◆−運命の恋−ぽち(4/12-20:17)No.1580


トップに戻る
1580運命の恋ぽち 4/12-20:17



「運命の恋」


「ねぇリナさん?」
月の灯りがほのかに差し込む、薄暗い室内。黒髪の少女
は意を決して、隣のベットに声を掛けた。

「なあに、アメリア」
返ってきたのは、眠そうな声。

「ガウリイさんと一緒に寝なくていいんですか?
あたしに気を使わなくてもいいんですよ」

がばっ。
「ア、アメリア。何言ってるかなぁ。な、なんであたし
がガウリイと……」

「リナさん、もう結婚してるんだから、
今更照れなくてもいいですって」
勢いよく身を起こし、パタパタと手を振っているリナの
姿にアメリアは苦笑する。

「もぉーーー」
顔を赤くして俯いてしまったリナに向かって、
アメリアは質問を投げかけた。

「本当におめでとうございます。でもどうして、
ガウリイさんと結婚することにしたんですか?
プロポーズの言葉は何ですか?」

かつて、生死を共にした旅の中で、リナとガウリイが、
互いに惹かれ合い他人には入ることのできない深い絆で
結ばれていることはよく知っていた。
だが、魔術に関しては天才の栗色の髪の少女は、
こと恋愛に関しては、年下の自分から見てもじれったい
ほどに不器用で照れ屋で、青年が彼女を見つめるだけで、
顔を赤くしは攻撃呪文で青年を吹っ飛ばし、

<このままじゃあ、ガウリイさんとリナさんが
結ばれる何て事は世界が滅びようともありえません。
私が何とかしなくては!>
と当時、アメリアは二人の行く末を心配していた
くらいだった。

ところが、久しぶりに再会した時、二人は腕を組んで
歩いており、しかもリナとガウリイの薬指には揃いの
リングがはめられていたのだった。

<いったい二人に何があったんでしょう>
直ぐにでも尋ねたかったのだが、
「実は結婚してなぁ」
とガウリイが口に出した途端、リナが暴走して山一つを
燃やし尽くしてしまったこともあり、それ以上の被害を
周囲に与えないためにも、アメリアは硬く口を閉ざした
のだった。

そのまま有無を言わせず、リナは宿屋に着くと部屋を
二つ取り、

「じゃあ、アメリアとあたしはこっちを使うから」
とさっさとガウリイを追い払ったのだった。

<あたしのせいで、新婚の二人が別々に寝るなんて、
これは正義じゃありません>
と考えた黒髪の少女が発したのが、
「一緒に寝なくていいんですか?」の言葉だった。

「リナさん変わりましたね。私が知ってたリナさんは、
ガウリイさんに見つめられるだけで照れてしまってた
のに。結婚した理由を教えて下さいよ」
リナはにっこり笑って尋ねるアメリアに苦笑する。

「あのね、特に何かがあった訳じゃないの。毎日
お気軽に旅をして、喧嘩したり笑ったり。
何だかあたしの中でそれが当たり前になっちゃって、
ガウリイとこうやってずっと一緒にいるのかなって
思った時に、あいつが
『こうやって一緒にいると楽しいな、結婚しようか』
って言ってね。
あんまり自然に言うもんだから、気づいたらあたしも
『いいわ』って答えてたの」

照れながら答えるリナの横顔があまりに幸せそうで、
眩しくて。
だから次の瞬間、一転して厳しい表情で告げたリナに
アメリアは声が掛けられなかった。

「だけど、あたしといれば魔族に狙われ続ける人生だわ。
本当にガウリイのことを思うなら、別々の道を歩いた方
がいいの。でも、もうあたしはガウリイと離れられない、
離れたくない。だから、あたしの全ての力であいつを守
る。きっと守ってみせる」

「リナさん……………」

「もう寝るわ、おやすみアメリア」

ベットに横になり、リナは眠りについた。
後に残されたのは眠れない黒髪の少女。
少女は呟く、
「リナさんは運命の恋を見つけたんですね。あたしも
いつかは見つけられるでしょうか」

運命の相手を選んだ少女と探している少女。
二人の少女を月が優しく照らしていた。