に気が
ついた。
「ずいぶん器用なのね」
「15年も酒場を切り盛りしてると、これぐらい朝飯前さ」
 ゼッドは明るく笑った。
「でもな、安酒場の経営だけじゃ生活が苦しくてね。けっこう手広く仕事をしているんだ。傭兵
どものために仕事の仲介業をすることもある」
「へえ。ガウリイと知り合ったのも、それで?」
「そーゆーこと。いくつか仕事をまわしてやったのが縁で、親しくなったんだ」
 ゼッドはごくごくと醸造酒を喉に流し込んだ。端で見ていても気持ちいい飲みっぷりだった。
 ふう、と息をついて、彼は嬉しそうに話し出した。
「いや、しかしガウリイがずいぶん変わったんで、俺は本当にびっくりしたよ」
「以前は頭が良かったとか?」
 彼は可笑しそうに笑い、いやいや、と首を振った。
「ま、頭の中身はあのまんまだが、何というのかな、雰囲気が違っていたんだ。すごく穏やかな
感じだった。うん、はじめて見たときは別人かと思ったよ」
 リナは小首を傾げて、彼女の隣で眠っているガウリイを見た。リナの知っているガウリイは、
はじめて出会ったときからずっと変わっていないような気がするのだ。日だまりのようにあたたかい、
自称リナの保護者。
「まあ、古い知り合いが幸福なのは嬉しいことだ」
「幸福?」
 まさか、と笑い飛ばしかけて、リナは口をつぐんだ。
 ゼッドが真剣な眼差しでリナを見つめていたからだ。
「うん、俺はそう思うよ。昔のあいつはあんな風に笑うことはなかった。あんなに優しくは
なかったよ。ほかの連中とおなじ、自分の腕だけが頼りの、自堕落な、まあ要するに傭兵向き
のやつだったんだ。自分の人生を粗末にしていた。そもそもあの頃のあいつの人生には、愛って
いうもんが欠けていたんだろうな。でもな、あいつの顔にはなにかがあったよ。
君も知っている、まともな善人の顔がな。だから、俺は思ったんだ。もし、何かチャンスが
あれば、あいつは立ち直ってまっとうな道を歩いていけるんじゃないかってね」
 ゼッドはチーズを一切れつまみ、自家製の醸造酒で流し込んだ。
「それで?」
 リナが言葉少なに先を促した。
「だから俺はなるべく地道な仕事をまわしてやった。あいつもけっこう真面目に仕事をこなし
ていたよ。もともとがはたらき者だったからな。うまくいくかと思ったんだけど、残念ながら
いろいろあってな。結局、あいつはその日暮らしの傭兵稼業から足を洗うことはできなかった。
当時の俺も自分のことで精一杯だったから、それ以上あいつにしてやれることはなかった。
――で、それきりさ」
 そこで言葉を切り、ゼッドは黙った。
 リナも黙りこみ、しばし二人はしずかにチーズと醸造酒を交互に口に運んでいた。
 ややあって、リナが口を開いた。
「いまのガウリイは、ほんとうに立ち直っていると思う?」
 ゼッドはやさしく微笑んだ。その猛々しい容姿とは裏腹の、まるで父親のようなあたたかな
微笑みだった。
「そう思うよ。すこし話をしただけでも、あいつが君のことをとても愛しているのがわかった。
君と、自分自身を大事にして、まっとうに生きていこうとしていることもわかった。何より、
あいつのあんなに幸せそうな様子ははじめて見たからな。あれが立ち直っていなくて何だって
言うんだい?」
 ゼッドはリナに悪戯っぽいウィンクをしてみせた。
「そうね。でも、まだ、きっと昔のことは……」
 リナがためらいがちに口を開いたのを、ゼッドが頷いて続けた。 
「俺も詳しくは知らないけど、ガウリイは年相応に辛い経験もしている。打ち明けるのが難しい
ような過去を持っていると思う。でも、君がいるかぎりあいつは大丈夫な気がするよ。運のいい
奴とは言えなかったかもしれないけど、昔から見込みのある奴だったよ。いまも見込みのある
いい奴だってことがわかって、俺は嬉しいよ」
 ゼッドはふたたびリナに笑いかけた。
「あいつをよろしく頼むよ。知性に恵まれているとは言いがたいが、いい奴だ。そうだろ?」
「ええ、その通りね」
「うん、君もいい子みたいだな」
 ひっそりと笑いあうゼッドとリナの隣で、ガウリイは相変わらずぐっすり眠っている。
 楽しい夢を見ているのか、口元にかすかな笑みをうかべている。
 唇がなにごとかを呟いたが、それは誰の耳にも届かずに消えていった。
 果てしなく広がる闇に怯えることのない眠りが、彼の幸福を物語っていた。
 

Fin.
 

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1470Re:Once upon a timeぐっち草 E-mail 3/23-23:48
記事番号1463へのコメント


ど〜も。初めまして、ひな様。あなたさまの近くに投稿しているぐっち草です!!
>このツリーはガウリイツリーです
いいぞぉぉっ!私は、スレキャラのなかで1番ガウリイが好きなんです!だからとってもうれしいですっ!
>その割に本人があまり活躍しないよーな気がする・・・(汗)。
え・・・そんなこといわないでくだされぇぃ!!(泣)。

>しっかし、中途半端な話だなー・・・。
続き、待ってます(はぁと)!!
  >「まあ、店を閉めるまで待っててくれよ。つもる話もあることだしな。今日は俺のオゴリだ」
>「やったあ」
> 思わずガッツポーズをとるリナをガウリイが小突く。
>「おまえもいい加減あつかましい奴だな。あんまり食いすぎんなよ」
>「わかってるわよ、そんなの」
> リナがちょっと憤慨したように、ぷうっと頬をふくらませる。
・・・・・あのリナが・・・聞き分けがいいっ?すげ―や、ガウリイなんかしたのかぁあぁあぁ?
> リナはそれ以上突っ込むことはやめた。彼のこういう態度には一抹の寂しさを感じないでも
>なかったが、リナは彼の領域に土足で足を踏み込もうとするほど無神経な人間ではなかった。
> ――そんな権利はあたしにはないんだから。
> リナの子供っぽい部分が、そんな拗ねた声をかすかに上げているのが聞こえる。
つっこんでもO,Kだぞ〜、たぶん・・・というか突っ込んでみましょう! 
> だが彼女は気を取り直し、テーブルの上の料理を征服することに専念した。
いや〜。このへんが、リナのリナたるゆえんですね(爆)。

いつかはリナに打ち明けろよ、とガウリイを突き動かすのは、彼の心のなかでも最も清らかな部分だ。
> リナに対して、誠実かつ正直でありたいと願うのなら、いつかは――すべてとは言わないが――
>おまえの心の歪んだ部分を理解してもらうよう、努力しなければ。
・・・・そういうふうにおもいつめてることはきっと有るんでしょうね―。
 > おまえがリナに対して愛という感情を抱いているのなら、過去を完全に乗り越えなければ。
> なぜなら愛という感情は、この世でもっとも単純で、もっとも強力で、もっとも容赦ないものなのだから。
おおっ!かっこいいぞ〜!!!
漂い始め、バッカスに
>誘われて夢の世界へと旅立っていった。
ってことは。すなおなのは酒のせいか?おまいは。こぉおのく・ら・げは〜(爆)
>「以前は頭が良かったとか?」
それも可(笑)。
日だまりのようにあたたかい、
>自称リナの保護者。
う-ん、いいねえぇぇっ*
>「いまのガウリイは、ほんとうに立ち直っていると思う?」
やっぱりきになるわな!あたしもだっ!!

雰囲気が温かくてとってもいいですね!!あたしもこんな風にいつかかける日がくるといいですぅぅう(しくしく)。こういう話、本当にかいてみたいです・・・。
いまかいてるのが終わったら書いてみるつもりなんで添削を(爆!)お願いしますね!・・どあつかましい奴・・・・さ、さて。夜もふけてきましたし、失礼したいと思います。執筆、がんばってくださいね!!次回作をまってます!!

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1475コメント感謝!ひな 3/25-00:53
記事番号1470へのコメント

はじめまして、ぐっち草さま。
わざわざコメントを寄せていただいて、ありがとうございます。
ほんとにハンパな話でお恥ずかしい限りですが、感想をいただけて
嬉しいかぎりです。

>私は、スレキャラのなかで1番ガウリイが好きなんです!だからとってもうれしいですっ!

あ、そうなんですか。ガウリイはいいですねー。私も好きです(嫌いなキャラなんていないけど)
いじり甲斐のあるキャラクター、とでもいいましょうか(おいおい)。
過去にどんなことがあったんだろうな、とか考えてたらあんな話が出来てしまったんです。
けっこうヒネた奴だったんじゃなかろうか、とか・・・。

>いまかいてるのが終わったら書いてみるつもりなんで添削を(爆!)お願いしますね!

添削だなんておこがましい。
是非感想を送らせていただきます。
それでは、小説がんばって書き上げてください。
このツリーから応援しています。

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1478Re:Once upon a timeE-mail 3/25-08:24
記事番号1463へのコメント

どうも、灰です。
ひなさんは、毎回毎回すごく良いお話を書かれるので、
いつも首を長くして待っています。
・・・・・・・・そのわりには、なかなかここには来られなくて悲しいのですけど。

『Once upon a time』、よかったです。
ここはガウリイツリーなのに、本人があまり活躍しないとのこと
でしたが、いやガウリイ活躍してますよ、他の人達の中で。(と、私は思う)
他の方のレスでも書かれていましたけれど、本当に暖かさが感じられる話でした。
『はじまりの刹那』は、それそのものが額縁に納められている光景のように感じました。
金の、じゃないですけれど。

ひなさんのお話は、スレイヤーズという小説の、ちいさなちいさな情景をそっと切り取って、
それを綴っているように見えます。中途半端なんて事はないです。欠片を集めているような、
繊細さは感じますけれど。
大事に本に挟んで、ずっととっておきたいような、そんな何かを感じさせてくれます。

これからも頑張って下さい。応援してますので。

ではでは、お邪魔いたしました。

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1482おひさしぶりですひな 3/26-00:31
記事番号1478へのコメント

こんにちは、灰さん。
いつも素敵な感想をありがとうございます。
『Once upon a time』はどーにもまとまっていない話なので、
恐縮するばかりなのですが・・・・。

>ここはガウリイツリーなのに、本人があまり活躍しないとのこと
>でしたが、いやガウリイ活躍してますよ、他の人達の中で。(と、私は思う)

私の場合、たとえリナの話でもリナ自身は活躍しません(笑)。
リナの場合は、好きすぎて描けないという理由があるのですが。

>ひなさんのお話は、スレイヤーズという小説の、ちいさなちいさな情景をそっと切り取って、
>それを綴っているように見えます。中途半端なんて事はないです。

ありがとうございます。
もうすこし、他の人が読んで楽しめる(というか、何かを感じていただける)ような作品を描くよう
こころがけますので、そのときはまた読んでやってください。

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1479Re:Once upon a timeE-mail 3/25-08:25
記事番号1463へのコメント

どうも、灰です。
ひなさんは、毎回毎回すごく良いお話を書かれるので、
いつも首を長くして待っています。
・・・・・・・・そのわりには、なかなかここには来られなくて悲しいのですけど。

『Once upon a time』、よかったです。
ここはガウリイツリーなのに、本人があまり活躍しないとのこと
でしたが、いやガウリイ活躍してますよ、他の人達の中で。(と、私は思う)
他の方のレスでも書かれていましたけれど、本当に暖かさが感じられる話でした。
『はじまりの刹那』は、それそのものが額縁に納められている光景のように感じました。
金の、じゃないですけれど。

ひなさんのお話は、スレイヤーズという小説の、ちいさなちいさな情景をそっと切り取って、
それを綴っているように見えます。中途半端なんて事はないです。欠片を集めているような、
繊細さは感じますけれど。
大事に本に挟んで、ずっととっておきたいような、そんな何かを感じさせてくれます。

これからも頑張って下さい。応援してますので。

ではでは、お邪魔いたしました。

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1480すみません!E-mail 3/25-08:32
記事番号1479へのコメント

すみません、二重投稿になってしまいました。
一坪さま、お手数おかけしますが、削除して頂けないでしょうか。
お願いします。

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1481Re:Once upon a timeライム E-mail 3/25-15:07
記事番号1463へのコメント

 はじめまして。ひなさん。
 ガウリイが大好きな、ライムといいます。
 お話を読んですごく感動したので、なんとかそれを伝えたいのですが、
やはり気持ちを言葉に表すのは難しいです。
 なんだか、一つ一つの言葉がキラキラしていて、読み終わったときに
目が潤んでいました。
 読んでいて心地良かったです。
 ひなさんの大ファンになってしまいました。
 また読ませていただきます。
 拙い文で申し訳ありません。感動して言葉が出てこないのです…。

 

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1483はじめましてひな 3/26-00:45
記事番号1481へのコメント

はじめまして、ライムさん。
わざわざ感想を寄せていただいて、とても感謝しています。
小話を読んで感動してくださったとのこと、作者としては
ほんとうに嬉しく、恐れ多いほどです。

> 読んでいて心地良かったです。

そう言ってもらえて安心しました。
ガウリイにとっての根源的な幸せは何だろう? と考えはじめて
書いたツリーですので、読む人があたたかい気持ちになってくれると
とても嬉しいです。

それでは、ライムさんもお元気で。

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1472雰囲気がスゴク好きです!わたり 涼 3/24-15:42
記事番号1447へのコメント

はじめまして、ひなさん。
ここ書き殴りさんを、定期的に巡回しているわたり 涼と申します。

いつも、ここに感想書くのは苦手なのですが、メールアドレス
のほうもありませんでしたので、こちらに書かせて頂きます。

はっきり言って、ひなさんの書かれるお話しに一発で惚れ込み
ました!
私自身も、少々趣味程度にお話書いていますが、文章で雰囲気
を出すのが、一番大変だと思っています。
それなのに、ひなさんの文は凄く綺麗にそれがクリアされていて
ビックリしました。
お話しのネタは、ガウリイとリナにありがちな日常なのに、
突然ストーリーにセピア色のフィルムがかかる瞬間が、ひなさん
の小説にあるように思います。
すっかり「ひなさん」のお話しとして確立できているその力。
なにより、短い文章で、的確に伝えたいことをまとめ、なおかつ
ひなさんのカラーが表現できるなんてっ!
すっかりファンになってしまいました。(^^)

これからも、このツリーに投稿されたお話しは読ませて頂き
ます!!楽しみに待っていますので、執筆活動頑張ってください。

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1474Re:雰囲気がスゴク好きです!ひな 3/25-00:33
記事番号1472へのコメント

はじめまして、わたり 涼さん。
ご丁寧な感想をいただき、ありがとうございます。

>私自身も、少々趣味程度にお話書いていますが、文章で雰囲気
>を出すのが、一番大変だと思っています。
>それなのに、ひなさんの文は凄く綺麗にそれがクリアされていて
>ビックリしました。

そんなに褒めていただけるなんて、恐縮です。
何しろ、雰囲気重視でストーリー性のない話ばかりなので・・・(汗)
原作のスレイヤーズがとても好きなので、自分ごときが話を作るのは
おこがましいという気持ちがあるんですよ。
だから、断片だけの小話しか作れないんです。

>なにより、短い文章で、的確に伝えたいことをまとめ、なおかつ
>ひなさんのカラーが表現できるなんてっ!

そう言っていただけると嬉しいです。
なるだけ自己満足な文章にならないよう、努力いたします。
もっと他人が読んで楽しめる(暗い話ばっかりですが)小話を作れるように
なりたいですね。

それでは、お元気で。



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1488此処より永遠にひな 3/26-17:50
記事番号1447へのコメント

ふたたびひなです。
性懲りもなく、また小話を掲載しますので、読んでやってください。



『此処より永遠に』





そなたたちはかつて何らかの快楽に対して然りと言ったことがあるか?  おお、わたしの
友人たちよ、そう言ったとすれば、そなたたちは一切の苦痛に対しても然りと言ったことに
なる。一切の諸事物は、鎖で、糸で、愛で、つなぎ合わされているのだ、――
――かつてそなたたちが、一度あった何事かの再来を欲したとすれば、かつてそなたたち
が、「おまえはわたしの気に入る。幸福よ! 刹那よ!永遠よ!」と語ったとすれば、そなた
たちは”一切”が帰ってくることを欲したことになるのだ!




 それは一瞬のうちに起こった出来事だった。
 だが、はじまりはごくありきたりのパターンでだった。奥深い山中の獣道で、デーモンの群れに
出くわしただけのこと。
 何が原因だったのか、それさえもよくわからない。
 足場の悪さにとまどい、ガウリイと引き離されてひとしきりデーモンたちと戦ったあと。
 デーモンの咆哮が聞える方角に向って、リナは駆け出した。
 ちょっとした台地に足を踏み入れると、ガウリイがすこし離れた先でこちらを振り向いたのが見えた。
 数匹のデーモンらが彼の足元に倒れている。 
 リナはガウリイに向って大声で叫んだ。
「レッサーデーモンは何とか追い払ったわ! あとは……!」
 ガウリイの視線が、リナの肩越しに動いた。
 彼の目が大きく見開かれると同時に、すさまじい衝撃と灼熱の痛みが背中で爆発した。
 体がふっと宙に浮く感覚とともに、しまった、やられた――という苦い認識が頭のなかで弾ける。
 それも束の間、地面に叩き付けられる衝撃が全身を襲う。
 ガウリイの何かを叫ぶ声が、遠く耳をかすめたような気がした。
 だがつぎの瞬間、脳を焼き尽くす激痛の波が襲いかかった。
 リナは絶叫した。
 叫び、叫び、叫び――そして意識を失った。




 閑散とした小部屋の片隅に、男はいた。
 椅子に腰掛け、がっくりとうなだれたまま、微動だにしない。
 かたく組み合わせられた両手を額に押し当てていて、一心に祈りを捧げているようにも
見える。
「ガウリイさん?」
 ためらいがちに声をかけると、その男はおそろしい勢いでこちらを振り返った。
 振り返ったその顔を見て、若い神官はやや後ずさりかけた。
 糸が切れそうなほど張りつめた表情は、ほとんど殺気立っている。
「リナは!? 助かるのか!?」
 その語調の鋭さに、若い神官は思わず逃げ出したくなった。だが何とか気を取り直し、
「落着いて、話を聞いてください」
 椅子を蹴って立ち上がったガウリイに、ふたたび座るよう促した。
 束の間、ガウリイは何か怒鳴ろうとしたようだが、しぶしぶ椅子に腰を下ろした。
「……で、どうなんだ」
 苛立ちを隠そうともしない眼前の男に向って、彼はゆっくりと話しかけた。
「先程、使いの者にふもとの魔法医を呼びに行かせましたが、魔法医が到着するまでは
我々だけで治療をほどこさなければなりません。リナさんのような重体の患者の治療に
あたっては、我々は素人も同然ですから」
 ガウリイの眼が、ゆっくりと見開かれた。
 きつく組み合わされた指の先が、いまや白くなりはじめている。
「……助かるのか?」
 のどの奥からしぼりだされたような声に、若い神官は慎重に答えた。
「いまの段階では、何とも申し上げることはできません。我々も万全を尽くしますが、
魔法医が到着するまでにリナさんの体力が持つかどうかが問題です」
 ガウリイの唇が、わずかに震えた。
 するどい眼光が急速に萎え、すがるような弱々しい瞳で若い神官を見上げた。
「……。わかった。どうか、リナを頼む」
 つぶやき、ガウリイは力なくうなだれた。
 瀕死のリナをかついで、半狂乱で神殿に押し入って来たときの様子よりも、年老いて見えた。
 神官は頷くと、そっと身を翻して退出した。
 


 かちゃりとドアを開ける音が遠くに聞えた。
 のろのろと顔を上げると、小間使い風の若い男が入ってくるところだった。
 両手に、スープやパンなどをのせた盆を持っている。
「あの、簡単な夕食をつくりましたので、どうぞ食べてください」
 ガウリイは何も耳に入っていない様子で首をふる。
「しかし……」
「いいんだ」
 ガウリイの弱々しい呟きに、男はやや戸惑っていたが、やがて
「わかりました。ここに置いておきますから、食べたくなったらどうぞ」
 皿をテーブルの上にならべて、しずかに部屋から出ていった。
 男の足音が遠ざかると、しんとした静けさがふたたび小さな部屋を満たした。
 ガウリイはぼんやりと椅子から立ちあがった。
 日はとっくに暮れていて、薄い闇が窓の外の世界にひろがっていた。
 束の間、ここで何をしているのかも忘れて、ガウリイは窓ガラスをじっと見つめていた。
 頭に厚い靄がかかっているようで、何も考えることができなかった。
 ガラス越しに、簡素だが手入れの行き届いた庭が見下ろせた。ゆっくりとその庭を眺めていた
ガウリイの視線が、庭のある一角で止まった。
 この庭には不釣り合いなほど華やかな花壇に、やや萎れかけた花の一群が咲いている。
 ブーゲンビリヤか、それともグラジオラスか、花の名前は定かではないが。
 優美なかたちをした、うつくしい色合いの花だった。
 三ヶ月前の記憶が、いきなり戻ってきた。ちょうどあの花が咲き始めた頃だった。
 彼は、リナとともにやわらかな日差しのなかを歩いていた。月一回、この街で開かれるバザールに
行ってきた帰りだったのだ。春とはいえ季節はずれのあたたかさで、道沿いにはあの花が咲き乱れて
いた。
 リナが山ほど買った品物を詰めた袋を、彼は抱えている。彼にはまったく意味不明の商品から、
調味料やライ麦パンやオレンジまで。その量の多さに辟易しながら、彼はすたすた前を歩いている
リナを眺めている。
「リナ」とガウリイは呼びかける。
 夕陽を受けて輝く栗色の髪が宙に舞い、ガウリイを振り返る。彼は両手で抱えていた荷物を
右手に持ち替えて、左手をリナに差し伸べた。
 リナはごく自然に彼の手を握った。やわらかな手だった。とてもとても小さな手だった。
 ふたりは何も言わず、手をつなぎながらゆっくりと歩いた。
 遠くに見える海が、鮮やかな夕陽に照り映え、かすかな潮の香りを運んできた。
 オレンジの香りが鼻先をかすめていた……。そしてガウリイは思った。
 あれは間違いなく、俺の人生でもっとも幸せな瞬間のうちのひとつだった。幸せな3年間の
なかの、もっとも幸せな一日だったのだ。
 あの刹那、俺はすべてを肯定した。
 俺自身と、俺の生のすべてを。たとえこの生が永遠に繰り返すとしても、それを肯定した。 
 なぜなら、あの瞬間の幸福は、俺がこれまで経験しなければならなかった全ての苦悩を
おぎなってなおあまりあったのだから……。
 記憶はまざまざと五感によみがえった。ガウリイは驚き、同時に不安に揺さぶられた。
 ふたりの間を吹き抜けた風のさわやかさ。わずかに聞えてくる波の音。何もかもがあざやかに
よみがえってくる。しかしいま、治療室から隔てられたこの小部屋のなかにいると、俺はリナを
永遠に失ってしまうのではないかという不安が、ますます強く忍び寄ってくる。
 漠然とした恐怖が、いまやひとつの予感として形を成しつつあった。
 突然、ガウリイは思った。
(リナは死んでしまう)
 それは、胸をぐさりと突き刺すほど痛烈な考えだった。
(死んでしまう。死んでしまう。死んでしまう) 
 この世界に、ガウリイをたったひとり、置き去りにして。
 ガウリイの内側にあった何かが、だしぬけに崩れ落ちた。
 ガウリイはよろめき、その場に膝をついた。
 心臓が、いまにも破裂しそうな勢いで喉元で脈打っている。喉にあふれた熱が、息の通路を
閉ざそうとしている。胸は大きくふくれあがったが、肺は必死で空気を探し求めている。眼に涙が
盛り上がった。目の前の光景が二重にかすみ、わなわなとふるえた。
「リナを連れて行かないでくれ……」
 虚空に向かってガウリイは声をしぼりだした。
 苦痛に満ちた激しいすすり泣きにかき消され、声はきれぎれのあえぎに変わった。
「お願いだ、リナを連れて行かないで、神様……どうか……」 
 いまこの時まで、ガウリイは自分が泣くことができるという事実をほとんど忘れていた。
 その彼がいまは泣いている。涙は彼をとらえ、思うがままに彼をさらった。
 涙をせきとめる術も押し戻す術も彼にはなかった。
 恐怖に締め付けられる胸をわしづかみにして、彼は泣いた。
 泣き続けた。




 荒れ狂う悲嘆と恐怖のなかで、心のどこかが、静かに問い掛けてくるのがきこえた。
 おまえはそれでも自分自身の生を肯定しうるのか?
 この絶望、この苦悩を受け入れるのか?
 心の奥深くが、この問いに「然り」と答える声を、ガウリイは聞いたような気がした。
 俺は世界と俺とを否定しない、生それ自身を拒絶しない。
 あの幸福、あの刹那の悦楽にかけて、生の一切を肯定する。この巨大な苦悩さえも肯定する。
 俺は自分自身を欲する、永遠を欲する、回帰を欲する。
 なぜなら一切の悦楽は、永遠を欲するからだ……。
 過ぎ去れ、しかし戻ってこい、と。




 リナに手を差し伸べる。彼女がガウリイの手を握り締める。
 そのまま胸に引き込んで、抱きしめたいような衝動が胸をかすめる。
 だが、そっと握り返すだけにとどめて、ガウリイはゆっくりと歩き始める。
 ふたりの影法師が長く尾をひいて、オレンジ色に染まった光景のなかに溶け込んでいく。
 世界のあまりの美しさに心を打たれつつ、ガウリイは歩いて行く。
 リナの暖かみをすぐそばに感じながら。
 





 ……
 ……
 耳元で、誰かが声を上げている。
 しゃくり上げるような、笑いを押し殺しているような、断続的に続く声だ。
 声は忍びやかだが、いつまでもいつまでも耳元で鳴り響いている。
 まるで、途方に暮れた子供のような泣き声だ。
 ――泣かないで。
 そう言おうとして唇を動かしたが、それはわずかに空気を震わせただけだった。
 重い瞼をゆっくり目を押し開いていく。
 じっと目をこらすと、金色の髪がぼんやりと闇のなかできらめいているのが見えた。
 流れる髪の奥から、小さな泣き声が漏れている。
 ――泣かなくていい。
 鉛のように重い右腕をそっと持ち上げて、わずかに髪に触れる。
 びくり、と大きな体が震えた。
 蒼い瞳が、ゆっくりリナへと向けられた。
「……リナ」
 懐かしい声が漏らした呟きに、リナは微笑んでこたえた。






――だから、もし私たちがたった一つの瞬間に対してだけでも然りと断言するなら、私たちは
このことで、私たち自身に対してのみならず、すべての生存に対して然りと断言したのである。
なぜなら、それだけで孤立しているものは、私たち自身のうちにも、何ひとつとしてないからで
ある。だから、私たちの魂がたった一回だけでも、幸福のあまりふるえて響きをたてるなら、こ
のただ一つの生起を条件づけるためには、全永遠が必要だったのであり また全永遠は、私
たちが然りと断言するこのたった一つの瞬間において、認可され、是認され、救済され、肯定
されていたのである。……





Fin.



冒頭と最後の文章は、「ツァラトゥストラはこう語った」からの引用です。
文責は私ではなくニーチェにありますので、あしからず・・・・・。