◆−彼と彼女の恋愛事情−白砂 (2003/9/17 00:16:53) No.15148
15148 | 彼と彼女の恋愛事情 | 白砂 | 2003/9/17 00:16:53 |
春には変な人が出るから注意しなさいって、いつだったか、学校の先生に言われたことがある。 理屈はよくわからないけど、へー、そっかあって、その時は普通にただそれだけ思った。 だって、変な人って。あたし、見たことないし。関係ないって思ったから。 だけど。 関係ないって言っていられたのが。 もう、ずいぶん昔のことのような気がする。 ねぇ、先生。変な人には気をつけろって、具体的にどうすればいいわけ? 道端にいたら、顔を合わせないようにするとか? 近づかないようにするとか? でも、さ。それなら、向こうからやって来る場合って、どうすればいいわけ? 「諦めることね」 …って、小学校からの親友のれーちゃんは言うんだけど。 れーちゃん、それって、あんまりじゃない? あたしに、人生あきらめろって言いたいの? れーちゃんて、すっごいいい子なんだけど。この場合、あたしのこと見て、楽しんでるんだよね。 中立の立場に立つとか言って、それはもちろんホントだろうけど……絶対、楽しんでる。 あきらめるって、あきらめるって……そんなのヤダよぉぉぉぉぉぉっっっ でも、相手はかなり強豪で。 あたしに勝ち目は―――無いに等しいぐらいだったり、した。 とにかく、あたしの相手ってゆーのは、すごい人で。 二年生の先輩で、ここ白聖学院の生徒会長さん。 それだけでも、帰宅部の一年であるあたしからすれば、『すごい人』になるんだけどさ。 その外見も、またすごくって。ウェーブのかかったブロンドの髪に、空色の瞳。 ご両親のどっちかが外人さんらしくって、そんな外見だってことなんなんだけど。 容貌が、ね。まるで、彫刻みたいなの。彫りの深い、かなりの美人さんで。 近づかれると、あたし、正直かなりどきどきする。だって、心臓に悪いんだもん。 ―――それだけなら、いいんだけどさ。 それだけじゃないから、かなり、厄介で。 会長さんと出会って以来、あたしの学校生活ははちゃめちゃだ。 それまでの、平和な日常を返せー! って、何度も怒鳴ったぐらい。 でも、とりあえず、今は会長さんのことはさておいて。 あたしには、目下最優先事項とも呼べることがある。 それを、まずは何とかしないと……あたしの夏休みは潰れてしまう。 「ねぇ、れーちゃん」 図書室で、隣に座ってるれーちゃんを、小さな声で呼ぶ。 「なに」 さらさらシャーペンを動かしながら、れーちゃんは短く答える。 ううう、れーちゃん……なんだって、そんなにすらすら解けるんだよぉ。 「ここ、わかんない」 「また?」 う゛…っ そんなさ、無表情に「また?」とか言われると、ちょっときついんだけどなぁ。 せめて、もうちょっと、呆れるなり苦笑するなりしてくれればいいのに…… れーちゃんてば、外見は綿菓子みたいに可愛いのに、中身はかなりクールだ。 あたし、よく百面相してるって言われるから。少し分けてあげたいくらい。 「そりゃ、さっきから、しょっちゅう質問しちゃってるけど」 「正確には、ここに来てから十二回目ね」 うわっ。何でれーちゃん数えてるのっ? 「……だってわかんないんだもん」 「授業中に寝てるからよ」 「……だって眠いんだもん」 「バカね」 うー、うー。だってさ、お腹いっぱいになった午後の授業なんて、みんな寝ちゃうよねぇ? あたし、一番後ろの席だから、前がよく見えるんだけどさ。 半分以上の子が寝てたもん。数学なんて、先生の声は子守唄だよ。 「寝てるからわからないんでしょ」 「聞いててもわかんないもん」 「聞いててもわからないものを、寝てたらなおさらわかるわけないでしょ。 授業は五十分あるんだから、一問ぐらいは萌にさえわかるものだってあるわよ」 えー、聞いててわかるかなぁ…って、れーちゃんさりげなくひどいこと言ってるし。 れーちゃんはいいよね。勉強、すっごいできるんだもん。クラスで一番。 あたしのは、とても恐ろしくて口になんて出せないけど…… あ、でもね、国語はいいんだよ。三番だったもん。だけど数学が……チ〜ン。 いいな、いいな。れーちゃん、可愛くて勉強もできるなんて。羨ましい。 「で? どこがわからないって?」 言葉はちょっと冷たいけど、でも、ホントはれーちゃん、優しいの。 自分の勉強中断して、さっきから、あたしに教えてくれてるし。 そゆとこ、もう、大好き! れーちゃんてば、れーちゃんてば、優しいんだもん。 だからね、勉強なんて嫌いだけど。放課後、図書室に来て勉強してるの。 れーちゃんが教えてくれるんなら、嫌いな数学だって、やる気になるから不思議。 「あのね、ここ」 数学のワーク、さっきからずっとやってるんだけど。全然進まない。 「………」 「れーちゃん? どしたの?」 沈黙したれーちゃんに、あたしは首をかしげる。 あたしがワーク見て沈黙することなんてよくあるけど、れーちゃんの場合それはない。 どしたのかなぁ、れーちゃん。 「萌、あんたね…」 「なあに?」 「これ、昨日も教えたでしょ?」 あれ??? 「えーっと、そうだっけ?」 「教えたわよ。どうして教えた私は覚えてて、教わったあんたは覚えてないの?」 えー、うー、それは、脳細胞の数の違いかな。 れーちゃんのが、記憶力いいんだもん! 勉強に関しては、あたし、ダメ。 「こーゆーの、苦手なんだよぉ」 「萌は、苦手なのばっかりじゃない」 はう。……そのとーりです、れーちゃん。 でも、でもっ! これはね、その中でも、とくに苦手なんだってば! 距離と速さと時間の関係とかゆーの! もう、だいっきらい!!! お兄さんが十時ちょうどに、時速何キロの速さで家を出て。 二十分後に、弟は時速何キロの速さで家を出て……いつお兄さんに追いつくとか。 すっごい! ややこしい! 何だって、こんな問題があるのよぉぉぉ!? 兄弟なら、一緒に家を出てよっ。何で、わざわざばらばらに出るかなぁ!? 問題解くこっちの身にもなってみろってゆーのよっ。ふんっ 「こんなの初歩じゃない。できなくてどうするのよ」 「べつにいいもん。あたし、文系の大学に行くから」 数学なんていらないんだから。足し引き掛け算、それに割り算ができれば生きてけるし。 「これぐらいもできないようじゃ、大学の前に進級できるかが問題ね」 「はう…っ」 ま、まあ、確かに……生きていくのに必要じゃなくても、進級するためには必要なんだよね。 「だ、だからぁ! がんばって、テスト勉強してるんだよ」 「がんばって?」 珍しく、シャーペンを動かすのを止めて。 あたしの方を見て、れーちゃんは笑った。ふ…って。 にゃあああああっ。れーちゃん笑うと可愛いんだけど、可愛いんだけど…… その笑い、何かヤダよー。れーちゃん、笑い方まで、ひどい。 「あ、ヤダ。もうこんな時間じゃない」 壁にかかった時計を見て、れーちゃん、少し驚いたような顔になった。 つられて、あたしも見る。もう少しで、四時半になるところ。もう一時間もやってたんだ。 「れーちゃん、何か用事?」 「半から、生徒会の集まりがあるのよ」 れーちゃんは、生徒会役員をやっている。それの会計。 「期末前なのにあるの? 勉強優先とか……」 自分の勉強でさえ、あたしはいっぱいいっぱいなのに。 「仕事は待ってはくれないのよ。文化祭まで、あと二月もないんだから」 文化祭かぁ。九月が始まったらすぐにあるんだけど、あたしには、どーも実感がない。 クラスでも喫茶店をやることにはなってる。でも、今のところあたしには仕事なんてないし。 そんな二学期の行事よりも、目先の期末試験のが、あたしにとっては重大事項。 うー、中間みたく、補習にはなりたくないよぉぉぉ。夏休みに学校来るなんて、ヤダ! だから、れーちゃんに勉強教えてもらってたのに…… 「れーちゃん、行っちゃうの?」 カバンにしまってるところから、わかってたんだけど。 「行くわ。仕事があるもの」 れーちゃんそっけない。仕事なら、しかたないけどさ。 「何時ごろ終わるの? あたし、ここで待ってるよ」 「何時ごろかしら。べつにいいわよ、一人で帰りなさい」 ……んだかられーちゃん、そっけなさすぎだってば。一緒に帰りたいのに。 結局、一緒に帰る約束もできないまま、れーちゃんは行っちゃった。 ううう。いいよーだ。一時間ぐらいしたら、生徒会室に行ってみよ。 それまで、一人で勉強してよ。家に帰ると、どーしても寝ちゃうんだよね。 図書室なら、静かだし、何か勉強しよって気持ちになるし…… 「よしっと」 髪の毛を一つにしばって、勉強に集中! ………………………………………………………… ………………………………………………………… あー、何かさっそくわかんないし。やだ、飛ばそ。 えっと、次の問題っと。えっとね、えっとね。 ………………………………………………………… ………………………………………………………… だあああああああああ! 全然わかんないし! やだ! 数学なんて、数学なんて! だいっきらいだもーん! も、いいっ。できなくったって、いいもんだっ。こんなのできっこないもん! 全然わかんないのに、れーちゃんは行っちゃうし。テストまで日数そんなにないし。 うううう〜〜……何か涙出てきたよぉぉぉぉ。 「あ、萌ちゃん! やあっと見つけた〜〜〜っっっvv」 出てきた涙が。ひゅいっと、目に戻って行った。 おお、すごい! 出た涙が戻ったよ! 戻っちゃったよ! …って、そうじゃなくて。うん、そうじゃないんだよ問題は。 聞き間違うはずもないこの声は。あたしが最も聞きたくないそれ。 恐る恐る振り返るよりも先に、後ろからいきなり抱きしめられた。 ああ、やっぱり! 声聞いた時点でわかってたけど、やっぱりそうだ! こんなこといきなりする人なんて、一人しかいない。少なくとも、あたしの身近には。 「あううううっ。会長さん、いきなり何するのぉっ!?」 「うわー。萌ちゃんてばいい抱き心地〜。クセになるなぁ」 はうわあっ。み、耳元でしゃべらないでっ。力いれないでっ ってゆーか、あたしぬいぐるみじゃないし! クセになんかしないでよねぇっ? じたばた暴れると、やっとこさ、会長さんは腕をほどいてくれて。 あたしは、振り返ることができたんだけど。 「会長さんっ!」 文句、言おうとして。言葉、喉につまっちゃった。 何で……何で、こんなにキレイかなぁぁぁぁ? いつもいやになるほど見てるのに。見飽きるってことがない。 髪は光沢があって柔らかそうで。瞳はまるで宝石みたい。 これこそ、お世辞抜きに美人って言うんだろうなって、思えるほどの容貌。 この人こそが、みんなご存知我らが生徒会長サマなわけなんだけど。 美人なのは、いい。ここまでキレイすぎると、ちょっと引いちゃわないわけじゃないんだけど…… んでも、キレイなのはいいことだし。みんなだって、美人な会長のがいいだろう。 だけど、問題は。かーなーり、大きな問題が、一つあったりするんだけど。 この、ストーカーまがいな性格もそうなんだけど。それ以上に。 この人が、男だってことなんだよーっっっ!!! あたし、始めは、会長さんのこと、女の子だって信じてた。 だって、どこからどう見ても、そうだし。キレイなお姉さんだし。 それに、それにっ! あたしと同じ制服着てるのよ! スカートはいてるのよ! これで、『実は男なんだよね』とか言われても、困るのよあたしはーっ ……んだけどさ、会長さん、確かに胸ないし。男の子なんだよね。 うううう、不公平だ! 男の子がこんなにキレイなのに、どーしてあたしは平凡な顔かなぁっ!? 神様のいぢわるぅ。もうちょっと、可愛くしてくれてもよかったのに。 「萌ちゃん、今日は一緒にお昼食べれなくてごめんね。 先生に用事があって呼ばれちゃってさぁ。断れなかったんだよ」 「べつにいーよ」 会長さんは申し訳なさそうに言うけど、あたし、気にしてないし。 ってゆーか、何か、いつのまにか一緒にお弁当食べることになってるけどさ。 あたし、約束したおぼえはないんだよね? 会長さんが勝手に来るだけでさ。 まあ、いつも四時間目が終わるとすぐに来るのにさ。 今日は来ないから、どうしたのかな、とか……思ったけど。 でもべつに! それは、会長さんと一緒に食べたいわけじゃないし。 ただ、どうしたのかな、って、ちょっと思っただけでさ。 あたしは、久しぶりにれーちゃんとお弁当食べれたし。それはそれで嬉しい。 「萌ちゃん、私に会えなくて寂しかったでしょ?」 「寂しくなかったよ。れーちゃんと一緒だったし」 「そんな強がり言っちゃって……ほんと、萌ちゃんは可愛いね」 隣のイスに座って、あたしの頭をぽんぽんと叩く。 だー、かー、らー! 何で、自分に都合のいいように解釈するかなぁ、この人は!? 会長さんと話すのって、すっごい気力が必要。通じないんだもん。 「あれ、萌ちゃん、勉強してたの?」 机の上に広げたまんまのワークを見て、会長さんが言う。 勉強、ってゆーか……しようとは思ったんだけど、何か全然進んでないし…… 「い、いちおう、してた、のかな…?」 うわ。自分で言いながら、すっごいあいまいなセリフだし。 ちらっと会長さんを見ると、小さく笑ってた。うううううーっ 「あんまはかどってないのかな?」 あんまてゆーか、全然だったりするんだけど…… 「うー。んだって、わかんないんだもん」 テストのたんびに思う。れーちゃんの頭がほしい。 「萌ちゃん、数学苦手だからねぇ」 「ふえ?」 会長さん、何で知ってるの? 「中間の時も、補習だったよね」 「え、う、うん」 そうなんだよね。そうなんだよ。赤点とっちゃったんだよ。 おかげで、みんなは遊んでる自宅学習中、あたしは学校に来てたんだよ。 だけど、何でそれを、会長さんが知ってるの? 生徒会長だから? 中間の頃は、会長さんとは知り合いじゃなかったんだけどなぁ。 会長さんと知り合ったの、七月になる前辺りだったし。 相変わらず、よくわかんない人だ。女装も含めて。 何か理由はあるらしいんだけど、教えてくれないし。趣味でも、オカマさんでもないらしいし。 ……よくわかんないのー。 「終礼終わってから、ずっとやってたの? ここで」 「うん。さっきまで、れーちゃんいたんだけど、生徒会で行っちゃったの」 …って、そーだよ。会計のれーちゃんは、生徒会の仕事があるんだよ。 なのにどうして、生徒会長であるこの人はここにいるんだ? 「会長さん、仕事は?」 睨み付けるようにして言っても、会長さんは笑ったまま。 「だいじょーぶ。私、有能なんだってば。それに、萌ちゃんといる方が数十倍は楽しいしねぇ」 楽しいとか楽しくないとかじゃなくてさ。ちゃんと仕事してよ、会長さん。 平気なのかな、うちのガッコ、こんな人が会長やってて…… だいたい、どうしてこの人が会長になったんだか? 去年の生徒会選挙、何やってたんだよぉ。 「それに萌ちゃんは、人の心配より、まずは自分の心配でしょ? 大変だよぉ、期末の補習は。サマースクールって言ってね、夏の暑い時にわざわざ学校に来るんだから」 「う゛…っ」 や、ヤダよぉぉぉぉ。せっかくの夏休み、学校になんて来たくない! そりゃ、学校に着いちゃえば、クーラーきいてて涼しいけど。 それまでの道のりがっ。あたし、寒がりだけど暑がりなんだよっ 会長さんの言うとおりになるのって、何かヤだったけど。 でも、確かに、人の心配してる場合じゃない。 「ううううー…」 うなりながら、ワークに向かっていく。素晴らしいほどの雪景色。 何時間やっても、全然埋まらないんだよね、これが。 疲れてくると、燃やしたらキレイかなー♪ とか考えちゃって、怖い。 「萌ちゃん、ちょっと貸して」 会長さんが、ワークを自分の方に向けた。シャーペンを持って。 さらさらさらさらー うわわわわわわわわっ。は、早ッ!!! 会長さん、考えてるのか!? あたしがさっきからずっと躓いてる問題、一秒で解いちゃったよ!? この会長さんだから、でたらめ書いてるのかも、とか思って、答えの冊子取り出したんだけど。 ……合ってるし、途中の式から答えまで全部。 「か、会長さん、すごいよっ!」 「そりゃ、私は二年だからねぇ」 いや、いくら二年だからって、すごくないか? これは? だってあたし、中学の問題出されても、数学だったら絶対考え込むし。 簡単な問題でもさ、やっぱ、忘れるものじゃない? あたしは、普通に忘れる。 今始めて、あたし、会長さんのこと見直したかも。 ただ、キレイで変なだけじゃなかったんだねぇ、会長さん…… 「会長さんて、もしかして、頭良かったりする?」 「んー、べつに、そこまで良くもないけど……とりあえず、学年で一桁はキープしてるね」 うげっ。ひ、一桁ぁ!? 二年生って、確か三百人ぐらいいるのにっ!? あたしなんて、あたしなんて……良くて真ん中、下手するとそれより後ろだってのに…… 何か、すっごい差ぁ見せ付けられた気分だよ。 ……うー、会長さん。侮りがたし。 「いいな、いいな、会長さん。補習なんて無縁なんだ」 あたしなんて、サマースクールが呼んでるよ。 「いいじゃない、萌ちゃん。補習になったら、私、付き合ってあげるよ♪」 「遠慮しときます」 会長さんなんかがいたら無理。勉強どころじゃないし。 ってか、補習にまでついてくるのか、この人は!? 「遠慮なんていらないのに。私達の仲で……」 どんな仲だよ。ストーカーと、それに付きまとわれてる関係で。 「一人でがんばるから、大丈夫だもん」 ワーク、引き寄せて。もいちど、シャーペンを握りなおす。 「がんばれるの? 萌ちゃん、その調子で」 その調子で、と指すのは、真っ白な数学のワーク。 ……う、うぐっ…… 痛いとこ突かないでよ、会長さんのバカっ 「良かったら、私、勉強見てあげようか?」 「ほえ?」 ちょっと驚いて顔を上げると、優しそうに微笑んでいる会長さん。 少し考えて、あたし、その言葉の意味をやっと理解した。 「え……いいの?」 見てくれるんなら、嬉しい。すっごい嬉しい。 会長さんてば変だけど、勉強できるみたいだし。 この際、サマースクールを乗り越えられるのならば、会長さんの変な部分にも目を瞑ろう。 ホントなら、れーちゃんに見てもらうのが一番いいんだけど。でも、れーちゃん忙しいし。 「だってさ、会長さん、自分の勉強は?」 「大丈夫だよ。萌ちゃんみたく、切羽詰ってるわけじゃないし」 ちょっとムカ。 「それに、萌ちゃんの見ながら、自分のだってできるしね」 うー、器用な人だなぁ。あたし、自分のだけでも手に余ってるのに。 「んじゃ、決定。明日、土曜だし。うちにおいでよ。見てあげるから」 「うんっ」 あたし、力いっぱい頷いた。 はうー、やったねやったね! これで、少しは大丈夫かなぁ? さすがに、二回続けて補習になったら、親もうるさいだろうし…… 持つべきものは、勉強のできる知り合いだね。 んで、結局れーちゃんは捕まえられなかったから、二人でいつものように帰って。 あたし、会長さんの家なんて知らないから、待ち合わせとか決めて。 夜の電話で、れーちゃんに、そのことを言ったんだけど。 そしたら、れーちゃんは一言。 「萌。あんた、会長にハメられてない?」 …はっ そ、そーいえば、何か普通に家に行くことになっちゃったけど…… これって、完璧にはめられてる!? 会長さんの思うツボ!? 学校だけでもしつこくて、嫌気がさしてるぐらいだってのに…… あたしってば、それなのに自分から家になんて行くなんて、もしかしてすっごいバカ? 「ま、せいぜい食べられないように気をつけなさいね」 れーちゃんは、いつもと同じくそっけなくそう言って、電話を切った。 つー、つーって、むなしい音を聞きながら、ちょっと考え込む。 食べられるって……食べられるって……どゆことだ? むうう、れーちゃんの言うことって、いっつもよくわかんない! も少し、わかりやすく言ってくれないかなぁ、れーちゃん。 今度会ったら、聞いてみよ。明日、会長さんに聞くかな? 期待どころか不安を胸に、とにかくあたしはベッドに入ったのだった。 **おわり** −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− 皆様初めまして。このたび初の投稿をさせていただきました、白砂(はくさ)と申します。 いきなりのオリジ投稿。良かったのかしら? と、かなり不安でございます。 この話は、他サイト様に投稿させていただいている物の、番外編になります。 なので、読みながらよくわからない処が多々あるかと……申し訳ございません。 批評等、お聞かせ下さればありがたいです。よろしくお願い致します。 |