◆−ゼルアメ短編集−バビ (2004/1/10 23:21:37) No.15824 ┣シュガ−ロ−フ(ゼルアメ)−バビ (2004/1/10 23:23:36) No.15825 ┣スリーピングベイビー(ゼルアメ現代パラレル)−バビ (2004/1/10 23:25:13) No.15826 ┣上海ベイベ(ゼルアメ)−バビ (2004/1/10 23:27:37) No.15827 ┣私は深い海の中−バビ (2004/1/10 23:29:32) No.15828 ┗ベリベリプリティグッドフェイスラブボウイ(ゼルアメ)−バビ (2004/1/10 23:31:34) No.15829 ┣はじめまして!−祭 蛍詩 (2004/1/11 16:28:00) No.15832 ┃┗コメントありがとうございました−バビ (2004/1/12 17:45:15) No.15841 ┗初めまして−G.O. (2004/1/16 19:32:21) No.15869 ┗コメントありがとう御座いました−バビ (2004/1/20 02:20:39) No.15887
15824 | ゼルアメ短編集 | バビ URL | 2004/1/10 23:21:37 |
サイト移転の際に削除したゼルアメ短編が今後サイトに出す機会も無く、それもなんだか忍びない&何名の方々からお問い合わせも頂きました事ですしこちらで公開させて頂く事にしました。 連続の短編投稿と、身勝手な投稿で申し訳有りませんがお楽しみ頂けますと嬉しい限りです。 |
15825 | シュガ−ロ−フ(ゼルアメ) | バビ URL | 2004/1/10 23:23:36 |
記事番号15824へのコメント 文中の呪文がオリジナルになっています。 すみません。 -- シュガ−ロ−フ。 -- 「ゼルガディスさん!!!」 怒りも顕に、大声で呼ばれる。 返事せずに上を向くと、黒髪の、小さな巫女が立っていた。 「もう、やめて下さい!!体、犠牲にするの!」 言うと、止めどなく流れて行く涙。 −まずい所見られたな…− なんでこいつがこんな所に居るか、 という疑問よりも先に出る、焦り。 倒れこむその先に、己の作った血の海。 「お願いです…。」 少女の嘆願に目を閉じた。 遠くなる意識の中で歌われるイノチの詠。 「復活。」 −呪文を、詠う度に不愉快になる。 けだるく傷が癒えていく傍ら、少女の顔が目蓋に滲む。 …ワレトモニナンジトアリ… 割れた肉片に光が灯る。 …ココニアルハナンジノタマシイ… けだるくけだるく続く命の謌。 …ヒトシクトモニキズイエン… 大きくため息を つく。 「不愉快だ…」 あの日自分に癒しの謌をなぞらせた少女。 謌うたう度に、咽が渇く感じがする。 「くそ…!」 大きく頭を振った。 術に集中出来ない。 否応無しに思い出す。 自分が一人なのだと思い出す。 別れて以来使えずにいた。 口の中に感じる、甘さ。 なんでもなかった、あの日。 唱える度に、思い出す。 −− 「とても簡単な理論なのですよ。白魔法は。」 「しかし向き不向きはあるだろう。」 「ふふ。まあそうですけども。あんなに早く「治療」覚えたんですから!大丈夫 ですよ。見てて下さい。」 フワ… 言葉のまま、光に包まれる指。「治療」ではない魂の色。 白い、少女の指が更に白く、照る。 「簡単でしょう?」 ふわ、と笑う。 光のように。 「じゃあもう一度、わたしの言葉、なぞって下さいね。」 「ああ。」 「我、共に汝と有り。」 「…ワレトモニナンジトアリ…」 「此所にあるは、汝の魂。」 「…ココニアルハナンジノタマシイ…」 「此所にあるは、汝の箱。」 「ココニアルハナンジノハコ」 「全ての者の命の息吹、」 「…スベテノモノノイノチノイブキ…」 「均しく伴に、傷癒えん。」 「…ヒトシクトモニキズイエン…」 フオン… 先程と同じく、発動する命の光。しかし弱い。 「すご−い!すご−い!!ゼルガディスさん凄いですよ−! こんな短時間で発動するなんて!」 まるで自分の事の様にきゃあきゃあ喜ぶ、少女がまぶしい。 軽く頷き、礼を言うとなにかを思い出した様に、 走って行った。 「ちょっと!ちょっと待ってて下さ〜い!」 ぶんぶん手を振りながら、肩越しに叫ぶ。 ばたん、がたっ、がたたた、どん! 「んにゃあ!!いった−いい!」 遠くで暴れ回る、姫の声が聞こえる。 −なにやってんだか。− 苦笑混じりに思う。 「コレ!コレ!!」 「角砂糖?」 戻ってきた途端、目の前に突き出される。 「はい!修得の儀式です。座って下さい。…ああ、そうじゃなくて、こう、 こんな感じで、そうです!」 片膝をついて、右手を心臓の上に当てる。 まるで祈る様に。 「…で…?」 「そんな顔しちゃだめですよう!これでもかなり簡略化してるんです よ−。はい。」 片膝立ちの自分の前に立ち、目を閉じ右手を胸に。 そして左手の指先には角砂糖。 「永き命の道を行く、汝と我等に幸よあれ。」 「…で?!…」 「あ−ん。」 「は?」 「お砂糖、半分だけかじってください。」 「はあ?!」 「あ−ん。」 「…」 「で、あとの半分はあたしが食べるんです。」 つとめて冷静を振る舞うが、右手に感じる心臓は弾けんばかりに跳ねていた。 「…どういう事だ…?」 冷静に冷静に。 「だから、儀式ですってば!」 されど全身が火照るのを押さえきれず。 「…おまえ、毎日こんな事やってるのか?」 嫉妬で溶けそうになる。 「…?詰め所でって事ですか?まあもっとごちゃごちゃしてますけど−。 ホントはマナの実を手で割いて分けるんですけどね。」 ほう、と息を付く。 … … 安心と同時、やり場の無い怒りがこみあげる。 「噛んで分けるのは、砂糖が散るからか。」 「?いけませんか?」 立ち上がりながら、アメリアの指を取る。 max一杯、息を吸うと、 「おまえがこの先他人にこんな馬鹿げた儀式に付き合わせる場合絶対に角砂糖はつかうな手で分けられる物を使え!!!!!!」 「はい?!はいいい?!」 一気に捲くし立てると、砂糖を指ごと咥えた。 混乱顔のアメリアに不敵な笑いを浮かべる。 れろん。 根元から指先へと舐めあげる。 「ひいぎゃあああああああ!!!!!!!????????!?!?!?!!?」 鳥肌一杯、アメリアが叫ぶ、その口に。 「んう〜〜!」 唾液にまみれた、元、「角」砂糖を押し込んだ。 「なあ!?な?!な?!」 ぶるぶる震え、涙を浮かべて訴える。 手を組み耳から首筋まで真っ赤。 「なにするんですかああああ!!!!!!」 「お前が無防備に馬鹿なことするからだたわけ!!!!!」 「逆ギレしてるううう〜〜!」(泣泣) 「あったりまえだろうが、このバカ!!!」 「おしっ…!教えてあげたのにいいい〜!!!」 「余計なことまで教えんでいい!!!」 「んぎゃ−−−−−!!!!」(涙涙涙) 「チが流れたら、チカラも流れるんですよ?」 あの日。 歌をなぞらせたあの日。 別れたあの日から。 「…変わっちゃいないな、お前さん。」 「ま−!失礼ですう!!」 異議を唱え、頬を膨らませる。もう成人だというのに 変わっちゃいない、ちっとも。 「ゼルガディスさん、変わりましたね。とても!!」 皮肉っぽい目で、顔を近づけて来る。ぎゅう−、と頬をつねられる。 「巫女さんが怪我人にこれか?」 「…なんで来てくれなかったんですか…」 突然真剣な、痛々しい表情を見せる。 「厄介事に巻込まれちまって、な。」 「…約束…」 「…済まん…」 言葉少なく、涙を流す、あの日の少女は。 ふふふ。 ゆるく笑った。 「よかったあ、ゼルガディスさん戻れてて。」 今度は満面の笑みを見せた。 「…なんで此処に居ると分かった?」 「…とある所に青年が居ました。」 「?」 突然語り出す、白聖の姫巫女。 「青年は状況に翻弄され、夢中に生きる為成り行きで一国の傭兵になりました。」 「…」 「本来の目的を達成したのにも関わらず、思うように為らない自分のチカラ に対する焦りを、がむしゃらに戦う事で紛らわせてました。」 「おい…。」 「…なんで見つけられたと思います?只の噂話、と」 ぐい、と涙を拭う。 「正義です!!」 変りはしない、この4年間。 姿こそ艶が出たものの、「彼女」の中の「本質」は何も変わってはいない。 あの日のままの彼女をただまぶしく見つめた。 「チカラが、大分流れたな。」 ク、と自嘲ぎみに笑いが出る。 「また、魔法、教えてあげますよ!」 元気一杯、拳を作る。とても19には見えないその幼い目。 「角砂糖は、やめておけ。」 昔の思い出に自然と笑みが出る。 「あ!!またバカにしてえ!!儀式やるとやらないとじゃ全然チカラが 違うんですよ〜!!?」 「じゃあ仕方ない。口で分けるか?」 「う!?うう〜〜!そんな理論、正義じゃないですう〜!」(泣) そんな会話にあの日の甘さを思い出す。 まぶしけれどもその中には間違いなく、自分も居た。 「永き命の道を行く、汝と我等に幸よあれ。か。」 賛美の歌を紡ぎ、目を閉じた。 |
15826 | スリーピングベイビー(ゼルアメ現代パラレル) | バビ URL | 2004/1/10 23:25:13 |
記事番号15824へのコメント 「おっはようございま〜す!!」 「…」 目が覚めた瞬間、目前にあった顔。 「…なにしてる…」 「わあお、ゼルガディスさんの寝起き声…!んきゃあ!」 言い終わる前に、反動をつけて起き上がると向こう側に転がる。 「ま…たおまえは…!!勝手に入って来るなといっただろうが!」 「人が何故山を登るか御存じですか?!!」 「…はあ?(汗)」 「そこに山が有るからです!(by植村直巳)転じて、 私がゼルガディスさんの部屋に入るのは、 そこに! 部屋が!! 有るから!!! で…!!」 「うるさい、黙れ!!!!(怒)」 ガスっ! 「ふんにゃあ〜〜、ぶったあ!!」 「そりゃ殴るわ!!…全く毎度毎度…俺の言う事なんざちっとも 聞きやしない。」 「だ〜ってゼルガディスさんちっとも起きてくれないですか〜。」 「当たり前だろうが!寝たの7時だぞ?今何時だ?ああ?!9時!! 12時に起せって言っただろうが!」 「……ごめんにゃさあ〜い…」 項垂れ、小さくなる、アメリア。 悪気ない悪戯をしでかした小犬を怒鳴り付けている様な、感覚。 「一人でじっとしてると、なんか…寂しく、なっちゃって…。」 … はあ。 結局、いつもこうだ。 こいつ相手だと、いまいち感情の制御が上手く行かない。 怒りも、喜びも。直情的に怒鳴りつけてても最後はこっちが 折れる事になる。 「…お前は卑怯だ。」 「…うう〜」 「そんな顔したって恐か無い。」 ゆっくり腕を引っ張ると、いつもの匂いがした。 「起きるんですか?」 悪気もなく、ぱあっと笑う。 「イヤ。」 「?へ??」 どさっ! 「二度寝する。付き合え。」 「んひゃああ−−−−−!!(泣)ゼルガディスさんの横でなんて 寝られませんよ〜〜!!」 「黙れ。ぶつぞ。」 「う、うう〜。」 憮然と赤面するこいつが困るのを見て、笑いが込み上げる。 「今のうちに寝ておかないと、夜後悔するぞ。」 「うあ〜〜ん!!」 「全く。だから入って来るなと言ったのに。」 俺は悪くない。 低くくぐもった喉で小さく笑う。 泣いていた小犬ももう、笑う。 |
15827 | 上海ベイベ(ゼルアメ) | バビ URL | 2004/1/10 23:27:37 |
記事番号15824へのコメント -- 上海ベイベ。 -- −…我愛称、愛、愛媽… 我愛称、愛、愛媽…− どこかで聞いた小さな歌声。 熱くて暗い意識の中聞いた、あの歌声。 おかあさん。 ああ、かあさんが歌ってくれていた、あの歌なのね。 「…か−さん…?」 自分の声なのに、まるで他人の耳から聞くよう。 それでも絶えず髪を梳く指が気持ち良くて。 そういえば。か−さんにあったらいいたいことが、あったんだっけ。 「…か−さん、あたし、ね、…か−さんにあったらおしえたいことが…。」 あるの…、とまで言いかけて、息を吸う。 熱い、自分の体が憎らしい。 こんなにも、アノヒトのことをか−さんに伝えたいのに。 ひやり、としたてのひらがホホをすべる。 「…あたし、あたし、すきなヒトができたんですよう…」 一気に言って、また息を吸う。 ふいに歌が止まる。 深呼吸する度に肺が痛む。それでもなんとか息を繋いで。 「…ゼルガディスさん、ていうんです…へへ…」 あのヒトの名を告げた。 再び紡がれる、あの日の子守り歌。 −…我愛称、愛、愛媽… 我愛称、愛、愛媽…− 少し、震えていたけどそれはとても奇麗な声で。 「…だいすきなんです。あたし。だれかのこと、すきになるって…こんなにも きもちいい、しあわせなことなんですね。…」 か−さんも。 か−さんもしあわせだった? 「…か−さんは?」 一息の沈黙。うなずく気配。 「…ああ。幸せ…だ、な。」 また震えた声で、うなずく。 熱くてくぐもった耳に響くか−さんの声はまるで男の人みたいに低く、響いて。 「…ふふ…ゼルガディスさんみたい…。」 そしてまた、暗い眠りの中へ。 「お前さんが歌ってたのか?」 部屋に戻ると、ドアの横にガウリィがいた。 「…なんの事だ。」 後ろ手にドアを閉める。 「ん−。いや、さ。あんま気にしないほうがいいんじゃねえの、今日の事。」 ふ、と顔を上げる。 薄闇に映える、金髪と蒼眼。少し困惑した顔で。 「立場。旦那とリナだったらどうする?」 「ん−…。少なくとも。夜中にこっそり見舞ったりしないな、オレだったら。」 「!」 「目、赤くしてまでさ。悔し泣きすんなら消えてやろうか、オレとリナ。」 「…いい。そんなんじゃないんだ…」 大きくかぶりを振るう。思い出す度に、喉が苦しくなる。 「あいつ、いつもそうなんだよ。何かにつけ俺を庇ってケガをする。」 「…」 「いくら怒鳴っても聞きやしない。いつか大怪我するぞ!!って。で、今回こうだ。」 「おい…。」 「呆れて何も言えん。」 「で、歌うんだ。」 「唯一知ってるセイル−ンのう…!」 「そ−かそ−か。」 何かひどく納得したように、にっこり頷くガウリィ。 「…っくそ…。」 誘導尋問に引っ掛かったのに、今気付く。顔が赤くなってるのが自分でも分かる。 「大概ロマンチストだな−、お前さん。」 言いながらドアを開け、出る。 「良く喋るくらげだな。」 苦笑しながら手を振った。 「おやすみ。」 「ああ。」 ぱたん。 −…我愛称、愛、愛媽… 我愛称、愛、愛媽…− 昔、だれかに歌われたセイル−ンの子守り歌。 寝台に入ってからも暫く、紡いでいた。 自分の為? 癒しの眠りに就く姫巫女の為? しあわせ? 再び誰かに問われ、ゆるく、頷いた。 |
15828 | 私は深い海の中 | バビ URL | 2004/1/10 23:29:32 |
記事番号15824へのコメント -- 私は深い海の中 -- 深い、海の中でたゆたってました。 とても深い、海でした。淋しさの海、悲しみの海。 わたしの中の貴方を型作る、「それ」がまるで、海のよう。 深い、深い、海の中、あなたの声が聞こえました。 わたしはふかいうみのなか ここは。 「あんたらしくないな。」 突き放した様な口調で、労るようにいう、 耳になじんんだあのひとの声。 夜。沈みかけの満月が支配する闇。 あたしの私室すらも蒼に染めて。 「ぅにゃあ〜」 熱くてけだるい体を身じろがせて、唸る。 どうしてもその姿が確認したくて。 でも。 ひどく頭が痛むのです。上になんだか聞き取りずらい。 視界も蒼く、朧げでうっすらと滲んでいました。 −まるで海に沈んだよう− ゆるく目を閉じる。 「いいから黙ってろ。ほら。」 優しく頭を掻き回される。 …あたし…。 「法医都市サゼトスの薬だ。飲んで寝てろ。」 ぺちぺちとほっぺたを撫でられる。 軽く触れるその指先が。 −ああ、やっぱり。− 「来て、くれたんですね…。」 蒼い視界が更に蒼く。縁を伝う涙。 「…。」 「来て、くれただけで、あたしもう元気に…。」 起き上がろうと体を揺らす。どうしても、このひとが「いる」事を確認したくて。 「バカいうな。」 厳しい、声。でも。 「平気です、あたし、あたし…!!」 「アトラスやセイルーンでも100人以上の死者が出てる熱病なんだぞ!!無茶するな!」 物凄い剣幕で怒鳴られる。くぐもった耳の奥にビリビリ響く。 「…ごめん、なさい。」 「分かればいい。」 大きく溜め息を一つ。 「寝ろ。」 そう言うと、わたしの額に手を当て、優しくその唇を重ねました。 「ゼルガディスさ」 もう一度、唇を重ねられる。今度は深く、深く。 「心配しなくていい…」 「でも…!」 わかってる もう少しなんだ、と呟くと眠りの詠が聞こえた。 「お願い、もうちょっとだけ…」 ゼルガディスさん…!!! 叫ぼうにも眠りの闇に声は飲まれて。 されど暖かいあのひとの冷たい手が。 わたしの手を包んでいました。 そして。 再び。 ワタシハフカイウミノナカ。 「なあーに、すっかり元気じゃないの!」 呆れた様な声で叫ぶ、リナさん。 「なんですかー!!残念そうに言わないでくださいよー!!」 ぶ−ぶ−文句を言ってみるが、逆に両頬をつままれる。ぎゅ−。 「まあね−−!!!ゼフィーリアくんだりから飛んで来て、それじゃあさー!!!」 さらにぎゅ−−。いたたたた! 「うえーん!」 「あー、分かった、分かったからあ!!泣くなっつ−の!」 両目一杯に涙をためて必死に抗議。 「しかしま、直ってよかったな、アメリア。」 相変わらずの、とろ〜んとした口調でガウリィさんがいたわる。 「はい〜。一時は色んな事を覚悟したんですがー。」 「まったくよ!もう!あんたにポックリ逝かれちゃ、ゼルになんて言えば…。」 「だなー。ゼルもよく来てくれたなー。よかったなー。」 ぺちぺちと、あたしのおでこを叩きながら。 「…ガウリィさん…?」 まるで見ていた様な、その口調に、眩暈を覚えました。 ーあたし…ー 「うっ…」 とめどなく溢れる涙を手の甲で拭いながら。 「ちょっ…、!!ちょっ、ア、アメリア?!コラあ!!ガウリィ!!」 「いてて−!!!」 大慌てでガウリィさんに殴りかかるリナさん。 「うぇっく、ちが…、ちが、そうじゃなく、ひっく、て…!!」 「なによ、ほんとに来たの?!」 取り繕うのもままならず、頷く。 「アメリア…?」 「夢かもしれない、って思ってたんです、あたし…!!」 あまりにきれいすぎて、現実感がなかった。 手探りだけで確認したその姿。妙に生生しい、唇の感触がかえって夢のようだ。 月、 熱病、 蒼い部屋、 涙、 蒼いひと、 唇、 海、海。 「ゼルガディスさん…」 やさしいその人名を、切なくよんだ。 だから。 「だから。ガウリィさんにそう言って貰って、すごく、すごく安心したんです…。」 そう言うと、へへって笑ってみせた。 「あいつ…。」 ふ、とリナさんが笑う。 あたしの頭をぺちぺちはたきながら、 「あんまさー、ホラ。えーっと。…無理すんじゃないわよ?いろんな意味で、さ。」 「…ありがとうございます。」 「あんた、最近、疲れてた、みたいだから…さ…。」 「平気、ですよ、もう…。」 また、へへっと笑った。 「それに、ゼルガディスさん、もう少し、って言ったんです。」 「へ?!」 二人同時に変な声を上げる。 「もうすこし−?」 「なんだ、それ。」 「わかんないですけど〜!」 「まさか…」 「…だと、いいですね…」 しばしの沈黙。 「あたし、早く全快する様に…元気になるように、がんばりますね!!」 そうやって。 精一杯、笑ってみせた。 そして5年。暖かい冬のセイル−ンにて。 「では、誓いの宣誓を。」 厳かに宣言する祭神官の前に。 行く末を見守る国民は、みな笑顔。 「…言うのか本当に…」(ブル−) 「…だめですよ!しきたりです!…」(小声) こほん。 「拙僧、ゼルガディス=レゾ=ラ=アザゼリウス=グレイワイスと」 「わたくし、アメリア=ウル=テスラ=セイル−ンは」 ホント、長い名前ですよね、ゼルガディスさん! 「死せる時も生めし時も、共に魂を謳い続け、」 「空の如く高らかに、深海の…深海の如く……」 (どうした?) (……!い、いえ!) 「深く、深く、共に愛しあう事を誓います。」 (大丈夫か?声、震えてるぞ?) (平気です!) 「我は汝、汝は我、己が身の半身、永き道の伴侶として」 「我等、此処に誓い合う。」 わああ! 溢れくる歓声、撒かれる花々。 白亜の国に響き渡る、祝福の唄。 白いこの舞台から見回す、この国はとても優しくて。 「さっき、ですね。」 軽く腕を組み、歓声の道を歩きながら。 「ん?」 「思い出して、泣きそうになっちゃいました!」 「深海、か?」 目を細め、笑うこの人が。 ふふ、やっぱり気付いてたんですね。 「あの日、ゼルガディスさん来て本当によかった。」 「なんの事だか分からんな。」 肩をすくめ、また笑う。 「もう、離れませんよ、絶対!!」 「知らんぞ、俺に愛想が尽きても。」 顔を見合わせ、笑い合う。 「ア−メ−リ−ア−!!!ゼル−−!!!」 聞きなれたその魔導師の声に、手を振る。 賓客席の中、身を乗り出して二人を呼ぶ。 傍らには、金髪の夫、と、手の中には娘。 「リ−ナさ−−ん!!あたし、もう、元気で−−−−すうう!!!」 大声で、大声で、叫んだ。 深い、海の中でたゆたってました。 とても深い、海でした。優しさの海、喜びの海。 わたしの中の貴方を型作る、「それ」がまるで、海のよう。 深い、深い、海の中、あなたの声が聞こえました。 「一生、俺の中に居ろ。」 わたしはふかいうみのなか、 ゆるく、うなずきました。 |
15829 | ベリベリプリティグッドフェイスラブボウイ(ゼルアメ) | バビ URL | 2004/1/10 23:31:34 |
記事番号15824へのコメント あいつが珍しく、物を強請った。 -- ベリベリプリティグッドフェイスラブボウイ -- 「で、何が欲しいって?」 「んう〜。ええと、女の子がきれいになれてえ〜、その場でお返しが出来る物で〜す。」 「…なんだ、そりゃ…」 「わかりませんか?」 「お手上げ、だな。」 「ちぇえ−−。考えてもいないじゃないですかあ」 むかっ。 「面倒なんだよ、そんな謎解きは。欲しけりゃはっきり言え。」 「むう−?!あ、じゃあもういいです。」 「?!」 いつもならここで食い下がってくるはずなのに、また珍しく反抗する。 頬を膨らませてそっぽをむく姿に、妙に目が細まる。 「なに笑ってるんですか?!」 「ああ、済まん済まん。俺が悪かった。一体何なのか教えてくれ。」 「…ダメで〜す!自分で考えて下さい。」 「悪っぽいぞ、お前。」 「ガビ−−−−−−ン!!!う、うそ!!?」 そんなにショックか? 「正に悪だな。なんなんだ一体。」 「う、うう〜〜。」(泣き) 「な、な、なんだ!どうしたんだお前、さっきから!!!」 「…ふええ…もう、いいですう…ごめんなさい、忘れてくださいい。…」 「?って、おい…」 「おやすみにゃさい…」 ぱたん。 「なんなんだ、ったく…」 …… …… 「だ−−−−!もう!!!!」 ばさっ! ばさっ!! 乱暴にマントを羽織る。 どたどたどた! がちゃん。 とんとんとんとん。 「ゼルう?何処行くのよ、外大雪よ−?」 カウンタ−で一人ジョッキをやっつけてる、リナ。 「…旦那は?」 「昼間預けてた剣、取りに行った。」 「……」 じ。 はあ。 「な、なによう」 「奇麗になれて、即返せるもの。」 「はあ?」 「あいつが欲しいんだとさ。」 「はあ。」 「分かるか?」 ぶんぶんぶん。 「まあいい。期待はしとらん。」 「むか!なんかむかつくわねえ!!」 「行ってくる。」 「ちょっとゼル!!!!!」 「なんだ!!」 「マント、逆。」 … ごそごそ…。ばさ。 「行って来る…。」 「気を付けて〜♪ホホホホホ〜♪」 くっそ〜。 ばたん。 … ごおおおおおお!!! びゅうううううう!! … 汗。 「行くぞ(気合)」 ごがああああああ!! びゅごおおおおおうう! 「だ−−、もう!!」 たたたた!(風圧により斜め歩き) どん! 「ああ、済まんな。なんだってんだ、っとにもう!」 「…っれえ−?ゼルう?」 ヘ−ゼン。 「旦那。」 「何してんだ?」 「…」 ふう。 「頼まれもんさ。あいつの。」 「ひゃあ−。この雪の中かあ?ご苦労なこった。」 「…」 じ。 「何だ何だ?」 「奇麗になれて、即返せるもの。」 「はあ?」 「あいつが欲しいんだとさ。」 「はあ。」 「分かるか?」 …… き、聞いてるのか?(汗) 「あ、わかった。」 ぽん。 「まあいい、期待…ってなあにいいい!!!??」 がば!!ぶんぶんぶん!! 「ギュ−−!!ギブ!!ギブ!!!タップ!な?!な?!ゼル!?」 「なんだ一体!なんなんだ!!」 「あ−−、うう−−、アレ!アレだ、多分。」 「何?何だ?」 ついつい。 自分の唇に何かを塗る仕草をする、ガウリィ。 「…じゃ、ないか多分。」 「…」 「いやあ、多分そうじゃないかなあ」 「……」 「お−い、ゼル?聞いてるかあ?」 「即返せる。?即?」 じ。 「ん?うん。そうだろ?だって。」 「…………」 …かあああああ。 「うあ、真っ赤。」 「って…あんの、お子様は…!!」 「あ−、かわいらしいなあ−。羨ましいねえ−。ヒャハハ♪」 「う、うるさい!どこかのドラまたとは違うんだよ!」 「あ−、そうそう。俺のドラまたね。じゃ、先帰ってるぜ。」 「ったく!一体誰の入れ知恵だか…!!」 「…何時までも子供だと思ってたら、痛い目みるぜ?」 「…やめろ、旦那が言うと生生しい。」 「経験者は語る、だ。」 笑い、軽く手を上げて、横を行き過ぎる金髪。 苦い感情と、ため息。 「ほらよ。」 大雪の中、探してきたソレをそっけなく放る。 「…!!」 びっくりしたように、目をみはるアメリア。 「なんだ、違うのか?」 ぶんぶんぶんぶん。 「いいんだろう?それで。」 こくこくこくこく。 …リアクションが妙だな(汗) 「じゃ、そんだけな。先寝るぞ。」 ぐい。 「…何」 「…」 「…(汗)」 「…」 じい〜。 「な、何だ?不満か?」 ぶんぶんぶんぶん。 「…」 「ホントに、くれるなんて思ってませんでした…」 むか。 「おまえが…!!!」 「…し…」 超真っ赤な、アメリア。 「は?」 「お返ししますね…?」 「…」 きゅ。 ぬりぬり。 「て…?え?!オイ!!」 ちゅ。 ぬるり。 「……」 「………」 …… 「おやすみ…なさい…」 いつもからは想像出来ない、蚊の鳴くような声で。 伏し目、ピンク色の唇。髪の間から薄く透けて見える耳までもピンク色で。 ばたん! たたたたた… 「…あいつ…。」 深く、ため息をつき、寝台に腰掛ける。 窓ガラスに映った、赤面、仄かに紅い唇の自分に寒気がした。 …いつまで子供なんだか… そう思うと、何だか無性に寂しくなり、慌てて口を拭った。 |
15832 | はじめまして! | 祭 蛍詩 | 2004/1/11 16:28:00 |
記事番号15829へのコメント こんにちは、はじめまして! 祭と申します。 あの…移転する前にサイト様に遊びにいかせて頂きました。 いくつか拝見したことがある小説があり、とっても嬉しくなりましたv アメリアちゃんが可愛くて、ゼルさんがちょっと意地悪で、でもかっこ良くて好きですvv 私は特に『上海ベイベ』と『私は深い海の中』と『ベリベリプリティグッドフェイスラブボウイ』が好きですv 前の二つはゼルさんがむちゃくちゃ優しくてvv ぜひぜひ歌っているのを聴いてみたいです! たぶん心臓バクバクで子守唄にはならないでしょうけど…; アメリアちゃんが苦しんでいる時にそっとやってきて、薬をわたしてそのまま帰ってしまうのも切なくて…。 でも結婚式が幸せそうで良かったですvv 『ベリべリ〜』は姫がすごくいじらしくて可愛くてv んでもって!でもって!! ゼルさんが赤くなってたりしてちょっと困ってたりして可愛いですっvv …にしてもなんでガウリイさんわかるんですか?! さすが! いつもは天然のふりしてるだけだったんですね! それにしてもアメリアちゃんのために大雪の中、分からない物を買いに行くゼルさん、優しいですねvv なんだかんだ言って姫には弱いんですねv すみません; またよくわからないレスになってしまいました;; ともかく、とても楽しかったですv それでは! |
15841 | コメントありがとうございました | バビ URL | 2004/1/12 17:45:15 |
記事番号15832へのコメント 祭様 コメントありがとうございました。大変古い作品なのでまさか知ってる方がいらっしゃるとは思いませんでした。 どうも皆さんの書かれるゼルアメとは違い、甘くても常に切ない終わり方をしてしまうんですねー。 あまりに自分の作品は異質で、一時期迷いに迷ってゼルアメ作品を全て削除したんです。 でも最近は己の作品ももう一度見直せるようになったので、やはりコメントを頂けると嬉しいです。 励みになりました。どうもありがとうございました。 →「上海ベイベ」 実際ゼルは歌下手そうなんですが! 誠意はこもってそうなんで(笑) ガウリィは絶対「フリ」だと思ってます。ラブに関しては。 後半のガウリイは素のような気もしますが(…) →「私は深い海の中」 生まれて初めて書いたゼルアメSSです。 そのせいか自分のゼルアメワールドを詰め込んで書いてしまいました。 今見ると結婚式はやりすぎ感がむんむんします。 正視できません。キャー。 →「ベリベリ」 引き続きタヌキガウリイ大活躍です。 メリルーンがガウリイのばーさんて事は彼はクウォーターエルフですよね。 だったら長生きもしてて、実は経験も豊富そうなので。 ゼルは人間の頃から無駄に女にモテるせいで、女性に対して努力が足りなかったと思います。 姫の謎かけに腹立てつつも頑張ってしまうのが惚れた弱みです。 ここまで惚れ込んでるのに本人気付いてません。 会話劇なんですが四人の力関係が上手く書けたかなあと思ってます 原作でまだまだゼルアメがマイナーだった頃にはまったのでやっぱり原作のゼルガディスとアメリアをイメージしてしまいます。 ちょっと一歩突き放したカンジが好きなのでこれからもこんな二人を書くと思いますが、またご覧頂けると嬉しいです。 コメントありがとうございました。 |
15869 | 初めまして | G.O. | 2004/1/16 19:32:21 |
記事番号15829へのコメント 初めまして、ゼルアメ短編集、読ませて頂きました。 サイトで、省いたとおっしゃられていたので地団駄踏んでいたのですが、 こちらで読むことが出来てすごく嬉しかったです! >シュガ−ロ−フ なんだか切なげに始まったので、不安だったんですが、最後まで読んでホッとしました。思い出すシーンと現状の落差が大きいのって辛いです。切なくてももちろん良いのですが、やっぱりゼルが笑える方が気持ち、軽いです。 >スリーピングベイビー 寝起きの悪い(というか、睡眠時間アレなら誰でも怒るでしょうが)ゼルと、そして、アメリアの「そこに部屋があるから!」にはウケました。甘いというより元気に仲良しさん(笑)な二人というのは大好きなんです! >上海ベイベ 歌うゼル……というのが、ワタシ的にはかなり衝撃でしたが、彼の子守歌が素敵でないはずがないと、上手いかどうかは知りませんが、きっと寝心地のイイ響きな気がします。ガウリィに誘導されて吐いて照れるゼルも可愛い(笑)なにより、ラストには……単純なもので、一人頷くゼルの姿にはストレートに胸キュー!な私です。 >ベリベリプリティグッドフェイスラブボウイ これ!メチャクチャ好きです!ゼルが可愛くて、アメリアは更に可愛くて、リナがらしくて、ガウリィが男前で、四人組が好きな私には美味しい!美味しすぎます!ゼル、大雪の中ご苦労様でしたが、ちゃんと返してもらったからエエっすよね。本人驚いてたんで、確信犯じゃないということなのか……深いんだか、浅いんだか、良く分からない男です。 「私は深い海の中」は以前どこかで読ませて頂いた覚えがあります。再読できて嬉しい……私はつい最近ゼルアメを知ったので、こうしてもしかしたら読めずに終わった作品を目にする機会がホントに有り難いのです。こちらに投稿して下さったバビさんに感謝します。 いっぱい読めて楽しかったです!ありがとうございました! |
15887 | コメントありがとう御座いました | バビ URL | 2004/1/20 02:20:39 |
記事番号15869へのコメント どうも初めましてこんにちわ。 コメントありがとう御座いました、バビと申します。 サイトの方は、ご覧の通り方向性が全く違いまして…!スレの検索サイトに登録してないのも有り、誰も見ないだろう、と思い削除したんです。 なので今回コメントを頂いて本当に嬉しかったです!ありがとう御座いました!投稿してよかった…。 >>シュガ−ロ−フ 呪文の違いに色々疑問が持つ作品ですが、自分の中のゼルアメ観がぎゅうぎゅうに詰まった作品だと思います。 基本的にツライ状況でも最後はハッピー、が自分の基礎です。 >>スリーピングベイビー 妙な作品ですよね…!「そこに部屋があるから!」を書きたくて書きました(笑) >>上海ベイベ 皆さん歌うゼルにかなり衝撃だったみたいです。自分もビックリしました。でも奥深くの根っこではゼルは優しい人だと思うので下手でも苦手でも不器用なりにアメリアを気遣うと思います。 ガウリイが凄く気に入ってます。 >>ベリベリプリティグッドフェイスラブボウイ ゼルはアメリアをちょっと甘く見てるフシが有るんでビビったと思います。 ガウリイは毎回最高の立ち回りに据えたくて全然くらげじゃないんですが、好きなんですよー。 会話劇、でテンポだけは良いせいかイチバン評判が良かったです。 >>私は深い海の中 多分、一番初めにちゃんとちゃんと形にしたゼルアメだと思います。 とあるサイト様に差し上げたので多分そちらでご覧になったと思います。 古い作品故に稚拙なのですがまた折を見て新作も投稿していこうと思います。 今回、コメントまで頂けて本当に良かったです。 どうもありがとうございました! |