◆−幻の美味を求めて!(前編)−アスター (2003/8/26 18:30:36) No.14967
 ┗幻の美味を求めて!(後編)−アスター (2003/8/26 18:31:58) No.14968
  ┗Re:幻の美味を求めて!(後編)−びたちょこ (2003/8/26 19:49:53) No.14970
   ┗Re:幻の美味を求めて!(後編)−アスター (2003/8/27 00:13:14) No.14972


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14967幻の美味を求めて!(前編)アスター 2003/8/26 18:30:36


スペシャルノリでぃす♪


「またれぇぇぇぇい!そこの小娘!!」
「・・・ホヘ?」
突然後ろから聞こえた声に私、リナ=インバースが思わず振り返ると・・・
年の頃は40中頃位だろうか?髪とヒゲが一繋がりになった、体がやたらでかい大男が仁王立ちになっている。
役所に行ったらまず間違いなく山賊頭と間違われて捕まりそうなゴツい男である。
「・・・あの・・・何か?」
私は眉をひそめて尋ねる。山賊だったら周りに取り巻きがいそうなものだが、この男は一人である。それでも用心に越したことはないので男の間合いから微妙に離れて私は話している。
「ホホォォォウ!あくまでしらを切るつもりかぁぁぁぁぁぁ!!」
男はドンッ!と右足を踏み鳴らす。思わず後ずさりする私。
「・・・えーっと・・・いまいち話しが見えないんだけど・・・」
「そうかぁっ!まだとぼけるつもりかっ!なら教えてやろう!」
男はまた足を踏みならす。
「先日からこの村は獣人(ライカンスロープ)に荒らされまくっておる!おぬしであろうがっ!」
・・・えーっと・・・まぁ・・・不愉快なんでとりあえず・・・
「メガ・ブランド。」
私の呪文で男は空高く飛んでいったのであった。
「・・・で?何を根拠に私を獣人だと?」
その男をふんじばり、私はまずそれを尋ねた。その言葉に男は胸を張り
「そんなものはなぁぁぁぁい!」
「いばるなぁぁぁぁ!!」
私は男にドロップ・キックを喰らわす。
「じゃあ何!?根拠もなくアンタは人を襲うの!?アッ!アンタ新手の山賊!?」
「失敬なことをいうなぁぁぁぁ!ワシをあんな下賤な者と一緒にするでなぁぁぁい!」
「・・・何処が違うと・・・?」
「ワシはこの先の街で”ハーブティーのロマンス亭”という店をやっておるただの店主じゃぁぁ!」
「だから何でその店主が・・・って、ロマンス亭!?」
私は思わず声を上げる。
「ウム!最近ライカン・スロープがこの辺りに現れてな!我が町の名物デュック鳥が食い荒らされて困っておるのだっ!」
「デュック鳥が!?」
私は呆然とした・・・
デュック鳥・・・食通ならこの名前を知らぬモノはいないだろう。そのタンパクな風味も絶品ながら生息地域がこのロザール領の一帯にしか生息しない幻の鳥である。肉の腐敗速度が異様に速く、他の領に持ち込むことができないので食べられる場所さえ限定されるという扱いの難しさ。特に繁殖期である冬の季節の精力が詰まった雄鳥の味は一度食べたら忘れられないという。それ故、一部の金持ちしか滅多に食べることが出来ず、食通仲間の間ではこの鳥を食べれるなら親子供をうりとばしても惜しくないとまで言われている。かくいう私も、この鳥食べたさにワザワザ道を外れて、入手しやすいといわれるこの先のアイキス・シティに立ち寄ろうと思っていたのだった。そのデュック鳥が・・・食い荒らされてる!?
私は男の首をひっつかみ声を荒げた。
「とにかく!事情を話して!」
 アイキス・シティ・・・この山間の村がこれだけの発展をなしているのもひとえにデュック鳥のお陰であった。私達はひとまずアイキス・シティまで戻り、男の経営してるロマンス亭に落ち着いたのだが・・・
「・・・何かね、私の聞いてたのとだいぶ違うんだけど・・・」
私はとりあえず椅子に座り、ポリポリと頬を掻いた。
アイキス・シティでは”ハーブティーのロマンス亭”で香りを楽しみつつデュック鳥に舌鼓を打つというのが最高の贅沢だと聞いてきた。ハーブティーの美味しさもさることながら、その店の天国のような爽やかな店内にまさしく天使のような美しい女主人が切り盛りしてることで人気を倍増させていたらしいのだが・・・私の見た所・・・
店内の壁は真っ赤に燃え上がる情熱の赤で塗りたくられ!店の天井には”根性!”の二文字!そこにいるだけでそこはかとなく自分という者が哀しくなる内装はまさに!・・・シクシク・・・
「ウム!実は店に出ていたのはワシの娘でワシは裏でハーブティーを作るだけであった!先日娘が病になってしまってな!ワシが店に出るしかなくなった訳じゃ!!」
「この内装は・・・?」
「どうにも前の空間だとおちつかん!そこで自分好みに変えたという訳じゃ!しかし最近めっきり客が減ってのう!デュック鳥を食い荒らしている獣人を何とかせねばと思った訳じゃ!!」
「・・・いや、多分客が減ったのは獣人のせいじゃないと思う・・・」
「何をいうかっ!現に最近はこの街に訪れる客さえ激減する始末!これも獣人のせいじゃっ!この漢!ゴウガン・ラインソード!もはや黙ってはおれぇぇぇぇん!!」
男・・・ゴウガンさんはそう言うと机をドンッ!と叩いた。
「・・・ねぇ・・・そう言えば私のこと獣人って言ってたわよね?もしかして来る人来る人にアレやってたんじゃあ・・・」
「無論っ!片っ端からやっておった!」
「アホかぁぁぁぁ!!」
思わず私は立ち上がる。
「んな事やったら人が来なくなるにきまってんでしょうが!」
「なにゆえっ!?」
「街に行く途中の山道でいきなり大男に獣人扱いされたら皆ビビッて近づかないでしょうがっ!!」
「おおっ!ソレは盲点!全く気がつかなかったっ!!」
気づけよ。スグに。
「それとっ!内装もすぐ元に戻す!じゃないと客が寄りつかないわよ!」
「なにゆえっ!?」
「だぁぁぁ!天国のような店内と天使のような美人女主人っ!そんなキャッチフレーズに導かれてやってきてみるとっ!地獄のようなむさ苦しい店内にむさい親父がニタリとお出迎え!こんなんじゃショック受けて誰も来ないわよっ!大体何で机の一つ一つに般若の面がおいてあるの!?」
「可愛いからに決まっておろーがっ!」
「何処がじゃぁぁぁ!何が哀しくて般若面と向き合いながらハーブティー飲まなきゃいけないのよ!飲んでる内に何か凄い悪い事してる気分になるじゃない!とにかく内装を変える!そうすりゃ少なくとも女性客は戻ってくるわよ!」
「フム・・・悔しいが一理ある・・・」
そう言うとゴウガンさんは私の目をじっと見つめた。ウッ・・・
「・・・あの・・・?」
こみ上げてくる吐き気に必死で耐えながら私がやっとそれだけ言うと
「あんたさっきの攻撃を見た所強いし頭も良さそうじゃ。どうかな?デュック鳥を食い荒らす獣人を捕まえてくれんか?報酬は金貨10枚にワシの店でデュック鳥食べ放題。」
「デュック鳥食べ放題っ!?」
獣人探しに金貨10枚とは割に合わない話しである・・・が、デュック鳥がただで食べれるとわっ!これを逃したら人間じゃないっ!
「もちろんお受け致しますっ!」
私は速攻でこの話しを受けた。
「獣人が現れたのは今から丁度一ヶ月ほど前からかのっ!それからはチョクチョク現れては食い荒らしおるっ!もはや我慢の限界ぃぃぃ!この漢!ゴウガン・ラインソォォォド!断じて獣人を許しはせんっ!」
「分かりました!分かりましたからっ!いちいち店先で叫ばないで下さい!通りがかりの人達が怯えてるでしょうが!」
私は慌ててなだめる。このゴウガンさん、感情が高ぶるとやたら叫び回る。これでは店にお客さんも寄りつかないハズである。どんなに内装変えても、このオッサンがいたらお客さん来ないかも・・・
「と!とにかく!獣人がよく現れる場所とか分かります!?」
「ウム!それでは警備隊長の所に行くかっ!?」
「へ?そんなに簡単に会えるんですか?」
「何と言ってもワシは元・警備隊長じゃからなっ!警備隊には顔がきくのじゃっ!行くぞっ!漢!ゴウガン・ラインソォォォドォ!きっと獣人を捕まえてやるからなぁぁぁぁ!」
「だぁぁぁ!分かったから黙れぇぇぇ!」
ゴウガンさんと私の絶叫が表通りに響き渡る。スッゲェ疲れる・・・
「獣人が現れやすい場所と言われてもねぇ・・・この山としかいいようがないねぇ・・・」
警備隊長に言われて来てみたのは先ほどの山、ゴウガンさんに獣人扱いされた場所である。デュック鳥が特に生息してる場所といえばこの山に限られているらしい
「まぁ、限定されてる分探しやすいけど・・・それでも山一つってのは大変よねぇ・・・」
「ならば簡単!ワシに良い案があるわっ!」
「良い案?」
「ウムッ!まずは二人で適当な場所に隠れ!来る者来る者を獣人と決めつけ襲いかかる!」
「だからぁぁ!それをやめろって言ってるでしょ!!」
「なにゆえっ!?」
いや、あんたさっきの私の話聞いてなかったんかい・・・
なんかこのオッサン野放しにしておく方が危険な気が・・・
「そうよ!じゃあ発想の転換をしてゴウガンさんを木にくくりつけて獣人が来るのを待って獣人がゴウガンさんを食ってる間に私が呪文で吹っ飛ばすっていうのは・・・」
「待てっ!それではワシの身が危ないのでは・・・」
「大丈夫よ☆案外食われるのって痛くないかもよ☆」
「そう言う問題ではなかろうがっ!第一ワシが死んだらおぬしロック鳥が食えんではないかっ!」
それもそうか・・・良い案だと思ったんだけどな・・・
「とりあえず獣人が現れるのってもっぱら夜だって聞きましたし、ひとまず店に戻って今後の対策を考えましょ」
「ウム!承知した!待っておれ獣人!この漢!ゴウガン・ラインソーードが必ず!あ、必ずやぁぁぁぁ!!」
「分かりました!分かりましたから叫ばないで!」
私はゴウガンさんを引きずって街へと戻っていった・・・
 夜・・・私達は例の山にいた・・・
 店に戻ってもゴウガンさんはやたら叫ぶだけ、結局なんの対策も思い浮かばずとりあえず夜の見回りをすることにした。それにしても、あんなにゴウガンさんが叫んでいて病気の娘さんは本当に休めているのだろうか・・・
「・・・確か・・・他に警備隊の人も見回りしてるっていってましたよね・・・?」
「ウム!」
ゴウガンさんが力強く頷く。
「・・・で・・・確か罠も張ってるっていってましたよね・・・?」
「ウム!」
またゴウガンさんは力強く頷く。
「・・・えーっと・・・この私の前にあるかごって・・・」
「罠に決まっておろうが!」
ゴウガンさんの言葉に思わずめまいがする。私の前には少し大きなかごがあり、中には米粒が入っている・・・これが罠って・・・
「・・・街の人達・・・真面目に獣人捕まえる気あるんですか・・・?」
「当たり前であろうがっ!我等街の者は皆至極真剣!ゆえに夜を徹して獣人を探しておる!」
「こんなもんで獣人が捕まるわけないでしょうがっ!」
「なにゆえっ!?デュック鳥はこの仕掛けでたやすく捕まえられるぞっ!」
「デュック鳥と獣人とは全然違うでしょうが!大体獣人は元々人間なんだからっ!知能は人間並みなのに何でこんなもんにひっかかるのよっ!」
「しかしそう言われてもわが町の名物はデュック鳥!街の者は皆デュック鳥を捕まえるしか能がないに決まっておろうがっ!!」
「威張るなぁぁぁ!」
何か・・・獣人捕まえる自信なくなってきた・・・
その時である
「獣人だぁー!」
声と共に笛の音が響き渡る。まさかいきなりビンゴか!笛の音がした方へ向かっていくと何人かの人影、どうやら警備隊らしい。
「見つけたのか!?」
ゴウガンさんが近くにいた警備隊員に声をかける。
「ええ!警備隊長が発見したらしいのですが・・・」
丁度その時、警備隊長が茂みから飛び出してきた。
「あっちの洞窟に追いつめた!皆そこに向かってくれ!」
警備隊長の命令に反応し隊員達が向かう。
「私達も行くわよ!」
ここで警備隊に獣人が捕まったらデュック鳥食べ放題の話しがなくなる可能性がある。少しでも手を出しておかなければ!私は警備隊の後を追って走り出す!
「・・・この洞窟に獣人が・・・?」
ゴウガンさんのつぶやきが聞こえる。
「なかなかに深そうね・・・」
「まぁ一直線なので迷うことはなかろうがな・・・」
そう言うとゴウガンさんは無造作になかへと踏み込む。
「ちょっと!危ないですよゴウガンさん!ちゃんと中を確かめてから・・・」
「安心せい!この漢!ゴウガン・ラインソォォォド!獣人如きに遅れはとらぁぁぁん!」
「そうですね、じゃあどうぞ。」
「いや・・・出来たらもうちょっと心配して欲しい気も・・・」
そんな掛け合いをしていると・・・
ゴォォォ!
突然洞窟からでてきたのはオーガの集団!
「「ワァァァァァァ!」」
驚いて逃げ出す警備隊ご一行、ポツンと残ったのは私とゴウガンさん。
「逃げるなぁ!何のための警備隊なのよ!」
そう言ってる間にもオーガが襲いかかってくる!
「なにゆえこの者たちはこれほどまでに怒っている!?」
「睡眠中にバカでっかい叫び声が聞こえてきたら誰でも不機嫌になりますよ!」
いいつつ私は呪文を唱える。
「ファイヤー・ボール!」
一匹のオーガが瞬時に消し屑になる。その後私がオーガを一掃するのにさほどの時間はかからなかった・・・
「結局獣人は見つからなかった・・・」
私とゴウガンさんはヘトヘトになりながらも元の場所へと戻ってきたのだが・・・
「やられたぞぉぉ!」
警備隊の大きな声。
「バカな!」
ゴウガンさんはそう言って突然走り出した。私も後に続く。
「・・・!?」
現場に着いて私達は絶句した。そこら中に散らばる鳥の羽、量から察するに軽く十匹は犠牲になったか・・・
「なんてこった・・・このままじゃホントにデュック鳥がいなくなっちまうぜ・・・」
警備隊員の声が夜の森に響く。
「ヌオォォォオォ!このゴウガン・ラインソードがいながらまたしてもぉぉ!」
ゴウガンさんの絶叫が響く中私は辺りを見渡す・・・そして・・・
「・・・ん?」
私はあることに気が付いた・・・
夜明けが近づいてくる。ひとまず私達は解散し思い思いの方向へと散っていったのだが・・・
「ゴウガンさん・・・」
私は前を歩くゴウガンさんに声をかけた。
「もしかしたら・・・近い内に真相が分かるかもしれません・・・」
ゴウガンさんは驚いて私の方を向く。そして・・・
「誠かぁぁぁっ!?分かったぁぁ!このゴウガン・ラインソォォド!命を賭しておぬしに協力しようぞぉぉ!次こそは獣人を血祭りにぃぃぃ!あ、次こそはぁぁぁっ!」
「分かりましたから叫ばないで!寝不足の頭に響くよぉぉ!」
ゴウガンさんの絶叫と私の泣き声が朝方の街に響いたのだった・・・                             (続く)

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14968幻の美味を求めて!(後編)アスター 2003/8/26 18:31:58
記事番号14967へのコメント

「・・・さーて、出てきたわねー」
私の独り言が夜の闇に溶けていった。私は間隔をあけてその影の後を追う・・・

「リナ殿、これでよろしいのかな?」
ゴウガンさんが私の頼んでいたあるモノ・・・警備隊の巡回ノートと町内新聞を持ってきてくれた。
「・・・やっぱり・・・」
私はそれをパラパラとめくり、ため息をついた。
「・・・何かな?リナ殿。」
ゴウガンさんがいぶかしげな顔で尋ねてくる。
「これを見比べてみて気付くことはありますか?」
私が二つを並べてゴウガンさんに見せる。
「ほぅ・・・町内新聞より巡回ノートの方が良い紙を使っておる!」
「えーっと、ここ一ヶ月の町内新聞、巡回ノートの記録を見ますと、ある共通点が見つかるんです。」
私はゴウガンさんを無視して話を続ける。ゴウガンさんは一瞬とても寂しそうな顔を見せるがおとなしく私の話を聞き始めた。やっとゴウガンさんの扱い方が分かってきた。さすが多くの変人を見てきた私である!・・・まともな人生を送りたひ・・・
「この巡回ノートを見ると、警備隊が獣人探しに森に入ると必ずデュック鳥の被害が出るんです。これっておかしいでしょ?」
「しかし、ウチの警備隊ならそれくらいの運の悪さはそう珍しくもないが・・・」
解散しろ、そんな警備隊・・・
「次にこの町内新聞です。見てください、獣人の事件が載ってる新聞の日付と巡回ノートの獣人探しの日付が完璧に一致してるんです。つまりですね、警備隊が巡回しない日には獣人の被害が起きてないんですよ。」
「リナ殿・・・まさか!」
ゴウガンさんの顔色が変わる。どうやら彼も私のいわんとしてることが分かったようである。
「ウチの警備隊の運の悪さはそれほどすさまじいものだと・・・!?」
分かってなかった。
「違いますよ!犯人は獣人じゃない・・・」
私はそこで一区切りおいてかみしめるように言葉をだす。
「犯人は・・・警備隊の中にいるんです・・・」
そして前の被害から三日たった今夜、ゴウガンさんの情報によると警備隊は巡回をするらしい、おそらく犯人は今夜も犯行を決行するはずである・・・
「いいか!!今夜こそ我々は獣人を捕まえる!抜かるなよ!以上!」
警備隊長の声がこだまする。警備隊員はそれぞれの捜索範囲へと散っていく。私も獣人を捜索するフリをする。しばらくすると・・・
「獣人だ!獣人を見つけたぞぉぉぉ!アッチの洞窟に追いつめた!」
”想像通り”の声が聞こえてきた。
「ゴウガンさん、お願いします!」
私はゴウガンさんに耳打ちをする。彼は頷くと
「ウオォォ!リナ殿!我々も助太刀に参るぞぉぉ!!」
と一声叫び、一人で警備隊員と共に駆けていった。私はそれを見届けると草陰に身を隠す。しばらくすると・・・
ガサガサ
草を踏みしめる音と共にヌッと影が現れる。その影は私に気付かずに横の道を駆け抜けていった。
「・・・さーて、出てきたわねー」
こうして冒頭に述べたとおり、私はその影を追跡し始めたのである。

影は手慣れたように森を駆け抜けていく。私も見失わないように一定の間隔でそれを追う。すると影は唐突に止まるとしゃがみ込み何やらゴソゴソし出した。かと思うとその手には何かの箱のようなもの・・・
「・・・アラアラ・・・」
その箱には1匹の鳥の姿。前に見た絵の通りの姿。デュック鳥だった。そう、その箱はゴウガンさんの言っていたあのデュック鳥を捕まえる罠だったのだ。その後もその影は10程の罠を至るところで拾い上げた。その中にはいずれにも1匹ずつのデュック鳥。影はなおも奥へと進む。このまま行くと・・・山を出るぞ・・・
案の定影は山を抜け、隣り山へと入っていった。
「・・・あ!!」
私は息を呑んだ。急に山が開けたと思うと・・・そこにはワンサカとデュック鳥!まさかここって・・・デュック鳥の飼育場!?
「・・・なるほど・・・山からそう離れていないここならデュック鳥の飼育も可能なんだ・・・」
私は思わず呟く。養殖は出来ないが飼育は出来るというわけか・・・ということはやはり獣人が食べるわけではなく・・・その時
シュッ!
私の右方から矢が飛んでくる!私は難なくかわす!
「・・・デュック鳥の利益を独り占めなんて・・・警備隊長にしてはえげつないことするじゃない。」
そう、姿を現したのは村の警備隊長!
「よく見破ったな、魔道士。」
警備隊長は不敵な笑みを浮かべながら矢を構え直す。
「まぁね〜、はっきり言ってずさんも甚だしいわよ、巡回が行われれば鳥が盗まれる、なら警備隊の中に犯人が、なんて子供でも思いつくわよ。」
「それに気付かないからこの村は間抜けなんだ・・・」
警備隊長は爆笑する。
「あんたこの村の出身じゃないの?」
「こんな村の出身だと!?」
警備隊長は怒ったように叫ぶ。
「ふざけるな!むやみやたらと叫ぶおやじが元警備隊長のこの村の生まれでたまるか!!」
・・・まぁ・・・気持ちは分かるけどね・・・
「・・・じゃあ、何故にこの村の警備隊長なんてやってんのよ?」
「俺が聞きたいわ!盗賊やってて変なちびに壊滅されて、ここに逃げ込んで気絶して、気付けばあのおやじに介抱されて気付いたら奴に警備隊長に推されたんだ!」
「・・・うぁ・・・見事に不幸な目にあったわねぇ・・・」
「だがここがデュック鳥の生産地だったとはな!これだけ不幸な目にあったら採算合わしたくなるだろ!?」
う・・・そぅかもしんない・・・
思わず同意しそうになるのをグッとこらえて
「だからって村の人達の経済状況まで悪くしちゃ駄目でしょうが!」
反論する。
「うるせぇ!元はと言えばあのちびがわりぃんだ!胸が小さいくせに魔力はやたらでかくてよ!!」
警備隊長の言葉に私は反応する・・・ん?まてよ・・・こいつの盗賊団襲ったのって・・・
「まだガキのくせにえげつなく宝までとりやがって!あの赤みがかった茶髪もバンダナした姿も全てがむかつい・・・て・・・」
警備隊長も叫びながら気付いてきたようである・・・そして・・・私の殺気も・・・
「んっん〜☆ちょっと言い過ぎちゃったみたい♪」
「ひぃぇぇぇぇ!ウソです!今言った事はウソ偽りですぅぅぅ!」
「今更遅いわぁぁぁ!!」
私がためらわずドラグ・スレイブを放とうとした瞬間!
「モノ・ヴォルト」
警備隊長の背後に突然現れた影の放った魔法に彼はあっさりとのびたのだった。

「ご協力感謝します。リナ=インバースさん」
警備隊長の背後から現れた影。細身の体に動きやすそうな服を身に纏った長髪長身の美女が現れた。
「だ、誰あなた・・・?」
私の問いに
「このロザール領のアイキス・シティ方面を護る命を与えられている守護者(ガーディアン)と呼ばれる職務についている者です☆」
彼女はにこやかに答える。すると・・・
「リナ殿!!言われたとおりリナ殿があちこちの木の幹に残してきた後を辿って警備隊とやってきたぞ!」
計画通りにゴウガンさんが警備隊を連れてやってくる。少しの間そっちに気を取られて私が振り向くと・・・彼女の姿は無くなっていた・・・

「いやぁ良くやってくれたリナ殿!!お主のお陰で犯人が捕まえられた!あ!このゴォォォガン・ラインソォォド!!感謝に絶えぬぞぉぉぉ!ささ!どんどん食べなされぇぇぇ!」
ゴウガンさんの声をバック・ミュージックに、私はただ黙々とデュック鳥をつまんでいた。あの後犯人である警備隊長(名前は聞いたが忘れた)は即刻牢屋行き、見事事件を解決した私はデュック鳥のフルコースをつまんでいた。
いつもなら度突きたくなるゴウガンさんの叫び声さえも気にならないほど私はこの美味に酔いまくっていた。これならばいくら金を積んでも惜しくないであろう。
「それにしても・・・見事に店が改装されてますねぇ〜」
私は一息ついてロマンス亭自慢の香茶で喉を潤しながら店を見回す。綺麗なカーテンに白を基調とした清潔な店内。ゴウガンさん以外は天国のような場所になっている。
「うむ!儂らが出かけている間に娘の病気が治ったらしくてな!残念ながら改装されてしまった!」
ゴウガンさんは涙混じりに悔しがっているが私は安心した。どうやら娘さんは教育間違えずに真っ当な人のようである。
「お父さん、少しは話すの止めないと、リナさんが安心して食べられないわよ」
奥から綺麗な声と共に現れた若い女性・・・
「・・・あ!!」
私は思わず声を上げた。白いエプロンに村娘姿、格好は違うが紛れもなくあの守護者(ガーディアン)と名乗っていた女性だった。
「紹介しよう!儂の娘のロマンシアじゃ!」
ロマンシアと呼ばれた女性は微笑みながら口の前で人差し指をピッと立てる。まるで『私とのことは二人だけの秘密ですよ☆』とでも言っているかのように・・・
「ねぇ・・・もしかして・・・何かここら辺で一大事起こるたびに彼女病気になってない・・・?」
私の耳打ちに
「うむっ!体の弱い子だからな!事件が始まると同時に床に伏せ、食事を運んでもドアを開けずに食べることも返事をすることも出来ず!しかし事件が解決すると元気になって儂と同じくらい飯を食うな!」
ゴウガンさんの答えに私は脱力しまくる・・・どうやら彼女、事件が起こるたびに家を抜け出して出ずっぱりになり、村の人達には気付かれず秘密裏に事を済ますのが仕事らしい・・・てか、何かおかしいと気付けおやじ。あんたと同じくらい食ってどこが病弱なんだどこが・・・
にこやかに接客する彼女を見ながら私は思った・・・
こんな疲れる村、早く出ていこう、と・・・

(デュック鳥を食べれた事だけ)めでたしめでたし
                                                      (終わり)


いかがでしたでしょうか?感想を頂けたら幸いです☆


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14970Re:幻の美味を求めて!(後編)びたちょこ 2003/8/26 19:49:53
記事番号14968へのコメント

はじめまして。へぼ文作者、びたちょこともおします。
原作のふいんきがつたわってくる作品でした。
とてもおもしろかったです。
リナさんさえてるし、オリキャラ親子がほんとにスレスぺにてできそうでそうです。盗賊もいいキャラだしてました。
たのしかったです。
それでは。

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14972Re:幻の美味を求めて!(後編)アスター 2003/8/27 00:13:14
記事番号14970へのコメント

有り難うございます☆やっぱりスペシャルは読んでて楽しいのが良いところですよね☆これからもスペシャルみたいな感じの・・・書ける文才があるといいんですけど・・・(汗)