◆−いつも二人で−花砂 (2003/6/28 03:40:39) No.14539


トップに戻る
14539いつも二人で花砂 2003/6/28 03:40:39


二人とも、ほぼ同時に立ち止まった。
あたりに人気は無かった。 
だが、油断はならない。

「ナーガ・・あんた、アレどう思う?」

あたしが指差した先には、人が倒れていた。

ナーガは腕組をして、しばし考え込む。
行き倒れのように見えるけど、ああいうのが油断ならないのだ。
そのように見せかけて、騙し打ちをする盗賊や野党を
あたしはゴマンと見てきた。


「そーね、行き倒れのようね」

いや、あんた。
それは見れば分かるって。

「そうじゃなくって、怪しくないか って聞いてんのよッ!」

あたしのタメ息が聞こえたかどうか分からないが、
ナーガは驚いたように、あたしの方を見た。

「何怒ってるの?
 いつものように、あなたの魔法で調べれば済む・・
 っと、あんた一昨日から魔法が使えないんだったわね」

ボッと顔が赤くなるのを感じる。

「あ、あの・・」

何か言おうにも言葉にならない。

「しょうが無いわね。
 じゃあ、今日は私に任せてもらおうかしら」

「・・・おねがい」

ほんとをいうと、少し疲れてもいた。
魔法が使えないのが、こんなにも疲れるものだとは思わなかった。
まるで裸で放り出されたようなのだ。
身を守る殻を、根こそぎ剥ぎ取られたような。

ナーガは、その頭の悪そうな外見にも関わらず、
数多くの隠し技を持っていた。
今日もまた何かやるつもりかもしれない。
もっとも、実は料理が上手いという事実を知った後では、
何が飛び出てこようとも、あたしは驚かないけど。

「で、どーすんの?」

「みてて」

あたしを制して、ナーガはキョロキョロと付近を見回した。
程なく目的のものが見つかったようだ。
彼女が見つけたのは、腕の長さくらいの棒切れだった。

魔法の中には、道具が必要なものがある。
その道具の事を触媒と呼ぶが、
あの棒切れも、触媒に使うのかもしれない。

ナーガは行き倒れのほうに近づいていった。

仮に騙し討ちだとしても、
普段のあたしなら、自分の身を守るくらいどうってこと無い。

でも、今日は違う。

腰から下げた短剣を握り締る。
今日は、この短剣と・・ナーガだけが頼りだった。

肩に少し力が入る。

ナーガは、行き倒れのすぐそばで止った。

棒を振りかざすナーガ。

緊張が走る。

そして、あたしが見たものは・・



「ナーガ・・・あんた、なにやってんの?」

「見て分からない?」

顔を向けずに答えるナーガは、
その棒切れで、行き倒れをツツいているように見える。

「えーっと・・棒切れでツツいてるように見えるんだけど?」

「ええ、そうよ?」

平然と答えるナーガ。

こんな奴信じたあたしがバカだった。

もういいやぁ〜。

そう思うと、馬鹿馬鹿しくなって肩の力が抜けた。
ぺたんと、その場に座り込む。

「ねえ、ナーガ。
 あたしは、お弁当にするけど、あんたどうする?」

堪えきれなくなったのか、とうとうナーガが吹きだした。

「ふふふ。
 じゃあ、私も頂くわ」

棒切れの事は、わざとやっってたんだと気付いたけど、
なんだか怒る気にならなかった。

その日、ナーガの笑顔は とても素敵だった。

----

ナーガとリナのたわいも無い話でス。
つまんなかった人ゴメンナサイ。
ではでは。