◆−『CIV』― Dispositions 2―−蛇乃衣 (2004/1/12 13:06:42) No.15835
 ┣Re:『CIV』― Dispositions 2―−祭 蛍詩 (2004/1/13 19:43:25) No.15848
 ┃┗ゼルさんは兎アイテムが似合うと・・・(笑)−蛇乃衣 (2004/1/14 18:37:31) No.15856
 ┣『CIV』― Dispositions 3―−蛇乃衣 (2004/1/14 18:43:09) No.15857
 ┃┗Re:『CIV』― Dispositions 3―−祭 蛍詩 (2004/1/14 22:46:02) No.15859
 ┃ ┗ああっ!レス投稿できてなかった・・・すみません・・・−蛇乃衣 (2004/1/18 16:21:36) No.15877
 ┣『CIV』― Dispositions 4―−蛇乃衣 (2004/1/18 13:31:57) No.15875
 ┣『CIV』― Dispositions 5―−蛇乃衣 (2004/1/19 20:18:40) No.15883
 ┣『CIV』― Intruders 1―−蛇乃衣 (2004/1/22 19:15:46) No.15897
 ┃┣『CIV』― Intruders 2―−蛇乃衣 (2004/1/25 15:21:49) No.15904
 ┃┃┗Re:『CIV』― Intruders 2―−りぃ (2004/1/30 00:02:50) No.15930
 ┃┃ ┗停滞してました・・・−蛇乃衣 (2004/1/30 18:35:14) No.15933
 ┃┣『CIV』― Intruders 3―−蛇乃衣 (2004/1/30 18:47:53) No.15934
 ┃┗『CIV』― Intruders 4―−蛇乃衣 (2004/1/31 10:24:00) No.15936
 ┃ ┗Re:『CIV』― Intruders 4―−祭 蛍詩 (2004/2/5 19:19:58) No.15957
 ┃  ┗黒幕の黒幕はまだ引っ込んでいますね−蛇乃衣 (2004/2/5 20:38:16) No.15959
 ┗『CIV』― Surprise 1―−蛇乃衣 (2004/2/5 20:49:26) No.15960


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15835『CIV』― Dispositions 2―蛇乃衣 2004/1/12 13:06:42


長らくお待たせ致しました。続きです〜

******

リナが発案をしてから二週間後、彼等四人は計画を練り終え、準備の第二段階に入るべく、ニューヨークへと移動することとなった。
そちらで揃えられる物も多く、それぞれトランク一つの身軽な格好だ。
地下鉄を降り、河一つ離れた空港へと、今まさに歩いて向かっているところなのだが……

ビュヨョヨヨヨ
ビュヨバャヨヨヨヨ

「あー!寒い寒い寒いさーむーいぃぃぃいいいい!!」

なんともいえぬ音を生み駆け抜ける風に、リナは不平を上げた。
「叫んだところでどうにもならんだろうが…」
「うっさいわよ、ゼル。ったく、なんでまだ秋だってゆーのにこんなに寒いのよ!」
「今日は冷え込むと、天気予報も言っていましたね。それに橋の上ですし」
風を遮るものがない分つらい。
風に乱れた髪を整え、レゾは上空を見上げた。
先程は、夕焼けが見えるであろう黄昏時だったのだが、分厚い鉛色の雲郡が空を覆い、それはかなわなかった。
「…降りださなければよいのですが……」
誰にともなく呟く。
天候ばかりはどうしようもない。
「まあ、まさか嵐になりはしないだろうし、雲の上に出ちゃえば関係ないわね。
 いつ頃あっちに着く予定だったっけ?」
「ええと…」
レゾはコートのポケットから、四人分まとめてあるチケットを取り出した。
「六時十五分発ですから……時差も多少関係しますし…そうですね、八時半過ぎぐらいでしょうか」
「ふーん…」

ビュビャヨヨョヨ
バャビュヨョヨヨヨ

「だあああ!寒い!!」
「リナぁ、お前、一番着込んでるだろ?」
「寒いんだから仕方ないでしょ!?デリケートなのよあたしは!!で・り・け・ぇ・と!!」
ピシッ!と人指し指を立てるリナに、ガウリイはたしなめるような口調で、
「デリケートってお前……本当にデリケートな人が誤解されるだろ?」
「どーゆー意味よそれはぁあああ!!?」

すぱこーん!

リナがどこからともなく取り出したスリッパ (ネコ型・愛用品)で、ガウリイの頭を叩く。

と、ここまではいつもの事、微笑ましい夫婦漫才(レゾ談)なのだが―――

ビュヨゥ!

一陣の突風が襲いかかった。

「うわっ!?」

叩かれコケかけたガウリイの目にゴミが入り、彼はまともにバランスを崩す!
たたらをふんで、手を置いたのは己のトランク。

がららっ

車輪の付いたそれは、逆に彼の体制を悪化させ、

「ガウリイさん!?」
「ガウリイ!?」

橋の手摺から上半身がはみ出す!
金色の髪が風にふかれ、ガウリイの視界を覆う。
彼の伸ばした手は、一番近くにいたレゾの―――持っていたチケットを掴んだ。

びり

『え゛』

「うわわわわわー!!?」

バッシャー――ン!!

盛大な水しぶきが上がった。

「ああっ!?チケット破れてしまいました!残り半分以下!!」
「ええっ!どーすんのよ!?もうすぐ飛行機出ちゃうのじゃない!!」
「お前ら、旦那の心配をしてやれよ……」


計画は初期の段階でけつまづいた。

……今回は、なにやら前途多難なようである。


*****

リナ愛用スリッパは、オレンジ色のネコ型。
耳と目と、ひげがついています。
もこもこで暖か。底は渾身の力で叩いても怪我をしない、ほどよい固さ。
らぶりぃーあいてむ。

ちなみに男性陣は、
ゼル→ウサギ型・青色
レゾ→トリ型・赤色
ガウリイ→イヌ型・緑色
と、なっています。

むろん、彼等は持ち歩きません(笑)
アメリカなので家の中でも靴は脱ぎませんが、部屋によって土足禁止のところがあるのです。絨毯の上とか。

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15848Re:『CIV』― Dispositions 2―祭 蛍詩 2004/1/13 19:43:25
記事番号15835へのコメント

 おこんにちはです! 神出鬼没の祭です!
 では、本日2回目のレス、参らせていただきます!

>******
>
>リナが発案をしてから二週間後、彼等四人は計画を練り終え、準備の第二段階に入るべく、ニューヨークへと移動することとなった。
>そちらで揃えられる物も多く、それぞれトランク一つの身軽な格好だ。
>地下鉄を降り、河一つ離れた空港へと、今まさに歩いて向かっているところなのだが……
>
>ビュヨョヨヨヨ
>ビュヨバャヨヨヨヨ
 な、何の音ですかっ?! さてもさても面妖な……;;

>「あー!寒い寒い寒いさーむーいぃぃぃいいいい!!」
>
>なんともいえぬ音を生み駆け抜ける風に、リナは不平を上げた。
 素晴らしい音立ててますね; これは寒そうです;

>「叫んだところでどうにもならんだろうが…」
 それは分かってるんですけど、ついつい口に出ちゃうんですよね;

>「だあああ!寒い!!」
>「リナぁ、お前、一番着込んでるだろ?」
>「寒いんだから仕方ないでしょ!?デリケートなのよあたしは!!で・り・け・ぇ・と!!」
>ピシッ!と人指し指を立てるリナに、ガウリイはたしなめるような口調で、
>「デリケートってお前……本当にデリケートな人が誤解されるだろ?」
 はい! 賛成一票入れた…い所ですが、怖いのでやめておこうと思います;

>「どーゆー意味よそれはぁあああ!!?」
>
>すぱこーん!
>
>リナがどこからともなく取り出したスリッパ (ネコ型・愛用品)で、ガウリイの頭を叩く。
 ネコっ?! それはまたえらく可愛らしい物を。
 …本当に何処からだしたんですか?

>と、ここまではいつもの事、微笑ましい夫婦漫才(レゾ談)なのだが―――
 ふうふ? 言ったら間違いなく真っ赤になって怒られますよ;

>「うわっ!?」
>
>叩かれコケかけたガウリイの目にゴミが入り、彼はまともにバランスを崩す!
>たたらをふんで、手を置いたのは己のトランク。
>
>がららっ
>
>車輪の付いたそれは、逆に彼の体制を悪化させ、
 あらま。 でもそういう事よくありますよね; エ?私だけですか?

>「ガウリイさん!?」
>「ガウリイ!?」
>
>橋の手摺から上半身がはみ出す!
>金色の髪が風にふかれ、ガウリイの視界を覆う。
>彼の伸ばした手は、一番近くにいたレゾの―――持っていたチケットを掴んだ。
>
>びり
 ……え? 『びり』って…;;

>『え゛』
>
>「うわわわわわー!!?」
>
>バッシャー――ン!!
>
>盛大な水しぶきが上がった。
 ガウリイさん落ちたーーっ!! 寒そうです;
 しかもチケットちぎってきましたし;;

>「ああっ!?チケット破れてしまいました!残り半分以下!!」
>「ええっ!どーすんのよ!?もうすぐ飛行機出ちゃうのじゃない!!」
>「お前ら、旦那の心配をしてやれよ……」 
 この中で一番優しいのはゼルさんですね…(ほろり
 でもガウリイさんはどうせ無事でしょうしね。

>計画は初期の段階でけつまづいた。
>
>……今回は、なにやら前途多難なようである。
 ものすごく行き先不安ですね;;

>*****
>リナ愛用スリッパは、オレンジ色のネコ型。 
 可愛いv なんだかんだ言っても女の子ですねv

>耳と目と、ひげがついています。
>もこもこで暖か。底は渾身の力で叩いても怪我をしない、ほどよい固さ。
>らぶりぃーあいてむ。
 良いなぁ、欲しいですv 冬は必須アイテムですねvv

>ちなみに男性陣は、
>ゼル→ウサギ型・青色
 ゼルうさちゃん再発だーーーっ!!
 可愛いスリッパ履いてるんですねv

>レゾ→トリ型・赤色
>ガウリイ→イヌ型・緑色
>と、なっています。
>
>むろん、彼等は持ち歩きません(笑)
>アメリカなので家の中でも靴は脱ぎませんが、部屋によって土足禁止のところがあるのです。絨毯の上とか。
 ソファの上に座って足を組んで本なんかを読んでいてもスリッパがこれだと……一気にギャグになりますよねv

 では、こちらも続きを楽しみにしています!

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15856ゼルさんは兎アイテムが似合うと・・・(笑)蛇乃衣 2004/1/14 18:37:31
記事番号15848へのコメント

祭様、感想ありがとうございます〜。うれしいですv
たくさん感想いただけると、「読んでくれている方がいる〜!楽しみに待っていて下さる〜!」と小踊りしてしまいますv
書くペースも早まるのですよ。(あくまで当人比ですが)

ガウリイさん転落。河に落としてしまいました。
ですが、これくらいのアクシデントはまだまだ序の口。
今回のお仕事は、進めば進むほど入り組んでくるといいますか……
そうですね、鯛釣ろうと海老エサにしたら鮫がかかった――といったかんじです(笑)。
でも、あの四人ですから。何事にも引きさがりはしませんね。ぜぇったい!

そうそう、彼ら四人の中で(分け隔てなく)一番優しいのは、ガウリイさんなのではないかなぁ〜と思います。のほほんと。
一番優しくないのはレゾさんだろうなぁ……いえ、優しくないというか、優先順位がはっきりしている人ですし、「特別」のためなら他のことは切り捨てられるのですよね。いざというときは。

あ、でも一番の常識人はゼルさんです。故に苦労性でもあり……。

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15857『CIV』― Dispositions 3―蛇乃衣 2004/1/14 18:43:09
記事番号15835へのコメント

はくしゅっ!はくしゅっ!ばくしゅっ!!

たゆたう河に、くしゃみが立て続けに響く。
「うぅ…寒ぃ……」
ガタガタと、歯の根を鳴らしながらガウリイは鼻をすすった。
自力で川岸まで泳いできた彼だが、屋外水泳をするには、あまりお勧めできない季節。
吹きすさぶ風が、確実に体温を奪っていく。
「災難でしたね」
ガウリイにコートを貸しながら、レゾは言った。
ぎゅうぅ…
黄金の髪を絞ると、バタバタと水が落ちてきた。
少し前、搭乗予定だった飛行機が飛び去っていくのを見たばかりである。
「で、これからどうする?」
ゼルガディスが問う。
「そうね、まあ、飛行機はもうどうしようもないし……とりあえず、今日はこの辺りにホテルを取りましょ」
「そうですね。ガウリイさん、早くシャワーなり浴びた方がいいですよ」
「悪いなぁ……」
「まぁったく。仕事前に風邪なんかひいたら承知しないわよ、ガウリイ。
 でも、今から行って、部屋空いているかしら?」
「あまり、ホテルの数が多くないからな。空港は近いんだが……」
「なるべく、同じホテルに四人とも泊まりたいし。かといって、あんまりボロいところもやだし……」
「…あの…心辺りがありますよ」
レゾが控え目に口を挟む。
「ホント!?」
「ええ。この近くで、予約なしでも泊まれると思います」
うなずく彼。しかし、あまり気乗りしない様子である。
「……ああ。あそこか…」
ゼルガディスにも場所が思い当たったようだ。
だが、やはり彼も、良い表情とは言い難い。
リナとガウリイは顔を見合わせる。
「…何か問題でもあるの?」
「問題と言いますか……」
レゾはチラリとゼルガディスに視線を移し、ついでどこか遠くを見る。
「正直、あまり行きたくないのですよね……」
はぁ…と、重いため息が、彼の言葉を締め括った。

当然のことながら、ずぶ濡れの男一人を含む客に、タクシーの運転手は良い顔をしなかった。
しかし、レゾが行き先を告げ、通常の倍の料金を握らせると、運転手は黙って車を出した。
そして約十分後、目的地のその前でタクシーは停車した。

「って、三つ星ホテルじゃない……ここ」
「おや、ご存知でしたか」
『ホテル・Rコランダム』
一般のガイドブックなどにはあまり乗ってはいないが、この辺りでは五本の指に入るだろう、高級ホテルなのである。
ライトを浴び、貴族の屋敷を連想させる白い建物が、灰色の空の下そびえている。
こういった建物独特の、入りにくい者にはこの上なく入りにくい、威圧感が漂っている。
「さ、入りましょう」
レゾは躊躇うことなく歩き出した。半歩遅れて続く三人。
「お客様」
入り口に控えているボーイが、困ったように四人を阻んだ。
大柄な男だ。丁寧な物腰だが、多少目の光が鋭い。
「失礼ですが、御予約の方は……?」
「それが、急なトラブルで、予約は入れられなかったのですよ。ですが、部屋は空いているでしょう?」
「大変申し訳ありませんが、事前に御予約を入れて頂かれたお客様でないと、お泊め出来ない方針でして……」
くだくだ言い並べる。
高級な店ななどでは、まあ、こういったこともある。
レゾはボーイの顔を見て、
「ああ、あなた新入りですか」
「は?」
「まあ、ここ二年ほど来ていませんでしたからね。
 そうですね、誰かに―――」
「レゾ様!?」
ホテルの中から、同じくボーイの格好をした男が急いでやって来る。淡い金髪のかなりのハンサムだ。
「おや、お久しぶりですね、ヴィゼアさん。ご苦労様です。
 泊まりたいのですが、部屋、空いていますよね?」
レゾはにこやかに問いかける。ヴィゼアと呼ばれた男は、恭しく答えた。
「はい。もちろんでございます……ほら、君、早く荷物をお持ちして」
「…あの、お知り合いですか?ヴィゼアさん……」
おずおずといった感じで、大柄な方のボーイが言った。
ヴィゼアは眉をしかめ、
「知り合いもなにも、この方はこのホテルのオーナーだろうが!」
『えぇえええええ!?』
驚きの声は、ボーイだけでなく、リナとガウリイの口からも上がった。


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15859Re:『CIV』― Dispositions 3―祭 蛍詩 2004/1/14 22:46:02
記事番号15857へのコメント

 時間をあけてこんばんは。 毎度どーも祭だったりします。
 ゼルさんに兎アイテム……似合うっ!! レゾさんが買ってくるんでしょうね、きっと。
 ひょっとしてマグカップとかエプロンとかパジャマとかまで兎模様だったりして…(笑)

 ガウリイさん、災難でしたね; 寒中水泳とか見てるだけで寒くなりますしね…;
 それにしてもレゾさんホテルのオーナーなんですかっ?!
 『ホテル・Rコランダム』のRはレゾさんのことだったんでしょうか?
 ともかく、お金持ちですねぇ……。 怪盗はひょっとしてスリルを味わうための趣味?
 でもなんで泊まりたくないんでしょう?
 特別扱いされるからですかねぇ……。

 蝦鯛、ではなく蝦鮫の連中、これからどうなるんでしょう……。
 続き楽しみにしていますねーv
 明日は来れないかもしれませんが、携帯でばっちり読ませていただきます!

 では、短いですが、今日はこの辺で!

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15877ああっ!レス投稿できてなかった・・・すみません・・・蛇乃衣 2004/1/18 16:21:36
記事番号15859へのコメント

祭様、こんにちは〜。
いつもありがとうございますvそしてレス遅くなってしまってスミマセン。

実は、予定していた本編あらすじに、大きな穴があったことに気付き、いったいどう修正しようか悩んでいる現状です(滝汗)
未熟さが露見してしまいました。アウチ。

ですが、なんとか話は繋がりそうなので、打ち切りは避けられそうです。いえ、避けます。

ホテルの名前の、『R』は、レゾさんの 『R』ではなく、赤=redの『R』です。
『コランダム』は鋼玉のこと。
赤い鋼玉=ルビー、と、とっていただけると嬉しいです。
レゾさんの頭文字になったのは偶然ですね。

あと、レゾさんはお金持ちなんです。治療費、お金持ち相手にはふんだくってますから(笑)。ブラック○ャック並に。
副業も色々やってます。あと、プラスで父君の遺産。

泥棒は趣味ですね(笑)。実際、レゾさんはどちらかというとサポートにまわっています。
話の冒頭。ネックレスを盗んだときも、家で待っていましたし。

まあ、リナたち三人も泥棒家業は楽しみつつやってますから。
盗賊いびりと似た感覚でしょうか。

よそから見たら、はためーわくこの上ない四人組ですよねぇ……

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15875『CIV』― Dispositions 4―蛇乃衣 2004/1/18 13:31:57
記事番号15835へのコメント

「たく…オーナーならオーナーだって教えてくれてれば良かったのに…」
案内された最上階のスイートルームで、リナはぶぜんと呟いた。
部屋をぐるりと見回し、
「こーんないいとこ、今まで使えなかったなんて!しかもただ!!」
「ははは」
レゾはただ笑って返す。
たぶん、それが嫌だったのではなかろうかと、ゼルガディスは憶測した。
「えっと…寝室は四つありますから、各自好きなところを使ってください。
バスルームは、ガウリイさんが今使って――」

とんとんっ

軽いノックの音がした。
ゼルガディスが無言でレゾを見る。
レゾは肩をすくめてみせ、扉の向こうにいる人物に呼びかけた。
「…どうぞ」

現れたのは、一人の女性だった。
ショートカットの茶色い髪。ダークブルーのスーツを着ている。
やや童顔だが、薄く化粧がほどこされた顔は、美人に分類されるだろう。
「レゾ様!お久しぶりです!」
華やかな笑みを浮かべ、彼女は駆け寄ってきた。
「お久しぶりです、エリス。お元気でしたか?」
やわらかく対応するレゾ。しかし、どことなく彼女の勢いに押され気味である。
「はい。レゾ様もお変わりないようで……そちらの方は?」
視界にリナを捕え、エリスは問うた。
その視線が、一瞬、刃物のように鋭く感じたのは、リナの気のせいだろうか。
「ああ。リナさん、紹介しますね。
 こちらは、エリシエル=ヴルムグン。このホテルの支配人を勤めていただいています。
 エリス、こちらはリナ=インバースさん。
 今、シャワーを浴びていますが、金髪の男性はガウリイ=ガブリエフさんです。
 お二人とも、ゼルガディスの友人なんですよ」
「そう、ゼルガディスの……初めまして、リナ=インバースさん。お会いできて光栄です」
にこやかに笑っているが、
「初めまして。エリシエルさん。どーぞよろしく」
なんとなく、儀礼的な響きがある。
エリスはレゾの方に向き直り、
「レゾ様、今回は何日ほどお泊まりに?」
「まだ、正確には決っていないのですが……」
「御希望の日数だけ、いくらでもお泊まりになって下さい!」
「それはどうも……」
「お仕事で御多忙なのは存じておりますが、なかなかレゾ様にお会いできなくて…。
 ですが、このエリス、レゾ様から任せて頂いたこのホテルのランクをさらに上げようと常々―――」
「なぁ〜。シャワーの温度って、どうやったら上がるんだぁ〜?」
とうとうと続くエリスの言葉を止めたのは、反響して届いたガウリイの声だった。
「ああ。エリス、ちょっと失礼。…それはですね、ガウリイさん……」
良い口実ができたとばかりに、レゾはそそくさとバスルームに姿を消してしまった。
エリス、リナ、そして先程から無言を通しているゼルガディスの三人の間に、沈黙が下りる。
それをさして長引かせなかったのは、エリスの放った一言だった。

「お前も久しぶりだな、ゼルガディス」
レゾに対してとはうって変わって、そっけなく乱暴な言葉遣いだ。
一瞬、リナはキョトンとしてしまう。
なにやら、お世辞にも『親シイ間柄』ではないようである。
「そうだな…」
ゼルガディスは、静かに答えた。
「ふん。お前、まだレゾ様の御厄介になっているのか?
 確か、もう二十歳になっていたな。いつまで甘えているつもりなんだか」
苦々しく吐き捨てる。その目には、憎しみとも言える炎がチラリチラリと燃えている。

……黙っているゼルガディスを弁護するようだが、仮に彼が出ていくと言ったとしても、レゾが引き留めるに違いない。
それに、『赤法師』から『ゼルガディス』というストッパーがいなくなった場合、
世の中の『不幸な事故・事件』が増加することは請合いである。

「大体、血縁者というだけで、レゾ様はお前に甘すぎる!
 それに、あの方の従兄弟とはいっても、『赤法師』も『グレイワーズ』も知らなかったのだろう?
 お前はレゾ様の足を引っ張ってばかり…迷惑をかけているだけだ!
 ……あの時だって、お前のせいでレゾ様の御眼は―――」
「エリシエル」

静かな一言が滑り込んできた。
弾かれたように、エリスはその声の主を見る。
壁に寄りかかるようにして、腕を組み、レゾは立っていた。
その顔は無表情。
青い瞳には、まるで隣の義眼と同じような、冷たい光が浮かんでいる。
「れ、レゾ様…あの…」
「飛行機……」
ぽつりと、彼はしゃべり始めた。
「ニューヨーク行きの飛行機のチケットを四枚。手配していただけますか?」
「え…あ…はい!かしこまりました」
コクコクうなずく彼女。
それを見て、レゾは破顔した。まとっていた冷気も霧散する。
「なるべく早くお願いしますね、エリス。後、夕食を運んでください」

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15883『CIV』― Dispositions 5―蛇乃衣 2004/1/19 20:18:40
記事番号15835へのコメント

エリスが部屋から出ると、レゾは小さくため息をついた。
「毎回毎回飽きませんね、彼女も……あなたも少しくらい言い返せば良いのに……」
ゼルガディスに苦笑を含んで言う。
「事実といえば事実だしな…」
ゼルガディス自身は、別段腹を立てているわけではなさそうだ。
ばふっと、マシュマロ並にクッションのきいたソファに腰を下ろす。
「そうでしょうか?……ですが、私があまり良い気分ではありません」
だからあまり来たくなかったのですよ。
と、ややぶぜんとした面持ちで、レゾもその隣に座った。
「今の、エリスって人…」
言いながら、リナも柔らかいクッションに身を沈める。
ちょうどレゾと向かい合う位置だ。
「なんか猫被ってるかと思えば狼被り直したりっていうか……まあ、被りきれてなかったけど……知り合ってから長いの?」
「そうですね。私が二十歳の時でしたから、かれこれ十三年間ですか」
「じゅうさん……」
じぃーと、リナがレゾの顔を見る。
「…なにか……?」
「そういえば、正確には聞いてなかったけど……今、歳、三十三なの?」
「そうですが……?」
リナはため息を一つつき、
「詐欺」
「えっ!?ど、どうしてですか…!?」
「遠回しに『見た目若いね』って褒めてんのよ」
「はあ……そうなんですか……?」
そうは言うも、納得しきれず、彼の眉は寄ったままだ。
少々脱線した話の軌道を修正したのはゼルガディスだった。
「俺はレゾのところに引っ越してから一年間、エリシエルのことはまったく知らなかったけどな…
 …そういや、正式にあんたの養子になったのもあの頃だな…」
「そうですね。まあ、もともと、エリスと頻繁に会うわけでもありませんでしたし」
「ふーん……にしても、レゾはずいぶん慕われてたじゃない?」
からかう半分で問うてみると、彼は苦笑の苦味の方を強めた。
「それよりも、ゼルガディスへの矛先を緩めて頂きたいものですね」
さらりと発せられた言葉に、
「……複雑な関係」
思わずため息を沿えて、リナは呟いた。
察するに、エリスがああもゼルガディスに攻撃的なのは、レゾへの想いゆえであり、
一方、ゼルガディスを良く思っていない…どころか、敵意剥き出しにしている者に、レゾが好意を持つとも思えない。
レゾとエリス、双方の『特別な存在』が変わることも、考えにくい。
エリスについては、なにも知らないのも等しいので強くは言えないが、レゾに関しては、そんなことはありえないと、断言してもいいとリナは思う。
付き合いは長いし、当のゼルガディスがさしてエリスを嫌っていないしで、レゾもエリスを邪険にしてはいないのだろうが……
(ゼルの友人ってことで、あたしも『敵』に分別されたんだろうけど…なんだかなぁ……)
赤の他人ならば、見ていて面白いのかも知れないのだが……
これだけ関わりのある人間だと、ただ笑ってもいられない。

「あ〜…気持良かった〜。ここの風呂広いよなぁ〜」
湯気を立てながら、ガウリイがやってきた。
先程のギスギスした空気を知らないで、呑気なものだとリナは思ったが……
(って、知ったところで、なにも考えないんだろうなぁ…この男は……)
直後に思い直した。


*****

小説の方を読み返して、ああ、エリスッてむくわれていないよなぁ……かわいそうかも……
なんて思って、出してみたのですが……
ごめん。やっぱりむくわれていなひ。

ゼルを敵視しているキャラって、「CIV」では貴重かも。

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15897『CIV』― Intruders 1―蛇乃衣 2004/1/22 19:15:46
記事番号15835へのコメント

ホテル滞在三日目の午後。
飛行機も明日の便がとれ、特にすることもない。
リナはガウリイを引き連れてショッピングに行き、付き添いという難を逃れたレゾとゼルガディスはホテルに残った。
ゼルガディスは拳銃の手入れをし、レゾはビスケットを甘口のワインに浸しては口に運び、一冊の薄い本に目を通している。
数日前に、『赤法師』に送られてきた、あの闇オークションの品の一覧表だ。

このオークション、非合法故あたりまえだが、裏の顔を持つ人間、それも『大物クラス』が集まる。
オークション自体も、マフィアのグループいくつかが協力(互いに目を光らせているとも言う)で運営しているのだ。
無論、警備も厳重。
今回『仕事』をするに当たって、誰かが初めから、それも堂々と建物の中にいられる方が良い。
そこで、レゾが『赤法師』として客になることにしたのだ。

まあ、そんなオークションの客になれることに問題があるかもしれないが、それは気にしないことである。

パラ…

ページをめくったレゾの手が、ふと止まる。
口元に小さな笑み。
印刷されている、ブルーダイヤが美しいネックレスの写真。
その実物は、現在彼のトランクの中だ。
そういえば、これの前の持ち主は、このオークションに来るのだろうか。
(来ないでしょうね、おそらく……)
確か、繋がりがあるのではと『噂されたことがあった』マフィアは、オークション関係者達とは対立関係にあったはずだ。
ネックレスを再び見た時どのような顔をするか、多少興味があったのだが、仕方がない。
それに仮に来ていたとしても、彼等の目に入る前に、ネックレスは姿を消してしまうのだから。

パタンと本を閉じる。
と、ゼルガディスも手入れが終ったようだ。
リボルバーが艶やかに室内の光を撥ね返す。
弾倉に弾を入れ、ゼルガディスはそれを上着の内ポケットにしまった。
「リナさん達、遅いですね」
時計は五時近くを指している。
彼等が出かけてから、だいたい四時間ほどか。
暇潰し程度にと言っていたのだが、なにかおもしろいものでもあったのだろうか。
「あいつらのことだ、夕食前には戻ってくるさ」
「それもそうですね」
苦笑に近い微笑を浮かべうなずく。と、そこへ――
「たっだいまー!」
「ただいまぁ…あー…疲れた」
満足気な少女と、くたびれ顔の青年が部屋に入ってきた。
「……な?」
「本当に。噂をすればなんとやら、です…」
レゾはクスクスと笑い、三人に尋ねる。
「いささか早いですが、夕食、もう食べてしまいますか?」
「賛成〜。腹減ったぁ〜」
「あたしも〜」
「俺もかまわんさ」
「分かりました。では、フロントに連絡を……」

ぶるるるるっ
ぶるるるるっ

低い、小さな振動音が聞こえた。
「?」
「…ああ、私の携帯です」
ソファーの上に置いてあったそれにでる。
「はい……ああ、ディルギアさん。どうかしましたか?」
かけてきたのはディルギアだった。
保管場所はすでに特定でき、連絡も入っていたのだが、場所が替わりでもしたのだろうか。
「……計画の変更?…ええ、そちらに着くのは遅れますよ?一昨日知らせ…え、違いま………………は?」
突然、レゾが間の抜けた声を上げた。
彼には珍しいことだ。
ゼルガディス達も、思わずまじまじと見てしまう。
が、さらに驚いたのは、彼の口をついて出た次の言葉だ。
「…なっ、オークションの品が盗まれた!?」

………………………

『なっにぃぃぃぃぃいいい!!?』



*****

リナ達、先を越されてしまいました!
いったい誰でしょうねぇ。そんな不幸になるようなことしたのは(笑)

ここから話の中核に切り込んでゆ〜きま〜すぞ〜。(ムッ○風)(私はガチャ○ンの方が好きです)

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15904『CIV』― Intruders 2―蛇乃衣 2004/1/25 15:21:49
記事番号15897へのコメント

世界屈指の大都市、世界経済の大中心地、ニューヨーク。
立ち並ぶスカイスクレーパー――摩天楼は、人工の明かりをまとい、闇夜にも沈むことはない。
オフィス街から離れた一軒家、いわゆる『アジト』から、レゾはそれを眺めていた。
眩いはずのその明かりが、どこか虚しく感じる。
闇の中、人が飲み込まれぬようにとの、あがきのように思えるのだ。
どれだけの明かりを持ってしても、夜から闇を追いやることは出来ないのに。
いたずらに、明かりの届かぬところの闇を深くするだけ。
昼でさえ、そびえるビルによって、陰はその領域をひたひたと浸透させていく。
これは、愚かしいことなのか。
そこまで思って苦笑する。
自分は、そんな場所を生きてきたのだ。
闇が、陰があるから、自分は生まれてきたのだ。
それを嘆くことも誇ることもしないが…
…悔やむとすれば、悔やむべきは、彼の手を引いてしまったことか……?

「レゾ!」

少女特有の高い声が、レゾを思考の海から引き戻す。扉の閉まる音に、彼は完全に先程までの思考を切り離した。
「…おかえりなさい、リナさん。何か掴めましたか?」
振り向いて尋ねる。
もっとも、その表情を見れば、収穫の程はうかがえる。
「いろいろ噂はあったんだけど…確信が持てるのは今んとこないわね。そっちは?」
「私の方も似たようなものです。マフィア同士の対立関係から洗ってみたのですが、やはり複雑で……」
「そっか………なにか面白いもんでもある?」
リナはレゾの横から窓の外を見る。
「いえ…ただ、無意味に明るいな、と……」
「そう?綺麗だからいいじゃない。
 暗い方が仕事しやすいってのはそうだけど…明かりがあるなら、逆にそれを利用してやればいいんだし」
シニカルに口元を引き上げ、ウインク一つ。
「…あなたらしいですね…」
「どーゆー意味かしら?」
「褒め言葉として受け取ってください」
「もちろんそうするけど……素直に褒められないわけ?」
「おや。てっきり、リナさんは遠回しに褒められるのを好んでいるのだとばかり…」
「そりゃあ――」
『曖昧なのは自分の都合の良いように解釈できるから(?)』
断言の形と、疑問形と。
重なったそれに、二人は顔を見合わせ、おかしそうに笑った。

「―――リナさん。今回のことですが……」
笑いが収まった頃、レゾが切り出した。
「仮にもマフィアに喧嘩売るような真似、個人レベルでは……まあ、ないとは言いませんが……それなりに大きな存在が動いたと見るべきでしょう」
「う〜みゅ…となると、奪われた品物の中にそれだけの価値の物があったのか、ってのが、引っ掛かるのよね…」

昨日、ディルギアが電話で告げたことによれば、何者かがオークションの品物、それも宝石類が保管されていたところを、まるまる奪ったらしい。
四人が目星を付けていた物も、ほとんど含まれていたので、ディルギアはレゾ達が計画を変更したのかと思ったのである。

「あ〜もう!どこの誰か知んないけど、人の獲物を先取りするなってのよね!」
憤慨し、だぁんっ!と床を踏み鳴らす。
「この落とし前はきぃっちり付けさせてもらうわ!!」
明後日の方向に中指をおっ立てるリナ。
その背後に、めらめら燃える炎が見えるような気がして、レゾは乾いた微笑を浮かべる。
どこの誰かとやらが、人為的不幸に見舞われるのは、もはや決定してしまったようだ。
「…とにかく…ゼルガディスとガウリイさんがディルギアさんを連れてきますから、彼からいろいろと聞きましょう。
一番有力な情報源ですよ」
「へぇ〜、信用できるんだ」
情報が渦巻くこの都市で……
ディルギアとは、それほど情報収集能力に高けているのだろうか?
「それはもちろん」
にっこりと笑い、レゾは自信あり気にうなずいた。
「私に偽の情報など渡したらどうなるか…彼は重々承知ですから」
「……あ…そう……」
気の利いたコメントも思いつかず、リナはただそう返した。

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15930Re:『CIV』― Intruders 2―りぃ 2004/1/30 00:02:50
記事番号15904へのコメント

・・・・ディルギア不幸・・・(--;)
どうも、りぃです。なかなかレスできなくてすみません。
リナの獲物を横取りするなんて命知らずですね。ニューヨークも9.11から復興したというのにまたぶっ壊されてしまうのでしょうか・・・
アメリカの皆さんご愁傷様です。m(_ _)m
続きが楽しみvv 


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15933停滞してました・・・蛇乃衣 2004/1/30 18:35:14
記事番号15930へのコメント

こんにちはりぃ様。レス、ありがとうございます〜。
ちょっとオフの方が忙しくて、連載止まっていました。お待たせ致しましてスミマセン。
行ったことないくせに、ニューヨーク舞台にしてしまって・・・。
写真とかテレビなどは見たのですが、おかしなところがあっても苦笑いしつつ読み流して下さい(汗)
あ、でも、そんなに爆破はしないです。たぶん。

それでは、続きをお楽しみ下さいませ。

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15934『CIV』― Intruders 3―蛇乃衣 2004/1/30 18:47:53
記事番号15897へのコメント

アジトのドアが再び開かれたのは、リナが帰ってきてから三十分ほどしてからだった。
「tだいま」
「ゼル、ガウリイ、おかえり」
「おかえりなさい。……ディルギアさんも、こんばんは。夜分遅くにすみませんね」
二人に続いて入ってきた男に、レゾは声をかけた。
「いや、たいしたことぁねぇですよ」
ガウリイよりもさらに大柄なその男が答える。
褐色の肌に、わずかに灰色が交じった茶髪。どことなく、狼を彷彿させる風貌だ。
以前、リナとガウリイも数回会ったことがある。

小さなリビングに五人は移動した。
レゾ、リナ、ディルギアがソファに座り、ゼルガディスとガウリイは壁に背を預けた格好で立っていた。
「では、話を聞きましょうか」
一対の赤と青の瞳が、向かい合う男を写し出す。
「はあ…といっても、昨日話したことでほとんどですぜ。一昨日の夜中から昨日の朝までに、金庫がこじ開けられて中身がどろん。
見張りもいやしたし、まあ、あっさり持っていかれたわけじゃあないでしょうけど……ここいらじゃ、騒ぎがあったとしても、たいして注意が払われるわけじゃない」
「確に…最近、なにかマフィア間で変わった動きなどは?」
「特になかったと思いますぜ。オークションがあるってんで、多少緊張はしてましたがね。
下っぱのこぜり合いでも、派手な喧騒はなし。まあ、おおむね平和……あ」
「どうしました?」
素早くレゾが問掛ける。
「いや、あんま関係ねぇことなんですけど…聞いたところによりゃあ、最近、ウイルスが多く売り買いされているらしくて」
「ウイルスって…コンピューターの、よね」
リナが口を挟んだ。
ディルギアは一つうなずく。
「オレはそういったのにゃ、詳しくねんですがね。ワクチンやら対策ソフトの方も同じくらしいですぜ」
「大本は同じところだろうな」
と、今度はゼルガディス。うなずいたのはレゾだ。
「でしょうね。そうでなくとも、関わりはあるはずです………感染に気を付けないと…」
無論、ハッキングする時に。

その後も話はしばし続いた。しかし、やはりこれといった情報は少ない。
結局、もっと範囲を広げて探ってみようということで、それに備えるため、彼等は話を打ち切った。
すでに日付は変わってしまっている。
「じゃ、オレは失礼しますぜ」
ディルギアが立ち上がった。
「また、なにか分かったら知らせますよ」
「ええ、お願いしますね」
ドアが開け閉めされる音の後、リナは大きく伸びをした。
「あ〜…眠ひ……」
「今日は、一日中動き回ってたしな」
そう言うゼルガディスも、眠そうである。
「お疲れ様でした。二人とも………そう言えば、ガウリイさんの質問がありませんでしたね」
「最初っから理解するの諦めてたんでしょ」
しかし、彼は先程の話中から、一言も言葉を発していない。
これは、いくらなんでもおかしい。
「…ガウリイ……?」
壁に寄りかかったままの彼にリナは近付く。
まさかとは思うが……
金色の髪になかば隠れた顔をのぞきこみ、

すかー…すこー…

「ね、寝てるし…」
ピクピクと、こめかみ辺りが引きつくのが自分でも良く分かった。
「人が眠気をこらえて話をしてたってのに……」
怒りをふつふつ湧かせ拳を構えたリナに、やんわりとレゾの制止の声をかかる。
「まあまあ…もう話は終えてしまいましたし。それに、聞いていたところで、ガウリイさんはあまり覚えていませんし…」
「乙女を起こしといて自分は寝てる!その態度と根性が気に食わないのよ!」
「ならば、なおさらそのまま、そっとしておいた方が良いではありませんか」
「なんで?」
「三つなんです。この家にあるベットは」
誰か一人、ソファなり使わなければならない。
「とりあえず、今日はガウリイさんということで」
「なるほど。文句なし。それ採用」
「お前らな………」
呆れ顔のゼルガディス。
しかし、彼もそれ以上は言わない。
彼とて疲れている。ふかふかベットの魅力は、わざわざ手放すには惜しい。

今宵の寝床の権利は、こうして分配された。


*****

ディルギアの口調難しい…もはや別人……
他のキャラは違うのかと言われると、言葉に詰まってしまいますが…;

早くゼロスを再登場させ、ルーク登場まで話をもってをゆきたいです。
…て、アニメのみでスレイヤーズを知った方は、やはりルークのことをご存じない……?
まあ、『CIV』では設定が原作と関係ありませんし。大丈夫でしょう。はい。
原作を知っていると、
「ああ、○○○と○○○はやっぱり仲が悪いんだ」とか
「○○○が○○○を苦手なのは、原作で○○○があったからか」
なんて思われるところもあるかもしれません。

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15936『CIV』― Intruders 4―蛇乃衣 2004/1/31 10:24:00
記事番号15897へのコメント

翌日も、リナ達は捜査に大半を費やした。
オークション側の連中も、必死で品物の行方を追っている。
まだ、オークション中止の知らせは来ていないが、こうなっては『赤法師』が行く必要がなくなってしまった。
開かれようが開かれまいが、もう関係ない。
実を言うと、レゾはオークション自体も楽しみにしていたのだが、一気に興冷めしてしまったし、やらなくてはならない事は、予定より大幅に増えてしまった。

ひんやりとした空気が満ちる暗い部屋。
ゼルガディスはベットの中で寝返りをうった。
ギシリ、とわずかに軋む。
シーツは昨日新しい物に替えたが、ベットは古い。
今日購入した簡易ベットは、リナが空き部屋に持っていって使っている。
耳をすましても、車のエンジン音やクラクション、誰かの喧騒は遠い。
けしてうるさくはない。むしろ静かだ。
しかし、
(…寝付けん……)
目が冴えてしまっている。
明日も忙しくなるというのに……
はぁ、とため息をつく。
目の前には壁。隣の部屋はレゾが使っている。
(寝ている…だろうな…)
物音一つしない。
昔、レゾがソファで、あんまり静かに、それこそ身じろぎ一つせず寝ていたから、まさか死んでいるんじゃないかとドキリとしたことがあった。
思い出して苦笑する。
(…まあ、あいつの場合、うたた寝すること自体が珍しいがな……)
ぼんやりと、連鎖的に色々なことを思い出す。
(もう、十年になるのか……)
その年月が長いのか短いのかは分からないが、初めてレゾに会った時のことは、鮮明に覚えている。
逆に、その前後の記憶は曖昧なのだ。
あれは、雪の降る、クリスマス・イブ。
お祭りだ。
賑やかなはずだったのに、なぜだろう、降り続ける雪に、音が吸い込まれているような静寂を記憶している。
自分は孤児院のどこに座っていたのだっけ。
思い出せる音は、かけられた声のみ。
あの日、自分の前に現れたのは、サンタクロースではなかったけれど。
(赤い服は着ていたがな…)
一瞬、脳裏にサンタクロースの格好をした彼が浮かび、思わず出かけた笑いを噛み殺す。
(…赤、か……)

―――知らなかったのだろう?―――

数日前のエリスの言葉が頭に響く。
『赤法師』を本当に知ったのは出会ってから一年後。
そう。それまで、自分はなにも知らなかった。
なにも。
――ふぅ―――
小さく息をこぼし、ゼルガディスは毛布を被り直した。
いい加減に、寝なければ――


時刻、数台の車が道路を走っていた。
闇に溶けるような黒の車だ。
ほとんど同じデザインのそれらが連なり走るのは、少々異様だろう。
だが、車に乗る者達の纏う『なにもないような』雰囲気は、さらに輪をかけて異様だった。

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15957Re:『CIV』― Intruders 4―祭 蛍詩 2004/2/5 19:19:58
記事番号15936へのコメント

 お久しぶりですv 祭ですv
 ちょっとスキー教室なんていうものに行って来たのでレスが遅れてしまいました; おまけに筋肉痛で体中が軋みます;;

 ―というわけでレスさせて頂きます!

>翌日も、リナ達は捜査に大半を費やした。
>オークション側の連中も、必死で品物の行方を追っている。
>まだ、オークション中止の知らせは来ていないが、こうなっては『赤法師』が行く必要がなくなってしまった。
>開かれようが開かれまいが、もう関係ない。
>実を言うと、レゾはオークション自体も楽しみにしていたのだが、一気に興冷めしてしまったし、やらなくてはならない事は、予定より大幅に増えてしまった。
 本当に誰なんでしょうね?
 こんな大それた事するのは。

>ひんやりとした空気が満ちる暗い部屋。
>ゼルガディスはベットの中で寝返りをうった。
>ギシリ、とわずかに軋む。
>シーツは昨日新しい物に替えたが、ベットは古い。
>今日購入した簡易ベットは、リナが空き部屋に持っていって使っている。
>耳をすましても、車のエンジン音やクラクション、誰かの喧騒は遠い。
>けしてうるさくはない。むしろ静かだ。
>しかし、
>(…寝付けん……)
>目が冴えてしまっている。
>明日も忙しくなるというのに……
 こういう事、良くありますよね〜。
 睡眠不足で明日が忙しい時に限って;;

>はぁ、とため息をつく。
>目の前には壁。隣の部屋はレゾが使っている。
>(寝ている…だろうな…)
>物音一つしない。
>昔、レゾがソファで、あんまり静かに、それこそ身じろぎ一つせず寝ていたから、まさか死んでいるんじゃないかとドキリとしたことがあった。
 んでもって、手を胸の前で組んでいたりして…そして白いハンカチを顔にかければエセ死体の完成っ!!(ちょっとマテ)

>思い出して苦笑する。
>(…まあ、あいつの場合、うたた寝すること自体が珍しいがな……)
>ぼんやりと、連鎖的に色々なことを思い出す。
>(もう、十年になるのか……)
>その年月が長いのか短いのかは分からないが、初めてレゾに会った時のことは、鮮明に覚えている。
>逆に、その前後の記憶は曖昧なのだ。
 それだけ印象深かったんでしょうね。
 赤尽くめの人ですし;

>あれは、雪の降る、クリスマス・イブ。
>お祭りだ。
>賑やかなはずだったのに、なぜだろう、降り続ける雪に、音が吸い込まれているような静寂を記憶している。
>自分は孤児院のどこに座っていたのだっけ。
 孤児院で育ったんですね、ゼルさん。
 親御さんは何処へ……?

>思い出せる音は、かけられた声のみ。
>あの日、自分の前に現れたのは、サンタクロースではなかったけれど。
>(赤い服は着ていたがな…)
>一瞬、脳裏にサンタクロースの格好をした彼が浮かび、思わず出かけた笑いを噛み殺す。
 レゾさんサンタクロース?!
 妙に怖いです…;; そりゃ、セイルーンの王子様よりはマシですが;;

>(…赤、か……)
>
>―――知らなかったのだろう?―――
>
>数日前のエリスの言葉が頭に響く。
>『赤法師』を本当に知ったのは出会ってから一年後。
 裏の顔…のことでしょうかね?

>そう。それまで、自分はなにも知らなかった。
>なにも。
>――ふぅ―――
>小さく息をこぼし、ゼルガディスは毛布を被り直した。
>いい加減に、寝なければ――
>
>
>時刻、数台の車が道路を走っていた。
>闇に溶けるような黒の車だ。
>ほとんど同じデザインのそれらが連なり走るのは、少々異様だろう。
>だが、車に乗る者達の纏う『なにもないような』雰囲気は、さらに輪をかけて異様だった。
 誰だーーっ?!
 やっぱりゴキブリさん一味でしょうか?(シリアスだい無し)

 続きが楽しみです! ゼルさんの幼い頃も少しずつ解明されるみたいでなお楽しみですvv
 では、きょうはこの辺で!
>

トップに戻る
15959黒幕の黒幕はまだ引っ込んでいますね蛇乃衣 2004/2/5 20:38:16
記事番号15957へのコメント

こんにちは〜。蛇乃です。レスありがとうございました。
>
> 本当に誰なんでしょうね?
> こんな大それた事するのは。
さて、誰でしょう?するだけの価値はあるのですよ。

> こういう事、良くありますよね〜。
> 睡眠不足で明日が忙しい時に限って;;
私も、そういうときに限って寝付けないのですよ〜。夜型人間になってます(苦笑)

> んでもって、手を胸の前で組んでいたりして…そして白いハンカチを顔にかければエセ死体の完成っ!!(ちょっとマテ)
報復覚悟でしてもらいたいですね。ゼルさんなら許してもらえるでしょう。

>>> それだけ印象深かったんでしょうね。
> 赤尽くめの人ですし;
情緒不安定な時でもあったので、なおさらですね。

> 孤児院で育ったんですね、ゼルさん。
> 親御さんは何処へ……?
ん〜・・・育ってはいないのです。育つ前にレゾさんが引き取りましたから。
一時的な保護ですね。親は・・・色々ありまして・・・

> レゾさんサンタクロース?!
> 妙に怖いです…;; そりゃ、セイルーンの王子様よりはマシですが;;
「ゼルガディスがトナカイの格好をするなら、してもいいですよ」byレゾ

> 裏の顔…のことでしょうかね?
ええ。それも一つじゃなかったし・・・

> 誰だーーっ?!
> やっぱりゴキブリさん一味でしょうか?(シリアスだい無し)
そうなような違うような・・・
こればかりは読んでからのお楽しみですね。(ってそんなたいしたもんじゃ・・・)

> 続きが楽しみです! ゼルさんの幼い頃も少しずつ解明されるみたいでなお楽しみですvv
> では、きょうはこの辺で!
ありがとうございました!私も早く過去をばらしたくてうずうずしています。
お待ち下さいませ〜。

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15960『CIV』― Surprise 1―蛇乃衣 2004/2/5 20:49:26
記事番号15835へのコメント

止まった車から、黒服の男達がバラバラと降りる。
彼らが侵入したのは、見た目なんのへんてつもない、一軒の家。
足音一つ立てず、彼らは闇に慣れた目で辺りをうかがい、三人ずつの四グループに分かれ奥へと進む。
二階へ上がった二グループは、それぞれ隣り合う部屋のドアの前で足を止めた。
奥の部屋の方にいた男の内一人が、周りに視線を投げ掛け、手で合図した。

どがっ!

ヒュドヒュドヒュドヒュドヒュドヒュドド!!

扉を蹴り開け、ベットの上の膨らみに向けて弾丸が放たれる!
サイレンサーで妙な具合いにしぼんだ音に合わせ、その膨らみが細かく弾む。
再びの合図でそれは止み、黒服達は部屋の中へと入り―――
その顔が疑問と驚きに一瞬固まり、急いでベットに近付くと毛布を乱暴にはがした!
「!?」
そこにあるのは穴の空いた毛布の小山。
「どこに―――っ!?」
振り返った最後尾の男の目の前に、銀髪の青年が降ってきた!
ガゴッ!
強烈な蹴りが顎にきまり、砕けた前歯を飛ばせながらその男は転倒する。
『!!?』
他の黒服二人が銃をかまえるよりも先に、青年は片方の懐に飛び込み拳を叩き込むと、そのまま襟を掴み、もう片方へと投げつける!
ヒュドゥッ!
くぐもった銃声が聞こえ、黒服は一度痙攣するとまとまって倒れ込んだ。
どちらかの放たれた弾が当たったのだろう。
「ふぅ…」
動かない彼らに、ゼルガディスはわずかに力を抜く。
黒服達がやってくる直前、彼はクローゼットの上に隠れたのだ。

がたん!

隣からの物音に、ゼルガディスは上着を掴むと急いで廊下へと出た。
「ゼルガディス、無事でしたか?」
ちょうど同じタイミングで、レゾが出てきた。
かすり傷一つ無さそうだ。
彼もすでに上着を着ている。
「ああ」
「まあ、甘く見られていたようですけど……どちら様でしょうね」
「ゼル!レゾ!」
「大丈夫か!?」
三階からリナとガウリイが降りてきた。
「リナ達のところにも行ったか」
「ってことはやっぱりそっちも?」
「ええ。……おそらく、命そのものが目当てではなかったと思いますよ」
「なんで?」
「私のトランクに弾丸を当てた方が、なにか言われていましたからね」
「だが、特に狙われるようなものは……あ」
『ネックレス……?』
四人の呟きが重なる。
それぐらいしか思い当たるものがない。
「じゃあ、黒幕はあいつか?ほら、えっと…だれだっけ?前の持ち主」
「ブランよ、ガウリイ。ブ・ラ・ン。
そいつが取り戻そうとしているってことかしら……」
「可能性は大きいでしょうね……ですが、推理は後回しにしましょう。居場所が知られてしまったからには、ここから離れないと」
「そうだな。連絡がないとなると、また次のが来るだろう」
「当てはあるの?」
「もう一つ、アジトになりそうな場所があります」
「よっし。じゃあ、そこ行きましょうか!」

てきぱきと荷物をまとめ(といってもわずかだが)、四人はその場を後にした。


******

スレイヤーズのお約束。
『行き詰まったら待て、敵の方からやってくる』(笑)

なんだかゼロスさんより、ヴァルさん先に登場(番外編含むと再ですね)しそうです。
妙に性格が軽くないかと、友人に指摘されました;
『CIV』のヴァルさんは…う〜ん…細腰流し目美形の遊び好き女好き、ですね。
基本は明るくちょっとニヒル…かな?
割りとフェミニスト。
ゼルさんと並ぶとかなり目の保養に。
過保護(?)にされているゼルさんを時々からかいますが、自分はガーヴさんの忠犬(リナ談)状態だったり(笑)